スタートアップ支援に乗り出す韓国キャリア、通信以外のビジネスを狙う

 韓国の最大手キャリアKTが、2016年から支援したスタートアップの技術を採用して、2017年から新しいサービスを始めた。KTのユーザーが決済や会員情報変更など本人確認が必要な時に、パワーボイス社の音声認証技術を使って本人確認ができるというものである。

 今までは、携帯電話にSMSで認証番号を送信してそれをもう一度入力するか、指紋認証で本人確認をしていた。パワーボイスの持つ技術の特徴は、録音された声では音声認証ができないことである。本人の生の声でないと認証に成功しないので、なりすまし犯罪を防止できる。生体認証の世界標準といえるFIDO(Fast Identity Online)の認証も取得した。

 使い方は簡単だ。スマートフォンに「KT認証アプリ」をインストールして、韓国語で「声の認証」と7回繰り返し話すと、音声情報が登録される。その後は、本人確認の時に音声認証を選択して「声の認証」と話すだけでよい。


写真●韓国最大手キャリアのKTが開始した音声認証。KTはスタートアップを支援し、社外から新しい技術を取り入れることに積極的になっている。会員向けにスタートアップであるパワーヴォイス社の技術を搭載した音声認証を提供、決済や個人情報変更など本人確認が必要な時により楽に認証できるようにした。
(出所:韓国KT)

 時間を短縮するため、スマートフォンのIDとパスワードの自動入力機能を利用する人も多いが、セキュリティ上は好ましくない。KTはフィンテックの利用率が増えていることから、決済の際に手間をかけずセキュリティを高めるため、生体認証の一つとして音声認証を始めた。

自動運転やIoT関連スタートアップとの提携も

 またKTは、スタートアップのカビー社と協力して、先進運転支援システム(Advanced Driver Assistance System)を開発している。カビーのシステムは、画像認識や各種センサーを利用し、一人ひとりの運転スタイルに合わせて車の衝突やスピード違反を防止して、車線からはみ出ることがないよう安全運転をサポートする。日本では既に、バスや自動車に導入されているが、韓国では最近導入が始まったばかりである。

 KTはカビーのシステムをロッテのレンタカー1000台に搭載し、そのレンタカーを借りてKTの業務用車両として使うことにした。KTは通信以外の収益源を作るため、自動運転に投資していた。その流れでカビーに投資し、技術開発にも協力するようになったのである。韓国政府は2017年から、全車両に先進運転支援システムの搭載を義務付けることを検討している。KTはスタートアップと組むことで、よいビジネスチャンスを見つけた。

次ページ以降はITpro会員(無料)の方のみお読みいただけます。


章恩(ITジャーナリスト)

 

日経パソコン

2017.1

-Original column

http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/549762/010400125/?itp_leaf_index

[日本と韓国の交差点] 潘基文氏、慰安婦問題で「油うなぎ」との批判

.

憲法裁判所で朴槿恵大統領の弾劾審理が続いている最中、韓国は既に次の大統領を誰にすべきなのかで盛り上がっている。

 現在有力な候補は二人。一人は保守派の代表である潘基文(バン・ギムン)前国連事務総長、もう一人は進歩派の代表、ムン・ジェイン前「共に民主党」代表だ。韓国の大統領選挙は毎回、保守派候補と進歩派候補の競争になる。

 ムン氏は2012年末に行われた大統領選挙にも進歩派の代表として出馬し、朴大統領と票を争った。韓国中央選挙管理委員会の報告によると、2012年大統領選挙の得票率は朴氏が51.55%、ムン氏が48.02%だった。シニア層は朴氏を支持、若い層はムン氏を支持する傾向が強かった。

バン前国連事務総長が事実上出馬宣言

 バン氏は、海外メディアから厳しい評価を受けることもあったが、韓国では韓国人初の国連事務総長として尊敬されてきた。その生涯をライターが取材して2007年出版した本『バカのように勉強し、天才のように夢見よう』が青少年必読書になるほどにヒット。生まれ育った忠清北道陰城郡の生家周辺は、自治体が予算を投じて「バン・ギムン平和ランド」として生まれ変わった。バン氏の大統領出馬説が出始めた2016年下半期以降に実施された複数の世論調査を見ると、全国の50代以上が主な支持層である。

