韓国メディアが見たMWC2016、スマホ新機種「G5」絶賛でLGは株価上昇、サムスンはVRで市場開拓 [2016年2月26日]

.

韓国でも大注目のMWC2016だが、今年はなんといってもLG電子のスマートフォン新機種「G5」が話題をさらった。

 「G5」が、韓国だけでなく海外メディアにも「新しいスマートフォン」と好評を得たことで、MWC2016開幕後LG電子の株価が上昇したほどだった。2月22日LG電子の株価は前日より2.8%上昇、LG電子の持ち株会社であるLGは6.03%、LG電子にスマートフォンの部品を供給するLGイノテックは2.82%、LGディスプレイ社は1.52%株価が上昇した。LG電子にG5のメタルケースを納品したアイエムテックは、株価が前日より19%も上昇した。

 韓国の証券会社らは、「スマートフォンの中身はもちろん、ハードウエアまでイノベーションしたところが株価を押し上げた。LG電子はスマートフォンの限界を超えてみせた。G5は1060万台は売れ、Gシリーズの歴代最多販売台数を更新するに違いない。モジュール型スマートフォンという、他の会社には真似出来ないビジネスモデルを作った」と高く評価した。

 一方、新機種「S7」を発表したサムスン電子の株価には、あまり変化はなかった。韓国メディアは「S7はS6に比べ、防水機能の他にこれといって斬新な機能がない。期待しすぎた」とまで酷評した。

 韓国のユーザーにとって、LG電子のイメージはいつも控えめ、マーケティングが下手な職人グループという感じである。それが今年のMWCでは、サムスン電子と同日、5時間前に新機種を公開し、話題をさらった。


LG電子「G5」(出所:LG電子)
MWC2016でLG電子が公開したスマートフォン新機種「G5」。モジュール型スマートフォンといって色々な部品を装着して違う機能を楽しめるのが特徴だ。

 驚いたのは、スマートフォンにモジュールを装着させることで、スマートフォンが色々なデバイスに早変わりするところだ。バッテリーの部分を動かして着せ替えるだけで、デジタルカメラの形に変わったり、オーディオになったりする。オーディオは、世界的に有名なBang&OlufsenのカジュアルブランドB&O PLAYとのコラボ。32ビット、384kHzの音源(ハイレゾ)も再生できる。

 G5本体もスマートフォンも素晴らしい。通常の78度画角カメラと135度広角カメラのデュアル搭載。自撮り棒がなくても顔がドアップにならないのはもちろん、より広い風景を写真に収められる。一般に、人の視野は平均120度と言われており、135度の広角というのは自分の目で見るより広い。

 さらに、Pop-out Pictureといって、二つのカメラで同時に撮影をし、写真を重ねて1枚にする機能もある。写真をより立体に見せる効果があるので、アート感覚で自分なりの作品を作ることもできる。スマートフォンで写真を撮ってSNSに載せるのが大好きな人にとって、「G5」はこの上ない端末である。


次ページ: サムスン電子は「S7」が「G5」に押され気味になると、すぐ話題をVR(仮想現実)に変えた。2月23日から、韓…



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
-Original column

[日本と韓国の交差点] 韓国で親不孝訴訟! 「贈与した財産を返せ」

.

 2月8日は韓国のお正月(旧正月)だった。家族が集まる旧正月とお盆は「名節症候群」といって、家族行事に疲れた主婦がストレスのために寝込むことがあるほど大変な連休である。お正月になると韓国のテレビは決まって家族愛、親孝行をテーマにした番組を放映する。

 ところが今年は、親不孝に関する番組が増えた。2015年末に「親不孝訴訟」が話題になったからだ。親から財産を贈与してもらったにもかかわらず親をしっかり扶養しなかった息子に対し、親に財産を返すよう大法院(最高裁判所)が命じた。

 この親不孝訴訟は「契約」が存在したため息子は親に遺産を返すことになった。親不孝訴訟の原告である父親は2003年、20億ウォン(約2億円)相当の家を息子に贈与する代わりに、息子は親と同居して親を十分に扶養するという内容の「受贈者負担事項履行覚書」を作成し、息子と合意していた。覚書には契約内容を履行しなかった場合は契約を解除するという項目もあった。

