教師たちの“情報化”教育も熱を帯びる韓国

韓国では2014年に小中学校、2015年に高校でのデジタル教科書全面導入に向け、教育現場のさまざまなところで変革が起きている。

 教科書会社は生徒向けに教科書を電子化して、スマートフォンやタブレットPCから有料で利用できるようにしている。ところが今、教材を自分でスキャンし電子データにする「自炊」が問題になっている。持って歩くのが大変な分厚くて重い大学教材の自炊や、自炊代行業者を利用するケースが増えている。悪質な自炊代行業者が、自炊したファイルを横流しして、教材を買っていない人に電子ファイルを入手できるようにしたこともあった。そのため、自炊自体、著作権違反ではないかという論争になっている。


 教科書会社は、生徒向けの教科書アプリは時代の流れに乗り遅れないためのサービスであり、収益のためにやっているわけではないという。収益を狙うのは教師向けアプリ、およびデジタル教育プラットフォームにある。教科書会社が配布する教師用の教科書、指導案、問題集をはじめ、教師がオリジナル教材を作るときに使えるよう教科書の内容を補足する動画やアニメ、MP3、画像、PowerPoint/PDF資料といったデジタル教材と素材を提供する有料アプリである。教師がタブレットPCや電子黒板を使って、より楽しく授業を行うために必要な資料は一通りそろっている。








教科書会社のMiraeNが提供する教師向けアプリ「先生マーケット」。タブレットPCから使えるデジタル教材を豊富にそろえる

教師は、タブレットPCとモバイルインターネットを使って、その場でアプリを何回かタッチするだけですぐ必要なデジタル教材をダウンロードできるので、授業をしながら学生の反応を見て教材を差し替えることもできる。こういった教師向けアプリは教師用の公認認証書(ネット上で本人確認ができるプログラムで、一般用、株取引用、教師用など複数の種類がある)を使って会員登録をするので、教師以外は利用できない。


 韓国の教師団体である韓国教員団体総連合会は、2012年9月に教師向けスマートラーニング公募選を開催する。教師自身が開発して授業で活用しているアプリ、SNSを利用した授業など学校現場のスマートラーニングの事例を公募し、優秀な事例を表彰するという。


教師は、タブレットPCとモバイルインターネットを使って、その場でアプリを何回かタッチするだけですぐ必要なデジタル教材をダウンロードできるので、授業をしながら学生の反応を見て教材を差し替えることもできる。こういった教師向けアプリは教師用の公認認証書(ネット上で本人確認ができるプログラムで、一般用、株取引用、教師用など複数の種類がある)を使って会員登録をするので、教師以外は利用できない。


 韓国の教師団体である韓国教員団体総連合会は、2012年9月に教師向けスマートラーニング公募選を開催する。教師自身が開発して授業で活用しているアプリ、SNSを利用した授業など学校現場のスマートラーニングの事例を公募し、優秀な事例を表彰するという。





趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年4月20日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120420/1046823/

デジタル教科書の導入にらみ、塾でもタブレット使い「スマートラーニング」

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 小中学校による2014年のデジタル教科書全面導入を前に(関連記事)、韓国では、塾でもタブレットパソコン(PC)を利用して学習する「スマートクラス」や「スマートラーニング」と呼ばれる授業が広く普及している。子どもにタブレットPCやスマートフォンを買ってあげたいけど、ゲームばっかりしそうだから悩む、という親はとても多い。しかし最近は塾でもタブレットPCを使って授業をするところが多くなり、買わずに済むわけにいかなくなりそうだ。


 中でも有名なのが、先生のディスプレイと生徒のタブレットPCを連動して英語を教える、ソウル市内にあるピョヒョン語学院という英語塾である。


 同学院はタブレットPCを使ったスマートラーニングを真っ先に導入した。イスラエルの教育省から大臣も視察に来たというほど、スマート技術を活用した学習方式として注目を浴びている。


 ここでは、先生と英語で会話しながらタブレットPCを使って文章を作ったり、クイズに答えたり、先生から資料を転送してもらったり、宿題を転送したりと、「話す」、「聞く」、「書く」、「読む」という4つの言語能力をさらに高めるため、タブレットPCを導入したという。タブレットPC上で日常会話の文章の空欄を埋めながら、だんだん長い文章にチャレンジしていく。この過程で自然と英語で考え、英語で書く能力が身に付くという。生徒がタブレットPCに入力した答えはすべて先生のディスプレイに表示され、採点結果が記録される。先生はその場で各生徒がどの問題を間違えたのか確認して、すぐフィードバッグできる。


 タブレットPCの中に教材がインストールされてあるので、家に持ち帰ればそのまま英語の問題集として使える。また生徒同士が離れていても、タブレットPCを使って資料を共有することで、一緒に考えながら宿題をするグループスタディーが活発になり、効果もあるという。


 ピョヒョン語学院で授業を担当する先生は、タブレットPC利用のメリットをこのように説明する。「以前は先生が一方的に説明をして生徒は聞いているだけだった。積極的に発表したがる子はいいが、消極的な子だと、本当に理解しているのかどうかすぐ把握するのは難しかった。タブレットPCを使ってクイズを出せば、ちゃんと理解している子とそうでない子がその場で分かるので教えやすい」、「タブレットPCを使うようになってから、先生がクイズを出すと誰が最も速く正解を送信するか、それが先生のディスプレイに表示されるので、生徒の間で競争するようになった。他の子たちの前で恥をかかないようにと、塾に行く前に予習復習をするようになり、英語力が上達する」。韓国の子どもたちは塾に行って勉強を教えてもらうというより、塾に行くためにも勉強をするとは。








生徒用のタブレットPC。与えられた問題について答えを書き込むと、先生のディスプレイに表示される。誰が先に正解を書き込むか競争が生まれ、さらに勉強するようになり成績が上がるという








