「ゲームマネーの現金売買は合法」韓国最高裁判断への賛否両論

韓国では、ソウルが観測開始以来の大雪や寒波を記録するほどの異常気象で、外出を控えオンラインゲームやデジタルコンテンツを利用する人が増えている。「Hangame」「NCSoft」「Nexon」「Netmarble」「Pmang」といったオンラインゲームの1月のユーザー平均滞在時間は前年同月比で3割も増加しているという。証券会社は2010年の株価展望で、不況ほど利用者が増えるオンラインゲーム株をさかんに推奨している。

 寒波以上にオンラインゲーム業界で話題になっているのがNCSoftの多人数参加型オンライン・ロールプレイング・ゲーム(MMORPG)「リネージュ」内で使われる仮想のゲームマネー「アーデン」の現金売買を巡る最高裁判断である。



■「ユーザーが努力して得た労働の対価」


 事件の始まりは08年12月、ゲームマネー売買を専門に行う個人2人が「ゲーム振興法32条1項7号違反」の容疑で起訴された。同法はゲームマネーの現金売買を禁じており、2人はゲームマネー2億3400万ウォン(約1900万円)相当を安く手に入れ、2000人に転売し2000万ウォンの利益を上げたとされた。


 地方裁判所は2人に罰金200万~400万ウォンの判決を下したが、2審ではリネージュのようなMMORPGのゲームマネーは同法の規制対象にならないと判断。検察が上告したが、最高裁判所は09年12月24日に2審判決を支持し、上告を棄却した。


 最高裁は、法律で現金売買を禁止されているゲームマネーは「一定の金額を賭けてゲームの結果によって配当が決まるもの、または偶然手に入れたもの」であるとし、2人が転売したリネージュのゲームマネーは「偶然ではなく利用者の行為によって得られたものである」と認定した。さらに「リネージュのゲームマネーはすでに現金売買が活発に行われており、転売して利益を得たことは同法違反に当たらない」との判断を示した。


 ゲーム会社は、オンラインゲームのゲームマネーやアイテムはプログラムで所有権は開発者にあり、ユーザーや仲介サイトで現金売買をしてはならないという約款を設けている。しかし、今回の最高裁判断はゲームユーザーの間では、「リネージュのようなゲームの仮想通貨はユーザーが努力して得た労働の対価であり、約款に関係なく売買することができる」と解釈されている。



■ゲームマネーの売買市場は約1200億円


 今回の判断が出る以前から、ゲームマネーやアイテムの売買を仲介するサイトは多数存在していた。もともとはユーザー同士がゲーム内のチャットや掲示板に売りたいアイテム、買いたいアイテムを書き込み、「PCバン」と呼ばれるネットカフェなどでアイテムと現金を直接受け渡していたが、詐欺などのトラブルが増え、01年ごろから仲介サイトが登場し始めた。


 仲介サイトは、決済代行手数料として販売金額の4~5%を徴収する。仲介サイトの登場で、本格的にゲームマネーやアイテム売買を職業とする人も現れた。韓国コンテンツ振興院や文化体育観光部によると、ゲームマネー売買の仲介サイトは10社以上あり、会員数800万人、年間換金(現金売買)規模は1兆5000億ウォン(約1200億円)にものぼるという。


 同時に数十万人がアクセスしてRPGを楽しむリネージュのようなゲームは、ゲーム内にもう1つの人間世界が繰り広げられているようなもので、ゲームマネーは必須となる。ゲーム会社側は、加入者を長期間足止めできるよう、キャラクターの育成や獲得できるアイテムを調整している。一方、ユーザーにしてみれば、ゲーム料金を数カ月分払うのと現金でゲームマネーを購入してアイテムに変えるのとでは金額的には大きな差がない。山の1合目から登り始めるか、それとも5合目から登り始めるかといった差だろうか。



■IDの詐取が増える? トラブル増加の懸念も


 今回のゲームマネー現金売買を合法とした最高裁判断に対しては、ゲーム市場の活性化につながるとの見方が多い。ただ、ゲーム業界内にも賛否両論はある。


 ゲーム振興法では、ゲームマネーを売買して利益を得るために他人の個人情報を盗んだり、ハッキングプログラムを使ってキャラクターのレベルを上げたりすることを禁止している。こうした違法行為を行うグループの拠点は「作業場」と呼ばれ、主に人件費の安い中国や地方都市にある。作業場では、数百台のパソコンを24時間フル稼働させ、ゲームマネーやアイテムを獲得しては仲介サイトに売り出して現金化しているとされる。


 大量のゲームマネーやアイテムを獲得するには、その分大量の会員IDが必要となる。作業場の人たちは電子商取引サイトやウェブメールサービスなどをハッキングして韓国人の住民登録番号を手に入れ、その個人情報を使いオンラインゲームサイトに会員登録する。韓国人の個人情報のハッキング事件が絶えないのは、このようにお金になるからである。


 今回の最高裁判断はこうした行為まで合法としたわけではないが、ユーザーがそれを区別するのは難しい。 ゲームマネー売買を悪用した不正資金問題や課税問題、ゲームマネーと企業ポイントや電子マネーとの連携にかかわる問題が起きる可能性もある。



■世界に輸出 海外対応も必要に


 ゲーム内のアイテムがお金で簡単に手に入るものになれば、ユーザーにとっての希少性は低下する。ゲーム会社はユーザーを引きつけるため、絶えず次に獲得したくなるような強い武器、強力な魔法アイテムといった新規アイテムを開発していかなければならなくなる。


 しかし、アイテムを開発するにはゲームのストーリー変更やキャラクター設定なども必要だ。これらはそう簡単に継ぎ足せるものではなく開発負担は少なくない。そもそもゲーム中毒やゲーム過労死が社会的問題になっているなか、アイテムを増やして売買規模を大きくすることには批判もあるだろう。


 ゲームマネーやアイテムの現金売買は韓国だけの問題ではない。韓国のオンラインゲームは世界60カ国以上に輸出され、その輸出規模は08年10億ドル、09年15億ドルと推定されている。世界のユーザーが韓国のオンラインゲームマネーを売買することで換金レートや取引方法などでトラブルが発生した場合、矛先はゲーム会社に向けられる可能性が高い。


