反省の場となったサムスン株主総会、AI半導体の対応遅れで競争力示せず

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韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の第56期株主総会が2025年3月19日、韓国の水原市の水原コンベンションセンターで開催された。約3時間続いた今回の株主総会は、株主が「半導体技術のリーダーシップがないから株価が下がり続けるのだ」という不満の声を発し、それに対して経営陣が謝罪する場となった。

 サムスン電子の株価は2024年3月時点で8万ウォン(約8000円)を超えていたが、2025年3月19日には5万8500ウォン(約5800円)にまで下落した。2024年の株主総利回り(TSR)は、サムスン電子がマイナス30.4%だったのに対し、メモリー大手のSK hynix(SKハイニックス)はプラス24.5%と大きな差がついた。

 昨今のAI(人工知能)ブームによって、2024年にはAI半導体の需要が急増した。それにもかかわらず、サムスン電子の半導体事業は低迷した。ファウンドリー(受託生産)事業の市場シェアは減少し続け、米NVIDIA(エヌビディア)に対して納品するとしていた第5世代の超広帯域メモリー「HBM3E」は、1年近く品質検証をパスしたという発表がなされていない。

サムスン電子の第56期株主総会の様子

サムスン電子の第56期株主総会の様子

2025年3月19日、韓国の水原市コンベンションセンターで開催された。昨今の株価の低迷に対し、経営陣が株主に謝罪する場となった(写真:Samsung Electronics)

株主総会の第1部では、総会の議長を務める韓宗熙(ハン・ジョンヒ)最高経営責任者(CEO)兼副会長(故人、2025年3月25日に死去)が「最近の株価が株主の皆様の期待に応えられなかった点について、心からおわび申し上げる」と謝罪した。

 同氏は株価低迷の要因として、(1)2024年にAI半導体市場において適切な対応ができなかったこと、(2)スマートフォン、テレビ、生活家電など主要製品において圧倒的な競争力を確保できなかったこと、(3)技術競争力に対する市場の懸念が大きくなったこと、(4)米国の新たな関税政策とそれに対する対象国の報復関税の動きが影響したこと、などを挙げた。

 そして、韓氏は営業利益が前年比で増加したことや、設備投資と研究開発を強化していること、「Samsung」ブランドの価値は5年連続で世界5位を維持していることなどを説明しながら、最優先の経営原則は株主の価値向上であることを強調した。

 2025年の経営方針については、主要国経済の不確実性が増すなかで基本に集中すると宣言した。具体的には、(1)人材と技術を基に最高の製品とサービスを創出する、(2)超格差(競合が超えられないほど差をつける)リーダーシップをさらに強化する、(3)AIをはじめとする未来ビジネスでは新しい成長源を確保するために絶えず挑戦する、とした。

 M&A(合併・買収)については、2024年末に韓国初となる2足歩行ロボットを開発したRainbow Robotics(レインボー・ロボティクス)の筆頭株主になったことや、同社のロボットをサムスン電子の一部製造ラインで使用していることを明らかにした。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 (NIKKEI TECH) 

2025. 3.

 -Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00129/