 バン氏は国連事務総長の任期を終えて1月12日、韓国に帰国した。当日、仁川空港にバン氏の支持者らが大勢集まり花束を贈呈して名前を連呼。その前でバン氏は出馬宣言とも言える演説をし、記者会見にも応じた。

 演説では、以下のように述べた。
「私は国連事務総長として、人類の平和と弱者の保護、貧しい国の開発、気候変動への対処、男女平等のために10年間一生懸命努力しました。成功した国はなぜ成功できたのか、失敗した国はなぜ失敗したのかを近くで見守りました。指導者の失敗が民生を破たんに追い込むのも見ました」

 「(韓国)経済は活力を失い、社会は不条理と不正で汚れてしまいました。富の格差、理念や世代間の葛藤を終えるべきです。国民の大統合を成し遂げるべきです。これ以上は覇権と既得権を見過ごせません。(韓国)社会の指導者全員に責任があります。これからは責任感、他人への思いやり、犠牲の精神が必要です」

 「多くの方に『大統領になる意志』はあるのかと聞かれました。『大統領になる意志』が『分裂した国を一つに束ねて世界の一流国家にするために努力する』という意味なら、私は明白に覚悟ができていると言えます。一方、『どんな手段を使ってでも政権を手に入れる、権力を手に入れる』のが『大統領になる意志』なら、私にそれはありません。誰が政権を握るのかは重要ではありません。政権交代ではなく政治交代を成し遂げるべきです」

 バン氏が主張する「政治交代」は、2012年の大統領選挙で朴槿恵氏も使っていた表現で、斬新なものとは言えない。それどころか、「既存の政治家とは違う」ことをアピールすべく政党には入らないと強調してきたバン氏が、実はセヌリ党と深い関係にあると思わせる結果になった。

[日本と韓国の交差点] 韓国、通貨危機以来の低成長予測

.

2017年、韓国は「人口オーナス」元年を迎えた。人口オーナスとは、15~64歳までの生産年齢人口が減少する一方、扶養すべき高年齢人口が増加して経済的負担が大きくなることをいう。韓国は2017年からついに生産人口が減少する。

 複数の韓国メディアが、人口オーナスの先輩と言える日本の事例を新年特集として紹介。シャッター街と化した地方都市や、高齢化にビジネスチャンスを見出したコンビニの食材配達サービスなどを取り上げた。韓国はどうすればいいのか日本から学ぼうという動きが出ている。

 韓国では、生産人口が減少すれば消費が落ち込み、長期不況に陥るとみられている。韓国の企画財政部(韓国の「部」は日本の「省」に当たる)は、2017年韓国の実質経済成長率を2.6%と展望した。同部が経済成長率を2%台と展望したのは、1999年に外貨危機が起きて以来のこと。従来は経済成長を楽観視し3%台の数字を出す傾向があったが、2017年度については「不確実性」を理由に低い数値を打ち出した。ちなみにOECDは2.6%、韓国の民間研究所は2.3%前後と予想している。

米国の保護主義と利上げを不安視

 企画財政部は、米国の動きが波乱要因になるとみている。トランプ政権が保護貿易主義を強めて韓米FTAに影響を与え、関税を厳しくする事態などが発生すれば、輸出に大きく依存する韓国経済は大きな打撃を受けるしかない、というわけだ。

 企画財政部は米国の利上げが及ぼす影響も懸念している。米国が金利を上げれば韓国銀行(中央銀行)も追随する。金利が上がれば韓国の自営業者は大きな打撃を受ける。韓国の自営業者は平均して、年間所得の3.5倍に達する借金を抱えている(韓国銀行調べ、2016年9月時点)。OECDの統計によると韓国の自営業者は全勤労者の27.4%を占める。この値は世界4位(2013年調べ)で、OECD平均の15.8%よりかなり高い。

 不確実性に備える措置として通貨スワップがある。地上波放送KBSニュースは1月2日、韓日通貨スワップ協定を再締結する交渉が中断することなく続いていると報道した。ユ・イルホ経済副総理は、「通貨スワップとは不確実性を減らすために締結するもの。韓国政府として色々な国と締結したい」と発言した。

経営の壁は「政治・社会の不安」との回答が最多

 しかし何よりも大きな不確実性は国内の政治だろう。朴槿恵大統領の友人チェ・スンシル氏の国政介入と朴大統領の収賄疑惑について、特別検事による捜査が続いている。憲法裁判所が弾劾を認めれば、2017年に大統領選挙が実施される。大統領が変われば、すべての政策が切り替わる。

