韓国ノマドワーキング事情~カフェの電源+Wi-Fiは無料が当たり前 [2013年3月15日]

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円安の影響から、韓国では東京や大阪でショッピング三昧の旅が流行っている。日本に行く理由は温泉にやっぱりショッピング。日本で何を買ったか自慢するブログを見ると、秋葉原や大阪でんでんタウンでフィギュアをコレクションする人も増えている。

 日本を訪問する韓国人観光客の間では、韓国では当たり前なことが日本では当たり前ではないため、日本に来て「メンタル崩壊」(魂が抜けてしまうほどショックを受けること、韓国の流行語)を経験したと話す人が少なくない。その代表的な例がカフェの電源と市内のWi-Fi、それとFAXの存在である。


 韓国は何でも速く変わる。書類はメール、メッセンジャーを使って送信し、手書きのメモや絵はスキャンするかデジカメで撮ってメールで送るのが当たり前の時代になったので、FAXは滅多に見かけなくなった。「ホテルで日本のテレビを見ていたら、FAXで届いたお便りを読むコーナーがあった。今でも家庭にFAXがあって普通に使っているなんて、メンタル崩壊~」という話をよく聞く。


 韓国ではカフェで電源は使い放題が当たり前。もちろん無料だ。大型カフェには2席当たり1つの割合でコンセントがある。韓国のいたるところにあるスターバックスにはたっぷりとコンセントがあるので、スマホの充電やノートパソコンを使うのに困ることはない。もちろんWi-Fiも無料だ。小さいカフェでコンセントがテーブルの近くに見当たらない場合、コンセントを使いたいと言えば、店員が延長ケーブルを持ってきてくれる。


 




 

ソウル市が提供する無料パブリックWi-Fiのロゴ。どこにでもあるので、韓国人はルーターやバッテリーをあまり持ち歩かない


 カフェのコーヒー代(200~400円)は場所代込みなので、客が要求すれば当然電源を提供するというのが韓国式の考え。カフェや食堂、レストラン、どこでも電源を使わせてくれる。韓国の友達に、日本では無料で電源が使えるカフェが少なく、無断でスマホを充電すると「電気どろぼう」になる場合があると話をすると、これも「メンタル崩壊~」と言われる。


 日本に来て、カフェの入り口に「Wi-Fi使えます」と書いてあるので当然カフェ側が無料でWi-Fiを提供しているものだと思ったら、「各自加入しているキャリアのWi-Fiを使ってください、ということだった」と驚きのつぶやきをする韓国人が結構いる。韓国人観光客の多い福岡は、東京に比べると無料でWi-Fiが使えるカフェが多いようだ。


 韓国は大都市の場合ではあるが、Wi-Fiも無料ゾーンが多い。空港や主な駅、デパート、ショッピングモール、ホテル、カフェではそれぞれ施設が提供する無料Wi-Fi、地下鉄の車両内ではキャリアLGU+の無料Wi-Fi(広告動画を観てから携帯電話番号を入力、携帯電話に送られてきた暗証番号を入力することで無料になる)、明洞(ミョンドン)や江南(カンナム)といった繁華街ではソウル市が提供するパブリック無料Wi-Fiを利用できる。ソウル市内のいたるところに無料Wi-Fiゾーンがあるので、海外用データ通信ローミングする必要がない。逆に高級なホテルやレストランほど無料のWi-Fiゾーンがない。


 韓国でこのようにカフェで無料電源とWi-Fiが当たり前になったのは、2009年にスマートフォンを発売してから。それからパソコンさえあればどこでも仕事ができるとして、好きなカフェを転々とする「Coffee」+「Office」の「coffice族」が増えた。カフェ側も無料でセミナールームとプロジェクターを提供したり、一人席を増やしたり、24時間営業したり、「coffice族」を常連にするためのマーケティングを行った。追加料金があるわけでもなく、時間制料金でもなく、コーヒー1杯の値段でカフェをオフィスとして十分利用できるようにしたのだ。スターバックスと並んで韓国で最も店舗数の多いカフェベネは、一部店舗でノートパソコンの貸し出しまで無料で行っている。


 「coffice族」が増えた理由の一つに、カフェの適度に騒がしい自由な雰囲気の中で打ち合わせをすると、もっと自由に意見が言える、もっといいアイデアが浮かぶ、場所が変われば気分も一新してやる気が出る、というのもあった。

しかし2012年あたりから「coffice族」がだんだん減っている。カフェ側が長居する客をお断りしたから、ではなく、もっと居心地のいい場所を見つけたからだ。


 中小企業庁や自治体のベンチャー起業支援またはキャリアの社会貢献の一つとして、無料または安く利用できる一人用オフィスが増えた。外回りの途中にカフェでちょっと仕事したり、大学生がグループ課題のためにカフェに集合したりという利用パターンもあるが、就職難で行く場所がなく起業を目指してカフェをオフィス代わりにする人が多かったからだ。中小企業庁は全国に4万人分の“一人オフィス”を運営している。それでもまだまだ足りないとのことで、民間のビジネスセンターを借りて起業を目指す人に無料で提供する方針である。





SKテレコムが運営するオープンイノベーションセンター内にあるアプリ開発一人起業支援ブース。パソコンさえ持参すれば、インターネットやコピー機、プリンター、会議室、飲み物、起業に関する相談などは無料で利用できる




同施設の休憩スペース。入居審査の競争率はもちろんかなり高い




 一人オフィスは、ノートパソコンさえ持っていけば、ネットワークとコピー/プリンター、会議室、セミナールームなど自由に使える。この施設に入るためには事業計画書の審査が必要だが、合格すれば起業・税金・法律・PR・仕事の悩みなど何でも専門家からアドバイスを受けられる特典もある。キャリアが提供する一人オフィスは、アプリ開発者支援という名目で、アプリ企画・開発のための無料教育を実施している。よいアイデアさえあれば、一人オフィスに入居して、プロの助けを借りてアイデアをビジネスに変えられるというわけだ。


 ソウル市はソウルに住む外国人のために無料の一人オフィスも提供している。事業計画の審査は必要だが、合格すれば滞在ビザ取得はもちろん、起業に必要な手続きも無料でコンサルティングしてくれる。アジア市場をターゲットにネットサービスやアプリを企画しているなら、国際的ノマドワーカーとしてソウル市の支援で起業してみるのはいかが?






趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130315/1083484/

10万円のスマホが数百円? 他社出し抜きのモーレツMNP獲得合戦 [2013年3月8日]

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韓国の通信キャリア3社の発表によると、携帯電話の番号はそのままでキャリアだけ乗り換える「ナンバーポータビリティ(MNP)」利用件数は2012年通年で約1057万件に上り、初めて1000万件を突破した。韓国の人口は5000万人前後なので、国民の5人に1人は利用した計算になる。キャリア側はスマートフォンとLTE加入者の奪い合いによる結果だと分析している。

 キャリアは新規顧客を獲得すべく、MNPで他社から乗り換えると端末補助金を支給し、新機種のスマートフォンを安く買えるようにする。代理店側が利用者を勧誘するため、契約期間が残っている場合は、違約金を代わりに払うための補助金を追加することもある。


 加入者を最も獲得したキャリアは市場シェア最下位のLGU+だ。LTE全国サービスと安い料金で、加入者が50万人純増した。歌手のPSYが「江南スタイル」の曲に合わせて踊りながら「U+スタイル!」と叫ぶ、笑えるCMも好評だった。


 利用者奪い合いが加熱した結果、放送通信委員会は規定を超えるマーケティング費用を使ったとして、キャリア3社に約2~7億円の課徴金と20日前後にわたる営業停止命令を下した。2013年1月からLGU+、SKテレコム、KTの順に営業停止期間が始まった。営業停止期間中は新規加入を勧誘できない。


 3月6日、営業停止の順番が最後だったKTが緊急記者会見を開いた。KTが営業停止している間に、SKテレコムとLGU+がスマートフォンに過度な補助金を支給してKTの加入者を奪った、移動通信市場の流通秩序を守らない、というのだ。KTの主張によると、キャリア2社は、月々の料金が約7000円前後の最も高いLTE料金制度に加入するのを条件に、GALAXY SIII、Optimus Gなど人気スマートフォンの端末価格より高い補助金を代理店に支給し、KT加入者がMNPで乗り換えれば、数百円でこれらの人気スマートフォンを使えるようにしたという。


 法律で定められた補助金は顧客1人当たり約2万4000円だが、SKテレコムとLGU+は10万円近く補助金を支払っている、通常は補助金が3~5万円の段階で課徴金や営業停止の対象になるのにこれはひどい、放送通信委員会がキャリア2社を調べるべきだ、とKTは記者会見で訴えた。


 SKテレコムとLGU+のPR担当者らは、「過度な補助金で他社の加入者を奪ったのはKTが先だ!」と猛反発。これに対しKTは、SKテレコムとLGU+の営業停止期間中には、1日2万5000件前後だったMNPが、KTの営業停止期間中は1日3万5000件を超えている、1万件も多いじゃないか!と憤慨した。SKテレコムとLGU+は、「KTのサービスが気に入らなくてほかのキャリアを選ぶ加入者もいるはずなのに、全て他社の補助金のせいだと記者会見まで開くのはおかしい」、「3月の新学期商戦の時期と営業停止が重なり、KTがかなり焦っているのは分かるが、他社のせいにする前に我が身を振り返るべきなのではないか」と怒りが収まらない様子である。


補助金競争は終わりのない消耗戦でもある。LGU+は営業停止期間中の2月に15万7458件奪われ、他社の営業停止期間中に37万5108件を取り戻した。SKテレコムは26万7093件を奪われた。営業停止が終わってから10日間で15万9947件、奪い返した。営業停止期間中にみなが大人しく自粛するどころか、1社が動けない間に残り2社がさらなる補助金で顧客を奪う図式を繰り返していた。今度はKTの番だ。1日3万5000件のペースで加入者がほかのキャリアへ移動しているので、20日間でかなりの数が移動するだろう。

 キャリアの補助金競争は、新しく大統領が就任したというのに、未だにICT政策と規制を担当する省庁が決まらない現状とも関連がある。放送通信委員会が継続してキャリアの規制を担当するのか、それとも新しい組織を作るのかどうか明確に決まらない。監視の目がない隙に、好き勝手にやってしまおう! という雰囲気もある。


 利用者にとっては、最新のスマートフォンに乗り換えるなら今がチャンスのように見えるが、実はそうでもない。補助金のせいで、代理店ごとに端末の値段が全部違う。しかも毎日のように値段が変わるので、「ここで買っていいのか、もっと安いところがあるかもしれない」と疑ってしまい、なかなか決められない。
 






KTの代理店。補助金競争の影響で、スマートフォンの定価がなくなってしまった韓国。安く買えるのはいいが、もっと安いところがあるかも……と疑ってしまいなかなか決められない



 韓国はキャリアから代理店に支払う補助金だけでなく、メーカーが代理店に支払う補助金もあるので、どの代理店でどのキャリアのどのメーカーのスマートフォンにするかの組み合わせによって端末価格が大きく違う。代理店はキャリアごとにあるが、キャリア3社の全ての端末がそろう販売店もあるので、ますます頭が痛い。販売店は定価というものがなく、ほとんどが言い値。ネットで最安値を検索して、オフラインでも代理店と販売店を数件比べてから決めないと、後で後悔する。


