新政府誕生後の韓国メディアの変化~「ギレギ」「デッグル工作」「ファクトチェック競争」問題

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外では協力、「国益」守る

2025年8月25日、米ワシントンで韓米首脳会談が行われた。首脳会談の後で韓国大統領室と韓国メディアの連携プレイが話題になった。

米国では首脳会談の際に事前調整なしの記者会見が行われるが、ここで米国の記者らはわざと相手国に関係ない質問をして米国大統領だけが延々と話す記者会見にすることがあるという。韓国の大統領室は韓米首脳会談前に同行取材する韓国メディアに対し、「国益」のため一緒に頑張りましょうとお願いしたという。韓米首脳会談の記者会見に参加した22人の記者のうち、7人が韓国メディアの記者だった。

記者会見の序盤は米国記者らがトランプ大統領にロシアとウクライナの戦争やイスラエルとパレスチナの紛争、米国内の治安問題に関する質問をしてトランプ大統領の独壇場だった。途中から韓国メディアの記者らも負けじと次々質問を繰り出し、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が発言するチャンスを作った。

韓国メディアは同盟国である韓国と米国の今後の発展や韓国企業の対米投資、韓米造船業協力プロジェクト「Make American Shipbuilding Great Again」について質問した。さらに、韓国メディアは韓米首脳会談の直前にトランプ大統領が本人のSNSに「韓国で何が起きているのか。粛清か革命のようだ」と投稿した件についても質問してトランプ大統領が「誤解だった」と答えた。李大統領も尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領による2024年12月3日非常戒厳宣言を巡る内乱特別検事の調査が行われていることを説明したことで事実関係を明らかにし、首脳会談前に炎上した李大統領の支持者と尹前大統領の支持者の対立の一段落につながる場面もあった。また韓国メディアは韓国の慶州で2025年10月31日から開催されるAPEC首脳会議にトランプ大統領も出席するのか、中国や北朝鮮とも会談する意向はあるかと質問してノーベル平和賞を望むトランプ大統領が喜んで答える場面もあった。

韓米首脳会談の後で韓国大統領室は、首脳会談に同行した韓国メディアが記者会見で積極的に質問したおかげで、韓国と米国の協力関係を世界に向けアピールできたと記者らに感謝した。9月11日、就任100日を記念して記者会見を行った李大統領も同じく、「初めての現場(韓米首脳会談の記者会見)にみなさんが一緒にいてくれてとても力になった。国家の利益を守るという側面から、家の中では喧嘩しても家の外では一緒に家を守りたいと思っていたところ、ワシントンでみなさんがそのような姿を見せてくれて感動した。本当は私たちは家族なのだと思った」と感謝のコメントを述べた。

記者も可視化でレベルアップ

韓米首脳会談記者会見での韓国メディアの活躍は韓国内でも好評で、記事のコメント欄には「ギレギだと思ったが見直した」「ギレギと呼んで悪かった」といった書き込みが非常に多くみられた。

韓国では読者から見て記者らしくないと、記者を「記者(ギジャ)+ゴミ(スレギ)」で「ギレギ」と呼ぶ。正確な内容を取材せずフェイクニュースを拡散する記者、公益より自分の利益を優先する記者、インタビューの発言の一部を膨張して歪曲する記者、取材の準備をせず的外れな質問を繰り返す記者、報道倫理を守らず刺激的な見出しでページビューを稼ごうとする記者などである。韓国の大法院(最高裁判所)でギレギという表現は侮辱罪に当たらないという判例があるほど、記者にとっては屈辱的な言葉だが幅広く使われる表現になった。それほどギレギを問題だと思う人が多いということでもある。

韓国ではブロードバンドの普及に伴い、新聞のデジタル化に加え、紙を持たないオンライン新聞の創刊が増えた。ポータルサイトのニュースサービスも始まった。そこから記事のページビュー競争が始まった。韓国最大ポータルサイトNAVERは新聞社に記事の転載料金は払わない。その代わりNAVERが決めた評価要素に沿って新聞社と広告収入をシェアしている。新聞社にとってページビューは重要になった。クリックしてもらうため見出し競争が激しくなった。何にでも速報という見出しを付けたり、記事の内容とは逆の見出しを付けたり、なんとか記事をクリックさせようとする競争により「釣り記事」が大量に生まれた。ギレギも増えていった。メディアの信頼度も落ちた。ロイタージャーナリズム研究所の「Digital News Report 2025」によると、韓国のニュース信頼度は31%で48カ国中37位と低い(日本は39%で23位)。

