LINEとカカオトークに負けるか! キャリア3社、合同サービス開始の本気 [2013年1月11日]

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韓国のキャリア3社、KT、SKテレコム、LGU+は、2012年12月26日より合同で「JOYN」という統合メッセージサービス(RCS:Rich Communication Suite)を始めた。

 JOYNは、加入者同士でチャット、LTE基盤音声通話(VoLTE)、テレビ電話を利用できるアプリである。グループチャットに加え、位置情報、映像、写真が共有できる。スマートフォンとPCの両方から使えるので、外回り中に会社からスマートフォンやタブレットPC宛に大容量(100MBまで可能)のファイルを送ってもらうとか、スマートフォンで撮影した動画をPCに送信して一緒に見ながら通話するといった機能はとても便利だ。しかし、ここまではLINE、カカオトークと同じサービスで、JOYNに乗り換える必要性が全く見えない。


 違いがあるとすれば、既存のアプリ経由の音声通話は音質が不安定で、通話の途中で切れたり時々つながらなかったりすることがあるが、JOYNはキャリアが提供するアプリなので、いつでも安定的に高音質で通話ができることだろうか。また、韓国のユーザーは「知らない人を友達として推薦されるのは不愉快」という人が多いので、JOYNはあえて友達をおすすめしないことにした。セキュリティとプライバシーを守りながら利用できるメッセージアプリ兼SNSを目指している。
 






キャリア3社合同でサービスを開始した「JOYN」の利用イメージ。LINEとカカオトークに対抗するためだが、無料でない限り勝ち目はないとみられている



 しかしLINEとカカオトークは無料で利用できるが、JOYNは2013年5月までの6カ月間のお試し期間だけ無料で、その後は有料になる。定額ではなく、メッセージ送信1件ごとにいくら、といった課金にしようとしている。JOYNがどんなに音質がきれいで便利だろうが、「有料ならいらない」というユーザーがほとんど。ネットでは評判がよろしくない。


 さらに、キャリア3社がLINEとカカオトークに対抗するためJOYNを始めたというニュースのコメントには、「やっと軌道に乗ったベンチャー企業のアプリを大手企業が乗っ取ろうとしている。JOYNは新しいサービスというより中小企業つぶしにすぎない」、「大手企業は大手らしくもっと技術開発に投資して、新しいことをすればいいのに。キャリアがどんなことをしても、無料のLINEとカカオには勝てない」と批判的な意見が多数書き込まれている。


キャリアのSMS送受信量は2010年の1人当たり月平均603件から、2012年上半期には347件にまで減った。日本と同様、韓国は違うキャリアに加入している人でも、メールではなく携帯電話番号宛にSMSを送受信できる。SMS送信は1件(80バイト)20ウォン(約1.6円)、受信は無料だ。SMSは短文をチャットのように送り合うので、中高生向けのSMSは月1000件定額料金なんていうプランもあるほどだ。それでも1000件をあっという間に使い終え、追加決済する中高生が多く、「SMS利用件数を追加できない料金制度」というのまで登場した。これほど頻繁に利用しているSMSなので、1回20ウォンと激安でも、月平均603件も送れば結構な料金になる。そのため韓国ではスマートフォンに加入したら、真っ先にカカオトークをインストールし、無料SMSとチャット、音声通話を利用するようになった。当然のことだが、カカオトークにユーザーが流れた分、キャリアは重要な収益源を失ってしまった。

 韓国ではLINEよりカカオトークの方が、圧倒的に加入者が多い。スマートフォン加入者のほぼ全員にあたる3500万人あまりが利用しているほどだ。カカオトークは韓国初の無料メッセージ+無料通話アプリである。海外のユーザーを合わせると、7000万人近くがカカオトークをインストールしている。海外にいる家族や友人と国際電話の代わりにカカオトークを利用する人がとても多い。カカオトークを経由したメッセージ送信は1日30億件を超えるという。カカオトークはメッセージアプリとしての機能だけでなく、モバイルプラットフォームとして、面白いゲームもたくさん提供している。国民的人気を誇るパズルゲームの「Anipang」(参照記事)も、カカオトークと連動したソーシャルネットワークゲームである。


 キャリア3社がJOYNを始めたのは、SMS収益を取り戻したいこともあるが、モバイルプラットフォームとしての役割をカカオトークに奪われるかもしれない恐怖からだというのが業界の定説だ。キャリアはコンテンツプロバイダーとユーザーをつなげ、決済代行を行うプラットフォームだった。しかしスマートフォンが登場してからは、アプリストアがプラットフォームの役割を担う。さらに、最近はカカオトーク、Twitter、FacebookのようなメッセージアプリとSNS、サムスン電子やLG電子のようなメーカーまでもがアプリストアを作り、ユーザーとコンテンツをつなげる役割をしている。


 キャリアはモバイル産業の主役から、ネットワークを提供するだけの脇役に転落するかもしれない瀬戸際なのだ。キャリア3社のJOYNはLINEとカカオトークに奪われたプラットフォームの役割を取り戻せるだろうか。2013年は「キャリアの役割」が問われる1年になりそうだ。






趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20121230/1075522/

SNS選挙運動効果なし? ネット世論と投票結果に差:大統領選 [2012年12月28日]

