[日本と韓国の交差点] “雪爆弾”を“援護射撃”に

1メートルを超える雪で被害続出、冬季五輪の誘致には好機


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韓国の東海岸沿いを中心に、雪が止むことなく降り続けている。ソウルを含めほとんどの地域が氷点下10~15度の寒さの中にある。風がものすごく強いため、体感温度は氷点下20度以下。外を歩く人はみんなスキー場にいるかのような防寒状態である。目だけ外に出して歩いている状態だが、目の周りが裂けそうなほど痛い。

 筆者の住むマンションはベランダの水道が凍破して洗濯機が使えなくなってしまった。仕方なく、洗濯物は手洗いしている。雪がロマンチックに思えなくなると年をとった証拠と言うが、この寒さを体験すれば年齢に関係なく雪が嫌になるかもしれない。暖かい東京に逃げたい。


 2010年の夏は、例年は湿気のない韓国が蒸し暑くなり、記録的な暑さだった。今度は毎日のように雪が降り記録的寒さとなっている。


 2月11日には韓国の最東北地域である江原道で、たった1日で1メートルを超える雪が積もった。雪が凍りタイヤが空回りする国道で立ち往生した車が続出し、バスの乗客400人ほどが道路の上で一晩孤立する事故もあった。山で孤立して凍死した人もいるほどである。


 江原道のあちこちで、住宅や農作物を育てるためのビニールハウスが雪の重みで壊れた。その他の地域でも大雪による被害は広がるばかりである。口蹄疫で家族のように大切に育てた牛をすべて殺処分したばかりの農家が、今度は大雪で被害を受けている。韓国では「これは“暴雪”というより“雪爆弾”」であると嘆いている。



平昌が冬季五輪の誘致運動を展開



 農家の苦しみは残念であるが、雪祭りや山、スキー場は全国から集まった観光客で賑わっている。


 江原道では、今回の雪爆弾が災い転じて福となることを願っている。江原道平昌郡(ピョンチャン郡)は2018年の冬季オリンピック開催地に立候補している。


 平昌と言えば、ドラマ『冬のソナタ』のおかげで名所となった「ドラゴンバレー」をはじめ、韓国でも有数のスキー場が集まっている。山も多く、高度600メートルに位置しているせいか空気が澄んでいて、きらきら輝く雪景色はとても有名だ。冬のソナタに感動して日本、中国、台湾、東南アジアから集まった韓流ファンが、今では平昌の景色に感動して毎年観光に訪れるという。


 江原道はこの記録的な雪が、2月16日から始まるIOCの冬季オリンピック開催候補地調査に良い影響を与えるのではないかと期待している。最近は雪が少なくなり人工雪に頼る冬季オリンピック競技場が増えている中、平昌は冬季オリンピックに適した積雪量を持ち、どんな大雪でも瞬時に除雪を完了できるという優秀な環境をアピールできるチャンスと見たからだ。暴雪の中、3日間除雪を続け、IOC調査団が訪問する競技場への道路をはじめとする主な道路226キロの除雪作業を終えた。


 IOC調査団は2月14日仁川空港に到着し、20日まで平昌に滞在しながら競技場調査、記者会見などを行う予定である。



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By 趙 章恩

2011年2月16日


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110215/218434/

韓国オンラインゲーム大手NCSOFTがプロ野球チーム創設へ

韓国プロ野球の9番目の野球チーム創設が確定した。「リネージュ」、「AION」などのオンラインゲームで日本でも有名なNCSOFTが中心にいる。

 韓国野球委員会はその野球チームの優先交渉者にNCSOFTを選定した。NCSOFTのキム・テクジン代表は、「世の中の人を楽しませたい」という夢を持ち、2年ほど前からプロ野球団の創設を準備してきたという。NCSOFTチームの監督は誰になるのか、人気選手をどれだけ集められるか、毎日のようにそれらを予測する書き込みがネットをにぎわせている。新しい野球チームは今すぐシーズンに参加できるわけではなく、2013年または2014年からリーグに参加することになる。


 プロ野球団を創設するためには100億ウォン(約8億円)の保証金と50億ウォン(約4億円)の加入費、選手確保のための資金200億ウォン(約16億円)という大金が必要であるが、NCSOFTにとってはこれぐらい問題にならない。1998年始まったリネージュが世界で大ヒットし、2009年には売り上げ6347億ウォン(約508億)、営業利益2338億ウォン(約187億円)、2010年は売り上げ7000億ウォン(約560億円)、営業利益2500億ウォン(約200億円)を突破している。オンラインゲームは開発費用はかかるが、サービス開始後は毎月利用料が入り特に多額の資金を必要としないので、利益率が非常に高い。韓国野球委員会が求める野球チーム創設の条件は負債比率200%以下、当期純利益1000億ウォンなどがあり、NCSOFTはすべてその条件をクリアしている。








NCSOFTは日本でも人気の高いリネージュ、AIONなどのオンラインゲームをサービスしているベンチャー老舗。画像はリネージュのWebサイト

オンラインゲーム業界はNCSOFTがプロ野球チームを持つことで、「ゲームのしすぎで過労死」、「暴力的なゲームが多く青少年に悪影響を与える」、「IDハッキング、ゲームアイテムの現金売買で射幸心をあおる」といったマイナスイメージ、社会的偏見を払拭できるチャンスかもしれないと期待する声が高い。NCSOFTがプロ野球チームを創設するからには、ITを使いいろんな角度から野球を楽しませてくれるのではないかという声も高い。

