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| HDR制作解説書Ver.2 世界の映像クリエーター、技術者による解説 |
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<ハリウッドのHDRカラーグレーディングから> <HDRの運用と課題> <HDR制作に挑む> <特別報告>
140ページ 定価1,500円(本体価格1,389円/送料別) 詳細 |
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LINEの親会社で韓国最大のインターネット事業者であるNAVER社は、2018年3月23日に開催した株主総会で2018年は2つのキーワード、「AIビジネス」と「グローバル市場拡大」のために、投資を拡大する方針だと明かした。同社CEOの韓聖淑(ハン・ソンスク)氏はこの場で、「これまでAIとコンテンツに多大な費用を使ってきたが、今年もAIと欧州市場開拓への投資を計画している。
AIに関しては有能な人材確保のための投資もする計画だ」、「新しいことを始めないと3年後(NAVER社が)どうなるかわからない」と述べた。韓国金融監督院が公開している企業の資産データによると、同社は3兆ウォン(約2900億円)を超える現金を保有しているので、大規模投資やM&Aの余力は十分あるといえる。同社は2017年7月にもAIを中心とした新技術に今後5年間で5000億ウォン(約490億円)投資すると発表している。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
《日経Robo》
2018.4.
-Original column
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2018年になり、韓国Samsung Electronics社(以下Samsung社)と韓国LG Electronics社(以下LG社)のAI競争は激しさを増している。両社は、2018年を本格的にAI搭載家電が売れ始める年と見込んでいるようだ。1月に米国ラスベガスで開催された世界最大級のエレクトロニクス展示会「CES 2018」でも、2月にスペイン・バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2018」(MWC2018)でも、ハードウエアの単純な仕様より「AI搭載でより使いやすくなった」ことを強調していた。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
2018.3.
-Original column
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振り返ると平昌五輪の開会式といえば人面鳥、ではなく1218台のドローンが作った五輪マークだった。開会式は毎回、五輪マークをどれだけ斬新な方法で登場させるかが成功の決め手と言われてきた。
開会式では、地域住民1000人がLEDで平和を象徴する鳩を作った後、白い風船を飛ばした。白い風船は1218台のドローンに変わり、スノーボーダーの形を作った。その後、五輪マークを作った。五輪公式スポンサーであるインテルのドローンショーだ。

ただし、これは現場で行ったパフォーマンスではなく、事前に録画した映像である。開会式場が狭く、風も強かったため、墜落する危険があったからだ。インテルによるとNGはなく、五輪マークは一発で成功したという。ギネス世界記録登載を狙い、ギネスの担当者も撮影現場で見守った。
韓国で話題になったのは、1218台のドローンを1台のパソコンと一人の操縦士が操作したことである。インテルによると、ドローンをコントロールする自動化プログラムがあるので、ドローンの数は1万台に増えても問題なく操作できるという。
韓国では農作業や国有地の山林管理、災害予防など、幅広くドローンを使っている。国土交通部(部は省)の統計によると、届け出られた商業用ドローンは2013年の193台から2017年は3735台へと増えている。国土交通部は韓国内ドローン市場規模を2017年の700億ウォン規模から2027年は2兆5000億ウォンに拡大させる目標を掲げるほど、ドローン産業に期待している。
韓国にはドローン操縦資格試験もあり、地方大学にはドローン学科までできたほどだ。ドローン操縦資格取得者数は2013年の52人から2017年は3736人に増加した。雨後のタケノコのように増えたドローン塾では、ドローン操縦資格さえあれば、農村で仕事がもらえ年俸1億ウォンも夢ではないと宣伝している。
しかしインテルのドローンショーの技術からすると、ドローンの使用用途に合わせた操縦プログラムさえあればいいので、特別な操縦資格はもういらないかもしれない。それよりも、人が関与しなくてもドローンを操縦できる人工知能のアルゴリズムを考えられる専門家を育てる必要があるだろう。また韓国メディアは、インテルのドローンショーのようにドローンを使って美しい演出ができる芸術家を育てる必要があると強調していた。
ドローンは開会式のショーだけでなく、五輪の警備にも使われている。韓国軍と駐韓米軍が協力してドローンで五輪競技場を航空偵察し、映像をセキュリティ管制センターに送信するものだ。警備やテロ防止に役立てており、HD映像のカメラや熱感知カメラを搭載したドローンが平昌を訪問した外国首脳の警護にも使われていた。
聖火リレーでも5Gネットワークで制御するドローンが登場し、短い距離だが聖火を運ぶパフォーマンスを行った。聖火リレーでは人が乗って操縦する大型ロボットも走者として参加した。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)
NIKKEI X TECH
2018.2.