先生用のディスプレイ。生徒のタブレットPCの画面を表示させたり、タブレットPCの画面をフリーズさせて作業を止め、前を見るように仕向けたり、クイズ問題を送信したりといろいろな機能がある



 数学や国語などを教える小学生向け学習塾も、タブレットPCを活用し始めた。会員向けに塾の延長でいつでも予習復習ができるよう、eラーニングサイトを運営するのはもちろん、タブレットPCからも利用できるようモバイルサイトも次々にオープンしている。数学の原理を分かりやすく説明したアニメや科学の実験動画など、塾の教材や授業内容を補うデジタル資料を掲載する。塾の会員であれば無料で利用できる。モバイルサイトに質問を残すと、塾の先生が随時答えてくれるのはもう当たり前だ。


 2011年からKT、SKテレコム、LGU+のキャリア3社によるスマートラーニング参入も目立っている。端末を売るため、モバイルネットワーク加入者を増やすための戦略ではあるが、教育とタブレットPCを組み合わせたビジネスは始まったばかり。市場展望は明るいと見られている。


 しかしタブレットPCとモバイル環境を利用したスマートラーニングが、学習のための道具というより、子どもを一瞬たりとも休ませない道具になっているような気も筆者はしている。日本ではそうならないよう、気を付けてうまく導入してもらいたいものだ。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年4月13日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120413/1046071/

「子どもの教育にはタブレット」、教育分野に本腰入れるサムスン、キャリア、教科書会社

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 2014年から小中学校、2015年からは高等学校でデジタル教科書を導入することが決まった韓国では、タブレットPCから利用できる学習アプリやeラーニングサイトの競争がヒートアップしている。


 デジタル教科書を導入するというのは、教科書がデジタルになった、紙の教科書からデジタルデバイスを使うようになった、という表面的な変化だけではない。教育行政のデジタル化、授業法・評価法のデジタル化など、学校で行われること全てがデジタル化しないといけない。デジタル環境に合わせた教科書作りも必要だ。デジタル教科書となれば膨大な情報を教科書の中に保存できるので、教科書にリンクされる参考資料はどれぐらいのボリュームにすべきか、という悩みもある。このようなバッググラウンドの環境を含め、韓国では1996年から準備が始まり、2007年から学校現場で実証実験を始め、今ではほぼ準備完了となった。


 教育熱の高い韓国では、授業に付いていくためには、デジタル教科書を使う前から子どもたちがタブレットPCやデジタル教材に慣れておいた方がいいのではないか、そういう心配からタブレットPCを使った学習アプリに興味を持つ保護者が増えている。


 サムスンは2011年6月から、いくつかの学校とMOUを締結し、スマートスクール実証実験を行っている。Galaxy Tabを使って授業をしたクラスと、そうでないクラスを比較して先生と生徒の授業満足度と、学習効果を観察するという実証実験である。学校現場では先生たちのアイデアが加わり、Galaxy Tabで使えるオリジナル教材が開発され、無料のクラウドコンピューティングサービスやSNSを利用して、先生と生徒と保護者がそれらの教材を共有している。


 2012年3月には「ラーニングハブ」というサムスン初の教育プラットフォームサービスも発表された。約1万5000件の講義動画、学習スタイル診断、進路分析、学習スケジュール管理、8歳から80歳まで年齢別に選べるとうたう学習コンテンツをGalaxy Tab 10.1と同8.9、同7.7から利用できるようにしたもので、いわばタブレットPCのための教育ポータルサイトといったところである。有料のコンテンツもある。






サムスンが2012年3月から始めたタブレットPC向け教育ポータル「ラーニングハブ」のイメージ。8歳から80歳まで年齢別に生涯学習できるというコンテンツをそろえたのが自慢


サムスンが教育分野の投資に積極的なのは、デジタル教科書市場を狙った布石とも言われている。2011年からは、一部の学校でデジタル教科書の実証実験に使われる端末がノートパソコンからタブレットPCに変わった。そのため、今後生徒の間で広くタブレットPCが普及すると見込まれている。

 韓国政府はデジタル教科書の中身の開発だけ進めていて、どの端末からも利用できる教科書にする、という方針である。タブレットPCからも、ノートパソコンからも、スマートフォンからも使えるのがデジタル教科書というわけだ。しかし、画面の大きさや持ち運びの便利さから考えると、やはりほとんどの生徒がタブレットPCからデジタル教科書を使うのではないかと見られる。そのためにサムスンは「教育=Galaxy Tab」というイメージ作りを始めている。


 市場先制効果を狙い、タブレットPCのメーカーであるサムスンが最も積極的に動いている中、サムスンが個人向け学習サービスなら、教科書会社は教師向けサービスに力を入れる。教師向けとは、タブレットPCやデジタル教科書を使う授業で、一緒に使える教材を提供するサイトのことである。簡単にいえば、教科書会社が先生用に配布する指導案のようなものをデジタル化し、さらに最新の資料をタブレットPC向けに使えるようにしたサービスである。


 韓国の先生たちは授業のために必ずといっていいほどオリジナルの教材を作る。PowerPointファイルに画像と動画を盛り込み、それを電子黒板に映して、授業内容を分かりやすく補足する。教育庁が提供する無料教材サイトはあったものの、そこに載っている資料は著作権の問題もあり、写真も動画も、かなりの年代ものだった。著作権がクリアされたものを選んで教材を作る必要があったため、先生たちはいろんなサイトを検索して探すなど毎日かなりの時間を割いていた。教師向けのサービスはこうした不便を解消する。学校単位で加入してIDを発行し、全教師が使うことで制作した教材を共有し、共同作業もできる仕組みを提供する。


