傷つけたくないもん! iPhone 4やGalaxy Sのアクセサリーが大人気

最近韓国で人気なのが、お笑い芸人が貧乏旅行をするバラエティー番組や、人気歌手が仮想夫婦となって新婚生活を送るリアリティ番組(日常生活を追いかける番組)である。視聴率の高い番組だけに、出演者のファッションやアクセサリーも話題となり、ヒット商品につながっている。

 この季節、これら番組から生まれたヒット商品は、スマートフォンのカバー。カラフルで革素材のかっこいいカバーで個性をアピールする芸能人のおかげで、iPhone 4やサムスン電子のスマートフォンGalaxy S向け端末カバーがばか売れしている。







iPhone 4は韓国で発売されたばかりで、予約から端末を手に入れるまで早くて2週間待たないといけない。しかしさすが芸能人。テレビに私物として登場する携帯電話のほとんどがiPhone 4かGalaxy Sだった。みんな同じスマートフォンを持っているからか、誰もがカバーを付けてすぐ自分の物を見分けられるようにしていた。芸能人だけでなく、Twitterで人気の財閥御曹司らが何気に自慢したスマートフォン向け手製高級革カバーも輸入が追いつかないほど売れまくっているというからすごい。


 韓国では携帯電話にストラップをじゃらじゃら付けることはあまりしない。ストラップを売っている露店やアクセサリーショップはたくさんあるのになぜ付けないんだろう。周りの人は、ストラップが端末にぶつかってキズを付けるのがいや、重くなるのがいや、ポケットに入らないしかさばる、などの理由を挙げていた。若い女性でも、せいぜい小さい鏡やミニチュアのリップグロス、金やクリスタルのジュエリーをさりげなく付ける程度である。


 または、T-Money(韓国のプリペイド式交通カード、自動販売機やコンビニでも使えるSUICAのような電子マネー)のストラップ式カードを付けて、iPhoneを使いながらモバイルペイメントを利用できるようにする。これはかなり便利で、モバイルペイメント機能を持たない端末であっても、親指ぐらいの大きさのカードをストラップのようにぶら下げるだけ。電車も乗れて、乗り換えもでき、バスにも乗れる(乗り換える度に運営会社が違うからと切符を買い替えないといけない日本とは違って、韓国ではすべて統合してどんな乗り物だろうが、乗った距離で計算するようになっている)。


 もちろん、これはT-Moneyまたはクレジットカードの交通カード機能を使ったときだけ適用され、現金払いの場合は乗り換える度に交通費を支払わなくてはならない。なお、3G端末の場合は、SIMの中にT-Money機能が入っているので、ストラップ式のカードはいらない。







さまざまな形状のT-Moneyストラップ式カード。モバイルペイメント機能がない携帯端末に付けて使うと便利(T-MONEYのサイトより)


携帯端末にキズがつくのがいや、というのはスマートフォンでも同じで、タッチで液晶が汚れたり傷ついたりを防ぐための透明シールはほぼ100%付けている。端末にカバーを付けるのが好きなのもその延長なのかもしれない。

サムスン電子はGalaxy Sをはじめ、スマートフォンやタブレットパソコン向けのアクセサリーショッピングモールを運営している。街中や電車の中で使っている人をよく見かけるのは、クロコダイル模様になった革製カバー4万4000ウォン(約3400円)、ランボルギーニのロゴ入りで液晶まですぽっとかぶせる革製ケースは4万5000ウォン(約3500円)、爪が長く指先でタッチするのが難しい女性向けスタイラスペン1万9800ウォン(約1500円)である。






革製ケースは約3500円(写真左右とも:スマートフォンアクセサリーショッピングモール Anymode)






爪の長い女性向けスタイラスペン


もう一つ、韓国にはアップルの修理センターが少なく、修理代もかなり高額なので、iPhoneは気を付けて使わなくてはならないという認識が広がっていることも、カバーの人気に火を付けた。


今年は冬の訪れが早く、10月で既に気温が氷点下に下がるほどの寒さである。凍えそうなほど寒い韓国で、いちいち手袋を脱いでタッチしなくてはならないというのはとても不便である。携帯電話加入者の約15%が利用しているスマートフォンだけに、日本で発売されたiPhone用手袋もブログを中心に紹介され、注目を集めている。

 韓国では昨年の冬、手袋を脱がずにiPhoneにタッチできる方法として「魚肉ソーセージ」で画面をタッチするのが大ブームとなったことがある。







iPhone画面をタッチする「魚肉ソーセージ」。去年はやった

そのほかには、スマートフォンから動画を楽しむ人が増えていることから、パソコンのモニターのようにスマートフォンを固定できるアクセサリーも多数登場。ナビゲーションの代わりに使う人もかなりいるせいか、自動車や自転車に固定できるアクセサリー、車の中で充電できる車両用充電池、車のオーディオにつなげられるジャック、無線でスマートフォンの音楽ファイルを伝送できるオーディオなども売れている。

 韓国ではスマートフォン向けアクセサリー市場は国内だけで年間700億ウォン(約54億円)に上ると見込まれている。アクセサリーはデザインやアイデア勝負でいくらでも高く売れ、世界市場でも販売できるだけに、いろんな産業からアクセサリー市場に飛び込む、特に中小企業が増えるものと見られている。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年10月28日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101028/1028200/







SNSで拡散する個人情報とデジタル証拠(2)~犯罪増で監視体制強化なるか

(前回はこちら


 ソーシャルメディアに限らず、ネットを使い、デジタルデバイスを使っている限り、記録は残る。韓国ではこのような記録を物証とするデジタルフォレンジック(Digital Forensics)による捜査が年々増えている。


