こんなところまで?ハッキング被害続出の韓国

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米国では、先日の大統領選挙に関して、ロシアがヒラリー・クリントン候補のメールをハッキングした疑いがあるというニュースが流れ、物議をかもしているようだ。

 韓国でもハッキング事件は後を絶たない。つい最近も、北朝鮮によるものとみられる国防ネットワークのハッキングが発生した。芸能人のSNSのパスワードを盗んで勝手に書き込みをした事件や、民間企業が学校の入札システムをハッキングして最安値を調べていた事件もあった。

 中でも深刻なのは、国防関連のハッキングである。韓国国防部(部は日本の省に当たる)は2016年12月中旬、8月に国防ネットワークへの不正侵入があり韓国軍の情報が盗まれた事実と、それが北朝鮮によるものと推定していることを公表した。どのような情報が盗み取られたかは、明確に公表しなかった。

 このハッキングは、「国防統合データセンター」という国防用のデータセンターの管理者がセキュリティルールを守らなかったことが原因だった。本来は、内部ネットワークとインターネットにつながる外部ネットワークを分離し、内部ネットワークだけ使えるパソコンとインターネットにつながるパソコンに分け、機密文書は内部・外部ネットワーク全てをシャットアウトしたパソコンで扱わなくてはならない。そしてパソコンの中には一切データを保存せず、すべて外付けハードディスクに保存して管理するというルールがあった。

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PPAPより稼いでいる? 動画スター目指す韓国の子供たち

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 12月10日、韓国のケーブルテレビ局向けの番組や映画を制作するCJ E&M社のスタジオで「キッズクリエイターコンテスト」が開催された。内容は、幼児から小学生までの子供を対象にしたユーチューバ―オーディションのようなものだった。

 1次審査では、各自が企画・出演・制作した動画番組を審査した。そして2次審査では、カメラの前でいつものように番組を進行する様子を見せてもらい、面白い動画が作れそうな子供を選ぶ。そして動画スターになれるよう、映像企画と制作、動画スターになるためのノウハウなどを教え、プロモーションもCJ E&M社が支援する。

写真●キッズクリエイターコンテスト告知サイトのキャプチャー
韓国の番組制作会社CJ E&M社とポータルサイトのNAVERが開催したキッズクリエイターコンテスト。子供を対象にしたユーチューバ―コンテストのようなオーディションで、900人を超える応募者の中から10人の子供を選び、投稿動画の制作技術や企画を教えて動画スターに育てるという企画である

 「キッズクリエイターコンテスト」では、予選に参加した951人の中から1次審査で50人が選ばれた。1次審査に寄せられた動画は、子供がおもちゃの遊び方を紹介する動画、子供が料理をする動画、子供が身の回りの道具で科学実験をする動画が多かった。予選に参加した子供は、27カ月の幼児から小学校6年までと年齢も幅広かった。

 2次審査(オーディション)では最終的に10人が選ばれた。2次審査で選ばれた10人は、CJ E&M社が運営する動画サイトDiaTVや、コンテストのスポンサーだったポータルサイトNAVERで自分のチャンネルを作って動画を流せる。最近、韓国語版のYouTubeでは、子供が主人公の子供向けチャンネルが人気を集めていることから、韓国企業も動画スターになれそうな子供を発掘し、子供目線で情報を提供する子供チャンネルを強化するのが狙いである。グーグルコリアによると、韓国語版YouTubeのキッズ関連コンテンツ視聴時間は、毎年3.5倍増加している。

 今の小学生は、生まれたときから携帯電話やモバイルインターネットがある世代である。テレビと同じぐらい動画サイトを見て育っているので、テレビ番組と動画サイトの番組を区別せず面白いものを観て楽しむようだ。

 複数の韓国メディアによると、YouTubeにある子供向けチャンネルで有名なところは、広告収入だけで月数千万ウォン(数百万円)に及ぶ。「このおもちゃを紹介してほしい」とスポンサーがつくこともあるので、かなりの収入になる。広告収入はYouTubeが45%、制作者が55%の割合で配分するという。

 中でも韓国で知名度が高い子供向けチャンネルは、「ライムチューブ」、「マイリンTV」、「マリヤと友達」である。

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韓国小中学校でのソフトウエア教育本格化、大学の教育学部でも義務教育に