 キャリアの補助金競争は、新しいもの好きな国民性の影響もあると思う。スマートフォンは便利だから使いたいという理由もあるが、誰よりも早く最新スマートフォンを手に入れて自慢したいと意欲的な韓国人に、MNPはありがたい制度である。でも何事もやりすぎはいけないだろう。補助金よりは、まず安心して代理店でスマートフォンを買えるようにしてほしい。代理店の人と「本当にこれが最安値ですか!」と神経戦を繰り広げるのも疲れる……





趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130308/1082683/

韓国から見るモバイル展示会「MWC」は“サムスン一色” [2013年3月1日]

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スペインで開催した世界最大のモバイル展示会「Mobile World Congress 2013」は、やっぱりサムスン電子の新製品で盛り上がった。去年もMWCでいろいろな賞を受賞した同社は、今年のMWCのGlobal Mobile Awardsで歴代最多、5つの分野で賞を受賞した。

 2年連続で最高スマートフォン賞(Best Smartphone)と、今年最高の携帯電話メーカー賞(Device Manufacturer of the Year)を受賞した。最高のスマートフォン賞は、GALAXY SIII、GALAXY NoteIIのほかにiPhone 5、ノキアのルミア920、HTCのドロイドDNAも候補に挙がっていた。韓国ではGALAXY III、GALAXY NoteII、iPhone 5の3機種が最も人気がある。


 新しく、2012年の話題商品GALAXYカメラが最高モバイル基盤消費者電子デバイス賞(Best Mobile Enabled Consumer Electronics Device)を、スマートLTEネットワークが最高モバイル装備賞(Best Mobile Infrastructure)とCTO選定モバイル技術賞(Outstanding Overall Mobile Technology The CTO’s choice)を受賞した。


 サムスン電子側は、GALAXYカメラが受賞するとは思ってもいなかったというコメントを発表したほど、うれしそうだった。GALAXYカメラは韓国で初めてキャリアの代理店で販売するデジタルカメラとして話題を集めた。1630万画素CMOSのコンパクト一眼カメラで、3G/LTE/Wi-Fiを経由して写真をWebに保存・共有できる。「コネクティドカメラ」という新しいジャンルの商品であるとサムスンは宣伝していた。


 韓国のマスコミもネットユーザーも、2013年のMWCの目玉は、各メーカーの5型以上の大画面スマートフォンと、サムスン電子の8型タブレットPC「GALAXY Note 8.0」であると見ている。


 





サムスン電子の目玉展示品だった8型タブレットPC「GALAXY Note 8.0」



 電子ペンのSペンが特徴のサムスン電子のGALAXY Noteシリーズは、5.3型と5.5型のスマートフォンと10.1型のタブレットPCがある。これに続けてGALAXY Note 8.0が新しく登場したわけだ。8型と画面が小さくなっただけでなく、重さも10.1型に比べて半分ほどの338gになった。厚さも1mm薄くなった7.95mm。軽くて小さいだけではない。スペックもアップグレードした。CPUは1.4GHzクアッドコアから1.6GHzクアッドコアに、OSはAndroid 4.0から4.1.2になった。


 これはアップルのiPad miniに対抗する端末であり、5型より大きい大画面スマートフォンが普及しているため、タブレットPCの必要性が分からないというユーザーでも、8型は買ってみたいという人が結構いる。サムスン電子もGALAXY Note 8.0は自信作だそうで、2013年からは本格的にタブレットPC市場を攻めて、タブレットPC販売台数でもアップルを追い越す!という意気込みを見せている。


 LG電子はスマートフォンOptimusGを先頭にOptimusシリーズ9つのモデルを展示した。韓国のスマホユーザーの間では、「画質がすごい」と好評だが、韓国よりも欧米でもっと高く評価されているようだ。


 韓国の最大手キャリアのKTとSKテレコムもMWCに参加した。SKテレコムはLTEよりさらに2倍速い150Mbps のLTE Advancedを実際にスマートフォンから利用できるところを世界初公開して、LTE貢献賞を受賞した。2013年下半期からLTE Advancedを商用化するため、MWCの会場でエリクソンと提携を結んだ。
 






キャリアのSKテレコムは今より2倍速い150MbpsのLTE-Advancedを公開



 サムスン電子がスポンサーになってMWCに招待した韓国のブロガー記者の間では、ソニーのXperiaの評判が高かった。タブレットPCの方はWi-Fiモデルが韓国で発売されたが、「スマートフォンもタブレットPCも、とてもスタイリッシュなデザインなので、キャリアから3G・4G対応で発売されればもっと売れるはずなのに残念」という評価だった。


 今回のMWCでは、欧米のキャリアから韓国のキャリアCEOに会いたいとミーティング依頼が殺到したという。韓国が先に経験したモバイルネットワーク「フリーライド」議論が、最近になって欧米でも問題になっているようだ。無料通話アプリによってキャリアのネットワークに負荷がかかり、アプリ会社もネットワーク投資額の一部を負担すべきではないか、という議論である。MWCでは、サムスン電子にスマートTVをサービスしたければネットワーク使用料を払えと訴訟を起こしたKTに学べと、欧米キャリアのCEOが集まりKTのCEOを囲んでパネル討論をした。


 訴訟を経験してから慎重になったのか、KTはキャリアとアプリ会社の関係が悪くなるのはどっちも損だとして、「(大量のトラフィックを発生させる)アプリはこれからもどんどん出てくる。アプリ会社を敵対視するより、世界のキャリアが力を合わせてより良いサービスを作る方がいい」と発言した。