2025年6月24日、韓国では「ギレギ実名制」と話題になった変化があった。李大統領が就任後真っ先に行ったのは大統領室ブリーフィングルームのリニューアルである。今までは大統領室報道官が記者に向かって説明し、ニュースで報道する際もカメラで報道官の顔だけを映した。しかし今は違う。記者の顔を映すカメラも入り、生中継している。記者も所属と名前を言ってから報道官に質問するようになった。

李大統領は就任後すぐ、「本当の民主共和国、実用政府を作る」との理念のもと、国民の知る権利を守るため大統領室の報道官が記者向けに行うブリーフィングを有料放送チャンネル(KTV国民放送)とKTVのYouTubeチャンネルで生中継することにした。韓国は全世帯の95%近くが有料放送に加入しているため地上波で生中継するのと変わらない。そしてブリーフィングに参加する記者の顔も映るようカメラを4台追加した。今までは報道官の顔だけがカメラに映るようになっていて、報道官の発表が終わるとカメラも止まり、報道官と記者との間でどのような話があったのか国民が知ることはできなかった。これをホワイトハウスや国連のように記者の顔も見えるようにしたのだ。大統領室のブリーフィングで報道官がどのような話をしてどこのメディアの誰が何を質問したのか、報道官の話をありのまま記事にしたのか、国民が知るようになった。SNSでは「ギレギ実名制を導入すれば記者の質問のレベルも上がるだろう」「記者がブリーフィングを歪曲できなくなるから誤解も炎上もなくていい」と喜ぶ声が数多く寄せられた。

韓国では2007年廬武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領の時代に大統領室のブリーフィングを生中継したことがあるが、大統領が変わるとなくなった。李大統領が再びブリーフィングを生中継したことで、SNSや記事のコメント欄では、記者のレベルが上がったと高く評価されている。取材する側も国民に見られているという緊張感を保ち、事前にしっかり準備をして質問するので米ワシントンでとても活躍できたのではないかと好評を得ている。実際に大統領室の元報道官も、「ブリーフィングの生中継により報道官の発言の一部だけを切り取って報道できなくなり、前後の脈略が国民に伝わるので安心」だとコメントしていた。

しかし、ブリーフィングの生中継を視聴した李大統領の支持者らが記者の質問を気に入らないとギレギだと過剰に批判したり、YouTuberたちが記者の仕事内容ではなく個人的な面を批判する動画を制作したりといった問題もある。全国言論労働組合は「言論の発展のための批判は受け入れるが、記者個人に対するサイバー暴力は自制してほしい」とコメントを出した。

偽情報対策には懲罰的損害賠償制度も検討

李大統領のブリーフィング生中継はフェイクニュースとの闘いでもある。韓国だけでなく世界的な現象ではあるが、SNSやYouTubeといった動画共有サービスで真偽不明の情報が広まり世論を変える、ユーザーの履歴からお勧めコンテンツを提供するアルゴリズムの影響でますます偏って表示される情報だけを信じて進歩派・保守派の対立が激しくなる――といったことが社会の課題になっている。上記「Digital News Report 2025」によると、韓国ではニュースをYouTubeで視聴すると答えた人は50%だが、20代は44%、50代は61%、60代以上は53%と、年齢が上がるほどYouTubeがテレビニュースの代わりになっている。

2025年の大統領選挙では、ファクトチェックという言葉が流行語になるほど各政党、YouTuber、メディア、支持者らがファクトチェック競争を繰り広げた。ケーブルテレビのJTBCとポータルサイトDAUMはファクトチェックコーナーを運営し、大統領候補のテレビ討論での発言や公約について事実かどうか分析した。各政党もファクトチェックチームを運営し、大統領候補に関する間違った情報を正した。各政党のファクトチェック対決ももう一つの選挙運動だった。