 現在、プロ野球チームはサムスン、ロッテ、LG、SK、DOOSAN、HANWHAなど資産総額が何兆ウォン規模の財閥系大手企業が球団主となっている。韓国では、オンラインゲームやIT企業がプロゲーマーを集めたチームを創設したことはあっても、プロスポーツチームの球団主になるのはこれが初めてのこと。野球チーム運営にはかなりの資金が必要であるが、NCSOFTなら問題ないと見られている。新しい野球チームができることで、WBCやオリンピックで盛り上がった野球ブームに一役買いそうだ。


 韓国のプロ野球人気は年々落ち込むばかり。1982年、プロ野球が始まったばかりのころは、子どもから大人まで野球が大好きで、野球場はいつも超満員だった。今ではサムスンやロッテといった一部の野球チームの試合だけそこそこ人が入るぐらいで、ファン離れが深刻な問題になっていた。NCSOFTが野球チームを持つことで、家でも外でも、入試勉強の合間の娯楽といえばオンラインゲームばかりの小中高生のファンが野球に興味を持ち始め、野球場に足を運んでくれるのではないだろうか。期待したい。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年2月10日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110210/1030141/

[東京留学生活] 札幌行ってきました


2月24日 札幌ビズカフェで講演しました。
韓国のスマートフォン革命ともいわれる社会、企業のイノベーション方式の変化について紹介できて嬉しかったです。


札幌で生まれて初めてジンギスカンを食べました。
次の日、なんだか肌がぷるぷるでつやつやになった気がしました。
豚皮より効果あったかも。
(ソウル麻浦の名物、豚皮をきれいにして、醤油タレに漬けて練炭で焼いたのもおいしいですよ)


最近はですね、


欧米とは違うアジア式のオープンイノベーション


グローバル化とオープンイノベーション


初音ミク式CGMと韓国式CGMの比較


オープンガバメント日韓比較


について悩んでます。


韓国は早々とやってしまって後から修正、日本は検討ばかり。。。このパターンにも変化がみられます。




– BY  趙章恩

Link

http://www.kddi-ri.jp/blog/cho/?p=255

[日本と韓国の交差点] これを機会に韓国は本当に優秀な教育国家を目指せ

オバマ大統領が韓国教師を称賛


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オバマ米大統領が1月25日、一般教書演説で、韓国の教育とインターネット環境の優秀性を称賛する内容の発言をしたことが日韓で大きく取り上げられた。

 オバマ大統領は米国の政府予算緊縮に関して、他の支出は減らしても未来のために教育、ブロードバンドインターネット、高速鉄道、エコなエネルギーといった核心分野の支出は伸ばさないといけない、数学と科学の教師を10万人増やす、といった話をしながら韓国と中国を事例として登場させた。


 「子供の成功に対して、両親の次に影響を与える存在が教師である。韓国では教師が国家の建設者(nation builders)とされている」、「米国も子どもを教育する人たちに対し、尊敬の心を持たなければならない」、「韓国家庭のインターネット接続は米より優れている」などなど、韓国の教師とネットインフラを称賛した。


 日本では、「KOREA」という言葉は7回も登場したのに日本については何も言及しなかったと、わざわざ指摘した新聞もあった。一般市民からすれば何の意味もない比較である。米国に褒められることがそんなにうれしいのだろうか? それに韓国の小中高校の教育は大学入試がすべてある。どういう過程を経たかに関係なく、結果として名門大学に何人入学させたかで学校の評価が決まってしまう。韓国の教育制度は問題だらけだというのに、オバマ大統領に褒められてしまうと、なんだか後ろめたい。



教育科学技術部長も、オバマ発言にためらい



 この演説があった数日後、韓国では、教育科学技術部(韓国の文科省)が「学校教科課程先進化エキスポ」を開催した。主なプログラムは、1)子供の学習負担を軽減しつつ学習効率を高めるために、子供一人ひとりに合わせた教育を行ったモデル学校の授業事例発表、2)教育フォーラム、3)国際セミナー、4)大学入試政策セミナーなど。教師、学生、保護者が参加した。


 このエキスポでオバマ大統領の演説が話題になった。エキスポの開会式に出席した教育科学技術部の長官は、「韓国の経済成長を海外では教育の力であると解釈しているようだ。私教育に奪われた学校の影響力を早く取り戻せるよう努力したい」、「米大統領が見習おうと言った韓国の教師をどうすればうまく生かしていけるか、一緒に悩みましょう」とコメントした。教師も教育も韓国内では叩かれてばかりなのに米に褒められて、困ってしまった、といった雰囲気だった。



「私教育」の負担が重く出産をあきらめる家庭も



 長官がコメントした「私教育」とは、塾やEラーニング、家庭教師といった民間企業による教育のことである。以下の理由から、学校の授業よりも塾の授業を大事にする風土が生まれてしまった。名門大学に入るためには早期教育、英才教育が必要。学校教育は全員に合わせているから自分の子供にとってはレベルが低すぎる。


 日本でもたびたび紹介されているように、韓国では収入の8割ほどを教育費、つまり私教育に注ぎ込む。子供のためにオールインした結果、自分の老後対策を全く取れることができず、子供に依存するしかない構造となっている。ここまでやったのに子供が名門大学に入れず就職もできなかったら、一家が都市貧民になるのは時間の問題である。