 「タブレットPC」と「教育」の組み合わせは、通信キャリアの目玉サービスでもある。SKテレコムは、2011年夏から幼児向け学習アプリと月2000~2500円ほどの定額で何冊でも利用できる小中高校生向け教科書・参考書アプリを提供する。また、青少年向けに、データ定額制に加入していなくても負担なく学習アプリが使えるよう、8300件ほどある学習アプリ限定のデータ通信料半額割引も始めた。英語学習、成績が上がる秘法といった一部のアプリはお試しとして無料公開している。KTも2012年3月より、「ホームスタディー」という名前で、月3000円ほどで利用できる小中学生向けeラーニングサービスを始めた。ノートパソコンやタブレットPCから利用できる。


 キャリアと大手参考書出版社・学習教材会社との提携も次々に発表されており、学習アプリはまだこれからが本番という感じもする。サムスンとキャリアの学習アプリ市場をめぐる競争も2012年から本格化しそうなので、競争によってどんな斬新なアプリ、あるいはサービスが登場するのか、楽しみでもある。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年4月6日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120405/1045424/

オバマ大統領が“宣伝”したあの大人気モバイルアプリ

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2012年3月26日から27日にかけて開催された核安全保障サミットのために韓国を訪問したオバマ米大統領は、3月26日、韓国外国語大学で講演を行った。30分の講演は「国際社会における韓国の役割」がテーマだった。

 核安保サミットという目的があるだけに、講演の内容は「世界平和」とか、「核兵器を減らそう」とか、そういう内容だった。しかし、この講演で、オバマ大統領が韓国の人気SNSのサービス「カカオトーク」の名を出したことから、ものすごい話題になった。


オバマ大統領の発言は、「スマートフォンとTwitter、Me2day(NAVERのSNSつぶやきサイト)、カカオトークによって全世界は一つにつながっている。世界の多くの人々が韓流に染まるのも不思議ではない」という内容だった。


 For like your parents and grandparents before you, you know that the future is what we make of it. And you know that in our digital age, we can connect and innovate across borders like never before — with your smart phones and Twitter and Me2Day and Kakao Talk. (Laughter and applause.) It’s no wonder so many people around the world have caught the Korean Wave, Hallyu.(駐韓米国大使館のFacebookから引用)


 講演のテーマとは関係ない導入部の話なので、韓国は進んでいるね、とリップサービスも込めて発言したのだろうけど、オバマ大統領の口からサービス名が出ただけでものすごい宣伝効果をあげた。「韓流」を韓国語の読み方である「ハンリュ」と発音したのにもまたびっくり。この発言は各種報道、Twitter、Me2day、カカオトークを経由してあっという間に広がった。


 新聞には一斉に「オバマ大統領がカカオトークに言及」という見出しが躍り、モバイル業界はお祭り騒ぎ! カカオトークが6月から提供する予定のソーシャルゲームまで注目されるようになった。

カカオトークは2010年3月にサービスを開始したメッセンジャーアプリである。市場先占効果もあってか、開始2年で4200万ダウンロードを突破した。








韓国の無料メッセンジャーアプリ「カカオトーク」。海外を含め4200万ダウンロードを超えている


同アプリはスマートフォンのアドレス帳に登録してある電話番号から、同じくカカオトークを使っている人を自動登録してくれる機能が便利なメッセンジャーで始まったが(最近はこの自動友達登録機能がウザい、という“カカオトーク疲れ”の人も増えている)、Facebookのような個人のページを作れる「カカオストーリー」というアプリもサービスしている。4月からはニュースと雑誌の記事もシェアできるサービスが始まる。関心のある分野のニュースを友達として登録すれば、スマートフォンのメッセンジャーにリアルタイムでニュースが送信されるという仕組みである。









カカオトークが始めたFacebookのような個人ページアプリケーション「カカオストーリー」のスクリーンショット。写真を簡単にデコレーションして掲載できるところが人気


6月からは、ソーシャルネットワークをベースにその領域をゲームに広げようとしている。友達とメッセンジャーでやり取りしながら、スマートフォンでちょっとした対戦ゲームを楽しめるサービスになる模様。カカオトークがゲームプラットフォームになる。このため、ゲーム制作会社と契約を結んだ。カカオトークの中でしか楽しめないゲームを提供するという。


 ここではソーシャルネットワークゲームといえば、日本のGREEやDeNAが成功モデルとしてよく取り上げられる。90年代後半からオンラインゲームが盛んで、世界市場でも高いシェアを誇る韓国だが、ソーシャルネットワークゲームではまだこれといった代表作がない。スマートフォンのユーザーの間で人気のゲームといえば、韓国でも「Angry Birds」である。


 オバマ大統領や米政府機関もSNSを積極的に活用していて、オバマ大統領の講演前には、駐韓米国大使館のFacebookから「Ask President Obama」というイベントを行い、大統領への質問を募集した。そこで選ばれた3つの質問にも当日の講演で答えてくれた。


 「インターネットで大統領ではないふりをして、自身をかばう書き込みをしたことがありますか?」という質問には、「この質問には驚いた。そういうことはしたことがない。もしかしたら、娘たちはしたかも」なんていうユーモアのある答えが返ってきた。


 SNSもカカオトークの人気も止まらない。





趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年3月30日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120329/1044720/

韓国でSNS選挙運動が合法化、“つぶやき合戦”の火ぶた切る

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韓国では2012年4月11日の総選挙より、SNSを利用した選挙運動が合法となった。

 中央選挙管理委員会のホームページに告示された「選挙運動」の定義を見ると、「インターネット、電子メール、SNSを利用した選挙運動は常時許容」、候補者はいつでも「インターネットホームページ(ポータルサイト、Hompy(注:mixiのような個人ホームページ)、ブログ)、インターネット掲示板・チャットなどに文章と動画を使って情報を掲示し、電子メールまたはモバイルメッセンジャー、TwitterなどSNSを利用して選挙運動できる」とある。