韓国の大統領選挙では、国内だけでなく海外発のフェイクニュースも数多く見られた。海外にいるYouTuberがフェイクニュースを作成、それを韓国のYouTuberがコピーし、海外メディアが報道した内容だと偽って拡散する流れである。YouTuberだけでなく、紙の媒体を持たないオンライン新聞やオンラインマガジンもフェイクニュースを広げた。そしてデッグル(コメント)工作といって、特定候補を支持する人たちが、大量にコメントを残してフェイクニュースを本当のことのように信じさせる。またはデッグル工作で事実をうそのように思わせる。李大統領は大統領選挙運動の際に、保守派が組織的にデッグル工作をして世論を操作しているという疑惑があると発言、「(デッグル工作は)民主主義秩序に対する挑戦でありこれも内乱」だと主張した。一部オンライン新聞は大統領選挙後、事実を確認せずフェイクニュースを掲載したと謝罪したが、一度拡散したフェイクニュースを訂正するのはとても難しい。李大統領が発言したデッグル工作については、現在、警察が関連団体の代表を捜査している。

韓国の女性が主に利用するコミュニティサイトでは「親のYouTubeアルゴリズム浄化方法」を共有するのがはやっている。YouTubeで普通のニュース動画だと思ってみていたのが実はAIで作成したフェイクニュースだったことが起きているが、一度フェイクニュース動画を視聴するとアルゴリズムでお勧め動画にどんどんフェイクニュースチャンネルが登場する。そのため、親のスマートフォンを借りてYouTubeにある動物チャンネルと地上波テレビ局のチャンネルだけを登録し、3時間ほど動物の動画ばかり視聴するとアルゴリズムが浄化され、フェイクニュースチャンネルは出てこないというノウハウである。フェイクニュースチャンネルは再生数を伸ばし広告収入を得るため、どんどん増殖している。

李大統領は9月11日の記者会見で「YouTubeでフェイクニュースを作り、注目を集めお金を稼ぐ人がいる」「誰であってもお金を稼ぐため、他人に害を与えるため、意図的に悪意のあるフェイク情報を制作したり、情報を操作したりした場合、賠償すべきである。メディアに限定せず、誰であっても作為的にフェイクを流すことをできなくしよう」と発言、9月18日の政府会議でも「メディアの関心とけん制は尊重するが、故意に歪曲し虚偽の報道をした場合は必ず責任を問うべき」と発言した。大統領室報道官も、「李大統領は故意による虚偽の情報は迅速に修正すべきであり、故意であることが認められた場合、責任を取るべきという立場を強調した」と説明した。与党の「共に民主党」も言論改革特別委員会を発足し、懲罰的損害賠償制度について議論している。韓国内では表現の自由とフェイクニュース規制は別次元の問題という認識から、故意にフェイクニュースを制作するメディアを厳しく処罰すべきという声もあれば、取材活動が制限されるのではないかと懸念する声もある。

ギレギ、デッグル工作、ファクトチェック競争、フェイクニュースなどを乗り越えニュースの信頼を取り戻すため、メディア改革はすでに始まっている。

ITジャーナリスト/KDDI総合研究所特別研究員

趙 章恩(チョウ・チャンウン)

民放online

2025/10

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新政府誕生後の韓国メディアの変化~「ギレギ」「デッグル工作」「ファクトチェック競争」問題 | 民放online

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李在明政権が全国民にクーポン1万5000円分配布で消費促進に成功

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クレジットカード会社「KBCARD」の民生回復消費クーポン申し込み画面
クレジットカード会社「KBCARD」の民生回復消費クーポン申し込み画面

 韓国の李在明(イジェミョン)大統領は7月、就任後初の景気浮揚策として全国民に「民生回復消費クーポン」を給付した。1人最低15万ウォン(約1万6000円)で、農漁村住民や生活保護受給者は上乗せされる。

 現金支給ではなく、使用しているクレジットカードや各種ペイ経由で申請すると決済した金額から消費クーポン分が減額される。本人名義のカードやペイがない人はプリペイドカードがもらえる。残額はその都度携帯に通…

残り362文字(全文562文字)

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2025. 8


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https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20250902/se1/00m/020/065000c

韓国で人気の「モイム口座」とは?