 韓国経営者総会が259社の代表取締役を対象にアンケート調査を実施したところ、経営の壁になるのは「政治・社会の不安」との回答が24.6%と最も多かった。これに以下の回答が続いた――「民間の消費不振」21.1%、「企業の投資心理萎縮」14.6%、「世界の保護貿易強化」12.9%、「中国の経済成長鈍化」12.3%、「米国の金利引き上げ」4.7%、「過度な規制」3.5%、「労使関係の不安」2.3%。経済成長率は、企画財政部より厳しく2.3%と展望している。

By 章恩

 

 ビジネス

 20171

-Original column

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/215834/010400055/

こんなところまで?ハッキング被害続出の韓国

.

米国では、先日の大統領選挙に関して、ロシアがヒラリー・クリントン候補のメールをハッキングした疑いがあるというニュースが流れ、物議をかもしているようだ。

 韓国でもハッキング事件は後を絶たない。つい最近も、北朝鮮によるものとみられる国防ネットワークのハッキングが発生した。芸能人のSNSのパスワードを盗んで勝手に書き込みをした事件や、民間企業が学校の入札システムをハッキングして最安値を調べていた事件もあった。

 中でも深刻なのは、国防関連のハッキングである。韓国国防部(部は日本の省に当たる)は2016年12月中旬、8月に国防ネットワークへの不正侵入があり韓国軍の情報が盗まれた事実と、それが北朝鮮によるものと推定していることを公表した。どのような情報が盗み取られたかは、明確に公表しなかった。

 このハッキングは、「国防統合データセンター」という国防用のデータセンターの管理者がセキュリティルールを守らなかったことが原因だった。本来は、内部ネットワークとインターネットにつながる外部ネットワークを分離し、内部ネットワークだけ使えるパソコンとインターネットにつながるパソコンに分け、機密文書は内部・外部ネットワーク全てをシャットアウトしたパソコンで扱わなくてはならない。そしてパソコンの中には一切データを保存せず、すべて外付けハードディスクに保存して管理するというルールがあった。

次ページ以降はITpro会員(無料)の方のみお読みいただけます。

PPAPより稼いでいる? 動画スター目指す韓国の子供たち

.

 12月10日、韓国のケーブルテレビ局向けの番組や映画を制作するCJ E&M社のスタジオで「キッズクリエイターコンテスト」が開催された。内容は、幼児から小学生までの子供を対象にしたユーチューバ―オーディションのようなものだった。

 1次審査では、各自が企画・出演・制作した動画番組を審査した。そして2次審査では、カメラの前でいつものように番組を進行する様子を見せてもらい、面白い動画が作れそうな子供を選ぶ。そして動画スターになれるよう、映像企画と制作、動画スターになるためのノウハウなどを教え、プロモーションもCJ E&M社が支援する。

写真●キッズクリエイターコンテスト告知サイトのキャプチャー
韓国の番組制作会社CJ E&M社とポータルサイトのNAVERが開催したキッズクリエイターコンテスト。子供を対象にしたユーチューバ―コンテストのようなオーディションで、900人を超える応募者の中から10人の子供を選び、投稿動画の制作技術や企画を教えて動画スターに育てるという企画である

 「キッズクリエイターコンテスト」では、予選に参加した951人の中から1次審査で50人が選ばれた。1次審査に寄せられた動画は、子供がおもちゃの遊び方を紹介する動画、子供が料理をする動画、子供が身の回りの道具で科学実験をする動画が多かった。予選に参加した子供は、27カ月の幼児から小学校6年までと年齢も幅広かった。

 2次審査(オーディション)では最終的に10人が選ばれた。2次審査で選ばれた10人は、CJ E&M社が運営する動画サイトDiaTVや、コンテストのスポンサーだったポータルサイトNAVERで自分のチャンネルを作って動画を流せる。最近、韓国語版のYouTubeでは、子供が主人公の子供向けチャンネルが人気を集めていることから、韓国企業も動画スターになれそうな子供を発掘し、子供目線で情報を提供する子供チャンネルを強化するのが狙いである。グーグルコリアによると、韓国語版YouTubeのキッズ関連コンテンツ視聴時間は、毎年3.5倍増加している。

