韓国アプリアワード、位置情報やARなど応用した「生活便利アプリ」が受賞 [2013年12月27日]

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 2013年も残りあとわずかとなり、韓国でも各分野で1年を振り返るイベントが行われている。アプリケーション業界でも、今年公開されたアプリで最も優秀な製品を選定する「スマートアプリアワード」の授賞式があった。韓国のアプリ開発専門家、2000人がデザインやユーザーインタフェース、技術、コンテンツ、サービスを評価し、革新的で優秀な製品を選ぶ。後援しているのは、韓国のICT政策を担当する省庁の未来創造科学部(部は省に当たる)だ。受賞すると、ダウンロードページに大々的に書き込んで宣伝するほど、自慢になるアワードでもある。

 「総合大賞」に選ばれたアプリは、KIA自動車の「KIA Motion」だった。写真と音楽を選択するだけで簡単に動画を制作でき、SNSで共有もできる。しかし韓国内では、「HONDAの動画制作アプリ『road movies』をそっくり真似たのが大賞だなんて」と選定に問題があるのではないかと疑問を投げかけるユーザーも少なくなく、「スマートアプリアワード」の信頼性が揺らいでしまった。

 一方で、部門別大賞や優秀賞を受賞したアプリには斬新な製品が多く、13年を代表できるアプリとして納得できた。

 例えば、「マーケティングイノベーション大賞」を取った韓国・新世界デパートのアプリは、AR(拡張現実)を利用してオンラインとオフラインをつなげるツールである。位置情報を利用してユーザーのいる場所から近い店舗のセール情報を提供し、デパートのARコーナーでアプリを起動すると、スマートフォンの画面にその都度、違う商品が登場し、画面の商品を割引価格で購入できる。

 冬はブーツを履くことが多いが、気に入った靴があっても履き替えるのが面倒だからと買わずに帰る客をつかまえるため、スマホで自分の足を撮影し、気に入った靴にカメラを当てて合成する「バーチャル試着」の機能が利用できる。衣装はスマホではなく、デパート内にあるバーチャル試着専用のブースを利用するようになっている。新世界デパートによると、バーチャル試着やバーチャルクーポンで楽しくショッピングができると口コミで広がり、アプリ公開から4カ月で40万人以上がダウンロードしたという。

「スマートアプリアワード総合大賞」を受賞したKIA自動車の「KIA Motion」の画面

 

スマートTVや他のデバイスと連動するアプリに期待

 「生活サービス部門大賞」は、位置情報を利用して各種料理の出前を注文できる「配達トン」が受賞した。アプリを起動すると自分の居場所から出前を注文できる料理のリストが登場し、メニューを見ながらお店に電話をして注文できる。

 現金やクレジットカードを持っていなくても、アプリ経由であれば携帯電話料金との合算請求で注文でき、次の注文に使えるポイントも貯まるところが便利だとして話題になった。料理だけでなく、花やその他の代わりに買ってきてほしいものをお願いすることもできる。

 「公共サービス分野大賞」は安全行政部の「スマート安全帰宅」が受賞した。自分の目的地と居場所を保護者に伝えることができるアプリで、共働き家庭で子供の居場所を確認したり、子供の居場所をマップ上に表示したり、子供が帰宅経路から外れると保護者にメールで知らせるといった機能がある。国民の8割近くがスマホユーザーの韓国だけに、GPS機能のあるスマホを使って子供やお年寄りの安全を守れるアプリを省庁が無料で配布している。

 「公共サービス分野優秀賞」では、事故の内容と現場をより正確に早く消防や警察に通報できる「スマート救助隊」が受賞した。国土交通部が提供するアプリで、応急処置や生活安全情報といった付加コンテンツもあり、生活必需アプリとして定着している。

 市内の交通状況をリアルタイムに確認できる「ソウル交通ポータル」を、ソウル市が「公共サービス分野」で受賞した。道案内や道路の渋滞や事故確認、駐車場、バスの乗り換えや到着時間案内、地下鉄乗り換えや運行情報案内、ソウル市内各地の防犯カメラ映像確認、交通関連相談(ソウル市コールセンター)などのメニューがある。自家用車で出勤する人が多く、朝から晩まで渋滞するソウルではとても使えるアプリだ。

 韓国では各省庁も生活を便利にする無料アプリ配布に熱心で、企業もオンラインとオフラインをつなげるマーケティングツールとして面白いアプリを無料で提供している。「あると生活が便利」というより、「ないと何もできない」というほど、韓国ではスマホが生活に根付いてしまった。

 14年から韓国では4K放送が始まるほか、冬季オリンピックやワールドカップといったイベントもあるため、高画質スマートTVの普及が増えると見込まれている。スマホだけでなく、スマートTVや他のデバイスとも連動するアプリが今後、「スマートアプリアワード」に選ばれるのではないだろうか。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131226/1116583/

氷点下7度で6泊7日の徹夜待ち、新型iPadとPS4の行列が大きな話題に [2013年12月20日]

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 2013年12月16日午前8時、ついに韓国でも「iPad Air(9.7インチ)」と「iPad mini Retina(7.9インチ)}が発売された。アップル輸入代理店やディスカウントショップ、量販店、キャリアのKTとSKテレコムの代理店前には、氷点下7度の寒波にも関わらず前日の午後から徹夜組が登場した。各店舗では第1号購入者と先着50人までiPad用のキーボードや液晶保護フィルム、専用のカバーを贈呈するイベントを行った。

 あまりにも寒いので、キャリアの代理店は早朝から暖かい飲み物を配ったり、店舗のオープン時間を前倒しにして建物の中で待てるようにしたりして徹夜組に配慮した。販売する店舗の数が多かったので来店客が分散し、長蛇の列というほどではなかったが、繁華街にある店舗には朝5時には200人以上が集まり盛り上がった。

 iPad AirとiPad mini Retinaは、オンライン販売も含めて初日で完売。現在は、注文してから5日ほど待たされるという。キャリアと量販店によると、韓国ではiPad mini Retinaより画面が鮮明で大きいiPad Airの方が売れているそうだ。iPad Airは、既存のiPadに比べてアプリの起動が数秒早くなり、高画質写真や設計図もつぶれることなくきれいに表示できるので業務用にも十分使える、と高い評価を得ている。