 今回の判断により、職のない人たちがゲームマネーで生活費をかせごうとオンラインゲームに集まることでゲーム市場が成長するという予測もあるが、それでは悲しすぎるだろう。アイテム売買よりも、ゲームをきっかけにアニメ、映画、漫画といった文化コンテンツのすそ野を広げて市場を共有することの方が経済活性化につながるのではないだろうか。ゲームはゲームとして楽しめるよう、文化として育ててほしいものだ。


– 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  
[2010年1月26日]
Original Source (NIKKEI NET)
http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx?n=MMIT13000025012010

MNPと奨励金が携帯キャリアをだめにする

日本ではメールアドレスを変更しなくてはならないので面倒、手数料が高いといったことから利用はあまりないと言われているモバイルナンバーポータビリティ(MNP)だが、韓国では加入者の85%が経験しているというデータが発表された。

 韓国通信事業者連合会によると、2009年12月時点で韓国のMNP利用者は約4020万人。
2004年1月に韓国でMNPが始まってから6年間で、携帯電話加入者の85%が1度は移動通信キャリアを変更したことになる。


 韓国ではMNPでないと奨励金がもらえない、キャリアに関係なくショートメッセージを送受信できるので携帯電話からメールを使うことがなくメールアドレスの変更による負担がないことが理由としてあげられる。


 MNPは移動通信キャリアを変更する心理的負担を軽くすることで競争を促進するのが目的であったが、韓国では奨励金競争と重なり、加入者を奪い、そして奪い返す争奪戦になってしまった。家族割りや学生割りといった加入者間通話の無料競争が始まると、ネットワークの外部性によりシェア1位のSK Telecomに加入者が集まり始め、移動通信キャリア3社の市場シェアは10年近く5対3対2のままである。


 韓国の移動通信キャリアの平均解約率は3.5~4%。1%前後である日本に比べるとかなり高い。加入者の移動が激しいため奨励金が増えるのか、奨励金があるから加入者の移動が増えるのか。当然、移動通信キャリアの売上は伸びても利益率は急落している。2008年の場合、SK Telecomは営業利益2兆599億ウォンに対してマーケティング費用は3兆635億ウォンと、1兆36億ウォンも超過支出している。


 2009年11月にiPhoneが発売されてからは、MNPによって加入者が流れていくのを防止するため、3社の奨励金に加えて端末ベンダーからの奨励金まで上乗せされている。単価90万ウォンほどのスマートフォンが移動通信キャリアとベンダーの奨励金により20万ウォンほどで買えるようになった。スマートフォンの値段は奨励金競争によって毎日最安値が更新されている。2~3日の間に40万ウォン近くした端末が、奨励金の増加で半額の20万ウォンにまで安くなり、その恩恵を受けられなかった加入者の反発で差額を返金する騒動まであった。

MNPで奨励金をもらうと、最低1年以上契約が拘束される約定加入となるが、代理店によっては「(その)違約金を代わりに払います」という張り紙まで出している。


 移動通信キャリアが研究開発に使う費用より、マーケティング費用の方が多いことから移動通信サービスの質低下を招くのではないかという指摘があり、2008年3月に解禁された奨励金をまた規制すべきという意見も出始めた。


 国会では奨励金の差等支給が問題になった。キャリアごとにA社からMNPした20代の場合は20万ウォン、B社からの移動でスマートフォンに加入した場合は55万ウォン、C社からのMNPは10万ウォン、という具合に、年齢や加入していたキャリアに応じて支給額を変えていたことが判明した。


 通信政策を担当する放送通信委員会では、奨励金を支給するならば平等に、全加入者にそのメリットが行き渡るようにとガイドラインを制定した。併せて差等支給をなくすため、奨励金がどれぐらいもらえるのか、加入者にはっきりと情報を公開することも求められている。通信キャリアが放送通信委員会に提出する営業報告書の会計基準を変え、マーケティング費用の明細を販売営業と顧客サービスに分けて細かく出費の内訳を明記するようにした。


 移動通信キャリアもMNPと奨励金による過剰な競争に負担を感じている。それでも市場シェアを守るためには仕方ないとしている。奨励金競争は結局端末買い替えを促進する競争でしかない。キャリアのARPUは日本ほど減っていないからだ。


 5~6年前までも韓国のキャリアは、毎月のように「世界初」のモバイル放送や、モバイルホームネットワーク、モバイルヘルスケア、モバイルペイメントなどを登場させていた。それが今ではスマートフォンの話題ぐらいしかない。奨励金競争よりも、移動通信ならではの面白いサービスで顧客をつかまえて離さない競争をしてほしい。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年1月21日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100113/1022154/

アプリ配信サイトの利用デバイスが増え競争が始まる

iPhoneによって触発された韓国のスマートフォン競争により、直近2カ月間でスマートフォンが46万台近く売れた。

 これは携帯電話加入者の1%が動いたことになる。KTのiPhone契約数は1カ月ちょっとで24万件、サムスン電子のT-OMNIA2は2カ月ちょっとで22万件を超えたという。韓国で20万台以上売れたスマートフォンはiPhoneとT-OMNIA2が初めてある。既に移動通信キャリアには30万台を納品しているので、1月中に30万台販売突破可能性も高い。


 スマートフォンはモバイルインターネットを頻繁に使う会社員や若い学生向けと思われていたが、韓国ではファッションの一部として裕福層の主婦の間でも人気が高いことから、予想を上回る売れ行きとなっている。もちろん奨励金競争により端末価格が安くなったことも影響している。


 サムスン電子はiPhoneがここまで売れるとは思わなかったという反応を見せている。韓国のマスコミは、米国での展示会「CES 2010」の記者懇談会での発言を引用し、「サムスン電子はiPhoneが韓国で爆発的な人気を得ていることを衝撃的なこととして受け止めている」「iPhoneはサムスン電子の競争力をテストした製品」といった記事を大々的に報道している。


 韓国の携帯電話端末市場の約50%、世界市場でもシェア2位のサムスン電子であるが、世界市場のスマートフォンシェアはノキアやアップルのiPhone、リサーチ・イン・モーションのBlackBerry、HTCが上位を占めている。サムスン電子やLG電子は2009年秋ごろからスマートフォンのラインアップ強化をしきりに発表している。サムスンはアプリ配信サイト「Samsung Apps(APP Store)」に続いて「BADA」というモバイルOSも発表している。


