「電子政府輸出」で世界の行政情報化に貢献したい

2010年1月、192カ国を対象にした国連の電子政府評価で韓国が1位となった。電子政府の利便性やインフラ高度化、国民の政府政策参加といった評価項目で1位となり、電子政府を構築しただけでなく実生活で上手く活用している国として評価されている。

 韓国は急速なブロードバンド普及を背景に、世界でも早期に電子政府システムを構築できた。国民向け電子政府ポータルサイトがオープンしたのは2002年11月。ネットを利用して住民票や各種書類を申請できる、自宅のプリンターで印刷したものも効力を持つといった程度ではない。行政DBを使って照会すればいいので役所に書類を提出したりする手続きが簡素化されたことが非常に便利であると感じる。


 私が個人的に便利だと思ったのは、税金と医療。税金の申告も自分で計算して書類を提出する必要はなく、自動的に計算されて還付金が口座に振り込まれているから驚き!去年も何の手続きもしていないのに源泉徴収された分が計算され、過納分が口座に振り込まれましたという通知が届いた。病院に行くときも保険証はいらない。受付で国民IDカードである住民登録証を見せるだけ(住民登録番号と名前を口頭で言うだけでOKの病院もあり)。保険証を忘れて自己負担で高い医療費を払い後で精算しなおし、なんていう面倒なことはなくなった。どの病院をいつ利用したか確認書のような通知が届き、保険の水増し請求や医療保険のなりすましを防止している。


 よく電子政府や行政の情報化というと、立派なシステムを作ったのに誰も利用してくれない、といったことが問題になるが、韓国では着実に国民の生活に浸透し日常的に利用されている。


 もちろん、これは国民総背番号制である住民登録番号があって、所得・納税・教育・医療・クレジットカード使用などといったことを把握できるからかもしれない。住民登録番号を使って個人の活動を監視しすぎてないかという疑問を持つ人もいるようだが、ここまで生活が便利になってしまえば、住民登録番号があってよかった~なんて思ってしまう。


 韓国の電子政府システムは世界各国の視察対象となり、ソウル市でもっとも電子政府に力を入れている江南区は2001年から2009年まで325カ国3179人が視察に訪れたほどである。政府機関である韓国情報化振興院が開催するIT専門家研修に参加した海外の公務員だけでも100カ国3000人近いという。2010年3月には総務省の原口一博大臣も韓国を訪問し、電子政府システムや農漁村を対象にした「情報化村」を視察している。電子政府を担当する省庁である行政安全部の次官と面談し、2010年内に韓国と日本で電子政府構築に関する覚書を締結し、IT協力委員会を定期的に開催して相互協力を強化することにしたという発表もあった。

韓国の電子政府システムの輸出実績は2002年から2009年までの期間で1億1393万ドルに達し、半導体や携帯電話端末のように韓国を代表する輸出品目として政府も後押ししている。行政自治部の説明では、記録管理システム、電子文書流通システム、電子貿易サービス、遠隔勤務支援システム、行政電子署名認証システムなど252件の電子政府システムが輸出されているという。


 本格的な電子政府輸出のために、「電子政府海外進出支援センター」を2010年2月に発足した。政府が持つ電子政府システムの知的財産権使用や広報資料など海外マーケティングを支援する。電子政府システム開発に参加していない企業であっても、政府の支援によって知的財産権を使用できるので営業窓口になれる。2010年9月にはソウル市が「世界都市電子政府協議体創立総会」を開催し、10月には国連の電子政府評価で上位にランキングされた国の大臣を集めた「次世代電子政府首脳会議」が同市で開催される。


 海外政府機関から視察に来ると関連企業を紹介し、視察だけで終わらずビジネスにつながるよう韓国政府はセールスにも熱心だ。韓国型「情報化ODA」として、自身の経験を生かし、途上国の情報化を支援することにも積極的である。途上国の公務員を招待して電子政府に関する教育をさせているのも、“IT強国”として韓国にしかできない方法で世界の情報化に貢献したいからだ。


 韓国政府はこれからの時代に合わせ、スマートフォン向けモバイル行政サービスを推進している。モバイルデバイスから利用する行政サービスのセキュリティー検証やモバイル向け標準化を進め、公務員がスマートフォンを使ってリアルタイムで決裁や報告、メール確認といった業務を行えるようにする。PDAを使った交通取締りや工事関連現場報告は以前から行われていたが、今回は韓国で大ブームとなっているスマートフォンを使いモバイルオフィスを具現するというもの。これも先進事例にして関連企業のシステムを輸出できるよう支援し、固定ブロードバンドの普及が難しい途上国向けにも技術を伝授する。


 電子政府は「作って終わり」ではなく、国民の生活パターンやインターネット利用環境に合わせて常にイノベーションを続けないといけない。行政書類を申請するサイトというより、国民と政府が気軽にコミュニケーションできる場でないといけないので、構築後がもっと大変だ。高いネット利用率と政府主導の支援策によって、活用という面でも韓国は高く評価されている。その点、日本では国民にどうやって利用させるかが課題となっているように見える。この課題は韓国以外ほとんどの国の悩みかもしれない。これから韓国と日本が電子政府協力体制を築くことで、世界の情報化、電子政府支援により貢献できる道が開けたのではないだろうか。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年4月8日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100407/1024162/