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韓国の教育政策を担当する教育部(部は日本の省にあたる)は2016年12月2日、「ソフトウエア教育活性化基本計画」を確定した。2014年2学期から一部小中校で行っていた週1時間のソフトウエア教育を、全学校で2018年から義務化する(中学校は2018年から、小学校は2019年から)。そのために人的・物的インフラを整える。ソフトウエア教育を強化することで、韓国のソフトウエア産業の競争力を確保するというのが主な内容である。

 世界的に人工知能やビッグデータ分析の重要性が高まっていることから、韓国では文系もソフトウエアの基礎を理解すべきとして、小中高校からソフトウエア教育を始めることにした。2014年2学期から、一部の学校でソフトウエア教育(実際にはコーディング教育)を実施したところ、ロボットのソフトウエアをコーディングして動かしてみる、モバイルゲームを作ってみる、といった授業内容が子供たちにとても喜ばれた。

 教育熱の高い韓国らしく、ソウルの富裕層の間では子供を「コーディング塾」に通わせ、学校のソフトウエア授業で高い点数を取るための競争が始まってしまったのは残念だが、それぐらい韓国ではソフトウエア教育が重視されるようになった。

 その背景には、韓国は内需が小さく輸出中心の経済で、今まで輸出しやすいハードウエアばかり重視しソフトウエアはおろそかにしていたことから、押し寄せる人工知能の波に乗り遅れたという反省がある。ソフトウエア教育を通じて「Computational Thinking」ができる人材を養成するという目的もある。Computational Thinkingは、ソフトウエアを組み立てるように論理的に思考し、問題を効率よく解決できる思考能力を意味する。

「教師の教育」も強化

 「ソフトウエア教育活性化基本計画」で大きな変化が生じるのは、小中学校だけではない。教育部は「幼稚園および小・中・特殊学校等の教師資格取得のための細部基準」を改訂し、小学校教師になるための基本履修科目にソフトウエア教育を明記。ソフトウエアの授業ができる程度にならないと小学校教師になれなくなった。中学校の情報科目教師になるための履修科目も細分化し、ソフトウエアの授業ができるようレベルアップすることにした。

 中学校は情報科目の時間に、小学校は担任教師がソフトウエア教育をすることになっている。そのため、韓国全国の教育庁(自治体ごとにある教育を担当する政府機関)は2014年から小学校教師の30%に当たる6万人と、中学校の情報科目担当教師を対象にソフトウエア教育研修を実施してきた。2016年からは情報科目の教師採用を増やし、教師が情報科目を複数専攻する研修も実施することにした。

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[日本と韓国の交差点] 朴大統領の弾劾実現した、市民の電話攻勢

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韓国国会が弾劾訴追案を可決した翌日の12月10日、ソウル市中央の光化門広場ではこの日もろうそく集会が行われた。「国民が望む通り、ついに弾劾訴追案が国会を通過した」と喜ぶ人々と、「弾劾は始まりに過ぎない。韓国を変えるためにはこれからが大事。朴槿恵大統領が退陣して法の裁きを受けるまで集会を続ける」と悲壮感を顔に浮かべる人々が入り混じる集会となった。

 弾劾訴追案は12月9日、議員300人のうち299人が参加して採決された。議決するためには200票以上の賛成が必要なところ、野党3党と無所属の票は合わせて172票。与党のセヌリ党がどう出るか注目されていた。

 ふたを開けると賛成234票、反対56票、棄権2票、無効7票。弾劾に賛成するセヌリ党議員が予想より多い結果となった。

 国会が弾劾訴追を議決したため、朴大統領は職務権限を停止された。同大統領が憲法に違反したかどうか、弾劾するかどうかを、憲法裁判所が決める。この間、ファン・ギョアン国務総理が大統領の権限を代行する。憲法裁判所が弾劾を決めれば、朴大統領は大統領職を罷免され、60日以内に大統領選が行われる。複数の韓国メディアは、世論を反映して弾劾を確定する判決を憲法裁判所が1月中には下し、2017年の春頃、大統領選挙が行われる可能性が高いと報じた。

 朴大統領は11月29日、第3次対国民談話で「私は、任期の短縮を含む進退を国会の決定に任せます。国政の混乱と空白を最小限にし、政権を安定した環境の下で移譲できる方案を作ってくれれば、その日程と法の手続きに従って大統領職から退きます」と発言した。国会に進退を任せるというわけだ。