 韓国教育開発院が、全国2527世帯を対象に2010年に実施した調査によると、3歳以上の子供の私教育参加率は99.8%であった。74.3%私教育費に負担を感じていて、42%私教育費のために生活費を切り詰めていると答えた。さらに、42.7%は私教育費が負担で出産をあきらめたことがあると答えている。「私教育費負担が出産率低下の主犯である」という項目に95.8%が「イエス」と答えている。私教育費が負担で子供を産まなくなる国が他にもあるだろうか。それでも65%は、経済的余裕があれば私教育費支出を増やしたいとしている。



子供の代わりに親が塾で勉強



 私教育は学校教育の信頼性、教権が地に落ちたことの象徴として大変な問題になった。李明博大統領は就任当時、学校教育をしっかりさせて私教育費を軽減させる、塾に行かなくても良い大学に入れるようにすると公約した。実際に、無料で利用できるインターネット教育放送や放課後学校(放課後、科目ごとに専門講師を呼んだり、教室のIPテレビを使ってEラーニングで授業を受けられるもの)を実施している。塾のない地方に住んでいても、高い参考書が買えなくても、豊富な参考資料を使って勉強できるデジタル教科書の導入なども、着々と進めている。いずれも学校教育を立て直すためのプランだ。


 2009年に行われた国政満足度調査では、最も満足度が高いのは経済で57%、最も低いのが教育で44%であった。ただし、李大統領が導入した教員能力評価制度、放課後学校実施、就職後学資金返済などの政策については満足度が高かった。


 それでも「自分の子供にはもっと良い教育を」、「よりレベルの高い教育を」と目指す保護者は後を絶たない。留学を含め、私教育費の負担はあまり変化がない。どれぐらい熱心かというと、お母さんたちも子供と分担して塾に通う。子供が国語の塾に行っている間、お母さんは数学の塾に行って授業を聞き、その内容を家で子供に教える。こうしたことは当たり前すぎて話題にもならない。


 まだ30代だというのに、同窓会で自分の話ではなく、自分の子供がどれだけ優秀なのかと何時間もしゃべりまくる人が多くてびっくりしてしまう。「子供は親の戦利品」という考え方がいまだに根強く残っている。



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By 趙 章恩

2011年2月2日


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110208/218354/

なんでもやってみよう精神で突き進む韓国「スマート」道

2010年韓国のIT輸出実績は好調だった。輸出が経済を支える韓国だけに、IT輸出の好調は景気を直接左右する。携帯電話、ディスプレイ、半導体の3大品目が柱となり、史上初の1500億ドルを突破。国家輸出総額の約3分の1をITが占めた。2011年はスマートフォンの輸出増加、FTA、新興国の経済成長によるIT製品需要増で10%ほど輸出が伸びると予想される。

 課題となっているのはソフトパワーである。世界のIT市場規模をみると、ITサービス、ソフトウエアが市場の8割ほどを占め、ハードウエアは2割程度。一方、韓国はハードウエアの輸出がほとんどを占め、ソフトウエアは0.7%しかない(IT輸出1500億ドルのうち、ソフトウエアは10億ドル規模)。世界に逆行するIT輸出の内訳を立て直すためにも、ソフトパワーによる「IT融合」で新しい成長分野をつくりださないといけない。


 2011年、韓国政府のキャッチフレーズは「スマート強国コリア建設」となった。大統領も出席した放送通信産業のCEOらが集まった新年会で、政府と業界が一致団結して「IT強国を超えてスマート強国へ」成長していこうという「スマートコリア生態構築」を2011年の戦略として発表した。


 新年会で大統領は、「2011年はスマート時代、若者が中心となる新しい跳躍を期待する」とコメントした。スマートというのはいいが、若者が中心か…。「38度線」(韓国語で、「38歳で部長クラスに昇進できないとリストラされる」という意味)ではなく、「35度線」ぐらいになってしまうのかな。怖い。


 「スマート」で雇用拡大、「スマート」で成長への原動力発掘、「スマート」で中小企業と大手企業の共生、などなど、韓国では政府も研究所もマスコミも「スマート革命」とうたうほど「スマート」を強調して盛り上がっている。ところで、スマートフォンやタブレットPCが普及することで雇用が増えるのだろうか? スマートに効率よくして人を削るのではなく、新しい事業を立ち上げてその分を回す、というのだといいけど。年中リストラが当たり前の韓国だけに、「スマート革命」なんて聞くとまたクビ切りか、とビクッとしてしまう。


韓国政府のシンクタンクでIT戦略や市場動向を調査する韓国情報化振興院は、「2011年ITトレンド展望」として、以下のキーワードを選定した。スマートフォン、モバイルアプリケーション、タブレットPC、ソーシャルビジネス、モバイルオフィス、3D、クラウドコンピューティング、モバイルインターネット、個人情報、グリーンITである。


 海外市場で戦う韓国メーカーに目を向ければ、韓国IT業界の戦略は世界の流れと同じで、CESの影響を大きく受ける。CESで話題になったように、韓国も2011年はタブレットPC、スマートTV、4G、そして2010年に引き続きスマートフォンが中心になると見込まれている。


 スマートにつながる端末とネットワークとコンテンツ配信、というのが2011年のITトレンドということなのだろう。パソコンからスマートフォン、さらにはタブレットPCへと端末利用形態が移行し、各種ネットサービスはアプリケーションとソーシャルメディア、クラウドコンピューティングを経由したものに変わり、どこにいても仕事ができるモバイルオフィスに変わる、といった生活の変化も予想される。


