SLAMのThrun氏など著名研究者が登壇、ソウルで自動運転やAIのカンファレンス開催

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韓国政府が力を注いでいるD・N・A(Data・5G Network・AI)政策の2021年予算案が確定した。予算額は約3兆1000億ウォン(約2800億円)と、前年よりも1兆2000億ウォン(約1100億円)増加した。

 用途は、「AI学習用データの追加構築」「公共データ4万4000件の追加公開」、「データ構築から公開、活用までのエコシステム強化」「官民共同研究支援(ディープラーニング高度化など)」「5Gを基盤とする政府業務ネットワークの高度化およびクラウドへの移行」「全産業における5GとAIの融合・普及」など多岐にわたる。

 韓国ではデータ・AI産業への関心と期待が高いことから、新型コロナウイルス禍でもAI関連カンファレンスは中止せず、オンラインで開催している。2020年9月23、24日には韓国科学技術情報通信部(韓国の部は日本の省に相当)とソウル市が主催する「Smart Cloud Show 2020」が開催された。

 基調講演にはSLAM技術で著名なSebastian Thrun氏が登壇した(図1)。同氏は、米グーグルの次世代技術開発を担うGoogle X Lab(現X社)や、コンピュータ科学分野のオンライン学習プラットフォーム「Udacity」の創設者などとしても知られ、韓国では「自動運転の父」として尊敬されている。

 現在は空飛ぶ自動車を手掛ける米Kitty Hawk社を創業しCEOを務めている。同氏は米国にいながら韓国の時間に合わせてオンラインでライブ講演した。主な発言は以下の通りである。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2020. 10.

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00063/

テスラに翻弄される電池メーカー、低コバルト電極で反撃へ

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2020年9月22日に米Tesla(テスラ)が開催した電池事業の説明会「Battery Day」の発表内容は、電池メーカー各社に衝撃を与えた。これまで、電池メーカーにとってのテスラは、電気自動車(EV)で電池の市場を拡大してくれる存在だった。ところが一転、テスラが電池内製化の方針を打ち出したことで、電池メーカーはシェアや主導権を失うリスクが浮上した。

 テスラの主な発表内容は、以下の通りである。

  • 電池の生産能力を、22年中に100GWh/年、30年までに3TWh/年に高める
  • EV用電池パックの単位容量当たりのコスト(米ドル/kWh)を56%下げる
  • コスト削減した電池を使って価格を2万5000米ドル(約264万円)に抑えた新型EVを23年までに発売する(同社のEVで最も安価な「Model 3」よりも1万米ドル以上安い)
  • EVの生産能力を、30年までに2000万台/年に高める(20年の出荷目標は50万台)

 テスラ最高経営責任者(CEO)のElon Musk(イーロン・マスク)氏は、電池を内製化できるまではパナソニックや韓国LG Chem(LG化学)、中国・寧徳時代新能源科技(CATL)からの調達を増やすと語るが、生産能力の強化は着々と進んでいる。複数の欧州メディアの報道によると、テスラは、ドイツのBMWやDaimler(ダイムラー)との取引実績がある同国の生産エンジニアリング会社Assembly & Test Europe(ATW)を買収することで合意したという。

 Battery Dayの開催前は、全固体電池や、エネルギー密度が500Wh/kgを超えるような電池など画期的な技術に関する発表が期待されていた。だが、テスラが実際に公開したのは「4680」と呼ぶリチウムイオン電池セルだった。直径46mm×長さ80mmと、既存の電池セル「18650」(同18mm×65mm)や「2170」(同21mm×70mm)よりも大きなこの円筒形セルを使うことで、14%のコスト低減効果が見込めるという。

LG化学に打撃

 度肝を抜くような発表こそなかったものの、韓国ではテスラの発表がEV用電池で世界市場シェア1位(20年1~8月、容量ベース、韓国SNE Researchの調査)のLG化学にとって打撃になったとみている。EV市場の拡大は電池メーカーにとってもチャンスだが、テスラが内製化を進めれば電池メーカーが主導権を奪われるからだ。

