日本に「mixi疲れ」があるなら、韓国には「MiniHompy疲れ」がある。

 日本では韓国ほどの人気はないようだが、2200万人の会員数を誇り、今でも週に1500万人以上が訪問している“韓国人の人名録”とも称される「Cyworld」は、元祖SNSサイトとして、アバターや個人Blogがセットになった「MiniHompy」(ミニホームページ)を、登録した仲良しメンバー(「イルチョン」と呼ぶ)だけに公開できる機能で一躍社会現象にまでなった。MiniHompyでは、アバター用の着せ替え服や家具を買ってアバターの部屋をかわいくさせるアイテムや背景画面、BGMなどを購入して飾り付け、訪問する人を楽しませる。

 CyworldのMiniHompyが本格的にサービスを始めたのは2001年。しかし、2003年~2005年をピークに「MiniHompy疲れ」が出始めている。新入社員の面接やお見合いの前には、相手のMiniHompyを確認するのが当たり前になっていた。このため、逆に自由に物を書けなくなってしまったり、イルチョンとして登録している友達のMiniHompyを毎日のように周回して挨拶コメントを残すのにも疲れてしまったりで、Cyworldから離れしてしまうユーザーが増えてきた。それでもCyworldの訪問者数は減らないし同時アクセス者数もそれほど減らない理由はどこにあるのだろうか。

 Cyworldによると、それは「BGM」にあるそうだ。

 SNSサイトとしてMiniHompyを管理することに疲れたユーザーは、それまでに購入したアバターのアイテムやBGMがもったいないので脱退まではしない。そして、自分が購入したBGMを再生する音楽サイトとして、一日中利用するというのだ。1曲500ウォン(約60円)でダウンロードできるCyworldのBGM市場では、この5年間で2億曲以上を販売し、累計1000億ウォン(約125億円)の売り上げを突破している。MiniHompy以外では購入したBGMを使えない。複製もできないし、著作権もしっかり保護できることからオンライン音楽産業の大きな割合を占めている。それに他人のMiniHompyにあるBGMも聴けるので、音楽の趣味が似ている人同士で「イルチョン」になり、毎月どんなBGMを購入するかを相談して10曲ずつ分けて購入するといった動きもあるという。

 MiniHompyのBGMを音楽サイト代わりにするのが流行っているせいか、ヒット曲もBGMから生まれている。オフラインでアルバムを発売するよりも早くBGMとして販売したり、アルバムを一切出さずにBGM販売やダウンロード販売だけを提供したりする歌手も増えてきた。MiniHompy向けのBGMとして新曲を1曲提供しただけで1億円は軽く稼げるということで、一部の人気歌手はテレビやラジオに出演せず、アルバムも出さず、Cyworld専用に新曲を販売しているほどだ。2007年公開された映画「ラブソングができるまで」のサウンドトラックもCyworldで初めて公開され、マドンナが地球温暖化防止のチャリティーコンサートの前に発売したスペシャルシングル「Hey You」もCyworldで先行販売されたほどだ。インディーバンドの曲も人気がある。「ハミングアーバンステレオ」という歌手の「ハワイアンカップル」はBGMで火が付き、テレビのCMソングや映画の主題歌になり、音楽チャート1位になった伝説的な曲である。SNSサイトの一機能であったBGMが今では会員数をバックに韓国音楽市場に多大な影響を与え始めているのだ。

 CyworldのBGMとして最もたくさん売れたのは中島美嘉の「雪の華」を韓国の男性歌手がカバーした韓国語バージョン「雪の華」。ドラマの主題歌だったこともあり、100週間以上も連続して販売件数第1位を記録。70万人を超えるユーザーが購入した。今でもこの記録は破られていない。mixiでもSNSの人脈管理に疲れたら、自分だけの写真アルバムとして利用するかもしれないし、まったく想像しなかった方向へと進むかもしれない。Cyworldのように時代の変化に応じて特技を変えながら生き残ることも重要なことではないだろうか。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年3月5日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20080305/295430/

2008/10/07 01:00 2008/10/07 01:00
人口4800万人の韓国で2300万人の会員を持つSNS「Cyworld」がセカンドライフのように3D仮想社会「ミニワールド」サービスを2008年6月より開始する。Cyworldの仮想社会は2007年下半期から出る出ると言われ続けていたので、ネットでの反応は「ついに来るべきものが来た」、「これでCyworldも最終戦となった」といった感じだ。Cyworldが歳月をかけて準備した野心作であるにも関わらず、「ミニワールド」に対して「過去の栄光を取り戻すのは難しいだろう」と否定的な書き込みばかり。