 大げさかもしれないが、韓国のマスコミは、サムスン電子が出展しないとなるとMWCの展示ブースはもう運営されなくなるだろうとまで書いている。サムスン電子もそうだが、大手メーカーはだんだん本当の新製品を展示しなくなったからだ。MWCの目的も、新製品の展示を見てトレンドを探るというより、全世界のモバイル関連企業担当者に会えるビジネスミーティングの場に変わりつつある。グーグルも展示なしでミーティングだけした。


 MWCであっと驚くようなスマートフォン新機種の展示がなかったせいか、韓国では早くも次のイベントを待っている。3月14日に米ニューヨークのアップルストアの近くにあるラジオシティミュージックホールで公開予定のサムスン電子のGALAXY S?のことである。アップルストアの近くで新機種公開というところがいいね! どんなすごいスマートフォンに仕上がっているか楽しみである。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130301/1081874/

「やられた!」とつぶやき続々、Androidを狙う詐欺が横行 [2013年2月22日]

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人口5000万人の韓国で3000万人がスマートフォンユーザーというほど、幅広い世代に愛用されているスマホだが、スマホユーザーを狙った詐欺が後を絶たない。事態を受けて、振り込み詐欺キャンペーンのように、警察庁とマスコミが一体になって「騙されるな!」と詐欺手法を公開し、キャリアも被害者の救済に乗り出した。

 スマホ詐欺はAndroid OSユーザーをターゲットにした、悪性コードによるものだ。キャリアのカスタマーセンターから届いた請求書や、商品と交換できる無料商品券のように見せかけたリンクを貼ったSMSをハッカーが送信。受信した人がリンクをクリックすると悪性コードによってハッカーにスマホを乗っ取られてしまう。ハッカーは乗っ取ったスマホを使って「携帯電話小額決済」を利用。被害者は1~2カ月後、キャリアから届いた本当の明細を見て詐欺にあったことに気付くというパターンである。


 携帯電話小額決済は、オンラインゲームサイトやデジタルコンテンツのように小額商品を決済するための決済方法だ。Webの決済画面に携帯電話番号と住民登録番号を入力し、携帯電話にSMSで送られてくる6桁の認証数字をもう一度Web画面に入力する。最大30万ウォン(約2万7000円)まで決済可能で、決済金額は携帯電話料金に合算請求される。


 ハッカーは住民登録番号と携帯電話番号を手に入れてからハッキングするために悪性コードを送信、スマホを乗っ取ってSMSを自分のスマホで受信するよう操作する。認証数字はハッカーのスマホに届くので、被害者はスマホが乗っ取られたことも、小額決済が行われていることも請求書が届くまで気付かない。ハッカーは被害者の電話番号と個人情報を利用して仮想マネーサイトで小額決済、その後、仮想マネーをポイント統合サイト経由で現金化する。


 この詐欺手法を「SMS」+「Phishing(フィッシング)」を合成して「smishing(スミッシング)」と呼ぶ。


 ポータルサイトのQ&A掲示板にはスマホsmishing詐欺被害の救済方法を問い合わせる書き込みが後を絶たず、SNSでも「やられた!」というつぶやきが絶えず書き込まれる。加入者数が最も多いSKテレコムの場合、2013年1月だけでsmishing被害の届出件数は16万件を超え、前月比4倍になった。


 スマホのsmishing詐欺が社会問題にまで発展する中、キャリアも動き出した。従来キャリアは、ユーザーが詐欺にあったとしても、実際に決済をした仮想マネー会社に問い合わせろというだけで、取り合うことはなかった。もちろん、個人情報と認証番号が合致していれば手続き上に問題がないとして請求を取り消すこともなかった。


 増える詐欺事件に、キャリアは、ユーザーから被害届があった小額決済に対しては請求を留保し、詐欺によるものなのかを確認してから決済を取り消すことにした。また、6桁の認証番号のうち3桁をユーザーがあからじめ登録しておくように制度を変えた。スマホを乗っ取ったハッカーが認証番号を受信しても、ユーザーが設定した3桁の数字が分からなければ小額決済はできない。smishing詐欺に使われたURLをスパム登録してアクセスできないように遮断する対策も講じている。









韓国警察庁が公開した、smishing詐欺に実際に使われたSMSの内容。キャリアのカスタマーセンターから送信した請求書のように電話番号まで偽装している。請求書だと思ってURLをクリックすると悪性コードに感染し、スマホを乗っ取られてしまう



 ところが、スマホ詐欺はsmishingだけではなかった。スパイアプリを使えば盗聴、位置追跡はもちろん、スマホでやっていること全てをハッカーが盗み見ることができて、そのスマホをハッカーが自由自在に遠隔操作できる。こうなると、自分のスマホが自分のものではなくなる。スマホからモバイルバンキングを利用する人も増えている中、バンキング用のIDと暗証番号もハッカーが盗み見してお金を引き出すことができるのだ。これも被害が発生するまで自分のスマホにスパイアプリが仕組まれていることに気付かない。


 警察庁サイバーテロ対応センターは、スマホ詐欺はAndroid OSのスマホがターゲットになっていると分析した。Androidアプリは「.apk」ファイルなので、ハッカーは「.apk」の中にスパイアプリを仕組んで人気有料アプリを無料でインストールできると宣伝してばら撒く。ファイル名で悪性コードなのか正常のアプリなのか区別がつかない。Google Playではなく、違法なルートで有料アプリを無料でインストールしようとするユーザーは悪性コードに感染する可能性が非常に高い。


 ユーザーがまず気を付けることは、Google Playからアプリをインストールする際、アプリの権限を確認して、例えばゲームアプリなのにカメラ・位置・連絡先・オーディオ・SMSなどをアプリ会社が制御できるよう過度な権限を求める場合は疑うことだ。知らない間にアプリが勝手にインストールされることがないよう、スマホのセキュリティ設定を強化することが重要になる。