 テスラは20年10月1日、中国で生産するModel 3の価格を、従来の27万1550人民元(約422万円、中国政府の補助金を受けた額)から24万9900人民元(約389万円、同)に下げると発表した。米Bloomberg(ブルームバーグ)の報道によると、値下げしたモデルでは、新たにCATLのリン酸鉄リチウムイオン電池(LFP正極)を採用したという。正極にコバルトを含まないのが特徴である。コバルトは埋蔵量や児童労働といった問題が指摘されており、各社はコバルトフリー化の技術開発に取り組んでいる。これまでのモデルでは、パナソニックのニッケル-コバルト-アルミニウム酸リチウムイオン電池(NCA正極)や、LG化学のニッケル-マンガン-コバルト酸リチウムイオン電池(NMC正極)を採用していた。テスラとCATLの関係が密接になっていることも、CATLとシェアを争うLG化学にとっては脅威である。

 LG化学は、正極におけるニッケル比率を90%に増やしてコバルト比率を5%以下に抑えたニッケル-コバルト-マンガン-アルミニウム酸リチウムイオン電池(NCMA正極)に力を注いでおり、米General Motors(ゼネラル・モーターズ、GM)が21年に発売する新型EVピックアップトラックに同電池を供給するための量産準備を始めた。当初は22年までに同電池の開発を完了し、GMに供給する予定だったが、GMの計画が前倒しになったことでLG化学も量産を急いでいる。

 両社は19年12月、同電池の生産に向けた合弁会社の米Ultium Cells(アルティウム・セルズ)の設立を発表していた。出資比率は、50対50である。現在、2兆7000億ウォン(約2460億円)を投資し、30GWhの年間生産能力を持つ工場を建設中である。21年発売予定の新型EVピックアップトラックには、まずLG化学の工場で生産した電池を供給し、その後は合弁会社の工場で量産した電池を供給する計画である。

 この他、LG化学は20年6月、韓国Hyundai Motor(現代自動車)とEV用電池を生産する合弁会社をインドネシアに設立することを検討しているとも報じられた。

 

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2020. 10.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00016/


半導体売れないなら「打倒ファーウェイ」、したたかなサムスン

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  米国政府の輸出規制強化に合わせて、韓国のSamsung Electronics(サムスン電子)とSK hynix(SKハイニックス)は2020年9月15日から中国・華為技術(ファーウェイ)へのメモリー半導体の供給を停止した。加えて、ファーウェイにスマートフォン向け有機ELディスプレーを供給しているSamsung Display(サムスンディスプレー)とLG Display(LGディスプレー)もディスプレードライバーICに米国の技術が使われていることから、ディスプレーの供給を停止した。LGディスプレーは、ファーウェイにテレビ向け有機ELディスプレーも供給していた。

 韓国各社はファーウェイとの取引を維持するため、米商務省に輸出ライセンスを申請した。輸出ライセンスがなければファーウェイに半導体やパネルを供給できない。だが、世界シェアでトップ5のサムスン電子とSKハイニックスに輸出ライセンスを発行すると規制の意味がなくなるので、韓国勢の申請が受け入れられる可能性は非常に低いとされている。

 Kora International Trade Association(韓国貿易協会)の統計によると、20年1~7月の韓国の半導体輸出額は547億4000万米ドル(約5兆7200億円)。そのうち、中国向けは41.1%の224億8900万ドル(約2兆3500億円)、それとは別に集計している香港向けは20.8%の113億7500万ドル(約1兆1900億円)だった。香港経由で中国の各地に送られる半導体が多いとされており、韓国の半導体輸出先として中国の占める割合が非常に大きいことが分かる。

 その中でも、ファーウェイは特に大口の顧客だ。2019年のサムスン電子の売上高全体に占めるファーウェイ向けの割合は3.2%の約7兆3700億ウォン(約6600億円)、同じくSKハイニックスでは11.4%の約3兆ウォン(約2700億円)だった。ファーウェイに供給できなくなったことで在庫負担が大きくなり、メモリー半導体の価格が下落するとの懸念もある。