 削除したEメールやショートメッセージ、デジカメの写真、検索したキーワード、チャット内容、訪問したホームページなどから探し出した決定的な証拠が犯人逮捕につながることが何度もあったからだ。携帯電話を使った位置追跡、サイトにログインしたIPアドレスから場所を割り出すのは基本中の基本である。YouTubeや動画投稿サイトにあった何気ない動画が証拠や事件解決の糸口になることもあった。目撃者がこんなことがあったと動画を載せる場合もあるが、犯罪を自慢するため犯人が自ら写真や動画を投稿することもあるそうだ。


 また、メッセンジャーを使ったなりすまし詐欺は韓国でなくならない犯罪の一つである。メッセンジャーのIDをハッキングして、その人の友人にチャットで母の急病だとか、交通事故で加害者になってしまってお金が必要だとか、嘘のメッセージを送って振り込んでもらう手法である。こういった事件もデジタルフォレンジックによる捜査で解決していく。


 韓国検察庁デジタルフォレンジックセンターのデジタル証拠分析件数は、2008年の916件から2009年には1546件に急増し、2010年は8月時点で1774件を突破している。これに対抗して、自分の記録をきれいに削除できる、ファイルを復元できないよう完全に削除するプログラムもどんどん普及しているから怖い。


 ただしプライバシー侵害、人権侵害という批判もあるためデジタルフォレンジックによる捜査は慎重に行われる。そのせいで思うように捜査できないこともあるという。






韓国警察サイバー犯罪担当組織のサイト。詐欺事件が発生したWEBサイト、振り込め詐欺に使われた電話番号と口座を表示し、サイバー犯罪注意報、警報を流している


検察はデジタル捜査を担当する専門家を増やすため、検察内部で実施していたデジタル捜査資格認定試験を韓国刑事訴訟法学会に移管して一般人も試験を受けられるようにする方針だという。警察庁のサイバー捜査隊も警察内部から専門知識のある人を採用していたが、民間からの特別採用を実施している。ハッキング担当、データベース担当、ネットワーク担当、ワイヤレス担当、プログラミング担当、デジタルフォレンジック担当に分けて採用する。情報処理関連資格を持ち、民間企業で電算管理業務3年以上経験のある人、またはコンピューター工学、ソフトウエア工学、情報保護を専攻した修士以上が対象となる。

アメリカでは、TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアとインターネット電話を対象に司法当局が監視できるようにする技術導入を義務化する話が出ているというからすごい。監視できないシステムではサービスを提供できなくする強引なもので、政府がソーシャルメディアをずっとモニタリングしていられる技術を導入するという話である。まだ検討中とのことだが、アメリカがやれば世界で広まることは間違いない。

 アメリカでは麻薬犯罪にP2Pやソーシャルメディアが使われることが多いということで、監視体制を持つことが大事だという意見もあれば、大量に確保した個人情報が悪用される可能性、監視システムそのものがハッキングされる可能性を指摘する意見もあり、議論は続きそうだ。


 ソーシャルメディアを使うことで口コミを広げ、自殺を食い止めたり、急患を助けたり、いいこともたくさんある。韓国の警察はTwitterも運営していて、一般人は、ここに110番(韓国では112番)するのは怖いけど、自分が目撃したことがもしかして捜査のためになるかもしれない、という情報を寄せられる。そのため、警察はTwitterを使った迅速な通報システムを構築するかどうか悩んでいるという。


 ネットなしの生活はもう考えられない。一方でネットに書き込んだ一言で会社をクビになったり、訴訟されたり、命取りになってしまった人がどんどん増えている。ソーシャルメディアを使った詐欺もどんどん増えている。デジタル捜査官やサイバー捜査隊を増やすとしても、犯罪が発生してから動くしかないので、予防のためにはユーザー個人がしっかりしていないといけない。Twitterに気ままにつぶやき続けるべきか、他人を意識して当たり障りのないことだけつぶやくべきか、悩む日々だ。疲れる~。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年10月21日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101021/1028095/

SNSで拡散する個人情報とデジタル証拠(1)~書き込むときは慎重に?

北朝鮮が労働党創建65周年の記念式典に海外メディアを招待した。北朝鮮を訪問する外国人には監視が付き、通信も自由にできないことで有名である。しかし、今回は変化があったようだ。平壌のプレスルームでは自由にインターネットが使え、一部記者はTwitterで北朝鮮の様子や写真を投稿してつぶやいた。もちろん、取材チームごとにガイドという名目で監視人が付き添い、北朝鮮側の日程に沿って軍のパレードを取材させている。だとしても、北朝鮮とTwitterってなんだか不思議な組み合わせなので、韓国では大変な話題になったものだ。

 Twitterといえば韓国でもスマートフォンの普及と並んで利用者が急増し、今では中学生や主婦もメール代わりにTwitterでつぶやいているほどポピュラーなものになってきた。


 リサーチ会社のTNSが世界46カ国5万人を対象に調査した結果、モバイルユーザーがソーシャルネットワークサイトに使う時間は週3.1時間で、週2.2時間のEメールよりも多かったという。


 芸能人、政治家、スポーツ選手、小説家、ブロガーなど、Twitterでたくさんフォローされていて影響力を持っている人ほど「マーケティング力」があるとしてもてはやされる時代になってきた。一般人であってもフォローされる数が多いと業界のパーティーに招待されたり、商品が無料でもらえたりする機会も多くなる。


 韓国では、Facebookは海外向け、Cyworld(老舗の韓国版ソーシャルネットワーク)とMetoday(韓国のNAVERが運営するTwitterのようなサービス)は韓国向け、Twitterは多国語(韓国語、英語、日本語、中国語などごっちゃ混ぜでつぶやく人が増えている)で、と分けてつぶやく人も多い。最近は一度つぶやけばすべてのソーシャルサイトに掲載できる連携サイトまで登場したほどである。ポータルサイトでは検索結果にTwitterのようなつぶやきサイトも含めるところも増えている。Cyworldは個人と個人企業とがつながる「ソーシャルコマース」を始めるという。