-Original column
http://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00167/022100003/
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韓国で大きなスポーツ大会があると、必ずといっていいほど盛大なパブリックビューイング、いわゆる街角応援が繰り広げられる。しかしこの冬のソウルは連日氷点下10~15度の大寒波に襲われたため、寒すぎて街角応援ができなかった。
その代わり、駅構内や特設イベント会場など、室内に大型テレビを置いて2017年5月から始まった4K地上波本放送を流し、応援できるようにした。地上波放送局3社とLG電子が提携し、LG電子の4Kテレビを購入して地上波4K放送を受信している世帯限定で、3月まで無料で「TIVIVA」というテレビ向け4K放送アプリを使えるようにした。テレビのメニューからTIVIVAを選択すると、全ての五輪競技を4Kで視聴できる。時間の関係上、地上波放送局が中継しなかった競技も見られるので、スポーツファンには嬉しいサービスである。

仁川空港第1ターミナルの地下には横15メートル、縦3.8メートルの曲面パノラマ大画面Ultra Wide Visionがあり、五輪競技の中継を行っている。
この他にも空港内に平昌五輪会場で使われている5Gメディアサービス「シンクビュー」や「オムニポイントビュー」などの体験や、VR(仮想現実)でスキージャンプやボブスレーを楽しめるコーナーがあった。
仁川空港第2ターミナルの出発ロビーではロボットがコーヒーを入れて無料でふるまってくれる。出発ロビーと到着ロビーには案内ロボットと掃除ロボットがいる。案内ロボットはAI(人工知能)チャットボットのように利用者の言葉を理解して道案内をしたりゲートを案内したり、目的の場所までエスコートしたりする。掃除ロボットは人や物がある場所をよけ、後で掃除をしに戻ってくる空間認識機能を搭載した。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
NIKKEI X TECH
2018.2.
-Original column
http://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00167/021900002/
2018年2月9~25日の日程で、平昌五輪が開催されている。平昌は2010年冬季五輪の開催誘致から始まり、3度目の正直で2018年の冬季五輪開催地に選ばれた。それだけに、韓国人にとって平昌五輪は「ついにこの日が来たか!」というぐらい開催が待ち遠しかった。
平昌に行ってみると、寒い。全ての川がカチカチに凍っている。韓国のテレビでレポーターが「脳が凍るほど寒い」と言っていたのが印象的だったが、それは大げさではなかった。オリンピックスタジアムに近づくほど風が強く、今までに体験したことがない強風で体が勝手に動いてしまうほどだった。
平昌では五輪競技を観戦するのも楽しいが、平昌が目指したITオリンピックを体験できる場所もたくさんあるため、展示場を回るだけでも楽しかった。平昌五輪の競技場は雪の上で行う種目は平昌市、氷の上で行う種目は江陵市、と車で50分ほど離れている。平昌市と江陵市にはそれぞれ、韓国のロボットや地上波4K放送、5Gテストサービス、VR(仮想現実)、AI(人工知能)通訳といったITサービスを体験できる。
特に興味深いのは五輪期間中しか体験できない、5Gテストサービスだった。5Gは超高速、超連結、超低遅延が特徴の新しい通信ネットワークである。現在のLTEよりも20倍以上速く、より大量のデータを送受信できるため、韓国のキャリアは「データがガソリンの役割をするインダストリー4.0の時代には欠かせないインフラ、通信の高速道路」と宣伝している。
5Gで何ができるのか。分かりやすく面白いのは、競技を中継する「インタラクティブ・タイムスライス」「オムニポイントビュー」「シンクビュー」「360度VRライブ」といったサービスだった。

テスト用の端末にはサムスン電子のタブレットPCを使っていた。5Gテストサービスのため、臨時の電波承認をもらったタブレットを手作業で100台ほど作り、それをソウル、平昌、江陵に置いた。試作品だからかとても重かった。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
NIKKEI X TECH
2018.2.