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2012年12月19日に行われた第18代目大統領選挙は、スマートフォンが普及してから初めて行われる大統領選挙でもあり、モバイル/SNSで燃えた選挙だった。

 ポータルサイトのNAVERによると、大統領選挙特集ページの1日平均ページビューは、パソコン向けページが6300万件、モバイルページはPCの3倍ほど多い2億件を突破した。モバイルページの1日当たりのページビューは4月の総選挙の時よりも多く、最高記録を更新した。


 ポータルサイトのDAUMもモバイルページの利用の方が多かった。選挙特集ページの選挙当日ページビューはPC向けページが1億3000万件、モバイルページが2億1300万件だった。モバイルページのアクセスは前月比3倍も伸びた。特に政治討論ができるネット掲示板は、スマートフォンモバイルからの書き込みと閲覧の方が多かったほどである。
 







NAVERのモバイル向け大統領選挙運動特集ページ。2012年の大統領選挙はPCよりモバイルページのページビューの方が圧倒的に多かった



 NAVERとDAUMは、大統領選挙はオフライン選挙運動からオンライン選挙運動へ、さらにモバイル選挙運動に変わったと評価した。その理由はやはりスマートフォンの普及と選挙法の改訂にある。SNS選挙運動が合法となり、誰でも自由にTwitterやFacebookから「私は○○の理由で○○候補を支持します。あなたも投票してね」と選挙運動ができるようになった。またネット上の掲示板に書き込む際には、国民IDである住民登録番号を入力して本人確認をするインターネット実名制度というのがあったが、それも廃止されたため、匿名でも自由に選挙や政治についてつぶやけるようになった。以前は選挙陣営の担当者、政党担当者、候補本人以外の一般人が選挙に関してネットに書き込むと、すぐ選挙法違反だとして本人を突き止めて捜査をするので、怖くて何も書けないというほどだった。今回の大統領選挙では表現の自由が最大限守られた。


 SNSで自由に発言してもよくなったことで、ポータルサイトのニュースをSNSにリンクして意見をつぶやいたり、自分が支持する候補の情報をRTしたり、友達に教えてあげたり、選挙に関して積極的に意見をいう20~30代がとても多かった。Twitterでも、韓国ではLINEよりユーザーが多いカカオトークでも、タイムラインから大統領選挙の話題が消えることがなかったほど盛り上がった。韓国のリサーチ会社DMCの調査によると、有権者の40.4%が「大統領選挙関連ニュースや公約などの情報をスマートフォンから得た」と答えた。


スマートフォンの普及がSNS選挙運動を後押し


 韓国のスマートフォン利用者動向を見ると、全体の普及率は約65%、50~60代のスマートフォン利用率も25%ほどある。スマートフォンは若い人の専有物とはいえないほど広く使われるようになった。スマートフォンの高い普及率は、SNS選挙運動、モバイル選挙運動が盛り上がった理由のひとつである。


 大統領候補はSNSの公式IDを通じて公約を発表し、その日のスケジュールを公開した。候補らは動画投稿も積極的で、街角演説をリアルタイムで中継したり、候補の1日のスケジュールをずっと追いかけるストリーミング放送を流したり、いつでもどこでも候補の情報をスマートフォンから手に入れられるようにした。SNSでは有権者からの質問や声援に答え、フレンドリーなイメージを作ろうとがんばった。


 各政党の選挙対策本部は、SNS専門チームを結成し、SNSでデマが広がらないよう対応した。SNS競争が激化しすぎて、与党のセヌリ党と野党の民主統合党は、違法なSNS選挙運動をしているとお互いを攻撃した。アルバイトを大量に雇い、Twitterやネットの掲示板にお互いの候補の悪口を書き込んで落選させようとしたというのだ。SNSの世論操作はなかなか証拠がつかめないため、うやむやになってしまったが、大統領候補らのSNSのフォロワー数やつぶやき内容をめぐる神経戦もすごかった。


 盛り上がったSNSだったが、選挙結果にどう反映したのか。米ツイッターが韓国の大統領選挙関連つぶやきを分析したところ、Twitterの中では改革勢力の候補が圧倒的に支持されていた。米の大統領選挙では、Twitterでオバマ大統領に関するつぶやきの方が多く人気で、実際にオバマ大統領は再選に成功した。


 ところが、韓国はTwitterで支持された候補は落選し、人口ボリュームの最も多い50代以上が支持する保守派候補が当選した。SNS選挙運動がどんなに盛り上がろうと、高齢化には勝てなかったようである。SNS選挙運動によって選挙への関心は高まり、投票率は伸びたものの、SNSで人気の候補が当選するには至らなかった。


 2002年と2012年を比べると、この10年で20~30代の有権者数は10%減り、50代以上の有権者数は10%以上増えた。SNSよりはテレビ討論、街角演説、紙の新聞記事を信頼する高齢者が選択した候補が大統領になったことで、SNS選挙運動は意味がないのではないかという分析まであった。しかし今は過渡期で、韓国のスマートフォン普及率が90%近くなる5年後の大統領選挙では、手軽で瞬時に情報が広がるSNS選挙運動が何よりも影響を与えるのではないか、という見方もある。


 今回の選挙結果はシニアの勝利に見えるが、スマートフォンに慣れている40代が50代になる5年後、10年後には、街角演説がなくなりSNS選挙運動が当たり前になるのではないだろうか。






趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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サムスンとアップル、意外な展開を見せる特許戦争 [2012年12月25日]

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2012年8月にアップルの勝利で終わったように見えたサムスン電子とアップルの米カルフォルニア州における連邦地方裁判所での特許訴訟だが、その後意外な展開を見せている。

 8月当時、米の陪審員はアップルが主張する7件の特許侵害の内6件をサムスン電子が侵害したと認めた。賠償額は10億4900万ドル。「サムスン電子が、アップルの特許であることを知りながら故意に侵害した」として賠償額をもっと増やすべきだという話もあり、サムスン電子絶体絶命のピンチ!と注目を浴びた。


 アップルは同裁判所に、サムスン電子のスマートフォンとタブレットPCを米国内で永久に販売できないようにする販売禁止可処分申請をしたが、これは棄却された。さらに、米の特許庁(USPTO)がアップルだけの技術と主張していた「Pinch to zoom」と「Bounce back」を次々に「特許ではない」と判断したことから、訴訟の争点は端末のデザインのみとなっている。Pinch to zoomは指2本でタッチして画面を大きくしたり小さくしたりする技術、Bounce backは画面をタッチして下に思いっきり下げると画面が弾けるようにして元に戻る技術だ。


 韓国のマスコミが12月20日付で一斉に報道した内容を見ると、米特許庁は10月にBounce backを、12月にPinch to zoomの特許を再審し、「既に先行技術が存在する」という理由で特許暫定無効の判定を下した。アップルのiPhoneが発売される前から、タッチスクリーン製品は指2本タッチして画面を大きくしたり小さくしたりする機能があったということである。


 指で2回連続タッチすると画面が大きくなったり小さくなったりする「Tab to Zoom」も、同裁判所が特許を認めるにはあいまいなところがあると指摘しているので、特許が無効になる可能性もある。


 アップルが特許侵害を理由にサムスン電子を訴えたが、それが実は特許ではなかったとなると、裁判の判決も変わる。同裁判所の陪審員が認めた侵害は、iPhoneのデザイン特許だけ残った。これによりサムスン電子の賠償金も調整される見込みである。とはいっても、欧米はデザイン特許をもっと重要視しているので、賠償額はそれほど変わらないだろうという分析もある。サムスン電子の訴訟関係者は「陪審員の評決に対する我々の再審査要請は適切であった」と喜んでいる様子だ。





趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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モトローラ撤退で韓国スマホはサムスン、LGの寡占が進む [2012年12月14日]

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モトローラ・モビリティが、韓国市場から2013年2月に撤退すると発表した。モトローラは2011年発売したスマートフォン「ATRIX」と「RAZR」を最後に、新規端末を発売しなかった。モトローラ韓国支社の社員は約500人いるが、ほぼ全員が再就職先のないまま解雇される形となった。

 Yahoo! Koreaの撤退と並んで、韓国のネットユーザーはモトローラの韓国撤退を残念がっている。Yahoo! Koreaが韓国のインターネット黎明期を支えたポータルサイトとしてネットユーザーの思い出に残っているように、モトローラも韓国初の携帯電話として、たくさんの思い出を残したからだ。











モトローラ・モビリティの韓国語サイト



 モトローラは1988年、韓国初の携帯電話を発売した。電話というより凶器のような物体で、大きなアンテナが差し込まれた四角い箱の形をしていた。重さ1kg、長さ30cm、バッテリーは30分も持たなかった。それでも自動車1台が買える値段だったので、80年代まで携帯電話を持っているのは新聞記者や政治家、起業家といった一部の人に過ぎなかった。


 その後はモトローラのポケベルが流行った。国産のポケベルもあったが、GalaxyよりやっぱりiPhoneの方がかっこいいという人がいるように、当時もモトローラのデザインが優れている(といってもどれも黒くて四角だった)という理由でよく売れた。


 1996年以降、個人が安い値段で携帯電話を利用できるようになってからは、韓国でモトローラのフォルダー式携帯電話「StarTAC」が一世を風靡(ふうび)した。88gという驚異的な軽さで、ポケットに入れても邪魔にならない初めての携帯電話が出たとして話題を集めた。StarTACは当時130万ウォン(約10.5万円)もしたのに130万台が売れた。1996年の物価はまだ電車賃の基本料金が500ウォンほどで今の半額だった時代である。2012年の物価でいうと200万ウォン(約15万円)はする携帯電話だった。


 StarTACを持っているのはお金持ちということでもあり、持っているだけで女性にもてるほどであった。2012年夏に大ヒットしたドラマ「応答せよ1997」でも、1997年、ソウルから釜山にやってきた転校生の携帯電話がStarTACで、それをきっかけに御曹司だということがばれ、女子の間で噂(うわさ)になるという場面があった。現代のビジネスパーソンがiPadやタブレットPCを持ち歩くように、90年代後半はモトローラのStarTACができるビジネスパーソンの象徴だった。






趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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サムスンの太っ腹キャンペーン、タブレットPCお絵かき大会が熱い [2012年12月10日]

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2012年サムスン電子の年末一押しデバイスは、スマートフォンだとGALAXY Note2、タブレットPCだとGALAXY Note10.1だ。この2つのデバイスの特徴はSペンという感度の高い電子ペンがセットになっていて、手書きや絵を描くのに非常に向いている点である。しかし、Sペンのすごい技術を難しい用語を混ぜて説明されても、一般ユーザーは「あ、そうですか」としか反応のしようがない。


