人気アイドルの芸能界追放騒動、書き込みは災いの元?!

アメリカのオバマ大統領が9月8日、バージニア州の高校生達に「フェイスブックに書き込みをする時は注意しなくてはならない。何を書き込もうと自分の未来に影響を与えるだろう」と警告し話題になったことがある。

 同じ日、まさにオバマ大統領の予告通りの問題が韓国で発生した。韓国で絶頂の人気を誇る男性アイドルグループ「2PM」のメンバーの一人が、デビュー前SNSサイトに書き込んだ文章が発端となり、グループを脱退、芸能界から追放されてしまったのだ。


 アメリカで生まれ育った彼はまだ18歳だった2005年、誰一人知り合いのいない韓国で歌手としてデビューするためトレーニングを受けていた。その当時の苦しい心情を、アメリカのSNSサイト「マイスペース」に「韓国なんて嫌いだ」という表現で一言残した。それが4年後、ネットユーザーに見つかりマスコミに報道されてから大問題となった。マスコミは大々的に「韓国卑下発言」という見出しで騒ぎ立てた。それを見た人々は動揺し、「韓国が嫌いならアメリカに帰れ」とバッシングが始まったのだ。そして9月8日、彼は家族のいるシアトルに帰国した。絶頂から奈落へ落ちるのに3日もかからなかった。





SNSサイトでのデビュー前の発言が問題となりグループを脱退した「2PM」のメンバー「ジェボム」のグループ脱退撤回を求めるファン達が新聞に掲載した広告


数日前も、「ここが変だよ日本人」と同じコンセプトのテレビ番組、「美女のおしゃべり」に出演しているドイツ人の女性が、自国で韓国を卑下する内容の本を出版したとして一騒動巻き起こったことがある。しかし、彼女の本は韓国で生活しながら体験した、文化の差による苦しさを表現しただけだった。間違がった翻訳で韓国卑下本を出したと騒いだブロガーの書き込みを、ネット新聞が確認もせず書き写し記事にしたのが問題だった。過去、韓国のテレビによく出演し、「韓国好き」発言で人気を得て大学の教授にまでなったのに、自分の国では韓国の歴史を歪曲して面白おかしく書き立てた本を出版した日本人がいたことから、「もしかして!」と騒がれたが、ドイツ人女性は無罪(!)が判明されテレビ出演も続けている。

このような前例があったからとはいっても、韓国のことを少しでも悪く書くと「韓国卑下」と騒ぎ立てるマスコミに対して、韓国に住んでいる外国人らは「あり得ない」、「怖い」と反応している。「韓国に住んでいるからといって、韓国を好きにならなくてはならないのか?これは人権にもかかわる重要な問題である」といった反発を起きている。


 芸能人の間では、「ネットの魔女狩りがまた始まった」と反発の声も上がっている。一部ネットユーザーの書き込みが世論であるかのように書き写すマスコミ、それを見て興奮しさらに書きたてるネットユーザーによって、何でもないことが大事件として膨れ上がる傾向があるのは確かだ。さらに、一部ネットユーザーの極端な愛国主義こそ問題であるという専門家の指摘もある。


 SNSサイトは知人達とコミュニケーションするための個人的な場ともいえるが、いつでも誰でも見られるという点では公共の場ともいえる。韓国が好きとか嫌いとか、それぐらいは十分、表現の自由として容認できる範囲と思うのだが、トップの座にいたアイドルだっただけに世間の目は厳しかった。


 韓国のネットユーザーの6割以上が自分のブログやSNSサイトを持っていて書き込みをしている。アンケート調査によると、企業の人事担当者32%は、社員採用の際、求職者のブログやSNSサイトをチェックしているという。個人的な感想一言が、数年後どんな問題になるか分からない。損害賠償訴訟を起こされた人もいる。表現の自由もあれば責任もあるということだが、もう少し包容力のある見方をしてもいいではないか。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年9月17日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090916/1018636/

