韓国大手企業の2006年成績表・サムスンとLGの極端な差はどうして?

12月が年度末の韓国ではちょうど今頃、企業の推定実績発表と人事異動がマスコミを賑わす。朝鮮日報の報道によると、韓国企業ランキング100位までの大手企業の2006年度実績は、売上高が前年比7.07%増加した547兆576億ウォン(注)だが、営業利益と純利益はそれぞれ1.45%減、5.94%減の48兆3757億ウォンと43兆6523億ウォンだった。

 円安の影響から、海外市場でノートパソコンやHDTVなどの家電や自動車は、日本製の方が韓国製より安いという現象が発生した。韓国製品は価格競争力が落ち、輸出への依存度が高い企業は売れるけど儲からないという問題を抱えている。


韓国でも貧富の差は開く


 韓国を代表する自動車メーカーといえば現代自動車だが、不正資金工作・横領問題で会長が逮捕されたことに加えて、組合のリストラ、円・ドル安ウォン高と内外から締め付けられ純利益は32%も減りそうだ。日本市場には、ヨン様をモデルに起用し、韓国の国民車として愛される「ソナタ」を投入したが販売は苦戦し、ネットでは「日本の主婦向けにセダンを売り込むのは日韓の差を認識せずヨン様だけに頼った戦略の間違い」と指摘されてもいた。


 一方で、輸入車を扱う現代自動車の子会社はウォン高から外車の値下げ効果があり、売上高、純利益とも40%ほど成長した。景気が悪いといっても韓国国内での貧富の差は広がっている。実際には余裕資金の多い個人は増えていて高級外車と輸入食材、輸入赤ちゃん用品は飛ぶように売れている。今年のファッションはあまり寒くもないのに毛皮がトレンドだそうで、通勤の満員電車に毛皮で乗り込むOLが増えていて、私としてはくしゃみが止まらなくなるから困るくらいだ。


 大手企業の動向の中でも特に注目されているのは韓国の2大財閥系企業、サムスンとLG。2社の2006年の実績は極端な差が出た。時価総額韓国国内1位のサムスンはまずまずの実績を達成したのに比べ、LGは悪夢の1年というほど実績が落ち、グループ内の中核会社であるLG電子のCEO交代まで断行したほどだ。


 LGは今年グループ全社が大幅の純利益減少となった。主力事業の家電は純利益が54.5%減少した。LG電子製の携帯電話の人気が落ち、前々回紹介した「チョコレート」携帯が唯一の救いとなった。2005年純利益5170億ウォンでお祭り騒ぎだったLGフィリップスはLCDの価格急落で8000億ウォンの赤字、通信キャリアのLGテレコムも純利益11.74%減少、化粧品や洗剤などのLG生活健康は12%減少、LG化学は24.03%減少、持ち株会社のLGも26.49%減少した。


 LGは責任を追及するかたちで大規模な人事異動を断行し、グループ内の代表理事(日本でいうところの代表取締役)8人が新しく入れ替わった。今まで「和」を重視した人事から一変して、徹底した成果主義と未来志向的、グローバル経営強化の3つの原則に沿って行ったと発表した。LG電子の代表理事にはナム・ヨン前LGテレコムの社長が抜擢された。30年間LGに勤めた戦略通と呼ばれる人物で、攻撃的マーケティングでLGテレコムの加入者を増やし雨後の竹の子ように成長させたのが高く評価された。オーナーである会長の秘書室長でもあった人物だ。


 サムスンは営業利益は減ったものの純利益は4.44%増えた8兆ウォンと予想されている。サムスン物産や子会社の純利益も100%以上の成長が見込まれていることから「やっぱりサムスンは危機に強い、賢い企業」と評価されている。毎年年末になるとサムスン電子やキャリアのSKテレコム、LGテレコムは基本給の700~1000%がインセンティブで支給されると報道され、サラリーマン達を憂鬱にさせていたが、今年はどこも大規模なインセンティブは支給されない様子。でもサムスンは会社別の実績に応じて基本給の150%以内で支給し、1月には事業部別の目標を超過した利益を年俸として支給する制度があるため、事業部によっては年俸の50%近い金額をボーナスでもらえる人もいるということだ。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2006年12月26日

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第15回:ペ・ヨンジュン以外の顔ぶれも豪華です! 悪役編


予習してさらにハマる太王四神記

【第十五回】

ペ・ヨンジュン以外の顔ぶれも豪華です! 悪役編






ペ・ヨンジュン演じる主人公のライバルは?



前回の四神に続いて、ドラマ『太王四神記』の主人公・タムドクに対抗する悪役のご紹介です。悪役といっても「悪」というよりは、タムドクに勝る実力の持ち主で、王の座を競争し合うヨン・ホゲを中心としたキャストです。韓国人なら誰もが知っている国民的俳優と言える俳優が、悪役で脇役というのもすごいですよ。


ヨン・ホゲ
高句麗の貴族で、知略と勇猛さを備えたタムドクのライバル。子供時代はタムドクを「王子様」と呼び慕っていた。ヨン・ホゲを王様にしようと母親が王を毒殺しようとしたのがタムドクにばれ、母親は自殺。それをタムドクが殺したと誤解してから、彼を憎むようになり、王の座を狙う。キハを愛しタムドクが王になってからは、当時の唐に亡命し、将軍となってタムドクに脅威を与える人物。
ユン・テヨン(ヨン・ホゲ役)
1974年、10月9日生まれ。父は三星(サムスン)電子の副会長。韓国財界の大物のひとり息子であることから、デビュー当時から何かと話題になりました。2007年2月14日ドラマ『あの緑の草原の上に』で妹役を演じたイム・ユジンと結婚。日本ではネットでよく配信されているドラマ『明朗少女成功記』でおなじみですね。招待客は4000人というものすごい規模の結婚式でした。『太王四神記』の撮影のため新婚旅行はおあずけ状態だそうです。
ユン・テヨンは、アメリカに留学中、どうしても俳優になりたくて帰国。1996年にドラマ『美しい彼女』でデビュー、1999年のドラマ『ワンチョ』で、ドジな「メンバル(裸足)」役で人気を得ました。8年経った今でもユン・テヨン=「メンバル」と記憶している視聴者が多く、新聞にも「メンバル結婚する!」と書いてあったぐらい強烈な印象を残しました。『ワンチョ』では、『太王四神記』のチュムチ役のパク・サンミョンと共演してます。元祖モムチャン(筋肉質な鍛えられた体つき)でもあり、刑事役がとても似合う男性的な俳優です。