ゲーム審議巡りGoogleとつばぜり合い、暗雲漂う韓国Android Market

2009年11月に発売されたiPhoneをきっかけに、韓国では、ネット利用がパソコンからスマートフォンへ、有線ブロードバンドからモバイルブロードバンドへ一気に移行している。キャリアも端末ベンダーもアプリケーション販売サイト(アプリストア)をオープンし、面白いアプリケーションを確保するため、個人デベロッパーの囲い込みに精を出している。

 韓国の人気モバイルコンテンツはなんといってもゲーム。音楽ダウンロードや映像コンテンツも人気を集めているが、いつでもどこでも楽しめる手軽な暇つぶしとして、スマートフォンでもキラーアプリはゲームになると見られている。


 ところが、韓国のiPhone App Storeには「ゲーム」カテゴリーがない。


 韓国では「ゲーム物等級委員会(Game Rating Board、以下「委員会」)」の事前審議を受けていないゲームコンテンツは販売できない。審議により青少年への有害性、射幸性を判断し、すべてのゲームを「全体利用可」・「12歳利用可」・「15歳利用可」・「青少年利用不可」にレーティングする。


 App Storeは韓国だけのためにゲームの事前審議を受ける面倒なことを避けるため、ゲームカテゴリーそのものを削除した。その代わり、エンターテインメントカテゴリーの中に、いくつか事前審議を受けたゲームを提供している。


 最近発売されたAndroid端末向けAndroid Market(Android向け専用アプリ配布サービス)には事前審議を受けていない“ゲーム”が約4400件提供されていることから、委員会と衝突している。Googleがゲームの事前審議を受けないままゲームアプリを流通し続ける場合、委員会は、Android Marketを韓国では利用できないように閉鎖することもできるとして騒ぎになった。


 Googleは米本社の確認を取っているとして、委員会の要請に応えないままゲームの提供を続けている。ゲーム類の事前審議を受けるのか、それともiPhoneのように「ゲーム」カテゴリーのないAndroid Marketを提供するか。


 世界最大マーケットと言われる中国から検閲や規制に反発して撤退したGoogleである。韓国向けAndroid Marketを別途つくるようなことはしないだろう。表現の自由を守り開放・共有という企業理念を守るため、事前審議に反対し、韓国でAndroid Marketそのものを提供しないことも考えられる。

韓国企業が制作した韓国市場向けゲームならまだしも、世界中のデベロッパーがAndroid向けに開発し続けているゲームすべて事前審議を受けるとなると、それは大変な作業になる。それにAndroid Marketではなく、キャリアのアプリストアを経由していくつかの機能を提供するという方法もある。しかしこれでは、ユーザーにとってAndroid搭載スマートフォンを購入する魅力が減ってしまう。


 しかも有料アプリケーションも韓国独自の個人認証を利用しないと決済できないため、Android Marketの有料アプリは利用できないままである。


 ゲームやコンテンツ政策を担当する省庁の文化観光体育部は、「韓国でサービスしたければ韓国のルールを守れ」という委員会と、「コンテンツの選択幅を狭める時代遅れの規制」と反発するユーザーの板挟み状態。事前審議を経ないゲームが流通する現状下では、Android Marketからのゲーム利用は違法行為になる。


 文化観光体育部も規制による市場萎縮よりは流通促進、という姿勢を見せている。同組織はゲーム産業振興に関する法律を改定し、アプリストアのように個人も売り手として参加できる「オープンマーケット」は例外とし、「事前審議」ではなく「自律審議」にする方案を検討するとした。ゲーム物等級委員会のガイドラインに沿って年齢レイティングを自己登録する方法である。従業員300人以上、年間売上300億ウォン以上、自律審議担当者2人以上のオープンマーケット事業者が対象となる。法律が改定されれば、アプリストアに世界中のデベロッパーが開発したゲームがリアルタイムで流通される。委員会はオープンマーケット事業者がガイドラインを守っているかどうかを事後規制することになる。


 韓国の新聞記事によると、iPhoneを販売する94カ国の中でゲーム事前審議をしているのは韓国が唯一という。ほとんどの国は事業者に任せ、問題があれば事後審議してフィルタリングしていく。


 一方、韓国にしか存在しない規制の影響でいいこともあった。国内企業は規制の少ない、より自由な市場を求めて海外を目指すことになった。韓国のモバイルゲームはApp Storeに登録されるや否や有料ダウンロード上位を占め、「アプリケーションで一攫千金」という神話まで生み出した。どんなことにも一長一短はある。


 今後、ゲームの行方に大きな注目が集まるだろう。政策決定者は、スマートフォン向けだけを特別扱いせず、他業界から恨まれることのないよう、流通活性化に向けた公平な規制緩和をしてもらいたいものである。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年4月1日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100331/1023976/

韓国ネット界を揺らしたある訴訟

2010年2月、韓国では著作権法をめぐるある訴訟が注目された。

 歌謡曲を歌いながら5歳の子供が踊る1分未満の動画をブログに掲載したところ、「著作権法に違反している」として著作権団体がブログ運営会社へこの動画の削除を要請。運営側はこれを受け入れ動画を削除した。


 BGMに歌謡曲を流したのでもなく、子供の遊戯に過ぎない動画まで著作権法違反として削除要請したこと自体驚きだが、「表現の自由を守るため、無差別的な著作権取り締まりをなくすため」として韓国音源著作権協会とブログ運営会社を相手に、この動画を載せた子供の保護者が裁判を起こしたというからすごい。