衛星か,地上波か競争激化する携帯端末向けテレビ放送 ─韓国編─

衛星か,地上波か競争激化する携帯端末向けテレビ放送 ─韓国編─


趙 章恩(チョウ・チャンウン)
ITジャーナリスト


 このごろ,地下鉄に乗ると携帯電話機の画面をのぞき込んでほぼ同じタイミングでニヤニヤしたり,深刻になったりしている人たちを頻繁に見かけるようになった。事情を知らない人にとっては異様な光景に映るかもしれないが,地下鉄で「DMB(digital multimedia broadcasting)」を楽しむのは,韓国ではもはや当たり前になっている。DMBには人工衛星を使う「衛星DMB」,地上波を使う「地上波DMB」の2種類がある。いずれも携帯端末向けのテレビ放送で,前者は日本のモバHO!,後者はワンセグに相当するサービスだ。


 韓国では,携帯電話はいつでもどこでも通話ができなければ意味がないと考えられている。このため,地下鉄で携帯電話機をマナーモードに切り替えるどころか,車内でも大声で話している人をよく見かける。同様に,日本と違って衛星DMBや地上波DMBも地下鉄で視聴できる。地下鉄の駅構内の片隅には,韓国の携帯電話事業者であるSK Telecom Co., Ltd.やKT Freetel Co., Ltd.(KTF社),LG TeleCom Ltd.のギャップフィラー(電波中継器)が設置されている。


続きは日経エレクトロニクス(2007年4月16日号)で

子供の安全を守れる社会システムとなるか? ITフル活用のソウル市施策

韓国ソウル市は小学校周辺の監視カメラとセンサーを利用し、子供たちの学校出欠、危険地域への立ち入りなどをチェックして保護者の携帯電話に知らせ、いつでも子供の居場所をソウル市のウェブサイトで確認できる「ユビキタスソウル安全ゾーン」を始める。2009年9月よりソウル市内の2箇所の小学校で600人を対象に実験サービスを開始し、利用方法や活用方案などの標準モデルを制定し、ソウル市25区全域に拡大させる。




「ユビキタスソウル安全ゾーン」のサイト

位置情報確認のために子供にUSIM内蔵携帯電話または位置追跡機能のあるネックレス、腕時計型電子タグを持たせ、学校周辺半径200M以内の位置情報が周期的にSMSで保護者の携帯電話に送信される。子供の位置情報は行政機関と警察も確認できるようにする。

 学校や塾などで個別に子供の出欠を位置情報でチェックし、保護者の携帯電話にメッセージを送信するサービスは提供されてきたが、自治体が乗り出して子供の安否を確認できる位置情報サービスを提供するのは初めてのことである。


 位置情報を利用するため、保護者が同意した場合だけ利用できるようにした。子供が危険な状態と思われる場合は、ソウル総合防災センターまたは警察に連絡し、監視カメラで確認してもらうこともできる。今後サービスをお年寄りや障害を持つ人の安否確認にも利用できるようにする計画である。


教育政策を担当する省庁である教育科学部も、共働きと低所得層の多い地域にある小学校40校を対象に「セイフウェイ・プロジェクト」を始める。指紋認識または電子タグを利用して学校の出欠情報を保護者の携帯電話に送信し、低学年の子供はボランティアが指定の場所まで子供を送り迎えする「登下校お助け制度」も利用できる。教育科学部は安心して子供を外に出せるよう、2010年6月からは全国の小学校で電子タグを利用した位置情報サービスを提供するとしている。


 子供が今どこにいるのか、ちゃんと塾に行っているのか、変な人に連れ去られはしないか、いつでも自分で確認できる位置情報サービスを自治体が提供してくれるとなれば、保護者にとって嬉しいことであろう。一方では、そのためにまた街に監視カメラが増えるとことを、プライベート侵害として嫌がる人もいるだろう。


 しかし、韓国のニュース番組では、連日街の監視カメラのおかげで強盗が捕まった、駐車違反が減ったと報道しているため、個人の肖像権やプライベートを侵害されても、犯罪のない安全な生活を求め監視カメラをもっと増やしてほしいと願う住民も増えている。


