韓国SNS「監聴」議論再び、LINEは大丈夫? [2015年10月19日]

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10月6日、韓国で最も加入者の多い無料メッセンジャーアプリ「カカオトーク」が、韓国検察の監聴令状に協力すると発表した。カカオトークは今まで、どんな理由であっても監聴には応じないという姿勢を示していた。

 監聴とは、捜査のために必要な情報を得るため、利用者の通信内容を見るという意味である。韓国の通信秘密保護法は、犯罪を計画または実行している、実行していると疑うに十分な理由があり、他の方法ではその犯罪の実行を阻止できず、犯人の逮捕または証拠の収集が難しい場合に限り、通信秘密保護法を適用しないとしている。

 さっそく、ユーザーの間では不満が漏れている。記事のコメント欄には、「捜査のためなら、加入者の通信内容を本人に知らせずこっそり検察に提供するのも仕方ない」という意見もあるが、「カカオトークをやめて他のサービスに乗り換える」という書き込みの方が圧倒的に多い。

 韓国では、2014年10月にも複数の韓国メディアが、韓国企業が提供するメッセンジャーアプリやSNSは韓国検察の監聴に応じていると報道。韓国のスマートフォンユーザーが「監視されたくない」として、欧米のSNSサービスへ流れ始めたことがある。


写真●カカオのホームページ(韓国版)

 当時韓国の検察は、インターネット上のデマを厳しく取り締まっていた。その過程で、新聞やネットでは検察がメッセンジャーアプリやSNS上の個人的なやりとりも捜査の証拠として手当たり次第集めているという噂が広がった。その影響で、当時世界でもっともセキュリティレベルの高いメッセンジャーアプリと宣伝していた「Telegram」は韓国ユーザーが急増し、数日間で300万人を突破したほどだった。


次ページ: 今回カカオトークの監聴に関する内容は以下の通り。まず令状に書いてある捜査対象以外の個人を識別できる情報を削除…



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
-Original column

[韓国ソーシャルイノベーション事情] アジア初グーグルキャンパスがソウルに登場、スタートアップ支援で社会が変わった?

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 2015年5月、ソウル市の南側「江南(カンナム)」にアジア初の「グーグルキャンパス」がオープンした。江南といえば何年か前に世界的に大ヒットしたPSYの「Gangnam Style」の舞台である。東京の渋谷や青山のようにビジネス街でもあり若い人が集まる繁華街でもある。

 90年代から2000年代の初めまでも江南はITベンチャー街としても有名だった。江南地区の大通りであるテヘラン路にはオンラインゲーム会社やポータルサイト運営会社、WEBサイト制作会社、デジタルコンテンツ制作会社、ベンチャーキャピタルなどがびっしり入居し、テヘランバレーと呼ばれた。江南には24時間働くベンチャー人が集まり、食堂もサウナも文房具店までも24時間営業していた。

 ベンチャーから始まり財閥並みの大手企業に成長したポータルサイトのNAVER、オンラインゲームのNCSOFTなどは江南を離れさらに南に移動、郊外に巨大な自社ビルを建てた。今では江南から南へ車で30分ほど離れた板橋(パンギョ)がITベンチャー街になった。政府のインキュベーションセンターも、財閥系のSI会社も板橋に引っ越した。その後静かになった江南は金融街になり、交通が便利で緑も多いことから再開発で高級マンションが建てられた。

 そこにグーグルがやってきた。

 グーグルキャンパスソウルは世界で3番目、アジアでは初めてのグーグルキャンパスである。三成(サムスン)駅、COEX展示場から近い場所にある。ここは起業したばかりか、もしくはこれから起業したい人のための拠点である。グーグルの説明によると、韓国のスタートアップコミュニティを活性化するのがグーグルキャンパスの役割だという。