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「モイム口座」のサンプル画面 (KakaoBank提供)
「モイム口座」のサンプル画面 (KakaoBank提供)

 韓国銀行(中央銀行)の金利引き下げにより、韓国の5大銀行の預金額は2025年4月末時点で629.4兆ウォンと前月比20.7兆ウォン減少した。統計庁によると、4月の消費者物価指数は前年同期比2.1%上昇した。定期預金の金利は1.8%前後なので、物価上昇率より低い。

 そんな中、「モイム口座(集まり口座)」だけが利用者を増やしている。複数人が管理する共有口座で、インターネット銀行のKakaoBankが…

残り344文字(全文544文字)

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2025. 6


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https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20250624/se1/00m/020/063000c

韓国Z世代の次なるブームは「低速老化」

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低速老化をテーマに販売されているコンビニ弁当 (韓国セブン─イレブン提供)
低速老化をテーマに販売されているコンビニ弁当 (韓国セブン─イレブン提供)

 急速に高齢化が進む韓国で「低速老化」が流行語になっている。低速老化とは、老化を遅らせるために低糖・塩分控えめの食事をするなど生活習慣を変えることである。

 20代のZ世代の間で大ブームになっているのが特徴。期待寿命が長くなった分、早めに老化に備えたいという雰囲気だ。老化を恐れず、アンチエイジングよりウェルエイジングのために努力するという。一時期、驚くほど辛いインスタントラーメン「プルダックポックン…

残り351文字(全文551文字)

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2025. 4


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https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20250415/se1/00m/020/065000c

成長続くK-Beauty 輸出も急増

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「Kビューティーの聖地」オリーブヤングの店舗 (オリーブヤング提供)
「Kビューティーの聖地」オリーブヤングの店舗 (オリーブヤング提供)

 韓国観光知識情報システムによると、外国人観光客の7割が行く場所は観光地ではなく化粧品販売店だ。韓国の若い女性に人気の化粧品販売店オリーブヤングと韓国ダイソー(2023年12月に韓国資本100%になった)は、外国人にも「Kビューティーの聖地」になっている。

 オリーブヤングは売上高が22年の約2.8兆ウォンから23年に約4.8兆ウォンへ伸びた。扱うブランドの8割は中小企業の製品。デパートや免税店には…

残り368文字(全文568文字)

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2025. 3


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https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20250311/se1/00m/020/067000c

韓国「キムジャン」高騰 それでも9割超が中国産白菜は「買わない」 

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大量にキムチを漬けるキムジャンイベント (京畿道広州市提供)

 毎年11月末になると、韓国の各自治体は大量にキムチを漬ける「キムジャン」イベントを開催する。数百人のボランティアが広場でキムチを漬け、一人暮らしのお年寄りや低所得層に配る。家庭でもこの時期に1年分のキムチを漬ける。白菜に塩をふり2日寝かせ、唐辛子の粉や塩辛、ニンニク、大根、もち米粥(かゆ)などの薬味を塗って容器に詰め「キムチ冷蔵庫」で発酵させるまで、重労働である。

 韓国農村経済研究院の2024年キムジャン意向調査によると、キムジャンをすると答えた割合は68.1%で前年の63.3%より増えたが、キムジャンの量は4人家族で白菜18.5玉と前年の19.9玉より減った。また、キムジャンをせずスーパーでキムチを買う人も増えている。キムジャンにかかわる物価が高騰したからだ。

残り228文字(全文564文字)

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2024. 12
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https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20241224/se1/00m/020/070000c

韓国のインスタントラーメン輸出額が今年も記録更新か

体験型コンビニ「ラミョンライブラリー」 (BGFリテール提供)

 韓国の農林畜産食品部(部は省に当たる)は、2024年1~9月の農食品輸出額は昨年同期比8.3%増の73億750万ドルだったと発表した。輸出上位品目のインスタントラミョン(ラーメン)は9億380万ドルで、23年1年間の9億5240万ドルに近づいた。通年で10年連続の過去最高更新となりそうだ。米国と中南米の大手スーパー向けが大幅に増加した。