 スマホ市場では、ファーウェイの出荷が減ると、OPPO(オッポ)やvivo(ビボ)、小米(シャオミ)といった中国勢のシェアが増えると見込まれており、3社がメモリー半導体やディスプレーの新たな顧客になるという展望もある。しかし、米国政府が新たな規制対象にする可能性もある。

 ファーウェイへの輸出規制は今に始まったことではなく、前々から進められていたことである。そのため、韓国各社はファーウェイに代わる取引先を見つけるなど影響を最小限に抑える準備をしてきたという。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2020. 9.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00015/

総帥起訴で動きが鈍るサムスン、TSMCとの価格競争も激化

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 韓国ソウル中央地方検察庁は2020年9月1日、韓国Samsung(サムスン)グループのトップであるJae-yong Lee(イ・ジェヨン)氏を在宅起訴したと発表した。これまでグループ経営を主導してきた同氏の不在による半導体事業への影響を危ぶむ声も出てきている。

 Lee氏の嫌疑は、資本市場法違反(不正取引および相場操縦)/外部監査法違反/業務上の背任、の3つである。検察によれば、同氏は15年、グループ経営権を引き継ぐために、Samsung Electronics(サムスン電子)株を保有するSamsung C&T(サムスン物産)と、自身が筆頭株主であるCheil Industries(第一毛織)を合併させた。その際、Cheil Industriesの価値を大きく見せるべく、同社子会社のSamsung Biologics(サムスンバイオロジクス)と孫会社のSamsung Bioepis(サムスンバイオエピス)の会計を操作し、証拠を隠蔽。Samsung C&Tやその株主に損害を与えた疑いがあるという。併せて、Samsungグループ関係者10人も、Lee氏の利益のために相場操縦や不正会計を行ったとして起訴された。

 検察は「捜査の結果、グループ総帥であるLee氏をはじめ中核的な関係者の組織的不法行為を確認できた」「合併は総帥の私益のために行われた明白な背任行為」「事案の重大性や可罰性、国民的疑惑を解消する必要性などを総合的に検討した結果、起訴は避けられない」といった旨のコメントを発表した。一方、Samsungグループの弁護団は起訴後に「合併の全ての手続きは適法だった」「最初からSamsungグループとLee氏の起訴を目標に捜査を進めたように見える」などのコメントを発表した。Samsungグループ側は弁護団メンバーを検事出身者から判事出身者に入れ替え、裁判に備えるもようだ。

 Lee氏は、朴槿恵(パク・クネ)前大統領への贈賄罪を巡る裁判の判決もまだ出ておらず、今後は2つの裁判を抱えることになった。Samsung Electronicsの経営に影を落とすのか、韓国のみならず中国や米国のメディアも注目している。韓国証券業界では、「Lee氏の起訴とSamsungの経営は別の話で、影響を受けないだろう」とみられている。

 実際、足元の業績は堅調だ。Samsung Electronicsの20年4~6月期の業績は、売上高こそ前年同期比5.6%減の52兆9700億ウォン(約4兆7400億円)にとどまったものの、営業利益は同23.5%増の8兆1500億ウォン(約7300億円)と大幅に増えた。特に半導体事業は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う在宅勤務やオンライン授業の拡大などを受けて需要が増加しており、前年同期比で2桁の増収・営業増益を達成。特に営業利益は59.7%増となった。今後も、期初予想を上回るのではないかと期待されている。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2020. 9.

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00014/

新型コロナで屋外配送ロボの競争が韓国で激化、病院や出前サービス、レストランで相次ぎ採用

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LG Electronics社は2020年8月、ホテル向けの屋外配送ロボットを公開した(図1)。ソウル市のMayfield Hotel & Resortにおいて建物内外を行き来しながら客が注文した商品を屋外テラスのテーブルまで届ける用途で使われる。LG Electronics社としては初の屋外で稼働するロボットである。

 LG Electronics社はかねて、仁川国際空港で稼働する掃除ロボットやサービスロボット、ファミリーレストラン向け調理ロボットなどを提供してきた。2018年にはロボット製品群のブランド「CLOi」を打ち出している。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2020. 9.