キャリアのKTが始めた「ソーシャルハブ」を利用すると、同じ写真やつぶやきを同時に複数のSNSに登録できる。いちいち訪問して書き込む必要がなくなるので便利



つぶやきは気軽にできるが…



 あるテレビ番組がソーシャルメディアからその人をどこまで把握できるか実験してみたところ、Twitterとブログを30分ほど見ただけで、名前、年齢、誕生日、配偶者の名前と年齢、自宅住所、職業、会社名、家族構成、子どもの名前と年齢と学校名、オンラインショッピングで何を注文して、いつどこで誰と会ったのか、趣味は何で、どこに旅行に行ってきたのかなど、かなりの個人情報を特定してしまったことがある。


 ユーザーが増えつぶやきも増えた分、Twitterからその人の個人情報を入手して悪用するケースも出ている。韓国では犯罪捜査のために容疑者の名義で加入しているコミュニティサイトやオンラインゲーム、EメールなどのIDを追跡し、いつどこでログインしたのかなどを分析して足跡を追うことが多い。


 検索技術は日々進化していて、数え切れないほどの検索結果から相関関係を分析してその人が欲しがっている情報に限りなく近くまとめて出すことができるようになった。


 ソーシャルメディアの利用が盛んなアメリカも同じような状況らしく、CNNもオンライン上の書き込みをちゃんと管理しないと求職や銀行の貸出、離婚訴訟などで不利になることもあると報道したほどだ。企業の採用担当者や法律事務所では証拠集めのためにあの手この手でソーシャルメディアを検索しているのに対し、つぶやくユーザーは無防備にも個人情報を丸投げにしているように見える。もっと自分の情報を自分でコントロールする必要があるのではないだろうか。


 韓国のソーシャルメディアサイトの場合は、友達をランク付けして閲覧できる情報をコントロールできる。誰でも見てかまわない内容と個人的な内容を区別しながらうまく自己アピールして人脈を作れるようにもなっている。また国民総背番号の国らしく、個人情報を守るため、自分の住民登録番号がどのサイトの会員登録に使われているのかチェックするサービスも政府が提供している。それでも何気なくソーシャルメディアに書き込んだ一言が問題になることは少なくない。


 一番いいのは慎重に、神経質になってつぶやくことより、データマイニングで個人情報を抽出される不安から開放されることなのだけど。しかしこのような情報抽出は犯罪防止に役立っているのだ。


(次回に続く)


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年10月14日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101014/1027953/

これからはスマートTVだ! 世界1位を狙う韓国(2)~サムスンの戦略

 サムスンの場合、世界市場で戦っているだけに、政府の支援に頼らずどんどん先にビジネスを進めている。スマートTVも例外ではない。


 同社は世界109カ国向け(2010年9月14日時点)にSamsung Appsというアプリケーションストアを運営している。テレビ販売では世界市場で5年連続1位のサムスンであるが、これからはソフトウエア、コンテンツの時代だとして最も積極的にアプリケーションやOSに投資している。スマートフォンではグーグルのAndroidを採用。独自のモバイルOS「BADA」を搭載した「WAVE」というスマートフォンもあるし、テレビでは自社のOSで自社のアプリを流通させたいとしている。




サムスンのスマートTV向けアプリケーションはこうなる

サムスンは2007年から「インターネットTV」といって、リモコンとキーボードを使って検索できたり、ポータルサイトを利用できたりするテレビを販売していたが、「インターネットTV」の場合は決まったサイトにしかアクセスできないようになっていたせいか、それほど話題になることはなかった。

 同社は地道に取り組みを続けている。2010年3月、スマートTVで使えるアプリケーションコンテストを実施した。サムスンの説明によるとこれは世界初のコンテストなのだとか。公募の結果、多言語童話、カラオケ、テレビの画面から新聞を新聞の形のまま読めるTペーパー、学習関連コンテンツなど、家族向けアプリが選ばれた。160件の応募があり、一般ユーザー2500人が投票に参加して人気順位を決めた。これからはコンバージョンスアプリケーションとして、一度購入したら端末を選ばず使えるアプリケーションを流通させるとしている。この9月からはアメリカでスマートTV向けアプリケーションコンテストを開催している。





サムスンのブースに展示されたスマートTV(IFA2010の会場で)

先日ドイツで開催された家電展示会IFAで、サムスンは「2011年に発売するほとんどのテレビに3DとスマートTV機能を搭載する」とした。2010年発売するTVの場合は、半分ほどにスマートTV機能が搭載されるという。どんなテレビだろうと、「テレビ=サムスン」にすると自信満々である。ブロガーからはリモコンやUIがちょっと…と突っ込まれたりしたが、これぐらい強気でないと世界で戦えないだろう。

スマートフォンに出遅れた責任を取らされたのか、LG電子はCEOが創業者の孫に入れ替わった。LGもスマートTVには積極的で、2010年末に今までのインターネットTVとは全く違う新製品を披露するとしている。韓国ケーブル放送チャンネル大手事業者であり、映画制作もしているCJグループと提携し、LGのスマートTV専用サービスとして韓国政府が考えているスマートTV戦略は「韓流」。アジアで人気の高い「韓流ドラマ」を目玉にすれば韓国のスマートTVは売れるのではないかという考えだ。韓流コンテンツの多言語翻訳支援、中小企業のスマートTV向けアプリケーション開発支援といった政策も発表された。


 韓国では難視聴地域が多いことから、全世帯の約84%がケーブルテレビまたはIPTVに加入している。地上波放送を見るためには有料放送に加入しなくてはならなかったため、加入するのがもったいないと考える家庭は少ない。スマートTVの本体そのものが高くなければ、地デジ対策を兼ねて、3Dでアプリケーションをたくさん利用できるスマートTVに乗り換える人も少なくないだろう。


 スマートTVは家電メーカーがあって、地上波放送局やIPTV・ケーブルチャンネル事業者があって、という産業構造を変えることになる。家電メーカーがコンテンツも提供し、インターネット事業者がテレビも作る。