 韓国の大手オンライン書店のアラジンはiPad AirとiPad mini Retinaに大河小説全巻や世界文学シリーズ、ベストセラーの電子本をセットにして割引販売したところ、販売開始10分で売り切れ、今は5000人近く予約待ちしているという。新型iPadのおかげで、12月16日から電子本の売り上げも20%ほど増加したそうだ。

 12月17日はソニー・コンピュータエンタテインメント・コリア(SCEK)が「PlayStation 4」(PS4)を韓国で正式発売した。本体の値段は49万8000ウォン(約4万9000円)だ。イベント会場となったソウル市南の国際電子センターは、PS4のロゴで染まった。多くのファンであふれるPS4の発売会場を見渡してSCEK代表の川内史郎氏が涙する場面もあり、韓国のゲーム雑誌は「マリオ(スーパーマリオブラザーズ)激似の川内代表が感激して泣いた」と紹介していた。


「Killzone Shadow Fall」は韓国でも人気の「PlayStation 4」ソフトだ(PlayStationの韓国公式サイトより)

第1号購入者は「もう二度と並びません」ときっぱり

 PS4を1カ月間無料で体験できるブロガー28人も公開した。70倍もの競争から選ばれたブロガーだという。

 会場に6泊7日間も並んだ第1号購入者がいたことで、PS4はものすごい宣伝効果を上げた。韓国のテレビや経済新聞まで6泊7日も並ぶほどPS4はすごいものなのかと特徴や海外での人気ぶりを紹介したからだ。氷点下の真冬に6泊7日もの野宿を覚悟して並んだ第1号購入者のインタビューも韓国のメディアに大きく取り上げられた。

 「奥さんが応援してくれたおかげで挑戦した」という第1号購入者。6泊7日の間もっとも大変だったのは、「SCEKの負担になるほどの好意」だったそうだ。寒さで第1号購入者が体調を崩してしまっては大変だとSCEK側がテントと暖房を用意してくれたが、これが逆に目立って恥ずかしかったという。

 「登山のように、自分の足で苦難を乗り越えてPS4を手にしたかったのに、SCEKの好意でケーブルカーに乗って頂上に着いてしまった気分」だという第1号購入者は、PS5が出たらまた並ぶつもりかと聞かれ、「もう二度と並びません」ときっぱり。購入した第1号PS4はコレクション用で、もう1台を買ってゲームをするのだとか。

 韓国で人気のPS4ソフトは「Killzone Shadow Fall」。第1号購入者をはじめ、会場に集まった多くの人が「Killzone Shadow Fallをプレイするのが楽しみ!」だと話していた。12月20日からは韓国マイクロソフトがPS4のライバルである新型テレビゲーム機「Xbox 360」をPS4より安い34万8000ウォン(約3万4000円)で販売する。Xbox 360の次世代機といえる「Xbox one」は14年に発売予定だ。

 韓国のゲームユーザーは、「行列競争」で勝つのはPS4かXbox oneか、さらに実際の販売ではどうか、といった話題で持ちきり。ゲーム以外にも大いに楽しんでいる。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131219/1116045/

「韓国スマートヘルスケア最前線」CESで目立った「ウエアラブル+ヘルスケア」、LG社も本格的に市場参入へ [2014年01月23]

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2014年1月7~10日に米国ラスベガスで開催された「2014 International CES」では、「フィットネステックゾーン」「ヘルスケアゾーン」が新設され、中国のZTE社やソニーのウエアラブル端末も注目を浴びた。これまでのウエアラブル端末は「こういうものも作れる」というメーカーの技術を宣伝するための展示のように見えたが、2014年はビジネスとして「ウエアラブル+ヘルスケア」「ウエアラブル+フィットネス」に一歩踏み出したメーカーが多い印象を受けた。

目立っていたLG社


 中でも目立っていたのが、韓国LG Electronics社だ。同社は、ヘルスケア機能を備えるウエアラブル端末「ライフバンドタッチ(lifeband touch)」と「心拍イヤホン(heart rate earphone)」を公開した。LG社はCESの会場で実施したプレス向け発表会で、2014年上半期中にライフバンドタッチを発売し、本格的にモバイルヘルスケア市場に進出すると宣言した。

 腕時計型のライフバンドタッチは、身体の活動量を測定するもので、歩数や歩いた距離などからカロリー消費量を計算して表示する。測定した情報は、LG社が提供するフィットネスアプリだけではなく、人気の高い他のダイエットアプリやフィットネスアプリと連動して使えるようにした。

 LG電子のライフバンドタッチはiOSとAndroid両方のスマートフォンと連動する。この点では、自社のスマートフォンにしか連動しない韓国Samsung Electronics社の腕時計型端末「GALAXY Gear」と差異化を図った。


 デザイン面の工夫も施している。柔らかく曲がるので、手首の骨に当たって痛かったりサイズが窮屈で長時間装着しているのが苦痛だったりという不便を可能な限り少なくしている。生活防水機能を備えており、手首の太さに応じてサイズも3種類用意した。有機ELディスプレーの画面をタッチすると、スマートフォンと連動して着信やスマートフォンに保存した音楽を再生する機能もある。

イヤホンで心拍測定

 一方、心拍イヤホンは、イヤホンを利用して耳の血流量から心拍数を測るというもの。音楽を聴きながら測定できる。運動効果を高めるためには一定の心拍数を維持した方が良いため、自分がちゃんと運動効果を出せるほど動いているかをチェックするためにはとても便利な機能といえる。

 心拍数を測定するイヤホンは、韓国の中小企業であるiriver社が2013年のCESで公開し、LG社よりも一足先に販売している。「iriverOn」という名前の製品で、心拍数の測定と同時にGPSを用いて歩いた距離や経路をスマートフォンに記録できるものだ。Bluetooth搭載イヤホンなので、電話の着信機能もある。運動記録用のアプリケーション(以下、アプリ)はFacebookのIDでログインするようになっているので、Facebookの友達同士で運動記録を共有し、励まし合うこともできる。