 親不孝訴訟で裁判所は、「受贈者負担事項履行覚書は民法561条で定める負担付贈与にあたるため、息子が覚書通りに親を扶養しなかった場合は贈与を取り消すことができる」と判断した。

 原告である父親は、「(被告である)息子は生活費をくれただけで一緒に食事もしなかった。親の看病を姉(原告の娘)と介護士に任せた。親を看病しないどころか介護施設に入れようとした」として訴訟を起こした。もし原告が契約なしで財産を贈与した場合、被告が原告の扶養要求を断っても何も言えない。「家をもらう代わりに親を扶養する」という覚書があったからこそ訴訟できた。

「親孝行契約」を結びたがる富裕層

 韓国のケーブルテレビ局JTBCの2月5日付報道によると、同様の「親不孝訴訟」は2002年には68件だったものが、2014年には262件に増えた。韓国の民法974条は親族間の扶養義務に関して、本人の直系家族とその配偶者を扶養する義務があると定めている。

 JTBCは親不孝訴訟が増加した原因は高齢化にあると分析した。韓国人の平均寿命は1971年の61歳から2014年の82歳に伸びた。親は「子は当然自分の面倒を見るべき」と考え、子は「数十年にもわたって親の生活費や医療費、介護費を払い続けるのは厳しすぎる」と考える。親世代と子世代の間に意識のずれが生じていることが、親不孝訴訟として表われたということだ。

 朝鮮日報や公営放送KBSによると、お正月に家族が集まった際に、条件付きの贈与契約、いわば「親孝行契約」を結びたがる富裕層が増えているという。韓国の銀行は富裕層に対し法律相談や税金相談などを無料で提供している。お正月前に親孝行契約書を用意したいと問い合わせる50~70代が増えたという。

 親孝行契約は「条件付贈与」として法的効力がある。決まった様式はないが、何を贈与して、その代わり何をすればいいのか、約束を守らなかった場合はどうするのか、この3点を具体的に明記すれば契約として認められる。

 例えば「親の財産である○○マンションを贈与する代わりに、子は親と同居し月1回は一緒に食事をする。生活費として毎月○○ウォンを親に支給する。約束を守らなければ財産を取り上げてもいい」という内容を書いて印鑑を押せば十分だという。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。





By 趙 章恩
 日経ビジネス
 2016年2月19
-Original column

点字が読めるスマートウォッチ登場、MWC2016では韓国のスタートアップに注目 [2016年2月19日]

.

今年のMWC2016は、韓国のスタートアップに注目すると面白い発見がありそうだ。

 韓国のキャリアSKテレコムが投資したスタートアップ「DOT」が、点字スマートウォッチをMWC2016(Mobile World Congress)で公開することにした。MWC2016は、2月22日にはスペインで開催される世界最大規模のモバイル展示会である。

 点字スマートウォッチは、SNSやショートメッセージ、メールなど届いたメッセージを点字にして表示する腕時計型端末。SKテレコムとDOTは、「世界初」の点字スマートウォッチと宣伝している。今まで時間を教えてくれる点字時計はあっても、メッセージを点字に変えてくれるスマートウォッチはなかったという。

 点字スマートウォッチには30本のピンが内蔵されていて、このピンが動きテキストメッセージを点字に変える。今までは視覚障碍者のためにSNSのメッセージやメールのテキストを音声で読んでくれる、TTS(Text-to-Speech)が使われていた。

「Dot」の点字スマートウォッチ
韓国のスタートアップ「Dot」が制作した点字スマートウォッチ。30本のピンが動き、点字でメッセージを読んだり電子本を読んだりすることができる

 DOT側の説明によると、視覚障碍者らは「家にいるときはいいが、外でメッセージを確認する場合、他の人にも聞こえてしまうので嫌だ」「いちいち立ち止まって安全な場所を確保してイヤホンを取り出して聴くのが不便」「歩きながらイヤホンでメッセージを聞くのは非常に危険なのでしたくない」という不満を漏らしていたと言う。視覚障碍者がプライバシーを守りながら、電車の中や立ち止まった時にさらっとメッセージを確認できるようにするにはどうしたらいいのか考えた結果、点字スマートウォッチを思いついたのだという。

 点字スマートウォッチには、点字を教育する機能もついている。DOTが調べたところ、世界中で出版された本の内、点字本になっている割合は1%に満たないそうだ。電子本を点字に変えることができれば、点字本がなくても点字で本が読めるので、視覚障碍者には嬉しい機能である。


次ページ: 日本で点字のディスプレイを見たことがあるが、30万円近くする高額商品だった。韓国でも点字で読める電子本端末、…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
-Original column

「line.co.kr」をめぐる訴訟、LINEが他社のドメインを奪った?それともサイバースクワッティング? [2016年2月15日]

.