ファチョン(火天会)の首長
虎族の後継で、四神の力を妨害しようとする牽制勢力であるファチョンの首長。タムドクとヨン・ホゲが生まれたジュシンの星が輝いた夜に目を覚ます四神の力を封印した神物を狙って、朱雀の神物を持つキハとスジニの家を襲い、キハを連れてきて育てる。ヨン・ホゲをジュシンの王であると勘違いし、キハとホゲを近づかせようと宮の神女にさせる。ヨン・ホゲの父、ヨン・ガリョと協力しタムドクに対抗する。
チェ・ミンス(ファチョンの首長役)
1962年、5月1日生まれ。父は60年代に一世を風靡した俳優チェ・ムリョン。いわゆる2世俳優ですが、幼い頃に両親が離婚したため、父の影響ではなく、自力で俳優として大成功しました。
韓国最高のカリスマ俳優といっても過言ではないほど、芸能界の後輩から慕われている。1992年ホームドラマでデビュー、1995年『砂時計』で大ブレイクしました。『砂時計』では、激動の時代だった70~80年代の民主化運動の荒波に揉まれながら、愛する女性のために政治の裏世界に巻き込まれ、親友だった検事により死刑になるテス役を演じました。ちなみに検事のウソク役は、『太王四神記』でヨン・ガリョ役を演じるパク・サンウォンです。
このドラマの監督と作家が、『太王四神記』のキム・ジョンハク監督と作家のソン・ジナです。『砂時計』の縁があってか、キム・ジョンハク監督とチェ・ミンスは大の仲良しだそうです。ミスコリア大会のプレゼンターとして出演した時に、カナダ代表だったガン・ジュウンと出会いその場でプロポーズ! おしどり夫婦として有名です。ジャッキー・チェンの映画『THE MYTH 神話』には将軍役で特別出演、1997年に公開された映画『インシャラ』ではイ・ヨンエとも共演しました。剣道とバイク好きで、キザなセリフがとても似合うステキな俳優です。


ヨン・ガリョ
ヨン・ホゲの父で高句麗貴族会議の最高指導者。ファチョンの力を借りて息子であるホゲを高句麗の王にさせるためタムドクの王位を脅威する人物。知略家で冷静な人物。
パク・サンウォン(ヨン・ガリョ役)
1959年、4月5日生まれ。ドラマ『砂時計』で、チェ・ミンスの親友でありながら、対抗する検事になる役で有名になりました。ドラマではよく検事やまじめでやさしい家庭的な夫、誠実で熱心で心優しいサラリーマン役などを演じているせいか、信頼できる人物のイメージが強く、CMモデルとして大人気。ルポ番組や教養番組の司会も務めました。雑誌のアンケート調査では、10年以上も「結婚したい男性」、「婿にしたい男性」として上位にランクされてます。





『太王四神記』は「韓国を代表する大作ドラマ」



どうですか? 『太王四神記』を「ヨン様が出演するドラマ」と言うだけでは、もったいなくありませんか? 韓国では「ペ・ヨンジュンが主人公のドラマ」だから注目されましたが、フタをあけてみると、これは「韓国を代表する大作ドラマ」であると言われ、視聴率がどんどん上昇してます。あの有名なドラマ『砂時計』の黄金コンビ、キム・ジョンハク監督と作家のソン・ジナの作品でもあり、韓国の名俳優が勢揃いしてますからね。それに新人達の活躍も期待大です。


キム・ジョンハク監督の出世作ともいえる『砂時計』は、主人公の愛と友情を中心に、韓国現代史の裏を描いた作品。当時は、ソウルと首都圏でしか放送していなかったSBS(ソウル放送)で放映されたにも関わらず、64.5%の最高視聴率を記録。放映時間になれば道に人影がなくなるため「帰宅時計」と呼ばれ、社会現象にまでなったドラマです。週4回放映という、破格の編成でも話題になりました。『太王四神記』を観る前に『砂時計』を楽しみ、キム・ジョンハク監督のスタイルにハマってみるのもいいですね。


回を追うごとに、ますますハマりそうな『太王四神記』。今年は、『太王四神記』とそのロケ地めぐりで、忘れられない年になりそうです。

   – BY  趙章恩

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第14回:ペ・ヨンジュン以外の顔ぶれも豪華です! 四神編


予習してさらにハマる太王四神記

【第十四回】

ペ・ヨンジュン以外の顔ぶれも豪華です! 四神編






史上最強の豪華キャスティング



ドラマ『太王四神記』の主人公、タムドク役を演じるペ・ヨンジュンについてのニュースは、韓国より日本のほうが詳しく報道されているほどなので、いろいろと情報は入ってくるかと思いますが、その他のキャストについては、これまで韓国でもあまり情報がなく、誰がどんな役を演じるのかなどについて、放映が決まってからやっと公開されたほどでした。


『太王四神記』の主人公・タムドクの師匠のような役のヒョンゴは、当初チョン・ジニョンが演じる予定でしたが、スケジュールが合わず、演劇俳優のオ・グァンロクに変更されました。しかし、7月に出た『太王四神記』関連記事にさえ、チョン・ジニョンが出演すると書かれていたのです。それほど去年の制作発表記者会見以降、キャスティングや撮影状況について公式なコメントがなく、途切れ途切れに漏れてくる情報を収集しての報道だったので、混乱があったようです。


『太王四神記』ではペ・ヨンジュンばかり注目されてますが、そのほかのキャストも韓国を代表する俳優が勢揃いし、史上最強の豪華キャスティングだと騒がれています。実際、ドラマが放映されてからは、これは「ヨン様ドラマの代表作」ではなく、「韓国ドラマの代表作」になるな! と感動したほど、キャスティングが最高なんです。今回は、今まで謎に包まれていたペ・ヨンジュン以外の出演俳優について、詳しくご紹介しましょう。





物語の核となる登場人物をご紹介!