 Twitterに特定候補や政党を支持するつぶやきを残しても選挙法違反ではないということである。また、選挙当日、オフラインでは選挙運動してはならないが、インターネット上では自由にできるようにした。なお日本ではネットを利用した選挙運動が禁じられている。


 2012年4月11日に行われる総選挙は、全国の国会議員を選ぶ大規模な選挙である。12月には大統領選挙もあるため、SNSを使った選挙運動がどれほどの力を発揮するのか、4月の総選挙で試されることになる。TwitterなどSNSの力で、若い世代が支持する候補へ世代交代となるか、与党が没落するか、これが一番注目されている。


 今までの選挙運動といえば街角演説、駅前での名刺配り、大音量で名前を連呼しながら宣伝カーに乗って街を周回するなどだった。今回の総選挙は「Twitter選挙」とも言われるほど、各党と候補者はTwitterで熱心につぶやいている。SNSに慣れていない候補者のために、TwitterとFacebookを管理してくれるコンサルティング会社まで登場したほどである。選挙に勝つためのSNS活用戦略を練り、どのようにつぶやけば有権者により魅力的に映るのかをアドバイスしてくれるという。


 Twitterでの選挙運動が話題になるのは、今回が初めてではない。2011年の補欠選挙からだった。4月と10月補欠選挙で、20~40代がTwitterを使って無所属と野党の候補を支持。10月の選挙では歴代補欠選挙の中で最も高い投票率45.9%を記録すると同時に、若い世代に支持された候補がほとんど当選した。


 また、「投票認証」が流行った。投票場の前で撮った写真をTwitterに投稿、投票したことを報告し、友人らにも投票するよう呼びかけることである。フォロワーの多い芸能人や著名人が多く参加してファンにも「投票認証」するよう呼びかけたことで一般人の間でもブームになった。

ところが、中央選挙管理委員会は「投票認証」を取り締まった。特定候補に投票しようといったつぶやきと一緒に投票認証したり、フォロワーの何人以上が投票認証すれば自分は○○しますと約束して、特定候補に投票するようそれとなく仕向けるつぶやきは選挙法違反であるとして、人気芸能人が取り調べを受けたりした。


 それがきっかけとなってSNSを利用した選挙運動がどうして違法なのかの議論が始まり、2011年12月には憲法裁判所が、経済的・社会的地位や年齢、性別、地域などに関係なく誰でもアクセスできる公平な選挙運動の手段としてネット選挙運動を合法化すべきと決定し、中央選挙管理委員会がルールを変えた。


 さっそくポータルサイトは4月11日に向け、総選挙特設ページを設けた。選挙管理委員会が提供する候補者の公式プロフィール、投票場案内、選挙関連記事一覧、Twitterをはじめ各種SNS上に書き込まれた選挙関連情報を集めて見やすいように表示。Twitterで多数RT(リツイート)された選挙関連書き込みは別途まとめている。検索結果にTwitter検索も反映し、芸能人のTwitterつぶやきをまとめて初期画面に表示するなど、SNSと連動したサービスにも力を入れる。ポータルサイト最大手のNAVERは、SNS上の書き込みを分析して、話題のキーワードをリアルタイムで表示する。総選挙特設ページはスマートフォンやタブレットPCから見やすいようモバイル用も提供する。










今回の選挙をきっかけに、ポータルサイトはTwitterとFacebookに移行している“情報のたまり場”としての役割を自分たちに戻す絶好のチャンスと見ているようだ。ニュースに対するコメント、問題提起といった意見のやりとりや口コミ・企業宣伝などは、以前はポータルサイトのニュースコメント欄や掲示板へ投稿されていたが、スマートフォンとSNSが登場した2009年11月以降からはTwitterとFacebookに取って代わってしまったからだ。


 SNSを利用した自由な選挙運動の一方で、誹謗中傷や間違った情報がRTにより伝播して事実であるかのように広がってしまうことを懸念する声もある。しかしSNSは匿名で利用できても、自分が誰であるかを明かし、知人や友人とつながっているので、実名制の掲示板よりも誹謗中傷が少ないといわれている。Twitter選挙運動でお金をかけない選挙、有権者の声が大いに反映される選挙に変わることができるか、興味深い。






趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年3月23日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120322/1044342/

キャリアとメーカーがケータイ販売価格を“談合”していた

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韓国の公正取引委員会は2012年3月15日、SKテレコム、KT、LGU+の通信キャリア3社とサムスン電子、LG電子、パンテックのメーカー3社に対して「不当顧客誘引行為」をしたとして、課徴金453億3000万ウォン(約34億3000万円)の納付命令を出したと発表した。キャリアとメーカーが談合して端末価格を高く設定し、各種割引で安く買えるように見せかけてユーザーをだましているというのが理由だ。SKテレコムとサムスン電子は異議を唱え、行政訴訟を起こす方針であるとしている。






SKテレコムの代理店。個人情報保護のため、紙ではなくタブレットPCを使って会員情報登録を行っている。韓国の販売代理店が携帯やスマートフォンの端末価格を膨らませて大幅に割引しているかのように見せたことが問題になった(写真は本文と関係ありません)

公正取引委員会が調査したところによると、キャリアとメーカーは代理店に販売する端末価格を実際の価格より高く表記し、ユーザーにはキャリアとメーカーが「端末購入補助金」を支給して大幅に割引販売しているかのように見せかけていた。2008年から2010年まで販売された機種の中で、SKテレコムが120機種のうち26機種、KTが77機種のうち4機種、LGU+が56機種のうち14機種、合わせて253機種のうち44種が端末価格を膨らませていた。