 判決は一部勝訴。これは個人的著作物であり、音楽の商業的価値を利用して営利目的を達成しているわけではないとして、音源著作権協会が過剰な著作権を行使したと判断、損害賠償として20万ウォンを原告に支払い、削除した動画を再掲示するという命令が出た。動画を無断削除したとして訴えられたブログ運営会社側は、30日以内に再掲示要請をするよう原告に告知していたが、30日を過ぎて原告が再掲示を要求したということから無罪となった。


 しかし、ネットで問題になっているのは「非営利目的」の範囲である。判決の中で著作権法違反ではないとした根拠が、歌謡曲が「非商業的に使用された」、「子供の歌なので原曲とはかなり違うところがある」という点だった。今回の訴訟では著作権侵害ではないという判決が下されたが、歌が上手な人が歌謡曲を歌う動画をブログに載せた場合は著作権法に触れる可能性もあるというのだろうか。「歌謡曲をそのままそっくり歌うカラオケ動画」をブログに載せるのは著作権を侵害しているのか、そうでないのか。


 混乱の背景として、韓国では2009年7月に著作権法が改定されたことにある。


 違法動画と知りながらもアップロードできるよう場所を提供し、ダウンロードする人から利用料をもらっていたストレージサイト、そのような動画を大量にアップロードしてストレージサイトから収益を分けてもらう、「ヘビーアップローダー」と呼ばれる人を取り締まるのが目的で、3回摘発されると該当サイト閉鎖、アップローダーの場合は該当サイトのID利用停止という「三振アウト制度」が導入された。ブログやSNSといった個人の非営利目的の利用は取り締まりの対象にならないとしていた。


 ところが、実際はそうでなかった。2009年10月時点でブログやSNSなど2010件の掲示物が摘発されたのである。非営利目的の利用は著作権侵害にならないとしながら、個人ブログのドラマキャプチャー画面や音楽の一部を編集した動画などが対象になった。

違法になる基準がはっきりしないため不安になったユーザーらは、ブログを閉鎖したり、SNSの更新をやめたり、大混乱が続いた。著作権者が法律事務所を代理人として無差別に訴訟を起こし、著作権のことをよく理解していない小中学生がターゲットになった。著作権侵害で摘発されたのが青少年の場合、最初の1回は起訴せず著作権について教育する「起訴猶予」を実施する処置を政府は急いで打ち出した。


 著作権を担当する省庁の文化体育観光部は、2010年内に著作権法を再度改定し、非営利目的の著作物利用に関する「公正利用制度」の項目を追加するとしている。非営利目的の、カラオケで歌う動画やドラマのキャプチャー画面を利用したパロディ、2次創作物に関しては著作権の負担なく利用できるようにはっきりさせる、ということである。


 さらに、「不法複製物」の明確な定義をし、無差別訴訟をなくすために韓国著作権委員会が著作権訴訟の紛争を仲裁できるようにもする。インターネット=「パソコン」から「スマートフォン」へ移行しているだけに、アプリケーション、電子書籍などに対応する著作権保護に関するガイドラインも2010年内に制定するという。


 著作権は当然、守るべきである。しかしインターネット上で行われる個人の引用、パロディ、著作物を利用した2次創作物の著作権、表現の自由も重要とみなされる。プロが作るコンテンツよりユーザー投稿動画の方が面白いケースも増えてきた。一部有名アーティストの間では、新曲をネットで発表して自由にブログにコピーできるようにするケースも増えてきた。ネットで次々と現れるサービスに、著作権をどこまで行使するか、著作権保持者の悩みであり続けるだろう。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年3月25日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100325/1023887/

仰天のネット中毒予防策? オンラインゲームをつまらなくするシステム導入

昨年の秋、親がPCバンでオンラインゲームに夢中になり、生後3カ月の赤ん坊を放置して飢え死にさせたという衝撃的な事件が韓国で発生した。日本でも親がパチンコに夢中になって子供が犠牲になる事件が度々発生しているように、韓国ではオンラインゲーム中毒による殺人、恐喝、窃盗などの事件がなくならない。またゲーム中毒による過労死も毎年のように発生している。

 人口約5000万人の韓国で、オンラインゲームユーザーは2000万人以上と推定されている。中毒問題もブロードバンドが商用化された1998年当時から繰り返し浮上し、中毒予防対策も毎年のように繰り返されている。


 度重なる事件から、韓国政府は青少年を対象にしていたインターネット中毒予防プログラムを幼児から成人にまで拡大することを決めた。名づけて「インターネット中毒予防及び解消総合対策I-ACTION 2012」。行政安全部、教育科学技術部、文化体育観光部、保健福祉部、放送通信委員会、法務部、国防部に至るまで、7つの政府省庁が共同対処するほど力を入れている。インターネット中毒予防のためのカウンセラー養成や相談施設拡大などのために、予算も10倍以上増やし、2012年まで人口のおよそ20%に当たる1000万人に中毒予防カウンセリングを行うとしている。


 韓国政府の調査によると、全国民の約80%がネットを利用してその内8.8%がインターネット中毒に至っている。インターネット中毒は、ネットが使えないといらいらしたり不安になる禁断症状がひどいことで、1日5時間以上オンラインゲームをする人もこれに当たる。韓国ではインターネット中毒やオンラインゲーム中毒は麻薬中毒と同じほど深刻な問題であるととらえられている。よくテレビの特番にもなっていて、「オンラインゲーム中毒は心理的な問題というより脳疾患」と断定する医者もいた。そのため、2012年までインターネット中毒を8.8%から5%以下に落とすのが国家的課題である。