 韓国では、「line.co.kr」の所有権をめぐる訴訟が大きな話題になっている。

 2月9日、ソウル中央地方法院(法院は裁判所にあたる)は、「line.co.kr」のドメインを2010年から所有しているA氏に対し、「line.co.kr」の所有権を認めないという判決を下した。

 韓国インターネット住所紛争調整委員会は2015年1月、LINEコーポレーションが紛争調整を申し込んだことから「line.co.kr」に対する審議を行った。同委員会は、「LINEコーポレーションがドメインの譲渡を願った際に、A氏は10万ドルを要求した。A氏がこのドメインを登録し保有、使用するのは、LINEコーポレーションのドメイン登録・保有・使用を妨害したり、第3社に販売したりして不当な利益を得る目的であることが明白」だと判断した。

 つまり同委員会は、A氏が自分のホームページを運営するためではなく、サイバースクワッティング目的で「line.co.kr」を所有していると判断し、強制的に所有権を抹消するという処置をとった。A氏は、所有権抹消を取り消すためLINEコーポレーションを相手に訴訟を起こしたが、ソウル中央地方法院は抹消処分は正しいという判決を下したのだ。A氏は裁判で「lineとは線という意味である。車線塗色業者(道路に車線を引く業務を担う)であり、先にドメインを登録した私の会社が使うのが正当である」と訴えた。


LINEの韓国語ホームページ
LINEのサービスが始まる1年前の2010年にline.co.krを登録した人のドメイン所有権を抹消する判決が出て、「大手企業がドメインを奪った」とネットが炎上した。しかし裁判所はサイバースクワッティングと判断した。

 サイバースクワッティング(cybersquatting)は文字通り、サイバー上に居座ることで、ホームページを運営する目的ではなく、企業に高い値段で転売する目的でドメインを先に登録することを意味する。韓国インターネット住所紛争調整委員会は、このような行為を厳しく取り締まっている。サイバースクワッティングとみなされた場合は、同委員会が審議を行う。所有者に弁明の機会を与え、正当な理由を説明できなかった場合は、所有権を抹消する処置を取っている。

 ドメイン紛争は韓国ではよくあることで、2015年11月には日本にも就航している済州航空のドメイン紛争が起こった。当時、韓国インターネット住所紛争調整委員会は、「jejuair.co.kr」の所有者に対し、ドメイン所有権を済州航空に移転すべきと判断した。

 韓国には「インターネット住所資源法」という名の法律もある。ホームページを運営する目的がないのに、ドメインを先に取得したり、ドメイン名で不当な利益を得ようとしたりすることを禁じている。


次ページ: 韓国のポータルサイトNAVERの日本法人が、無料メッセンジャー「LINE」のサービスを始めたのは2011年。…



趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
-Original column

[日本と韓国の交差点] 開城工業地区の稼働中断は米国の圧力だった?

.

韓国の世論は北朝鮮のミサイル発射にあまり関心を示さなかった(関連記事「北朝鮮がミサイル発射でも韓国はいつものお正月」)。だが、開城工業地区の稼働が中断されたことはとても敏感に受け止めている。韓国経済に与えるダメージが大きいからだ。



 韓国メディアは「韓国と北朝鮮の平和と経済交流を象徴する開城工業地区の稼働が中断したことは、南北関係が70年代に戻ったということだ」と報じた。韓国のSNSやオンライン掲示板には「南北(韓国と北朝鮮)関係の最後の砦ともいえる開城工業地区がなくなって大丈夫なのか」という書き込みが増えている。