 韓国勢は携帯電話やスマートフォンだけの競争では勝ち目がないと見たのか、家電でも世界市場の上位にある点をいかしてスマートフォン、パソコン、MID(モバイルインターネットデバイス、スマートフォンとネットブックの間にある携帯型端末)、テレビ、プリンター、DVDプレーヤー、デジタルカメラなどで共通して使えるアプリ配信サイトに力を入れている。一度コンテンツを購入すれば、スマートフォンからもテレビからでも利用可能になる。スマートフォンにインストールした天気情報、交通案内、ゲームなどがテレビと連動してリモコンで使えるようになる。コンテンツを確保するため、オンライン映画レンタル事業者やオンラインゲーム、動画投稿サイトとの提携も強化している。

 CES 2010では3Dやブロードバンド対応のテレビ、スマートフォンなどが続々と展示されたが、端末機能そのものは大きな差がなくなりつつある。いつものことだが、デザイン、ユーザーインターフェース、アプリケーションといったユーザー向け利便性の勝負になるしかない。


  CES 2010の基調演説でも、モバイルインターネットが各種端末に搭載され、端末間の連結性や機能の融合がより一層強まることがテーマであった。このような現象は人々の生活に影響を与え、エンターテインメント分野のビジネスチャンスを広げると期待されている。


 韓国では民放のSBSが、自社番組の宣伝部隊として、ドラマごとに動画投稿をしてくれるユーザーを募集している。ユーザーがドラマの映像を編集し、動画投稿サイトやBlogに掲載してドラマの話題性を高めることが、視聴率を高め本編VODの有料販売も増加させたことから、公式に宣伝部隊を募集するようになった。


 このように作られた動画がパソコンだけでなくスマートフォンや家電からも利用されることで、より高い宣伝効果を得られると見込んでいる。他の放送局もユーザーが自由に編集していい動画を特別に公開するようになった。


 どんなデバイスからも利用できるアプリ配信サイトの登場は、コンテンツホルダーの著作権管理の変化によって相乗効果を発揮できるものと見られる。2010年もスマートフォン関連のニュースで盛り上がりそうだ。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年1月14日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100113/1022182/

韓国の放送広告、国の独占にようやく終止符

韓国では今年、地上波テレビ・ラジオ放送向け広告を30年近く独占してきた国営広告代理店制度が改定され、競争制度が導入される。地上波テレビ放送をIPネットワーク経由でリアルタイム配信するIPTVを皮切りに始まった韓国の「通信と放送の融合」は、放送産業にも大きな変革をもたらそうとしている。

 韓国では、地上波放送39社(テレビ14社、ラジオ25社)、地上波DMB(韓国版ワンセグ)16チャンネルの広告営業のすべてを、1981年に設立された国営の韓国放送広告公社が独占してきた。民間の広告代理店は主に広告制作代理店であり、韓国放送広告公社を経由してしか広告営業をすることができない。


 そのせいで、韓国の大手広告代理店はサムスン、SK、ロッテなど大手企業のいわゆるインハウスが多く、グループ会社の広告を制作してそれを元に韓国放送広告公社と交渉する。韓国放送広告公社は放送局の広告営業代理、民間の広告代理店は広告主の代理、という関係になる。



■「言論統廃合」の産物









韓国放送広告公社のホームページ


 韓国放送広告公社の2008年の売上高は前年比8.7%減の2兆1855億ウォン(テレビ86.9%、ラジオ12.7%、地上波DMB0.4%)。放送局別のシェアはMBC(文化放送)が40.8%、KBS(韓国放送公社、KBS1とKBS2の計)が5.6%、SBS(ソウル放送)が22.0%で、地域民放は7.8%、宗教放送は3.8%となっている。


 韓国放送広告公社はもともと「国家財産である電波を使う放送が広告主の影響を受けてはならない」という建前から設立された。しかし、実際には80年に発足した全斗煥政権による「言論統廃合」の産物であり、国が放送を掌握するために作られた制度と批判されてきた。そのため、08年11月に憲法裁判所が放送広告営業の独占は違憲であるとの判断を下し、2009年末までに関連法が改正されることになった。




 その背景には、放送業界を取り巻く環境の変化もあっただろう。80年の言論統廃合により新聞と放送局の兼営が禁止されたが、08年には一連のメディア関連法改正により新聞・放送の兼営が解禁された。IPTVやモバイル放送などの新技術媒体の広告に対応するためにも、国が広告を握り分配するような制度を見直し、メディアの競争力を高める必要があるという判断が働いたのである。



■公営放送も広告収入モデル


 現時点ではまだ参入方法を検討中の段階だが、「公営1社、民間1社」もしくは「公営1社、民間複数」にして、公営放送は公営の広告代理店が、民放は民間の広告代理店が担当することになりそうだ。広告市場の全面開放は、メディアを変えるに等しい影響を放送産業に及ぼすのは間違いなく、業界内に賛否両論がうず巻いているためだ。


 放送局は一般に、受信料を徴収する国営・公営放送と、広告収入で運営する民放に大別できるが、韓国では公営放送でも広告を流す。首都圏の場合、SBSは民放、EBS(韓国教育放送公社)は公営放送と区分が明確だが、MBCとKBSは公営ながら広告収入を得ている。


 MBCの株式は、政府機関である放送文化振興会が70%、朴正煕(パク・ジョンヒ)元大統領が設立した正修奨学会が30%を保有するため公営放送に分類されるが、広告が収益源の民放である。KBSもKBS1は94年に受信料を電気料金と併せて徴収する方式を導入する代わりに広告をなくしたが、KBS2は民放と同じである。







 地上波放送の広告営業が競争体制になれば、広告料もその分値上がりするだろう。韓国放送広告公社の報告書によると、放送広告市場の競争体制により放送局の広告収入は4年間で70%増加すると予測している。しかし、広告が増えるチャンネルもあれば、減ってしまうチャンネルも出てくる。


 業界内では、MBCやSBSの寡占が強まるとの懸念が出ている。一方、これまで韓国放送広告公社が広告を回すよう誘導していた宗教放送や地域放送は収入減に陥る可能性がある。KBSは月2500ウォンの受信料を月6060ウォンに引き上げる一方で、KBS2の広告を廃止するとしているが、視聴者の理解を得られるかどうかは疑問だ。放送・通信産業を所管する政府の放送通信委員会は10年に新規放送事業者を認可する予定で、放送局はますます視聴率競争に駆り立てられることになる。