 「I-ACTION 2012」の主な内容は、今までのようにネット中毒、オンラインゲーム中毒を防止するための相談、治療、官民協力など。面白いのは、オンラインゲームを長時間やればやるほど楽しさが減るシステムを導入するという点である。


 これは「疲労度システム」と呼ばれるもので、既に一部オンラインゲームに導入されているという。一度に長時間連続してゲームをすると逆にキャラクターの成長速度が遅くなったり、獲得できるアイテムが少なくなったり、1日一定時間以上ゲームをできないようにするためのツールである。


 オンラインゲーム中毒の理由は、ほとんどが長時間やればやるほどキャラクターが育ち、ゲームマネーを獲得していろんなアイテムを使えるようになるのでゲームがさらに面白くなるところにあった。それを一度に長くゲームを利用するとどんどんつまらなくなるようなシステムを開発するだなんて、ゲーム業界は大丈夫なのだろうか。

ゲーム業界の賛同が必要な部分とは言え、疲労度システムが導入されれば、長時間ゲームをやることでゲームマネーやアイテムを獲得し、それをほかのユーザーへ転売することで換金する「アイテム取引」を減らせるのではないかとも韓国政府は見ている。ゲーム会社の約款に「アイテム取引」は違法とされているが、これを合法とした判例があるため議論になっている。


 韓国のオンラインゲームは「Eスポーツ」と呼ばれ中国・台湾・日本はもちろん、東南アジアや欧米にも輸出される大事な産業である。韓国オンラインゲーム産業の輸出規模は2009年に約15億ドルで、毎年50%ほど増加している。オンラインゲームは韓国のデジタルコンテンツ産業を支え、自動車産業よりも輸出額が大きいと言われているため、一方ではオンラインゲームを育成させ、一方では中毒問題でゲーム内容を厳しく事前審議したり規制したりという矛盾が続いている。


 疲労度システムの導入に関しても、ゲーム業界ではオンラインゲーム中毒の予防という観点では同意するものの、一括適用ということになっては困るという雰囲気だ。


 また、一定時間になるとオンラインゲームやインターネット接続そのものを強制的にシャットアウトするシステムも導入が検討されている。このシャットアウト制度は2005年から議論が続いていて、インターネットは社会の基本インフラであり誰でもアクセスできるようにするべきという利用者の権利問題もあり制度化はされていない。一部オンラインゲーム会社は自主規制として、IDごとに1日10時間以上プレイできないようにしている。


 日本では携帯電話を一時も手放せず、絶えずメールを打ちまくり、モバイルインターネットにつながっていないと不安になるという若い人が結構いるようだが、中毒だといって政府がドラスチックな対策を発表するなんてことはないようにみえる。インターネット中毒やオンラインゲーム中毒、韓国政府の国民過保護が事を大きくしているのかもしれない。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年3月18日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100317/1023664/

韓国行ってきました~


いや~疲れました。。。でもすごく刺激になりました!!


 


KDDI総研のWさんSさんの文献調査がすごくて、行く先々で「お詳しいですね~」と賞賛されまくってました。


すごい方々です。日本に帰国後、過労で倒れてないか心配です。


 


韓国はやっぱり「パリパリ」の国。とってもスピーディーで、変化が早い!


日本は静かな小川、韓国は激流の滝、と感じました。


エキサイティングな国です。


 


日経新聞社説に韓国企業を学ぼう、みたいな内容が掲載されましたか?(見てない。。。)


韓国の新聞に大々的に報道されてますよ。日本が世界市場で活躍する韓国企業を学ぼうとしていると。


韓国内ではこれに関して色んな意見がありますが、世界市場で活躍しているのは確かです。内需も世界市場の一部です。


 


ところで、


今回は会えませんでしが、某政府系の方が、未だにKDDI総研一の美女だった(というのは今は他の部署に移動されたので)A・K姉さんのことを「あの時の美人はお元気ですか」と聞いてくることです。


A・K姉さん~お元気ですか~~~~~~~


– BY  趙章恩


Link
http://www.kddi-ri.jp/blog/cho/?p=210

拡張現実ブームが変えるか? 気合の入る「韓国訪問の年」

2010~2012年は「韓国訪問の年」である。誰が決めたのかというと、もちろん韓国が勝手に決めたのだが、あれ? 数年前も韓国訪問の年ではなかったか? 友情年だったのかな?

 それはともかく、今年はその最初の年で気合の入れようはすごい。2009年9月にはプレイベントとして韓国訪問の年の広報大使であるヨン様こと俳優ペ・ヨンジュン氏が韓国の伝統文化を紹介する本を出版し、東京ドームでイベントまで開催した(本来はヨン様の出版記念イベントだったけど、韓国では「韓国訪問の年イベントに日本の女性が殺到した」と紹介されていた)。


 ヨン様の本は日本でも出版され、韓国でも高い評価を得た。ヨン様が所属する事務所は旅行代理店業も始めていて、ヨン様本に紹介された名所を巡るツアーは、一般的な観光ツアーの4倍ほどする高額にもかかわらず予約が殺到しているというからすごい。2010年2月からはヨン様が出演する韓国観光キャンペーンCMも放映されている。