 開城工業地区はもともと韓国の首都圏を狙う北朝鮮の軍事施設があった場所である。開城工業地区は軍事分界線から2.5Kmしか離れておらず、ソウル市内から車で1時間程度で行くことができる。1998年に進歩派の金大中大統領が就任して以降、南北の交流が活発となり、経済交流も始まった。開城工業地区は2003年に着工、2006年から韓国企業が進出し、北朝鮮の人を工員として雇っていた。

 これまで韓国企業の出入りが禁止されたり、工場の稼働が中断されたりしたことはあるが、どれも北朝鮮による一方的な措置だった。韓国が開城工業地区の稼働を主体的に中断したのはこれが初めてである。

韓国政府の方針が一転

 韓国政府はこれまで、稼働を中断することはないと何度も明言してきた。北朝鮮が水爆実験を行った直後の1月12日にも、統一部は「開城工業地区は稼働を続ける」と発表していた。

 しかし。朴槿恵大統領が2月9日、米・日の首脳と電話会談し、北朝鮮に対する制裁を強化することで合意。翌10日、キム・クァンジン国家安保室長は開城工業地区の「稼働を無期限で全面的に中断することを決定した」と発表した。

 地上波放送MBCのニュース番組は2月13日、「開城工業地区の全面稼働中断は大統領官邸が決めたことで、(朴大統領と米・日の首脳との電話会談によって開城工業地区の稼働中断が決まったといわれているが)そうではない」と報じた。

 これに対して、今度は北朝鮮側が11日、開城工業地区を軍事統制区域に指定し、韓国側の人員を全員追放した。突然の事態に、同地区にいた韓国企業の社員らは、原料と完成品を工場に残したまま、手ぶらで韓国に戻るしかなかった。


ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。




By 趙 章恩
 日経ビジネス

 2016年2月17
-Original column

[日本と韓国の交差点] 北朝鮮がミサイル発射でも韓国はいつものお正月

.

 2月7日の午前9時半ごろ、北朝鮮が「人工衛星の打ち上げ」という名目で南に向けて長距離弾道ミサイルを発射した。韓国メディアは北朝鮮の情勢に関する情報を速報し続けるとともに、状況を分析する特番を流した。北朝鮮が核実験を実施してから1カ月あまり。「今度はミサイル発射だ」とメディアが騒ぐのとは裏腹に、ソウル市内はいたって普通のお正月(旧正月)を過ごした。



 朝鮮日報や聯合ニュースなどによると、北朝鮮がミサイルを発射した7日の午後、全国の高速道路は帰省ラッシュで大渋滞だった。遊園地も連休らしく大にぎわい。北朝鮮からほど近いスキー場にさえ2万人を超える人が集まった。

 延坪島にも普段と変わらず連絡船が運航した。ここは、2010年11月に朝鮮人民軍が砲撃を加え犠牲者が出た島だ。北朝鮮を見渡すことができる江原道(韓国の「道」は日本の「県」に相当)の複数の展望台も普通に営業している。韓国本土より北朝鮮に近い白翎島の周辺だけは北朝鮮がミサイルを発射したのを受けて避難所を開放した。

 ミサイルの1段目の推進体が落ちてくる可能性があると言われた西海(黄海)沿いの群山市と済州周辺では、船舶が港に緊急避難するなど緊張感が漂う場面があった。ただし、お正月連休で漁民の多くは自宅にいたため被害はなかった。韓国軍が北朝鮮のミサイルから落ちたとみられる物体を無事に回収した。

「北朝鮮がまたやりましたね」

 ソウルにある繁華街の明洞は春節連休を韓国で過ごす中国人観光客でごった返した。そんな中、テレビのニュース番組が行き交うソウル市民に北朝鮮のミサイル発射についてどう思うかインタビューしていたが、ほとんどの人が重く受け止めてはいない様子だった。

  • 「北朝鮮がまたやりましたね」
  • 「いつものことだから不安はない」
  • 「北朝鮮は毎年挑発を繰り返しているのでなんとも思わない。北朝鮮との間で戦争が起きるなら、もうとっくに起きているはず」
  • 「北朝鮮は関心を持ってもらいたいのかな」