 映像配信サービスのグローバルOTT経由の韓国ドラマ、バラエティー番組や、ユーチューブのモクバンと呼ばれる韓国の大食い動画で、ラミョンを食べるシーンがしばしば登場して認知度が向上。米国でプルダック麺チャレンジがはやったことも輸出増に影響した。

残り273文字(全文564文字)

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2024. 10
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https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20241105/se1/00m/020/068000c

物価高の韓国で海外消費が増加 日本旅行は大ブーム 

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ソウル・通仁市場の総菜店。国内の物価高は海外消費を押し上げている(Bloomberg)

 韓国開発研究院の「経済動向」(2024年7月)によると、韓国人の海外消費は5年連続増加し新型コロナ前の水準を取り戻した。今年5月の出国者数は226.8万人で、前年同月比34.8%増。円安で日本旅行が大ブームになっていることも影響しているようだ。日本政府観光局(JNTO)によると、24年上半期の訪日外国人約1778万人のうち、約444万人が韓国人だった。円安と韓国の物価高が重なり、日本の方が食事もホテルも買い物も安く感じるのでとても人気がある。

 韓国銀行の国際収支によると、旅行収支は今年5月8.6億ドルの赤字。外国人観光客が韓国で支出した金額より韓国人が海外で支出した金額の方が多かった。海外でお金を使う分、国内消費は減少している。海外で買い物する方が飛行機代を加えても韓国より安いといった事例が後を絶たない。

残り207文字(全文565文字)

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2024. 8


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https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20240820/se1/00m/020/072000c

일본 애니메이션 산업 동향

일본 애니메이션 산업 동향

2025년 03호

심층 이슈


Ⅰ . 일본 애니메이션 산업 동향

1.2023년도 일본 애니메이션 산업 동향

2.2023년도 일본 애니메이션 매체별 동향

Ⅱ. 일본 애니메이션 업계의 변화 및 트렌드

Ⅲ. 애니메이션 관련 전시회

Ⅳ. 향후 전망

1.생성 AI

배포 : 2025.05.19
작성 : 한국콘텐츠진흥원 도쿄비즈니스센터

집필자: 조장은

관련 보고서 원문 링크

非常戒厳令と韓国のジャーナリズム 党派を超えて守った言論の自由

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非常戒厳令と韓国のジャーナリズム 党派を超えて守った言論の自由

2024年12月3日の夜10時過ぎ、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は「北韓(北朝鮮)共産勢力の脅威から自由大韓民国を守護」「破廉恥な従北反国家勢力を一挙に剔抉(てっけつ)」「自由憲法秩序を守る」などの理由を挙げ非常戒厳を宣言した。

ドキュメント 非常戒厳宣言から解除まで

韓国で最後に非常戒厳令が宣言されたのは1979年朴正煕(パク・ジョンヒ)元大統領の暗殺事件から1981年まで。非常戒厳の下で1980年5月、5・18光州民主化運動が起きた。その当時、戒厳軍が何をしたのかを知っている人たちは黙っていられなかった。

12月3日夜、非常戒厳令宣言からすぐ国会議員らは非常戒厳令を解除するため、市民らは国会議員を守るため、戒厳軍は国会の出入りを封じるため、国会に集まった。国会議員の半数以上が賛成すれば大統領は戒厳令を解除しなければならない。市民らは戒厳軍の装甲車の前に座り込んで足を止め、銃を持った戒厳軍が国会に入ろうとするのを体当たりで止めた。国会議員らは戒厳軍を避けて塀を越えて国会に入り、議員秘書らはスクラムを組んで国会本会場前を守った。

韓国内では、深夜にもかかわらず市民を国会に集めたのは、2024年10月にアジア女性として初めてノーベル文学賞を受賞したハン・ガンの小説『少年が来る』がベストセラーになり、2023年に映画『ソウルの春』(日本では24年に公開)が興行1位だったことも影響したという分析があった。『少年が来る』は5・18光州民主化運動、『ソウルの春』は1979年の全斗煥(チョン・ドゥファン)元大統領の軍事クーデターという実話を題材にした作品で、あの独裁時代に戻ってはならないと非常戒厳に反対する声が大きくなったという分析だった。