■ソフトパワー強化に期待


 広告制度の見直しに対しては、「広告主に気を使って公正な報道ができなくなる」と反対する国会議員もいたが、韓国が他の国と同じように普通になっていく一つの段階に過ぎない。放送局がこれを前向きに生かすには、視聴率至上主義に走ることなく、コンテンツの制作力を地道に強化していく努力が欠かせない。


 韓国のドラマは「韓流」としてアジアと中東にブームを巻き起こした。ドラマが放映された地域では韓国に対するイメージがよくなり、韓国製品の売れ行きが大幅に伸びているという。ハードウエアの組み立て製造には強くてもソフトパワーがないと指摘され続けた韓国がこれを契機にさらにコンテンツの制作力を高め、韓国産コンテンツの輸出が増えることに期待したい。


– 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  
[2010年1月4日]
Original Source (NIKKEI NET)
http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx?n=MMIT13000004012010

パケット課金に不正疑惑、政府が携帯事業者を調査

iPhone発売をきっかけに、モバイルインターネットの利用が急激に伸びている韓国。スマートフォン向けパケット定額料金制も続々登場しているが、スマートフォンでない端末のユーザーはまだほとんどが従量制、使ったパケット分だけ料金を払っている。

 韓国では元々モバイルインターネットはネット利用時間に応じて課金するCircuit方式であったが、2001年モバイルインターネット料金値下げを目的にパケット料金制度に変更された。しかし、パケット料金制度はユーザーから見て料金をはっきり計算しにくく、逆に料金が高くなったことが問題として指摘され続けてきた。


 韓国ではパケット使い放題の定額料金制がまだ始まったばかりである。今までの使い放題料金制は期間限定のサービスだった。新規の端末やコンテンツの開始に合わせて3~6カ月だけ使い放題にし、その後からはパケット量に応じて段差をつけた従量制課金になる。使い放題と宣伝する料金制度でもよく見ると最初の6カ月だけで、その後は1GBまで使い放題になるか、料金が値上げされてきた。


 パケット料金は基本料に応じて差があり、0.5KB当り0.45~5.2ウォン(約0.035~0.4円)。テキストなのか画像・動画なのか、公式サイトなのか、インターネットに直接アクセスするのかによって適用されるパケット代が全部違う。最近は割引料金制度がとても複雑になっているので、自分が使ったパケットと請求額を比べてみても訳がわからないという状態。もしかして、パケット料金をごまかしているのではないか、間違って割引を適用していないのではないか、パケット代をめぐる苦情は増えるばかりである。そこで、政府の調査が始まった。


 韓国政府省庁である放送通信委員会は、移動通信キャリア3社の不当課金疑惑を調査すると発表した。市場シェア50.5%のSKテレコムの場合、料金制度は政府の認可を受ける必要がある。他のキャリアもこれに応じて少し安く料金を設定するので、いまさら移動通信の料金そのものを調査するということではない。きちんと告知した通りの料金を課金しているのか、パケットの水増しはないのか、といったことを調査するという。政府の課金調査は移動通信サービスが始まって以来であるため、通信業界では調査結果に敏感になっている。政府系シンクタンクと一緒に移動通信キャリアのログファイル分析による実際のデータ量の測定も始める。

さらに移動通信キャリアは、この調査をきっかけにまたもや政府から料金値下げの圧力をかけられるのではないか緊張している様子だ。


 2008年末から09年にかけて、政府の要請により移動通信サービスの料金の値下げが続いたからだ。大統領の「家計の通信料金負担20%減」の公約を守るため、移動通信キャリアは基本料金・加入費(事務手数料)・SMS・通話料金を20%ほど値下げし、さらに加入者間無料通話、長期加入者割引、青少年割引、低所得者割引、バンドル割引(固定通信・移動通信・VoIP・IPTV・固定電話など同じ系列会社の複数のサービスを同時に利用すると基本料と利用料が最大50%まで割引される)など、数え切れないほどの割引制度を始めた。


 しかし今回の調査は、移動通信キャリアの悪さを裁くというより、ユーザーに安心してモバイルインターネットを使ってもらいたいという目的の方が大きいように見える。1999年携帯電話からモバイルコンテンツサービスを利用できるようになったその日から、10年以上も高い高いといわれ続けてきたモバイルインターネット料金の構造を、実際のデータ量と費用を用いて分析することで合理的な料金を算定し、ユーザーに納得して使ってもらいたいということであろう。


 携帯電話の加入者数は人口の96%、実に4700万人を超えたのに、パケット定額料金に加入しているのはキャリア3社合わせて410万人ほどにすぎない。ほとんどの人が携帯電話からインターネットなんて料金が怖くて使えないとおびえているが、そうではないということを証明したいのだろう。スマートフォンの本格的な普及前に、OECD加盟国の中で最も高いと不満の種になっているモバイルインターネット料金体制をはっきりさせる必要はある。


 全世界で固定通信から移動通信へトラフィックが流れ、ネットの利用形態は早いスピードで変化している。色んな産業分野で携帯端末と移動通信の融合により新しい市場が生まれ、経済活性化に貢献している。これをさらに活気付けるためには、何よりもモバイルインターネットを普及させないといけない。韓国の場合は、焦りから政府が背中を押しすぎているような気がする。市場全体の競争によるものではない政府の圧力による料金値下げやビジネスモデルの変化がどこかで不具合を起こすのではないか心配だ。
(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年12月24日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20091223/1021752/

新型インフルに花より男子――検索キーワードで2009年を読み解く

 韓国の2大検索ポータルサイト「NAVER」と「DAUM」は、2009年にもっとも多く検索されたキーワードを発表した。


 NAVERによると、韓国では毎日ポータルサイトを経由して約20億4000万件の検索が行われているそうだ。これはNAVERのサービスが始まった1999年に比べると約200倍も増加した数字だという。テレビのCMでも「ネットで検索!」というナレーションや字幕が必ずといっていいほど入っているだけに、ネットでの検索は重要な情報伝達窓口になっている。