 一方、韓国の政府省庁と軍は非常勤務体制に入り、北朝鮮に対して厳しい姿勢を見せている。

  北朝鮮と韓国の陸上の軍事境界線付近を見渡すことのできる坡州市の臨津閣展望台では、北朝鮮を故郷とする人たちが集まり、先祖に礼をする茶禮(チャレ)を行った。これに参加した韓国統一部(北朝鮮対策を担当する省庁)のファン・ブギ次官は、「北朝鮮は核兵器とミサイルを開発した。時代に逆行する間違った道を進んでいる」と強く批判するコメントをした。

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。


 


By 趙 章恩
 日経ビジネス
 2016年2月10
-Original column

[日本と韓国の交差点] 「24歳全員に一時金1万円」はバラマキか

.

 2月1日、京畿道(「道」は日本の「県」に当たる行政単位)城南市のイ・ジェミョン市長と、与党セヌリ党のキム・ヨンナム議員の討論が韓国のラジオ番組で流れて大きな話題になった。城南市が新たに始めた福祉政策は地域住民に大歓迎されている一方で、セヌリ党と保健福祉部(省)に反対され続けている。この政策の何が問題なのかを討論する番組だった。

 ソウル市から南へ車で1時間ほど離れたところにある城南市は、ソウル並みに人気の地域だ。中間層のベッドタウンとして人気の高いマンション街や、IT企業が集まるベンチャー街などがある。

 同市は1月20日、全国で初めて青年に無条件で交付金「青年配当(青年交付金)」を支給することにした。青年の就職活動を応援するとともに、地域経済に貢献するのが目的である。「市が地元の若者に投資をした」と大いに話題になった。

 対象は、1991年1月2日から1992年1月1日の間に生まれた24歳で、同市に3年以上居住した(住民登録が必要)人。1万1300人に上る。全員に一人当たり12万5000ウォン(約1万3000円)を支給する。支給するのは現金ではなく同市の小規模商店でしか使えない地域金券だ。

 初日は開始から3時間の間に2000人が給付金を受け取った。1月25日時点で対象者の9割近くが受領したという。

 交付金を受け取った青年らはSNSに記念写真を投稿。「12万5000ウォンで買いたかった本を買う」「就職できず親を心配させているので交付金を使って家族みんなで食事したい」「お正月(旧正月)の法事用の買い物をするときに金券を使って親孝行したい」など、交付金の使い道についての書き込みが続いた。

 これに対し、全国の若者らが「羨ましい」とコメントを書き込んでいた。

朴槿恵大統領は「ポピュリズム」と批判

 ただし、城南市の「青年配当」は予定通りに進んだわけではない。政府から反対され、当初予定していた金額(3カ月ごとに25万ウォン=約2.8万円)の半額しか支給することができなかった。

 当初は3年以上城南市に居住した19~24歳に年間100万ウォン(約11万円)分の地域金券を支給する計画。手始めとして、2016年にまず24歳を対象に支給する目論見だった。

 城南市は2015年10月に市議会で青年手当支給計画を定め、保健福祉部(部は省)に協力を求めていた。しかし保健福祉部と京畿道は、城南市が政府と事前に協議せず、正式な手続きを踏まないまま青年配当を支給したとして予算の執行停止を求めている。

 朴槿恵大統領は2016年の新年演説で城南市の青年配当を「(4月の)選挙を控えた善心性政策(ポピュリズム)」と批判した。これに対してイ城南市長は自身のFacebookで、次のように反論し、政府と戦う姿勢を見せている。
「青年配当は市議会が認めたもので、2016年分として113億ウォン(約12億円)の予算を確保した。地域住民の税金を節約して地域に還元するのがなぜダメなのか理解できない」 「自治体の予算はいつだって足りない。限られた予算をどこに使うかは哲学と意志の問題である。自治体の福祉政策を中央政府が反対するのは地方自治を棄損する越権行為である」

ここから先は「日経ビジネスオンライン」の会員の方(登録は無料)のみ、ご利用いただけます。ご登録のうえ、「ログイン」状態にしてご利用ください。登録(無料)やログインの方法は次ページをご覧ください。




By 趙 章恩

 日経ビジネス
 2016年2月3
-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/215834/020200031/