キャンパスの中はどうなっているかというと、無料会員登録をすれば誰でも利用できるカフェ兼仕事場、起業して3年以内社員数8人以下のスタートアップ企業8社が入居しているオフィス、会議室、イベントスペース、シャワー室、授乳室などがあり合わせて2,000平米の規模である。オフィスは賃貸料が発生するが、江南地域では考えられないような破格な安さで入居できる。

 カフェの入り口には夢と情熱があふれるスタートアップの求人広告があり、それを眺めているだけで最近求められているIT技術やサービスは何があるのか、トレンドを把握できたりもする。

 会議室やカフェでは、グーグルのスペシャリストが起業したい人のために相談にのったり、他の国にあるグーグルキャンパスにいるスタートアップ企業や投資家と交流できるほか、育児のため会社を辞めた母親のために赤ちゃんと一緒に参加できる起業スクールを開いたり、毎週木曜の夜は起業に興味がある人向けのパーティーが行われるなど、毎日何かしらイベントが行われている。

 2015年10月27日からは成長と共生(Growth:Symbiosis)、多様性と共同(Diversity: Together)、スタートアップとグローバル(Startups:Global)をテーマに、スタートアップにとって必要な心構え、世界のスタートアップ動向、先輩スタートアップ企業の成功談などを聞く勉強会が行われた。講師はグーグル本社の社員やFacebook、Yahoo本社の社員たちで、大反響となった。


韓国でスタートアップを支援しているのはグーグルキャンパスだけではない。韓国政府も投資を惜しまないでいる。もちろん、スタートアップを支援する背景には深刻な就職難がある。それ以上に、大手企業に入社できても「38度線(38歳で部長クラスにならないとクビになる)」、「五六島(56歳まで会社に残る人は給料泥棒、釜山にある地名だが発音が同じなのでこう言う)」と呼ばれ不安な日々を過ごすよりは、自分の仕事がしたいという挑戦的な若者も増えている。

 グーグルキャンパスソウルのようなインキュベーションと人が集まって仕事もできるカフェを併設している施設は全国に数えきれないほどたくさんある。その中でも有名なのは、政府系の施設で「コンテンツコリアラボ」、「K-ICTデバイスラボ」、「スマートコンテンツセンター」、「創造経済革新センター」いうところがある。ここではアイデアさえ良ければ、技術開発や試作品作りを政府が派遣した専門家が助けてくれる。ほぼ無料でビジネスを始められるようサポートしてくれるのだ。アイデアさえいいものがあれば、政府がおんぶにだっこでスタートアップさせてくれる。

 それでもグーグルは「グローバル」という切り口で韓国の若者を魅了した。米国に拠点を置き世界中で影響力を持つグーグルならではの国際的なイベントも魅力的だし、グーグルと接点を持つことで、いいものを作ればグーグルに買収してもらえるチャンスもある。

 それに最近の韓国の若者は、英語も第2外国語もペラペラの人が多く、韓国の中だけで仕事するのはもったいない。取材で出会ったスタートアップの青年らは、ほとんどが起業は韓国でするが、いずれは他のアジアの国や、米国、ヨーロッパ、中東、アフリカなどに進出するという目標を持っていた。人材がどんどん海外に出ていくことを懸念する人もいるが、ネットワークでつながった今の世の中に国境はあまり意味がないかもしれない。若い人にはもっと自由に羽ばたいて活躍することを期待したい。




By 趙 章恩

Newsweek コラム&ブログ
韓国ソーシャルイノベーション事情
 2015年11月3
-Original column

[日本と韓国の交差点] 韓国政府が歴史教科書を国定に限定へ

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 地上波放送SBSのニュースは10月17日、歴史教科書の国定化に反対する市民団体がソウル市内で行った集会を取り上げた。全国466の市民団体が実施したこの集会「韓国史教科書国定化阻止ネットワーク」には800人が参加した(警察の推定)。中には制服姿で参加する高校生の姿もあった。