 サムスン電子をはじめ韓国ベンダーは、販促やCMではデバイスの優れた技術を紹介しない。それよりも先に、なぜこのデバイスを買うに値するのか、このデバイスを持っているとこんなに楽しくて便利なことができると使い道を紹介する。その次に他社との差別点として技術の話が始まる。


 サムスンが考えたのが、ドラマの主人公にSペンを使わせてその機能を宣伝させるという方法である。2012年にヒットしたドラマの主人公のほとんどがサムスンのスマートフォンを使った。GALAXY NoteのSペンで絵を描いて好きな人に送ったり、Sペンで日記を書いたりと、いろいろな使い方を見せてくれた。


 この冬は幼児から小学生を対象にGALAXY Note10.1を使ったお絵かき大会を開催する。2012年11月20日~2013年2月15日のおよそ3カ月にわたる大規模な予選を通過して選ばれた101人は2013年2月23日、ソウル市中心部のセジョン文化会館(コンサートや演劇などを上演する大型劇場)に集まり本決戦を行う。入選した作品はセジョン文化会館に展示される。


 大賞の景品は、園児だと保護者と一緒に行けるヨーロッパ美術館ツアー、小学生だと海外英語キャンプ参加ツアーである。大賞から銅賞まではGALAXY Note10.1も1台ずつもらえる。101人の1人に選ばれさえすれば、図書券や美術用品セットがもらえるので、かなり太っ腹なイベントである。


 予選の参加方法は、GALAXY Note10.1からサムスン専用のアプリケーションSノートを立ち上げて、Sペンを使って絵を描く。それを保存して応募掲示板に載せるだけで、子ども1人が何枚応募してもいいそうだ。ただし「大会のテーマに合っている絵」、「子どもが描いた絵」である必要がある。絵のテーマは、園児向けは「私がしたい楽しい遊び」、小学生は「最も楽しかった思い出」である。











GALAXY Note10.1お絵描き大会のための訪問美術教室。講師が子供の人数分のGALAXY Note10.1を持ってきて、Sペンを使って絵を描く方法を教えてくれる。ギャラリーはここで見られる



 Sノートのお絵かき機能はさまざまだ。いろんな色を背景に描いてから黒で塗りつぶし、消しゴムで画を描くスクラッチ風、水彩画風、ドローイング風、写真と組み合わせたコラージュ風、パステル画風、ポップアート風など。


 子どもが投稿した絵を見ていると、タブレットPCで書いたとは思えないほど色鮮やかで、生き生きしている。この中から101人を選び、セジョン文化会館でGALAXY Note10.1を使ったお絵かき本大会が開催されるというわけだ。101人の子どもがずらりとタブレットPCとSペンを握ってお絵かきしている光景を想像すると、うわ~なかなかの壮観じゃないか。


 GALAXY Note10.1を持っていないから大会に参加できない、という子どものために、「訪問美術教室」も開催している。講師がGALAXY Note10.1を持って保育園、幼稚園、学校を訪問してSノートとSペンで画を描く基礎を教えてくれる。そこで描いた絵を大会用に応募してもいい。


 この大会はサムスン電子の「How To Live Creative」キャンペーンの一環。GALAXY Noteを使った楽しい体験イベントはまだまだ続く予定である。






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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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総スマホ時代に話題を呼ぶ“コンビニプリペイド携帯” [2012年11月30日]

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韓国のセブン-イレブンは2012年11月29日、プリペイド携帯電話の販売を始めた。コンビニで携帯電話本体とSIMを販売するのは国内で初めてである。まずはソウル市中心部にあるセブン-イレブン20店舗で開始、12月6日より全国7000店舗で販売する。ネットでも販売する。

 販売する端末は中小メーカーが手掛ける「プリピア」というバータイプのフィーチャーフォン。端末価格8万4900ウォン(約6500円)に1万ウォン(約760円)分の電話料を含む。これはスマートフォンの10分の1の値段である。SIMと回線はMVNOのSKTelinkが提供する。同社はSKテレコムの子会社で、国際電話、市外電話サービスを提供する通信事業者。2012年6月よりMVNOサービスを開始した。
 










韓国のセブン-イレブンが販売するプリペイド携帯電話端末「プリピア」



 携帯電話を購入してもすぐ使えず、犯罪に悪用されるのを防止するため、SKTelinkのWebサイトまたはコールセンターで本人確認を行ってから電話番号をもらう。それから端末に同封されているSIMを端末に差し込んで使用開始となる。本人名義のクレジットカードまたは携帯電話を持っている人だけが対象なので、未成年者と外国人の名義では購入できない。親が買って子どもに使わせることはできる。1人4回線まで申し込める。


 料金制度はいろいろあるが、基本料金なしで通話料10秒当たり36ウォン(約2.9円)、SMS1件20ウォン(約1.5円)、使った分だけをチャージした金額から差し引く料金制が注目されている。クレジットカード、振り込み、固定電話料金の合算請求などで入金する。

プリペイド携帯の販売についてセブン-イレブンは、「仕事用とプライベート用に電話番号を2つ使いたいが、最近はスマートフォンしか売っておらず費用の負担が大きすぎることから諦めていた人や、音声通話とSMSしか使わないお年寄り、ネットにつながらない携帯電話を子どもに持たせたい親、スマートフォンを紛失して一時的に新しい携帯電話が必要な人をターゲットにしている」と説明した。