 韓国の携帯電話出荷台数は年間2500万台ほどである。通信事業者の予測を見ると、2011年はその6割の1500万台がスマートフォンになると言うほどまだまだ伸び続ける。2010年が導入期だったとすると、2011年は活用期とも言える。政府のクラウドコンピューティング導入は2010年4月から準備していた統合電算センターが12月にオープンし、グリーンデータセンター、情報公開、情報管理先進化、といった国家戦略が実用段階に入った。


 IT専門紙である『電子新聞』が117社を対象に実施した「2011年CIOサーベイ」でも「スマートフォンとタブレットPCを社内で活用していく」、「目まぐるしく変化するビジネス環境に柔軟に対応するにはスマート技術を使った業務生産性向上が競争力となる」、といった答えが多かった。世界的不況で2010年まではIT技術を使ってとにかく費用を切り詰めることだけに焦点が絞られていたとすると、2011年からは、見通しのきかない時代ではあるものの事業拡大のためにITを活用したい、という雰囲気に変わってきたことが感じられる。

韓国IDCが発表した「2011 Top 10 Predictions」も面白い。


 韓国IT市場は2010年に前年比9.2%の成長率で高成長したが、2011年は4.1%と約半分に落ち込むと予測する。しかしソフトウエア分野の成長と新興国への輸出好調から安定した成長が見込まれるという。


 またクラウドコンピューティングが導入されてから、ビジネスのプロセスをどう統合していくかという部分をサービス化して提供するBusiness Process as a Serviceが注目されると予測した。スマート端末ユーザーの急増によってモバイルブロードバンドネットワークへの投資も増える。個人のスマート端末から企業のネットワークにアクセスして業務を行うことが増えているので、より安全なモバイルネットワーク構築に投資することになる。








ほとんどの企業がノートPC、スマートフォン、タブレットPCに適した顧客センターやアプリケーションを提供する

最も興味深いのは韓国がこれから「Intelligent Economy」 になるという予測である、ITと他産業の融合、融合された技術同士がさらに融合して新しい技術を生み出す。その結果、全産業にITが内在するIntelligent Economyへ進化するという。


 韓国では「Dream society」も注目のキーワードで、「夢を見てもらうことがビジネスになる」としきりに言われている。ITも同じで、顧客が求めているのは世界最先端の技術がなんたらではなくて、自分にとって価値のあるもの、ライフスタイルを豊かにできるかどうかだという分析である。必要だから買うというより、持っているだけで幸せになるから買うという消費で、アイドルグッズを買い占めるファンの気持ちをビジネスに生かすとも言える。


 似たり寄ったりの製品が増えている中、韓国企業が世界市場で力を発揮できているのは、グローバル企業が「ついていけない、無理」と首をふるほど新しいもの好きで文句の多い韓国人を国内で日々相手にしているからかもしれない。最新IT技術で生活を便利にして、夢も与えて、価値のある商品と納得させて、そこそこ値段も安く、じゃないと売れないからね。ま、その文句、クレームが結局企業の製品やサービスを磨き上げてくれるのだけど。


 韓国も日本も、力を入れている分野はほぼ同じ。でも韓国の方が「なんでもやってみよう」精神が強いせいか、はたまた熱血ユーザーが多いせいか、スマートフォンやクラウドコンピューティングによって生活が便利になった、仕事がしやすくなった、と身をもって体験できるような気がする。政府が持つデータベースが次々にオープンAPIで公開され、誰でも自由にそれを使ってアプリケーションを開発できるようにもなった。これからはアプリケーションなのかWebなのかという論争も面白い。








「スマートビル」は企業の売り上げ・税金管理ができるアプリケーション。国税庁ともつながる

というわけで、2011年も韓国IT業界は楽ありゃ苦もある、いつでも夢を持って「まずはなんでもやってみよう」で突き進んでいくだろう。今年も日本のマスコミに「韓国企業に学べ」と持ち上げられるほど元気にがんばってもらいたいものだ。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年2月3日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110203/1029992/

[日本と韓国の交差点] スマートフォンの普及で、韓国人の生活は「TGIF」に変わった

.「Twitterをしない特別な理由があるのか?」

2010年に続いて2011年も、韓国を象徴するキーワードは「スマート」になりそうだ。サムスン経済研究所が実施した、「2011年にヒットしそうな商品」のアンケート調査では、圧倒的な支持で「スマートフォン」が選ばれた。続いて「タブレットPC」、「ソーシャルメディア」もトップ10入りした。この調査には、韓国のネットユーザー1万人以上が参加した。

 子供に「お父さん早く帰って来て!」と言われ、うれしくてお土産まで買って帰ったら、子供が待っていたのはお父さんではなく、お父さんのスマートフォンだった。


 こんな、落ち込むお父さんたちの話をあちこちで聞くようになった。スマートフォンは世代を超えて韓国人を魅了している。


 2009年11月にiPhoneが発売されたのを皮切りに、サムスン電子のGalaxyS、LG電子のOptimusなどが次々と登場した。市場は激しい競争となっている。


 韓国のスマートフォン加入者は、携帯電話キャリアの予想の3倍を超えるスピードで伸びている。キャリア各社は、2010年の加入者数を200万台前後と予想していた。放送通信委員会によると、スマートフォンユーザーが携帯電話加入者に占める割合は、2010年末には15%となった。これが、2011年の1年間に販売される携帯電話では60%に達する見込みだ。この結果、2011年末には、国民3人に1人はスマートフォンを使うことになる。