 Android OSのスマホを狙った悪性コードの場合、日本のユーザーも安心してはいられない。スマートフォンを盗聴できるスパイアプリや悪性コード問題は、スマホが普及し始めた2010年から存在した。韓国では、「悪性コードの存在は知っていたけど、まさか自分が狙われるとは思っていなかった」という雰囲気である。日本でも被害が広がる前に気を付けてもらいたい。




趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130222/1080883/

SamsungがX線CT装置専門の米医療機器メーカーを買収、医療機器事業強化に向けた組織改変の直後に

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韓国Samsung Electronics社の米国法人、Samsung Electronics America社は2013年1月28日、医療機器メーカーである米NeuroLogica社の株を100%買収し、米国法人の子会社にすることを明らかにした。

 米国マサチューセッツ州にあるNeuroLogica社は、2004年に設立されたX線CT装置専門の企業。2011年3月には、移動型の全身X線CT装置の販売許可をFDA(米食品医薬品局)から世界で初めて取得した。患者がCT撮影のために移動するのではなく、患者のいる場所にCT装置を持ってきて撮影できるのが特徴である。


 Samsung Electronics社は今回の買収に関して、「Samsung Electronics社の技術力、ブランド力、グローバル競争力などを生かし、差異化した先端医療機器を開発し、世界市場をリードする医療機器メーカーに跳躍する」などとコメントしている。



4社目の買収



 Samsung Electronics社が医療機器メーカーを買収するのは、NeuroLogica社が4社目となる。2010年には韓国の歯科用CTメーカー「レイ」、2011年には韓国の超音波診断装置メーカー「メディソン」(現在はサムスンメディソン)、さらに同年に米国の心臓検査機器メーカー「ネクサス」をそれぞれ買収した。Samsung Electronics社は、医療機器の中でも特に画像診断装置の分野に力を入れていることがうかがえる。


 2010年6月には、Samsung Electronics社が自ら血液検査装置を発売している。同様の機能を備える従来の機器に比べて大きさが1/10程度と小さいのが特徴だ。加えて、これまで採血から検査結果が出るまで2~3日掛かっていたところを、少量の血液から12分以内に19項目(糖尿・コレステロール・心臓・腎臓疾患など)を検査できる。



「ラインアップがそろった」



 実はSamsung Electronics社は2012年12月に組織改編を実施し、医療機器事業チームを医療機器事業部に格上げした。超音波診断装置を専門とするサムスンメディソンの代表も、専務クラスから社長クラスに格上げした。こうした医療機器事業強化に向けた組織改変後に、早速買収を発表したのがNeuroLogica社ということになる。韓国では、「NeuroLogica社を買収したことでSamsung Electronics社は画像診断装置のラインアップを一通りそろえた」「これはSamsung Electronics社が本格的に世界市場をリードする医療機器メーカーになるという意気込みではないか」といった声が挙がっている。


 韓国のマスコミは、「2013年の医療機器の世界市場規模は3380億米ドル規模。先進国の高齢化により、病気の予防にお金を使う人がますます増えている。こうした中、Samsung Electronics社がこの“おいしい”市場を放っておくわけがない」と分析する。韓国の医療機器業界では、Samsung Electronics社が医療機器の営業、研究開発の中途採用を国内外で大幅に増やしているという噂が絶えない。Samsung Electronics社は医療機器メーカーを買収し、中途採用によって専門家も増やした上で、得意とする半導体・ディスプレイ・IT技術との融合を図ることで、グローバル競争力を高めようとしているようだ。


 医療機器(画像診断装置)はこれまで、米GE Healthcare社、ドイツSiemens社、オランダRoyal Philips Electronics社の3強が世界市場で高いシェアを誇っていた。しかし、ここ数年の間に、医療機器はデジタル家電のように色々な技術が集約する産業になり始めている。Samsung Electronics社のような家電メーカーにも、医療機器で事業を拡大するチャンスがめぐってきた。2013年1月に開催された家電見本市「2013 International CES」の会場では、スマートテレビなどに並び、スマートな医療機器、データ共有による複数のデバイスを使ったヘルスケア・サービスが注目を浴びた。こうした光景を見ると、医療機器市場に大きな変化が到来しているのは確かだ。




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http://www.nikkeibp.co.jp/article/dho/20130226/341669/

北朝鮮の核実験で高まるサイバー攻撃の不安 [2013年2月15日]

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2013年2月12日、北朝鮮が3回目の核実験を強行した。韓国放送通信委員会、行政安全部、国防部、国家情報院などの政府省庁は「サイバー危機評価会議」を開催し、同日17時にサイバー危機警報を発令した。この会議で、北朝鮮が韓国の国家機関をハッキングするといったサイバー攻撃の可能性があると判断したことから、韓国のサイバー危機状態を「正常」から「関心」へ1段階レベルを上げた。サイバー危機警報は、正常→関心→注意→警戒→深刻の5段階である。

 サイバー危機警報が発令したことで、ネットワーク関係の民間企業、政府機関、軍が共同で対応チームを組み、ハッキングとDDoS攻撃といったサイバー攻撃を24時間監視し、主要施設を特別点検する非常勤務体制を維持する。全公務員がOSとアンチウイルスのプログラムを最新バージョンにアップデートし、送信先が不明の電子メールは見ないといった基本的な対策も徹底して行った。