主人公のタムドクを支える「四神」は、高句麗時代の壁画からヒントを得たものです。南を守る「朱雀」の生まれ変わりはスジニ、北を守る「玄武」の生まれ変わりはヒョンゴ、西を守る「白虎」の生まれ変わりはチュムチ、東を守る「青龍」の生まれ変わりはチョロ……この4人が「四神」です。ドラマの中で朱雀は、火、玄武は水、白虎は鉄、青龍は木の神という設定になっています。


一方、四神に対抗する悪役は、ジュシン(肅愼、元々高句麗の先祖が住んでいた中国まで及ぶ広闊な領土)の王の座をめぐってタムドクとライバル関係にあるヨンホゲとその父のヨンガリョ、タムドクの初恋の相手・キハを育てたデファチョンフェ(大和天会)の首長の3人。この3人については、次回にご紹介します。それでは、物語の中の「四神」を中心に、それぞれの役を演じる俳優たちのプロフィールをご紹介します。


スジニ
朱雀で南を守る神。前世ではライバルで恋敵だったカジンの姉妹として生まれ変わり、タムドクを間にした三角関係になる。
イ・ジア(スジニ役)
1981年生まれ。ヨン様と同じBOF所属の新人女優。30回以上オーディションを繰り返した結果、『太王四神記』にキャスティングされた幸運の持ち主です。グラフィックデザインを専攻した美大生で、英語もペラペラ。演技は初めてという彼女ですが、素直で淡々としているところがスジニらしいということで、監督の目にとまったそうです。自分らしい芸術世界を具現したいという夢もあり、俳優として成功したいという欲もある新人です。監督はイ・ジアを評して「シム・ウンハの美貌とコ・ヒョンジョンの堂々とした姿の両方を持つ俳優」、「台本のキャラクターをよく理解する明晰な頭脳の持ち主であることも、破格のキャスティングの理由」とベタ惚れ。


キハ
タムドクの初恋の相手で親友、クールで理知的な女性。スジニの生き別れの姉で、タムドクの初恋の相手でもあるキハは、スジニと四神のひとつである朱雀の運命を分かち合いながらも、タムドクを間にした三角関係に。育ての親同士がライバル関係でもある。
ムン・ソリ(キハ役)
1974年7月2日生まれ。役作りが素晴らしい映画女優として名声が高く、『太王四神記』が初めてのドラマ出演。デビューは1999年映画「ペパーミント・キャンディー」、韓国映画業界キャスティング候補1位という名声を手に入れたのは、指折りの演技派女優みんなが断ったという、重症脳性麻痺の女性役に挑んだ映画「オアシス」から。
大学では教育学を専攻し教員資格を取得。労働問題に興味を持ち学生運動にも熱心だったそうですよ。女優になってからも韓国映画業界の成長のため、スクリーンクォーター縮小反対デモの先頭に立ったり、社会に貢献できることに関心を持っている人です。2006年12月には、同じ大学出身で奇抜なアイデアがてんこ盛りの映画を作ることで有名な映画監督チャン・ジュンファンと秘密の電撃結婚。ファンはもちろん、同僚である俳優達をも驚かせました。
今後は、ハンドボール映画の撮影も控えています。2004年、アテネオリンピックで銀メダルに輝く闘魂を見せた韓国女子ハンドボール国家代表選手の感動物語で、「人気女優が勢ぞろい!」と制作前から注目されています。


チュムチ
没落した貴族の生き残り。物凄い力持ちで、斧を自由に操る。ちゃらんぽらんな性格に見えるけれど、タムドクの人柄に惚れて勇名な部下となる。
パク・ソンウン(チュムチ役)
1973年1月9日生まれ。1997年映画「ナンバー3」でデビュー。長年、暴力団や殺し屋といった悪役ばかり演じたためか、クセのある助演俳優という印象が強い。187cmもある長身で、アクションスクール1期生でもあり、スタントマンを使わないアクション演技が得意。下積み生活が長かったぶん、演技に対する情熱は人一倍。ドラマ「幸せな女」、映画「ミスターソクラテス」、「ひまわり」、「反則王」、「女、ジョンへ」などに出演。大学では法学を専攻したものの、「歳をとっても幸せでいられるか?」と悩んだ末に俳優へと転身、公務員だった父の反対を乗り越えて、舞台俳優を経て映画デビューしました。


ヒョンゴ
タムドクの師匠ともいえる人物で、高句麗が建国された時から大王となる人物を求め続け、何百年も生まれ変わり、ついにタムドクを見つける。タムドクが大王になるよう、手を尽くして彼を助ける。
オ・グァンロク(ヒョンゴ役)
1962年8月28日生まれ。低音のボイスでゆっくりゆっくり喋るのが特徴で、一度見ると忘れられないインパクトの強い俳優。映画「親切なクムジャさん」、「私たちの幸せな時間」に出演しました。短い出番でも彼を記憶している観客が多いのも、その素敵な声のせいかも。演劇や映画がメインで、初めてのドラマ出演はハン・ガイン、ヤン・ドングン主演の「ドクター・ケン」。ちょっと変わった病院の院長さんを演じて、知られるようになりました。『太王四神記』が2度目のドラマ出演です。


チョロ
百済の貴族だが、青龍の力を封印した神物を心臓に差し込んでいるため怪物のようになり、仮面で顔隠している。スジニに恋をする。
イ・フィリップ(チョロ役)
1981年5月26日生まれ。『太王四神記』がデビュー作の新人で、詳しいプロフィールは公開されていません。


個性派の俳優がそろった『太王四神記』、日本での放映が楽しみですね!

   – BY  趙章恩

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第13回:韓国ファンも期待大! チェジュ野外セットはいつも満員御礼


予習してさらにハマる太王四神記

【第十三回】

韓国ファンも期待大! チェジュ野外セットはいつも満員御礼






9月19日、ついに始まった『太王四神記』



当初、5月から放映予定だったペ・ヨンジュン主演のドラマ『太王四神記』が、韓国MBCで9月10日のスペシャル放送を皮切りに、3話連続放映され、9月19日からは毎週水・木曜日の夜9時55分から放映されるようになりました。3月から何度も放映の延期が発表され、これ以上延期すると放映できなくなるという説が流れる中、キム・ジョンハク監督が異例の放映延期謝罪記者会見を開いたり、MBCのドラマ局長が「ファンタジー時代劇のため、コンピューターグラフィック作業にとても時間がかかるので、完成度を高めるためにはもう少しが時間ほしい」などと釈明に乗り出すなど、紆余曲折がありました。当初SBSで放映される予定がMBCになったり、世界90ヶ国同時放映の予定が韓国で先行放映となったりもしましたが、とにかく放映が始まり、首を長くして待っていたかいがありました!