 ソウル大学や韓国科学技術院、梨花女子大学といった主な大学の入り口には、歴史教科書の国定化に反対する学生らが署名した手書きポスターが貼られた。ポスターは「国民の意見を聞くことなく政府が一方的に国定教科書にすると決めたのは間違いである。国定教科書にするのは歴史を歪曲するため。政権の正当性を主張する手段として利用することに反対する」といった内容だった。

 教育部(「部」は日本の「省」に当たる)は10月12日、「中学校の歴史教科書と高等学校の韓国史教科書の発行体制改善方案」を発表した。中学の歴史教科書と高校の韓国史教科書は国定のもの1種に限定し、全国の学校で「正しい歴史」を教えるという内容だ。現在は教育部が行う検定をパスした複数の教科書があり、各学校がその中から選択している。今回の教育部の決定により、全国の中学・高校は2017年3月の新学期から国定教科書で教えることが義務となった。

親日行為・独裁・朝鮮戦争

 掲示板サイトやSNSでは歴史教科書の国定化をめぐって賛成派と反対派が対立し、お互いを攻撃する書き込みが後を絶たない。韓国ギャロップが10月13~15日に行った世論調査では、歴史教科書の国定化に「賛成」が42%、「反対」が42%と意見が真っ二つに分かれた。反対派の中心は若い世代と野党支持者。例えば20代の66%が国定化に反対する一方で、60歳以上は61%が賛成している。

 ファン・ウヨ社会副総理は10月12日、「現行の教科書にある間違った記述を部分的に修正する方法では問題を根本的に解決することはできない。このため政府が直接、教科書を発行することにした。未来の主役となる青少年が正しい国家観と歴史観を持つようにすべきである。政府が教科書を作れば『(植民地時代に民族を裏切った)親日行為と軍事政権による独裁を美化し、特定人物を賛美することになる』と非難する意見もある。そういう非難こそ現行の歴史教育が特定の理念に偏っていることを示すもの」と発表した。

 与党のセヌリ党も国定化に賛同している。セヌリ党は「現行の教科書は高校生に北朝鮮の体制を賞賛する内容を教えている」「韓国戦争(本誌注:朝鮮戦争を指す)を起こしたのは北朝鮮ではなく韓国だと教える教科書もある」と主張。このような主張を書いた垂れ幕を製作し、全国各地に設置した。朴槿恵大統領も13日、歴史教科書を国定化する必要があると発言した。

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By 趙 章恩

 日経ビジネス
 2015年10月20
-Original column

[日本と韓国の交差点] TPP進展受け「韓国は参加しなくていいのか」の声

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TPP(環太平洋経済連携協定)交渉に参加する12カ国は10月5日、大筋合意に達したと発表した。韓国はこれまでTPP交渉参加にそれほど関心がなかったはず。だが5日の発表を受けて、韓国メディアは火がついたようにTPP特集を組み始めた。

 「超巨大貿易市場TPP妥結、一歩遅れた韓国」「TPP参加国のGDPは世界の4割、韓国はTPPに参加しないのかできないのか」「米日が安保に続いて経済同盟も強化、韓国は疎外」など、TPPに参加しなかった韓国政府を問い詰める見出しが続いた。

 米国は2011年から2013年4月まで、TPP交渉に参加するよう韓国に繰り返し呼びかけていた。韓国は一度断ったものの、2013年末には交渉に参加したいと米国に打診した。しかし既に時遅し。韓国がTPP交渉に加わるには、先にTPP交渉に参加している12カ国の同意が必要となった。

 韓国は、TPP交渉に参加している国と韓国がFTA(自由貿易協定)を締結すれば、これらの国が韓国のTPP交渉参加を断ることはないとして、熱心にFTA締結に取り組んだ(関連記事「韓国TPP交渉への参加~「実質的には韓日FTA」との批判も」)。

 複数の韓国メディアによると、米国通商代表部のウェンディ・カトラー代表補は、「韓国がTPPに参加するのは自然な流れだ」として、積極的に参加を呼びかけた。しかし、韓国政府は2013年4月、中国とのFTAを大事にして、TPPに参加しない方針を表明した。