インターネット振興院のサイバーセキュリティサイト。左上のアイコンはサイバー危機警報が「関心」段階であることを見せている



 韓国が北朝鮮のサイバーテロを心配するのは理由がある。北朝鮮は2009年7月、韓国の大統領官邸や国会のWebサイトにDDoS攻撃をしかけた。2011年3月にも国家機関とマスコミサイトをDDoS攻撃した。2011年4月には農協のサーバーに悪性コードを植え込み、農協の金融関係で使っているパソコン270台が悪性コードに感染してパソコンが使えなくなり大騒ぎになった。2011年11月には高麗大学の大学院生らに悪性コードを添付したメールを送ったこともある。


 警察のサイバーテロ専門家らがメールの発送経路を追跡した結果、北朝鮮逓信省のIPだということが分かった。北朝鮮のハッカーは世界60~70カ国のサーバーを経由して韓国や米のWebサイトを攻撃していたという。2012年6月にはマスコミ関係のWebサイトが北朝鮮のハッカーによって荒らされる事件や、パソコンをゾンビパソコンにさせる北朝鮮製のウイルスを仕込んだゲームプログラムを韓国内に流通させた男が、国家保安法違反容疑で逮捕されるという事件もあった。ゾンビパソコンとは、遠隔操作によって自分でも知らないうちにDDoS攻撃に使われるパソコンのことである。


韓国の情報セキュリティ専門家らは、北朝鮮は「1980年代後半からハッカー部隊を養成していてサイバー戦争に備えている」、「米、ロシアに続いて世界3位のサイバー戦争強国」と見ている。韓国のセキュリティ関連のセミナーでは、北朝鮮から韓国に亡命した脱北者たちによる証言も度々紹介されている。北朝鮮では、サイバー戦争に備えて技術将校を養成するという名目で、中学生からパソコン教育をして素質のある学生を選び、ハッカーに育てているそうだ。

 韓国軍や警察が把握したところによると、北朝鮮は2009年、人民武力部偵察局と労働党傘下にある偵察総局にサイバー戦争部隊を設置し、そこでサイバーテロを計画、海外にサーバーを持つ逓信省傘下の朝鮮逓信会社を窓口にしてサイバーテロを実行している可能性があるという。北朝鮮のサイバーテロに関わっているハッカーは3000人以上いるのではないかとも見られている。韓国の国家機関をハッキングして情報を手に入れるのも目的だが、韓国社会を混乱させる心理戦も目的の一つである。また、韓国がサイバーテロにどのように対応するのかを試すために、北朝鮮は小規模の攻撃を繰り返しているという。


 韓国では警察庁の傘下にあるサイバーテロ対応センターを国家安保室所属に格上げすることも検討している。また韓国インターネット振興院とインターネット侵害対応センターは、ソフトウエアの脆弱点を見つけて申告した人には、技術の難易度や市場に及ぼす波及度などを審査して、最高500万ウォン(約43万円)の報奨金を出すことにした。





趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130215/1079962/

主婦の関心がっちり、韓国スマート教育展示会 [2013年2月8日]

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2013年1月23日から25日まで、教育科学技術部(日本の文部科学省にあたる)が主催したSmart Edu Week(Education Fair)が盛大に開催された。Education Fair は今年で10年目を迎える韓国最大規模の学校教育専門展示会である。今年は131社が参加し、スマートデバイス、スマート教育ソリューション、スマート学習アプリを展示した。英語教育、放課後教室プログラム、体育・芸術教育教材の展示も同時開催した。

 展示会は大きく学校向けと保護者向けに分かれていた。学校で使えるスマートラーニング用電子黒板とタブレットPC・電子教卓のセットと各種ソリューションは、もう何年も前から展示している。今年は端末そのものの新しさより、学校現場や家庭でどのように活用しているのか、事例発表や模擬授業に力を入れていた。保護者向け子ども安全アプリと0歳から使えるという英語学習アプリの展示が増えた印象だった。


 韓国のスマート教育は、製品を作る企業側も、政策を担当する省庁も、利用する学校や保護者側も積極的に関心を持っている。製品に焦点を当てるのではなく、それをどう使えば子どもためになるのか、学校現場の活用事例を見せる展示会というところが面白い。スマート教育を利用する環境が整いハードウエアもある程度普及したので、デジタル教材を作成し共有する教育クラウド、先生のスマートな授業法開発、といったところが今後の課題になっている。


 サムスン電子はスマート教育用の端末やソリューションを、学校現場でどのように活用すれば先生も学生も楽しく授業できるのかを提案する展示構成だった。65型スマートTV、75型LEDモニター、GALAXY Note10.1とWindows 8搭載ATIVスマートPCを活用して、先生の端末から学生の端末画面を確認し、随時添削できること、先生がその場でクイズ問題を作って学生の画面に送信し、その日学習したことをちゃんと理解したかテストできることなどを実演した。自動出欠管理、先生が授業中使うデジタル教材を簡単に作れるようにするSペン機能、タブレットPCを使った動画撮影と編集機能も紹介した。






サムスンのブースで。GALAXY Note10.1と65型スマートTVを使ったスマート教育(学校での活用法)を中心に紹介した



 GALAXY Note10.1を実際に導入した小学校の先生を展示場に招待して、「私はスマート教育をこのように行っている」という実例を見せる時間もあった。スマート教育というと、タブレットPCばかり見て教育的効果があるのか? といった疑問を持つ人もまだいる。しかし実際にスマート教育を実践する先生は、「韓国のスマート教育は最初から最後までタブレットPCを使うのではなく、授業中に先生と学生のコミュニケーションを助けるため、またいろいろなマルチメディア資料を使って子どもの理解力を高めるため、より子どもたちを楽しく授業に参加させるための道具として使っている」、「先生も学生もタブレットPCに縛られているわけではない」という。