-Original column
http://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00167/021600001/
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先の韓国大統領選挙戦は、まれに見る盛り上がりぶりだった。選挙に国民の関心が向くこと自体は歓迎すべきだが、その陰ではソーシャルメディアを中心に大量のフェイク(虚偽)ニュースが飛び交い、大きな混乱が生じていた。スマートフォン時代の選挙で起こった事態の顛末を紹介したい。
2017年5月10日、波乱の選挙戦を制し、文在寅(ムン・ジェイン)第19代韓国大統領が誕生した。
韓国社会世論研究所が同日、19歳以上の男女1044人に行った世論調査では、回答者の83.8%が文大統領に期待すると答えている。
大統領選挙期間中の選挙運動では、文候補(大統領)支持者の熱狂ぶりは特にものすごく、街角演説に自作のうちわやプラカードを持ち込み、まるでコンサート会場のような盛り上げ方で派手な応援をしていたのが印象的だった。
文候補の所属政党「共に民主党」も、こうした熱心な支持者に応えようと、演説が終わった後に応援に駆け付けた現役国会議員らが壇上に上がって、歌ったり踊ったりして大いに場を盛り上げた。
だが、筆者の目が釘付けになったのは、むしろ、国会議員らが客寄せパンダになって踊っている間、「共に民主党」の職員たちが支持者の周りにテーブルを置いて、「文候補が大統領になったらこういうことをしてほしい」という要望を聞いてパソコンに入力していたことだ。こういう光景は初めて見たのでとても新鮮だった。
一方、さまざまなオンラインコミュニティサイトでも、政党関係者だけでなく、各候補者を支持する人たちの書き込みがあふれていた。
候補者の公約や経歴を写真入りでまとめたものから、パロディあり、お笑いネタありでユニークな応援をする人も多かったので、ネット上もまた、お祭りさながらの大騒ぎだった。
――ところがこの後ほどなく、有権者たちがお祭り騒ぎに興じているわけにも行かなくなる事態が発生する。今回の大統領選挙戦でも、ソーシャルメディアを中心に拡散するフェイク(虚偽)ニュースが大問題になったのだ。
Googleの調査(注1)によると、韓国のスマートフォン普及率は90%以上となっており、そんな国民の大半がスマートフォンを持つという国の実情を反映してか、ソーシャルメディア経由でのフェイクニュースの流通が大激増。各党の選挙対策は、専ら「虚偽情報や誹謗中傷の火消し」が最重要業務となってしまった。
早くからインターネットが普及している韓国では、1990年代後半から選挙の度に、「インターネット世論を制する者が選挙を征する(=当選する)」と言われてきた。従来はパソコンでインターネットを見る人が圧倒的だったので、ポータルサイトニュースのコメント(「デッグル」=答えの言葉)欄こそが世論を盛り上げる重要な場だった。
朴槿恵(パク・クネ)前大統領が誕生した2012年12月の大統領選挙では、国家機関である国家情報院と国軍サイバー司令部が、与党を擁護し野党を誹謗中傷するコメントを書き込む「デッグル部隊」を運営していたことが内部告発により発覚。責任者らは二審で有罪となった。
そんなこともあって、選挙運動期間中は実名を確認してからコメント欄に書き込みをするよう法律が変わった経緯がある。
今回の選挙では、ポータルサイトになり代わり、スマートフォンでアクセスしやすいオンラインコミュニティやソーシャルメディアが、フェイクニュースの温床となったのだ。
ソーシャルメディアでシェアしやすいよう「工夫」し、写真と文字をまとめて1枚の画像にしたフェイクニュースが多かったのも新しい動きの一つである。
2017年5月8日、韓国中央選挙管理委員会サイバー選挙犯罪対応センターが公開した公職選挙法違反行為の摘発状況によると、同年5月6日までに同委員会が摘発したインターネット上の選挙法違反行為は、合計3万8657件に上る。
このうち、「虚偽事実公表・候補者誹謗」が2万5049件(全体の64.8%)と最大であり、2012年の大統領選挙時に比べて約6.3倍となった。それに続くのが、「世論調査公表・報道禁止違反」の1万1800件(同30.5%)である。
韓国警察庁も、5月8日までの選挙運動期間中に、ソーシャルメディアで広がった選挙に関するフェイクニュース55件を摘発した。このうち12件を捜査し、9人を立件した。残りの43件は、政府機関の放送通信審議委員会を通じ、フェイクニュースが掲載されているウェブサイトに削除を求めた。
一体どんな人がフェイクニュースを流すのだろうかと思ったら、なんと現職のソウル市江南区庁長(注2)も混じっていた。文在寅候補を中傷する書き込みを行ったとして、中央選挙管理委員会と同候補から告発を受けていた申燕姫(シン・ヨンヒ)区庁長は、4月に入り、警察から取り調べを受けた。
同区庁長のフェイクニュースは、これを真に受けた保守派候補支持者のシニア層を中心に、その家族や知人に転送され拡散したことでも問題になった。韓国では、ポータルサイトやニュースサイトの記事をコピーしてソーシャルメディアに掲載すると、自動的に出所とURLが添付される仕組みになっている。
つまり、こうした出所がないニュースはフェイクニュースである確率が高い。これを知らずに、フェイクニュースを拡散してしまうシニア層が少なくなかったのだ。日本ではそれほど問題視されそうにない話なのだが……なぜ、韓国では問題なのか。
注2 : 区庁長 日本の「区長」に相当