日本のハッキング大会で韓国チームが優勝、専門教育センターの成果 [2016年2月8日]

2016年1月31日、東京電機大学東京千住キャンパスで行われた「SECCON2015」の決勝大会で、韓国の「Cykorkinesis」チームが、2位と大きな差を開けて優勝した。SECCONは、ハッキングと防御の技術を競いあうコンテスト。決勝大会には、世界から18カ国(チーム)が参加した。

 SECCONの目的は、世界の情報セキュリティ分野で通用する実践的情報セキュリティ人材の発掘・育成。世界に通用するセキュリティ人材を輩出し、日本の情報セキュリティレベルを世界トップレベルに引き上げることを目標としている。

 大会の後援は、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部、サイバーセキュリティ戦略本部、警察庁、総務省、公安調査庁、文部科学省、経済産業省など、セキュリティに関する主な政府機関が揃っている。協賛もカスペルスキー、トレンドマイクロ、一般財団法人日本情報経済社会推進協会など、セキュリティ専門企業・機関が名前を並べた。

韓国情報技術研究院ホームページ
日本で行われたセキュリティ技術を競う国際大会SECCONで優勝したのは韓国チームだった。政府省庁傘下機関である韓国情報技術研究院のセキュリティ専門家養成プログラム修了生が参加したチームであるのが特徴である。

 優勝した「Cykorkinesis」は、2015年8月のDEFCON23、11月のTrendMicroハッキング大会、12月台湾で行われた2015 HITCON CTFでも優勝した強者で、2016年も世界で最も権威のあるセキュリティ技術コンテストDEFCONに出場する権利を獲得した。2位は台湾の217チーム、3位はアメリカの「Shellphish」、4位は日本の「katagaitai」、5位はルーマニアの「PwnThyBytes」だった。

 「Cykorkinesis」には、韓国情報技術研究院が運営するサイバーセキュリティ専門家養成プログラム修了生が参加しているのが特徴である。


次ページ: 韓国情報技術研究院は政府省庁の傘下団体で、情報化専門技術人材養成、知識情報セキュリティ産業高度化支援による国…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
-Original column

北朝鮮の仕業?悪性コード入りメール急増、韓国政府が注意呼びかける [2016年1月29日]

.

 1月25日、韓国の通信政策を担当する省庁の未来創造科学部(部は省にあたる)は、サイバーセキュリティ危機警報を「正常」から「関心」に一段階引き上げた。同部は、北朝鮮の水爆実験以降、ハッキングを試みる悪性コード入りメールが急激に増加しているとして、ネットユーザーに注意を呼び掛けた。サイバーセキュリティ危機警報は、「正常、関心、注意、警戒、深刻」の5段階となっている。

 韓国メディアは、「北朝鮮の仕業と思われるサイバー挑発が相次いでいる」と報道した。未来創造科学部は、「北朝鮮の仕業と断定するのは難しいが、北朝鮮の水爆実験以降サイバー攻撃が急増したことから、その可能性(北朝鮮の攻撃)もあるとみている」とコメントした。  悪性コード入りメールは、韓国の外交部、統一部といった主な政府省庁の職員やポータルサイトの管理人と詐称して、メールの添付ファイルを開けるよう誘導する。また最近は、政府が行う世論調査だと偽り、はい・いいえで選択して簡単に返事できるメールを送信。返事をした人にだけ、2回目の世論調査として悪性コード入りメールを送る手法も登場した。悪性コード入り添付ファイルを開けると、ハッキングが始まりパソコンの中にある資料を盗み取る。


写真●韓国インターネット振興院KRCERT
インターネットセキュリティを扱う政府系研究センターである韓国インターネット振興院KRCERTのホームページキャプチャー。左上の青いボックスに「関心」と書いてある。韓国政府は、サイバー危機警報を「正常」から「関心」に一段階引き上げた。北朝鮮の水爆実験以降、悪性コード入りメールが急増加したとしてネットユーザーに注意を呼び掛けた。

 中には、「北朝鮮の水爆実験に関する世論調査」という内容で政府関係者に送られた悪性コード入りメールもあったとか。いかにも政府機関が行いそうな世論調査のタイトルをつけてメールを見るよう誘導する。最も多いのは、会社員をターゲットにした「人事関係の知らせ」と偽った添付ファイルである。

 韓国の政府機関はサイバー攻撃に備え、政府省庁と公共機関に勤める職員と協力会社の社員に、省庁内では無料Webメールの使用を避け、スマートフォンにもキャリアが配布しているセキュリティプログラムをインストールし、疑わしいメールは開けないように呼び掛けた。



次ページ: 「サイバー挑発」は悪性コード入りメールだけではない。韓国メディアは、SNSやオンライン掲示板に事実とは異なる…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
-Original column

[日本と韓国の交差点] 韓国が「北朝鮮人権法」を制定へ

.