 ところが、その3カ月後に、韓国外交部(「部」は日本の「省」に相当)はTPPが韓国の国益になるという分析結果を発表。2013年末になると韓国政府は「TPPに参加したい」と立場を変えた。今度は米国側が韓国のTPP交渉参加を断った。韓国メディアはそれ以降、TPPのことをほとんど報道しなくなった。

TPP交渉に参加しなかったことを与党が批判

 TPP交渉の大筋合意が報じられた翌日の10月6日、チェ・キョンファン経済副総理兼企画財政部長官は、「(韓国政府は)どんなかたちであろうとTPP交渉には参加する方向で検討している。ただし、米(コメ)市場は開放しない」「FTAに集中していたのでTPPは疎かにしていた」と発言した。韓国メディアは「韓国の経済政策を担当するトップがTPPに参加できず焦っているような姿を見せた」と大々的に報道した。

 10月7日、国会で外交関連の国政監査が行われた。国政監査とは年一度、国会議員らが行政機関の仕事ぶりを評価し、政策や予算の使い道などを監査するもの。議員らは国政監査の場に長官を呼び出して質問攻めにする。長官はうろたえ、議員が「そんなことも答えられないのか」と叱るのがお決まりの展開だ。

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By 趙 章恩

 日経ビジネス
 2015年10月13
-Original column

「韓国スマートヘルスケア最前線」朴大統領の肝いり、韓国医療機関の中国進出が本格化

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韓国大統領の朴槿恵(パク・クネ)氏は2015年9月2~4日、中国の戦勝節(抗日戦争勝利記念行事)に出席するため訪中した。韓国の企業人や保健医療分野の関係者が同行し、9月4日に上海で開催された、中国の企業人との商談会「韓中ビジネスフォーラム」に参加した。

 同フォーラムは中国国際貿易促進委員会、大韓商工会議所、大韓貿易投資振興公社が主管したもの。朴氏の訪中に同行したのは、病院や医療機器、製薬、化粧品、研究所など保健医療関連44社を含む韓国企業155社からの計156人である。

「韓中ビジネスフォーラム」の様子(写真提供:大韓商工会議所)
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 韓国保健福祉部によれば、この場で韓国の医療機関・医療機器の中国進出に関する15件のMOU(覚書)が締結された。MOUの主な内容は、ヘルスケアや遠隔診療、中国人患者の韓国医療観光商品開発、韓国医療機関の中国輸出、医薬品供給および製薬合弁会社設立、韓国医療機器の中国進出および合弁会社設立などに関するものである。

 「ヘルスケア」に関しては、韓国カトリック大学ソウル聖母病院と中国上海の瑞金病院が協力し、韓国が長年進めてきた「スマートヘルスケアシステム」を使った慢性疾患患者管理モデルを中国で構築することに合意した。中国はOECD加盟国の平均に比べて医師数が少ない。2012年における1000人当たり医師数のOECD加盟国平均が3.1人であるのに対し、中国は1.5人にとどまる。そして中国の医療機関は都市部に集中している。そのため、スマートフォンなどを使った慢性疾患のヘルスケアや遠隔診療を、どの国よりも早く本格的に導入する可能性が高い。

 韓国政府は2015年から、個人健康記録の基盤となるヘルスケアシステムの海外輸出に積極的な姿勢を見せている。韓国の病院とヘルスケアシステム、医療機器をセットで輸出できるよう、政府関係者が“営業マン”としてイベントに参加したり、韓国企業が海外の展示会に参加できるよう費用を補助したりしている。


医療ツーリズムで協力

 「医療観光」に関しては、政府系シンクタンクの韓国保健産業振興院と中国最大規模の旅行代理店である中国旅行社総社(China National Travel Service (HK) Group Corporation)がMOUを締結。中国人患者の誘致と安定した医療サービス提供に関して協力する。