Samsung社の自転車連動端末にも注目

 Samsung Electronics社は、米国の自転車メーカーであるTrek社と提携し、自転車のペダルを漕ぐと「GALAXY NOTE3」を充電できるサービスを展示した。GALAXY NOTE3をTrek社の自転車のハンドルに装着すると、スマートフォンと自転車に取り付けたセンサーが連動して、自転車に乗って移動した距離、移動速度などをGALAXY NOTE3の画面から確認できるので、サイクリングがより楽しくなるという機能も展示した。この機能は、GALAXY Gearとも連動する。

 中小家電メーカーの韓国Moneual社は、ウエルネス分野のウエアラブル端末を展示した。「Babble」というベビーコミュニケーター端末で、耳が不自由な母親に赤ちゃんの泣き声を伝える。赤ちゃんの近くに丸い人形のような本体を置くと、赤ちゃんの声の音域を分析して、ぐずっているのか、楽しそうにしているのかといった状態を母親用の腕時計型端末に振動で伝える。

産業拡大を支援する韓国政府

 韓国保健福祉部(部は省にあたる)が2013年末に公開した「OECD Health at Glance 2013解説」によると、韓国の一人当たり医療費支出の増加率は2000~2009年の間で年平均9.3%とOECD平均(4.1%)の2倍に当たり、OECD加盟国の中で最も大きかった。過度な医療費負担により貧困層に転落した世帯の割合は0.36%と、OECD加盟国の中で5番目に高いという。韓国では家計に占める医療費の負担が徐々に大きくなっているため、健康を維持し、病気を予防できるようサポートするモバイルヘルスケアが益々注目を浴びるのは間違いないだろう。

 韓国政府は2013年医療法改定による医者と患者間の遠隔診療許可に続き、ヘルスケア用ウエアラブル端末の標準制定、ヘルスケア用バイオセンサー開発、モバイルヘルスケアのための医療情報システム改良、医療情報のビッグデータ分析などを支援している。2014年も韓国政府は世界に先駆け規制を緩和し、韓国の企業が多様なビジネスモデルでヘルスケア市場をリードできるようにするつもりだ。



By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
 2014年1月23
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デスクトップPCより、スマホの利用時間が長くなった韓国 [2013年12月13日]

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2013年12月10日に韓国情報通信政策研究院が発表した調査結果によると、13年の韓国人のネット利用形態が初めて、パソコンからスマートフォンへ移行した。デスクトップのパソコンよりスマホの利用時間の方が長いというのは韓国でも意外だったようで、テレビのニュースにまでなった。

 12年と13年にそれぞれ1万319人と1万464人を対象にプライベート時間のメディア利用状況を調査したところ、スマホの1日あたりの平均利用時間は、12年の約46分から13年は66分と40%ほど増えた。パソコンの利用時間は12年の61分から13年は55分に減少した(タブレットやノートパソコンは調査対象に含まれていない)。

 韓国情報通信政策研究院は、韓国でスマホの利用時間が大きく伸びたのは、ゲームアプリを利用する人が増えたことが影響しているようだ、と見ている。LTE対応のスマホの保有率が12年の11.5%から13年は37.2%と3倍以上増加したことで、スマホから途切れることなく高画質動画を視聴できるようになったのも影響している、と分析した。スマホはテレビを見ながら同時に利用することが多いことも、利用時間が伸びた一因のようだ。

 スマホからメッセンジャーアプリを利用する人が増えたことから、スマホから音声通話を利用する時間は1年間で17.6%減、SMS(ショートメッセージ)の利用時間も61%減少した。

韓国キャリアのSKテレコムは化粧品店やカフェを使い、「Shop in Shop」の形態でスマートフォンを販売している

スマホさえあれば何でもできる社会に

 韓国ではゲームといえばパソコンを利用するネットワーク対戦ゲーム、動画といえばパソコンから利用するテレビ局の再放送VODサイトと、パソコンがネット利用の中心にあった。家庭に子供の数だけパソコンがあって当たり前だった。ところがスマホが急激に普及し始めた11年以降、WindowsOS以外は使えなかった韓国のインターネットバンキングや電子政府サイトもスマホ向けサイトを作るようになり、Windowsパソコンが使わなくなったのもパソコン減少に影響したとみられる。

表●韓国人のメディア利用状況(韓国情報通信政策研究院)
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2012年 2013年
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スマートフォン 46分 66分
家庭用TV 183分 185分
デスクトップパソコン 61分 55分
フィーチャーフォン 22分 11分
(紙)新聞・本・雑誌 53分 52分
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 情報通信政策研究院の別の調査では、韓国20代がもっとも重要だと答えたメディアは「スマートフォン」で、続いて「デスクトップPC・ノートPC」31.2%、テレビ15.9%の順だった。韓国の20代は93.5%がスマートフォンを持っていて、その内57%は移動中にスマーホからテレビを観ていると答えた。さらにその内の26.5%は家の中にいる時もテレビではなくスマホからテレビを観ていると答えた。

 韓国では、スマホが家庭の全ての家電を動かすリモコンになったり、健康管理をしてくれるヘルスケア端末になったり、財布を忘れた時に携帯電話料金を合算請求で決済できるポストペイのおサイフケータイになったり、スマホさえあれば何でもできてしまう社会になりつつある。スマホの利用時間は今後、もっと伸びることは間違いなさそうだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131213/1115203/

韓国で話題の「浮気向け」スマホ、連絡先や写真を隠すシークレット機能充実 [2013年12月6日]

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指紋認識の機能に加え、写真や連絡先を他人に見られないよう隠せるようにした、個人情報保護機能というより、いわば「シークレット機能」までも搭載したパンテックのスマートフォン、その名もずばり「シークレットノート」が、「浮気向け」スマホとして韓国で話題になっている。

 iPhoneやGALAXYといったスマホでも、画面のロックを解除するには暗証番号を入力しないといけない。スマホを紛失した際、他人に使われるのを防止する機能はどの製品もついている。しかし恋人や配偶者から、「スマホ見せて」と言われたらどうするか。子供がスマホでゲームをしたいと頼まれたら、どうするべきか。スマホを貸さずにはいられないだろう。となると、見られたくないものまで見られてしまうかもしれない。