 安いフィーチャーフォンとはいえ、テレビ電話用の30万画素カメラ、MP3プレーヤー、ラジオ、SDメモリーカード、Bluetoothに対応する。コンビニで販売する、手軽で激安なMVNOであるが、問題はアフターサービス。端末メーカーであるプリピアのサービスセンターが全国に1つしかないため、端末に不具合が生じてもサービスを受けられないのではないかと心配するユーザーもいる。


 セブン-イレブンのプリペイド端末は、韓国初のW-CDMAとGSMのデュアルSIMで、韓国のSIMと海外のSIMの2枚を差し込んで使えば、韓国では韓国の携帯電話番号を、海外では海外の携帯電話番号を使える。海外出張が頻繁なビジネスパーソンは、現地で電話を使うと受信するだけでも非常に高いローミング代を払わないといけなかったが、現地のプリペイドSIMを端末に差し込んで使えるので電話代を節約できる。


 セブン-イレブンを第1弾として、大型スーパーのHomeplusやEmartもKT、SKテレコムと提携して激安MVNO端末の販売を準備中だ。2012年12月中には販売を開始する予定。オンラインショッピングモールもMVNO携帯電話販売の特設ページを作るほど力を入れる。


 長引く不景気の影響なのか、携帯電話も高額なスマートフォンと激安フィーチャーフォンの二極化が進んでいる。MVNOはスマホとフィーチャーフォンの2台使いを狙うというが、ソウル市内は無料で使える公共Wi-Fiが整っているので、MVNOのフィーチャーフォンとタブレットPCのWi-Fiモデルだけでも十分“スマートライフ”を楽しめそうだ。年末にはGalaxyスマホの半額以下という価格の中国産スマホが韓国でも発売されるというので、それもユーザーは期待している。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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サムスン製以外のスマホが欲しい! 韓国iPhone 5いよいよ12月に発売 [2012年11月26日]

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 韓国のスマホユーザーが首を長くして待っていたiPhone 5がいよいよ12月上旬に発売されることが決まった。インターネットニュースの「iPhone 5来月発売有力」という短い記事にはコメントが700件以上も書き込まれた。
 










韓国のAppleストアのページ「iPhone 5 もうすぐやってきます」と書いてある



 「iPhone 5の発売が遅れたのはサムスンのせいだ」、「アップルは既に次の新機種を準備しているので韓国で在庫処分するつもりなのだろう。サムスンのせいだ」、「iPhone 5待ちきれずGalaxy Note2を2年契約で購入してしまった。2年後また会おうねiPhone。みんなサムスンのせいだ」、と恨む書き込みから、「iPhone 5ブラック64GB LTEこそ本物のスマホ、待ち遠しい!」、「iPhone 5が発売されればサムスンやLGがシェアを取られないためにスマホの値段を下げるだろうから、そのときGalaxy Note2かOptimusに機種変更しようかな~」と楽しみにしている書き込みまでいろいろあった。コメント欄でユーザー同士がiPhone 5を買うべきかどうか真剣に討論しているのをみると、iPhone 5が韓国のスマホユーザーの物欲に大きな影響を与えるのは間違いなさそうだ。


 iPhone 5はKTとSKテレコムのキャリア2社から発売される。KTもSKテレコムも史上最大の補償販売(iPhone4Sのユーザーが、契約期間が終わる前に購入しても端末価格を安くするマーケティング)をすると宣伝している。


 今まではKTの単独販売だったが、キャリア2社が競争することによって、同じiPhone 5でもネットワークの速さなどで選べるようになった。KTは1つのアクセスポイントに512人まで同時接続可能で既存のWi-Fiより7倍速い68Mbpsの「プレミアムWi-Fi」を、SKテレコムは2つの周波数を使う75MbpsのLTEマルチキャリアとスマホ1台がWi-Fi2チャンネルを使うことで速度が2倍速くなる「Smart Channel Bonding」を始めた。


4度目の正直?


 iPhone 5がいよいよ発売されるというニュースは、これが4度目である。韓国でスマートフォンを発売するためには、電波法により国立電波研究院で電波認証を受けないといけない。電波の混乱や障害を防止し、韓国の電波環境と放送通信インフラを保護するためである。韓国に端末を持ち込んでテストし、合格してから発売日が決まる。


 アップルは9月19日、10月10日の2度も電波認証を受けては取り消しを繰り返した。理由はSKテレコムの周波数を間違えて申し込んだというのだが、あまりにも初歩的なミスなので、韓国における発売日を遅らせるためにわざと間違えたのではないか、という説が有力だった。サムスンとの訴訟で韓国でのイメージが悪くなり、発売を見合わせているというのだ。実際はサムスンとの訴訟よりも、中国工場のストライキにより生産が追い付かず、米国でも3週間待ち状態だったので、供給不足から韓国での発売を遅らせようとした、という説に落ち着いた。iPhone 5は10月31日にやっと電波認証を終え、発売日を調整してきた。