家族単位の行事が多い韓国では、おじいさん、おばあさんから孫の世代まで、親戚一同がグループチャットでつながっているケースが多い。
投票日が近くづくほど、オンライン上のコミュニティサイトには、フェイクニュースは家族仲を険悪にするという嘆きにも似た次のようなつぶやきが、たくさん見受けられるようになっていた。
「親戚があまりにも多くのフェイクニュースを転送して来るので友だち登録を解除した」「母がフェイクニュースを信じて保守派に投票するよう何度もメッセージを送って来る」 ――などなど。
いかにも韓国らしいといえば、その通りなのだが。
こうした事態に、文在寅大統領就任後、大統領の支持者らを中心に「集団知性でフェイクニュースに立ち向かおう」という活動が始まった。
大統領の日々の動静や談話を、大統領報道官の言葉を中心にウィキ形式で記録・更新するサイトを作り、大統領に関するニュースがフェイクかどうかを参照できるデータベースを作ろうというのだ。
ドイツでは今年4月、ソーシャルメディア運営会社がフェイクニュースが掲載されていることを認知してから一定時間内に削除せず放置した場合、最高5000万ユーロの罰金を賦課する内容の法案が閣議決定された。
韓国でも、既に何度も国会でフェイクニュース対策に関する討論の場が設けられている。専門家の意見を聞きながら、「フェイクニュースとは何か」「フェイクニュースは表現の自由に相当するか」といった所から話し合い、徐々に議論を深めていくようだ。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
ダイヤモンド online
「コリア・ITが暮らしと経済をつくる国」
2017.5.
-Original column
http://diamond.jp/articles/-/129681
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意外に思えるかもしれないが、韓国は日本をIT輸出の世界重要拠点の一つと捉えて東京に韓国行政機関の拠点を置いたり、日韓のコンテンツ産業の橋渡しをする機関の拠点を置いている。また、韓国の多くの若い人材が日本での就職を望み、政府もそんな動きを支援しているのだ。なぜ、韓国の企業や人は、日本のITマーケットを目指すのか。
韓国の政府機関には、韓国企業の日本進出をサポートする拠点を東京に置くものがある。その中で、IT分野で中心的なサポートを行っているのが、「大韓貿易投資振興公社(KOTRA)東京IT支援センター」と「韓国コンテンツ振興院(KOCCA)日本ビジネスセンター」である。
KOTRA東京IT支援センターは、2001年に前身のiPark Tokyoとして発足、2008年からはKOTRAが運営を続けている。
主な支援内容は、韓国ITベンチャーのための東京でのオフィス提供、企業交流のための展示会(韓国IT Expo、KOREA ICT PLAZA)や、セミナー・交流会(Korea IT Cafe)の開催、そして、日本企業に向けた韓国ITビジネスの情報提供などだ。
KOTRAの在外国IT支援センターは、東京、米国(シリコンバレー)、中国(北京)の3カ所にしかない。東京、シリコンバレー、北京は、韓国IT産業のグローバル化を推進する戦略拠点であり、韓国のIT輸出の三大拠点であるという理由からだ。
一方、KOCCA日本ビジネスセンターもオープンは2001年で、韓国のITコンテンツメーカーの進出支援窓口として活動している。
日本のコンテンツ市場動向のレポートの発行、各種デジタルコンテンツの輸出に関する、対日ビジネスのサポートとコンサルティング、日韓両国のコンテンツビジネス活性化のためのイベント開催、日韓コンテンツ企業のネットワーキングイベント開催などを行い、特に、日韓共同制作のコンテンツを第三国に輸出するなどのパートナシップ構築にも積極的に取り組んでいる。
あるいは、こうした機関のように日本に拠点を置かないまでも、韓国企業のコンテンツを日本に売り込むための商談会を定期的に開催し、日本までの渡航費や参加費などを援助する政府機関や自治体、各種協会は、実は数えきれないほど多い。
実際、韓国のIT企業は、ベンチャーを中心にこうした機関のサービスを積極的に活用している。彼らが日本のITマーケットを魅力的に感じているのは、大きくは次の二つの理由からだ。
韓国は、国民番号のIT管理を始めとするサイバーセキュリティへの対応など、IT化によって生じる各種の課題を日本に先駆けて多く経験し、成功事例や失敗事例もたくさん持っていて、そこから日本で起こっている問題に最良のソリューションを提供できる。日本企業が必要としているソリューションで、欧米企業にないソリューションをすぐに提供できるという点が一つ。
もう一つは、自社のサービスや技術が、日本で通用すれば世界でも通用するという点だ。
日本企業には独自の商慣行や安全基準が根強く残っていて、システム開発にも細かな注文が多い。品質管理が徹底しており、色々なテストに合格しなければならない。あるいは、24時間体制でサポートをしなくてはならないなど、グローバルスタンダード以上の要求水準が立ちはだかる。
さながら、日本のクライアントの厳しい要求をクリアすれば、世界のどの国に行っても難しい仕事はない、と言われるほどだ。日本企業の要求の高さは、韓国はもちろん、世界で知られてるので、日本企業と取り引きしていること自体が「仕事ができる企業」という保証にもなるというわけだ。
それに、日本企業は当初の採用基準が厳しい代わりに、一度契約を取り付ければ長期にわたって継続的に仕事をくれるという点も、韓国の企業に好感を持たれている.