 シークレットノートは、ロック解除方法を「一般モード」と「シークレットモード」に分けて設定できる機能がある。一般モードは通常の暗証番号設定方式で、誰に見られても大丈夫なアプリ・写真・動画・連絡先だけ画面に表示する。シークレットモードで画面を見たい場合は指紋認証しなければならないのである。

 隠したいアプリ・写真・動画・連絡先は、本人が指紋認証しないと画面に表示しないので、「隠しファイルがあることを気付かれることがない」「パソコンのように暗証番号を設定したフォルダが丸見えで問い詰められるといったことがない」というのが最大の特徴だ。

 例えば、浮気相手の連絡先やチャット内容を削除しなくても、誰にも気づかれることなくこっそり隠せる。何かを隠していること自体を「隠せる」わけだ。韓国の代理店やスマホのレビューサイトでは「産業スパイか浮気している人にはぴったり」と評判だ。


シークレットノートのテレビCMでは「浮気」の手助けではなく、マッチョな男性が顔にパックをするなど女性っぽい自分の趣味を「隠す」ために使うという内容にしている

あくまで「私生活を徹底して守るスマホ」として宣伝

 指紋認識の機能はスマホの後面にある。スマホを片手で握った時に人差し指が付くところに指紋認識ボタンがあるので、そこを指でこするだけで指紋認証できる。片手でスマホを持って片手の指の指紋を認識させるといった手間を省いた。指紋は2種類登録できるので、2人分の指紋を登録するか、本人の指紋を指2本分登録できる。

 パンテックは、浮気を手助けするスマホと直接的に宣伝しているわけではない。あくまでも「私生活を徹底して守るスマホ」として宣伝している。完璧なセキュリティと私生活保護機能を必要とする芸能人や著名人に、シークレットノートのユーザーが多いと強調する。シークレットノートのテレビCMは、マッチョな男性が実は顔にパックをしたり自分撮りが大好きだったりといった女性っぽい自分の趣味を隠すために、シークレットモードを使っているという内容になっている。

 2013年10月に発売開始してから30万台を突破し、目標にしていた50万台販売を無事達成できる見込みだ。パンテックはこの勢いに乗ってシークレット機能をさらにアップグレードしたり画面サイズを5.9インチから5.6インチに小さくした「シークレットアップ」という名称のスマホを12月中に発売する。

 シークレットアップはソニーのVAIOにあったような、横から画面をのぞけないようにする「シークレットブラインド機能」を追加した。LINEでチャットをしたり、ゲームをしたりする際に、隣の人がちらちら見るようで気になるというときには、ぴったりかもしれない。パンテックは、「シークレットアップなら100万台は売れるはず」と自信満々だ。

 パンテックは携帯電話一筋の中堅メーカーで、フィーチャーフォン時代はスライド式端末が大ヒット。斬新で面白い携帯電話を作るメーカーとしてサムスン電子に負けず人気が高かった。スマホ時代になってからは鳴かず飛ばずで、経営状況がかなり悪化しているが、シークレットノートとシークレットアップで2014年には巻き返しを狙っている。韓国のスマホ市場には中国勢もどんどん進出している。市場シェア圧倒的1位のサムスン電子を除くメーカー競争はますます熾烈になっている。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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iTunesには負けられない?サムスン電子「GALAXY」専用の音楽配信開始 [2013年11月29日]

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 サムスン電子が「GALAXYシリーズ」のスマートフォンやタブレットPC向けの音楽配信サービス「サムスンミュージック」を始めた。アップルがiTunesなら、サムスン電子はサムスンミュージックというわけだ。Google Play Musicとは別もので、GALAXYシリーズに合わせた高音質音楽サービスが目玉だという。アップルと訴訟が続いているサムスン電子は、iPhoneに対抗して付加価値を付けるためにも、iTunesやApp Storeに負けないコンテンツサービスを自前でそろえたいようだ。

 サムスン電子が独自に提供する音楽配信は、欧米向けには2013年5月から、韓国向けには9月からテストサービスを行っていた。全世界の楽曲320万曲のストリーミングとダウンロード、ラジオ機能のほか、「歌手が自分の隣で歌っているかのようだ」といわれるCDより4倍高音質なUHQ(Ultra High Quality)で再生できる機能まで用意し、11月25日から本格的にサービスを始めている。320万曲は韓国の音楽配信サービスの中では最大曲である。

 GALAXYのスマホやタブレットPCからサムスン電子のコンテンツストアである「サムスンハブ」をアップデートすると「ミュージック」のメニューが登場。サムスン電子が自らコンテンツを調達して販売するこのサムスンハブには、映像や電子本、ゲーム、学習に続いて音楽のカテゴリーが追加された。


 

音楽をダウンロードできるストアの画面

韓国キャリアの音楽配信サービスより安い

 サムスンミュージックの韓国での利用料はストリーミングだけでは月額で約500円、ストリーミング+ダウンロード30曲分で月額約900円。韓国のキャリアが提供している音楽配信サービスより100円ほど安い値段設定だ。

 韓国の音楽配信サービスは音楽専門のコンテンツプロバイダーではなく、KTやSKテレコムといった通信キャリアの子会社が市場のほとんどを占めていた。携帯電話やスマホを購入すると、それぞれキャリアの音楽配信サービス用のプレーヤーがプリインストールされていて、利用した分キャリアの通信料金に合算請求するかたちになっていた。

 音楽配信アプリを別途ダウンロードしなくても、すぐ使えて決済も楽なので、キャリアの音楽配信サービスが人気が高かった。SKテレコムが運営する音楽配信サービス「MelOn」の利用者数だけで携帯電話加入者数の40%近い1800万人を超えるというから、韓国でどれほど音楽サービスが人気なのか分かる。

 ところが、韓国で一番売れているスマホ、GALAXYのメーカーであるサムスン電子が直接音楽サービスを提供する、しかもキャリアより安く提供する、となればキャリアの音楽ビジネスのシェアは激減するだろう。