 国民の間では「最後の最後まで他人任せで責任をとろうとしない」と談話の内容を酷評する意見が多く、第3次対国民談話の後、朴大統領を弾劾して今すぐ辞めさせるべきという世論がさらに広がった。

弾劾に反対する議員に抗議が殺到

 弾劾訴追を決定づけたのは、ろうそく集会だけではなかった。国民が国会議員に対して行った「電話攻撃」も後押しした。

 野党・共に民主党のピョ・チャンウォン議員は11月30日、弾劾に反対する議員を自身のSNS上で名指しした。その翌日、ソウル大学院に通う院生が、セヌリ党議員131人について、選挙区と主な活動内容、事務所や議員本人の携帯電話番号をリストアップしてソウル大学生向けのオンライン掲示板に掲載した。

 韓国では選挙期間中、候補者が本人名義で加入した携帯電話番号から有権者の携帯電話にショートメッセージを送信し、支持を求めてもよいことになっている。国会議員の携帯電話番号が自身の携帯電話に残っていた人達が情報を共有し、国会議員の携帯電話番号リストが出来上がった。

 これが瞬く間にSNSで広がり、市民らがセヌリ党議員らに対して「弾劾に反対するのはなぜか」と抗議する電話をかけたり、ショートメッセージを送信したりし始めた。韓国の新聞は、「未読メッセージ2000件」などと表示されたスマートフォンの画面を見て茫然とするセヌリ党議員らの写真を掲載した。市民の電話攻撃の威力はすさまじく、一部議員は携帯電話番号を変更するに至った。弾劾に反対する議員のリストがネット上で話題になって以降、セヌリ党の一部議員は弾劾に賛成すると公式に表明した。

By 趙 章恩

 

 日経ビジネス

 2016年12月

-Original column

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/215834/121300054/

[日本と韓国の交差点] 朴槿恵大統領の談話受け、さらに怒る韓国国民

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11月29日午後2時30分、朴槿恵大統領が3回目の対国民談話を発表した。5分ほどの談話の内容は「大統領の任期短縮や退陣、全てを国会の決定に任せる」というものだった。

 朴大統領は、「与野党が議論して国政の混乱と空白を最小化し、安定して政権移譲できる方案を作れば、その日程と法手続きに沿って大統領職から離れる」と述べた。

 また、朴大統領はチェ・スンシル一族の国政介入と不正蓄財に関して再度謝罪したが、「個人的な利益を追求したことは一度もない」と検察の捜査内容を強く否定した。朴大統領は談話の発表が終わると、記者らの質問は一切答えず、「近々色々なことの経緯について詳しく話すので、質問はその時にしてほしい」言い残してその場を去った。

 朴大統領の口から「退陣する」という話は出なかった。

韓国民から「談話には満足できない」の声

 地上波放送のSBSが朴大統領が談話を語った直後に街角インタビューを行ったところ、インタビュー応じた市民のほとんどが批判的なコメントをした。

「朴大統領自ら退陣を決めるべき。国会に任せるとは無責任すぎる」
「退陣する意向があるなら、何月何日に辞めますと自分から言うべきである。一方的に国会に丸投げするなんておかしい」
「退陣するのかしないのか、大統領としての最後の決断までも他人任せだとは。ずうずうしいにもほどがある」
「国会で朴大統領の退陣を決めたら従うだろうか。信用できない。退陣するまで抗議する」
「最後まで他人のせいにして、自分の責任ですとは言わないので笑ってしまった」

 毎週土曜日に朴大統領の退陣を求める集会を行っている市民団体らも、朴大統領が談話を発表した直後にコメントを発表した。

「朴大統領は自分の去就についてすべてを国会に任せたと話したが、本当は退陣するつもりはなく任期の最後まで粘るつもりなのだ。朴大統領は検察の捜査で明るみになった本人の不正についても知らないふりを続けている。これは許されない」
「これ以上国民を苦しめたり、国を混乱させたりすることなく、即退陣するよう朴大統領に求める。それが唯一の解決法だ」

 SBSが自社のホームページ上で行ったアンケートでは、談話の内容について「満足できない」が5万1768人、「満足する」が850人だった(午後4時30分時点)。ケーブルテレビのJTBCが同じく自社ホームページ上で行った緊急世論調査では、「朴大統領は無条件に今すぐ辞任すべきである」が4180人、「談話に関係なく弾劾すべき」が2087人、「談話の内容に満足した」は40人、その他が34人だった(午後4時30分時点)。

By 趙 章恩

 

 日経ビジネス

 2016年11月

-Original column

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/215834/112900052/

韓国の大統領スキャンダルでスタートアップが危機?