 からくりはこのようになる。キャリアとメーカーが談合して、メーカーがキャリアに納品した端末価格より、1台あたり平均30万ウォン(約22000円)ほど高く代理店販売価格を設定する。キャリアは代理店に、1台販売するごとに平均14万ウォン(約10500円)を奨励金として支払い、代理店は5万ウォン(約3700円)のマージンを残して代理店価格から1台9万ウォン(約6800円)ほど値引きしてユーザー販売する。差し引きすると、結局ユーザーは、割引してもらったと思ったものの、実際の端末納品価格より15000円ほど高く買っていたことになる。


 つまり、「代理店価格(出庫価格)」という端末価格の表記があり、そこから該当キャリアの利用年数や平均料金を割り出して「端末購入補助金」が販売代理店に適用される。代理店は、出庫価格よりも安く買えるようになっている。出庫価格が実際の価格より2万円以上も膨らんだ水準になっていたため、ユーザーから見ると割引してもらったと思っていたのが実は全然そうでなかったということである。筆者の場合、端末を安くする代わりに条件があるとして、高いデータ通信料金に加入させられただけに、二重にだまされた気分である。

また今回の調査により、あるメーカーの端末の場合、韓国内での出庫価格は5万円ほどする一方、海外40カ国での平均出庫価格は2万円にも満たないことが明るみになった。同じ端末なのに、韓国のユーザーには2.5倍も高く売っていたのだ。


 韓国はこれまで、同じキャリアの代理店なのに、代理店ごとに端末の価格が全然違うことも問題になっていた。例えばSKテレコムのユーザーが機種変更しようとした場合、同じ機種なのに代理店AとBでは値段が全然違うので、複数の代理店を歩き渡り一番安いところで機種変更していた。新規加入するときも同じで、代理店Aは端末価格無料なのに代理店Bでは数千円したりと、定価というものがなかった。その理由は販売奨励金にある。


 韓国では2008年より販売奨励金が復活し、キャリアから代理店に支払われる奨励金だけでなく、メーカーも代理店に奨励金を支払い自社の端末を販売するようにしていた。代理店は奨励金から自由に自分のマージンを残して割引販売するので、代理店Aはマージンを少なくして端末を安く販売し、代理店Bはマージンを多くして端末を高く売る、という仕組みだ。


 キャリアとメーカーは、補助金をはじめ販促費用を商品価格に上乗せするのは当たり前のことであるとして猛反発する。公正取引委員会はキャリアとメーカーに対し、課徴金を支払うほかに、端末の納品価格と代理店価格の差額、販売奨励金の内訳をホームページに公開するように求めているが、これも営業秘密だとして反発する。公正取引委員会の処置がうやむやにならず、携帯電話端末流通、引いては適正な価格の改善につながってほしいものだ。






趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年3月17日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120316/1044007/

LTE普及で音声通話が無料となるか?

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2012年2月に発表された2011年度の決算によると、携帯電話最大加入者数を誇るSKテレコムは、前年比売上は2.2%伸びたものの、営業益は6.3%減少、純利益は10.4%減少した。ARPU(average revenue per user、1契約当たりの平均収入)も3万3175ウォン(約2430円)と、2010年の3万4491ウォン(2530円)に比べ4%ほど減少している。

 利益が減少したのは、トラフィック増加によるインフラ投資、次世代通信であるLTEの全国サービスに向けて設備投資が増えたという影響がある。ただ、それよりも通信キャリアが恐れているのは、無料でチャットができるメッセンジャーアプリだという。


 キャリアの基本収入である音声通話、SMS(ショートメッセージサービス)の売り上げが減っているのは、ユーザーが音声通話の代わりに無料モバイルチャットで用事を済ませてしまうからだ。SMSの売り上げは主要キャリア(SKテレコム、KT、LG+)3社合わせて年間1兆5000億ウォン規模(約1100億円)にのぼる。スマートフォンが普及すればするほど、無料メッセンジャーアプリを使うユーザーが確実に増えると予測されているため、キャリアの音声通話とSMSの料金見直しは選択の余地がないだろう。


 無料メッセンジャーアプリの代表格であるカカオトークは3200万ダウンロードを突破、1日に10億件ものメッセージが送信されている。やはりメッセンジャーアプリでポータルサイトDaumが提供する「マイピープル」、ほか「ティックトック」といったアプリもそれぞれ1000万ダウンロードを突破した。ティックトックの場合、2011年7月にサービスを開始して5カ月で1000万ダウンロードを記録し、カカオトークよりも早いスピードでユーザーを集めている。これだけユーザーが多いというのは、韓国のスマートフォンユーザーは、カカオトークを定番として、他のメッセンジャーアプリも合わせて使っているということになる。


 マイピープルはDeNAの「Mobage(モバゲー)」と提携し、2012年2月から「Daum Mobage」という名前で韓国語サービスを始めた。Mobageとマイピープルを連動させてユーザー同士でのチャットや音声通話もできるようにする。









Daum Mobageの画面。2012年2月23日「Daum Mobage」サービスが開始。無料メッセンジャーアプリの競争が激化している中、Daumのメッセンジャーアプリ「マイピープル」とMobageを連動させたサービスに期待が集まる



 韓国ではまだ音声通話アプリよりも、電話番号がIDとなるチャットのようなメッセンジャーアプリが一般的である。相手の電話番号さえ知っていれば、お互いが加入するキャリアに関係なくメッセージを送信できる。例えばドコモのユーザーがauのユーザーへ、電話番号をアドレスにして携帯電話からメッセージを送信できるようなものである。