 2009年の検索キーワード1位は「新型インフルエンザ」。韓国でも12月15日時点で新型インフルエンザと確診された死者が117人。中には有名芸能人の子供もいた。最初は政府のワクチン確保が遅れ大騒ぎになり休校が相次いだものの、今は全国の小中高校で予防接種が実施され落ち着きを見せ始めている。


 2位は世界を驚かせた「ノ・ムヒョン前大統領の死去」。後を追うかのように亡くなった「金大中元大統領の死去」も6位に入った。


 3位は大ヒットドラマ韓国版「花より男子」。10から20代の女性の間でシンドロームを巻き起こした。「花より男子」に登場した衣装やアクセサリーが飛ぶように売れ、主人公の別荘があるという設定で紹介された南太平洋のニューカレドニアが憧れのハネムーン名所になった。このドラマの主人公のイ・ミンホをはじめF4は今や大物スター扱いされるようになった。


 2008年キーワード1位だったフィギュアスケートの「キム・ヨナ」選手は、2009年4位となった。競技だけに限らず「国民妖精」として、高麗大学入学、メイクやファッション、出演する番組、CM情報、収入に至るまで、彼女に関するありとあらゆることが話題だった。キム・ヨナ選手は3年連続でキーワードベスト10に入っている。


 5位は振り付けまで大ヒットしたアイドルグループ「少女時代」の「Gee」。着メロ、着うた、デジタルダウンロードで売り上げ1位となった。どネットでは警察や軍人、男子校学生が「Gee」の振り付けを真似る動画が投稿され、大いににぎわった。

2009年の音楽界は少女グループとワイルドな男性グループが人気を二分した。女性アイドルグループは「2NE1」、「KARA」、「Afterschool」などが音楽チャートを席巻した。健康的でセクシーな魅力持つアイドルが増え、「クルボクジ」(はちみつを塗ったようになめらかで弾力のある太もも)という言葉まで流行ったほど。


 日本の草食系男子のように、男性グループも2009年の春までは10代の美少年グループが人気を集めたが、後半は「ジムスンナム」といって、野性的な男性グループに人気が集中した。


 その他には、韓国の伝統酒「マッコリ」の検索頻度が例年の2.7倍に増え、順位も大幅上昇した。マッコリはにごり酒のことであるが、韓国の庶民的な伝統酒であるにもかかわらず、日本で先にブームになり、日本向けに色んな種類のマッコリが登場するようになってから、韓国でもマッコリの価値を見直す動きが出始めた。ソウルの繁華街、明洞のデパートでは、のり、キムチに続いてマッコリが売れているほど、人気が急上昇しているという。


 「プロ野球」も例年の2倍に上昇した。これはWBCで韓国チームが予想を上回る成績を見せたことで、野球応援の熱気がそのままプロ野球へ流れたからではないかと見られている。


 性別による検索キーワードの違いも分析されたが、面白いのは女性よりも男性の方が「ショッピング」というキーワードで検索していること。「ストレス」「憂鬱」を検索したのは女性の方が多かった。


 年齢別、地域別にも検索キーワードには差が出ているが、10代が他の世代よりもニュースに登場するキーワードを検索する頻度が高いというから驚いた。「北朝鮮」「大統領」「新型インフルエンザ」など。大学入試の小論文テーマになるので、受験勉強のためだとは思うが、これも意外な発見だった。


 季節によっても集中する検索キーワードがあり、年末年始になると「ダイエット」、「初夢」の検索が25%ほど増えるという。「来年こそはダイエット!」、「来年こそはキャリアアップ!」を夢見ながら、検索ばかりで終わってしまわないようにしないと!


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年12月17日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20091216/1021558/

グーグルも郷に従う 韓国ポータル競争、第2ラウンドの舞台

検索サイト世界最大手の米グーグルは12月4日、韓国サイトのデザインを変えた。グーグルといえば検索だけに特化したシンプルなメーン画面が特徴だが、検索キーワードを入力する窓の下に、「人気トピック」「話題の人物」「人気ブログ」といった、韓国の他のポータルサイトのメーン画面にもあるメニューを追加した。これまでグーグルは世界各国で同じデザインの画面を通じてサービスを提供してきたが、韓国に限り、その世界共通のスタイルを捨てたのだ。






 



リニューアルされたグーグル韓国のサイト


 グーグルによると、韓国で市場調査をした際に、「検索結果の品質」には満足するが、「社会的イシューの把握」で満足できないという意見が多かったため、メーン画面を修正したという。グーグル側は「メーン画面変更は全世界で韓国語サイトだけ。広告のないさっぱりしたデザインと優秀な検索品質で、韓国ユーザーを満足させられることを期待している」と述べた。韓国サイトの訪問者数は11月27日の54万人から、12月4日には61万人に増加した。





■低迷するグーグルのシェア







 しかし韓国のネット業界は、グーグルの冒険に注目してはいるものの、「メーン画面のメニューを増やすぐらいではユーザーに受け入れられないだろう」と厳しく評価している。


 グーグル韓国の新しいメーン画面に表示される内容は、過去の検索結果からコンピューターが解析して決める。グーグルはこの方式について、「閲覧数に応じてトピックを表示しているので、より客観的な情報を提供できる」と主張する。


 これに対し韓国の他のポータルサイトでは、複数の編集者がブログやニュースのコメントなどに目を通して、なにをメーン画面に表示するのかを選別している。ニュースの見出し編集は禁止されているが、ブログの書き込みは見出しを編集したり構成を変えたりして、利用者の注目度を高めようと競い合っている。雑誌やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)サイトと提携し、話題のコンテンツを提供してもらってもいる。韓国の検索ポータルは検索機能の高度化だけでなく、コンテンツの制作と流通にも深く関わっているのだ。




 グーグルの努力にも関わらず、韓国の検索市場における同社のシェアは2%と低迷している。しかも、グーグルと過去3年間検索広告契約を結んでいた市場シェア2位のポータルサイト「DAUM」が、広告単価の高いオーバーチュアに乗り換えたことで、韓国国内での広告売り上げが大きく減った。グーグルの広告サービス「アドセンス」は個人ブログを中心に利用が広がっているものの、広告事業は順調とは言い難い状況である。