世界市場でアップルやグーグルと勝負できるか

 韓国コンテンツ振興院の調査によると、韓国のオンライン音楽サービスの売上合計は2012年末時点で約910億円、13年は上半期だけで約500億円を突破した。

 デジタルコンテンツ市場全体でみると、最も売り上げが多いのは1位がポータルサイトの広告収入、2位はオンラインゲーム、3位がオンライン音楽配信サービスとなっている。韓国の音楽市場はCDが売れず、コンサートとダウンロード販売、ストリーミング販売で成り立っているため、音楽配信サイトを制覇するものが音楽流通を制覇することになる。

 韓国ではSNSのKakaoTalkも有料音楽配信を始めた。世界市場ではアップルとグーグルの音楽配信サービスを巡る競争も激しくなっている。グーグルはアップルのユーザー向けにも音楽配信を始めた。

 サムスン電子は、「サムスンミュージックを通じてコンテンツビジネスを拡大するというよりGALAXYスマートフォンの競争力を高めるのが目標」というコメントを発表。サムスン電子は10年からアプリケーションの公募を行い、コンテンツ開発会社に約150~300万円を支援したこともある。

 最近はハードウェアからソフトウェアまで一社ですべてを提供するのが主流になっているため、サムスン電子も端末を売るためにコンテンツサービスに力を入れるしかない事情もある。サムスン電子の音楽配信は韓国市場だけがターゲットではなく、世界市場でアップルやグーグルと肩を並べられるかどうか勝負しないといけない。音楽の他にもコンテンツサービスを強化しようとしているサムスン電子に今後も注目だ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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高性能なのにGALAXYの半額で買える「Nexus 5」、幼児もスマホ好きの韓国で大注目 [2013年11月22日]

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LGエレクトロニクスが製造し、Googleが販売する「Nexus 5」が2013年11月22日、ついに韓国でも発売された。キャリア(通信会社)のKTとSKテレコムが扱っており、発売前から「ハイエンドなのに値段はGALAXYシリーズの半額以下」と話題騒然。このNexus 5を巡って、KTとSKテレコムの割引競争がすごいことになってきた。

 韓国では、Nexus 5をGoogleサイトで買うと約4万6000万円(16GB)、キャリアの代理店で買うと約3万8000円になる。定価で買ってもGALAXYシリーズの半額以下だが、キャリアの割引制度を利用すると、最安値で1万円程度になる。KTが独占していた「iPhone」をSKテレコムでも販売するようになってから、KTとSKテレコムは各種割引制度でユーザー獲得競争を繰り広げている。

 そして今度は、Nexus 5をどっちがたくさん売るかの競争になった。「iPhone 5s」も「GALAXY Note 3」も、爆発的に売れたといえるほどではなかったので、KTとSKテレコムは値段の安いNexus 5で年末商戦を盛り上げようとしている。


韓国で人気を集める「Nexus 5」

買い取りと割引制度の併用で1万円にも

 今のところはKTの方が、割引種類が多い。NTTドコモの「プレミアムクラブ」のように、KTの利用金額に応じてもらえる「星」という名前のポイントによって端末価格を割引する。さらに、KTと提携しているクレジットカードに加入すると端末価格から約1万5000円を割引する。割引した分は提携クレジットカード使用金額に応じて貯まるポイントで毎月返す構造になっている。

 キャリアの提携クレジットカードを既に持っている場合は、貯まったポイント分だけ端末価格が安くなる。複数のクレジットカードのポイントを合計して割引してくれるのはありがたい。使っていたスマートフォンの端末も最大約1万4000円で買い取ってくれるので、割引制度をうまく組み合わせると、Nexus 5を1万円程度で購入できる。KTは予約購入特典として、Nexus 5用の補助バッテリーとスマホ用16GBのUSBメモリーを付けている。

韓国の場合、代理店独自の割引制度もあるため、最安値でスマホを買うには代理店を回って最も安くしてくれるところを探すのが一番だ。全国どの代理店で買っても同じ価格なのはiPhoneぐらいである。韓国産メーカーの端末は、キャリアとメーカーの両方から代理店へ端末購入補助金が出るので、補助金分だけもっと安くする代理店もあれば定価で販売する代理店もあり、価格が違う。

 そのせいか韓国はスマホを今どこで最も安く売っているかの情報を共有する掲示板サイトがとても多い。韓国政府は、代理店ごとに値段が違う原因となっている端末購入補助金制度を見直そうとしている。

 最近はMVNO(仮想移動体通信事業者)も最新機種のスマホを販売しているので、2年の約定で加入した場合はキャリアとMVNOのどちらが安いかを計算しないといけない。

 Nexus 5はMVNOのCJハローモバイルも販売している。2年で約定すると端末価格は約2万8000万円とキャリアよりは高いが、通信費はKTとSKテレコムより30%ほど安いので、2年間の料金を比較するとMVNOからNexus 5を購入するのも悪くない。

韓国では平均2.27歳からスマホを活用

 韓国のスマホ利用率は13年末の国民の8割を突破すると見込まれているほど、いまや携帯電話=スマホの時代になった。

 「韓国の子供は平均的に2.27歳で初めてスマホを利用する」というアンケート調査の結果が話題になったことがある。韓国青少年政策研究院が13年10月に0~5歳の子供がいる保護者1000人を対象に調べたところ、初めてスマホを利用した年齢は3歳の26.4%で、1歳は23.6%だった。また0~5歳の1日あたりのスマホ利用時間は36.7%が30~40分と答えた。

 幼児にスマホを使わせる理由としては、70.9%が「子供がほしがるから」、12.5%が「周りの子供との共感態形成のため(つまり、みんなが使っているから)」、6.1%が「特に理由はない」と答えた。幼児が主に利用するアプリは「漫画」が30.5%で「ゲーム」が26%、「音楽」13.1%、「教育コンテンツ」12.1%、「カメラ・写真」11.7%の順だった。

 韓国ではビジネス用とプライベート用にスマホを2台使うビジネスマンも多いので、子供に取られてもいいスマホとしてNexus 5を買うのもアリかもしれない。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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スマートフォンで冷蔵庫の中身まで管理、顔写真から好きそうな音楽をお薦め [2013年11月18日]

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韓国ソウル市にあるCOEX(コエックス)展示場で、2013年11月13日から15日まで「2013国際スマートホーム・ビル展示会」が開催された。産業通商資源部(部は省)が主催し、韓国スマートホーム産業協会が所管するイベントである。