 韓国では既に放送局が自社番組のDVD販売をあきらめ、動画をIPTVやスマートフォン向けに提供するようになった。違法にコピーされず少額でも確実に課金できるからだ。これからはスマートTV向けアプリに変わるだろう。アメリカでもグーグルTVやアップルTVが放送を変え、コンテンツ流通方式を変え、人々の生活を変えると既存の業界プレーヤーに恐れられているようだ。


 テレビなんてコンセントを差し込めば観られるもの、と言えるのも後残りわずかかもしれない。日本も家電メーカーやキャリアなど、スマートTVを準備し始めていると聞く。スマートTVになって便利になるのはいいけど、お金を払わないと砂嵐以外何も観られなくなるのではないか、それがちょっと怖い。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年10月6日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101001/1027749/

これからはスマートTVだ! 世界1位を狙う韓国(1)~「選択と集中」を推し進める政府

スマートフォンブームについていくのもやっとなのに、タブレットPCが出てきたと思ったら今度はスマートTVなのだそうだ。そう言えば、グーグルTVやアップルTVが始まるというニュースもよく耳にするようになった。

 検索やメール確認といったインターネットサービスが使えるテレビもあるし、動画が観られるIPTVもある。テレビのリモコンでほかの家電を動かしたり、照明を点けたり消したりできるホームネットワークに対応したものもある。ちょっと前までもメガネをかけて立体映像が観られる3DテレビのCMばっかり流れていた。こんなにテレビの種類が多いのに、まだ新しいテレビが登場する余地があったのね。


 スマートTVは簡単にいうと、スマートフォンで利用できるアプリケーションをテレビからも同じように使えて、インターネットも使えるテレビ。動画(VOD)、ゲーム、検索、音楽、生活情報など、いろんなコンテンツをより便利に使えるというもの。インターネットにつながるテレビなんてずっと前からあったけど、テレビごとに決まったサイトしか利用できないようになっていた。スマートTVは、iPhoneやAndroidのアプリケーションのように、数え切れないほどのアプリケーションをテレビからも使えるというのが新しい機能といえる。韓国や日本にいながらアプリを使って海外のテレビも自由に観られる時代になるのだ。


 2012年には一般家庭にもスマートTVを普及させて、世界のどこよりも早くスマートTV大国になるのだと、韓国政府はさまざまな戦略を打ち出し始めた。ついこの間までもスマートフォンを世界どこよりも早く普及させるための戦略がどんどん発表されていたのに…。とにかく「スマート」という言葉が入るものは何でも集中投資の対象になっているので、スマートヘルスケア、スマート教育、スマート国防、スマート電子政府などなど、「デジタル」、「電子」といった言葉の代わりに「スマート」が付けられるようになったほどである。


 韓国の経済産業省にあたる知識経済部は、2010年9月「スマートTV産業懇談会」を開催した。韓国が世界シェア1位を占める「テレビ」の輸出をさらに確固たるものにしようと、スマートTVでも世界をリードできる戦略を議論するためである。テレビを製造するメーカーだけでなく、放送事業者、コンテンツ事業者、ネットワーク事業者を集め、お互いがうまく融合して新しいビジネスモデルをつくれるよう、国家戦略を樹立しようということで、話し合いが始まった。


 韓国はいつも、ハードウエアは強いけどコンテンツやソフトウエアは弱い、というのが問題であり課題である。スマートTVでも、ハードウエアはうまくつくれるので世界で優位に立てるかも知れないが、核となるサービスのアプリケーションをどうするのか、という疑問がある。


 スマートTVの時代になれば、テレビコンテンツのグローバル化による放送産業構造の変化に対応できる制度、法律改定も必要になるので、中央省庁である「放送通信委員会」の中に「スマートTV専担班」を設立・運営するという。グローバル競争力確保、新市場創出、技術力強化、インフラ構築、中小企業や個人デベロッパー支援をテーマに、細部の課題をリストアップしている。懇談会で事業者から政府にリクエストがあった支援が必要な分野としては、アプリケーション確保、海外市場創出、アプリケーションを流通させるためのプラットフォーム開発、使いやすいUI開発、標準化・特許支援、ネットワーク高度化、人材養成システム、法制度改善などが挙げられている。


 次回はサムスンのスマートフォン戦略を見ていく


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年9月30日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100930/1027711/

若者取り込みにあの手この手、政府省庁SNSの意外な狙い

日本でもTwitterやUstreamを使って政策や仕事内容を国民に知ってもらうとする政府広報活動が行われている一方、韓国でも政府省庁や地方自治体のブログやTwitterが話題になっている。

 政府機関がソーシャルメディアに登場するようになったのは既に5~6年ほど前。ブログが登場し、Cyworldというソーシャルネットワークが大ブームだった2004年、政府機関がCyworldにHompy(ミニホームページ)やアバターを作って親近感を持ってもらおうとしたのが始まりだったように覚えている。


 スマートフォンの普及で、24時間絶えずTwitterのようなつぶやきサイトやマイクロブログ(モバイル端末から利用するブログ)に書き込みする若い世代が増えたせいか、このごろは韓国の政府機関も公式サイトのほかにブログも当然運営し、Twitterとの連動も重視するようになった。TwitterやソーシャルネットワークサイトのIDをブログのIDとしても使えるようにしているので、ユーザーが何かTwitterに書き込むと、自動的にブログのコメントとして登録される。


 政府機関の公式サイトはまず訪問者数が少ない。何か調べようというはっきりとした目的がない限り、政府のサイトなんて滅多にアクセスしないだろう。ところがブログやTwitterの場合、自然と訪問者数が増える。韓国ではポータルサイトが運営するブログを利用する人が圧倒的に多いので、ポータルサイトの中の検索結果やランダムリンクなどで政府ブログの存在を知る人も多い。