今年は暖冬だな、なんて思っていたら、韓国に寒波がやってきた。ソウル市を流れる漢江は凍り、金浦市の海には流氷が流れついた。1月24日は気温が氷点下18度まで、25日も氷点下14度まで下がった。酷寒の寒さである。

 この寒さにもかかわらず熱気あふれる場所がある。韓国の国会だ。1月25日、韓国メディアは一斉に「北韓(北朝鮮)人権法制定について、11年の議論を経て与野党が暫定合意した」と報じた。

 「北韓人権法」は、当時、与党だったハンナラ党(セヌリ党の前身)議員らが2005年に発議したもの。米国が2004年に「North Korean Human Rights Act of 2004」を制定したのに触発されて、議員たちが行動を起こした。米国の法律は、北朝鮮に対して人権の改善を求めることに加え、北朝鮮から脱出した人を国際的に支援するという内容である。

 北韓人権法の主な内容は次の通り。

・南北の統一政策を担当する韓国の省庁「統一部」(韓国の「部」は日本の「省」)の下に北朝鮮人権諮問委員会を置く。委員は10人で、与野党が推薦する。
・統一部長官が同委員会を主導して北朝鮮人権基本計画を立案し、国会に報告する。
・北韓人権財団を設立して北朝鮮の実態調査と人道的支援活動を行う。北朝鮮に人道的支援をする団体を韓国政府が支援する。
・人道的支援が一般市民に行き届いているか、その過程・分配内容を監視する。
・北朝鮮人権記録保存所を統一部内に設置する(後に法務部に移管)。北朝鮮政府が行う人権侵害行為を記録して保存するもの
・外交通商部は新たに北朝鮮人権大使を任命し、関心を持ってもらえるよう国際的に呼びかける。

 北朝鮮人権記録保存所の設置は、南北統一が実現した時に、北朝鮮で人権を侵害した責任者を国際刑事裁判所に訴追する準備をするための措置だ。集めた記録は法務部に移管する。こうした記録の保存は、かつて西ドイツが東ドイツに対して行った事例を参考にしている。

 日本も2006年、「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律」を制定している。

保守派と進歩派で意見が合わず11年

 しかし、韓国だけは今日まで、北朝鮮の人権侵害に関する法律がなかった。理由は、「韓国が「北韓人権法」を定めると北朝鮮が反発し、南北の関係が悪化する」と恐れた進歩派が同法の制定に反対していたからだ。また一部の市民団体が「北韓人権法は北朝鮮の人権を改善することより、韓国内で活動する保守団体に予算を付けるための法律に過ぎない」と批判し続けたことも影響した。

 これに対して現在与党のセヌリ党(同法を発議したハンナラ党の後身)は、以下の団体を支援することで、海外の目を気にする北朝鮮に圧力かけることができると反論していた。

・北朝鮮の人権実態調査と政策を立案するための韓国の団体
・北朝鮮から脱出した人が北朝鮮に強制送還されないよう守る韓国の団体
・北朝鮮の人権侵害を世界に知らせる活動をする韓国の団体

「北韓人権法」をめぐり、国会では「北朝鮮に圧力を加えるために必要」という意見と「北朝鮮は外国なので、韓国が人権法を制定して外国に対して強制することができるのか」「北朝鮮が内政干渉であると受け取る可能性がある」「米国と日本が制定した北朝鮮人権法はどのような成果があったのか。北韓人権法を制定しても実効性がない」という意見がぶつかり、なかなか結論が出なかった。