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大統領スキャンダルが韓国のIT業界にも大きな影響を及ぼしている。国政に介入し、国家予算を牛耳って不正蓄財した朴槿恵大統領の友人チェ・スンシル氏が、IT分野にも手を出していたからである。

 退陣を求められている朴槿恵大統領の重点事業の一つに、「創造経済革新センター」というものがある。スタートアップを育成して地域経済活性化に役立てることを目標に、全国17カ所にインキュベーションセンターの役割をする建物を建てた。運営費は国と自治体が負担する。スタートアップを公募し、費用の負担なく無料で入居させ、各種技術開発に必要な設備も無料で利用できるようにした。

 創造経済革新センターごとに、映像コンテンツ開発、ドローン開発などとメインテーマを設定し、そのテーマに合わせてそれぞれ大手財閥企業とパートナーシップを結んだ。大手企業は入居したスタートアップ向けに講演会を開いたりアドバイスをしたり、大手企業が必要とする技術をスタートアップと一緒に研究したりと、スタートアップの相談役を務めるようにした。


画面●創造経済革新センターのホームページ
スタートアップ育成のため2015年から全国17カ所で運営している創造経済革新センター。センターごとに大手企業とパートナーシップを結んでスタートアップを支援、地域経済の発展にもつなげるはずのセンターだが、大統領スキャンダルと大きくかかわっていることが発覚した。

 創造経済革新センターの趣旨は立派だが、チェ氏はここも自分の利益のために利用した。創造経済革新センターの役員は、大多数がチェ氏の息のかかった人だった。センターに入居して成功した模範事例としてマスコミが取り上げていたスタートアップは、チェ氏の前夫の弟が副社長を務める会社だ。この会社の代表は結局、投資金詐欺容疑で身柄を拘束された。実態がないにも関わらず、チェ氏との関係から模範事例に仕立てられ有名になったのだ。

 センターのホームページ構築事業は、入札ではなく、チェ氏の知人が設立した会社が全国17センター分を全て受注した。センターが主催するイベントや展示会も全て、チェ氏の知人が経営する会社が受注した。そのほかにも、まるでセンターがチェ氏のビジネスのために存在したかのような疑惑が次々に浮上している。

 早速国会では、未来創造科学部(情報通信政策を担当する省庁、部は省に当たる)が申請した創造経済革新センターの2017年度国家予算約558億ウォン(約50億円)の審査を保留した。国会では、事業成果がないまま巨額の予算を使っているとして、創造経済革新センターの成果を具体的に示すよう要求した。

 ソウル市は、自治体が負担することにしていた2017年度のソウル創造経済革新センターの運営予算20億ウォン(約1.8億円)を全額撤回した。全羅南道(道は日本の県にあたる)も、同地域にある創造経済革新センターの2017年運営予算10億ウォン(約9000万円)を全額撤回した。他の自治体でも同様の動きが出ている。

今までは、朴大統領のキャッチフレーズでもあった「創造経済」に誰も文句を言わなかったが、大統領スキャンダル以降は「創造経済という得体のしれないものに予算をつぎ込んでいた」と国会も自治体も自省する雰囲気になっている。

 大統領スキャンダルをきっかけに、創造経済革新センターを廃止するという話まで出ている。しかし問題は、チェ氏と何も関連がないスタートアップも大勢入居していることである。「センターに入居しているという理由だけで、チェ氏と関係があるのではないかと白い目で見られた」と嘆くスタートアップの代表もいたほどである。

 国会と自治体が創造経済革新センターに背を向けると、投資家やベンチャーキャピタルもセンターに入居しているスタートアップに関心を示さなくなった。

 未来創造科学部は、「センターに入居して3年目に当たる2017年から成果を見込めるスタートアップもいる。世界的にスタートアップが重視されている中、支援を断ち切ってはいけない。少なくとも2017年まではセンターの運営を続けるべき」と主張している。