中央省庁の一つである放送通信委員会が実施した2011年度スマートフォン利用実態調査では、スマートフォンユーザーの70%が、無料のメッセンジャーアプリを使うようになってから、キャリアが提供する有料のSMSサービスをほとんど使わなくなったと答えた。カカオトークがあれば十分だからだ。キャリアの立場からすると、カカオトークはトラフィックに負荷をかけ、SMS収益まで奪い続ける憎い存在である。

 キャリアも3社それぞれメッセンジャーアプリを提供しているが、既にカカオトークに慣れてしまったユーザーはなかなか変えようとしない。SKテレコムの子会社であるSKプラネットは3月7日、カカオトークの次に人気の高いティックトックを買収する方針で検討していることを明かした。新しくアプリを作るより、人気のアプリを買収した方がお得かもしれない。


 一方で、キャリア3社が共同で無料メッセンジャー+音声通話アプリを開発するという話もある。SKテレコムをはじめキャリアがこれから導入しようとしているアプリは、スマートフォンのアドレス帳からチャットや無料音声通話ができるようにするものである。アプリを立ち上げなくてもすぐ使えるのが便利だ。他のアプリに音声通話の市場を取られるよりは、自分達が提供して広告収入とLTEデータ通信費を少しでも伸ばしたい、ということなのだろう。早ければ7月にはスマートフォンにプリインストールされる。


 韓国では無料音声通話アプリといえばSkypeやViberなどで、主に子どもを海外留学させている母親や国際電話をかけることが多いビジネスマンがよく利用している。日本でサービスしている韓国企業の無料音声通話アプリもインストールさえすれば韓国でも使えるが、今のところ音声通話機能のないカカオトークの方が使いやすいと断然人気が高い。音声通話アプリをインストールしたものの、3Gからはつながらないという不満のレビューもよく目にする。インターネット電話加入者が多いので、既に加入しているインターネット電話会社のアプリ(加入者間通話は無料だが基本料あり)を使って電話代を節約する人もいる。


 韓国ではLTEがある程度普及してから、安定した品質で音声通話アプリを始めるもくろみだった。実際、LTEは順調に加入者を増やしている。


 2011年7月から受付を開始したSKテレコムのLTE加入者は、2012年1月末で100万人を突破した。実測で下り24Mbps、上り11Mbpsほどなので、スムーズに音声通話アプリや動画を利用できる。しかし使い放題の料金制はなく、月々約4000円で1.2GB分使えるプランだ。SKテレコムのLTEデータトラフィックの69%がマルチメディアであるため、LTEユーザーには動画サイトの利用料を割引するといった計画もあるという。SKテレコムは2012年末までにLTE500万人加入を目標とする。LGU+もLTE加入者が100万人を突破した。いよいよ2012年下半期から多様なモバイルVoIPサービスが登場すると見られる。







趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年3月9日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120309/1043422/

MWC2012、韓国製スマホの背後にぴたり中国勢

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2012年2月27日から3月1日までスペインのバルセロナで開催された「Mobile World Congress 2012」に、目玉のスマートフォンを手にサムスン、LGを中心とした韓国勢が参加した。

 サムスンはプロジェクターとしても使えるスマートフォン「Galaxy Beam」、タブレット「Galaxy Tab2」といったデバイスと、第4世代移動通信であるLTEを利用した音声通話などの技術を展示した。サムスンは今年「経験」をテーマにしていて、デバイスそのものの特徴よりも、それを通じてどんなことを経験できるのかを見せたいと強調している。






MWC2012でサムスンはプロジェクター機能がついたスマートフォン「Galaxy Beam」、10.1型のGalaxy Tab2などを展示した。


Galaxy Beamの場合、毎日のようにプレゼンをする営業パーソンでもない限り、スマートフォンにプロジェクター機能が付いて何に使うのかと思ったが、家の中でビーム機能を使って壁一面に写真を映して見たり、動画を再生したりするのも面白いかもしれない。プロジェクター機能が搭載されたスマートフォンの中では最も薄い12.5mm、8GBの内蔵メモリー、500万画素カメラ付きで、プロジェクターは最大50インチの画面に対応する。画質も明るく一般的なプロジェクターと変らないほどだという。

 「Galaxy Tab2」は10.1型と7型の2種類で、Android 4.0(開発コード名はIce Cream Sandwich)を搭載する。Sペンという電子ペンを使って手書き入力、お絵かきもできる。サムスン独自のアプリケーションストアとメッセンジャーや通話機能もあるコミュニケーションアプリ「チャットオン」が利用できて、ユーザーの情報を基にアプリを推薦してくれる「S Suggest」機能も付いた。端末そのものの機能はもちろん、それを使って何ができるかという面でアプリにも気を使った様子がうかがえる。


 LGは、「Optimus Vu:」、「Optimus 3D max」、「Optimus L7」、「Optimus 4XHD」などのスマートフォンを展示した。スマートフォンの独特なデザインや処理能力向上を強調した。


 「Optimus Vu:」は4対3 画面比の5型の大画面が特徴のスマートフォンで、8.5mmの薄さに168gという軽さで携帯しやすくなった。4対3 の画面比はWebサイトや電子書籍を読むときに便利な画面比で、パソコンよりもスマートフォンからより頻繁にネット検索や電子書籍を利用するユーザーにはぴったりである。LGが得意とする3DTVの技術をスマートフォンにも適用した「Optimus 3D max」も話題になった。2012年上半期に発売予定の、スマートフォンやタブレットを置くだけで充電できる無線充電器も展示した。