430億ウォン以上の制作費をかけた超大型ドラマなので、オーディオもコンピューターグラフィックも手が抜けないし、完成度を高めるためには放映時期を延期するしかなかったというのも納得です。2003年に企画され、2006年3月から撮影開始、済州(チェジュ)の野外セット場も完成しましたが、撮影内容は秘密にされていたため、放映開始が決まるまでキャスティング情報もマスコミによって全部違うほどでした。出演しない俳優の名前が出ていたり、ヨン様と重要な関係になる新人女優の顔すら放映間直になってから公開されたほどです。撮影状況や具体的なストーリーが、これほど見えてこなかった韓国ドラマも珍しいです。





早くも人気爆発! グッズも品切れに!



予告スペシャルでは、スタッフ達が「キム・ジョンハク監督は、演出に関してはとてもしつこい人」、「撮影現場にいた人でさえ、目を見開いてしまうほどすごい映像美!」と証言しているように、確かに手が込んだ映像となっています。


韓国では、連続ドラマは週2回放映されます。日本は週1回なので、韓国の連続ドラマのほうがストーリーの展開が速く、よりハマることができます。また韓国では、ドラマの途中にCMが入らないため、1話分が60~70分と日本より若干長いので、日本で放映されるときは、違った編集になっているかもしれませんね。それとも日本ではNHKで放映される予定なので、同じくCMなし、同じ編集になるんでしょうか。日韓の見比べも面白そうですね。このコラムでは韓国版『太王四神記』の感想も細かく報告する予定ですので、お楽しみに~。


放送が始まった『太王四神記』、当初は100%放送前の制作を目指していましたが、まだ韓国のあちこちで撮影は続いています。放映前からロケ地である全羅南道(チョルラナムド)羅州(ナジュ)と済州(チェジュ)の猫山峰(ミョサンボン)野外セット場は、待ち焦がれたファンでごった返し、今日はどんな撮影をしていたかをブログで報告しあっているほどなんですよ。ネットで『太王四神記』を検索すると、ブログにポスティングされた野外セット場関連書き込みがずらっと登場します。


また韓国では、『風の国』という漫画が『太王四神記』のストーリと似ていることから、「これが原作なのでは?」と、予習のために漫画を読み始めたファンも増えています。三国時代や高句麗っぽいモチーフのアクセサリーやTシャツが人気で、その中でも『太王四神記』にも登場する黒い鳥「三足烏」(詳しくは第10回:『太王四神記』の紋章になった「三足烏」の秘密を参照ください)のネックレスやリング、Tシャツはハンドメイドのため、生産が追いつかずオンラインショッピングモールですぐ品切れになるほどです。





「三韓志テーマパーク」はすでに100万人以上が訪問



「羅州三韓志(ナジュサムハンジ)テーマパーク」と名づけられた全羅南道羅州(ナジュ)のセット場。実はここは、ドラマ『朱蒙(チュモン)』の野外セットだったところをテーマパークにしたもの。同じく高句麗を背景にしている『太王四神記』でも利用することになったのです。週末には日本からの訪問客だけで100人以上、韓国やアジアから集まる観光客を含めると、1万人にも及ぶ訪問客で大変な賑わいをみせています。2006年7月から2007年3月までに、有料で入場した訪問客は100万人を突破したほどです。『朱蒙』の人気のおかげともいえますが、今は何と言っても『太王四神記』! 早朝から撮影チームをぴったりマークして移動し、羅州市内で何日も滞在する熱血ファンが増えているため、羅州市内の景気までもよくなっているとか。ヨン様の映画『四月の雪』のロケ地だった三陟(サムチョク)もすごかったですよね。ソウルからバスで4時間30分、国内線も列車も通らない東海岸の漁村が日本人観光客でごった返し、あとから韓国でもそのきれいな風景や珍しい洞窟が有名になり、夏の避暑地として脚光を浴びています。


「三韓志テーマパーク」は、4万5千坪の敷地に180億ウォンの費用をかけた大規模なセット場らしく、訪問する人はみんな、入口から「うわ~」と大歓声を上げます。地元のおばさんは「ゴミ山だったところにあんなにきれいなセットが建つなんて、想像もしなかったわ~」と感激していましたね。


お城や貴族の家、城壁などと一緒に、周辺には川も流れ、きれいなお花畑もあります。ひとつひとつ眺めて写真も撮って……などとやっていると、あっという間に2時間以上は過ぎてしまいます。このセット場が『太王四神記』ではどのように使われるのか、想像しながら歩いてみるのもいいですね。2006年を騒がせた化け物ドラマ『朱蒙』を1話でも観てから訪問すると、また格別な体験となるでしょう。「三韓志テーマパーク」は、羅州市の経済発展に貢献した業績が認められ、2007年第2回大韓民国スポーツレジャー文化大賞で「レジャー文化産業テーマパーク部門大賞」を受賞したほどの人気スポットとなりました。


■入場時間 9:30~18:00


■入場料
・大人(19歳以上)3000W
・青少年(13~18歳)2500W
・子供(6~12歳)1000W


ソウルからの所要時間は、KTXを利用した場合はトータルで4時間30分ほど、国内線を利用した場合は、3時間ほど。ソウル金浦(キンポ)空港から国内線で光州(クァンジュ)まで、または龍山(ヨンサン)駅からKTXに乗って光州駅または羅州駅に下車、光州駅または羅州市外バスターミナルから「180-1」番バスに乗ります(国内線は55分、KTXは2時間50分)。


光州から羅州までは約40分、羅州からテーマパークまでは30分ほどかかります。でも気をつけてください。180-1番バスの中でも中布(ジュンポ 중포)行きのバスに乗ってください。同じ180-1番でも路線が違うバスがあるので乗る前に必ず「サムハンジテーマパークガヨ?」(「ガヨ」は「~に行きますか?」の意味)と訊いてみましょう。羅州は梨とコムタン(牛のしっぽの骨と肉をじっくり煮込んだ白いスープ)の特産地でもあります。これも忘れずに楽しんできてくださいね。


『太王四神記』の本拠点ともいえる済州の猫山峰セット場に集まる韓国ファンの反応も、次回お伝えしましょう。





  • 今や人気スポットとなった三漢志テーマパーク。











  • 三漢志テーマパークの横を流れる栄山江(ヨンサンガン)は、長さ115.5キロメートル、面積3371平方キロメートルの韓国4大江のひとつ。


       – BY  趙章恩

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韓国の携帯電話はスリム化競争も激化

サムスン電子はマジックシルバーのほかにも、自慢の薄さ6.9mmで200万画素カメラ付き携帯ウルトラエディッション6.9(SPH-V9900)、1000万画素携帯(SCH-B600)、8GBハードディスク携帯(SCH-B570)を発表。世界をあっと驚かせる新技術の携帯を続々登場させる。サムスンとLG電子は「年間発売する新機種の数を減らし、その分じっくり開発したプレミアム携帯を披露したい」と話している。