 公式サイトの場合は誰が訪問したのかIPアドレスから分析するしかないが、ブログだとどんな人が訪問したのか足跡が残り、また気軽にコメントを残してくれる。ブログやTwitterでは実名確認をしなくても、本人の顔写真や年齢や職業や日常を公開しているので、どういう人がどんなコメントを残してくれたのか分かる。


 政府ブログの運営は、最初はαブロガーとして知名度の高い人にコラムを書かせることでクリック数を伸ばし、かわいい連載マンガと懸賞イベントで定期訪問者数も伸ばす、といったところだが、ブログ記者やサポーターという肩書きで大学生を採用して、政府政策を宣伝するための分かりやすく面白い記事も書かせている。こうした政府の努力はもちろん、若い世代にアピールするため。


 中央省庁の中でも堅そうなイメージのある企画財政部、統計庁、保健福祉部、放送通信委員会、国防部、兵務庁、国軍、国会、大統領官邸などなど、ブログとTwitterを持っていない省庁はないほど。しかも面白いのは、国会Twitter、企画財政部ブログという名前ではなく、企画財政部は「ブルーマーブル」(億万長者になるのを競うボードゲームの名前)、保健福祉部は「タスアリ」(暖かいという意味)、国会は「丸い屋根」といった具合でかわいい名前を付けているのだ。背景画面にもパステルカラーのイラストを使ったり、人気マンガのキャラクターを登場させたり、気を使っている。


 最初政府ブログにアクセスしたときには、「一体ここは誰のブログだろう?」とさっぱり理解できないこともあったが、政府ブログの連載マンガが意外と面白くてついつい訪問してしまう。中でも国防部のブログ「同苦同楽」は、2009年の「大韓民国ブログアワード」で公共部門1位に選ばれたほど人気を集めている。





韓国国防部のブログ「同苦同楽」


国防部、陸軍、兵務庁などがブログを運営する目的の1つは、徴兵制を怖がる最近の若者に、約2年の軍生活を通じて、人間として大きく成長できると思わせる(!)ためなのかもしれない。軍に入ってみたら資格もたくさん取れていいことだらけ、軍で芽生えた友情は一生もの、といった内容のWebマンガがずらりと並んでいる。このマンガがあまりにも面白く、しかもかわいいので、「軍に入っていろいろ経験してこそ大人よね~」なんてついつい「お気に入り」に追加してしまった。


 Twitterでは軍生活のエピソードを描いたこのマンガにリンクして、「私が軍にいたころは~」と始まる徴兵自慢話のネタにもなっている。兵務庁のブログには、徴兵で軍に入隊した人気芸能人の軍生活の写真も掲載されているので、ファンにとってはありがたいブログなのだ。


 韓国では就職が厳しく失業率も高いだけに、労働部のブログも人気が高い。大学生向けに労働基準や勤労者の権利などを分かりやすく解説するため、人気ドラマのストーリーを事例にして解説したりもする。アルバイトをするときに確認すべきことだとか、給料をもらえなかったときにはどこに相談すればいいのかといった基本的なことから、まじめな国家政策に至るまで、文字よりもマンガと写真をいっぱい掲載している。


 しかもこのブログの運営者は人気コミックマンガの主人公という設定。中小企業に勤める営業マンたちの苦労と人情と友情をテーマにしたマンガの世界そのままをブログに生かしている。


 就職活動中のブロガーの投稿も多く、海外でのワーキングホリデー体験談、アルバイト体験談などが盛りだくさん。クイズ形式の懸賞イベントもよく開催されている。2010年9月には米スタンフォード大学で行われたという5ドルプロジェクトの韓国版コンテストを行っていた(これは、5ドルを投資して、4週間後、社会的価値のあるビジネスとして誰が最も高い収益を上げられるのかを競うコンテスト。実際にスタンフォード大学で優勝したチームは5ドルで650ドルを稼いだという。そのビジネスモデルとは、学生の前でプレゼンする3分間をある企業に売り、その企業の求人広告をプレゼンの代わりにすることで広告料として650ドル稼いだ、というものだった。頭いい!)。


 このようにTwitterと連動させてみたり、イベントを開いてみたり、若い人が喜んで使ってくれる機能は何だろうと四苦八苦した甲斐があったのか、政府ブログは平均1日4000~5000人ほどが訪問していて、Twitterのフォロー数もぐんぐん伸びている。韓国の人口は日本の約3分の1なので、1日これだけの人が訪問するというのはけっこうな数字なのである。


 訪問者数が伸びて国家政策の宣伝につながり何かいいことがあったのかというと、まだそれは分からない。でも政府のやることに興味を持ち、一言二言つぶやき始めた人が増えているのは確かだ。





趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年9月22日

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100922/1027580/

タブレットPCの買い時はまだ遠い? それでも準備急ぐ韓国(後編)~キャリアはWi-Fi拡大総力戦に突入

(前編「アーリーアダプターは飛びつくか」はこちら


 韓国は2008年3月より1年以上の約定加入を条件に端末購入補助金をもらって安く携帯電話が買える制度が復活した。日本が奨励金制度をやめたのとはちょうど逆のことが始まったのである。2008年約定で加入したユーザーは新しい端末に乗り換えたくてもできなかったが、キャリアの約款が改定され、約定終了まで6カ月以下の場合は、同じキャリア間で約定を承継して端末を買い換えるようにした。約定が終わるまであと6カ月というユーザーは違約金を払うことなく、同じキャリアの別の端末と料金設定に乗り換えられるので、スマートフォンの加入もぐんぐん伸びるだろうというのがキャリアの予測である。


 2010年末には約843万人が“約定奴隷”から解放されるので、年末年始の商戦ではiPhone 4をはじめとする「スマートフォン+国産タブレットPC」の販促競争がピークになると見込まれている。