 この秋からは路線バスにカメラをつけて、バスを「移動交通違反取締り」に利用するという方案も発表された。マンションでは人件費を節約するという名目で警備員の数を減らし、監視カメラとオートロックに変えている。カメラは動かぬ証拠を残してくれるので、確かにないよりは犯人逮捕にも役立つし予防にもなっている。でもシステムの不具合はいつでも起こりうる。電子タグと監視カメラは万能ではない。決定的な瞬間カメラが動かなくなることだってあるではないか。韓国の有名女優で自殺した故チェ・ジンシルさんのお墓から遺骨がなくなった事件でも監視カメラが役に立たず捜査に苦労したことがあった。


 ユビキタスという魔法の言葉をつけると、すべてのものが生命を持ち、人間のために働いてくれそうな幻想を抱いてしまう。犯罪の被害者になるのも怖いが、「電子タグ依存症」「監視カメラ依存症」になってしまうのも怖い。自分を守るために常に位置情報を発信し、カメラを頭につけて歩く時代になったりして。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年9月9日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090909/1018483/

アナログ放送停止延期に揺れる国内,海外は韓米FTAで対米戦略を強化 ―韓国編―

アナログ放送停止延期に揺れる国内,海外は韓米FTAで対米戦略を強化 ―韓国編―



趙 章恩(チョウ・チャンウン)
ITジャーナリスト


 最近,韓国の家電量販店では,日本と同様,「フルHD」や「1080p」と呼ばれる1920×1080画素のプログレッシブ方式のテレビが,売り場で目立つようになってきた。しかし,こんな時代の先端を行く店頭の様子からは想像し得なかったある決定が,このほど韓国で下された。政府は2007年4月26日,これまで2010年12月31日を期限としていたアナログ放送の停止時期を2年延長すると発表した。


 韓国政府はデジタル放送への完全移行時期を,デジタル方式に対応したテレビ(以下,デジタル・テレビ)の普及率が95%に達する時期と計画していた。それが2004年ごろの予測では2010年末だった。


続きは日経エレクトロニクス(2007年5月21日号)で

生き残りを「創造経営」に懸ける後継者人事に注目 ―韓国Samsung編―

生き残りを「創造経営」に懸ける後継者人事に注目 ―韓国Samsung編―




趙 章恩(チョウ・チャンウン)
ITジャーナリスト


 「2010年からは予測し難い急速な変化が起こるだろう。ここからさらに飛躍して世界の一流企業になるためには,すべてを原点から見直し,伸び伸びと人とは違う発想をする必要がある。ただし,その発想は収益につながるもので,かつ持続可能なものでなければならない」。


 2007年,Samsung Electronics Co., Ltd. 会長の李健煕(イ・ゴンヒ)氏は,「創造経営」と呼ばれる新たな経営スローガンを発表した。単に「良い製品を作る」というレベルを超え,マーケティング,研究開発,デザインのすべてにおいて独創的なアイデアがないと,いずれは競争に負けてしまうというのが同氏からのメッセージである。


続きは日経エレクトロニクス(2007年10月22日号)で

オンライン学習で子どもの教育環境は改善できるか?

IP放送(IPTV)で教育環境の改善を目指すプロジェクトが韓国で始まった。自治体とIPTV事業者が提携し、経済的に貧しく両親が共働きで放課後一人ぼっちで留守番をしている小・中学生を対象に、IPTVのVODや双方向放送を使って無料で課外授業をするというものだ。

 図書館や児童会館の中に「IPTV勉強部屋」を作り、英語・数学・アニメ・映画などのコンテンツを利用できるようにした。ボランティアの先生が機器の操作と子供達に見せる番組を選択する。


 韓国デジタルメディア産業協会がLCDテレビを、IPTV事業者のKTは1年間IPTVを無料で提供し、学習書出版社が教材を提供する。


 韓国の教育熱の高さは海外でもよく知られている。名門大学を卒業しても正社員になるのは一握りしかいないといわれるほどの不況の中、韓国ではますます学閥が重要となっている。