 ウルトラエディッション6.9は海外で先に発売されたモデルで月100万台販売というすごい勢いで売れている。6.9のほかにマジックシルバー同様マグネシューム素材の9.9(SCH-V900)、300万画素カメラ付き、地上波DMBに対応した12.9(SCH-B630)も世界市場に続いてこの秋から韓国で発売された。12.9は地上波DMB番組時間アラーム、録画、キャプチャーなどモバイル放送を最大限楽しめる機能がついている。サムスンは薄さ5.0 mmまで既に開発したと発表しているので、紙切れのような携帯が出るかも、と期待してしまう。






サムスン電子のウルトラエディッション6.9



 ナンバーポータビリティーの影響から特定のキャリアでしか加入できない携帯も増えている。特に韓国のNTTドコモともいわれる最大手SKテレコムは「Tスタイル」というシリーズでSKテレコム加入者だけが購入できるデザイン携帯を発売している。モトローラの衛星DMB携帯モトビュー(MS800)とウルトラエディッション9.9(SCH-V900)の2種類が対象となり、ほかのキャリアからは販売されない。ウルトラエディッション6.9はKTF専用で(品番SCHはSKT、SPHはKTF)、SKテレコムからは衛星DMBが追加され8.4mmになったSCH-B510が発売された。


2007年は3.5G携帯が続々と登場する


 2007年の韓国携帯電話市場は依然とスリム競争が続き、3.5GのHSDPAやWCDMA、モバイルWiMAXであるWibro搭載で高速インターネットが使える端末が続々発売されそうだ。特にWCDMA専用携帯は20種類ほど発売される予定なので、今のWCDMA/CDMAデュアル方式に比べぐっと端末の値段が安くなりそう。


 HSDPA携帯は既にサムスンから世界初の2006年5月に発売されているが、加入者は11万人程度に過ぎない。値段の高さもあるが、携帯電話から高速インターネットを使わなくても街中にただで使えるパソコンが転がっていることも影響している。韓国では全国郵便局、市役所、区役所、地下鉄駅構内、ファーストフード店などに無料でネットが使えるパソコンがあり、誰でも自由に使える。そのため、携帯電話から高い料金を出してまでネットを使いたいと思う需要がまだ少ない。しかし、HSDPAの全国カバレッジが完了すれば、利用形態も変わるかもしれない。


 HSDPAはデジカメにも搭載されるらしく、来年からはデジカメで撮った高画質写真や動画をSNSや電子額縁に直送信、なんてこともできそう。電子額縁はSKテレコムやKTが提供しているサービスで、写真を電子額縁のアドレスに転送すると、部屋の中にある額縁に写真が登場するというものである。


 というわけで、来年の携帯電話はスリム、デザイン、DMBに速度の競争も加わることになりそうだ。値段の安さを競争してくれるといいんだけどな~


※写真の出典はサムスン電子のホームページ

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2006年12月19日

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この冬、韓国携帯電話は愛称と素材で勝負

「チョコレートはいかがですか?」「それよりは光り物でシャインがいいかな」…

 これはデパ地下ではなく、韓国携帯ショップでの会話。日本だと「903i出ました!」とかW43、W44など品番で紹介するのが当たり前だが、韓国の携帯は愛称で呼ばれるのが人気の証といわれている。


 去年までは広告モデルの名前をとって「ジョンジヒョンフォン」、「クォンサンウフォン」などとユーザーの間で自然に覚えやすい愛称がつけられたが、今年の春モトローラの「レイザーフォン」が大当たりしてからは、メーカー側が発売段階から「チョコレート」「マジックシルバー」「ウルトラエディッション」「シャイン」など端末の特徴をとった愛称を打ち出している。もちろんそれぞれ品番もあり、サムスン電子のマジックシルバーはSCH-B500、LG電子のチョコレートはKV-5900だが、誰も「KV-5900ください」とは言わない。


 業界では「愛称がある携帯ほどよく売れる」という説があり、何とか記憶に残る名前をつけなくてはと悩んでいる。それもそのはず。日本と違い韓国は年俸制が定着し、ボーナスという存在は記憶の彼方へ消えてしまったため、時期に関係なく年中新規端末が発売される。代理店で埃をかぶったまま消えていく端末も少なくない。


LGの携帯は「チョコレート」でブレイク


 愛称マーケティングで最も成功したのはLG電子の「チョコレートフォン」。板チョコのように薄くてかわいい、プレゼントしたい携帯と女性社員らが話しているのを偶然聞いた担当者がこのような名前をつけたそうだ。チョコといってもこげ茶色ではなく、ブラック、ショッキングピンク、ホワイト、ワインなど豊富なカラーバリエーション、アメリカ市場向けにグリーンやチェリーなどのカラーも発売している。キーパットの文字が赤なのがおしゃれ。チョコレートフォンは世界70ヶ国で販売されていて、海外でもマスコミが大絶賛、今年600万台販売を達成した。サムスン電子に押され気味だったLGの携帯は黒字転換、一気に世界の高級ブランドとして認知されるようになった。






LG電子のチョコレートフォン「KV-5900」



 1000台限定発売されたチョコレートフォン2限定版は14金で縁取られ、LCDの下にも14金のストライプがある豪華なモデルで話題になった。LGは後続モデルとして「シャイン」を発売し、サムスン電子のマジックシルバー、モトローラのクレイザーに対抗している。






LG電子のチョコレートフォンII「LG-SV600」


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2006年12月12日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061211/256604/

ITUテレコムワールド2006、ITでも韓流を狙う

「情報通信技術分野のオリンピック」とも呼ばれる「ITU(国際電機通信連合)テレコムワールド2006」が12月4日から8日まで、香港アジアワールドエキスポで開催されている。アジア初のテレコムワールドだけあって、韓国のIT関連新製品が一堂に会するほか、大手企業のCEOやIT業界の大物もみんな香港に集結する盛り上がりをみせている。

 韓国国内の報道では、ITUに初参加加するチャイナモバイル、チャイナネットコムなど中国勢に注目すべしと騒いでいるし、中国通信業界の世界進出のきっかけになるだろうという指摘もなされている。一般ユーザーからすると「テレコムワールドってそんなすごい展示会なの?」としか思えないが、「へ~」と驚くべき便利な最新モバイル技術がどっと披露されるという点は注目すべきではないだろうか。