 キャリアとしては、今のところアプリケーションと通常より3倍ほど高いスマートフォン専用料金制度からしか利益が取れないような状況なので、スマートフォンは使い方が難しいと敬遠するお年寄りや幼児向けにタブレットPCを販売してアプリケーション利用を伸ばそうとしている。3D、ドラマ、趣味講座、教育コンテンツを中心に動画を確保するとよく宣伝している。


 また最近すごく目に付くのは、キャリアのWi-FiスポットCMである。KTとSKテレコムは「うちの方が断然Wi-Fiスポットが多い、しかも安い」、「うちはWi-Fiフリースポットも多い、容量制限なく使い放題」といった具合に、お互いをけなし攻撃するようなCMまで登場しているのだ。KTはWi-FiのCMだけでも違う内容で10本以上制作し、同時多発的にテレビに流している。KTの加入者は地下鉄でもデパートでも映画館でも、どこでもWi-Fiが使えるけど、ほかのキャリアに加入するとすごく不便ですよ、といった内容だ。LGU+(LGUプラス、LGテレコムから社名変更) も「100Mbpsの速度を出すWi-Fiはうちだけ」とCMをじゃんじゃん流している。




KTの加入者は地下鉄、デパート、ファミレス、映画館など主な施設でWi-Fiを使えるようになった

スマートフォンやタブレットPCを使わせるためには、3Gのネットワークも必要だが、やはり、より速度が速く容量を気にせず使えるWi-Fiがどこでも使える環境でないといけない(韓国では3Gでアクセスすると料金に応じて500MBまで、1GBまでと使える容量に制限がある。2010年8月から、やっと日本のように無制限使い放題のパケット定額制度をSKテレコムが始めた)。

 カフェやレストラン、ショッピングセンターなどでも店内をWi-Fiフリースポットにするところが増えている。コーヒー1杯頼んで何時間もWi-Fiを使う人もいるため、テーブルの回転率が落ちるからとあえてWi-Fiスポットにしないところもあるが、Wi-Fiが使えないと不便だからとお客さんが来ない問題もあったのだ。


 韓国よりも先にスマートフォンやWi-Fiが普及したアメリカでは、シリコンバレーを中心に延々とカフェに居座る客が増えすぎてWi-Fi提供を中止、または決まった時間だけ提供、または1人1時間と制限するカフェも出ているという。韓国ではカフェのフランチャイズごとに、無料でWi-Fiを提供した場合としなかった場合の売り上げや利益の相違を比べる調査が行われているほど、みんなの関心事になっている。


 アメリカの市場調査会社であるJiWireの報告書によれば、2010年4~6月の世界のWi-Fiスポットを調べたところ、世界全体でもっともWi-Fiスポットが多いのはアメリカで7万6216カ所だった。同国の全Wi-Fiスポットのうち、無料で使えるフリースポットは55.1%を占めている。スマートフォンやタブレットPCの普及で、お店で自由にネットを使えるようWi-Fiを提供するところが多いからだそうだ。韓国は1万2818カ所に過ぎなかったが、2010年末までにはKTが4万、SKテレコムが1万5000、LGU+が1万1000のスポットを構築するとしているので、この小さい国にアメリカ並みの数のWi-Fiスポットが作られることになる。


 インフラだけでなく、より使いやすいスマートフォンとタブレットPCを開発しようと、キャリアとメーカー、政府のシンクタンクが参加し、「感性ICT」を研究する協会も立ち上げた。人体の脈、脳波、表情、生活習慣などを読み取って、端末が反応しUIを自動的に切り替えてくれるといったことを「感性ICT」というのだそう。


 スマートフォンとタブレットPCを使ったモバイルライフを楽しむための下準備は着々と進められている。後はiPadとGalaxy Tabが発売されて、ユーザーの手に渡されるのみ。私はメールだけチェックすれば済む会社重役でもないし、文字を打ち込む仕事が多いのでノートパソコンの方が便利なのだが、それでもタブレットPCは気になる。アーリーアダプターにあこがれる自慢したがりの1人だからかな?



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年9月16日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100909/1027378/

タブレットPCの買い時はまだ遠い? それでも準備急ぐ韓国(前編)~アーリーアダプターは飛びつくか

2010年9月3日、ドイツで開催されたヨーロッパ最大規模の家電展示会「IFA2010」でサムスン電子が初のタブレットパソコンである「Galaxy Tab」を公開した。サムスンが「2010年末までに世界市場で100万台以上売りたい」とする自信満々の端末である。

 iPhoneキラーとして大ヒットが期待される「Galaxy Tab」は、日本でも発売予定の「Galaxy S」3個分ほどの大きさ(7型)。iPadに対抗してスーツのポケットにも入るほど小さく軽く、携帯性と移動性を優先する。カメラ付きでテレビ電話や音声通話もできるスマートフォンのようなパソコンであることを強調している。




サムスン初のタブレットパソコン「Galaxy Tab」

WebサイトのデザインにFlashを使うのが大好きな韓国では、iPhoneやiPadではサイトが表示されなかったり、ログインできなかったりという問題があったが、「Galaxy Tab」にはFlash表示機能があるので、どんなサイトでもすいすい見られるようになった。地上派DMB(ワンセグ)でテレビも見られるので、会社でも「昨日あのドラマ見た~?」が挨拶代わりのドラマ好きの韓国人にはぴったりかもしれない。


 韓国ではSKテレコムより9月中には発売される予定で、スマートフォンよりは高い。ただし約定加入すれば補助金がもらえるのでそれほど負担にならないという。


 「よりパソコンに近い」のがiPadで、より「スマートフォンに近い」のが「Galaxy Tab」と国内では説明している。アップルに比べてアプリケーションが少ない、バッテリーの持ちがiPadより短いといった点もあるが、ビジネス用途にタブレットPCを使う人も増えていることから、やはり携帯性の高い7型の需要が伸びるのでは?という見方もある。