 韓国のモバイルインターネット利用率は2007年から年平均19%ずつ伸びていたが、2009年から2010年にかけては2倍近い35%も増えた(放送通信委員会)。


 それもそのはず。日本と違って韓国には携帯電話向けの勝手サイト(非公式サイトのこと。インターネットでは、URLを入力するだけでサイトを見られるのが当たり前だが、韓国ではキャリアが契約している公式サイトしか、携帯電話から閲覧することはできなかった)がなかったので、携帯電話からウェブサイトに自由にアクセスすること自体、韓国人にとっては新世界なのだ。スマートフォンの登場でこうした使い方が可能になった。


 スマートフォンを使えば料金の高い3Gデータ通信ではなく、無料のWifiでネットにアクセスできる点もうれしい。韓国ではパケット使い放題サービスが2010年8月に始まったが、それでも料金が高い。既にWifiスポットが充実しているので、パケット定額制といっても日本ほどのインパクトはなかった。



パソコンからスマートフォンへ
韓国系ポータルから世界標準ソーシャルメディアへ



 韓国人の生活はスマートフォンの影響で大きく変わった。「YahooやGoogleは使いづらい」としてNAVER、DAUM、NATE、Cyworldといった韓国企業が提供するサイトばかり好んでいたユーザーたちが、スマートフォンをきかっけにグローバルサービスであるTwitter、Google、Facebookに目を向け始めた。


 この変化を機に、韓国では、2010年以降の韓国人の生活を「TGIF」と表現するようになった。Twitter+Google+iPhone+Facebookの略で、韓国人のネット利用形態を象徴する言葉として使われている。本来は「Thanks God It’s Friday」の略で、週休2日制を象徴する言葉だが、これをもじったものだ。


 韓国で一番人気の検索ポータルサイトはNAVERで、検索では8割近いシェアを持っている。(韓国Metrixの調査、以下同)その次にDAUM、NATEが続き、Googleはいまだに1%前後シェアしかない。ところが、スマートフォンから利用する検索の場合は、NAVERのシェアが5割程度に落ち込み、その代わりGoogleが2割近くを占める。


 韓国では2000年ごろからソーシャルメディアの利用が活発になった。世界のどこよりも早く同窓会サイトが人気を集め、アバターの着せ替えチャット、簡単に個人ホームページをつくって友達とつながれるMINI HOMPYなどが人気を博した。それが今は、スマートフォンから利用しやすいメディアに人がシフトしている。韓国のソーシャルメディアもケータイやスマートフォンからアクセスできるのだが使い方が不便。ケータイやスマートフォンからは表示できないメニューもあるからだ。


 韓国の代表的なソーシャルメディアであるCyworldのページビューは2010年に33%ほど減少した。いっぽう、Facebookユーザーは3125%増加、Twitterのユーザーは1833%増加している。2010年の1月と12月のTweetの数を比較すると3400%も増加していた。



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By 趙 章恩

2011年2月2日


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110131/218220/

KARA解散騒動にみる日韓Twitter大論争

韓国の人気女性グループ「KARA」をご存じだろうか。KARAが大変なことになってしまった。いつも笑顔で健気、テレビで見るよりも実物の方が数万倍かわいいとみんなに言われるKARAが! 苦労を乗り越え「生計型アイドル」(生計のためにこつこつとバラエティー番組にたくさん出演しているアイドル)としてお茶の間の顔になったKARAが、サムチョンファンの希望と癒しのKARAが! …(サムチョンは韓国語で叔父、叔父のように年の離れた男性ファンのことをサムチョンファンという。ちなみに少女時代のサムチョンファンもすごい)

 KARAの契約解除要求は、メンバー本人というより親の代理人である法律事務所と所属事務所の対立となっている様子。メンバーではなく親が出てくるところが韓国らしいといえば韓国らしいのだが、両親のいないアイドルはこういうときになると味方がいないのでとてもかわいそうに思えてしょうがない。


 今のところ日本での活動は、解散せず当分は続けるそうだ。ファンとしては5人それぞれが最も幸せな道を選ぶことを祈るしかないのかもね。


 さて、KARAと事務所とがもめている間、韓国のTwitterではKARAのファンが二分しちゃって大変だった。東方神起(人気の男性グループ。元は5人だったが、3人が離脱し、現在は2人で活動している)の前例もあったことから、これをきっかけに韓国芸能事務所のシステムやアイドルの待遇、収益配分を変えるべきだとか、韓国のアイドルは事務所が本人をスカウトして衣食住を提供してトレーニングさせて、莫大な投資をしてデビューさせているので、日本やほかの国の収益配分システムをそのまま導入するのは難しいといったビジネス面からの意見や主張もある。KARAがかわいそうとか、その反対に、人気を得てから事務所を裏切るアイドルが悪い、という考えもあり騒がしい。


 以前からあるネット掲示板や新聞記事のコメント欄で繰り広げられる討論も熱いが、Twitterが活発になってからの変化もある。芸能関係者が実名でKARAを擁護したり、なぜ韓流を冷え込ませるようなことばかりするのかと批判したりする。有名人本人が声明を発表するかのようにTwitterを利用している面もある。