 2012~2013年に韓国を訪問した医療観光客のうち、もっとも大きな割合を占めたのが中国人である。韓国保健産業振興院は、中国旅行社総社との協力を通じ、韓国医療サービスに対する信頼を向上させる狙いだ。韓国で治療を受けた患者が中国に帰国した後もケアを続けられるよう、「遠隔医療中国センター」を設立することも検討するという。

 ソウル大学病院は中国湖南省岳阳市とMOUを結んだ。2015年7月から既に、同市が建設するがん治療・美容整形・リハビリ・健康診断を専門とする1000床規模の病院を「国際ソウル大学病院」として運営するための事業妥当性調査を行っている。ソウル大学病院は病院の基礎設計から診療計画策定、病院情報システム構築、医療機器選定に至るまでのすべてについてアドバイスし、運営も担当する旨、岳阳市と議論を進めている。

 ソウル大学病院と岳阳市は開院準備に向けて、人材確保と教育訓練を目的に100床規模の現地病院を買収し、運営するトライアルに着手した。ソウル大学病院の説明によれば、岳阳市の関係者が韓国を訪問した際にソウル大学病院を見学。その医療サービスの質の高さに満足し、岳阳市の病院の運営を任せたいと依頼したことが今回のMOU締結につながったという。ソウル大学病院は2014年に、アラブ首長国連邦の王立病院の運営を受託した実績がある。


医療機器許認可の壁を超える

 「医療機器」分野では、韓国医療機器工業協同組合が、山東省の食品医薬品安全局と商務局、および江西省南昌市産業団地とMOUを締結した。韓国医療機器メーカーの中国進出を支援することが目的だ。中国との協力関係を強化し、より効果的な中国進出策を模索する。

 同組合によれば、従来は中国政府の自国企業保護政策により、外国メーカーの医療機器許認可がなかなか下りないという課題があった。認許可を受けやすくするために、韓国の医療機器メーカーと中国企業が合弁会社を設立。中国国内の産業団地で生産し、中国製品として同国内で販売するといった戦略も構想にあるようだ。

 空圧応用医療機器や高周波機器の製造開発を手掛ける韓国テソンマリフ社は中国Luye Medicals Groupに医療機器を輸出し、山東省威海市に工場を設立する。ハンリム医療器社は山東省烟台市に新設された烟台山病院に医療機器を納品する。この他、韓国の医療機器の中国への輸出に関する4件のMOUも締結された。

 「製薬」分野では、韓国トンアST社と中国HIGH HOPE INTERNATIONAL GROUPが不妊治療剤の中国輸出関連でMOUを締結。韓国ヒューオンス社と中国Northland Bio社はバイオ新薬開発関連で、韓国エップコンテック社と中国Sinomab社は抗体医薬品開発のための投資誘致と合弁会社設立に関して、それぞれMOUを締結した。

 韓国保健福祉部は「中国保健医療市場は年平均10%の成長を見せており、2020年には1兆米ドル規模になると見込まれる。韓国保健医療産業にとって中国はとても大切な市場。韓中FTAをきっかけに中国という巨大市場を占有し、保健医療産業分野の協力を拡大するためには官民の協力が欠かせない」とし、今後も韓国の病院や医療機器メーカーなどの中国進出をサポートする姿勢を示している。



[2015年09月24日]

By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」

日経デジタルヘルス

 -Original column

「韓国スマートヘルスケア最前線」Samsungが「睡眠」参入、センサーと家電で快眠環境

韓国Samsung Electronics社は「IFA 2015」(ドイツ・ベルリン)会期前日の2015年9月3日、「In Sync with Life」をテーマに同社のIoT関連製品を公開するプレス向けイベントを開催。2014年から開発を進めてきた非接触型睡眠センサー「SLEEPsense」を初披露した。2015年内に韓国をはじめ世界各国で発売する予定で、価格は未公表だ。