 「Galaxy Tab」が公開されたことで、ついにサムスンとアップルの真剣勝負が始まったと世界的に注目を集めているようだ。年末商戦に向けてHPやDell、グーグルもタブレットPCを発売するとしているので、「アップル対その他大勢」の競争になる可能性もある。





IFA2010で公開されたGalaxy Tab


 「Galaxy Tab」は韓国でも今年の春から「S-Pad」というプロジェクトで期待を集めていたタブレットPCだけに、マスコミでは大々的に「Galaxy Tab」の機能を動画で見せ、どれぐらい売れるだろうかと人々の予測が飛び交っている。携帯電話、MP3プレーヤー、テレビ、パソコンなどを開発してきた総合メーカーとして、ユーザーのメディア利用形態のパターンや近年の変化を熟知するサムスンの自信作であることからも注目せずにはいられない。同社はさらに、2011年からは多様なサイズのタブレットPCを発売するとしている。


 先にサムスンとKTの国産タブレットPCを売ってしまおうという戦略なのだろうか、韓国ではまだiPadの正式発売が決まらない。ネットでは「Galaxy Tabもいいけど、それより早くiPad発売して! iPadと比べようがない!」、「なんで韓国だけiPad発売してくれないの?」という不満を書き込む人がどんどん増えている。KTのタブレットPC以外は発売も未定でニュースや宣伝ばかりなので、アーリーアダプター(誰よりも早く新製品を使いたがる人)で自慢したがりの韓国人はいらいらしている。



 韓国のデジタルデイリーに面白い記事があった。台湾の携帯端末メーカーであるHTCの製品修理を担当するTGSという会社が2010年8月、利用者1008人を対象にタブレットPCについてアンケート調査を行ったところ、「タブレットPCはスマートフォンのように売れると思いますか?」という質問に対して64.3%が「そう思わない」と否定的な見方を示したことである。


「売れる」と答えた人は28.2%、「分からない」と答えた人は7.5%だった。「タブレットPCを買いたいですか?」という質問に対しても「はい」は43.8%、「スマートフォンだけで十分」という人が37.1%だった。「購入しない」と答えた人は19.1%だった。「現在のスマートフォンに満足していますか?」という質問には67.3%が「満足」と答えている。


 韓国の家庭内パソコン普及率は9割ほどで、会社でも社員1人パソコン1台が当たり前、学校でも先生1人パソコン1台どころか2台ぐらいは置いてある。そのせいか、あとはスマートフォンで十分と考えるユーザーが多く、タブレットPCが売れるようになるまでには時間がかかりそうだ。


 2009年11月、世界より2年半遅れてiPhoneが韓国で発売されたとき、スマートフォンは2010年末まで多くて100万台ほど売れるだろうと予測されていたが、既に400万台規模の市場に成長した。タブレットPCも発売直後からあっという間に普及するのではないかと期待されていただけに、ユーザーのこのような反応は意外だった。


 タブレットPC記事に対するコメントなどを見ていると、インターネットを使いたい、映画が見たい、電子書籍が読みたい、という理由でタブレットPCを購入するよりも、新しい端末を体験してみたいから、世界でブームになっているから、といった理由の方が多いように感じた。(後編に続く)



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年9月9日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100909/1027377/

月刊Journalism10月号特集- T・G・I・F! 韓国はいまスマートフォン革命まっただ中

■月刊Journalism


【10月号のご案内】
Journalism10月号特集は「大学とジャーナリスト教育」


特集は「大学とジャーナリスト教育」。メディア激変期のジャーナリスト教育のあり方を問い直す。慶應・上智・早稲田教授座談会「今、大学は何を教えるべきか?」、「慶大メディアコムの成果と課題」、「現役記者が大学で教える調査報道の方法」、「米国大学のオンライン・ジャーナリスト教育」ほか。「新聞記者のための動画撮影講座」なども掲載。



2010年10月号の内容(目次)






特集 大学とジャーナリスト教育


◎[慶應・上智・早稲田教授座談会]
メディアは揺らぎ、学生は変わる 今、大学は何を教えるべきか?

大石 裕(慶應義塾大学教授)・音 好宏(上智大学教授)・瀬川 至朗(早稲田大学大学院教授)/司会 野村 彰男(朝日新聞社ジャーナリスト学校長))
◎就職と研究の両立をめざす慶應「メディアコム」の教育内容
大石 裕(慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所所長)
◎大学と記者のコラボで調査報道 早大大学院ジャーナリズムコース
澤 康臣(共同通信外信部記者)
◎「科学技術コミュニケーター」の役割 北大CoSTEPの成果と今後
杉山 滋郎(北海道大学理学研究院教授)
◎ビジネス教育の手法から見えた、新たなジャーナリスト教育の方向
藤代 裕之(ジャーナリスト/学習院大学非常勤講師)
◎世界中いつ、どこでも学べる 白熱のオンライン・ジャーナリズム講座
[ミズーリ大学とポインター・インスティテュートの場合]

松下 佳世(朝日新聞社ジャーナリスト学校主任研究員)

[新聞記者のための動画撮影講座]第1回〈企画から撮影〉


新聞記事をウェブ・ニュース映像にする

奥村 信幸(立命館大学産業社会学部准教授)

海外メディア報告


T・G・I・F! 韓国はいまスマートフォン革命まっただ中

趙 章恩(ITジャーナリスト)

メディア・リポート
※アサヒ・コムで記事がお読みいただけます。記事一覧はこちら>>
新聞


報道から一歩踏み出す「新聞力」が世の中を変える

服部 孝司(神戸新聞社取締役地域事業本部長)

放送


映画「ザ・コーヴ」は文化衝突の問題なのか?

