次世代広帯域メモリーで市場奪回目指すサムスン、第6世代HBMに総力戦

.

 米国のトランプ大統領は2025年8月、米国外から輸入する半導体にかける関税について、「場合によっては200%か300%になるかもしれない」と発言した。同10月初旬時点でまだ正式な発表はないが、最近になって米国で半導体を生産した分だけを米国外から輸入できるという「1対1説」も登場し、半導体業界に混乱を招いている。

 韓国Counterpoint Research(カウンターポイントリサーチ)によると、AI(人工知能)処理に欠かせないメモリー半導体であるHBM(High Bandwidth Memory、広帯域メモリー)の2025年4~6月における市場シェアは、韓国SK hynix(SKハイニックス)が62%、米Micron Technology(マイクロン・テクノロジー)が21%、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が17%と、韓国勢が全体の79%を占めている。米中半導体競争の中で、韓国は米国にとって重要な位置を占めるようになった。

 2025年9月22日には、サムスン電子が開発に苦労していた第5世代HBMである「HBM3E 12段」の米NVIDIA(エヌビディア)向け品質テストに合格したと報じられた。既に2024年2月に製品の開発には成功していたが、発熱と電力効率の課題があるとされ、NVIDIAに納品したというニュースが流れてこなかった製品である。その間にSKハイニックスは、NVIDIAにHBMを納品し続け、ついにサムスン電子を追い越して、メモリーの世界市場でトップ企業となった。

 サムスン電子はHBM3E 12段の主な部品を再設計したことでNVIDIAの基準を満たし、ついに納品できるようになったという。これで第6世代のHBM「HBM4」をNVIDIAに納品できる可能性も高くなった。

 NVIDIAは2026年に、「Blackwell」の後継GPU アーキテクチャーである「Rubin」を発売する予定だ。RubinにHBM4の12段などを搭載することで、市場のトレンドがHBM3EからHBM4へ移行するとみられている。HBM市場では、SKハイニックスやマイクロン・テクノロジーに後れを取っているサムスン電子がHBM4で巻き返せるかが注目されている。

この記事は会員登録で続きをご覧いただけます。次ページでログインまたはお申し込みください。

次ページベースダイ戦略に注目

趙 章恩=(ITジャーナリスト) 
(NIKKEI TECH)
 2025. 10. 
-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00141