 韓国のスマホユーザーは、iPhone 5に続いてLG電子がグーグルに納品した「Nexus 4」も韓国で発売してくれたらと願っている。Nexus 4は欧米のGoogle Playストアで、発売開始30分で売り切れたという話題のスマホである。LG電子がグループ会社の技術を集めて作ったという自信作「Optimus G」と変わらない仕様なのに値段は半額。Optimus Gの韓国での出荷価格は約7万3000円だが、Nexus 4は8GBモデルが約2万4000円、16GBモデルが約2万8000円に過ぎない。


 海外で人気のモデルを韓国でも同じ時期に使えるといいのに。韓国でサムスンのシェアが圧倒的に高いのは、ほかに選択の余地がないという事情もあるからかもしれない。海外メーカーのスマホを韓国でもっと販売してほしいものだ。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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アップルとの訴訟でシェア増? サムスン、スマホ販売快調の強気 [2012年11月16日]

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調査会社ガートナーによると、2012年7~9月、スマートフォンの世界市場は1億6920万台、そのうちサムスン電子のスマートフォンは5500万台、iPhoneは2360万台が売れた。シェアで見るとサムスンが32.5%で世界1位、アップルは14%だった。

 人気の端末はサムスンだとGalaxy S3で1800万台、アップルはiPhone 4Sで1620万台売れた。サムスンの躍進によりOSのシェアもAndroidは72.4%、iOSは13.9%と差が広がった。サムスンは携帯電話市場でも世界市場シェア22.9%を記録、ノキアを押しのけて1位になった。
 





Galaxy S3のWebサイト



 


 同四半期はアップルがiPhone 5を発売する直前だったため、買い控えするユーザーが多かったこともアップルのシェアが落ちた原因の一つといわれている。しかしアップルとの訴訟をきっかけに、サムスンのスマホがもっと売れるようになったのは確かなようだ。


 韓国の複数メディアが米モバイル専門家のコメントを引用して報道していた内容はこうだ。アップルとサムスンが訴訟を始めてから、サムスンのスマホに興味がなかった米ユーザーがニュースを見て、同社のスマホの性能がiPhoneと変わらないことを知り機種変更するケースが増えているという。訴訟をきっかけにサムスンを知ったユーザーもかなりいるそうで、サムスンにとっては一長一短ありの訴訟となった。米国の年末商戦でiPhone 5が爆発的に売れない限り、サムスンがスマホ市場で世界1位をキープし続けるのは間違いないといわれている。


 同調査が公開された11月14日、韓国メディアは、「サムスンが部品でアップルを圧迫」「サムスン、アップルと交渉なし」「サムスン、アップルに納品する部品20%値上げ」といった見出しで、サムスンの半導体とディスプレイの部品戦略を報じた。

サムスンと訴訟を始めてからアップルはサムスンの部品を減らしたが、部品の需給に問題がありサムスンに追加で納品するよう要求、これに対しサムスンは20%ほど値上げした価格で納品することにした、という内容だった。サムスンのスマートフォン事業を担当するIT・モバイル担当シン・ジョンギュン社長のコメントも紹介されていて、「アップルとの特許訴訟に関して(HTCのような)交渉はしない」という立場だった。

 これは、台湾HTCとアップルが11月11日に和解して訴訟を取り下げ、その代わりにライセンス料としてHTCスマホ1台当たり6~8ドルをHTCがアップルに支払うという報道を受けてのものだ。サムスンもアップルと和解するのでは? という予測があったがサムスンは最後まで闘う姿勢を見せた。サムスンは10~12月の実績も7~9月と変わらず世界1位をキープすること間違いないと見ている。


 サムスン側は部品の値上げや生産調整に関して、「はっきりしない需要に備えて生産を増やすより、短期的な収益を優先するため半導体(チップ、メモリーなど)とディスプレイの生産を減らす戦略」であり、「アップルを圧迫するため生産を減らすわけではない」とメディアに説明している。


 アップルの半導体購入金額は年間270億ドルで、このうち30%ほどをサムスンから購入していた。訴訟の影響で、サムスンにとっては“大口の顧客”を逃したともいえる。しかし、「アップルでなくても納品先はある、安すぎる納品価格を正常価格に戻したので収益改善のきっかけになる」(サムスン)と強気だ。


 サムスンが部品を提供しなくなってから部品の需給がうまくいかずiPhone 5の生産量が予定より遅れているというニュースもある。そのせいか、iPhone 5はまだ韓国での発売日が決まっていない。


 アップルとサムスンの訴訟はアップルが有利なように見えたが、サムスンの反撃も手強い。英国の訴訟ではアップルがサムスンに謝罪する広告を掲載するという判決が下された。米国での訴訟も陪審員が中立的立場を守れなかったとして問題になっていることから、アップルの一方的な勝利で終わることはなさそうだ。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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好き嫌いが極端に分かれる韓国パソコンユーザーのWindows 8使用記 [2012年11月12日]

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韓国は連日Windows 8関連イベントが行われている。ブロガー招待イベント、大学生のWindows 8サポーターが参加する「MS Student」イベントに続いて、11月9日には誰でも参加できる一般向けのイベントとしてソウル市内で韓国マイクロソフトとインテルが共催する「Windows 8デバイスデイ」が開催された。人気お笑い芸人を呼んでWindows 8の特徴を説明し、Windows 8搭載パソコンも自由に触って試せるようにした。