金平 茂紀(TBSテレビ執行役員=報道局担当)

ネット


ヤフーとグーグルの提携で懸念される情報への自由なアクセス

藤代 裕之(ジャーナリスト/学習院大学非常勤講師)

出版


不況とデジタル時代の中で元気な「最寄りの書店」の共通点

星野 渉(文化通信社取締役編集長/東洋大学非常勤講師)

カラーグラビア


カンザスシティのホームレス・シェルター

山口 元(写真家)

ジャーナリズムの名言
別府 三奈子
[朝日新聞全国世論調査詳報]
◎2010年8月名古屋市民意識調査
◎2010年8月定例RDD調査


Link
http://www.asahi.com/shimbun/jschool/report/1010.html

韓国のタブレットPC競争、KTが「iPadより軽い」テレビ付きタブレット発売で拍車

 iPadの正式発売が未だ決まらない韓国。それでも新し物好きで自慢したがりの韓国人だけに、個人輸入でiPadを使っている人が数千人を超えると言われているほどである。


 iPadを早く使いたくてユーザーがうずうずする中、一足先に国内メーカーがAndroid OSを搭載したタブレットパソコンを発売すると発表。8月30日と31日、立て続けに、通信最大手KTが7型タブレット「IDENTITY TAB」を、ナビゲーションシステムや電子辞書などの電子端末メーカーであるi-STATIONが7型3Dタブレット「Z3D」と5型のミニタブレット「Buddy」と「Dude」を公開した。


 メーカーはタブレットPCの主なユーザーを外回りの多いビジネスマンと受験生とに想定している。教育熱が高く大学入試にすべてをかける韓国では、受験対策として、教育放送が無料で提供する動画を見るために、携帯型動画再生端末やネットブック、スマートフォンが売れるからだ。Eラーニングが広く浸透しているこの国ならではの事情もタブレットPCの普及に影響を与えそうだ。


 またスマートフォンの急速な普及により、立派なパソコンを買うよりもスマートフォン+タブレットPCの組み合わせが理想的と考える人が増えてきた。さらに、韓国では2013年からタブレット型のデジタル教科書を全国の学校へ導入するとしているだけに、タブレットPCによってどこよりも早く「子ども1人に1台」の普及も期待される。デジタル教科書としての表現力を高めるため、タブレットから3Dや拡張現実(AR)を表示できることも重要になっている。


 その上、IPTVの次に話題をさらうスマートTVとスマートフォン、タブレットPC、情報家電の連動によるマルチスクリーン戦略も今後の重要なビジネスモデルと考えられるため、メーカーにとってその間をつなぐタブレットPCの市場先制とシェア獲得は急務と言える。


 KTの「IDENTITY TAB」はAndroid 2.1、7型TFT LCD、重さ450g。静電式タッチパネル、1GHzのCPU、8GBの内蔵メモリー、外付けSDカード、地上波DMB(ワンセグ)、300万画素カメラ、SNSと電子書籍リーダー、文書編集機能を備える。バッテリーの持ち時間は動画連続再生3時間30分、連続待機時間72時間。多様なファイル形式の動画を再生できるコーデックを搭載することで、マルチメディア利用に特化した。iPadより小さく、軽く、安くすることで差別化している。




KTが発表した「IDENTITY TAB」

「IDENTITY TAB」の特徴は、Wibro(モバイルWiMAX)使い放題料金プラン(月額約2000円)に24カ月約定加入すれば、無料で端末をもらえることである。この料金プランに加入すればWi-Fiも無料で使え、Wibroの信号をWi-Fiに変える「Egg」という手のひらサイズのモデムももらえる。約定なしの場合、約3万8000円で購入する。

ナビゲーションや受験勉強用として高校生に人気の高い動画再生端末を製造するi-STATIONは、同社「Z3D」が世界初の3DタブレットPCだと宣伝する。偏光3Dパネルを搭載しており、専用のメガネが必要だ。Android 2.1、7型TFT LCD、16GBのモデルは約3万円、32GBモデルは約4万6000円で販売する。2011年にはメガネなしで3Dが見られるタブレットを発売するという。

 「Buddy」は学習用タブレットとして企画されたもので、約2万2000円と値段を安く抑えた。5型TFT LCD画面で持ち運びやすくし、電子辞書、教育放送の動画をダイレクトにダウンロードできる。「Dude」はマルチメディア機能に重点を置いたタブレットで、5型、ワンセグ、300万画素カメラ、GPSを搭載する。


 この春から注目されていたサムスン電子のAndroid 2.2、7型タブレット「Galaxy Tab」は今秋ドイツで開催するコンシューマーエレクトロニクスショー「IFA 2010」で公開され、アメリカで先行販売されるという。iPadにはないテレビ電話機能付きが特徴である。LGも「OPTIMUS PAD」をIFA 2010で公開して、年内に韓国で発売するとしている。KTの「IDENTITY TAB」に対抗して、9月中にはSKテレコムから「Galaxy Tab」が発売されるというので、スマートフォンに続いてキャリアのタブレットPC競争も激しくなりそうだ。


 端末の普及のためには仕様や価格と同じぐらいモバイルインターネットとコンテンツも重要である。韓国では全地下鉄駅内でWi-Fiが使えるようにし、フリースポットも増やしている。KTもサムスンもこれからはタブレット向けコンテンツに力を入れるとして、動画ストリーミング、電子ブック、スマートフォン向けアプリケーションとの連動を強調する。特に教育コンテンツは大事で、有名な塾や講師の動画を独占提供することでタブレットの売れ行きが違ってくるとも見られている。


 しかし韓国ユーザーの間では、9.7型のiPadの方が見やすく、動画再生時間も韓国産の3倍を超える10~12時間でバッテリーの持ちがいい、2万件以上のアプリを利用できる、といったことから、今すぐ韓国メーカーのタブレットを買うより、iPadの発売を待った方がいいという意見もある。携帯電話端末メーカーやMP3プレーヤーメーカー、ノートPCメーカーの相次ぐタブレットPC発売の発表で、本格的なタブレットPC競争は2010年の年末になると見込まれている。

趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年9月2日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100902/1027250/