 それが2016年になって韓国の与野党が合意、29日に開く国会本会議で採決することが決まった。ここ数年、色々な支援を実施してきたにもかかわらず韓国と北朝鮮との関係は改善していいない。その間に、国際的には難民――脱北者だけでなく、シリアから欧州に向かう難民も含めて――の人権問題が浮上した。韓国内でも「対北朝鮮戦略を変更する必要がある」という声と、「普遍的な価値である人権問題についてもっと議論すべきである」という声が大きくなり、進歩派も同法の制定に反対ばかりしていられない雰囲気になった。

 また、北朝鮮が水爆実験を実施して以降、韓国内では北朝鮮に対して厳しい姿勢を取るよう望む声がさらに大きくなっている。4月に実施される国会議員の総選挙を控え、与党も野党も、世論を強く意識せざるを得ない。


人権が先か、南北関係改善が先か

 ただし、同法の目的に関する条文をどうするかの議論はまだ残っている。

 1月25日付の朝鮮日報によると、与党のセヌリ党は北朝鮮における人権問題を改善することに焦点をあてており、「(韓国)政府は北韓の人権を増進するため努力すると共に、南北関係の発展と韓半島(朝鮮半島)に平和を定着させるためにも努力しないといけない」という条文にすべきと主張する。一方、野党のドブロ民主党(新政治民主連合が党名を変更)は南北の関係改善に焦点をあてており、「北韓の人権を増進させる努力は、南北の関係改善と韓半島における平和定着努力と同時に推進すべきである」と主張している。人権増進がメインでその次に南北の関係改善が来るのか、人権増進と南北の関係改善は並行するのか、微妙な違いである。

 統一部は「北朝鮮の人権問題と南北の関係発展を関連づけるのは不適切である。人権増進と南北の関係発展は並行して進まなくてもかまわない」として与党・セヌリ党の肩を持った。

核を巡って強硬に出た朴政権

 ソウル大学統一平和研究院のソ・ボヒョク教授は、ハンギョレ新聞とのインタビューやコラムで、「(北韓人権法に関して)北韓(北朝鮮)の人権問題改善は、南北関係の発展、平和の定着と当然一緒に議論されるべきだが、与野党はこれに合意できていない。人権だけでなく、平和、和解、人道主義も国際社会おいて重要である。与党が人権と平和の相互依存性を認めない場合、この法律は『人権根本主義を口実に北韓を圧迫するための法律』という疑惑が生じるのを避けることはできない。人権は北韓という空間ではなく、人を中心に考えるべきで、北韓の人権は北から脱出した人を含め、韓半島すべての居住民の平和についてアプローチすべき法である」と与党のセヌリ党や統一部とは違う見解を述べた。

 複数の韓国メディアは、北韓人権法の目的を定める条文がセヌリ党の案になるにしても、野党・ドブロ民主党の案になるにしても、北朝鮮は「韓国が(北朝鮮を)吸収統一しようとしている」として反発するだろうと予測した。

 韓国政府は北朝鮮に対し厳しい態度を取り続けている。朴槿恵大統領は1月22日、外交安保関連の業務報告の場で、「8年間開催できなかった6カ国協議だけでなく、(北朝鮮を除外した)5者会談を試みるなど多様な方法を探すべき」と発言した。この発言は6カ国協議無用論として広まった。

 中国の洪磊報道官は22日、「6カ国協議を早期に再開すべき」として、朴大統領の発言に反対する姿勢を明確にした。青瓦台(大統領官邸)はこの後すぐ「6カ国協議をやめるわけではない」と書面で釈明した。

 1月25日付文化日報は、「中国ばかり見つめていた朴政権の北核政策が岐路に立たされた」と報道した。1月24日付のキョンヒャン新聞も「(5者会談を提案した朴大統領発言は)韓中関係に相当な悪影響を与えた。韓国の北核外交に大きな負担は避けられない(課題が生じることは避けられない)」「(22日の発言で)朴大統領の本音がばれた。朴大統領は北韓との対話に拒否反応を示していて、6カ国協議にも不信を抱いている」と報じた。

 このような雰囲気の中、北韓人権法制定は韓国と北朝鮮の間に良い変化をもたらすのだろうか。




By 趙 章恩

 日経ビジネス
 2016年1月27

-Original column