 ソフトバンクの孫 正義社長兼CEOがTwitterでKARAには解散してほしくないとつぶやいたことが韓国では大々的に報道された(「KARAは良い!解散すべきじゃない」2011年1月23日のつぶやき)。KARAの運命は孫氏の手に委ねられるのか~なんて憶測まで飛ぶほどの大騒ぎになった。


 KARAのヒット曲を作曲したアーティストらもTwitterで「KARAの5人を応援する。KARAは5人でいるときが美しい」と声援を送り、ほかのアイドルたちも「KARAの歌が好き」、「KARAの5人の舞台が見たい」とつぶやいている。


 側近や肉親のTwitterも注目の的で、つぶやいたことがそのまま記事になる。KARA某メンバーの母親が心境を告白するつぶやきを残して火に油を注ぐ結果になった。某メンバーの父親は「日本のファンのTwitterのつぶやきに感動したのでKARAとしての活動は続けさせたい」といった内容でインタビューに答えたことから、「韓国のファンはファンでもないのか」、「日本だけ大事なのか」とサムチョンファンが激怒。日本のファンのつぶやきが解散を止めたけど、無名時代から応援してきた韓国のファンをがっかりさせてしまった。今では解散しようが何をしようがもう気にしないとTwitterで宣言する韓国ファンが続出している。

今回は、日韓でTwitterを経由して同じ話題で盛り上がったのが特徴と言える。日本のファンのつぶやきを翻訳機能で見た韓国人ファンがそれに反応したり、日本のファンがKARA関係者のTwitterアカウントにつぶやきを残したり、ネットの掲示板とはまた違ったリアルタイムの反応が見ることができて面白かった(KARAは苦しんでいるというのに面白いなんて言っては申し訳ないが)。

 こんな騒ぎの真っただ中にTwitter創業者であるエバン・ウィリアムズ氏が訪韓した。訪韓記念なのか、1月19日からはついにTwitterの韓国語版も始まった。韓国のTwitterユーザーは今まで英語版を利用するしかなかったので、慣れるまで時間がかかるという人が結構いた。韓国のインターネット事業者が提供する非公式韓国語版サイトを利用する人もいた。しかしこれからは老若男女、誰でも直感的に気軽に使える。





1月19日にスタートしたTwitter韓国語版

ウィリアムズ氏は記者懇談会で「韓国でTwitterの人気が高いことに感謝している」、「韓国ユーザーのためにTwitterを改善していきたい」、「韓国はIT技術とモバイルデバイスの側面から重要な市場である」といった話をした。

 ポータルサイトのDAUMと提携してTwitterで話題になっているキーワード、有名人のつぶやきをより簡単に確認できるようプラットフォームを拡張、通信事業者のLG U+と提携して携帯電話のショートメッセージ機能を使ってTwitterにつぶやけるようにした。


 まだ不便な点もある。韓国ではTwitterから韓国語を入力して検索すると、あるはずなのに検索結果が出てこない。ハッシュタグに韓国語は使えないようになっているのも不便だ。Twitterでのなりすましを防止する認証制度も、まだ提供されていない。


 2010年の1月と12月を比較すると、韓国のTwitter利用は3400%も増加している(Tweetの数)。ウィリアムズ氏によると、韓国は世界で最も速いスピードでTwitter利用が伸びている国の1つである。韓国で最もフォローされている人のひとりは作家のイ・ウェス氏。1月24日時点で57万5000人を突破している。


 すぐかっと熱くなって「私の話を聞いて聞いて!」と盛り上がる韓国人にとってTwitterは本当に最高の場所。「聞いて聞いて!」とつぶやく人ばかりで聞く耳を持たない人が増えてしまうのは困るが、KARAの次はどんなネタが来るのか、楽しみといえば楽しみだ。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年1月26日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110125/1029809/

[日本と韓国の交差点] 懲罰的授業料を苦に、「天才」は自殺を選んだ

韓国式の人材育成に警告か!?



韓国で最も優秀な理工系の人材が集まる国立大学KAIST(Korea Advanced Institute of Science and Technology)の1年生が「成績が良くない」ことを悲観して自殺した。「これは個人の問題ではない。大学や韓国社会が1人の天才を殺した」として社会問題になっている。

 KAISTと言えば、普通の韓国人にとって天才の中の天才が集まる大学というイメージがある。KAISTを舞台に大学生活の苦悩と青春を描いた人気ドラマもあったほど、手の届かないあこがれの大学である。そういえば、KAISTを舞台にしたドラマでも主人公の友達が自殺するという話があった。。。


 KAISTでは毎年のように成績に悩む学生が自殺している。韓国では成績と自殺はきっても切れない関係なのかもしれない。1989年には「幸せは成績順ではないじゃない」という映画が大ヒットしたほどだ。


 ところが今回の自殺は何かが違う。KAISTの学生たちが「これ以上自殺を増やさないでほしい」と立ち上がった。この自殺をきっかけに学生会を中心に「何が問題なのか」というタイトルで学校側と話し合いを行った。成績が良くなくて、自殺を選択するしかないほどに追い詰められた背景には、韓国式人材養成の限界、「科学技術人材を育てる」というKAIST自体の問題点、果てなく続く競争社会の問題点があるからだ。



実業高校出身初のKAIST入学!