 インターネットが生活に根付いている韓国では、何でもまずは検索から始まる。観光情報もガイドブックよりネットで検索して旅行サイトやブログの書き込みを参考にする。ガイドブックの情報は出版されるまでに時間がかかるので古い、ブログの書き込みは写真もたくさんあって生の情報だから参考になると思われている。そのせいか、韓国訪問の年委員会でもブロガーを募集し、関連写真を投稿する懸賞イベントも行っている。しかし韓国のブロガーが韓国語で書き込むイベントを行ったところで海外観光客は集まらないだろう。韓国語が分かる通な外国人だけ韓国を訪問しろということなのだろうか…疑問だ。


 韓国内でも訪問の年を迎え、自分の国を知り尽くそうというテーマの旅行がブーム。マリンスポーツとゴルフが定番だったチェジュ島では、島中を歩いて旅できるようにした散歩道「オルレギル」が大ブームとなっている。徹底して歩く旅として世界的に有名なサンティアゴ巡礼の韓国版とも言える道で、コースはいろいろあり、海から山へと続く道をひたすら歩くというもの。ソウル市内では川沿いを歩く都心のトレッキングや自転車旅が流行っている。ITでも「エコ」、「グリーン」がキーワードになっているように、観光も二酸化炭素を発生させない旅がトレンドのようで、どこでも迷うことなく散歩できるマップ連動サービスがどんどん登場している。


 マップ連動サービスといってもポータルサイトの経路案内はもう古い。Googleのストリートビュー、Google Earthと同じサービスは韓国のほとんどのポータルが提供する。車に乗って運転しているような気分を味わせてくれるDAUM(シェア2位のポータルサイト)のロードビューは面白い。高画像パノラマで道の標識や看板の文字まではっきりと見える。現実のビルの屋上にはないが、マップサービスでは、ビルの屋上に電光板があるように見せる広告やマップの上に動画が流れる広告技術もある。マップの上に簡単な情報を提供するだけにとどまらず、「うちのお店に来て下さい!」と熱烈にアピールすることもできるのだ。


 DAUMはこのサービスのためにカメラを装着した車で全国を回っているそうで、釜山ではGoogleのストリートビュー撮影チームとばったり、なんてこともあったという。


拡張現実が楽しさを広げる



 韓国で今一番の話題はやっぱり拡張現実(Augmented Reality)。


 スマートフォンのカメラで道を写すと、ビルの名前や近くにあるカフェ・レストランなどの位置情報と口コミ、ブロガーお薦めショップ、ビルの中にあるギャラリーで行われている展示内容、広告といったいろんな情報が画面の上に登場するサービスである。ソーシャルネットワークサービスとも連動し、近くにいるメンバーの検索もできる。


 知らない街を散歩し、カフェでお茶をして、雑貨屋さんでお土産を買って、といったのんびり観光を楽しむ文化が韓国でも広がっていることから、ゲーム感覚でナビゲーションしてもらえる拡張現実に話題が集中している。


 デジタルカメラにWi-FiとGPSが搭載され、撮った写真をその場で転送するとマップ上に表示されるサービスは前からあるが、それが拡張現実と一緒になったことで、同じ場所を歩いたほかの人の感想や周辺口コミ情報を読みながら歩くとより楽しくなる。


 iPhoneのアプリ「Layar」などで提供される拡張現実。一方、最大加入者を持つSKテレコムも「オブジェ」という名前のアプリで提供している。夜空の星座の位置を教えてくれる機能もあり、位置情報でお店を検索できるのが便利だと口コミで広がっている。まだ他社のソーシャルネットワークと連動していなくて、いろんな口コミまで検索できないのは残念だが、リアルなガイドブックとして全国で使える日が待ち遠しい(現在はソウルの一部分だけ)。


 携帯電話を使った通訳や翻訳サービスの技術も進歩しているので、拡張現実を世界どこでも使える日も近いだろう。以前日本でもRFIDと携帯型リーダー機を使った観光案内の実証実験が行われたことがあるが、特定の場所に行き、1カ所ごとにRFIDを認識させ情報を読み込むものだった。拡張現実はカメラが写す広い範囲の情報を確認できるところも便利である。


 韓国で拡張現実を使って生の情報を入手して、迷うことなく外れのない旅ができるようになれば、訪問の年といったキャンペーンがなくても面白がって観光客がたくさん来てくれるかもしれない。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年3月10日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100310/1023526/

キム・ヨナ選手で五輪のネット生中継は最高記録、計り知れない経済効果

オリンピックを見るためにテレビを買い替えるのはもう古い。韓国ではオリンピックをインターネット生中継で楽しんだ。

 目玉はもちろん、キム・ヨナ選手。他の試合中継はともかく、女子フィギュア試合の途中にサーバーが落ちたりでもしたら大変なことになると、ポータルサイトやインターネット放送局は万全の準備をした。


 もっとも利用者数が多かったのはポータルサイトDAUMで、2月24日のショートプログラムの時は同時接続34万人、26日のフリープログラムは44万人、インターネット中継同時接続者の記録を更新した(26日のキム・ヨナ選手の生中継はアクセス数500万人)。その次がインターネット放送局のAfreecaTVで、同時接続41万人。こちらも2006年のサイトオープン以来の記録となった(ネット中継は韓国内のみの視聴)。


 もちろん、コンビニやお店の前にあるデジタルサイネージ(電子看板)や街のいたるところにある大型スクリーンでもオリンピックが中継された。2002年のワールドカップ開催時の街角応援に負けないすごさで、全国各地のアイススケートリンクにも人が集まり中継を見ながら声援を送った。