 サムスン電子は韓国だけでなく、世界市場も狙う。同社は2012年11月、EU参加国の教育省ネットワークであるEuropean School Netと提携し、教育とICTの融合について共同研究や端末提供を始めた。中国、米国の学校にも同社製電子黒板とタブレットPC、スマート教育ソリューションを提供して、新しい教育環境を作る実証実験を行っている。







趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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アップルのラッキーバッグで燃えた1日、日本と比べて中身は… [2013年2月4日]

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2013年1月31日、アップルのラッキーバッグ(福袋)に韓国のTwitterユーザーが燃えた。1月8日にはスターバックスのラッキーバッグで燃えていたので、韓国人って結構福袋好きなのかもしれない。スターバックスのラッキーバッグは4万5000ウォン(約3800円)。タンブラーのサイズ別に3個、飲み物チケット(どのメニューもトールサイズで注文できる)7枚、キーホルダーのようなノベルティ、ダイアリー手帳などが入っていて、かなりお得だった。

 2007年から始まったスターバックスのラッキーバッグは韓国ではほぼ初めての福袋。最近は「ラッキーバッグ」という名前で福袋がかなり広がり、在庫処理用によく使われている。韓国では、福袋は日本が元祖で、江戸時代に始まったものとして知られている。


 今度はアップルのラッキーバッグだ。1月31日午後12時から販売開始するラッキーバッグ目当てに、ソウル市内明洞と江南にあるアップルのリセラー「Frisbee」前には久々に徹夜組が登場し、早朝からテレビのニュース番組が取材に来るほどの大騒ぎとなった。このラッキーバッグ、韓国のリセラー側が店舗オープン4周年記念イベントとして企画したものである。正規Apple Storeの福袋は世界中で日本にしかないようだ。






ラッキーバッグ販売告知ポスター。リセラーの4周年記念イベントとしてラッキーバッグが販売された



 韓国のラッキーバッグは3万ウォン(約2500円)で、中身はアップルのアクセサリーやバッグ、ヘッドフォンがメインだという。MacBook AirやiPad miniも入っているといううわさがTwitterで広がり、この騒ぎになったのだ。30日まで羅老号ロケットの打ち上げ成功で盛り上がっていたTwitterは、31日にはもうすっかりアップルのラッキーバッグに何が入っていたのかに話題が移った。スターバックスのラッキーバッグは外れなし、どれもお得だったのでアップルもそうだろうと期待した。


 アップルのラッキーバッグは先着500人限定で、受け付けで番号が書いてあるUSBをくじ引きし、USBに書いてある番号のラッキーバッグを買うという仕組み。徹夜で早く並んだ人がいいものをもらえるというわけでもなかった。どのラッキーバッグにしようかな~と重さを量ったり、触ってみたりする楽しみはなく、本当にラッキーなのかどうか運試しのような福袋だった。


ラッキーバッグは家に帰って開けるのかと思ったら、その場で店員と一緒に福袋をオープンして中身を確認し、MacBook air やiPad miniに当たったのは誰かを公開した。MacBook Airに当たった人は感激でぶるぶる震えながらテレビのニュースに出た。

 「アップルの在庫処分品をお金払って買う人がいるなんて」と冷ややかなつぶやきも多いが、徹夜組は「ラッキーバッグ=おみくじのようなもので、どきどきする」と楽しそうだ。


 しかし袋を開けてみると、MacBook AirやiPad miniに当たったという人は500人の中に2~3人。アクセサリーやバッグが当たったという人すらあまり見かけない。ほとんどがApple Storeで使える3万ウォン分のプリペイドカードとボールペンという残念な中身だった。


 「3万ウォンの福袋に3万ウォン分しか入っていないなんてひどい…」、「アップルのラッキーバッグなのに、スタークラフトゲームCD(Blizzard社のネットワークゲーム)が入っているとは、どういうこと?」と怒りのつぶやきをFrisbeeのTwitter宛に残す人もいた。韓国のTwitterでは、日本のアップルのラッキーバッグが話題だ。3万3000円と値段は韓国の10倍以上するが、ちゃんとアップルの製品が7万円分以上は入っていたとかで、「さすが福袋の元祖の国は違うね!」と羨ましがっている。


 アップルのラッキーバッグ、一晩の思い出で終わるかと思ったら、韓国のマスコミは、福袋マーケティングは良くないという方向へ話を持っていき始めた。経済的に不安なほど人は運に任せようとする傾向があるので、福袋が人気なのは社会や経済が不安だからなんだとか。福袋マーケティングは一獲千金を狙うギャンブルに近いので青少年に悪いという話まで出始めた。そこまで深刻に考えなくてもいいんじゃないかな~。




趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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ユーザー団結でスマホ通信料を安く~“組合”入って基本料大幅値下げ [2013年1月25日]

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消費者が団結してキャリアと交渉してケータイ料金を値下げしよう、という動きが韓国で本格化している。2013年1月8日、「全国通信消費者協同組合」は記者会見を行い、キャリアの基本料が月1万1000ウォン(約930円)のところ、協同組合の料金制度に加入すると基本料が70%引きの月3300ウォン(約280円)になると発表した。

 協同組合の回線はKTのMVNOであるエバーグリーンモバイルのもの。エバーグリーンの料金制度の中の一つに「協同組合料金」がある。組合加入費1万ウォン(約840円)を納めて会員になってから、料金制に加入する。KTやSKT、LGU+から協同組合に乗り換えるような仕組みになる。通話は10秒18ウォン、SMS送信は15ウォンとキャリアの料金に比べ30%ほど安い。データ通信は500MB分が1万ウォンで、街中や地下鉄の中ではKTのWi-Fiを無料で使える。携帯電話の端末はSIMを差し替えるだけなので、本人の端末をそのまま使うか、組合のWebサイトから中古端末を購入する。キズのほとんどないきれいなAクラス中古だけを販売していて、Galaxy Sが13万ウォン(約1万1000円)、S2は24万ウォン(約2万円)と新品の4分の1ほどの値段だ。