 自殺した1年生の彼は実業高校(工業高校)出身であったが、「ロボット天才」として特別にKAISTに入学できた。小学生のころからロボットを制作する能力に優れていて、高校生になるとロボット世界大会で3位、韓国ロボット大会では大賞を獲得したからだ。KAISTには通常、これまた天才が集まると言われている科学高校の中でも成績上位の学生が入学する。一般高校から入学した学生だと、化学、物理、数学など基礎科目の講義についていけないほどレベルが高いと言われている。


 つい1年前、自殺した彼は「実業高校出身初のKAIST入学!」「ロボット天才がKAIST入学!」とテレビや新聞が大々的に報道していた。「韓国もついに高校の成績ではなく能力で人を評価するようになった」、「時代が変わった」と大騒ぎしていた。



年収の3割に達しかねない懲罰的授業料



 しかしKAISTで、彼が持つロボット制作の能力が生かされることはなかった。KAISTは世界的人材を育てることを目標にしており、ほとんどの講義を英語で行う。彼は英語で行われる数学の授業についていくのが大変で、単位を落とした。彼はよく周りの友達に「(特殊な入学ケースだから)がんばらないといけない」、「私が失敗したら実業高校出身者がKAISTに入学できなくなってしまう」、「英語の講義についていけない」、「勉強が大変」と漏らしていたという。


 KAISTは成績が落ちるとその分高い授業料を払わないといけない。「授業料差等徴収制度」(懲罰的授業料)と呼ばれる制度である。1学期の授業料は約200万ウォンで、他の大学の3分の1程度と安い。しかし、全科目の平均点が3.0以上(4.3満点で)取れなかった場合、0.01点につき6万3000ウォン(2010年基準)を追加で払わないといけない。2.0点以下の場合は最大600万ウォンを払わないといけない規定になっている。


 自殺した彼の場合は成績が2.0点以下だったため、基本授業料約200万ウォンに600万ウォンが追加された。これは1学期の授業料なので、この後も成績が伸びない場合、年間1600万ウォン近い授業料を払うことになる。これは韓国の大学の中でもっとも高い授業料となる。


 韓国統計庁のデータを見ると、都市勤労者の2010年の月平均所得は4人家族で422万9126ウォンである。1人の子供の年間授業料が1600万ウォンとは、払いきれないほど大きな負担になる。


 彼が自殺したのも、授業料請求の通知が届いた直後だったという。マスコミのスポットライトを浴びて、周囲の期待を背負ってKAISTにやってきただけに、懲罰的授業料がどれだけストレスになっていただろうか。


 学校側は、KAIST学生の平均成績は3.0以上、懲罰的授業料の対象になる学生はそれほど多くないという。だが、学生たちの反応は違っていた。Twitterやネットの掲示板には、こんなコメントが並ぶ。


「成績評価の方式そのものに問題がある。公正な評価になってない」
「興味がある講義はいくつもあるけど成績が落ちるのが怖いので、良い成績がもらえそうな科目しか取らなくなった」
「成績重視だから友達付き合いもなくなった。期待していた大学生活とは全然違う」
「私の周りには奨学金をもらう人より懲罰的授業料を払う人の方が多いのはどうして?」
「懲罰的授業料が高すぎて払えず学校を辞めた学生も多い」
「特殊な分野に才能があり潜在能力を見て入学を許可したからには、学校側はそれに合ったケアをしてあげるべきだった」
 不満が爆発している。



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By 趙 章恩

2011年1月26日


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110125/218132/

氷点下15度の大寒波! おサイフも地球も守るためにできること

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今年の韓国の冬はとにかく寒い! 天気予報では毎日「今年最高の寒さ」という言葉が繰り返されている。いったいどこまで寒くなれば気が済むんだ~。ベランダの観葉植物がきれいさっぱり凍死してしまうほどの寒さなのだ。

 日に日に寒さは増して、氷点下15度ぐらいは「そんなもんか」って思えるほどにまでなってしまった。この異常な寒さも地球温暖化のせいだというから、環境保全は大事なんだなって実感したものだ。


 それにこの寒さだと暖房で電気代がすごくかかる。オンドル(床暖房)を暖めるにはボイラーが必要で、家庭のボイラーは電気とガス、または電気と石油でないと動かない。これが実に温かいのだが、実にお金がかかるのだ。エアコンの暖房よりは安いというものの、ボイラーをつけたとたんに電気メーターとガスのメーターがびゅんびゅん回り始める。うちは古いマンションのせいか、玄関ドアの前にあるメーターの回る音が妙に大きくて「私は今電気とガスを使いまくっている」と切実な気持ちにさせてくれるのだ。


 もうずいぶん前から「これからはスマートグリッドの時代」なんて宣伝しているけど、本当に早くスマートグリッドと自家発電設備が商用化されてマンションにもついてほしい。電気代もガス代も節約できる。メーターもスマートメーターに替えて、電気代に心臓がドキドキしない暖房をしてみたい。







ソウル市内でもよく見かけるようになった太陽光発電の街灯


韓国では戦略的にチェジュ島をスマートグリッド実証実験団地にしている。「電気を賢く使うとは何か」を体験できる施設がたくさんあり、観光コースにもなっているほど。チェジュの東海岸地域では実証実験として一般家庭にスマートグリッドを導入していて、風力発電や太陽光発電で自家発電し、家のどこでどれぐらいの電気が使われているのか一目で分かる画面がテレビに映し出される。このため、自然と無駄をなくして省エネしているという。どんなにエアコンを使っても電気代が基本料金だけと自慢する住民のインタビューを見て、本当にうらやましかった。発電装置という初期投資は必要だが、残った電力を貯めて家庭から電力会社に売ることも計画しているというから面白い。