 Cyworldを運営するSKコミュニケーションズは韓国最大移動通信キャリアSKテレコムの子会社である。そのためパソコンだけでなく携帯電話からもらくらく利用できるサービスを特技としていた。Cyworldも電話をかけるように自分のHOMPY(Cyworld内の自分のホームページ)の番号を入力して通話ボタンを押すだけで利用できるのが魅力だった。しかし飛ぶ鳥も落とす勢いだったCyworldも2005年をピークに下り坂、株価は2008年1月までも1株3万ウォン台だったのに5月には1万5千ウォンと半分に折れてしまった。

 2008年1~3月は営業利益が前年同期比196%減少した42億8200万ウォンの赤字となった。純利益も5億ウォン赤字となった。訪問者数も2007年1月と2008年5月を比べると10%ほど落ちていて、PVは他のポータルサイトより断然多いといっても30%以上落ちている。会員が2300万人もいるからにはこれ以上の会員増加は難しい。

 SKコミュニケーションズの現状は、負のスパイラルを描いている。Cyworldの売上が落ちる一方なので、検索ポータルサイトを買収してバナー広告を追加したら、コミュニティサービスというよりありきたりのポータルサイトになってしまった。今度は逆に訪問者数も売上も落ちて苦戦中。そこでSKコミュニケーションズは新しい切り口としてセカンドライフのような3DSNS「ミニライフ」を提供しようとしている。赤字の理由としてSKコミュニケーションズはミニライフへの投資をあげ、サービスが始まれば問題ないとしているが、どうだろう。

 日本のmixi疲れと同じように韓国でもネットワーク疲労からCyworld離れが始まっていて、友達を管理しなくてはならないSNSよりも、一人で日記を書いたり写真を保存できるBlogにユーザーの利用は移っている。クリスマスや年賀状代わりにCyworldのHOMPYに挨拶を残したり、芸能人のHOMPYに載せられた写真をみるためにアクセスするといったことはまだ続いているが、学生の間では「まだCyworldやってるの?」といわれるほど注目度は落ちている。

 そのような状況の中で登場したミニライフはCyworldが持つアバターの着せ替えや部屋を飾るといった遊びの部分を最大限いかしながら、チャット機能を強化し、ユーザーとユーザーのつながりももっと密接になるサービスなるそうだ。が、セカンドライフとの違いがよく分からない。唯一違うのはセカンドライフのようにプログラムをインストールすることなくWebからActiveXでいくつかの機能をダウンロードすればすいすい使えるというところだ。でもミニライフに登場するアバターは今までCyworldに登場していたかわいいキャラクターではなく妙に欧米っぽいアニメキャラになっていてなじめない。

 SKコミュニケーションズはセカンドライフやフェイスブックなど海外SNSの韓国サービスが増えていることをそれほど気にしていない様子だ。韓国人の文化や情緒を理解できないグローバルサービスは韓国でヒットしにくいという前例をたくさん見てきたからだ。だからセカンドライフよりはミニライフを利用してくれるだろうという計算なのだろうか。ビジネスモデルは広告と有料アイテム販売の混合でアバターの部屋の中にサムスンのテレビにLGの冷蔵庫を置くといった感じの広告モデルを考えている。派手なグラフィックのオンラインゲームに慣れ親しんでいる韓国ユーザーには受け入れがたいサービスとして利用者が伸びないセカンドライフだが、企業はどんどん広告を出している。家電、携帯電話、化粧品、食品など色んな業種の大手企業が次々にセカンドライフの中にブランドショップを作ることがステータスみたいになっていることから、ミニライフのユーザーがそれほど増えなくても企業の色んな広告を誘致できると見込んでいるのかもしれない。ミニライフは現在50万人のテスターによるクローズドテスト中で、6月中に商用化される。

 しかし3D SNSはCyworldだけではなかった。より精密なアバターを再現した「NURIEN」や、UCCといってユーザーが製作した動画を投稿して遊ぶコミュニティサイトを中心にユーザーが動画+3Dでコンテンツを作れるようにし、それを投稿してコメントをつけて遊ぶ「kloseup」、「zeb」などいくつものサービスが登場している。これらのサイトは始まったばかりでユーザーの反応はまだ届かないが、毎日のように3Dサービスが登場したという記事をみると、これからのWebはコミュニティも検索も3Dに変わっていくようだ。3Dになった車のナビゲーションさえ見辛くて方向がわからなくなってしまう私みたいな人には嬉しくないが、3Dにすると色々と広告を誘致しやすくなるからもしれない。ところで、セカンドライフに広告を出している企業は効果があったのだろうか?去年まではセカンドライフにショップを作った、というだけで話題になってたけど、この頃はすっかりそういうニュースも聞かなくなったし。気になるので自分で調べてみることにするか。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年5月28日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080528/1003567/

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2008/09/15 08:52 2008/09/15 08:52