 SLEEPsenseは、厚さ1cmほどの手のひらサイズの円盤で「卓球のラケットのような形をしている」(韓国メディア)。ベッドのマットレスの下に置いておくだけで計測可能だ。ユーザーの睡眠中の脈拍や呼吸、体動、睡眠周期を測定し、睡眠のパターンを解析する。厚くないのでマットレスの下にあっても違和感を感じることなく、通常の状態で眠れるという。


SLEEPsenseの本体(写真提供:Samsung Electronics社)
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 SLEEPsenseでは、ユーザーの睡眠の質を分析し、よりよく眠れるようにスマートフォン・アプリでアドバイスする。スマートフォンとはBluetoothで接続。アプリでは睡眠時間のほか、睡眠中に呼吸が止まるといった異常呼吸や脈拍もチェックできる。睡眠の質向上に向けては、米Harvard University 医学部教授のChristos S. Mantzoros氏のチームからの医学的アドバイスがもらえるという。データが蓄積されていくことで、アドバイスの精度はより高まっていく。

 SLEEPsenseは、Samsung社製の家電とリアルタイムに連動し、ユーザーが熟睡できる環境を維持する。例えば、エアコンはSLEEPsenseの測定データに応じて、快眠できるよう温度設定を変える。テレビは、スリープモードにしなくても、ユーザーがテレビをみている途中で眠れば自動で電源を落とす。今後は、音を360度方向に出し、どの方向からも高音質のサウンドを楽しめる同社のモバイルオーディオとも連動させる予定。SLEEPsenseの測定データと音楽を組み合わせ、一人一人に合った快眠環境を提供する。照明やカーテン、コーヒーメーカーなど、眠りと目覚めに関係する製品との連動も計画しているという。

人生の「1/3」に向けた製品

 SLEEPsenseは、ウエアラブル端末を身につけるのが面倒と感じやすい高齢者や、なかなか寝付けなかったり、眠りが浅い、長時間寝てもすっきりしないといった悩みを抱える人に、最適の睡眠環境を提供することをうたう。測定データは電子メールで家族にも送信できるので、一人暮らしの高齢者や留学中の子供の睡眠をチェックするといった用途にも適するという。

 SLEEPsenseには米FDA(食品医薬局)の承認を得たイスラエルEarlySense社製の脈拍・呼吸センシング技術を搭載。Samsung社が2014年4月に2億米ドルで買収した米Smart Things社のIoTプラットフォームも活用した。家電をつなげてアプリから制御可能とする技術である。

IFA2015前日のプレスイベントに登壇したイ・ユンチョル氏
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 開発に携わったSamsung社 生活家電事業部 常務のイ・ユンチョル氏は「人生の3分の1は睡眠時間。にもかかわらず従来は、人が起きている時間に健康を維持するためのウエアラブル製品ばかりだった」と動機を述べ、SLEEPsenseの特徴は「データの信頼度が非常に高い」ことだと強調した。同社の報道資料によれば、SLEEPsenseの測定データの正確度は95~97%という。

 同社 生活家電事業部 副社長のパク・ビョンデ氏は「SLEEPsenseはSamsung社がIoTの世界に本格的に足を踏み入れたことを知らせる革新的製品。我々は、生活が楽になるだけでなく健康になれるようサポートするIoT製品を発売し続け、市場をリードする」とコメントした。生活家電事業部社長のユン・ブグン氏は、SLEEPsenseは各種センサーの中で「もっとも有用なセンサーになるだろう」と胸を張った


 [2015年09月21日]

By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」

日経デジタルヘルス

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「韓国スマートヘルスケア最前線」「病院」情報化から「病院間」情報化へ、実証実験始まる

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韓国政府は、医療とITの融合が医療現場を変え国民の幸せにも寄与するとして、複数省庁の協力のもとで、医療機関による医療情報共有を促進するための施策に力を入れている。こうした「医療情報共有活性化の土台構築」を、2015年度の保健医療分野の国家課題に掲げたほどだ。