 子供の未来のため、幼児の頃から英才教育をさせ小学校から各種塾に通わせる。しかしそのためにはかなりのお金が必要となる。1980年代までも貧しい田舎の出身の学生が独学でソウル大に主席合格したという感動物語がよくテレビに放映されたものだが、今は教育もお金がないとできない。「私教育」といって学校の教育よりも塾や家庭教師を頼る傾向が強くなったからだ。大学受験のための「私教育」費用は家計負債を増やす深刻な問題となっている。

教育の差は所得の差につながるが、その教育をさせるためにはまたお金がかかる。自然と名門大学に進学する学生は中産層以上の所得がある家庭で育った子供達で、貧困家庭の子供は大人になっても貧困から抜け出せないという悪循環を、IPTVの教育放送を利用して改善してみようとする試しである。

 放送通信委員会の関係者は、「デジタルメディアを活用した教育福祉を実現させ、インターネットで経済的弱者を保護する社会安全ネットワークにしたい」と述べた。自治体は「IPTV勉強部屋によって、優秀な教育コンテンツを利用できる機会がなかった貧しい子供たちの学習能力を高められる」と期待していた。


 「IPTV勉強部屋」は全国300カ所の地域児童センター、情報化村(2001年から推進されている地方の情報化事業で、地域特産品のオンラインショッピングや観光予約などのサービスで地方の所得増進を目指している)にも設置される。


 一方では、義務教育のためではなくIPTV塾のために国の予算を使うことに対する反発もある。学校教育で学習能力を高めるべきなのに、塾に行かないと勉強についていけないということを政府が認め、「私教育」を煽っているという批判もある。さらに、IPTV勉強部屋事業のために国家予算450億ウォン(約37億円)が使われることから、特定事業者のサービスを利用した福祉事業に予算を使いすぎているという批判もある。


 それでも、いつも一人ぼっちで学習意欲がない貧困層の子供達にとって、誰かが自分たちに関心を持っていて、勉強を教えてくれて、他の子供達と同じように最新映画やアニメも見られるようにしてくれるIPTV勉強部屋の存在は、人生を変えられるきっかけになるかもしれない。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年9月2日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090902/1018324/

デジタルサイネージ都市をめざすソウルの実験

薄型ディスプレーと通信ネットワークを使った新しい屋外広告メディアとして注目される「デジタルサイネージ」。韓国でも2006年ごろから「DID(Digital Infomation Device)」と呼ばれ、成長を続けている。今回は首都ソウルでの動向を紹介しよう。(趙章恩)

 ソウル南部にある江南(カンナム)駅前。東京でいえば渋谷のように若者でにぎわう繁華街の約760メートルの大通りに2009年3月、「メディアポール(Media Pole)」と名付けられた多機能型のデジタルサイネージが22本設置された。



■情報検索やメール、無線LAN機能も


 高さ約12.4メートル、幅1.4メートルのメディアポールは、車道に向いている面はLED、歩道に向いている面は液晶パネルになっている。パネルの上部はメディアアートの展示や広告用ディスプレー、下部はタッチパネル式で歩行者向けコンテンツを提供する。メディアポールの最上部には照明と防犯カメラもついていて、安全な街づくりの役割も果たす。ソウル市はここを「U-street」と名付けている。


 メディアポールはコンテンツを一方的に配信するだけでなく、情報検索や画像の送受信、公衆無線LAN通信などの様々な機能を持つ。グルメ情報や交通情報を検索したり、自分の写真を転送して大画面で表示したり、内蔵カメラで写真を撮って友人にメール送信したりと、いろいろな使い方、遊び方ができる。映画の予告編を見てその場でチケットを予約できるサービスもある。