中国の韓流は衰え知らず、その波及効果はIT機器にも


 最近、日本の韓流(韓国ブーム)は一時に比べると下火になったようだが、中華圏での韓流はまだまだ勢いが衰えていない。ドラマに登場するサムスンのPCや携帯電話、LGのTVや家電までもすごい勢いで販売が伸びているという。


 11月にあった俳優ソン・スンホンの除隊では日本や中国、台湾、シンガポールなどから5000人以上のファンが詰め掛けたそうだし、済州道であった韓流エキスポ開幕式ではヨン様が30分登場するだけで日本からの参加者が軽く3500人を超したそうだ。驚いたのは遠い砂漠の国、中近東でも韓国のドラマが人気で、韓国製の黄金TVやプラチナ携帯といった韓国や日本では見たこともないようなすごい製品が売れているそうだ。


 韓流ファンたちは韓国人にとってありがたい存在だ。自国の文化を尊重してくれて、ドラマや映画を観ながら一緒に感動してくれる仲間だからだ。この勢いに乗って、ITでも韓流が続いてくれればという思いもあるが、一方でサムスンとLGの独走ゆえに、韓国にはこの二つの会社しかないのかと思われるのは悲しい気もする。


 冒頭に紹介したITUテレコムワールド2006に参加するのは世界40カ国、700以上の企業だ。韓国からは日本のNTTのような電話・通信企業であるKT、携帯電話会社のSKテレコムとKTF、加入者100万人を目前した衛星DMB(日本の衛星をシェアしている衛星モバイル放送)のTUメディア、端末関連ではサムスン電子とLG電子といった韓国を代表する大手IT企業が参加する。


 韓国勢の展示の目玉は、今年から商用化された3.5GのHSDPA、Wibro(モバイルWimax)といった新しい通信サービスと端末。IT強国と自負しているだけあって、世界に向けあっと驚くような最新技術を紹介するべきという義務感を感じているようだ。KTとKTFは「ユビキタスライフパートナー」というテーマで公園(U-Park)、商店街(U-Mall)、駅(U-Station)、地下鉄(U-Metro)、家(U-Home)など、生活の中の具体的なシーンを挙げた展示コーナーを設けた。


 SKテレコムは「Innovation & Inspiration」がテーマで、日本でも提供されている携帯電話での決済、いわゆるおサイフケータイ機能のほかに韓国が発信地となったマルチメディアサービスを展示する。1回の決済で再課金なく、PC、MP3プレーヤー、携帯電話など、いろいろな端末から音楽を再生できる「Melon」、携帯電話が人の動きに反応してゲームの操作が簡単にできる「GXG」、世界4カ国でサービスされているメガヒットSNS「モバイルサイワールド」などを展示する。


 日本ではなかなか定着しないモバイル衛星放送も韓国ではポピュラーな存在だ。韓国では有料サービスにもかかわらず高速鉄道や地下鉄の中を含め全国95%に至るカバレッジの広さとチャンネルの多さから人気を集めていて、映像15、オーディオ19チャンネルを提供している。利用できる端末も54種類と選択の幅が広く、加入者数100万人まであともう少し。ITUでもそのノウハウに注目が集まっている。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2006年12月5日

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第12回:高句麗昔話「ホドン王子とナクラン姫」


予習してさらにハマる太王四神記

【第十二回】

高句麗昔話「ホドン王子とナクラン姫」






韓国人なら誰もが知っている物語 ~その2~



「好董(ホドン)王子と楽浪(ナクラン)姫」のお話も、前回ご紹介した「バボオンダルとピョンガン姫」同様、日本の「桃太郎」や「かぐや姫」のように、韓国では誰もが知っている物語。高句麗時代に実在した人物の悲しいラブストーリーです。愛する人のため国を裏切った姫と、国のために愛する人を利用した王子の話は『三国史記』に記録され、語り継がれてきました。ホドン王子は、ドラマの主人公として有名になった高句麗の建国王「朱蒙(チュモン)」の曾孫にあたります。それではご紹介しましょう。





ホドン王子とナクラン姫



高句麗の3代目大武神王(デムシンワン、在位18~44年)は、最初の王妃に跡継ぎになる男の子が生まれなかったため、二番目の王妃を迎えました。二番目の王妃は男の子を産み、その名前を好董(ホドン)とつけました。ホドン王子はとてもハンサムで聡明だったので、王はこの上なく大事に王子を育てました。


ある日、青年になったホドン王子は、高句麗の東にある沃沮(オクジョ)というところへ狩に出かけます。そこで高句麗の周辺国である楽浪(ナクラン)の王・崔理(チェリ)に出会います。崔理はホドン王子を見るなり、娘と婚姻させて高句麗の侵略から国を守ろうと考え、王子を楽浪へ招待します。美しいナクラン姫と出会った王子は一目惚れし、父である大武神王には何の話もせず、こっそり婚姻を約束します。二人の蜜月は過ぎ、ホドン王子はあと何日かで高句麗に戻らなくてはならなくなりました。ホドン王子はナクラン姫に約束します。「父上に婚姻を許してもらい、迎えに来るから待っていてください」……。


しかし、高句麗に戻ったホドン王子は、婚姻の話を父に切り出せませんでした。なぜなら、大武神王が「楽浪を侵略し、高句麗の領土にしよう」と王子に話したからです。そして大武神王は、自鳴鼓(ジャミョンゴ)さえ鳴らなければ、戦に勝つのは時間の問題だと語りました。楽浪には、自ら鳴って敵の侵入を知らせてくれる不思議な「自鳴鼓」という太鼓があり、高句麗の侵略から国を守ってくれていたのです。


それを聞いたホドン王子は、姫に手紙を書きます。「愛する姫よ。あなたが自鳴鼓を破ってくれれば、父上も姫との婚姻を許すでしょう」。


手紙をもらった姫は悩みます。家族と国を裏切り、愛を選ぶべきなのか……。姫は「自鳴鼓を破るのは父と楽浪を裏切ることだが、私とホドン王子が婚姻すれば、楽浪も高句麗もひとつの国になる。夫になる王子の言うことに従うべきなのでは?」。そして姫は自鳴鼓を破り、このことをホドン王子に知らせます。


大武神王15年(32年)、ホドン王子は軍を導いて楽浪を攻撃します。自鳴鼓は鳴りませんでした。高句麗軍が攻めてくると、楽浪の王は慌てました。自鳴鼓が鳴らなかったのに敵が攻めてきたからです。自鳴鼓が破かれているのを見た王は、犯人が姫であると直感します。王は涙を流しながら国を裏切った姫を殺します。楽浪は高句麗に負け、領土を占領されてしまいました。戦には勝ちましたが、ナクラン姫が死んだという知らせに、ホドン王子は自分のせいだと後悔し、悲嘆に暮れました。