■韓国ポータルでNAVERが独走する理由


 韓国のパソコン向け検索ポータルでは、「NAVER」がシェア約7割と他を圧倒している。NAVERを運営するNHNの2009年7~9月期の売上高は、前年同期比13%増の3332億ウォン(約254億円)。内訳は52%が検索広告、32%がゲームだった。ライバルであるDAUMを運営するダウムコミュニケーションの同じ期の売上高は641億ウォン(約49億円)と、NHNの5分の1でしかない。DAUMも会員数ではNAVERに負けていないが、売上高でここまで引き離される背景には、検索データベース(DB)の差に加え、検索利用件数の違いがあるといわれている。


 「NAVERのサイトを見れば、ほしい情報が簡単に、見やすく手に入る」というユーザーの利便性を維持するため、NAVERは検索、口コミ、画像、動画、ブログ、SNS、Twitter(ツイッタ―)、ニュース、論文、専門資料など、ネット上に存在するあらゆる情報を1つの検索DBにまとめている。ホームページでは見つからない情報が、口コミサイトで見つかる可能性もあるからだ。その結果、NAVERは「レポートを書くときも、市場調査をするときも、まずNAVERに行けば大丈夫」というブランドを築いた。


■スマートフォン普及で変わる競争条件


 ここ数年、NAVERの独走を止められる対抗馬は存在しなかった。しかし携帯電話サービスが第4世代に進化して有線のインターネットと遜色ない通信速度になれば、ネット利用の中心はパソコン向けのポータルサイトから、外出先からでも利用できるモバイルポータルサイトに変わっていくだろう。


 韓国では今、大手企業やネット関連企業が社員に米アップルの「iPhone」や韓国サムスン電子製の「OMNIA」といった高機能携帯(スマートフォン)を支給し、インスタントメッセンジャーの活用などによって通信費の節約と業務効率化を同時に図っている。そうなれば当然、スマートフォンで使いやすいポータルサイトがより高い市場シェアを得ることになるだろう。


 グーグルは韓国のパソコン向け市場ではNAVERの壁を越えられなかった。しかし、グーグル製の基本ソフト(OS)「Android(アンドロイド)」を搭載した携帯端末が2010年に発売されれば、その構図も変わるかもしれない。


 グーグルは12月初め、モバイル向けを中心とする新しい検索技術を相次ぎ発表した。携帯のカメラで撮影した画像で情報を検索する「Google Goggles」、ユーザーの位置情報によって検索結果の順位を変える技術、中国語や日本語などに多言語化されつつある音声検索などは、韓国でもネットユーザーの関心を集めた。韓国のポータルサイトも相当な検索技術を持っているが、ここまでくるとグーグルには敵わないかもしれない。



■移り気なユーザー、チャンスはどこにも


 NAVERやDAUMといった韓国の大手ポータルは、数年前から携帯端末向けのサービスも提供しているが、スマートフォンの普及とともに、携帯電話会社も子会社を通じてモバイルポータルの運営をてこ入れし始めた。


 iPhoneを販売する韓国の携帯電話最大手KTは、子会社KTHが運営する携帯ポータル「Paran」のスマートフォン専用サイトをリニューアルした。中小店舗向けに顧客管理ソフトなどをネット経由でモバイル端末に提供するSaaS(サース)にも力を入れている。


 SKテレコムの子会社で2300万人が加入する韓国最大のSNS「サイワールド」を運営するSKコミュニケーションズは、SNSを前面に出したモバイルポータルで勝負している。SKコミュニケーションズのポータルサイト「NATE」は検索シェアが5%台から7%台と、わずかながらも伸びている。







 NAVERも座して待つつもりはない。モバイル向けの地図情報サービスでは、「交通」「自転車」「不動産」「山登り」など目的に応じて異なる地図を提供。個人に焦点を当てて、「何でも揃って使いやすい検索ポータル」というブランドを守ろうとしている。地図からお店情報を検索して無料で電話できるサービスも始めた。自分の電話番号を残すとお店に連絡が届き、その番号宛てに電話がかかってくるのでユーザー側は電話代を払う必要がないという仕組みだ。




 韓国のネットユーザーは新しいもの好きだ。DAUMのSNSから「サイワールド」へ、そしてNAVERのブログへ移動していったように、少しでも便利なサイトがあれば、長年使っていたサイトでも未練なく捨てて他に移っていく。


 検索も同じだ。NAVERが今は圧倒的に強くても、モバイルが前提になればグーグルをはじめDAUM、NATE、PARAN、Yahooなど、どこにユーザーが移っていくかわからない。iPhoneを引き金に始まった新たな競争は、韓国のインターネット産業全体に広がっていきそうだ。

– 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  
[2009年12月14日]
Original Source (NIKKEI NET)
http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx?n=MMIT13000010122009

iPhone登場がキャリア間の競争を一層激化させる

SKテレコム5、KTF3、LGテレコム2。韓国移動通信キャリアのシェアは、ここ数年0.1~0.2%以内での変化しかなく、固着状態が続いている。シェアの固定化は移動通信市場成長の停滞を招き、サービスの質を落とすとして懸念されていた。有線ブロードバンドのKTと移動通信キャリアKTFとの合併による有無線通信サービスの同時加入によるバンドル割引や、料金値下げによるシェアの動きも微動たるものだった。

 それがiPhoneの発売から10日が過ぎ、大きな転機を迎えることになった。韓国通信事業者連合会によると、12月1日~3日の3日間ナンバーポータビリティでキャリアを変更したユーザーが5万6768人。そのうちの57.4%がiPhoneを発売しているKTへ流れ込んだのだ。


 11月に比べ2倍のユーザーがKTに切り替えている。いつもは40%以上がSKテレコムへと流れていたのに。今までは最新端末はSKテレコムが真っ先に出して、それから時差をおいてKT、LGテレコムで発売されていたので、ほしい端末のために長期加入割引を諦めてでもSKテレコムに変える人が多かった。韓国の平均機種変更は1年ほどであるが、実際には20~30歳代のユーザーだと6カ月もしないうちにころころ変えるたり、2台持っている人も少なくない。


 端末補助金競争でナンバーポータビリティを利用する人が急増し、マーケティング費用による赤字が話題になったことは何度もあったが、ナンバーポータビリティのシェアが動いたのはこれが初めてで、韓国では大きなニュースとなっている。


 4700万件もある携帯電話加入件数全体でみると、1位のSKテレコムにとっては痛くもかゆくもない数字ではあるが、クリスマスから始まり2月の卒業式、3月の入学式まで続く春の商戦でiPhoneだけで少なくとも50万台は売れると見込まれているだけに、このまま見過ごすことはできないだろう。