 今の小学生は、生まれたときから携帯電話やモバイルインターネットがある世代である。テレビと同じぐらい動画サイトを見て育っているので、テレビ番組と動画サイトの番組を区別せず面白いものを観て楽しむようだ。

 複数の韓国メディアによると、YouTubeにある子供向けチャンネルで有名なところは、広告収入だけで月数千万ウォン(数百万円)に及ぶ。「このおもちゃを紹介してほしい」とスポンサーがつくこともあるので、かなりの収入になる。広告収入はYouTubeが45%、制作者が55%の割合で配分するという。

 中でも韓国で知名度が高い子供向けチャンネルは、「ライムチューブ」、「マイリンTV」、「マリヤと友達」である。

次ページ以降はITpro会員(無料)の方のみお読みいただけます。

韓国小中学校でのソフトウエア教育本格化、大学の教育学部でも義務教育に

.

韓国の教育政策を担当する教育部(部は日本の省にあたる)は2016年12月2日、「ソフトウエア教育活性化基本計画」を確定した。2014年2学期から一部小中校で行っていた週1時間のソフトウエア教育を、全学校で2018年から義務化する(中学校は2018年から、小学校は2019年から)。そのために人的・物的インフラを整える。ソフトウエア教育を強化することで、韓国のソフトウエア産業の競争力を確保するというのが主な内容である。

 世界的に人工知能やビッグデータ分析の重要性が高まっていることから、韓国では文系もソフトウエアの基礎を理解すべきとして、小中高校からソフトウエア教育を始めることにした。2014年2学期から、一部の学校でソフトウエア教育(実際にはコーディング教育)を実施したところ、ロボットのソフトウエアをコーディングして動かしてみる、モバイルゲームを作ってみる、といった授業内容が子供たちにとても喜ばれた。

 教育熱の高い韓国らしく、ソウルの富裕層の間では子供を「コーディング塾」に通わせ、学校のソフトウエア授業で高い点数を取るための競争が始まってしまったのは残念だが、それぐらい韓国ではソフトウエア教育が重視されるようになった。

 その背景には、韓国は内需が小さく輸出中心の経済で、今まで輸出しやすいハードウエアばかり重視しソフトウエアはおろそかにしていたことから、押し寄せる人工知能の波に乗り遅れたという反省がある。ソフトウエア教育を通じて「Computational Thinking」ができる人材を養成するという目的もある。Computational Thinkingは、ソフトウエアを組み立てるように論理的に思考し、問題を効率よく解決できる思考能力を意味する。

「教師の教育」も強化

 「ソフトウエア教育活性化基本計画」で大きな変化が生じるのは、小中学校だけではない。教育部は「幼稚園および小・中・特殊学校等の教師資格取得のための細部基準」を改訂し、小学校教師になるための基本履修科目にソフトウエア教育を明記。ソフトウエアの授業ができる程度にならないと小学校教師になれなくなった。中学校の情報科目教師になるための履修科目も細分化し、ソフトウエアの授業ができるようレベルアップすることにした。

 中学校は情報科目の時間に、小学校は担任教師がソフトウエア教育をすることになっている。そのため、韓国全国の教育庁(自治体ごとにある教育を担当する政府機関)は2014年から小学校教師の30%に当たる6万人と、中学校の情報科目担当教師を対象にソフトウエア教育研修を実施してきた。2016年からは情報科目の教師採用を増やし、教師が情報科目を複数専攻する研修も実施することにした。

次ページ以降はITpro会員(無料)の方のみお読みいただけます。

[日本と韓国の交差点] 朴大統領の弾劾実現した、市民の電話攻勢

.

韓国国会が弾劾訴追案を可決した翌日の12月10日、ソウル市中央の光化門広場ではこの日もろうそく集会が行われた。「国民が望む通り、ついに弾劾訴追案が国会を通過した」と喜ぶ人々と、「弾劾は始まりに過ぎない。韓国を変えるためにはこれからが大事。朴槿恵大統領が退陣して法の裁きを受けるまで集会を続ける」と悲壮感を顔に浮かべる人々が入り混じる集会となった。

 弾劾訴追案は12月9日、議員300人のうち299人が参加して採決された。議決するためには200票以上の賛成が必要なところ、野党3党と無所属の票は合わせて172票。与党のセヌリ党がどう出るか注目されていた。