一方、大武神王の一番目の王妃が、ついに男の子を産みました。王妃は自分の子息を跡継ぎにするため、ホドン王子を追い出そうとします。王妃は大武神王に「私がいくら年齢の割に若くて美しいといっても、ホドン王子が義理の母である私に、特別な感情を抱くのはおかしいではありませんか」と嘘をつきました。


大武神王は「そんなはずはない、王子を自分の子供だと思って愛してくれ」と王妃に頼みました。しかし、王妃はさらに嘘をつきました。ホドン王子が自分の手を握った、これが嘘というなら自決すると言い、王を脅したのです。王はついにホドン王子を叱りつけました。ホドン王子は考えました。言い訳をすると王妃の嘘がばれてしまい、父と王妃の仲が悪くなる、自分が犠牲になれば父も王妃も弟も幸せになるのではないだろうか……。そう考えたホドン王子は、ナクラン姫を想いながら自ら命を絶ちました。





ドラマやアニメにもなった「ホドン王子とナクラン姫」



ナクラン姫が住んでいたのは、今の中国と北朝鮮の境界あたりです。大武神王は領土拡張に熱心な王様で、高句麗の南にある小さな国々を攻めました。その中のひとつが、楽浪国だったのです。ホドン王子が姫に会いに行くには鴨綠江(アプログガン)を渡らなくてはなりません。王子が自決した場所も、鴨綠江上流あたりだと言われています。鴨綠江は中国と北朝鮮の間を流れる大きな川で、長さは803kmにも及びます。水の流れが激しく、真冬でも凍らないほどだそうです。敵の動きを監視して自ら鳴り出すという「自鳴鼓」は不思議ですが、今から2000年近くも前の古代には、そういう太鼓があったのかもしれませんね。


「ホドン王子とナクラン姫」は、韓国ではミュージカルになったり、60年代にはドラマ化もされています。有名なのは1990年に北朝鮮で制作された長編アニメです。北朝鮮を代表するアニメ作品として、海外でも研究対象になっているほどの話題作です。大人も楽しめるアニメだと評判が高いので、日本でも観られるチャンスがあるといいですね。


ドラマ『太王四神記』も、とても切ないラブストーリーだそうです。ナクラン姫になった気持ちで、ペ・ヨンジュン演じる太王・ダムドク王子様の活躍を見守りましょうね!

   – BY  趙章恩

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第11回:高句麗昔話「バボオンダルとピョンガン姫」


予習してさらにハマる太王四神記

【第十一回】

高句麗昔話「バボオンダルとピョンガン姫」




韓国人なら誰もが知っている物語



韓国人なら誰でも知っている昔話の「バボ(バカ)オンダルとピョンガン姫」。逆玉の輿とでも言うべきストーリーですが、実在した人物の悲しいラブストーリーなのです。いろんな小説やミュージカルのモチーフにもなっているこの物語は、『三国史記』に記録されています。それではご紹介しましょう。



バボオンダルとピョンガン姫



高句麗の25代目王様、ピョンガン王(平岡王または平原王、在位559~590)時代、顔が険悪でこっけいだけど、心は優しい温達(オンダル)という男がいました。温達の家はとても貧しく、いつも食べ物を乞い母親を養っていました。ボロボロの服と履き物で市場を行き交っていたため、人々は彼を「バボ温達(バカな温達)」と呼んでいました。


ピョンガン王には泣き虫の姫がいました。王様は姫が泣くたびに、「いつも泣いてばかりでは、貴族の嫁にはなれない。今度泣いたら、バボ温達と結婚させるぞ!」と脅かしました。


姫が16歳になり、王様は貴族の高氏の家に嫁がせようとしました。すると姫は、「大王は、いつも私に温達の妻になるだろうとおっしゃいました。王様はウソや冗談を言わないものです。私はほかの人とは結婚できません」と言いました。怒った王様は「私の教えに従わないなら、私の娘にはなれない。君の勝手にしなさい」と言いました。


姫は金の腕輪を数十個持って宮廷をあとにし、ひとりで歩き始めました。道ですれ違う人々に温達の家の場所を尋ねて、たどり着きました。


家には目が不自由な年老いた温達の母がひとりでいました。姫はお辞儀をして、温達がいる場所を尋ねました。温達の母は「私の息子は貧しいので、高貴な方とお会いできるような者ではありません。今あなたからは格別な香りがし、手を触ると柔らかく、まるでふわふわの綿のようです。きっと偉い方に違いないでしょう。誰に騙されてここまでいらしたんですか? 私の息子は飢餓を我慢できず、山へ木の皮を剥がしに行きました」と話しました。


姫は温達を探して山に行きました。姫は温達とバッタリ出会い、心のうちを告白しました。温達はびっくりして、「ここは女がひとりで通るようなところではない。君は人間ではなく幽霊に間違いない。近づくな!」と叫び、逃げ出しました。


姫は後を追い、家の前で泊まって、翌朝もう一度温達の家を訪ねました。そして、温達と彼の母に今までの事情を詳しく話しました。温達の母は「我が家はとても貧しく、姫様が泊まるようなところではありません。私の息子は姫様とは婚姻できません」と断りました。


すると姫は、このように話しました。「昔から、貧しくても心が通い合えば幸せになれると言われています。それなのに、お金持ちになってからでないと一緒になれないということでしょうか?」。


姫は金の腕輪を売って畑と家、奴婢、馬と牛を買い、家財道具も揃えました。初めて馬を買いに行く日、姫は温達に「市場の馬を買わず、宮殿から使い道がないと判断されて民に売り払われる馬を買ってください。その中でも、病気にかかってやつれた馬を選んでください」と頼みました。姫は働き者だったので、大事に世話をされたその馬は日に増して太り、丈夫になりました。


高句麗では毎年3月3日、王様が狩大会を開き、捕らえた猪や鹿を天と山川の神霊に捧げる春の祭りが行なわれていました。その日は、温達も自分が育てた馬に乗って、王様について行きました。彼は誰よりも速く先頭を走り、捕獲した獲物も多かったので、王様の目に留まりました。王様は彼を呼んで名前を聞き、驚いてしまいました。