 韓国保健福祉部は2015年8月、全国の医療機関の診療情報を医療機関同士で共有する「国家診療情報共同活用標準プラットフォーム」の構築に本格的に着手した(関連記事)。並行して、「ICT基盤医療情報交流標準モデル開発」の実証実験を行う。

 この実験では、勤労福祉公団病院(産業災害によるリハビリと介護を専門とする病院)2カ所、および産業災害指定病院6カ所の病院情報化システム同士をつなげる。患者の診療情報や検査記録を複数の医療機関が共有することで、重複検査や重複処方を防ぎ、医療費を節減できるかどうかを検証するという試みだ。2016年末までに150億ウォン(約17億円)の予算で実施。ICT政策を担当する未来創造科学部が主導し、保健福祉部や産業通商資源部(日本の経済産業省のような省庁)、雇用労働部(日本の厚生労働省に当たる省庁)が協力する。

独自システムが乱立

 診療情報や検査記録をプラットフォームに保存し、医療事務や保険請求、処方箋など病院の業務をすべて電算化する「病院情報化」は、韓国では1990年代に始まった。保健福祉部の調査によれば、1993年時点で既に韓国内の総合病院の37.3%が病院情報化を終えていたという。

 韓国の総合病院は、「最先端の技術を持つ病院」とのイメージを獲得するために、我先にと病院情報化を進めた。この過程では、標準化を考えることなく病院ごとに独自のシステムを開発した。2002年になってようやく大韓医師協会内に医療情報標準化委員会が発足する。ここが医療用語や電子カルテの書式などの情報の標準化作業に着手した。2004年になると、保健福祉部と大韓医師協会が米国のHL7(Health Level Seven)協会と契約し、保健医療情報交換のための国際標準規格を適用した標準化作業を始めた。

 このように、韓国では早い時期から医療機関が個別に病院情報化に取り組んだ。結果として標準化が遅れ、医療機関同士が横につながることは非常に難しいとされてきた。

 それでも、検査画像や電子診療記録を病院間で共有する診療情報共同活用は、2005年ごろから始まっている。大学病院は患者の同意を得て、全国にある指定協力病院との間で独自に診療情報システムを開発。患者情報を共有できる環境を整えてきた。総合病院は同じ系列の病院同士で診療情報を共有できるシステムを持っていたが、個人情報保護の問題もあり、その他の医療機関との連携は考えてこなかったのが実態だ。

システムの相互運用性を保障

 未来創造科学部による実証実験は、ICTを使って医療機関がそれぞれ開発した病院情報化システム間の相互運用性を保障し、横につなげるものである。実証実験を進めつつ、街の医院と総合病院、勤労福祉公団病院の垂直・水平連携に向けた情報アーキテクチャー(情報をわかりやすく伝える方法)も検証するという。

 さらにこの実験では、産業災害患者一人一人に合わせたリハビリサポートサービスも開発する。対象は、複数の病院で検査・治療をし、リハビリを目的に勤労福祉公団病院に通う患者だ。プラットフォーム上に登録された患者の医療情報を組み合わせ、スマートフォンやタブレット端末を経由して患者のリハビリ治療を支援。自己管理を持続させるためのコンテンツを提供する。リハビリサポートには服薬管理も含む。服薬アプリを通じて服薬時間や服薬量、服用法に関する正確な情報を提供し、薬の飲み忘れや飲みすぎを防止する。

 これと似た実証実験として、大邱市では2014年12月から医療情報交流システム(Health Information Exchange)をテスト稼働している。地域内の医療機関ごとに保存している電子カルテを国際標準に従ってまとめて管理。医療機関同士が患者の医療情報を共有することで、重複検査や過剰診療を減らし、医療費を節減しようという実証実験である。ここでは、医療情報システムの相互接続性を推進する国際プロジェクト団体IHE(Integrating the Healthcare Enterprise)の運用体制を利用している。2015年には医療映像情報交流(Image Exchange)もできるよう、システムを拡大した。