 「KTのMVNOなので音質もデータ通信も安定している、しかも安い」、が売りの協同組合だが、キャリアとの契約期間がまだ残っている人は対象外。契約期間が終わり、“自由の身”になった人だけが加入できる。1月20日までに1万8000人が組合員になった。


 協同組合は事務手数料(韓国では加入費という)も無料だ。キャリア3社は新規加入やキャリアを乗り換えると、通常2万4000ウォン(約2000円。LGU+のみ3万ウォン)の事務手数料を徴収する。


 協同組合というと韓国でも生協ぐらいしかなじみがない。全国通信消費者協同組合は2010年から組合設立準備を始めた。韓国の協同組合基本法が2012年12月に改訂し、発起人5人以上であれば誰でも自由に協同組合を設立できるようにしたことで(保険、金融、医療を除く)、2012年12月、正式に仁川市に設立届けを提出した。


 MVNOの中には、基本料無料、通話150分、300分あたりいくらという協同組合よりも安い料金制度のところもある。しかし共同組合は消費者団体であり、携帯電話料金構造や端末の流通が「消費者に有利になるようにするための存在」というところが違う。


 協同組合側は、「消費者はキャリアの利益のために存在するのではない。キャリアは過度なマーケティング費用を使い、その分通信費を高くして消費者に負担させている。合理的な通信料金で、消費者には家計の負担なく携帯電話を使えるようにし、キャリアは適正な利益を上げるべき」と主張する。

携帯電話普及率が人口の107%を超えている中、家計の通信費負担は月15万ウォン(約1万2600円)を超えた。家計消費の6%が通信費である。OECD加盟国の平均は2.7%なので、家計消費に占める通信費の割合が韓国では高すぎるともいえる。

 日本円で6~8万円はする高いスマートフォンも、家計を圧迫している。安いスマートフォンを使いたくても売っていない。だからといってフィーチャーフォンを使うのは不便なので、高くてもスマートフォンを買うしかない。協同組合は、組合員の共同購入という形でスマートフォンを安く販売することも計画している。今後は月1万ウォンで使える固定ブロードバンドも発売する予定だ。
 







放送通信委員会が提供する携帯電話料金制度案内ページ。「スマートチョイス」という名前で、自分の通話パターンを入力すると、キャリア3社の中からおすすめの料金制度を案内する



 携帯電話通信費値下げは国民的関心事である。新しく大統領に就任する朴勤槿氏は、キャリアの事務手数料廃止を検討している。無料の公共Wi-Fiを増設して、データ通信費も節約できるようにする。キャリアはもちろん反対している。事務手数料がなくなると、キャリア3社合わせて年間3000億ウォン(約250億円)近い売り上げが消えてしまうからだ。キャリアは、「通信費は高くない。端末分割払い料金が含まれるから高く見えるだけ」と主張する。


 筆者はまだ契約期間が終わらずKTに縛られた身であるが、満了したら協同組合に加入したくなった。全国通信消費者協同組合の登場は、携帯電話の流通/構造や料金体系を大きく変えられるのか、楽しみだ。






趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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2013年はPhone+Tablet の「Pablet」に注目 [2013年1月18日]

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米ラスベガスで毎年1月に開催される恒例の家電トレードショー「CES」は韓国でも大きな話題だった。

 2013 International CESでは、サムスンとLGの55型Curved OLED TV、サムスンの110型UHD TVが注目を浴びた。会場にはサムスンとLGの役員らも駆け付け、どちらも「2015年、家電世界市場シェア1位を達成する」と自信満々のところを見せた。







2013 International CESでのサムスンのブース。UHD TVの展示コーナーで(サムスン提供)



 Curved OLED TVは曲がっているディスプレイ。Curved OLED TVは平面よりも立体感があるので、パノラマ効果で映画館にいるような気分にさせてくれるだけでなく、目の疲労も減るという。しかし平面の55型OLEDTVでも1100万ウォン(約90万円)はするので、Curved OLED TVはとんでもなく高い値段がつきそうだ。そのせいで量産は難しいのではないかと見られている。あくまでも、うちはこんな技術を持っていますよ~と自慢しただけで、実際に売り出されるわけではないようだ。さらに、サムスンは薄いプラスチックで割れないフレキシブルディスプレイ「YOUM」を、LGは折りたたみディスプレイを公開した。


 韓国のマスコミ報道によると、サムスンとLGは当初、Curved OLED TVを展示する予定はなかったという。ソニーが展示会開幕前日に56型4K OLED TVを公開、サムスンとLGは負けるものかと展示品目になかったCurved OLED TVを引っ張り出して展示をしたそうだ。大型展示会にはいつもVIPだけに公開する新技術や万が一のために持っていく新製品があるそうで、Curved OLED TVもその1つだったとか。ソニーの56型4Kというのは、サムスンとLGが発表した55型フルHD OLED TVよりもサイズが1インチ大きく画質は4倍もきれいなんだとか。


 2013 International CESにはサムスンとLGだけ参加したわけではない。現代自動車や中小企業も展示に参加した。韓国のモニュエル社は、「タッチテーブルPC」で、中小企業としては初めて「Best of Innovation Award」を受賞した。テーブルとタブレットPCが1つになったもので、タブレットPCを使って注文、NFCカード決済、コンテンツ利用、ネット検索などを利用できる。保険代理店、自動車代理店、カフェ、レストランなどBtoB向けに販売している。








中小企業としては初めてBest of Innovation Awardを受賞したモニュエル社のタッチテーブルPC(モニュエル社ホームページより)






趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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