■サムスン電子が世界シェアトップ


 調査会社ディスプレイサーチによると、2009年1~3月のデジタルサイネージ向けの薄型パネル世界シェアは、韓国サムスン電子が26型以上で11.2%と首位。パナソニックをわずかな差で押さえ、3位がNEC、4位が韓国LG電子という順だ。サムスン電子は「モニター、テレビに続いてデジタルサイネージでも世界1位になった。映像ディスプレー分野で最高のブランドになる」と意気込んでいる。


 サムスン電子やLG電子のように韓国を代表する電子企業がデジタルサイネージに積極的になっていることもあるが、韓国では都市計画の1つとしてデジタルサイネージの導入が注目されている。



■ソウルの都市景観づくりの一環


 メディアポールは、ソウル市が08年に「デザイン・ソウル」をキャッチフレーズに始めた都市景観計画の一環だ。「自然と環境」「歴史と文化」「ITと産業」「人間と健康」をテーマに、歩きやすい歩道、自然環境を生かした生態公園づくり、ITインフラを生かした街ナビの整備などを進め、より美しい街づくりに精を出している。


 ソウルの中心である景福宮前の光化門(クァンファムン)には、16車線あった道路を10車線に減らして広場がつくられた。光化門広場は清渓川復元、ソウルの森造成に続く都市再生プロジェクトとして市民を喜ばせている。韓国は60~80年代、「漢江の奇跡」と呼ばれるほどの高度成長を成し遂げたが、一方で首都ソウルは高層マンションだらけの味気ない再開発都市になってしまった。それをITと文化とデザインが中心の知識基盤世界都市にするというのが、デザイン・ソウルの目標である。



■広告から楽しめるコンテンツへ


 メディアポールが登場する数年前から、ディスプレーを利用した広告、デジタルサイネージは存在した。タッチパネル式ディスプレーを使って、ユーザーが自分で触って音を出すという広告、床に企業のロゴ入りサッカーボールの映像を映し、それを蹴って遊べるようにした広告など、ソウル市内では映像技術を駆使したデジタルサイネージが身近になっている。


 メディアポールのプロジェクトはそれらを一歩前進させたものといえる。広告方式を競うハードウエアの競争から、「広告だけど広告に見えない」楽しいコンテンツを流す競争になってきた。


 地下鉄運営会社ソウルメトロは、地下鉄1~4号線の全駅にデジタルサイネージとIP電話を組み合わせた公衆電話を導入する計画を発表している。デザイン・ソウル計画の一環で、タッチパネルの画面から広告・情報検索・メール送信・チケット購入(電子マネーやクレジットカード決済可能)などの機能を利用できる。


 双方向メディアとしてのデジタルサイネージは韓国でも注目度が高く、10~20代をターゲットにしたピザ、製菓、ファミリーレストランなどは、ブランドと顧客をより親密につなげる方法としてデジタルサイネージを利用している。ブランドの歴史やブランドロゴを使ったゲーム・メニュー提案といったイベントも開催している。ビルの外側一面をLEDにしてメディアアートとコラボした広告を流す「パサードギャラリー」も流行っている。





■情報提供料など課題


 一方、こうした取り組みを通じて、デジタルサイネージのビジネスモデルを確立するうえでの課題も浮かび上がってきた。コンテンツ配信をより発展・向上させるソリューションが整っていなければ長続きしないということだ。


 メディアポールのテスト期間であった3~6月は、ニュースや交通情報、グルメガイドなど多彩なコンテンツが提供されていたが、運営が民間会社に委託されてからはいくつかのコンテンツが利用できなくなった。サービスを中断した新聞社やコンテンツ事業者らは、「ソウル市や江南区役所は世界でも珍しい施設をつくったことだけに満足し、コンテンツ使用料のことまでは考えていなかったようだ」と残念そうに語る。


 デジタルサイネージ広告管理ソフトウエア会社であるScalaのアジア総括支社長ギヨム・プル氏は「デジタルサイネージは多様なコンテンツを自由に表現できるのが長所で、動画、写真、テキストなど表現の制限がない。韓国には世界有数のディスプレーメーカーがあり、有無線ブロードバンドインフラが優れている。デジタルサイネージの大きな市場を形成すると確信している」と述べる。