毎年MWCで表彰されるグローバルモバイルアワーズでは、サムスンのGalaxy S2がベストスマートフォンに選ばれた。2005年と2007年に続いて3度目である。候補になったのはほかにiPhone 4S、HTC Desire S、Nokia Lumia800などである。携帯電話端末では世界市場第2位になるものの、スマートフォンではアップルを超えられないのではと懸念され、さらにはアップルとの訴訟も続いていたサムスンだけに、ベストスマートフォンに選ばれたことは韓国で大々的に報道された。2011年はiPhone 4がベストスマートフォンだった。来るべきiPhone 5に対抗して、2012年もスマートフォンは激戦を繰り広げそうだ。

 サムスンはベストデバイス企業賞(Device manufacturer of the year)も受賞した。企業賞に選ばれたのはこれが初めてである。2011年は台湾のHTCが受賞した。


 しかし韓国のモバイル業界では、賞をもらってうれしいのも束の間、先進国にやっと追いついたと思ったところ、後ろを振り返るとすぐそこに中国勢がいた。


 MWC2012でも、クアッドコアCPU搭載のスマートフォンを展示したのはLGと中国勢のHuawei、ZTE、HTCだった。ZTEは、2011年10~12月の世界市場端末シェアで、Nokia、サムスン、アップルに続いて4位に浮上した。スマートフォンに出遅れて2010年は一時期赤字に陥り、2011年やっとの思いで巻き返したLGにとっては、技術力もあって価格競争力もある中国勢のスマートフォンより恐ろしいものもないだろう。サムスンも中国勢を恐れて、Galaxy S3を今回の展示会に公開せず、公開と同時に販売を開始することにしたほどだ。


 MWC2012では、通信事業者のKTもプレミアムWi-Fiソリューションが評価され技術賞を受賞した。既存のWi-Fiより8倍速く、17倍の同時接続を可能にした。KTはMWCで2009年広告賞を受賞したことはあるが、技術を評価されたのはこれが初めてだ。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年3月2日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120302/1042843/

韓国スマホユーザーは1日に4時間利用、8割以上がショッピング経験

 韓国ではスマートフォンユーザーが人口の半分に近づく中、ITカテゴリーニュースのほとんどがスマートフォンで埋め尽くされている。今週は、2月27日からスペインのバルセロナで開催されるMWC2012を前に、サムスンとLGの新しいスマートフォンが公開され話題になった。


 LGは厚さ9.6mm、重さ148gと世界で最も薄いという3Dスマートフォン「Optimus 3D Cube」をMWC2012で初公開し、ギネスブックにも登場するとしている。スマートフォン上のアイコンを自由に変えられる機能も付く。アイコンを変え、待ち受け画面を編集する機能がそんなに大事なのかな? と思ったら、20代のスマートフォンユーザーの間ではものすごく重要なポイントだそう。スマートフォンのアイコンや待ち受け画面、チャット用のアラームなどをアプリストアでダウンロードして編集するのが当たり前で、いじらず出荷状態のまま使うと、「おばあちゃんスマホ」とからかわれるのだとか。


 サムスンは「Galaxy Ace2」と「Galaxy mini2」を公開した。デザインとグリップ感はそのまま生かし、カメラとディスプレイの性能をアップグレードした。Galaxyからは、サムスンとAndroid両方のアプリケーションストアを利用できる。サムスンは「合理的な性能と価格のGalaxyシリーズを発売して、より多くの人にスマートライフを楽しんでもらえるようにする」ために、「普及型スマートフォン」にも力を入れていくという。






サムスンの「Galaxy Ace2」(上2つ)、「Galaxy mini2」(下2つ)



 端末のニュースだけでなく、スマートフォンユーザーの実態調査も毎日のように発表されている。


 オンラインマーケティングリサーチ会社のエムブレインがスマートフォンユーザー1838人を対象に調査したところ、スマートフォンの1日平均利用時間は4時間、主に訪問するポータルサイトはNAVERが97.4%、DAUMが77.9%、NATEが60.7%、Googleが53.2%の順だった。Googleはパソコンからの利用率は数%程度なのに比べ、デフォルトでGoogle検索が設定されていることからスマートフォンからの利用者が増えたとみられる。ポータルサイトのNATEは、誰でも自由に書き込めるネット掲示板が有名で、20代が好んで利用し、Googleは40代に人気があった。また8割以上がスマートフォンからショッピングをしたことがあると答え、韓国でもいよいよモバイルショッピングが市民権を得たと調査は分析する。


地上波放送のSBS(ソウル放送)は、2月19日、幼児のスマートフォン利用実態について放映した。多くのお母さんたちが、「赤ちゃんが泣きやまない、ぐずる、そういうときにスマートフォンを与えると泣きやむ」という理由で、スマートフォンで遊ぶようにさせているという。スマートフォンからアニメやゲームのアプリを利用させると赤ちゃんが夢中になって、泣きやむというのだ。赤ちゃんをベビーカーに乗せてスマートフォンを見せてあげられるホルダーまで登場し、ヒット商品になっている。

 番組で5歳未満の幼児16人にスマートフォンと人形、おもちゃなどから一つ好きなものを選ばせたところ、10人がスマートフォンを選択していた。


 この番組が、脳治療専門家に依頼して、スマートフォンに夢中になっている幼児の脳を分析してもらったところ、右脳の活動が他の幼児よりも減っていることが分かったという。「幼児のときにスマートフォンで脳を刺激しすぎると、右脳の機能が衰える。落ち着かない、過剰に騒ぐ子どもによくある現象。幼児のときはスマートフォンより家族みんなで遊ぶのが一番いい」と警告したほどだ。


 もちろん、このような可能性を主張する人たちがいると番組が示しただけで、今後さらなる研究が必要だろう。ただ、幼児への影響に対する心配が表面化するほど、韓国では赤ちゃんや幼児のスマートフォン利用が問題になっている。何かと便利なスマートフォンだが、子どものおもちゃとして長時間利用させてはいけない理由が「右脳」にあるかもしれないとは。だとすれば、タブレットやパソコンにも該当するのではないか。