夜11時過ぎ、戒厳司令部が布告令第1号を発表した。布告令第1号は6項目から成っており、▶国会と地方議会、政党の活動と政治的結社、集会、デモなど一切の政治活動を禁じる、▶自由民主主義体制を否定したり、転覆を企てる一切の行為を禁じ、フェイクニュース、世論操作、虚偽扇動を禁じる、▶すべての言論と出版は戒厳司令部が統制する、などとしている。そして、この布告令違反者に対しては「戒厳法第9条により令状なしに逮捕・拘禁・押収捜索ができ、戒厳法第14条により処断する――など、言論の自由がなくなるという内容だった。

12月4日午前0時45分過ぎ、戒厳軍は窓ガラスを割って国会に入り、戒厳令解除を決議する国会本会議場前まで迫っていた。同0時48分、国会本会議場では非常戒厳解除要求決議案の本会議が始まり、在席した議員190人全員が賛成、午前1時過ぎに可決した。放送局や新聞社の記者は国会に集まり、この一部始終を報じた。YouTuberたちも国会周辺で何が起きているのかライブ配信を行った。午前4時過ぎ、尹大統領は国務会議を開き非常戒厳解除案を議決した。

非常戒厳下でメディアは

非常戒厳宣言から解除までの間、ジャーナリストたちは布告令第1号違反で「処断」される可能性があることを知りながらも取材を続け速報を出し続けた。光州地域の新聞社は、5・18光州民主化運動の時は戒厳軍によって真実を報道できなかったが、今度こそは言論の自由を守りたいと非常戒厳宣言後すぐ社内のすべてのドアを施錠し号外を制作したという。5・18光州民主化運動の記録の一つに、戒厳司令部が赤ペンで削除するところを記入した印刷前の新聞編集版が残っている。

12月4日未明、韓国言論団体は尹大統領の下野を求める共同声明を発表した。「非常戒厳宣言は国民が血で書いた民主主義と言論自由の半世紀の歴史的成果と憲法を否定する暴挙」「時代錯誤で反憲法の内容ばかりである布告令により、尹政権は正常軌道から外れた独裁政権であることを自ら明かした」「われわれ言論人は大韓民国の民主主義と言論の自由を守るため尹政権の暴挙に立ち向かい国民とともに最後まで抵抗する」とした。

12月4日朝刊は、どの新聞も尹大統領の非常戒厳宣言を批判する社説を掲載した。韓国はメディアが野党支持の進歩派と与党支持の保守派に分かれ、同じ案件に対して全く違う分析をすることが年々増えてきた。進歩派メディアは与党を批判し、保守派メディアは野党を批判する。対立していた進歩派と保守派のメディアが、言論の自由、表現の自由を失いかけた非常戒厳宣言に対してはあってはならないことだと同じ立場を示したのだ。

12月5日には国境なき記者団も声明を発表した。
●戒厳令が直ちに解除されていなかったら、尹大統領はメディアを検閲し、メディアが発信する情報を統制する権限を持てただろう。尹大統領は就任以来、自分を批判する者に対する敵意を露にしてきたことを考えると、戒厳令は特に憂慮すべきことである。
●尹大統領は政権に批判的なメディアを繰り返し攻撃し、その報道をフェイクニュースだと退けてきた。与党「国民の力」は、進歩派の番組があったラジオ放送局TBS(交通放送)が政治的に偏向しているとして、同局への補助金を打ち切るなど、特定メディアに対する懲罰的措置を支持してきた。
●韓国政府によるジャーナリストに対する名誉毀損訴訟も前例のないレベルにまで増えた。韓国では名誉毀損は最長7年の懲役刑に処せられるため、多くのジャーナリストは法的紛争を避けるために自己検閲を迫られている。
●われわれはすべての機関および政治指導者に対し、この機会を利用して報道の自由へのコミットメントを再確認し、国境なき記者団が近年観察してきた言論の自由の悪化と戦うことを誓う。

