Microsoft、Googleに続いてFacebook首脳が韓国訪問、ザッカーバーグCEOとサムスン電子の7時間に及ぶ会議の内容は? [2013年6月24日]

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2013年6月17日の夜、米Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOが韓国を訪問した。ソウルの金浦空港には、あのザッカーバーグCEOを一目見ようと一般人も集まり、K-POPアイドルの出待ちのような状態になった。


 韓国でのザッカーバーグCEOに対するイメージは、「プログラミングの天才」「ハーバード大学中退でFacebookを設立した秀才CEO」「Facebookを大手企業に売らなかったプライドの高いCEO」「最年少大富豪」といったもので、憧れの存在である。


 ザッカーバーグCEOは18日の午前、朴槿恵(パク・クネ)大統領と面談し、午後にはサムスン電子本社で7時間に及ぶ会議をしてから帰国した。大統領官邸によると、朴大統領とザッカーバーグCEOは、Facebookをプラットフォームにして新しいビジネスができるようにし、韓国政府が力を入れているベンチャー起業促進と、ベンチャーのグローバル進出をサポートする、といった話を交わしたという。


スマホ分野でのサムスンとの関係強化が狙いか?


 サムスン本社を訪問した時には、最新型スマートフォンの「GALAXY S4」(関連記事)を握りしめてやってきた。サムスンのイ・ジェヨン副会長、携帯電話事業部門シン・ジョンギュン社長、イ・ドンジュ副社長など、モバイルビジネス関連の役員とミーティングし、社内レストランで食事もともにした。サムスン会長の長男であるイ・ジェヨン副会長はFacebookに会員登録していないそうで、ザッカーバーグ氏に会ってみてどうだったかと質問する記者らに「FacebookのID持ってないのかってザッカーバーグに怒られた」なんていうエピソードを披露した。


 今回の訪問にはザッカーバーグCEOの他にFacebookのダン・ローズ副社長、スマートフォン向け「Facebook Home」を担当するプロダクトマネージメントディレクターのアダム・モセリ氏、モバイルパートナシップ部門副社長のボーン・スミス氏、同部門ディレクターのアロン・バースタイン氏も一緒だった。このことから、サムスンのスマートフォンにFacebook Homeを搭載して、両社がモバイル広告事業で手を結ぶぼうとしているのではないかと見られた。


 Facebookは台湾HTCと、いわゆるFacebook Phoneの「HTC First」を発売したことがある。あまり売れなかったどころか、発売中止になるかもしれないという噂が流れるほど、失敗作だと酷評された。Facebookはサムスンと手を結んで、Facebook Phoneを復活させたがっているのか。




 


サムスンはFacebook Phoneには慎重姿勢


 サムスン側は、「Facebook側とIT産業について多様な意見を交換し、パートナーシップについて話し合いをした」とコメントしながらも、Facebook Phoneについては「また今度話しましょう」というだけだった。


 2013年に入ってから、米Google共同創業者のラリー・ペイジCEO、米Microsoft創業者のビル・ゲイツ氏も韓国を訪問した。ザッカーバーグ氏と同じように朴大統領と面談し、サムスンの役員らともミーティングしている。


 この2人は朴大統領と、大統領のキャッチフレーズである「創造経済」(クリエイティブな発想が国家競争力につながるとしてソフトウエア産業とベンチャー活性化に重点を置く政策)について語った。サムスンとはスマートフォンのOSについて協議している。


 韓国マスコミは、GoogleやMicrosoft、Facebookは「サムスンが世界最大のスマートフォンメーカーであるために、仲が良いことをアピールするため韓国に来たのではないか」と分析した。


AndroidとTizen、Windowsを巡る思惑が交錯


 サムスンはGoogleのAndroid OSを搭載したスマートフォン「GALAXY Sシリーズ」を世界中でヒットさせた。一方で、米Intelや日本のNTTドコモと共同で「Tizen(タイゼン)」というLinuxベースのOS開発を支援していることから、「サムスンにとっての脱・Androidの日が近づいた」と騒がれている。


 一方のMicrosoftとサムスンのパートナーシップも揺らいでいる。サムスンが販売しているパソコンは全てMicrosoftのWindowsベースのものだが、Windows 8搭載ノートパソコンの売れ行きはぱっとしない。「Windows大好き」の韓国人でさえ、自宅用にはおしゃれで高画質の米Apple製のMacを購入する人が増えている。


 サムスンはGALAXY Sシリーズの前に、「Omnia(オムニア)」というWindowsベースのスマートフォンを販売したことがある。世界的にパソコンからタブレットへ重点を移すパソコンメーカーが増えている中で、Microsoftもまだサムスンとは仲良しパートナーであり、Windowsベースのスマートフォンに注力する可能性もある、ということをアピールしたかったのではないかと見られている。


 サムスンは最近、ソフトウエア人材の確保に乗り出していて、ハードウエアの製造だけではなく、「中身」も作れる企業になろうとしている。韓国ではサムスンとグローバルIT企業との提携だけでなく、サムスン自身がこれからどのように変身するかも注目されている。




趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130624/1095602/

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