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00060/

中国に奪われるSamsungの技術、流出防止へ厳罰化進める韓国

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 韓国の水原地方検察庁産業技術犯罪捜査部は2020年8月7日、韓国Samsung Display(サムスンディスプレー)の研究員2人とディスプレー設備メーカー代表1人の計3人について、「産業技術の流出防止および保護に関する法律」「不正競争防止および営業秘密保護に関する法律」などへの違反容疑で身柄を拘束し起訴したことを発表した。韓国では、中国をはじめとする国外への技術流出に厳罰を求める声が高まっている。

中国に技術が渡る前に押収

 水原地方検察庁によると、Samsung Displayの研究員AとBは、19年11月から20年5月にかけて、同社の有機EL(OLED)製造に用いる透明樹脂(OCR)のインクジェット印刷工程の仕様をディスプレー設備メーカーX社の代表Cに教え、主要な設備を造らせた。同工程は、Samsung Displayが3年間で100億ウォン(約8億9300万円)以上を投資して開発した世界初のものである。

 さらに、AとBは19年11月、同社のOLED製造用LTPS(低温ポリシリコン)結晶化設備の光学系図面を不正に使用し、同設備の核心部品を製作するとともに、20年4月にCにこの図面を提供したという。AとBは、X社の株式を借名で取得していた。

 A、B、CはSamsung Displayの技術を持ち出してX社で設備を造り、中国に売ろうとしていた。だが、試作品を造ったところで全て押収となり、中国には技術が流出しなかったもようだ。

 Samsung DisplayのOCRインクジェット印刷工程は、液状のOCRを射出・塗布することでディスプレーパネルとカバーガラスを接合するというもの。同社は20年10月からOLEDディスプレーの後工程ラインにこの技術を本格導入する計画だった。

 同社は同年2月ごろから、ディスプレーパネルとカバーガラスの接着手段を、これまでの透明テープ(OCA)からOCRに切り替えるための設備投資をしていた。証券業界では、同社のOCA購入費は年間2000億ウォン(約179億円)を超える規模であり、OCRへの切り替えによって大幅にコストを削減できるとともに、フォルダブル(折り曲げ可能な)OLEDディスプレーの生産を伸ばせるとみていた。

 本件を巡っては、20年4月に韓国の国家情報院産業機密保護センターが情報を入手し、水原地方検察庁に事件を配当。両機関が協力して捜査を進めた。水原地方検察庁は捜査過程を公開し、「素早い捜査と捜索、押収によってSamsung Displayの技術が中国に流出するのを防いだ」との談話を発表した。

 同社の技術が狙われたのは、今回が初めてではない。18年にも水原地方検察庁は同社のフレキシブルOLEDディスプレーの後工程ラインに使われる3次元ラミネート関連設備の仕様書やディスプレー図面などの産業技術、および営業秘密の流出を巡り、同社の協力会社であるToptec(トップテック)の役員と社員計11人を起訴した。この事件では、前述の技術や営業秘密を使って設備を製造し、疑いの目を向けられないように設立した別会社を通じて中国企業に売り渡していたという。対象となった技術は、Samsung Displayが1500億ウォン(約134億円)を投資した核心技術だった。Toptecは容疑を否認し続けている。1審判決は20年8月末の予定である。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2020.8 .