 ふたを開けると賛成234票、反対56票、棄権2票、無効7票。弾劾に賛成するセヌリ党議員が予想より多い結果となった。

 国会が弾劾訴追を議決したため、朴大統領は職務権限を停止された。同大統領が憲法に違反したかどうか、弾劾するかどうかを、憲法裁判所が決める。この間、ファン・ギョアン国務総理が大統領の権限を代行する。憲法裁判所が弾劾を決めれば、朴大統領は大統領職を罷免され、60日以内に大統領選が行われる。複数の韓国メディアは、世論を反映して弾劾を確定する判決を憲法裁判所が1月中には下し、2017年の春頃、大統領選挙が行われる可能性が高いと報じた。

 朴大統領は11月29日、第3次対国民談話で「私は、任期の短縮を含む進退を国会の決定に任せます。国政の混乱と空白を最小限にし、政権を安定した環境の下で移譲できる方案を作ってくれれば、その日程と法の手続きに従って大統領職から退きます」と発言した。国会に進退を任せるというわけだ。

 国民の間では「最後の最後まで他人任せで責任をとろうとしない」と談話の内容を酷評する意見が多く、第3次対国民談話の後、朴大統領を弾劾して今すぐ辞めさせるべきという世論がさらに広がった。

弾劾に反対する議員に抗議が殺到

 弾劾訴追を決定づけたのは、ろうそく集会だけではなかった。国民が国会議員に対して行った「電話攻撃」も後押しした。

 野党・共に民主党のピョ・チャンウォン議員は11月30日、弾劾に反対する議員を自身のSNS上で名指しした。その翌日、ソウル大学院に通う院生が、セヌリ党議員131人について、選挙区と主な活動内容、事務所や議員本人の携帯電話番号をリストアップしてソウル大学生向けのオンライン掲示板に掲載した。

 韓国では選挙期間中、候補者が本人名義で加入した携帯電話番号から有権者の携帯電話にショートメッセージを送信し、支持を求めてもよいことになっている。国会議員の携帯電話番号が自身の携帯電話に残っていた人達が情報を共有し、国会議員の携帯電話番号リストが出来上がった。

 これが瞬く間にSNSで広がり、市民らがセヌリ党議員らに対して「弾劾に反対するのはなぜか」と抗議する電話をかけたり、ショートメッセージを送信したりし始めた。韓国の新聞は、「未読メッセージ2000件」などと表示されたスマートフォンの画面を見て茫然とするセヌリ党議員らの写真を掲載した。市民の電話攻撃の威力はすさまじく、一部議員は携帯電話番号を変更するに至った。弾劾に反対する議員のリストがネット上で話題になって以降、セヌリ党の一部議員は弾劾に賛成すると公式に表明した。

By 趙 章恩

 

 日経ビジネス

 2016年12月

-Original column

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/215834/121300054/

[日本と韓国の交差点] 朴槿恵大統領の談話受け、さらに怒る韓国国民

.

11月29日午後2時30分、朴槿恵大統領が3回目の対国民談話を発表した。5分ほどの談話の内容は「大統領の任期短縮や退陣、全てを国会の決定に任せる」というものだった。

 朴大統領は、「与野党が議論して国政の混乱と空白を最小化し、安定して政権移譲できる方案を作れば、その日程と法手続きに沿って大統領職から離れる」と述べた。

 また、朴大統領はチェ・スンシル一族の国政介入と不正蓄財に関して再度謝罪したが、「個人的な利益を追求したことは一度もない」と検察の捜査内容を強く否定した。朴大統領は談話の発表が終わると、記者らの質問は一切答えず、「近々色々なことの経緯について詳しく話すので、質問はその時にしてほしい」言い残してその場を去った。

 朴大統領の口から「退陣する」という話は出なかった。

韓国民から「談話には満足できない」の声

 地上波放送のSBSが朴大統領が談話を語った直後に街角インタビューを行ったところ、インタビュー応じた市民のほとんどが批判的なコメントをした。

「朴大統領自ら退陣を決めるべき。国会に任せるとは無責任すぎる」
「退陣する意向があるなら、何月何日に辞めますと自分から言うべきである。一方的に国会に丸投げするなんておかしい」
「退陣するのかしないのか、大統領としての最後の決断までも他人任せだとは。ずうずうしいにもほどがある」
「国会で朴大統領の退陣を決めたら従うだろうか。信用できない。退陣するまで抗議する」
「最後まで他人のせいにして、自分の責任ですとは言わないので笑ってしまった」