 ただし韓国のIT業界は、今回の一軒を「災い転じて福となす」になる可能性もあるとみている。国と自治体の支援金がなくなると、本当に競争力があり需要があるセンターとスタートアップだけが生き残る。政府の支援金でスタートアップを立ち上げ、無料でセンターに入居し、政府の支援金が切れるとビジネスをやめて、また支援金がもらえる分野でスタートアップを立ち上げることを繰り返す「支援金ハンター」がいなくなることで、本物のスタートアップだけが残る可能性があるからだ。

 それにしても終わりが見えない大統領スキャンダル。これ以上純粋にがんばっているスタートアップに飛び火しないよう、早く解決してほしいものだ。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

日経パソコン

2016.11.

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http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/549762/113000121/?itp_leaf_index


中国の会社からプレステVRまで──韓国最大のゲームショー「GSTAR」に見られた変化

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 毎年、大学就学能力試験(韓国の大学入試のための共通試験)が終わる頃に開催される韓国のゲームショー「GSTAR」。2016年は11月17~20日、釜山のBEXCOで開催された。今年の観覧者数は、歴代最多の21万9267人。昨年の20万9617人を1万人近く上回った。参加企業は28カ国600社だった。

 GSTARはB2Cのゲームの新作公開と体験、eスポーツ大会、B2Bのゲーム販売と投資誘致をサポートするゲーム投資マーケット、ゲーム業界の求人のための合同会社説明会が一堂に会する韓国ゲーム業界最大のイベントである。例えばeスポーツ大会に関しては、韓国ではスポーツリーグのようにオンラインゲームの対戦をケーブルテレビなどが中継するほど人気があり、今回のGSTARでは「FIFA ONLINE 3アディダスチャンピオンシップ」や「League of Legends KeSPA Cup決勝戦」などが開催された。

NEXONが過去最大級の展示をした理由

 歴代最大のブースで新作ゲームを公開したNEXONは、新作ゲームだけで35種を展示した。内訳はPC向けオンラインゲームが7種、モバイルゲームが28種だった。この内19種はブースでプレイできるようになっていた。新作の数も歴代最多公開だったが、会場の4分の1をNEXONが占めたことで、韓国メディアの間で「GSTARではなくNEXSTARと呼ぶべきではないか」という話まで出たほどだった。

 NEXONがここまで大規模な展示をしたのは理由があった。

 2016年上半期、NEXONを立ち上げた創業主のキム・ジョンジュ会長が、検察上層部にNEXONの株を不正に譲渡し大儲けさせたとか、現在退陣を求められている朴槿恵大統領の元秘書の妻が所有するビルを時価の3倍近い高値で買ってあげたといったことが検察の捜査で発覚した。その影響で、キム会長はNEXONの取締役を辞任した(NEXONは日本に本社がある)。「ベンチャー神話1世代」と言われ尊敬されていたキム会長だったが、韓国内では「実は権力層に賄賂を渡して癒着していたおかげでNEXONも成功できたのではないか」という視線を向けられるようになってしまった。

 NEXONのイメージも当然下落した。そこでNEXON KOREAはGSTARで大々的に新作を公開することで負のイメージから脱皮を狙った、というのが韓国メディアの共通した見方である。実際にNEXON KOREAのパク・ジウォン代表理事も、GSTAR会場で「上半期には社内で色々とよくないことがあったが、これを克服するためゲーム会社の基本であるゲームに集中する」とコメントした。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

日経パソコン

2016.11.

-Original column

http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/549762/112300120/?itp_leaf_index

韓国で100万人が集まった大統領抗議集会に移動通信キャリアも大忙し

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 2016年11月12日、ソウル市中心部にあたる光化門周辺で行われた朴槿恵大統領の退陣を求める第3回目の抗議集会には、100万人を超える人が集まった。警察は26万人と推算したが、韓国メディアが「ソウル市が提供する地下鉄・バスの乗り降り乗客数(交通カード利用分)」をオープンデータから推算したところ、集会が行われた時間帯に少なくとも100万人以上が光化門周辺にいたことが分かった。

 光化門はオフィス・官庁街で、明洞や景福宮、清渓川など観光名所から歩いて行ける距離にある。ソウル市の中心部ではあるが、人通りが多くはない地域だ。12日は全国各地の農民会や労働組合などの団体も、集会に参加すると予告していたので大混雑が予想されていた。