 スマートホームやヘルスケア関連団体のフォーラムがメインのイベントなので展示会の規模は大きくなかったが、サムスン電子と大手キャリア(通信事業者)のKTが「スマートホーム」を体験できるブースを出していた。会場は大学入試のテストを終えて団体観覧に来た高校生で大いににぎわっていた。


団体参観に来た高校生向けにクイズ大会中のサムスンのブース。サムスンのスマート家電の機能やサービス名を当てるクイズで盛り上がる。

サムスンはブース内にスマートホームを再現

 サムスンはスマートフォンで、スマート冷蔵庫、スマートTV、掃除機、洗濯機、エアコンをコントロールできる「サムスンスマートホーム」をブース内に再現した。スマートフォンがリモコン代わりにとなり、家の外にいてもインターネット経由で家の中の家電を制御できる。「外出モード」に設定すれば一斉に家電や照明の電源が消えたり、家に着く20分ぐらい前に「帰宅モード」にすると、エアコンが稼働して快適な温度にしてくれたり、という機能がある。

 こうした機能は何年も前からあり、パソコンから利用できた。今回はスマートホーム制御をアプリにして、家電のアイコンをタッチするだけで楽に制御できるところを強調した。サムスンのスマートホームはお年寄りでも十分使いこなせる、生活が楽になるといったことをアピールした。

 サムスンのブースで最も人が集まっていたのはスマート冷蔵庫の前だった。冷蔵庫のドアにあるディスプレイとスマートフォンが連動し、賞味期限切れ防止、買い忘れ防止を助けてくれる。まだ商品を冷蔵庫に入れるだけで中身と賞味期限情報がインプットされる、という段階まではなってないので手動で入力しないといけないが、冷蔵庫のどこに何があってそれぞれの賞味期限はいつまでなのかを分かりやすいアイコンで冷蔵庫のディプレイ上に表示する。賞味期限が明日までの食材は何か、買い足さないといけない食材は何か、といった情報を冷蔵庫が持ち主に知らせてくれる。

 この情報はスマートフォン上のスマートホームアプリからも確認できるので、「ミネラルウォーター残量1本」「賞味期限が明日までの牛乳があります」といったメッセージが登場し、買い物リストに追加するか、賞味期限前の食材で作れる料理のレシピを検索するか、といったことを選択できる。冷蔵庫の中にあることをすっかり忘れて干し乾びてしまった野菜、どろどろになった牛乳、賞味期限が2年前に切れた調味料なんかが冷蔵庫の中に転がっている余地を与えない。冷蔵庫に余計なものが入っていないので、省エネにもつながる。

大手スーパーと提携も

 買い物リストに登録した商品は韓国スーパーマーケット最大手のEMARTと連携して、スマートホームアプリや冷蔵庫のディスプレイから注文・決済して自宅まで配達してもらうことを計画している。実際にサムスンのスマート冷蔵庫からEMARTに注文できる仕組みにはなっているが、現在はEMART側のサーバー点検のため一時的に注文をストップしているという。スマート冷蔵庫のディスプレイは額縁や家族へのメモ帳としても使え、天気予報、ニュース、スケジュール帳、料理情報といった機能もある。

 また、家電が自ら自分の不具合を知らせるという機能も面白かった。


スマートテレビの右画面に、家電が自ら不具合を知らせてきた。どう対処すればいいのかイラストが登場するのでマニュアルを引っ張り出したり、ネットで使用法を検索したりしなくても済む。

 例えば、掃除機内にゴミがいっぱい溜まると、スマートテレビを観ている途中、画面右に「掃除機のゴミがいっぱいになりました」というメッセージが出てくる。同時に、どうやればゴミを取り出せるのかイラストが出てくる。最近はコンパクトでデザインを優先した家電が増えているため、ぱっと見て直観的に動かせないものもある。このスマート診断機能があれば、マニュアルを引っ張り出したり、ネットで使用法を検索したりしなくても、その場ですぐ対処できる。家電はすべてWi-Fiでつながっている。

KTは「ALL-IP基盤スマートホーム」を訴求

 キャリアのKTはALL-IP基盤のスマートホームということで、KTのスマートフォン型インターネット電話機(サムスン電子GALAXY 070)、「スマートホームパッド2HD(GALAXY Note 10.1)」、スマートテレビが連動したコンテンツサービスを展示した。「スマートホームフォンmini」という名前の固定電話は4インチのシンプルなスマートフォンで、Wi-Fiを利用してインターネット電話、音楽ストリーミング、VODを利用できる。
 


キャリアKTは、ALL-IP基盤のスマートホームをテーマに、タブレットPCや家庭用インターネット電話機から楽しめるKT独自のコンテンツを紹介した。

 KTの音楽ストリーミングサービスは140万曲ほど保有していて、ユーザーに合った音楽を選んでくれるという機能がある。しかし、なぜか音楽を薦めるために顔写真を要求してくる。顔写真から好きそうな音楽を選んでくれるという不思議な機能が付いているのだ。

 ちなみに人相を見るのではなく、髪型とか、服の色とか、その人のスタイルを分析して好きそうな音楽を選んでいるとのことだった。ランダム再生とあまり変わらないような気がするが、知らなかったいい曲に出会えるチャンスもあるので、これはこれで楽しい。

 スマートホームパッド2HDは、家の中ではKTの家庭向けHubを使うことでハイビジョン画質のVODを視聴できるのが特徴だ。家の外ではWi-Fiで普通画質の動画を視聴できる。10.1型のタブレットであっても、ハイビジョン画質だと色もくっきりしてより立体的に見えるので、画面が小さいとは感じなかった。

テレビをタブレット代わりに使う単身世帯に焦点

 韓国でも一人暮らし世帯が増えていて、タブレットをテレビ代わりにする人も増えた。キャリアのモバイルIPTVを利用すれば、地上波放送とケーブルテレビ合わせて60チャンネルほどリアルタイムで受信できるので、タブレットは十分テレビ代わりになる。