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00013/

SamsungとHyundaiが自動運転分野で急接近、電池や車載情報システムでも協業へ

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2020年7月21日、韓国のSamsung Electronics社副会長の李在鎔(イ・ジェヨン)氏とHyundai Motor Group社首席副会長の鄭義宣(チョン・ウィソン)氏が会合を開いた。Hyundai社は、LG Electronics社やSK Group社とは電装品や電池で取引があるが、Samsung社とは何もない。

 韓国財界の資産総額1位のSamsung社と同2位のHyundai社の経営トップ同士が交流したことで、両社が関心を持つモビリティやロボティクスの分野で新たなビジネスが生まれるのではないかと韓国内では期待が高まっている。

 Samsung社の李氏ら経営陣は、Hyundai社の「Hyundai Kia Namyang Technology Research Center」を訪問し、開発中のレベル4自動運転車や水素燃料電池バスに試乗。Hyundai社の鄭氏ら経営陣からモビリティやロボティクスなど同社の新ビジネスに関して説明を受けた。李氏と鄭氏の交流は、鄭氏が2020年5月にSamsung SDI社の天安工場を訪問して全固体電池関連で意見交換をして以来、今回が2度目である。同社の全固体電池は要素技術の開発段階であり、商用化は2027年以降になりそうだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2020. 8.

 

-Original column

コバルトフリー電池が韓国で実用化へ、高まるTeslaへの対抗意識

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 2020年7月19日、韓国メディアは、韓国TopBattery(トップバッテリー)がコバルトフリー正極材(活物質)を開発したと報道した。同社は、リチウムイオン電池やエネルギー貯蔵システム(ESS)の開発・生産を専門とするベンチャー企業である。

 TopBatteryは新開発のコバルトフリー正極活物質を、電気自動車(EV)用バッテリーを手掛けるベンチャー企業の韓国Eurocell(ユーロセル)に供給する。Eurocellは、20年末からこの正極活物質を使ったリチウムイオン電池を電動スクーターに搭載する計画だ。

 TopBatteryの正極活物質はスピネル型マンガン系に分類されるもので、マンガンの割合を75%と従来品よりも多くし、ニッケルの割合を25%と少なくした。同社によると、通常はニッケルの割合を増やすことでコバルトフリーを目指すが、それだと電池の寿命と安全性に限界があることから、安価なマンガンの割合を増やした。この正極活物質を使った電池の重量容量密度は135mAh/g、平均放電電圧は4.7Vだという。

 TopBatteryは、13年12月に韓国で初めてESSやEV向けリン酸鉄リチウムイオン電池を開発した。その後、年36万個を生産できる自動化ラインを設立し、量産を始めた。

業界全体でコバルトフリー目指す

 現在、「バッテリーご三家」と呼ばれるLG Chem(LG化学)、Samsung SDI(サムスンSDI)、SK innovation(SKイノベーション)をはじめとする韓国の電池業界は、コバルトフリーを志向している。コバルトは埋蔵量が少ない上、今も紛争が続くコンゴの生産に依存しているため、供給が安定せず価格が上昇し続けている。EVの普及推移から30年を境にコバルト不足も懸念されている。

 世界の人権問題を調査・是正勧告している非政府組織(NGO)のAmnesty International(アムネスティ・インターナショナル)は17年、コンゴのコバルト採掘で児童労働や危険労働が放置されていると告発する報告書を発表した。19年末には国際連合児童基金(UNICEF)も、コンゴ南部の鉱山で児童約4万人が1日1~2米ドルの賃金で働いていると公表した。これらの報告によって、コバルトを利用する大手企業は「採掘の労働環境に目をつぶって安く仕入れることにしか興味がない」などと批判されるようになった。

 そこで、電池メーカーは短期的にはコバルトを倫理的な方法で確保しながら、長期的にはコバルトフリーを目指している。前出の韓国バッテリーご三家も、コバルトをはじめとする鉱物の確保に当たり、紛争鉱物問題に取り組む団体であるResponsible Minerals Initiative(RMI)に加入している。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2020. 8.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00012/

FeRAMの集積度を1000倍に、0.5nmまで微細化 Samsung支援の研究

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 韓国Ulsan National Institute of Science and Technology(蔚山科学技術院、UNIST)教授のJun-hee Lee(イ・ジュニ)氏らのチームは、強誘電体メモリー(FeRAM)の集積度を1000倍以上に高められる理論を発表した。FeRAMは、次世代メモリーの有力候補の1つ。今回の研究成果によって、現在は10nmあたりで停滞気味のメモリー製造プロセスを0.5nmまで微細化できるようになるという。