■都市計画とのシナジーが重要


 広告と情報端末兼用の大型デジタルサイネージはソウル各地で見つけられるようになった。日本人観光客が集まる明洞には韓国語・日本語・英語で検索できる観光ガイドと周辺レストランやエステの広告が登場している。


 デパートや大手企業もデザイン・ソウル計画に合わせてITを利用した都市づくりに参加している。屋外広告の標準化と規格化で都市の環境を整備する政策といかにシナジー(相乗効果)を出していくか。美しく、そしてより安全で快適なユビキタス都市を目指して、ソウルは今日も工事中である。



観光ガイドなどを日本語でも表示するデジタルサイネージ



– 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  
[2009年9月2日]
Original Source (NIKKEI NET)
http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx?n=MMIT13000001092009


光明見えてきた韓国版WiMAX,大学生中心に2008年末に40万会員へ

光明見えてきた韓国版WiMAX,大学生中心に2008年末に40万会員へ

from 韓国

趙 章恩(チョウ・チャンウン)
ITジャーナリスト

 最近,韓国ソウル市では「デジタル遊牧民」をよく見掛ける。カフェや公園,電車やバスの中でもノート・パソコンの画面を夢中で見て,インターネットにアクセスしている人たちだ。街中でインターネットというと,日本では携帯電話機が主流だが,韓国ではノート・パソコンやPMP(portable multimedia player)と呼ばれる小型端末が定番になっている。自宅や図書館,オフィスよりも自分の好きな場所で仕事をしたい,宿題をしたいというデジタル遊牧民が街中にあふれている。



続きは日経エレクトロニクス(2008年6月2日号)で

新政権のエレクトロニクス政策発展政策担う「知識経済部」に期待

新政権のエレクトロニクス政策発展政策担う「知識経済部」に期待


from 韓国




趙 章恩(チョウ・チャンウン)
ITジャーナリスト

 2008年6月17~18日,韓国ソウル市で「OECD(経済協力開発機構) IT大臣会議」が開催された。韓国の政府機関は,アジアでは初開催となる同会議を招致したこと,そして韓国がITやエレクトロニクスの強国としてイニシアチブを取り続ける意思があることを内外に示す絶好の機会であるため,会議の準備を優先的に進めてきた。これにより,IT技術や製品の世界での販売力の強化につなげる狙いがあった。


 例えば,韓国で年に数回開催されるIT関連展示会を同会議の付帯イベントとして前倒し,「World IT Show 2008」として同時開催したほどである。


 OECD IT大臣会議には世界42カ国の大臣や政府代表,民間企業の代表者など3000人以上が参加した。韓国Samsung Electronics Co., Ltd.や韓国LG Electronics, Inc.の最新の携帯電話機,韓国KT社のIPTV用セットトップ・ボックスなどが展示され,合計で20万人以上の来場者が訪れた。


続きは日経エレクトロニクス(2008年7月14日号)で

OECD報告書の波紋、韓国の携帯電話利用料値下げ圧迫

経済協力開発機構(OECD)が会員国の情報通信政策と料金をまとめて2年に一度発表している「OECDコミュニケーションアウトルック」が韓国移動通信業界に波紋を巻き起こしている。OECDの料金比較は約款上の標準料金の比較で、通話量別料金を比較している。

 韓国のGDPは会員30カ国の中で22位にすぎないが、移動通信利用料は2007年に比べ14%ほど安くなったものの、通話量が少量(月44分)だと25位、中量(月114分)で19位、多量(月246分)になると15位とかなり高いことが分った。さらに、韓国の家計支出に占める通信費の割合は5.6%で、OECD平均2.45%の2倍以上だった。


 OECDの報告書が発表される直前、韓国消費者保護院も韓国の移動通信通話料は1分当たり0.1443米ドルで、移動通信利用時間や通信環境が似ている15カ国の平均は0.1024米ドルであるとし、韓国の通話料は高すぎるといった報告書を発表していた。