といった内容だった。国境なき記者団が毎年公開する世界報道の自由度指数をみると、韓国は2022年の43位から2024年は62位に下がった。

12月14日、国会では尹大統領の弾劾が議決された(冒頭写真は2024年12月14日韓国国会議事堂前、尹大統領の弾劾を求める集会:筆者撮影)。検察当局は2025年1月26日、尹大統領を内乱を首謀した罪で起訴した。大統領には不訴追特権があるが、内乱罪は例外である。内乱を首謀した者の法定刑は死刑や無期懲役、無期禁錮である。内乱罪の刑事裁判は2月20日に始まる。

その前に憲法裁判所では尹大統領の弾劾審判の公開弁論が行われた。ここでは非常戒厳令宣言の前後で何があったのか軍や国家情報院などの証人らが証言している。検察の起訴状も公開されたが、起訴状の内容で驚いたのは、尹大統領が当時の行政安全部(「部」は日本の「省」に当たる)李祥敏(イ・サンミン)長官に放送局2社、新聞社2社、世論調査会社1社を封鎖し、断電と断水を指示したという点である。韓国内では消防関係の証言から、この放送局と新聞は与党に批判的な進歩派といわれる地上波放送局のMBC、総合編成チャンネル(有料放送向けチャンネル)JTBC、京郷新聞とハンギョレ新聞といわれている。MBCは断電と断水で言論の機能を麻痺させようとしたのは憲法が定めた言論・出版の自由を否定することだと指摘した。

非常戒厳令下の報道の課題 障害者、一般市民は……

一方、非常戒厳令宣言の報道をめぐっては緊迫した状況だからこそ障害者に配慮した報道をすべきだったという課題が残った。12月3日に尹大統領が非常戒厳令宣言した際、手話放送を行ったのは公共放送のKBSのみだった。

1980年の光州民主化運動当時、戒厳軍によって犠牲になった2番目の被害者は聴覚障害のある男性だった。人々が戒厳軍から逃げ回る中、親戚をバス停まで見送った帰り道、男性は何が起きたのかわからず戒厳軍に捕まり、耳が聞こえないと訴えたが、言うことを聞かないと暴行され亡くなったという。2024年12月3日、テレビの生放送に大統領が登場し非常戒厳という字幕があるのに内容がわからず、聴覚障害のある人たちはとても怖かったという。ニュース画面の下にある非常戒厳令宣布という字幕をみて北朝鮮が攻めてきたのかとびっくりしてインターネットを検索したという聴覚障害者もいた。韓国にはAI手話通訳アプリもあるが、日常的によく使う文章にのみ対応しているため戒厳という非常事態には使えなかった。テレビに流れる音声をAIが自動で字幕にする機能があるテレビも販売されているが、まだ一般的に普及していなかった。

KBS以外のチャンネルがニュースの手話放送を始めたのは戒厳令が解除された後だった。韓国では手話放送は全編成時間の5%以上であればよいことになっている。

6時間で解除した非常戒厳令だが、一般市民の生活にも大きな影響を残した。12月はクリスマスや忘年会などで消費が増える時期にもかかわらず、統計庁によると2024年12月の宿泊・飲食業の消費は前月比3.1%減少、小売り販売額は同0.6%減少した。社会的不安から忘年会をキャンセルした企業が多く、非常戒厳令宣言により韓国は危険だとして海外観光客の訪問が減少、芸術やスポーツ分野も消費が減少した。また年末年始は各種キャンペーンでテレビや新聞などメディアの広告収入が増える時期であるが、非常戒厳令により広告市場も凍りつき、テレビ局と新聞社の経営も厳しくなるとみられている。

韓国言論団体は2月17日、非常戒厳令を迅速に解除し言論の自由を守ったとして禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長に感謝の牌を贈呈した。韓国では尹大統領の弾劾審判に続き内乱罪の刑事裁判も始まった。政治混乱は続くが言論の自由を守ろうとする声は日に日に大きくなっている。

2025/02/25

ITジャーナリスト/KDDI総合研究所特別研究員

趙 章恩(チョウ・チャンウン)

民放online

-Original column

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