LGとサムスンがデータセンター向け冷却事業で火花、新たな成長分野を模索

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AI(人工知能)の急速な普及によって、米Amazon.com(アマゾン・ドット・コム)や米Microsoft(マイクロソフト)などのビッグテックは、AIを利用するために必要なインフラであるデータセンターへの投資を拡大している。 

韓国でもSKグループが、米Amazon Web Services(AWS)と2025年6月にパートナーシップを結び、蔚山(うるさん)市に2027年11月まで40万MW規模、2029年2月まで103万MW規模を目標にした、AI特化型のデータセンターを建設する。ここにAWSが入居して「AWS AI Zone」を構築し、アジア太平洋地域のAIハブにする。 

韓国Samsung(サムスン)グループのIT(情報技術)サービス会社であるサムスンSDSは2025年7月、Samsung Electronics(サムスン電子)の亀尾(クミ)市通信設備工場敷地に、SKグループ・AWSのデータセンターより規模が大きい120MW規模のAIデータセンターを建設すると発表した。2027年末の竣工を目標にしており、推定約8兆ウォン(約8000億円)を投資する見込みである。 

データセンターに対する投資が増えたことで、データセンター内部の空調、冷却技術への投資も注目されている。AIデータセンターは大規模なデータを処理して演算するため、使用するCPUとGPUの数が多く、既存のデータセンターよりも電力消費量・発熱量が多くなることから冷却設備の重要度が増す。 

韓国LG電子は2025年7月8日、ソウル市LGサイエンスパーク(LGグループの研究開発拠点)で記者懇談会を開催し、HVAC(Heating・ Ventilation・Air Conditioning;冷暖房空調)ソリューションビジネスの戦略を紹介した。LG電子の代表的なソリューションは建物の内部を冷やす超大型冷房機「Oil-Free Inverter Turbo Chiller」と電子部品の上に冷却水を流して冷やす液体冷却のCDU (Coolant Distribution Unit:冷却水分配装置)である。データセンターに特化したデジタルツインシステムを商用化する予定で、仮想の環境でサーバーの発熱を予測し、AIがHVACソリューションを制御して電力消費を最小限にする。

LG電子が開発した、建物の内部を冷やす超大型冷房機「Oil-Free Inverter Turbo Chiller」

LG電子が開発した、建物の内部を冷やす超大型冷房機「Oil-Free Inverter Turbo Chiller」

(写真:LG電子)

 LG電子は2024年末、Home Appliance & Air Solution事業本部が担当していたHVACソリューションビジネスを独立させ、Eco Solution事業本部を立ち上げた。Eco Solution事業本部に切り分けたのは、HVACをB2B事業の中心にして研究開発・生産・販売・維持補修までのバリューチェーンを構築し、建物管理や維持補修など空調ハードウエア以外の売上を拡大するのが狙いである。HVACで2030年に、年間売上20兆ウォン(約2兆円)を達成するのが目標だ。LG電子のHVACソリューションビジネスは特に、AIデータセンターをターゲットにしている。

 LG電子はグループ会社でキャリアのLGU+が保有するデータセンターを使い、冷却技術の検証を行っている。両社は液浸冷却というサーバーを絶縁性の液体に浸して冷却する方式も開発している。液浸冷却は従来の方式に比べて冷却効率が高く、省電力でサーバーを冷却するため、回転ファンの騒音もなくなるという。韓国ではキャリアやIT会社だけでなく精油会社も液浸冷却開発に投資している。

 LG電子は欧州のHVAC市場も狙っている。2025年6月には、温水関連技術で有名なノルウェーOSO(オソ)の株を100%取得した(買収額は非公開)。さらに、韓国内にしかなかったHVAC開発チームをインド法人でも組織し、経済成長によって冷房設備が普及し始めたインドと周辺国の市場も狙っている。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト) 
(NIKKEI TECH)
 2025. 7. 
-Original column

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00137/