 消費者団体や加入者の間では、標準基本料金(月1万2000ウォン)または標準通話料(10秒18ウォン)のどちらかを値下げするよう要求する動きが強まっている。消費者団体は、移動通信キャリアが料金を値下げしているといいながらも営業利益は毎年伸びていることを指摘している。OECD会員国の中で通話料が最も安い国は、フィンランド、オランダ、スウェーデンで、MVNOが盛んなヨーロッパに集中していたため、第4のキャリアを認可するか、MVNOを始めるか、政府が積極的に競争できる市場環境を作らないといけないのに、事業者の言いなりになっていると不満を持っている。


 所得に比べ料金が高すぎるという論争は、移動通信サービスが始まった頃から変わっていない。何度も繰り返されてきた。ところが料金の認可を担当している政府は、料金値下げは市場に任せるとしながらも、OECD報告書の算定方式には疑問があるとして解明のためのセミナーまで開催した。


 国内外から料金が高すぎると攻撃された移動通信キャリアは、早速反撃に乗り出した。

韓国は音声通話の利用時間が長いため、基本料は高く通話料は安くなるよう割引を適用しているが、OECDは標準料金だけを比較対象にしているため料金が高いように見えるだけというのだ。料金が高いのではなく、通話時間が長いので料金が高くなるのは当たり前ではないかという説明である。キャリア側は、モバイルインターネットが発達しているため音声通話をあまり使わなくなる世界的傾向とは違って、まだ音声通話が中心の韓国と海外の料金を一概に比べてはならないと主張している。韓国の月平均音声通話時間は約313分で、OECD平均をはるかに上回っている。韓国のキャリアの売上の約8割が基本料金と音声通話から生まれているほどだ。

 移動通信市場シェア1位のSKテレコムは標準料金に加入しているユーザーは19%にすぎないので、各国の通信環境を考慮していないこのような料金比較は信頼できないと反発している。割引制度を多様化しているので、標準料金は高くても、そこからあれこれ割引されるので合計額から利用料を割り出すと決して高くないと説明している。しかし消費者側は納得できない様子だ。


 放送通信委員会は消費者団体の意見を受け入れ、ナンバーポータビリティを利用して新規加入したり、2Gから3Gへ機種変更する際にもらえる端末購入補助金制度を見直したり、端末を買い替える代わりに料金を割り引きしてもらえる制度を導入する方案を提案した。一部のユーザーが新機種を安く手に入れる方法としてナンバーポータビリティを繰り返していることから、同じ端末を長く使うユーザーにもメリットがあるようにするためである。キャリア側は端末補助金か料金割引か、どちらかしか提供できないという立場である。


 高いと評価された移動通信料金とは違い、ブロードバンド料金は1秒当たりMbyteに換算するとOCED会員国の中で3番目に安かった。最も安いのは日本で0.07ドル、アメリカ0.25ドル、韓国0.34ドルの順だった。


 通信設備輸出に関しては2007年基準297億8800万ドルでOECD1位、通信設備輸出入による貿易指数も247億4800万ドルで1位を占めた。GDP対比通信設備輸出割合は2.07%で、OECD平均の0.43%を大きく上回った。


 韓国ではOECDや海外シンクタンクの各国比較レポートがマスコミで大きく取り上げられ、韓国が何位に選ばれたのかとても過敏に反応する。内需が小さすぎて輸出に頼って生きていくしかない構造のせいか、海外で韓国がどのように評価されているのか神経を尖らせている。仕方ない部分もあるのだが、OECD報告書に押し倒されるような通信料金値下げはいらない。移動通信サービスは内需向けのサービス産業なのだから、外側よりも内実を充実させてほしい。問題は所得に比べて高い料金なのだから、個人的には数百円の料金の値下げより、料金が高くても文句なく払えるよう雇用安定や最低賃金についてもっと悩んでもらいたいものだ。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年8月26日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090826/1018101/