 それに全社員にiPhoneやOMNIAといったスマートフォンを支給する企業も増えている。大手企業やネット企業、出版社では、業務の効率を高め、同時に最新の端末でモバイルライフをいち早く体験させることで、マーケティングや新規ビジネス企画につなげるためスマートフォンを使わせている。ライバル会社が全社員にスマートフォンを買い与えたというニュースが流れると、うちもスマートフォン体制に変えるべきではないかとそわそわしてしまうのだろうか。「全社員にスマートフォン支給」の見出しがついたプレスリリースが毎日のように届いている。KTもビジネスユースを促進するため、iPhoneから利用できる無線LANスポットを、現在の1万3000カ所から2010年には5万カ所に増やすとしている。

SKテレコムはiPhoneの代わりとなるAndroid搭載端末の発売を急ぐ一方で、データ通信もコンテンツ利用料も無料の「フリーゾーン」サービスに力を入れている。月1000円ほどの定額で、「フリーゾーン」にある4000件ほどのコンテンツを通信費や情報利用料を気にせず使えるサービスである。


 続いてクレジットカード会社への出資も決めた。SKテレコムはHANAカードの株49%を取得し、モバイルクレジットカードサービス、モバイルコマース、位置情報を利用したクーポン・広告を強化するとしている。2400万人のSKテレコム加入者と、SKグループのマイレージサービス会員3000万人をターゲットにしたモバイルクレジットカードサービスとの相乗効果を狙う。


 HANAカードの複数のカードをUSIMに保存しておいて、決済する瞬間、ポイントが貯まるとか割引特典があるとか、もっともメリットのあるカードを自動的に選んで決済する。ここが、ただUSIMにカード情報を保存するだけだった既存のモバイルクレジットカードサービスと違うところである。


 プラスチックカードを発行しないのでカード制作や配送の費用を節約できるという点と、クレジットカード代金はSKテレコムの料金と一緒に請求されるので、携帯電話を使うためにもクレジットカード代金を払わねばならず、カード代金の延滞を減らせる効果も期待できる。KTもクレジットカード会社を買収するのではと噂されている。スマートフォンに続いて移動通信キャリアの金融ビジネス競争が韓国をにぎわすだろう。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年12月10日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20091210/1021230/

国中がiPhoneに夢中! スマートフォンの料金値下げ競争が勃発

ついに2009年11月28日、韓国でもiPhoneが発売された。韓国最大の通信会社KTから発売されただけにインパクトは大きい。

 予約販売初日だけで2万人が殺到し、1週間もしないうちに6万5000人がiPhoneを予約した。11月28日には予約者1000人を招待したイベントが開催された。


 韓国で最初にiPhoneを手に入れたのは26歳の男性で、27日から27時間待って第1号になった。KT社長とおそろいのiPhone Tシャツを着て、仲良く手をつないでイベント会場に入場。時の人となった。1年間の無料通話と約1万5000円のiPhone専用スピーカーが贈られた。




KTのキム・ウシク社長(左)と韓国iPhone第1号を手に入れたホ・ジンソクさん


 会場では待ちに待ったiPhoneを受け取り感激するユーザーで奇声歓声の大騒ぎとなった。地上波DMB(韓国のワンセグ)が利用できない、ユーザーがバッテリーを交換できないといったことが指摘されたが、そんなのは全然問題にならない様子だ。日本とは違い、タッチ式でメールを打ち込むのが不便というユーザーはいなかった。


 ブログなどに書き込まれたiPhone自慢をみると、「とにかく大満足!」といったユーザーばかりだった。会社で机の上にiPhoneを置いたら通りがかる人みんなに「どこで買って、いくらだったのか」と質問攻めにされた、女性社員らに囲まれ「見せて! 見せて!」とねだられたなどなど、iPhoneを手に入れてからの急モテぶりを伝えている。


 iPhoneが韓国でここまで注目される理由はやはり豊富なアプリと、2年約定のスマートフォン定額制に加入すると、料金の高いデータ通信ではなく無料でKTの無線LANを利用できるからだ。スマートフォン定額制は月3万5000ウォン(約2600円)から9万5000ウォン(約7200円)で、料金に応じて3GS 16GBまたは3G 8GBの端末を無料でもらえる。


 公式サイトしか利用できずデータ通信料金も高かったため、モバイルインターネットがなかなか普及しなかった韓国。使い放題のパケット定額制はLGテレコムにしかなく、他のキャリアは従量制だったためデータ通信料金のトラブルが絶えず、携帯電話からネットにアクセスするのが怖かったのもある。


これでやっと本当の意味でのスマートフォン生活が始まる。KTの無線LANは全国に1万3000のアクセスポイントがあり、その他にフリースポットもあるので、主な都市ではどこにいてもネットにつながる。iPhone向けのスマートフォン定額制も安くはないが、その代わり無線LANでメッセンジャーやSkypeを使えば携帯電話の通話料を低く抑えられる。


 既にiPodを使って無線LAN経由でメッセンジャーやモバイルVoIPを利用しているユーザーも多い。iPodの便利さに慣れてしまった人達はさらに進化したiPhoneが待ち遠しかったようだ。iPhoneの登場で24時間オンライン状態にしてつぶやきまくる、TwitterのようなモバイルSNSの利用も急増するだろう。


 この夏からキャリアとベンダーが力を入れているアプリ配信サイトのアクセスも急激に伸びた。実際にアプリを購入するユーザーはまだ少ないが、関心は高い。個人もアプリを制作して販売できるマーケットができたことで、キャリアごとに、さらにカテゴリー別にあったマスターCPを通さないと携帯電話向けにモバイルコンテンツをサービスできなかった閉鎖的構造を脱皮し、パソコン向けデジタルコンテンツ市場の10分の1に過ぎなかったモバイルコンテンツ市場も大きな成長が予想される。


 KTはiPhoneを無料で提供するため一人当たり約7万円の端末購入補助金を支給している。その他キャリアは市場シェアを守るため通常新規加入に限って一人当たり2万~3万円ほど支払われていた補助金を同じく7万円以上に増やし、データ通信や基本料も値下げしている。既存加入者の離脱を防ぐため、懸賞イベントや長期加入割引、加入者同士の無料通話時間も増やしている。