「Windows 8のデバイスデイ」イベントポスター。韓国で大人気のお笑い芸人が出演しWindows 8の使い方を教えてくれる。右上は人気キャラクター「ギャルさん」。「クリックアニムニダ~タッチイムニダ~(クリックではありません~タッチです~)」とわざと日本人が韓国語を話すみたいにしゃべるのがギャルさんの芸



 
韓国でもっともポピュラーなカフェである「カフェベネ」の大型店舗14カ所にWindows 8体験コーナーが設けられている。マイクロソフトの担当者が常駐しているので、コーヒーを飲みながらWindows 8を体験し、気になる点はその場で聞いて説明してもらう。
 










韓国で最も店舗数の多いカフェ「カフェベネ」にはWindows 8体験コーナーが設けられた。マイクロソフト担当者が常駐し、特徴を説明をしている



 韓国マイクロソフトは有名ブロガーや記者、IT企業の役員には、8月からWindows 8を提供していた。使ってみてブログで宣伝してください、ということだが、見事なまでに意見が分かれた。記者らはほぼ全員が「Windows 8はWindows 95を初めて使ったときのように衝撃的で斬新。とても軽くてパソコンがすいすい動くし、ユーザーインタフェースも使いやすい」、「今までのWindowsとは全く違う雰囲気なのでびっくりした。パソコン買い替えたくなった」、と褒めているのに対し、ブロガーやIT企業の役員らは「Windows 8はお勧めできない。Windows Meを思い出す。マイクロソフトはパソコンとタブレットPCの両方を狙おうとしてどっちも逃した」と書いていた。これにはマイクロソフトもびっくりしただろう。


韓国マイクロソフトは約1200円でWindows 7からWindows 8へアップグレードできるプロモーションを行っている。通常のアップグレード料金は約3500円なので、3分の1ほどの値段でWindows 8が使えるチャンスである。2012年6月2日以降、Windows 7を搭載したパソコンを購入した人が対象だが、適当にパソコンの種類と購入店、購入日を書き込むだけでプロモーション料金を利用できるので、話題のWindows 8を使ってみたいと申し込みが殺到した。しかしネットでは、「やっぱりWindows 7で十分」だとダウングレードしたという書き込みが多かった。

 ポータルサイトの質問掲示板を見ると、「タッチ式ディスプレイがないとWindows 8を利用できないのか?」という質問が最も多かった。韓国マイクロソフトは、「キーボードとマウスでもWindows 8の機能は全て利用できるので安心してアップグレードしてください」と答えているが、「タブレットPC持っていない人はやめとけ~」と突っ込まれている。


 Windows 7に比べてパソコンの立ち上がりが速い、複数のプログラムを実行してもパソコンが遅くならないので快適、アップグレード費用が安い、という点はブロガーの間でも好評だ。ただ、「ユーザーインタフェースにはすぐ慣れたけど、やっぱりタッチ式ディスプレイに買い替えない限りWindows 8の良さは分からない」、「デスクトップモードがあるけど、マウスを使うデスクトップパソコンにWindows 8は合わなかった。スマートボタンがなくなったWindows 8をマウスでクリックして使おうとするといらいらする。短縮ボタン覚えられない。すぐWindows 7に戻した」、「Windows 8で使えるアプリやプログラムがまだ少ないので、当分はビジネス用に使うパソコンはWindows 7、エンタメ用はWindows 8、と分けた方が無難」など、辛口な意見が多い。共通しているのは、「Windows 8はタブレットPCに買い替えてから使うべき、そうでないと良さが分からない」という点だ。


 韓国からWindowsストアにアクセスすると、登録されているアプリの数は11月5日時点で484件、ほとんどが韓国のポータルサイトが作ったマップとKPOP、幼児向けアニメ、天気、簡単なゲームぐらいで、iOSやAndroidで人気のゲーム、お店検索、スケジューラーといったアプリはまだWindowsストアには登録されていない。


 韓国のWebサイトは「Flash乱用」というほどメニューからFlashで作り込んでいるところが本当に多く、Safariでは何もクリックできないWebサイトが多すぎる。インターネットバンキング、クレジットカード決済、オンラインショッピングもWindowsとIEに最適化されているので日常的に使うパソコンはやっぱりWindowsでないと不便だ。


 iPhoneの影響で大学生を中心にMacを使う人が増えたことから、「タブレットPC用画面」を別途作るサイトが増えたので、最近はだいぶ良くなった。以前のように一家に1台Windowsパソコンがあって、それがないと何もできないということはなくなった。そのせいか、Windows 8は話題にはなっているが、話題で終わってしまっている印象が強い。Windowsストアのアプリが急増すれば、Windows 8の人気も上がるのではないだろうか。




趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20121110/1070122/

サムスンとLGが電子ペン付きWindows 8パソコンを発売

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サムスン電子とLG電子がついにWindows 8パソコンを発売した。

 サムスンはWindows 8ノートパソコンを「スマートPC」と呼ぶ。タブレットの携帯性とノートパソコンの高性能なところを組み合わせたパソコンという意味で、Windows 8のノートパソコンを、タブレットやUltrabookと区別している。


 サムスンのスマートPCは「ATIV」というブランド。9月初旬にベルリンで開催されたIFA2012で公開した当時のまま、まずは11.6型のキーボード脱着式モデルから先に発売した。一般向け「ATIV Smart PC」とその上位モデルとなる「ATIV Smart PC Pro」の2つがある。ATIVグローバルサイトで紹介しているWindows 8タブレット「ATIV Tab」はまだ発売時期は決まっていないという。