 この他に、政府から予算をもらっている実証実験の展示もあった。ウエアラブル端末で人の心理状態を把握して適切なメンタルケアを提供できるようにするヘルスケア、顔の表情や動きなどを分析して罪を犯しそうな人を選び出すカメラ、透明なビニール1枚にしか見えないのに電源を入れると英字も韓国語も入力できるキーボードになり、腕や太ももに巻いても使えるものなどが面白かった。

 またスマートホームとも政府の技術開発とも全く関係なさそうに見える「あなたの家は大丈夫ですか!」と恐怖心をあおる防虫グッズのブースがあったり、韓国SNS協会が「韓流SNS」というのを宣伝していたり、企業向け販促品を宣伝するブースもあった。COEX展示場では年中何かしらIT関連の展示会を開催しているので、出張や観光のついでに活気あふれる韓国の展示会を経験してみるのも、いい経験になるだろう。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131115/1112223/

ネットゲームはアルコール中毒と同じ? 韓国政府はゲーム産業育成を掲げつつ規制も [2013年11月8日]

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韓国国会は今、オンラインゲームを麻薬中毒やギャンブル中毒、アルコール中毒と同じく深刻な“中毒”を引き起こすので厳しく取り締まるべきだという趣旨の法律案を検討している。これは「中毒予防管理及び治療に関する法律」で、通称「4大中毒法」と呼ばれている。この法が制定されると、ゲーム産業は売上高の1%程度を「中毒治癒負担金」として国に支払わなければならない。

 韓国政府コンテンツ振興院が2013年10月末発行した「2013大韓民国ゲーム白書」によると、韓国の2012年ゲーム市場規模は約8900億円。26億3891万ドル分を輸出した。韓国のコンテンツ輸出の実に67%をゲームが占めている。K-POPよりも韓国産ゲームの方が海外で売れているわけだ。自動車やデジタル機器の輸出に負けないほど大きく成長しているのがゲーム産業の輸出である。

 コンテンツ産業を育成するうえでゲーム産業の活性化は欠かせない。韓国のICT政策省庁である未来創造科学部と文化体育観光部(部は省)は、ゲーム産業をK-POP、映画、アニメ、ミュージカルと並んで5大重点コンテンツ産業として育成するという計画を発表したばかりだった。

ゲーム産業振興の半面で規制論が台頭

 しかし、与党のセヌリ党は未来創造科学部と文化体育観光部の政策をひっくり返して、ゲームを「アルコール中毒や麻薬中毒のような社会悪を引き起こす」ということで取り締まろうとしている。セヌリ党はこれといった科学的根拠を示さないままゲーム中毒とアルコール中毒、麻薬中毒は同じと主張しているため、野党の民主統合党とゲーム産業は反発している。

 「育成する」と言ったかと思えば「規制する」と言い始めたりして、足並みのそろわない政府の姿勢にゲーム産業は困惑している。セヌリ党が規制強化しようとしていることが分かってから、ゲーム会社の株価は軒並み下落した。

「社会悪」というレッテル貼りに抵抗

 ゲーム産業は、「負担金以上に問題なのは、政府がゲームを社会悪と断定すること」だと口をそろえる。ゲーム産業の社会的印象が悪くなったことで、ゲーム開発者として働く人たちもプライドを傷つけられたとして、「ゲームが麻薬のように中毒を起こすので社会悪ということは、ゲーム開発者は麻薬売人と同じということなのか」と反発している。

 10月末に韓国を訪問した米グーグルのエリック・シュミット会長も韓国ゲーム産業を擁護して、「韓国のゲーム産業はK-POP以上に成長できる。ゲームを“検閲”するより活性化させるべき」とコメントしたほどだ。

 すでに政府は2011年、青少年のゲーム中毒を予防するため、「強制的シャットアウト制度」を導入している。16歳未満のユーザーは夜12時から朝6時までゲームを利用できないようにシャットアウトし、アクセスできないようにする制度である。

「強制的シャットアウト制度」も効果は限定的

 これは会員登録時の住民登録番号(国民ID)を根拠にした制度だ。その裏をかいて、小中学生らは16歳未満でない親の住民登録番号を盗用して、会員登録し始めた。また、海外にサーバーがあるゲームサイトは強制的シャットアウト制度が適用されない。なので、韓国のゲーム会社だけが影響を受ける結果となった。強制的シャットアウトで夜12時以降は利用できなくても、ゲーム会社はユーザーに利用できなかった時間分の利用料金を払い戻すことをしなかった。これもトラブルとなった。

 ではこうした規制強化に効果はあったのだろうか。その後の国会の調査によれば、強制的シャットアウト制度が始まってから夜12時以降ゲームをしなくなったと答えた青少年はたった0.3%だということが分かった。すると「ゲーム産業に対する無駄な規制はやめた方がいい」という世論がわき上がった。韓国コンテンツ振興院が2012年に青少年12万人と19~35歳の男女3300人を対象に実施した調査でも、ゲーム中毒と言えるほど問題のあるユーザーは全体の2%だった。

 政府がゲーム産業を厳しく規制すればするほど、ゲーム中毒が減るのではなく、ベンチャーキャピタルの投資が減り、新しいゲームの開発が減る悪影響が出ている。ゲーム産業の委縮は、韓国のコンテンツ産業全般に悪影響を与える可能性が高い。数年前まで中国や台湾、日本のネットカフェで見かけるオンラインゲームの多くは韓国で開発したものだった。最近のパソコン用オンラインゲームは中国と米国、モバイル用ゲームは日本のものが競争力を高めて市場を席巻し始めている。

ゲーム産業は署名活動を開始

 韓国インターネットデジタルエンターテインメント協会は、ゲームを麻薬やアルコール中毒と同じように扱うという、世界でも例を見ない「中毒法」に反対する署名を集めている。2013年11月7日までに19万人以上が署名に参加した。韓国のゲーム会社も、自社サイトに反対署名のバナーを貼り、ユーザーに署名を求めている。

 

大手ゲームサイトNEXONも、ゲームを社会悪とみなす中毒法制定に反対する署名を呼びかけている(Noと書いてあるバナー広告)

 11月14日からは釜山市で年に1度のゲーム展示会「GSTAR」が開催される。毎年30万人近くが訪問する大人気の展示会だ。GSTAR展示会のブースでも署名運動を続けるという。