 バスや地下鉄の中ではほとんどの乗客が携帯電話を握りしめ、地上波DMB(韓国のワンセグ)を受信したり、ファンたちがTwitterに書き込む試合中継を見ながらはらはらどきどきしたり、韓国中がキム・ヨナ選手の出番に息をひそめ「ヨナ・タイム」となった。


 証券市場も「ヨナ・タイム」には取引がぐっと減った。韓国の新聞によると、キム・ヨナ選手の出番1分前までも1分当たり80万株以上の取引があったのが、試合中には23~30万株しか取引されなかったそうだ。個人投資家の取引金額も試合直前1059億ウォンだったのが、試合中は87億ウォンにまで取引が急減したという。


 視聴率調査会社のTNMSによると、ヨナ・タイムのチャンネル占有度は80%、10世帯のうち8世帯がこの試合を見たという。地上波DMBの中継視聴率は6.046%(首都圏)で、同時間帯平均視聴率0.148%の41倍を記録した。


 面白いのは、最も視聴率が高かったのは26日、キム・ヨナ選手の出番ではなく浅田真央選手の出番で、韓国の金メダルが確定した瞬間だったこと。Twitterやブログには、あまりもうれしくて隣にいた知らない人と抱き合ってしまった…なんていう書き込みもたくさんあったほど、韓国中が沸いた金メダルだった。


 キム・ヨナ選手の13年間の成長を国民の多くが見守ってきただけに、みんな「私の妹みたい」、「うちの末っ子みたい」と話す。家族が金メダルを取ったかのようにうれしくてしょうがないのだ。フリーの演技が終わり肩の荷が下りたのか、泣き出したヨナ選手を見て、もらい泣きしてしまった大人がいっぱいいた。道端で泣いたのは久しぶりではないだろうか。

キム・ヨナ選手の人気はインターネット放送史上最多同時接続の記録を更新しただけでなく、彼女がモデルになっているサムスンの携帯電話やエアコンの売り上げにも貢献した。頭からつま先までキム・ヨナ選手が身につけるものはすべて大ヒット、トレンドリーダーとしても絶大な影響を持つ。スケート靴形のイヤリング、黒いアイライン、つやつやうっすらピンクに輝く口紅、インタビューで履いていた黒い靴、黒のスキニージーンズ、数え切れないほどである。


 同選手をモデルにした化粧品、アクセサリー、自動車、パン、飲料などの売り上げは急増し、スポンサーになった企業イメージもうなぎ上り、その経済効果は毎日更新されているため計り知れないと言われている。1月に発行された「キム・ヨナの7分のドラマ」という自伝エッセイはとっくにベストセラーで、キム・ヨナをモデルにしたファッションブランドももうすぐ登場するという。韓国内でヨナ効果は、世界が想像する以上にすごいのだ。


 一方、オリンピック期間中の2月25日、ソウルではサムスンの3D LEDテレビのお披露目会があった。既存の2Dの映像もサムスンの3Dテレビと専用のメガネがあれば3D効果を感じられる仕組みにしているという(実演は3D映像だけ)。目の前で選手たちがジャンプするというわけか~。これは胸がときめく。そのときにもまた心底応援したくなる選手がいれば、3Dテレビは売れるかも。とすれば冒頭、「オリンピックを見るためにテレビを買い替えるのはもう古い」と書いたが、もとい、「オリンピックを見るために3Dテレビに買い替える」のが次のオリンピックのトレンドか。さらには3Dテレビだけでなく、3Dインターネット中継が登場しているかもしれない。サムスンがテレビだけじゃなくコンテンツやオリンピック選手育成にも熱心なのは理由があるわけだ。



(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年3月4日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100303/1023321/?P=1

日本の「韓国企業に学べ」ブーム、韓国の反応は・・・

3月上旬、朝鮮日報をはじめとする総合日刊紙は、日本経済新聞が「世界に躍進する韓国企業に学ぼう」というタイトルの社説を掲載したことを大々的に報道した。日経新聞に限らず、日本では最近、韓国企業や韓国の国際競争力を取り上げるメディアが目立つ。以前は「韓国が強いのはウォン安だから」と書いていた日本のマスコミが、バンクーバー五輪前後からしきりに韓国を持ち上げるようになったことに、韓国では「急にどうしたの?」というのが正直な反応だ。(趙章恩)





ニューヨークのタイムズスクエアに掲示された韓国サムスン電子の3Dテレビの広告


■韓国のネットにあふれる戸惑いの声


 韓国は元々人口が少なく内需が小さいことから、輸出に依存せざるを得ない経済である。大企業に限らず中小企業もベンチャーも、海外に進出しないと生き残れないという危機感を持っている。何十年もかけて海外進出の実績を積み上げてきた韓国にしてみれば、今になって突然「世界市場で躍進する韓国」と日本からいわれる理由が分からない。


 日経新聞の社説について韓国内のネット上の反応は、「日本が突然韓国を持ち上げるのは裏があるに違いない」「韓国は日本の部品を組み立てているだけで、国際競争力は日本の方が断然あるのにどうして?」「メダルが取れなかったからこんな反応を見せるのかな?」などと戸惑う声が多かった。韓国企業も、日本メディアの突然の韓国礼賛により、日本勢から警戒されることを恐れている。