 毎週土曜日に朴大統領の退陣を求める集会を行っている市民団体らも、朴大統領が談話を発表した直後にコメントを発表した。

「朴大統領は自分の去就についてすべてを国会に任せたと話したが、本当は退陣するつもりはなく任期の最後まで粘るつもりなのだ。朴大統領は検察の捜査で明るみになった本人の不正についても知らないふりを続けている。これは許されない」
「これ以上国民を苦しめたり、国を混乱させたりすることなく、即退陣するよう朴大統領に求める。それが唯一の解決法だ」

 SBSが自社のホームページ上で行ったアンケートでは、談話の内容について「満足できない」が5万1768人、「満足する」が850人だった(午後4時30分時点)。ケーブルテレビのJTBCが同じく自社ホームページ上で行った緊急世論調査では、「朴大統領は無条件に今すぐ辞任すべきである」が4180人、「談話に関係なく弾劾すべき」が2087人、「談話の内容に満足した」は40人、その他が34人だった(午後4時30分時点)。

By 趙 章恩

 

 日経ビジネス

 2016年11月

-Original column

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/215834/112900052/

韓国の大統領スキャンダルでスタートアップが危機?

.

大統領スキャンダルが韓国のIT業界にも大きな影響を及ぼしている。国政に介入し、国家予算を牛耳って不正蓄財した朴槿恵大統領の友人チェ・スンシル氏が、IT分野にも手を出していたからである。

 退陣を求められている朴槿恵大統領の重点事業の一つに、「創造経済革新センター」というものがある。スタートアップを育成して地域経済活性化に役立てることを目標に、全国17カ所にインキュベーションセンターの役割をする建物を建てた。運営費は国と自治体が負担する。スタートアップを公募し、費用の負担なく無料で入居させ、各種技術開発に必要な設備も無料で利用できるようにした。

 創造経済革新センターごとに、映像コンテンツ開発、ドローン開発などとメインテーマを設定し、そのテーマに合わせてそれぞれ大手財閥企業とパートナーシップを結んだ。大手企業は入居したスタートアップ向けに講演会を開いたりアドバイスをしたり、大手企業が必要とする技術をスタートアップと一緒に研究したりと、スタートアップの相談役を務めるようにした。


画面●創造経済革新センターのホームページ
スタートアップ育成のため2015年から全国17カ所で運営している創造経済革新センター。センターごとに大手企業とパートナーシップを結んでスタートアップを支援、地域経済の発展にもつなげるはずのセンターだが、大統領スキャンダルと大きくかかわっていることが発覚した。

 創造経済革新センターの趣旨は立派だが、チェ氏はここも自分の利益のために利用した。創造経済革新センターの役員は、大多数がチェ氏の息のかかった人だった。センターに入居して成功した模範事例としてマスコミが取り上げていたスタートアップは、チェ氏の前夫の弟が副社長を務める会社だ。この会社の代表は結局、投資金詐欺容疑で身柄を拘束された。実態がないにも関わらず、チェ氏との関係から模範事例に仕立てられ有名になったのだ。

 センターのホームページ構築事業は、入札ではなく、チェ氏の知人が設立した会社が全国17センター分を全て受注した。センターが主催するイベントや展示会も全て、チェ氏の知人が経営する会社が受注した。そのほかにも、まるでセンターがチェ氏のビジネスのために存在したかのような疑惑が次々に浮上している。

 早速国会では、未来創造科学部(情報通信政策を担当する省庁、部は省に当たる)が申請した創造経済革新センターの2017年度国家予算約558億ウォン(約50億円)の審査を保留した。国会では、事業成果がないまま巨額の予算を使っているとして、創造経済革新センターの成果を具体的に示すよう要求した。

 ソウル市は、自治体が負担することにしていた2017年度のソウル創造経済革新センターの運営予算20億ウォン(約1.8億円)を全額撤回した。全羅南道(道は日本の県にあたる)も、同地域にある創造経済革新センターの2017年運営予算10億ウォン(約9000万円)を全額撤回した。他の自治体でも同様の動きが出ている。

今までは、朴大統領のキャッチフレーズでもあった「創造経済」に誰も文句を言わなかったが、大統領スキャンダル以降は「創造経済という得体のしれないものに予算をつぎ込んでいた」と国会も自治体も自省する雰囲気になっている。