 韓国のキャリア(携帯電話事業者)3社は、12日に光化門周辺にある基地局の収容容量を通常の2~3倍に増やし、移動基地局もキャリアごとに2~5台ずつ配置した。基地局は日々の流動人口を分析して設置する位置と容量を決める。そのため、いつもより人が集まると、一つの基地局に信号が集まり過ぎてなかなか電話がつながらない現象が発生する。基地局がパンクしないように補い、つながりにくくなる現象を防ぐため、キャリアはイベントがある日は移動基地局を設置してトラフィックをカバーするのだ。

 移動基地局は、年末年始のカウントダウンが行われるイベント会場、夏の海水浴場、お正月・お盆連休のサービスエリアなどによく登場する。キャリア3社によると、12日は2002ワールドカップ街角応援の時よりも移動基地局の台数を増やしたそうで、ここ20年間で最大規模のトラフィック対策を実施したという。

 移動基地局は大型トラックに機材を積んだものなので、かなり場所をとる。基地局は電源と、有線設備が必要だからだ。キャリア3社は2015年より、災害時のことも考えてより小型の移動基地局開発に力を入れるようになった。

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章恩=(ITジャーナリスト)

 

日経パソコン

2016.11.

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中国人が韓国のショッピングモールで爆買い!「光棍節」を狙え

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 11月11日は中国の光棍節、いわゆる「独身者の日」である。数字の1が4回並ぶことから、90年代に大学生の間で恋人がいない人を慰めるイベントが行われたのがその由来だとか。それがなぜか今では、米国のブラックフライデーのように中国のオンラインショッピングサイトが大々的にセールをする日になった。

 チョコレート会社がバレンタインデーはチョコを贈る日と宣伝したように、光棍節を中国版ブラックフライデーにしたのは中国最大のオンライン流通事業者であるアリババだ。2009年11月11日、アリババは独身者のために24時間限定のセールを実施した。これが大ヒットし、今では11月11日になると中国のオンラインショッピングサイトが破格的なセールを開催して大いに盛り上げる。

 アリババの2015年光棍節の売り上げは、たった1日で日本円にして約1.5兆円と桁違いの規模である。光棍節の後で配送される宅配便の数だけで10億個近いというからすごい。どのサイトも目玉商品を出してセールをするので、財布のひもがどんどん緩んでしまうのだ。アリババは、2016年の光棍節の売り上げは2.3兆円を超えると見込んでいる。

 市場調査会社ニールセンによると、2015年の光棍節にオンラインショッピングを利用した人へ2016年の光棍節もオンラインで買い物をしたいか聞いたところ、ほぼ100%が「はい」と答えたという。

 中国人観光客の多い韓国でも、11月11日は中国人向けにセールをする日になった。実店舗のデパートや免税店はもちろん、韓国の大手オンラインショッピングサイトのInterpark、GMarket、11番街なども光棍節で最大8割引きの商品を出すなどして盛り上がる。


Interparkのグローバルサイト
韓国の大手オンラインショッピングサイトは、中国や日本にいながら韓国のオンラインショッピングサイトで注文、自宅で受け取れるサービスを提供している。11月11日の中国版ブラックフライデー光棍節に合わせて、韓国のサイトもセールを開催中だ

 韓国の大手ショッピングサイトはほとんどが外国語サイトも運営していて、中国・日本・米国など世界70カ国に配送している。中国や日本にいながら韓国のショッピングサイトで注文し、自宅で受け取れるのだ。韓国から中国まで商品を届けるための国際配送料も半額に値引きするなど、今年は送料の値引き競争も激しかった。関税庁も、国際配送に必要な「電子商取引輸出届け出」を簡素化する方向で協力。郵政事業本部は、オンラインショッピングサイトの国際郵便料金を最大8%割引するなどして便宜を図った。

 韓国の有名ブランドがアリババの光棍節特設コーナーに商品を提供する事例も増えている。韓国の大手スーパーであるEMARTは、アリババの海外ブランド販売サイト天猫(Tmall)に、スーパー全体を出店した。