■前門の日本、後門の中国に強い危機感と恐怖


 韓国のパワーの源は、一つにはこの「危機感の強さ」にあるのではないだろうか。携帯電話や液晶テレビの世界市場で韓国企業はシェアを高めているが、それには日本の部品なくして成立しない。世界の電子産業の中核に日本企業がいるのは明らかだ。目の前には技術競争で誰にも負けない日本という高い壁があり、後ろには恐ろしいほど早いスピードで追いかけてくる中国がいる。この一時も気を緩められない危機感と恐怖が韓国を奮い立たせている。


 特に1997年に韓国が国際通貨基金(IMF)から融資を受けた経済危機以降、韓国の企業は人材を育てる場ではなく、人材を競争させてしっかりと報酬を払う場に変わり始めた。組織よりも個々人の実力が評価され、国籍や性別年齢に関係なく、成果を上げた人にインセンティブを払う。


 企業の中でも危機感と恐怖は続く。韓国は正社員であろうが契約社員であろうが、会社の実績に貢献できない人は即解雇される。生き残るためには常に社員個人もイノベーションを高め続けないといけない。


 韓国語の「ハミョンデンダ(成せば成る)」は、徴兵で軍隊に行って仕込まれる言葉だといわれる。軍隊では上官の命令は絶対で、どんなことを命じられても言い訳をせずに「今すぐやります」と答え、「ハミョンデンダ」精神で戦うことが求められる。韓国人はもともと、危機感をバネにする力が強いのだろう。



■本音で批判し合えるパートナーになるべき


 もともと韓国人は日本人に比べれば前に出るのが好きだ。学校でも家でも「人に迷惑かけるな」ではなく、「負けるな」「リーダーになれ」「自分の意見をはっきり言え」と教え込まれる。不満があれば正面でぶつかり、後腐れなく仲直りするのも特徴といえば特徴だ。


 韓国では以前から「反日」ではなく、日本を超える経済大国、文化大国になる「克日」をすべきだとされてきた。日本を追い越すキャッチアップ戦略は、今もまだ進行中である。日本が急に「韓国はすごい」「韓国を学ぼう」と言い出すよりも、「韓国と一緒に手を組んで世界市場を攻めてみよう」と言ってくれる方がうれしい。


 世界のどの国もそうだが、韓国と日本は特に相互依存の関係が強い。韓国に「紙一枚も二人で持てば軽くなる」ということわざがあるが、韓国の「ハミョンデンダ」精神と、日本の「職人気質」が一つになれば、怖いものはないだろう。お互いを敬遠する仲ではなく、本音で批判し合えるパートナーになれれば、世界を動かす存在になれるに違いない。


– 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  
[2010年3月18日]
Original Source (NIKKEI NET)
http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx?n=MMIT13000018032010

韓国ではキム・ヨナ選手が火を付けたTwitterブーム

世界で利用が急増し、つぶやきで情報が駆け巡るミニブログ「Twitter(ツイッター)」現象は韓国でも例外ではない。2月9日午後6時に首都圏で起きた震度3の地震も、テレビやネットのニュースより先にTwitterで情報が広がった。(趙章恩)

 地震観測が始まった1978年以降、ソウルを中心とする韓国首都圏で揺れが感知されたのは3度しかない。震度3は初めてのことで、「これは本当に地震なのか?寝ぼけているのか?」といったTwitterの書き込みが約10分間で2000件ほどに達した。その後テレビのニュース速報で地震が報道された。


 日本でもニセ首相が登場したように、韓国でもTwitter上にニセ大統領が出現した。韓国企業が運営するウェブサイトは住民登録番号の入力が必要でなりすましは罰金刑になるが、Twitterは海外サービスであるため処罰の対象にならない。ニセ大統領もハプニングとして終わった。ネット実名制の枠外でコミュニケーションができるのもTwitter人気の一つの側面である。


 韓国でTwitterが知られるようになったのは、フィギュアスケートのキム・ヨナ選手が使い始めた2009年5月だった。09年1月にはまだ1万人ほどだったユーザー数が、5月には58万人に増えたほどだ。頻繁に更新しているわけではないが、キム・ヨナ選手のフォロワーになるため加入が急増し、10年2月下旬時点で9万3279人のフォロワーが登録されている。ファンたちは彼女が残す「この週末は食べ過ぎてしまった~~」といった日常の一言に熱狂したり大騒ぎしたりしている。


 2月24日、バンクーバー冬季五輪フィギュア女子ショートプログラム(SP)の競技中は、芸能人や国会議員までが「演技に感動」「泣いた」といった感想をつぶやき、実況中継のようににぎわった。




ツイッターのSKテレコムのページ


■「海外サービスの墓場」で異例の成長


 韓国では「Cyworld」というソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)がもっとも人気だったが、04年を境に衰退していった。写真を載せてアバターをドレスアップし、友人に毎日挨拶しなくてはならないといった付き合いに疲れてしまったからだ。


 米国などのSNSも流行っていない。韓国は「海外ネットサービスの墓場」と言われるほど、国内ネット企業が強い。GoogleもMyspaceもFacebookも利用が伸びず、Myspaceは結局韓国から撤退した。ところが、Twitterだけは特別で、韓国向けに特別なサービスをしているわけでもないのに、ユーザーは増え続けている。


 通信事業者をはじめ企業も広報活動の一つとしてTwitterでユーザーの不満や質問を受け付けている。企業にもTwitterは特別という意識があるようで、通常のコールセンターや窓口では相手にされないような些細なことでも、Twitterに書き込めば素早く対応してくれると好評だ。