多くの日本のビジネスパーソンは、韓国企業がこれほど日本を「ITマーケット」として重視していることをご存知なかったことだろう。そこで、今一度、話題をKOTRA東京IT支援センターとKOCCA日本ビジネスセンターに戻してみたい。
KOTRA東京IT支援センターは、韓国のITの専門家や機関、有望なITベンチャー企業が海外進出を目指す際、それぞれにオーダーメードのローカライズサポートを行っている。
同センターの直井善郎副所長は、「日本企業の優れた点、韓国企業の優れた点に触れる機会を得て、双方を合わせた新しいサービスや技術が生まれる瞬間を目の当たりにしてきました。韓国のITベンチャーは日本企業にはない発想で提案をします。しかも、開発がとてもスピーディ。日本の企業に、こうした韓国ITベンチャーの魅力を伝えたいのです」と述べる。
東京IT支援センターの“卒業生”には、遠隔サポートソリューションのアールサポートなどがいる。同社は、NTTドコモの「スマートフォンあんしん遠隔サポート®」に採用された技術を開発した。こうしたポテンシャルを持つ多くの韓国企業が、今も同センターを訪れている。
KOCCA日本ビジネスセンターの仕事は、ITという縛りを外し、もう少し間口を広げてみてもよいかもしれない。
みなさんは、「駐日韓国文化院」をご存知だろうか。東京・新宿区にある個性的なデザインのビル。ここでは、韓国語教室や韓国映画上映会、韓国の伝統文化を紹介する講演など、毎日、何かしらのイベントを開催している。しかも、ほとんどが無料なので、だれでも気軽にできるという点でも好評だ。
KOCCA日本ビジネスセンターは、日本が世界有数のコンテンツ大国であるという判断によってここに拠点を置き、日韓のコンテンツビジネス活性化を支援する。
同センターの李 京垠(イ・キョンウン)センター長は、「今後、センターの機能をさらに拡張し、より多様な韓日ネットワーキングの場を作りたい」と述べる。
実際、韓国政府からは大きな期待を寄せられるものの、日本のマーケットにはIT産業同様、さまざまな高いハードルがあり、その板挟みになりつつも、KPOPや映像などのコンテンツを日本でどうやって販売していくかに腐心しているのだという。
他方、日本に進出を目指しているのは企業に限ったことではない。韓国経済の落ち込みで長期化する、深刻な就職難に疲れた韓国の若い世代も日本への進出を夢見ているのだ。
韓国政府の雇用労働部(部は、日本の省)は、日本のIT企業に就職を希望する34歳以下の人を対象に、年に数回「日本就職成功戦略セミナー」を開催している。
2017年3月のセミナーは申し込み者が多過ぎたあまり、ソウル市内で最も大きな展示施設「COEX」で行われた。セミナーでは、日本語がある程度話せることを前提に、エントリーシートの書き方、面接マナー、日本の経済や日本企業の雇用動向に関するレクチャーが行われた。
雇用労働部は、「東京オリンピックやアベノミクス効果で、日本の景気は上向いており、韓国とは逆に、求人難のため外国人の雇用も増えている」と説明。同部の支援で日本に就職した韓国の人材は、2014年で338人、2015年で632人、2016年には1103人と倍増近い勢いで毎年大幅に増えている。今年からは、技術分野だけでなく事務職の斡旋も始まった。夏以降は、日本就職に向けた勉強会、合宿、企業説明会も随時開催するという。
また、ソウル市内には、システムエンジニアとして日本で就職したい人のための「日本IT就職塾」もたくさんある。ここでは、情報処理技師資格証(日本の情報処理技術者のような資格)を持っている人は日本語を勉強し、ITに関する知識が全くない人は、アプリケーション開発の基礎と日本語を一通り勉強する。
こうした民間の「日本IT就職塾」は、1990年代後半から見られるようになったが、20年経った今でも、根強い人気を保ち続けている。
日本に進出する韓国企業が増え、日本で就職する韓国人が増えることについては、日本のローカル企業や日本人人材との間での競争が激化する懸念もあるものの、長期的に見れば、日韓双方に良い方向に進むのではないかと、個人的には期待している。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
ダイヤモンド online
「コリア・ITが暮らしと経済をつくる国」
2017.4.