 安く買えるのは嬉しいが、iPhoneが販売される直前にサムスン電子や他のメーカーのスマートフォンを購入したユーザーはがっかり。補助金をもらっても3万円はした端末が、数日の差で無料になったからだ。


 一部では、iPhoneの端末そのものの性能は韓国産のスマートフォンより劣る、カメラの画素数も低い、画像も荒い、それなのに何故ここまでiPhoneを持ち上げて騒ぐのかと批判する意見もある。しかしiPhoneは韓国移動通信業界を変えるシンボルのような存在であると評価してもいいだろう。iPhone販売をきっかけに、韓国の移動通信産はネットワーク、コンテンツ、プラットフォーム、デバイス、料金競争、全てにおいて「開放」がテーマとなっている。MVNOで金融、医療、物流など、色んな産業の事業者らが移動通信を利用したサービスを準備している。


 今のところは、ネットブックを持ち歩かなくても自由にインターネットが使えるという解放感だけでもiPhone売れる理由は十分といえそうだ。




(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年12月3日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20091203/1020927/

アダルト番組に転落したネットの個人放送局、原因は仮想貨幣

韓国では2007年にUCC(User Created Contents)といって動画投稿サイトの大ブームが巻き起こった。著作権侵害問題や動画を保存するためのサーバー投資額は膨大なのに広告以外に収益モデルがないといったことから、動画投稿サイトは減り、ポータルサイトのBlogに動画を載せる方法が増えた。その方が検索結果にも反映されやすいし、観てくれる人も多いからだ。

 韓国ではVOD方式の動画投稿だけでなく、超高速ネットワークインフラを活かしたサービスとして、リアルタイム放送であるインターネット個人放送局もかなり人気を集めている。


 インターネット個人放送局ではBJ(Broadcasting Jockey)と呼ばれる人が自分のホームページを持ち、その中に放送、チャット、掲示板などのメニューがある。配信は生放送で、自分のパソコンにWEBカメラをつけて放送する。


 個人放送はいわゆる“見えるラジオ”。BJがパーソナリティになり、音楽を流し、おしゃべりをする。BJの放送を観ながらチャットでリクエストをしたり、自分のエピソードを語ったりして盛り上がる。ドラマの時間になるとカメラで自分のテレビに映るドラマの画面を流しながら放送する人もいる。友達と一緒に家でドラマを観ながら盛り上がる感覚で個人放送を視聴しながら、チャットをする。BJはまとめ役といった役割だ。


 個人放送局の中でも人気なのは野球の中継。野球チームごとにチャンネルがある。テレビやラジオの中継をそのままネットに流すのではなく、BJたちはそれぞれの個人ページから趣向を凝らした放送をする。手書きの図で試合の解説をしたり、方言で中継したり、野球場から無線LANをつかって中継したり、個性を競い合う。同じチームを応援する友達と一緒に野球中継を観ながら盛り上がりたい人にはぴったりのコンテンツである。

個人放送局のBJは、初期の頃は男性が多く、ニュース番組を流したり、受験勉強のための数学を教えたり、自分の才能を活かした放送をすることで、有名になるための足がかりをつかもうとした人が集まった。

 サイトの会員になれば誰でもBJになれるが、放送を見てくれるファンの人数によってベストBJに昇格し、ファンからサイバーマネーをプレゼントされそれを現金に換金できるようになる。


 この換金制度が個人放送局を大きく変えた。今はBJのほとんどが20歳代の女性で、セクシーな服を着てカメラの前に座っている。カメラの前で歌に合わせて踊ったり、食事を取ったり、自分の日常を公開するような感じの放送をしている。視聴者は30~40歳代の男性が多いという。



若い女性の顔が並ぶ、インターネット個人放送局「Afreeca」のToday`s BJ人気ランキング

インターネット新聞が導入した投げ銭方式の原稿料と同じように、ユーザーがユーザーへサイバーマネーをプレゼントできるようになってから、個人放送を利用して男性からサイバーマネーをもらい、お小遣いを稼ぎたい女性がどんどん集まるようになったからだ。今では本業よりも個人放送のサイバーマネーの収入の方が多いBJが登場している。

 個人放送は最大で500人しか同時接続できないが、累積視聴者数450万人を超えた人気BJも登場した。このBJは年収が数千万円にも上るほどの人気ぶりで、個人放送局サイト側がマネージャーになって特別管理をしているほど(BJが儲かれば20%の手数料を取るサイト側も潤うから)。

「Afreeca」というインターネット個人放送局では、ユーザーがBJへ「ビョルプンソン(星風船)」という名前のサイバーマネーをプレゼントできる。買うときは1個100ウォンで、BJが換金するときは1個80ウォンになる。サイト側は1個20ウォンを手数料として徴収するのだ。1回の換金額が25万ウォン(約1万8000円)を超えると、所得税と住民税で4.4%が徴収される。

 ビョルプンソンを送るファンにも特典はある。TOP5になると入場人数が制限されている場合でもいつもで該当放送が観られて、BJとより親密な会話ができる専用掲示板を利用できる。


 ところが、ビョルプンソンは最低500個以上から換金できて、ベストBJとしてある程度ファンを抱えた人でないと換金してもらえない仕組みになっている。さらにビョルプンソンの有効期間は受け取った日から3年。3年以内に500個集められないと、全額サイト側のものになる。つねに新しい個人放送局が生まれては消えていくので、換金されないままのビョルプンソンも膨大な額になるはずだ。


 中にはビョルプンソン500個くれたら服を脱ぐ、というように露骨にサイバーマネーを要求するケースもあり、素人のアダルト放送になりかけている。2008年7月にはBJの女性が素っ裸になるという騒動もあった。運営者側は厳しく取り締まっているというが、サイバーマネーの20%は会社の手数料になるだけに、厳しく取り締まらない方が儲かる。


 日本では女の子のキャラクターと恋愛ごっこができるシミュレーションゲームが人気を集めているようだが、韓国の個人放送はそれを生身の人間とできるのに近い感覚かもしれない。


 サイバーマネーを稼ぐためにどんどん過激化している個人放送。やっぱりお金になるのはアダルトしかないという定説を証明する事例になってしまうのかと思うと残念である。




(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年11月25日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20091124/1020682/