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台湾の調査会社であるTrendForce(トレンドフォース)によると、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は2024年7月16日時点で広帯域幅メモリー「HBM(High Bandwidth Memory)」の第5世代に当たる「HBM3E」の自社テストが完了し、2024年内に量産を開始するという。米NVIDIA(エヌビディア)に納品できるかどうかに寄らず、AI(人工知能)サーバー向けHBMの需要に備えるとする。エヌビディア向けでは、競合の韓国SK hynix(SKハイニックス)と米Micron Technology(マイクロン・テクノロジー)が既にHBM3Eの量産を開始したが、サムスン電子のHBM3Eはまだ品質テスト中である。
韓国内では、2024年7月末を予定しているサムスン電子の実績発表の場で、エヌビディアへの納品を公表するのではないかと噂されている。サムスン電子はHBMの供給を2024年に前年比3倍、2025年は同2倍以上と、大幅に増やす計画を立てている。暫定値ではあるが、同社全体の2024年4~6月の営業利益は10.4兆ウォンと前年同期比で1453.24%の増加、このうち半導体部門の営業利益は6兆ウォンと証券業界の予想を上回った。同社は需要が大幅に伸びているNAND型フラッシュメモリーを増産し、価格も15~20%引き上げるとしているので、営業利益はさらに積み上がる見込みである。
しかし韓国メディアや産業界は「サムスン電子危機説」を唱える。同社は標準品の大量生産により、メモリー市場の世界1位を長年キープしてきたが、このことが逆に顧客のニーズに合わせてメモリーをカスタム生産するという流れに乗れなくなった要因と分析している。また2024年7月8日に始まった労働組合のストライキは原稿執筆時の7月18日でもまだ続いている。
NVIDIA CEOの一言で株価が動いたSamsung、激震の半導体部門で初のストも
AI向け半導体の重要部品である広帯域幅メモリー「HBM」に対して、米国政府が中国に対する半導体規制を適用するようだ。SKハイニックスの独走が続くのか、サムスン電子が追い付くか、両社のHBM戦略が注目…
ストライキの背景は次のようになっている。全国サムスン電子労働組合は基本給の3.5%ベースアップやインセンティブ制度の改善などを求めて会社側と対話してきたものの合意に至らず、2024年7月8日に無期限ストライキを宣伝した。同組合には半導体部門の社員が多く加入している。組合側は「ストライキにより8インチのウエハー投入量が減少した」と主張、会社側は「ストライキが生産に与える影響はなく、今後も問題が起こらないよう積極的に対応している」と反論した。韓国メディアは、ファウンドリーの生産に支障が出るとの懸念や、仮に生産には支障がないとしても次世代のHBMで市場逆転を狙うサムスン電子にとってストライキの長期化は、対外的に企業の不確実性を高めるリスクになると分析した。同組合はストライキの目標として、会社側が要求を受け入れるまでファウンドリーの生産に支障をきたすことだと明言している。
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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
(NIKKEI TECH)
2024. 7.
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