-Original column
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サムスン電子が満を持して発売した「Galaxy Note7」に、原因不明の発火事故が相次いだ。これにより同社の業績が大きく落ち込んだことはもちろん、「Galaxy」は、IT関連製品・サービスの輸出を国の一大産業と位置付ける韓国の代表ブランドだけに、韓国経済全体への大打撃が懸念されている。
まさか、自分が人生初の予約購入までして手に入れたスマートフォンが、ネット上で「時限爆弾」と揶揄されることになるとは。
今年8月、歴代「Galaxy」シリーズので中でも、機能性やデザイン性のどれを取っても有数の作になるだろうといわれ、鳴り物入りで発売されたサムスン電子の「Galaxy Note7」が突然発火する事故が相次ぎ、2度のリコールが行われるという事態に至った。
9月2日には出荷が停止されたが、この時点ですでに250万台が市場に出回っており、同社では、これらを全てリコール対象とすると共に、発火の原因はバッテリーにあるとして、別メーカーのバッテリーを実装した同端末との交換を行った。
しかしその後、バッテリーを入れ替えた端末でも発火事故が続いたため、同社は10月に入り、韓国とアメリカで製造販売を中止。日本やヨーロッパなどでの発売も見送りとなった。
本稿を執筆中の10月26日時点でも、発火原因は一向に不明のままだ。この事態に、政府機関である韓国産業技術試験院、国家技術標準院も調査に乗り出した。これらの調査過程では、バッテリーだけでなく、アプリケーションプロセッサや端末設計自体など、あらゆる不具合の可能性が取りざたされている。
実際、発火事故が起きる前からサムスン電子のホームページには、「Galaxy Note7」に関しての色々な不具合が書き込まれていた。代表的なものが「充電中の過熱」と「急速な放電」である。
「ワイヤレス充電すると充電しても、かえってバッテリー残量が減る」「100%充電しても数分後には30%まで落ちる」「ゲームも動画も利用していないのにバッテリーの減りが激しすぎる」「充電を始めると怖いほどバッテリーのところが熱くなる」――などなど。
私の場合、リコールのために3度もサムスン電子のサービスセンターを訪問し、新しい端末が届くまでの1週間ほどは端末が使えなかった。
そこまでして交換した新しい「Galaxy Note7」だったが、結局、バッテリーが過熱することもなく充電にも問題はなかった。しかし、巷間いわれているように、万一発火すると自分がケガすることはもとより周りの人に迷惑を掛けてしまうことになる。そうなっては一大事だ。
そんなこんなで、しぶしぶながら私は「Galaxy Note7」を捨て、「Galaxy S7」に機種変更した。ところが、韓国国内で販売された約55万台の「Galaxy Note7」のうち、回収されたのはわずか10%程度で、残りの約50万台近くが、いまだに国内のどこかで使われているというではないか。ちなみにアメリカでは、まだ100万台ほどがそのまま使われているそうだ。
その一方で、訴訟を起こすユーザーもいる。10月24日、韓国で「Galaxy Note7」の購入者527人が、サムスン電子を相手に損害賠償を求める訴訟を起こした。購入者らは、端末交換や払い戻しのためにセンターを訪問した際の交通費や製品使用に伴う不安などの損害賠償金として、1人当たり50万ウォン(≒4万6000円)を要求している。
10月18日には、アメリカニュージャージー州でも、「Galaxy Note7」を購入したユーザー3人がサムスン電子米国法人を相手に損害賠償訴訟を起こした。
発火の恐れがあるとして何週間も電源を切ったまま端末を使えなかったにも関わらず、端末の月賦と通信料を払い続けなければならなかったこと、端末の交換がスムーズに行われずユーザーを危険にさらしたことを賠償すべきと主張した。
このアメリカでの訴訟は、原告が勝訴すれば他の購入者も賠償金を得られる集団訴訟であるため、サムスンが負ければ莫大な賠償金が必要となるだろう。
「Galaxy Note7」の製造販売中止で、サムスン電子の経営実績は急速な落ち込みを見せる。同社が公式に発表した「Galaxy Note7」関連の損失だけで7兆ウォン(≒6426億円)を超えるからだ。