 アリババで光棍節に買い物をする主な顧客は26歳から35歳の中国人で、韓国ドラマやKPOPのファン層と重なる。光棍節には韓国の芸能人が身に着けた商品を購入したがるケースが多いことから、韓国のスーパーや有名ブランド品は特設コーナーの中でも人気が高い。特に網紅(ワンホン)と呼ばれる有名ブロガーたちが購買に与える影響力が非常に強く、韓国企業は網紅を韓国に招待して製品をプレゼントするなど、大事にしている。光棍節を前に、韓国の化粧品会社はこぞって網紅を招待し、ソウルの高級ホテルを提供し観光地を案内しながら製品説明会を行った。網紅が「今年の光棍節は○○ブランドの化粧品を買うべき」と一言SNSで書き込むだけで、売り上げが大幅に違うからだ。

 韓国統計庁の「2016年9月オンラインショッピング動向」によると、韓国のインターネットショッピングサイトの海外直接販売額(海外ユーザーが韓国のサイトに注文して海外へ配送するケース)は、2016年7~9月の3カ月間で5512億ウォン(約513億円)と、前年同期の1.5倍に成長した。内訳は、中国からの注文が79.3%(4371億ウォン)を占めるほど圧倒的に多く、前年同期比で14.6%も増えた。次が米国、日本の順に多かった。

 中国人は、韓国のオンラインショッピングサイトでも爆買いをしているようだ。海外から注文が多かったのは韓国の化粧品、ファッション用品、家電、食品の順だった。オンラインショッピングに国境はないので中国のユーザーが利用してくれるのはうれしいことだが、中国を頼りすぎてしまわないように気を付けないといけないだろう。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

 

日経パソコン

2016.11.

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Fintech普及の証?韓国のATM数が初減少、財布を持たない日常生活も可能に

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韓国ではついに「キャッシュレス」生活が現実になっているようだ。韓国銀行が11月2日公開した統計によると、2015年度の全国の銀行ATMは8万6802台で、前年比で472台減少した。ATM台数が減少したのは、統計を集計し始めた1992年以来、初めてのことである。

 銀行口座にお金を預ける、引き出す、振り込みをする、各種税金を払うなど、様々な機能を持つATMだが、韓国ではATMの利用が減少しても維持補修費はかかる。現在、ATM1台当たり年間平均170万ウォン(約15万5000円)の赤字だという。ATMの時間外手数料を値上げしているが、それでも費用を賄えない状態だという。

 韓国では、ATMだけでなく銀行の店舗数も減少している。HANA金融経営研究所の調べによると、銀行店舗数は2014年末のには7398店あったのが2015年末の7261店まで、137店減少した。店舗数が減ったのはソウル市を始め首都圏ばかりで、人口減少よりも、モバイルバンキングやモバイルペイメント、SNSを使った個人間振り込みといったFintech(金融+ICTの融合)の普及により銀行に行く必要がなくなったことの方が大きく影響しているように見える。首都圏の銀行店舗は、2012年から減少し始めた。

 韓国銀行によると、2015年の年間インターネットバンキング・モバイルバンキング利用件数は1億2000万件余り、年平均27%ほど増加し続けている。

 「インターネットバンキングやモバイルバンキングが普及しても、現金を引き出す必要はあるのでATMは生活に欠かせない存在のはず」と筆者は思ったが、自分もキャッシュレスの生活をしていた。韓国ではモバイルペイメントの普及で現金を引き出す必要がないのだ。

 日本でもおサイフケータイが普及し、スマートフォンを使って支払う人が増えているが、韓国はプリペイド(前払い)ではなくポストペイド(後払い)である。筆者は、プリペイドよりポストペイドの方が、楽にモバイルペイメントを利用できると感じている。スーパーやコンビニ、外食、交通費など、全ての支出をモバイルペイメントにし、まとめてクレジットカード払いにしている。



 韓国では、1000ウォン(約90円)以上の決済であれば、クレジットカードが使える。都市部からかなり離れた地域でない限り、クレジットカードでの支払いに対応していない店舗はほとんどない。国税庁は、店舗がクレジットカード支払いを拒否した場合、所得隠しの疑いがあるので通報するよう呼びかけているほどだ。クレジットカードの加盟店であれば、ほぼ全てモバイルペイメントに対応している。特別な読み取り端末(リーダー機)がなくても、既存のクレジットカード決済機にスマートフォンを近づけるだけでいいのだ。

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趙 章恩

(ITジャーナリスト)

 

日経パソコン

2016.11.

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