 何でも政府が管理しようとするのが韓国の特徴ではあるが、ゲーム産業に対する政策には反対の声が強い。日本のように、基本的に市場に任せ、政府がゲームやコンテンツ産業にあまり口出ししない姿勢を見るとうらやましく思う。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131108/1111404/

韓国キャリア、LTE周波数競争の一巡後にモバイルテレビ競争始まる [2013年11月2日]

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この2013年秋、韓国のスマートフォン市場では、端末は5型以上の大画面で競争、キャリア(通信事業者)はLTEでモバイルテレビを安く利用するサービスで競争を繰り広げている。

 10月まで韓国大手キャリア3社は「黄金周波数でよくつながるLTE-A」と、周波数を全面に出すCMをしていた。「黄金周波数」とは日本で言うプラチナバンド、800~900MHzの周波数帯のことである(詳しくは関連記事参照)。

 日本ではどうなるか分からないが、韓国では周波数だけでは一般消費者にLTE通信の速さが伝わらなかったようだ。今では高画質モバイルテレビや音楽サービスに競争の重点が移っている。スマートフォンからLTEで途切れることなくハイビジョンクラスの高画質で野球中継やDVD発売前の映画を視聴し、「5.1chサラウンド」で新曲もどこより早く聴けるといったことをアピールしているのだ。

スマホ端末は大画面化

 この秋人気のスマートフォンも、サムスン電子のGALAXY Note 3(5.7型)、LG電子のG2(5.2型)、パンテックのシークレットノート(5.9型)のように、5型以上ばかりである。移動中に1人でテレビや映像コンテンツを楽しむには小さすぎずちょうどいいサイズだ。

 キャリア3社のモバイルテレビやスポーツ中継はLTE加入者でないと利用できないようになっている。KT、SKテレコム、LGU+の3社は「広帯域LTE」という、さらに速度が速くなったLTEサービスを提供している。広帯域LTEサービスでは、LTEは下り最大100Mbps、LTE-Aは下り最大150Mbpsである。LTE-Aの実際の速度はソウル市内中心部で70Mbps前後、人が多い地下鉄の中では20Mbps前後だった。

各社がLTEとコンテンツのセット割引を提供

 KTは月額約550円の音楽ストリーミングサービスをLTE加入者には1年間無料で提供している。また、月額約450円で64チャンネルと5万5000本のVOD(ビデオ・オン・デマンド)がそろうモバイルテレビサービスと、映像コンテンツだけを利用できるLTEデータ通信6GB分がセットになったパック料金制を導入した。1980~2000年代のテレビドラマを10分以内に編集して提供する「思い出のドラマ」というコーナーが目玉である。

 SKテレコムはLTEデータ通信料とモバイルテレビ利用料を合わせて月額約800円のパック料金プランを始めた。70チャンネルあるモバイルテレビで、リアルタイムの野球中継やドラマ、バラエティー、ニュース番組などを視聴できる。ハイビジョン画質の映画や地上波テレビの人気ドラマやバラエティー番組の再放送VODも3万本以上あり、追加料金なしで利用できる。SKテレコムはサムスンと共同販促も実施していて、GALAXY Note 3を購入すると、パック料金が2カ月間無料になる。

 SKテレコムは、キャリア3社の中で唯一米メジャーリーグの試合を中継している。韓国人選手が登場する試合の日になるとLTEとモバイルテレビの加入者が急増するという。モバイルテレビで3Gより料金の高いLTEに加入者をシフトさせる戦略は有効だったようだ。パック料金に加入しなくても、SKテレコムの利用料金に応じて貯まるポイントでコンテンツ料金を決済できるようにもしている。さらに、月額約5000円以上のLTE料金プランに加入した加入者は、毎月約1800円分映像コンテンツを利用できるようにするキャッシュバック制度も始めた。

モバイルテレビを見ながらつぶやく「マルチタスク」も

 LGU+は月約500円で40チャンネルと映画VOD、ドラマ再放送VODを利用できるモバイルテレビ「U+HDTV」に力を入れている。


「LGU+のモバイルテレビ「U+HDTV」

 

LTE加入者だけが利用できる高画質モバイルテレビ(モバイルIPTV)で、リアルタイム放送40チャンネルと地上波テレビ番組の再放送VODがそろっている

 スマートフォンの画面を4分割して4チャンネルを同時に視聴できるマルチチャンネルが目玉である。モバイルテレビ視聴中は電話の着信を拒否する機能もあるので、「ドラマの一番いい場面で、突然の電話に邪魔される」という事態を防止できる。

 モバイルテレビを観ながらSNSでつぶやいたり、ネット検索したりという「マルチタスク」も実現している。韓国ではモバイルテレビや動画を観ながら番組内容をネットで調べたり、出演者が身に着けている洋服を検索して購入したりと、テレビをより楽しむために「マルチタスク」する人が多い。マルチタスクを楽にできるかどうかも競争のポイントになっている。

モバイルテレビを見すぎると料金はどうなる?

 SKテレコムの調べによると、LTEよりさらにネットワークが速いLTE-Aユーザーの方が、スポーツ中継やドラマといった映像コンテンツの消費が多かった。2013年7月の場合、LTE加入者のデータ通信量が月間3.2GBなのに対し、LTE-A加入者は4.1GBで、約1GBほど多かった。

 しかし気になるのはデータ通信料金である。3Gはデータ通信使い放題の料金制度があるが、LTEは従量制。野球中継やドラマを毎日観ていると、とんでもない料金になってしまう可能性がある。

 そこで、キャリア3社は映像コンテンツを利用する時だけ使えるLTE定額料金を始めている。1日2GBずつ月最大62GB分の映像コンテンツを利用できる特別なLTEデータ通信料金をキャリア各社が月額700~900円で提供している。LGU+は、24時間約200円でLTEを使い放題という料金プランも始めた。週末や特別に観たいスポーツ中継がある日だけ加入すれば、従量料金を気にぜず視聴できるというわけだ。

 日本でも地下鉄構内や走行中にLTEを利用できるようになり、モバイルテレビを利用するユーザーが増えているというニュースを見た。日韓のスマートフォンユーザーが欲しがるコンテンツは似ているのかもしれない。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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