同社が10月12日発表した、2016年7~9月の暫定業績によると、売上は前年同期比9.06%減の47兆ウォン(≒4兆3158億円)、営業利益は、前年同期比29.63%減の5兆2000億ウォン(≒4775億円)である。
「Galaxy Note7」の生産台数は推定で430万台(このうち韓国とアメリカでの販売台数は約250万台)なので、これを全て廃棄すれば相当な損失になる。
加えて、協力会社が生産途中だった「Galaxy Note7」の部品や、部品を生産するために購入した原材料も全てサムスン電子が買い取ることになった。韓国国内のサムスン電子スマートフォン製造関連協力会社は、中小企業を中心に1000社近くある。「Galaxy Note7」の製造中止で無期限休業した会社もあると報じられているほど、その打撃は大きい。
実は、日本の大手企業にも「Galaxy Note7」向けの部品を同社に供給している企業は少なからずあるため、今回の事態は、日本としても決して他人ごとではない。
何よりも、「Galaxy」ブランドのイメージダウンは大きな痛手だろう。特に、「Note7」は、サムスン電子としても前作の「Note5」や「S6」よりも遥かに力を入れて世に送り出した自慢のスマートフォンで、ファンを中心に購入予約が殺到するほどマーケットの期待も大きかった。
それが、まさかの原因不明の発火事故である。その打撃は損失金額以上に大きいはずだ。
サムスン電子は今回のリコールを機に、製品の安全性強化のため、品質点検プロセスを全て見直すと発表した。どのように見直すのか、具体的な実行計画はまだ発表されてないが、まずは「Galaxy Note7」の発火原因を究明し、スマートフォンビジネスを担う無線事業部をはじめ、全社の業務プロセスを見直すとしている。
同社はスマートフォンの販売台数では世界1位(営業利益ではアップルが世界1位)であり、今まで年間3億台を超えるスマートフォンを販売してきた。これは当然、韓国経済にも大きな影響を与える。
未来創造科学部(「部」は日本の「省」)のデータによると、2016年9月の韓国のICT産業全体の輸出額は145億3000万ドル、輸入額は73億4000万ドルで、71億9000万ドルの黒字だったが、携帯電話端末の完成品と部品の輸出額は18億7000万ドルで、前年同月比33.8%の減となった。
韓国では今回の発火事件によって韓国産携帯電話全体のイメージが悪くなり、輸出がさらに冷え込むのではないかと深刻に懸念する声もある。
その一方でサムスン電子は、2017年春リリース予定の新機種「Galaxy S8」の話題を広げようとしているが、その前に、今回の発火原因を究明することが先決である。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
ダイヤモンド online
「コリア・ITが暮らしと経済をつくる国」
2016.11.
-Original column
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韓国の梨花女子大学で、学生による大規模なデモが起こった。新設学部設立反対を訴え、1万人の学生と卒業生が参加したこのデモは、学生と卒業生だけが利用できるコミュニティサイト上で、時間を掛けた議論の下に実施されたことが話題になった。
韓国屈指の歴史ある女子大・梨花女子大学で7月28日、学生と大学当局が対立、200人を超える学生らが大学本部棟に立てこもり、長期にわたる大規模なデモ行動を行った。
学生側の要求は、韓国教育部(注1)と大学が一方的に進めた「未来ライフ大学(=学部)設立」の白紙撤回と総長の辞任である。 韓国屈指の歴史ある女子大・梨花女子大学で7月28日、学生と大学当局が対立、200人を超える学生らが大学本部棟に立てこもり、長期にわたる大規模なデモ行動を行った。
未来ライフ大学は、商業高校を卒業した会社員、または30歳以上の無職の女性が、面接だけで梨花女子大学に入学できるという新制度を活用した、社会人向けの新設学部だ。夜間講座やインターネット講座を3年ほど受講し、認定を受ければ学位が授与される。
健康とファッションを専攻するウェルネス学科、コンテンツの企画・制作を専攻するニューメディア学科を、それぞれ2017年に開講する計画だった。
おそらく、ここまでの規模のデモは、同大学130年の歴史の中で初めてのことだろう。そもそもの発端は、同大学の現役学生と卒業生が参加するコミュニティサイト「イファイアン」での、未来ライフ大学に関する議論だった。