 暖房による電力使用も史上最高値となり、大雪によって停電する地域もあった。この寒さに停電は厳しすぎる。しかし問題なのは企業の停電だ。地方にある産業団地では停電によって工場の稼動が中止、1日で数百億ウォンの損害が発生した。鉄鋼、石油、半導体、自動車など大手工場では停電になったら自家発電を稼動してどこから先に電力を供給するかといった非常電力システムを毎日チェックし、ぴりぴり緊張したムードが漂っているという。製鉄工場などでは韓国電力の要請によって、電力使用ピークタイムになると工場の稼動を1時間ほど中断するほどである。もうすぐお正月というのに、寒波が続く限り電力関係者らはゆっくり休んでいられないだろう。







2010年10月に開催されたLow Carbon Green Expo 2010で、既存テレビと省エネLEDテレビの電力消耗を比較展示しているところ


寒波で電気代が家計を圧迫すると、電気代を節約する省エネ家電がおのずと浮上してくる。中身を自動感知して温度設定を変えて電気代を節約する冷蔵庫とか、短時間でご飯が作れる炊飯器などが人気。余熱で料理ができる圧力鍋もよく売れているという。韓国の冬は牛の骨と肉をじっくり煮込んだ白いスープの「コムタン」が定番なのだが、24時間以上煮込まないといけないのでガス代が相当かかる。圧力鍋があればガス代も料理時間も節約できる。

 外でも使える一人用暖房家電も飛ぶように売れたそうで、スマートフォンがカイロになるというアプリも話題を集めた。端末に悪影響を与える、バッテリーの消耗が激しすぎて利用できない、全然温かくならない、視覚的効果だけ、と不評だったけど。


 夏はものすごく暑く、冬はものすごく寒い極端な天気のおかげで、電気のありがたさが身にしみる今日このごろ。電力不足で問題が起こる前に、スマートグリッドで省エネも実現してゆとりある電力確保を実現させたい。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年1月20日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110120/1029719/

[日本と韓国の交差点] 二兎を追う韓国企業:新規事業の拡大と経営効率の向上

2011年は市場最大規模の投資を計画



韓国では政府も企業も、「今後10年間の持続的成長を考えるとき、2011年は重要な年になる」と強調し、史上最大規模の投資を実施している。加えて、雇用拡大、人材養成や教育拡充など10年後を見据えた成長戦略を次々に発表している。

 大統領官邸である青瓦台は、韓国の2011年を展望するとき「2匹のウサギ」がキーワードであると発表した。5%の経済成長を目指す一方、物価上昇は3%に抑える。雇用を増やしながらも、休暇を楽しめるようにする。先進国と途上国の架け橋になる。青年失業と高齢化社会の両方の対策を取る。FTAを拡大するが投機資本が流れてくるのは防ぐ。こうした国政目標を発表した。


 韓国の主要企業も2011年度事業戦略を発表し、新規事業のための果敢な投資と経営効率の向上という2匹のウサギを狙っている。サムスン、LG、SK、現代自動車の4大グループはそろって、2011年に史上最大規模の投資をすると発表した。「10年後を考える」、「世界市場競争力」、「攻撃的経営」、「人材養成と雇用拡大」が共通テーマになっている。


 韓国ではどの企業も「技術発展の速度がものすごく速くなっているため、今売れている製品が10年後には市場からなくなっているかもしれない」という危機を常に強調し、長期投資の重要性を訴える。韓国が今まで取ってきた「先進国の技術に素早く追いついて、低価格で勝負する」戦略は、中国や新興国が取り始めている。中途半端なままでは生き残れない。今から「未来」競争は始まっている。



3代目への継承が、投資の拡大と人材の教育につながった



 もう一つ、韓国の財閥系大手企業が市場最大の投資に走っているのは、2011年から経営者一家の3世が第一線に立つことも影響しているようだ。最も注目されているサムスングループの場合、3世経営者をサポートしやすいよう、役員も若手に入れ替えている。3世の時代にも企業を存続させ成長を持続させるためにはどうすればいいのか? 答えは、新規事業を発掘するための投資と、ブレインになってくれる人材の確保しかない。


 サムスングループは2011年、前年比18%増の43兆1000億ウォンを設備と研究開発に投資すると発表した。主力事業である半導体や液晶ディスプレイ(LCD)の世界市場支配力を強化するとともに、新規事業への投資を拡大することで未来成長動力を拡充する。年間採用も前年比11%増の2万5000人を予定している。これは同社史上、最大の規模だ。


 LGグループも創業以来最大規模の投資を実施する、前年比11.7%増の21兆ウォンを設備と研究開発に投資すると発表した。サムスンと同じく1)主力事業の市場拡大、2)スピーディーな新規事業発掘、3)積極的な人材確保で世界市場のリーダーになるという目標を掲げている。


 現代自動車は15兆ウォンを投資する。SKグループは具体的な金額は発表していないが「前年より投資も雇用も増やす」としている。サムスンとLGの攻撃的な経営戦略は、ほかの企業にも影響を与えており、この他にも多くの企業が、投資も採用も当初の予定より増やすとしている。新規事業への投資と並んで、新興市場の攻略も重要な戦略の一つである。中近東、南米、アフリカへの進出が、より活発になると見込まれている。



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By 趙 章恩

2011年1月13日


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110112/217894/