 大統領スキャンダルをきっかけに、創造経済革新センターを廃止するという話まで出ている。しかし問題は、チェ氏と何も関連がないスタートアップも大勢入居していることである。「センターに入居しているという理由だけで、チェ氏と関係があるのではないかと白い目で見られた」と嘆くスタートアップの代表もいたほどである。

 国会と自治体が創造経済革新センターに背を向けると、投資家やベンチャーキャピタルもセンターに入居しているスタートアップに関心を示さなくなった。

 未来創造科学部は、「センターに入居して3年目に当たる2017年から成果を見込めるスタートアップもいる。世界的にスタートアップが重視されている中、支援を断ち切ってはいけない。少なくとも2017年まではセンターの運営を続けるべき」と主張している。

 ただし韓国のIT業界は、今回の一軒を「災い転じて福となす」になる可能性もあるとみている。国と自治体の支援金がなくなると、本当に競争力があり需要があるセンターとスタートアップだけが生き残る。政府の支援金でスタートアップを立ち上げ、無料でセンターに入居し、政府の支援金が切れるとビジネスをやめて、また支援金がもらえる分野でスタートアップを立ち上げることを繰り返す「支援金ハンター」がいなくなることで、本物のスタートアップだけが残る可能性があるからだ。

 それにしても終わりが見えない大統領スキャンダル。これ以上純粋にがんばっているスタートアップに飛び火しないよう、早く解決してほしいものだ。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

日経パソコン

2016.11.

-Original column

http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/549762/113000121/?itp_leaf_index


中国の会社からプレステVRまで──韓国最大のゲームショー「GSTAR」に見られた変化

.

 毎年、大学就学能力試験(韓国の大学入試のための共通試験)が終わる頃に開催される韓国のゲームショー「GSTAR」。2016年は11月17~20日、釜山のBEXCOで開催された。今年の観覧者数は、歴代最多の21万9267人。昨年の20万9617人を1万人近く上回った。参加企業は28カ国600社だった。

 GSTARはB2Cのゲームの新作公開と体験、eスポーツ大会、B2Bのゲーム販売と投資誘致をサポートするゲーム投資マーケット、ゲーム業界の求人のための合同会社説明会が一堂に会する韓国ゲーム業界最大のイベントである。例えばeスポーツ大会に関しては、韓国ではスポーツリーグのようにオンラインゲームの対戦をケーブルテレビなどが中継するほど人気があり、今回のGSTARでは「FIFA ONLINE 3アディダスチャンピオンシップ」や「League of Legends KeSPA Cup決勝戦」などが開催された。

NEXONが過去最大級の展示をした理由

 歴代最大のブースで新作ゲームを公開したNEXONは、新作ゲームだけで35種を展示した。内訳はPC向けオンラインゲームが7種、モバイルゲームが28種だった。この内19種はブースでプレイできるようになっていた。新作の数も歴代最多公開だったが、会場の4分の1をNEXONが占めたことで、韓国メディアの間で「GSTARではなくNEXSTARと呼ぶべきではないか」という話まで出たほどだった。

 NEXONがここまで大規模な展示をしたのは理由があった。

 2016年上半期、NEXONを立ち上げた創業主のキム・ジョンジュ会長が、検察上層部にNEXONの株を不正に譲渡し大儲けさせたとか、現在退陣を求められている朴槿恵大統領の元秘書の妻が所有するビルを時価の3倍近い高値で買ってあげたといったことが検察の捜査で発覚した。その影響で、キム会長はNEXONの取締役を辞任した(NEXONは日本に本社がある)。「ベンチャー神話1世代」と言われ尊敬されていたキム会長だったが、韓国内では「実は権力層に賄賂を渡して癒着していたおかげでNEXONも成功できたのではないか」という視線を向けられるようになってしまった。

 NEXONのイメージも当然下落した。そこでNEXON KOREAはGSTARで大々的に新作を公開することで負のイメージから脱皮を狙った、というのが韓国メディアの共通した見方である。実際にNEXON KOREAのパク・ジウォン代表理事も、GSTAR会場で「上半期には社内で色々とよくないことがあったが、これを克服するためゲーム会社の基本であるゲームに集中する」とコメントした。

次ページ以降はITpro会員(無料)の方のみお読みいただけます。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

日経パソコン

2016.11.

-Original column

http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/549762/112300120/?itp_leaf_index