その時、後周(中国)の武帝が軍隊を引き連れ、高句麗の領土である遼東(ヨドン)を攻めてきました。温達は、王様に従い戦で勇敢に戦いました。ほかの兵士達もその気勢に圧倒され、高句麗は大勝を収めます。国中が温達に感心し、尊敬しました。


王様は喜び、温達を婿として正式に認めます。そして大兄(デヒョン)という地位を与え、寵愛しました。ですが温達は安楽な生活を拒み、将軍として国を守るため、毎日兵士と一緒に生活しました。


ある日温達は、「新羅(シンラ)が漢江の北側にある我々の領土を奪い、国民が苦しめられています。大王が私に軍使を与えてくだされば、必ず我々の領土を奪い返してみせます」と王様に申し出ました。戦に出るとき、温達は姫に「鶏立(ゲリプ)と竹嶺(ジュクリョン)の西のにある領土を取り返すまでは帰らない」と誓いました。しかし温達は、領土を取り戻す前に、峨旦城(アチャソン)の下で新羅軍の矢に打たれ死んでしまいました。


みんなは悲しみ、温達を棺桶に入れ宮殿まで運ぼうとしましたが、棺桶はびくともしません。姫が峨旦城まで来て、涙を流しながら「生と死はもう決まってしまいました。安心してお帰りください」と話しかけると、やっと棺桶が動きました。

   – BY  趙章恩

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第10回:『太王四神記』の紋章になった「三足烏」の秘密


予習してさらにハマる太王四神記

【第十回】

『太王四神記』の紋章になった「三足烏」の秘密






太陽に住む神聖な黒い鳥



済州島(チェジュド)の猫山峰(ミョサンボン)観光地区にあるドラマ『太王四神記』野外セットに行くと、ある鳥のマークが紋章として使われているのが目に入ります。この鳥は高句麗を象徴し、太陽の中に住んでいると言われる三足烏(サムジョッオ)です。もちろんデザインはそれぞれ違いますが、『朱蒙(チュモン)』や『淵蓋蘇文(ヨンゲソムン)』など、高句麗を背景にしたドラマには必ず登場する紋章です。
どうして三足烏が高句麗の象徴になったのか? それは1500年ほど前に建てられた高句麗時代の古墳壁画に、必ずといっていいほど三足烏が登場するからです。当時、高句麗の2番目の都市だった中国吉林省集安にある古墳の天井を見ると、右には太陽を象徴する三足烏が描かれた円が、左には月の神であるヒキガエルが描かれた円があり、東には龍、西には蛇、北には星が描かれています。太陽と月の間には、菩提樹が風に揺れているような絵も描かれています。このほかにも、高句麗の遺跡や遺物には、この三足烏が頻繁に登場します。


遥か古代から東アジアでは、この太陽に住む神聖な黒い鳥が神のメッセンジャーとして広く崇拝されていたので、これは高句麗だけの文化とは言い切れません。しかし、高句麗の三足烏は、ほかの国の三足烏とは違う特徴を持っているんです。三足烏は足が三本あるカラスだとよくいわれますが、高句麗の三足烏はカラスではなく、頭に冠がついた黒い鳥で、龍を餌にするほど強くたくましい最強の鳥なのです。高句麗人は、「我々は神に選ばれた民族だ」という自負から、この太陽の鳥を大事にしていたのではないでしょうか。





  • 高句麗時代の古墳壁画に描かれた黒い鳥「三足烏」(中央の円の中)。












高句麗の「三足烏」が日本に?



日本サッカー協会の紋章にも三本足のカラス「八咫烏(やたがらす)」が使われているため、「高句麗の三足烏と同じ鳥なのではないか?」、「三足烏は日本の象徴なのではないか?」と疑う意見もありますが、よく見ると日本の八咫烏は頭に冠がありません。日本の三足烏はカラス、高句麗の三足烏は想像の中の黒い鳥なので違うという説もあれば、高句麗を建国した朱蒙(チュモン)の息子、沸流(ビリュ)と温祚(オンジョ)が建てた国が百済なので、高句麗の象徴が当時百済と交流が活発だった日本にも伝わったという説もあります(ちなみにドラマ『朱蒙』の中では、沸流と温祚は朱蒙の子ではないという設定です)。一方では、古代東アジアで広く太陽を崇拝していたので、日本や中国でも同じく三足烏の伝説が残っているという説もあります。


1363年に韓半島の歴史記録をまとめた『ダングンセギ』には、「紀元前1878年、宮廷の庭に黒い鳥が飛んできたが、その翼の長さは三尺もあった」という記録があります。韓民族は、紀元前数千年も前から生命の象徴である太陽と月を崇拝していました。高句麗は、太陽の中に住む神鳥として、三足烏という想像の鳥を民族のシンボルにしたのかもしれません。





「三足烏」は天と地と人の象徴



高句麗の古墳壁画に頻繁に登場する三足烏。その冠は数字の1と水や太古の生命を、翼は数字の2と和合、均衡、夫婦、温かみを、3本の足は数字の3と自然の生命、循環、夫婦の間で生まれた子供、完成、力を象徴します。3は天と地と人を表わす天の数字でもあります。


一部には、三足烏は中国の象徴で、高句麗がそれを真似たという主張もありますが、高句麗は中国の唐と対立し何十回も戦を繰り返していただけに、敵のものを真似て自分の象徴にするのは可能性の低い説かもしれません。


「高句麗の黒い鳥はカラスだ」「いや、カラスではなく想像上の鳥だ」と意見は分かれるところですが、カラスに関しては、高句麗と今の韓国で認識が違うところがあります。韓国人はカラスは凶鳥として嫌い、都会では滅多に見かけることのない鳥となりました。一方、高句麗人は、カラスは死体を食べるので、霊魂を天へ導き来世で生まれ変われるようにしてくれる吉鳥と考えていたのです。高句麗を滅亡させた新羅にとって、高句麗を象徴する黒い鳥を好きになれるはずはなく、統一新羅時代から高麗時代、朝鮮時代と時を経る中で、いつしかカラスは縁起の悪い鳥だと思われるようになり、それが今でも影響を及ぼしているのではないかと推測されています。


『太王四神記』で登場する三足烏の紋章を見ていると、頭に冠がついた足三本の黒い鳥はとても神秘的で威厳に満ちていて、賢く潔かった高句麗人の魂を少しは分けてもらえないかな~と、ボーッとしてしまいます。アクセサリーにしてずっと身につけていたい! と思いませんか? 『太王四神記』公認グッズとして発売されるのが待ち遠しいですね。

  – BY  趙章恩

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