イファイアンは大学のサイトではなく、2001年5月に当時の学生が立ち上げたもので、在学生と卒業生のためのコミュニティサイトとして在校生が代々運営を引き継ぎ、寄付金や広告掲載で運営費を賄っている。
コミュニティサイトではあるが、学生らが企画して取材した記事も掲載され、社会問題、就活を控えた学生向けの各界専門家インタビューなど、コンテンツは充実している。
だが、中でも多くの学生や卒業生が訪れるのは、「秘密の花園」だ。
注1 教育部:韓国政府の教育担当行政機関。「部」は日本の「省」にあたる
イファイアンには、梨花女子大学の学生や卒業生であることを認証した上で参加できる「秘密の花園」という匿名掲示板がある。
この掲示板で、未来ライフ大学の設立についての賛否が議論されているうちに、次第に人が集まって多くの意見が寄せられた。
「(未来ライフ大学は大学当局の)学位ビジネスである」「教育の質が下がる」「未来ライフ大学の設立を白紙に戻さないなら、みんなで授業料の納付を拒否しよう」など、団体行動に出ようという意見が数多く上げられた。
そして、これら「秘密の花園」で行われた議論がまとめられ、在学生と卒業生らによるは反対声明が発表されるに至る。
声明の内容(要約)は次のとおりだ。
●未来ライフ大学は女性の社会進出を奨励するように見えて、実は本人の能力に関係なく4年制大学の学位がないと昇進できないという社会の非合理的構造を確固たるものにする学閥主義から生まれた考えにすぎない
●高卒社会人女性に学ぶチャンスを与えるべきという大学の意見には同意するが、本当に学ぶチャンスを与えるのなら、生涯教育院(注2)のレベルを上げるか、既存の大学入試の中で社会人入試のルールを作るべきである
●特別な学部を作って学位を授与することにこだわるのは、学位商売である
ネット上の掲示板から生まれた一連の議論、および声明の発表は、やがて、総長との交渉を要求する抗議行動として、学生200人による学内立てこもりに発展した。大学側は、警察に立てこもり学生の排除を要請、1600人の警官が大学内に進入し、もみあいで負傷する学生も出る事態となった。
だが、それでも「秘密の花園」では議論が重ねられ、学生は意見をまとめて大学と交渉を続けた。大学の外に自分たちの意思を伝えたい時は、InstagramやFacebook、カカオトークなどのソーシャルメディア(SNS)を活用した。
注2 生涯教育院:梨花女子大学が運営する社会人向け教育施設
IT時代の学生デモを目の当たりにして気が付いたのは、このデモに明確なリーダーといえる存在が見られなかったことだ。
学生らはインターネットを基盤に議論しているので、つながりもゆるい。意思決定にも時間がかかる。昔からあるデモのイメージとは大きく異なる。
それでも最終的に梨花女子大学側は学生の要求を受け入れた。大学側は8月3日記者会見を開き、未来ライフ大学の設立を白紙に戻すと発表した。国と大学が進めた事業が学生の反発によって白紙撤回されたのは、韓国では初めてのことである。
未来ライフ大学の計画は白紙になったが、総長の辞任を求める学生の立てこもりは続いた。8月10日に大学内で行われた集会では、在学生だけでなく、「秘密の花園」やSNSを見て立てこもっている学生らを応援するため卒業生も集まり、合わせて約1万人を超える人がデモに参加した。
この梨花女子大学の学生による反対行動は、他の大学にも影響を与えた。同じく社会人を対象とする未来ライフ大学を設立しようとしたソウル市東国大学でも、学生らが「学生の意見を聞くことなく一方的に進めるな」と、設立反対の声を出し始めた。
SNSで多くの人が集結し、大規模なデモ行動につながった例としては、2010年から始まった「アラブの春」や、2014年に香港で起こった「雨傘革命」が記憶に新しい。
梨花女子大学のデモは、これらの反政府デモとは異なり、母校のブランド価値を守るための反対行動と批判されながらも、学生や卒業生という限られた関係者が「秘密の花園」というプラットフォームで真剣な議論が重ねられたことが話題になった。
韓国メディアも、「先輩後輩の区別なく、“コミュニティサイトやSNSではみんなが友達”という考えで意見を出し合い討論を重ねた平等なコミュニケーションは、今まで韓国になかったもの」だと伝えている。
趙 章恩=(ITジャーナリスト)
ダイヤモンド online
「コリア・ITが暮らしと経済をつくる国」
2016.9.
-Original column