選挙管理委員会のサイト画面

■選挙への利用で論戦

韓国では今年6月に地方選挙が行われる。政治家にとってもTwitterはブログと並ぶ必須アイテムで、日ごろからネットユーザーを味方につけようと必死になっている。ところが、選挙管理委員会は、Twitterを選挙の事前活動に利用してはならないとの告知を出した。Twitterは電子メールと同様、書き込んだ内容がフォロワーに送信されるため事前選挙運動に当たるという理由で、「候補者として登録した者であり、選挙運動期間中であれば自由にTwitterに書き込んでフォロワーに送信できるが、フォロワーはそれを他のユーザーに再送信してはならない」という。

 選挙管理委員会の判断は電子的手段を使った事前選挙運動全般に当てはまるもので、「Twitterだからダメ」というものではない。しかし、Twitterに熱心な野党議員らは反発し、「Twitter自由法」というものを主張し始めた。野党側は、07年の大統領選で動画投稿サイトを使った選挙運動が規制されたことなども引き合いに出し、「選挙管理委員会は社会の流れを理解していない」と主張している。




 韓国でも地方選は投票率が低迷する傾向にある。「若い世代の選挙への関心を高めるのにTwitterは有効」という野党の意見にも一理はあるが、Twitterだけを特別扱いするのは難しい。そもそも「ネットだから特別」「過去にないサービスだから特別」といった考えがもう古いのではないか。表現の自由や選挙の公正といった原点に返って、冷静な議論を望みたい。




– 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  
[2010年3月2日]
Original Source (NIKKEI NET)
http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx?n=MMIT13000001032010

アンドロイド端末発売で韓国もスマートフォン時代

韓国最大手の携帯電話事業者SKテレコムは2月10日、米グーグルの携帯OS「Android(アンドロイド)」を採用した米モトローラ製端末「Motoroi」を発売した。韓国スマートフォン市場は、アップルの「iPhone」とマイクロソフトの携帯OS「Windows Mobile」を搭載する韓国サムスン電子の「OMNIA」シリーズが競い合っているが、アンドロイド携帯が加わることで、一段と選択肢が広がってきた。(趙章恩)

 韓国では昨年11月に通信トップのKTがiPhoneを発売し、スマートフォンへの関心がにわかに高まった。そのiPhoneの勢いを止めようと、SKテレコムはアンドロイドのキャッチフレーズとして「オープンとシェア」「利便性と拡張性」を掲げ、「Androboi」というキャラクターを登場させたキャンペーン広告も大々的に展開している。





韓国SKテレコムが発売した米モトローラ製のアンドロイド端末「Motoroi」


■韓国版ワンセグも視聴可能


 モトローラ製端末のMotoroiは、iPhoneより大きい3.7インチのタッチパネル液晶に800万画素カメラ(iPhoneは300万画素)を搭載する。また、iPhoneが対応していない韓国版ワンセグの地上波DMBも受信可能なほか、FMラジオ機能が付き、バッテリーも着脱交換できるようにしている。


 ユーザーの関心は高く、ネット上でユーザーが教え合う「知識検索」やブログでは、「どっちを買うべきか」の議論が盛んだ。「Motoroiの方が画面が明るく、マルチタスクでワンセグもあるからお勧め」という意見もあるが、今のところは「タッチ方式の便利さや使いやすさではiPhoneが上」という評価の方が多い。


 これには韓国では国産ポータルサイトの「NAVER」「DAUM」が強く、グーグルの人気が今ひとつという事情も働いているようだ。アンドロイドはグーグルの機能をスマートフォンから利用できることがセールスポイントだが、これがまだ十分に訴求力を発揮していない。アプリケーションの数もアップルのアプリ販売ストア「APP Store」に比べて圧倒的に少なく、3月からはグーグルの「Android Market」に加えて、SKテレコムのアプリストア「T Store」も使えるようにする。





■サムスンもアンドロイドで巻き返し


 それでも韓国では、携帯電話業界だけでなくコンテンツやeコマース業界までがアンドロイドに注目している。それはMotoroiを皮切りに、アンドロイド携帯が一気に増える見通しだからだ。


 SKテレコムは10年に15機種のスマートフォン発売を予定しており、そのうち12~13機種がアンドロイド携帯になるという。KTも10年にアンドロイドを含む10機種のスマートフォンを投入する方針。サムスン電子も3月にアンドロイド携帯を発売する。韓国ではOMNIAシリーズでiPhoneと人気を二分しているが、世界のスマートフォン市場ではまだサムスン電子らしいといえる実績がない。そのため、自社OSである「BADA」とアンドロイドで巻き返しを図ろうとしている。


 韓国のスマートフォン累計販売台数は全機種を合わせて100万台前後。そのうち、iPhoneが約3分の1程度とみられる。しかし、SKテレコムは10年に200万台、KTは180万台のスマートフォンを販売する目標を立てており、実現すれば加入者の約10%に当たる500万台前後に膨らむ。シェア争いはまだ始まったばかりだ。


 ソウルの街中を歩くとスマートフォンを持っていない人はいないように見えるほどだ。iPhoneをきっかけにスマートフォンブームが巻き起こったおかげで、韓国は長年の課題だったモバイルインターネット利用率も大幅増加した。その急速な変化は、1998年のブロードバンドブームのように、韓国の産業構造や社会を大きく変えるうねりとなって広がろうとしている。



– 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  
[2010年2月22日]
Original Source (NIKKEI NET)
http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx?n=MMIT13000022022010