サムスン電子のキーボード脱着式Windows 8パソコン「ATIV Smart PC Pro」



 スマートPCには電子ペン「Sペン」が付属する。文字の認識率が高いので使いやすいと評判が高く、スマートフォンのGALAXY Noteの人気を後押ししている。ディスプレイに手書きした文字や数式を瞬時にテキストに変換してくれる「Sノート」、スマートTVやスマートフォンと連動してファイルや今見ている画面を共有する「All Share Play」といったサムスンのスマートフォンで人気を集めるアプリは全てATIVでも使えるようにした。


 発売されたスマートPCは11.6型ディスプレイだが、キーボードは13型向けのもので小さすぎないので、書類を作るときも打ち間違いが少なくなった。韓国ではメールなどの文面に「タブレットで書いていますので誤字はご容赦ください」と一言添える人が多い。韓国語はローマ字で書いて変換するのではなく、ハングル文字の母音と子音の組み合わせで書くのでタッチ式のソフトウエアキーボードや小さい携帯型のキーボードだとつい隣の文字を押してしまう。「変換」というもう1回チェックする段取りがないので、誤字チェックしてくれないメールや掲示板の書き込みだと誤字に気付かないことがよくある。サムスンが「ATIVはキーボードが大きい」と宣伝しているのは、英語や韓国語を使うユーザーからの要望が多かったからだろう。


 一般向けのATIV Smart PCの仕様は、CPUがIntel Atom Z2760 (1.5GHz)、11.6型ディスプレイ(1366×768ドット)、2GBのメモリーに64GBのSSDを搭載。9.9mmの薄さでキーボードを外すと744gになる。価格は109万ウォン(約7万5000円)である。1回の充電でネットサーフィンは14.5時間、動画連続再生は9.5時間利用できる携帯性が売りだ。


 ATIV Smart PC Proは、CPUがIntel Core i5、11.6型ディスプレイ(1920×1080ドット)、メモリー4GBに128GBのSSDを搭載する。11.9mmの薄さながら冷却性能がプラスチックより30%良くなるメタルファンを採用した。キーボードを外した状態で888g。電源を入れてパソコンが立ち上がるまで8.5秒、IEのアイコンをクリックしてWebページの画面が開くまで0.5秒しかかからない点もアピールしている。価格は159万ウォン(約11万5000円)である。両方とも前面に200万画素、背面に800万画素のカメラが付く。


 サムスン電子は10月24日のATIV記者発表会で、「タブレットパソコンのラインアップが拡大しても、ユーザーはパソコン本来の機能と性能を必要としている。サムスン電子は画期的な製品を持続的に発売する。最高のモバイル環境を提供するだろう」と自信を見せた。



LG電子はスライド型



 LG電子のWindows 8パソコンはATIVのようなブランド名はなく、タッチスクリーンノートパソコンは「H160」、タッチスクリーンでオールインワンパソコンは「V325」というモデルだ。LGはスマートPCではなく「Tab book」と呼ぶ。タブレットとノートブック(韓国ではノートパソコンを「ノートブック」という)のいいところだけを組み合わせたという意味なのはサムスンと同じ。


 H160は画面のサイズはサムスンと同じく11.6型だが、キーボードを取り外せない。ディスプレイの横にあるボタンを押すとオートスライドでキーボードが現れる。そのせいか15.9mmとちょっと厚みがあり、重さも1.05kgになった。CPUはIntel Atom Z2760(1.8GHz)、11.6型IPS液晶(1366×768ドット)、2GBのメモリーと64GBのSSDを搭載する。サムスンと同じく電子ペン「スマートタッチペン」が付属する。価格は専用カバー付きで110万ウォン(約7万5000円)である。10月26日から発売すると発表はしたものの、量販店やネットショッピングでは11月から予約販売開始と書いてある。


 LGは10月26日から、UltrabookにもWindows 8を搭載して販売している。本体はそのままWindows 8にアップグレードしたいユーザー向けに、23型のタッチスクリーンディスプレイも発売した。











LG電子のWindows 8パソコン



 韓国ではWindows 8がタッチスクリーンに対応していることよりも、パッケージソフトからアプリ方式に切り替わったことの方が話題になった。ソフトウエア販売方式がパッケージからアプリへ完全に切り替わるのではないか、という声もある。


 韓国は電子政府、オンラインバンキング、航空券予約、ネットショッピングなど、決済機能が必要な主なWebサイトはほとんどIEを標準にする。いろいろなサービスのWindows依存度が高いことからも、AndroidでもiOSでもなくやっぱりWindows端末が一番使いやすい!というユーザーがたくさんいる。外ではiPadやGALAXY Tab、仕事ではノートブックと2台を使い分けていたユーザーが、これからはWindows 8の端末だけに絞る可能性もある。


 カーナビやMP3プレーヤーを製造していた中小メーカーがタブレットを製造するようになった。グーグルのAndroidタブレット「Nexus 7」が9月に参入したことをきっかけに、ここでは激安タブレット競争が繰り広げられている。安いタブレットとノートパソコンを使い分けるか、高くてもWindows 8パソコン1台に絞るか、ユーザーとしては迷うところだ。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年11月02日]


-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20121102/1069222/