 韓国の教育科学部(日本の文部科学省にあたる省庁)は、青少年のいじめや暴力問題を予防するため、オンラインゲームの利用時間を制限するといった規制をしようとしている。オンラインゲームのしすぎで(関連記事「スマートフォンでもゲーム漬け」韓国の深刻」)ゲームの世界と現実を区別できず、青少年が暴力的になっているというのが教育科学部の考えである。しかし幼児の頃からスマートフォンでゲームをさせていれば、中高校生になっても遊びといえばオンラインゲームしか思い浮かばないのが当然だろう。オンラインゲームを規制したところでいじめがなくなるかは疑問だが、これを機会に「右脳に影響を与えないゲームアプリ」が登場しそうな気がする。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
 [2012年2月24日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120223/1041924/

ネットワーク接続遮断まで起こしたKTとサムスンの大激突

通信事業者最大手のKTが2月10日から14日まで、サムスンのスマートTVからKTのネットワークを経由してアプリケーションや動画が観られないよう、接続を遮断した。サムスンのスマートTVによってトラフィックに負荷がかかりすぎているため、接続を制限するしかないというのがKTの立場である。

 KTによると、「スマートTVのトラフィックは20~25Mbps。スマートTV15万台を同時に視聴する場合、KTのネットワークに緊急事態が発生する恐れがある」と主張する。これに対しサムスンは、「スマートTVのトラフィックはIPTVよりも少なく、せいぜい1.5~8Mbpsしかない。スマートTVでも、地上波テレビの視聴は普通のテレビと同じく電波を利用している。動画やアプリケーションだけネットを経由して利用するので、ネットワークに負荷をかけるほどではない」と反論する。


 韓国ではKTとサムスンの戦いが連日トップニュースとして扱われ、ネットワーク中立性はどうなるのか、注目している。








スマートTVを視聴するユーザー。KTは自社のネットワークを経由してサムスンのスマートTVに接続できないよう遮断した。KTは、サムスンにスマートTVがネットワークに負荷をかけているのでネットワーク使用料を払うべきと主張する



 テレビからネットを経由してドラマや映画、ゲームといったコンテンツを利用するという面で、IPTVとスマートTVは似ている。ただし、IPTVは通信事業者が提供するサービス、スマートTVは家電メーカーが提供するサービスという違いがある。スマートTVの利用者が増えるにつれ、通信事業者は、スマートTVを販売するサムスンとLGがネットワークにタダ乗りしていると反発するようになったのだ。KTはサムスンとLGに、「スマートTVを売りたいならネットワーク使用料を払うべき」と要求している。


 KTは大量のトラフィックを発生させる企業からもネットワーク使用料をもらうことで、ネットワークに投資できる金額を増やせる、より高速で安定的なネットワークサービスを提供できると主張する。


 KTはLGのスマートTVは接続を制限していない。LGはKTとネットワーク使用料に関する話し合いをしているが、サムスンはその機会を持たなかった。サムスンは「ネットワーク中立性に違反する処置である」、「スマートTVからアプリケーションを利用するとどれぐらいのトラフィックが発生しているのか検証が必要で、KTの主張を鵜呑みすることはできない」、「高速道路利用料を、車の持ち主ではなく自動車会社に払えと言っているようなもの」と、KTとの話し合いに応じなかったため、今回の接続制限に至ったという。



 KTとサムスンの対立が訴訟戦になりそうになったところで放送通信委員会が仲裁に入り、14日の午後6時頃から接続が再開された。KTとサムスンはスマートTVのビジネスモデルを一緒に考えていくための正式な話し合いを始める、ということで合意した。


 しかし他の通信事業者(SKブロードバンドとLGU+)も、スマートTVからのインターネット接続を遮断することを検討しているとして、KTに同調する。通信事業者とサムスンとのトラブルは全て収まったわけではない。


 ユーザーの心配は、スマートTVから始まったトラフィック負荷とネットワーク使用料論争が、一番人気のある「カカオトーク」や「スカイプ」といったメッセンジャーと音声通話のできる無料アプリケーションにまで及ぶのではないかということだ。


 KTはサムスンからネットワーク使用料はもらえなくても、何らかの形で収益を分けてもらうようビジネスモデルの話し合いを始める。接続を遮断するという強攻策のおかげで、話し合いに応じなかったサムスンを交渉テーブルに連れ出す作戦は大成功というわけだ。


 しかし、KTにインターネット接続料金を払い、サムスンのスマートTVを利用している加入者を無視して、一方的にサービスを使えないよう遮断したKTの責任は問われなくていいのだろうか。サムスンによると、2012年2月時点でサムスンのスマートTVは80万台が売れ、その内30万台がKTのネットワークを経由して使われているという。企業同士の争いにユーザーを“人質”にしていいのだろうか。KTとサムスンという韓国を代表する大企業の張り合いで、損をするのはユーザーだけである。


 放送通信委員会は15日から、スマートTVをネットワーク中立性ガイドラインで定めるサービスの例外にすべきか、アプリケーション事業者が通信事業者にネットワーク使用料を払うべきかを諮問委員会を通じて検討し始めた。


 学界からは、モバイルVoIPとスマートTVの接続制限を許した場合、通信事業者が自社の利益のために新規サービスを妨害する恐れがある、これは結局ユーザーがよりよいサービスを利用できる機会を失う被害につながるとしている。ネットワーク使用料はユーザーからもらっているので、それで十分というサムスンの立場と同じである。ポータルサイトの掲示板でも、KTのサムスンスマートTV接続遮断はやりすぎ、というのが全般的な意見だった。通信事業者の一方的なサービス接続遮断の再発防止策も必要である。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
[2012年2月17日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20120217/1041419/