酸素原子4個に1ビットのデータを格納

 FeRAMは、強誘電体を記憶素子とする不揮発性メモリーの一種である。強誘電体に電圧を与えると分極が生じ、電圧をゼロにしても分極が持続する(残留分極)。正負の残留分極を論理値の「0」「1」に対応させている。

 Lee氏らの研究では、強誘電体材料として酸化ハフニウム(HfO2)を用いている。Lee氏らは、HfO2に特定の電圧を与えると原子間の弾性相互作用が消える現象を発見した。弾性相互作用を打ち消す遮蔽膜が形成されるのだ。この現象をスーパーコンピューターで再現したところ、あたかも真空中であるかのようにHfO2中の酸素原子4個の位置を個別に制御できることを確認した。この酸素原子4個ごとに1ビットのデータを格納することが可能だという。

 従来は、「ドメイン」と呼ばれる数千個の原子から成る群に1ビットのデータを格納していた。ドメインは約1000nm2であるのに対し、酸素原子4個のまとまりは0.2nm2とはるかに小さい。データを格納する単位が⼩さくなることで、メモリーの集積度を⾼められるわけだ。

 半導体メモリーでは、記憶素子が限界レベルより小さくなるとデータの格納能力が消失する「スケーリング」という問題がある。Lee氏らの研究成果は、この限界を突破する可能性を秘めている。

 Lee氏によると、FeRAMの先行研究はドメインを小さくすることに焦点を合わせたものが多かったが、同氏らのチームは発想を転換して「ドメインは必要なのか」という疑問から出発した。フラットバンド理論を強誘電体に応用したことが、従来の固定観念を覆す発見につながった。CMOSプロセスに適用できるので、商用化の可能性も高いとみられる。「原子を分割しない限りにおいて、個々の原子に情報を格納する手法は最良の集積化技術だ。この技術を応用することで半導体の微細化がさらに加速することが期待できる」(同氏)。

 Lee氏は、ソウル大学物理学部で凝集物質理論を研究して博士号を取得した経歴を持つ。新素材に関する研究のバックグラウンドが今回の理論発見に結び付いたといえる。現在はシミュレーションだけを実施した段階で、これから実験で理論を証明する計画である。なお、同氏らの研究成果は、英『Science』誌に2020年7月2日付で掲載された1)。

 Lee氏らの研究は、Samsung Electronics(サムスン電子)の未来技術育成プロジェクトとして選定されたものの1つで、Samsung Science & Technology Foundation(サムスン未来技術育成財団)の支援を受けていたほか、韓国政府の科学技術情報通信部(韓国の部は日本の省に相当)の「未来素材ディスカバリー事業」にも指定されていた。今後、この研究から商用化可能な技術が開発されれば、サムスン電子のメモリーに優先的に適用される。

趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

<<NIKKEI X TECH>>

2020. 7.

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00011/

新型コロナでロボット活用進む韓国、非対面サービスの需要増に期待

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として防疫ロボットの需要が高まっている。

 例えば、韓国の通信事業者SK Telecom社の本社では、2020年5月から自律移動ロボットが訪問者の体温測定やビル内の消毒などを行っている。消毒については、人がいない空間を自動で認識して消毒液を噴霧するほか、夜間にビル内を走行して紫外線ランプを照射する。さらに、マスクを正しく着用していない人や密集している人々も自動で認識し、マスク着用や社会的距離の確保を依頼する。

 これまで警備員や外部業者に委託していた訪問者対応や消毒といった仕事をロボットで置き換えることで、効率良く防疫体制を整え、感染リスクを減らす狙いがある。



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趙 章恩(ITジャーナリスト)

 

《日経Robo

2020. 7.

 

-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/rob/18/00006/00057/