 医療機関同士の医療情報共有と医療費節減の関連性については、既にいくつかの先行研究がある。2010年にソウル大学病院が行った研究では、医院から大学病院へ転院した患者を、2つのグループに分けて実験。プラットフォーム上で診療情報を共有した患者グループと、既存方式で診療記録のコピーと診療依頼状を持参した患者グループの診療費を比較したところ、診療情報を共有した患者グループの検査件数・処方件数はそうでないグループに比べて63%ほど減り、診療費は13%ほど安くなったという。


 [2015年09月04日]

By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」

日経デジタルヘルス

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「韓国スマートヘルスケア最前線」「診療情報を全国の病院で共有」、国は本腰も現場は反発 [2015年09月02日]

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 韓国の保健政策を担当する保健福祉部(部は省)は2015年8月から、全国の医療機関の診療情報を医療機関同士で共有できるプラットフォームの構築に着手した。個人もこのプラットフォームにアクセスすると、全国の医療機関で受診した診療情報を確認できるようになる。

 「国家診療情報共同活用事業」と呼ぶこのプロジェクトは2004年に始まったもの。保健・医療用語の標準化作業や、医院と総合病院間・地域病院間の診療情報共有実証実験を経て、ようやくプラットフォーム構築のスタートラインに立った。準備期間だけで12年に及ぶ一大プロジェクトだ。

 2015年内にシステム設計を終え、2017年中には全国の医療機関が本格的にプラットフォーム上で診療情報を相互利用できるようにする。医療機関が共有できる診療情報は、患者の同意を得た項目だけにする。

 プラットフォーム構築はキャリア大手のKTと名門私立大学である延世(ヨンセ)大学病院の合弁会社である「フーヘルスケア」、およびシステム構築会社の「ティープラス」のコンソーシアムが担当する。

韓国の大邱市に数ある病院の中でも、長い歴史を持つKeimyung University Dongsan Medical Center の外観(この病院は本文とは直接関係ありません)


患者にも医療機関にもメリット見込む

 診療情報の共有とは、地域や規模に関係なくすべての医療機関が患者の診療情報・検査記録などの医療情報を共通プラットフォーム上に保存し、共同活用することを指す。医療機関の間で行う診療依頼や転院手続きもこのプラットフォーム上で行えるため、患者は書類をそろえて別の病院に行く必要がなくなる。転院の際に診療記録のコピーを持参しなくても治療を継続できるので、手数料や診療費を節約することもできる。

 医療機関の間で診療情報などを共有できるようになれば、患者の立場からは、病院を変えるたびに検査し直す必要がなくなり、すぐに専門医の診療を開始できる。重複検査がなくなれば、患者が病院ですごす時間に検査などによる苦痛を減らせるメリットもある。複数の病院に通う患者の場合、薬手帳を持っていなくても、医療機関が確認して同じ薬を重複処方しないよう調整可能だ。

 救急で病院に運ばれた時も、プラットフォーム上の診療情報を参照してすぐに処置してもらえる。例えばMARSのような感染病が発生した場合、プラットフォーム上の診療情報を確認すれば、感染者と同じ病室にいたとか、感染者と同じ病院に通っていたなどの情報がすぐわかり、すばやく対処できる。

 保健福祉部は、国家診療情報共同活用事業によって「患者の基本情報、診断内容、投薬内容、検査内容、予防接種、手術情報、アレルギー情報など患者の状態を把握するために不可欠な情報を共有でき、過剰診療や誤診の危険性が減る。その結果、医療サービスの質が向上する」としている。他にも「医療機関同士の共同診療や協力診療が増えることで医療サービスの地域的不均等を緩和できる」「初期検診を省略できるので国民の医療費を節約できる」「医院から介護施設まで患者を持続的に管理できる」などのメリットを挙げる。

 病院側のメリットについては、保健福祉部は収益性の改善を挙げる。「複数の病院とよりスムーズに協力診療できるため、すべての病院が高額の医療機器を買いそろえる必要がなくなる。医療機器の重複投資を防ぐことで、それぞれの病院が保有している医療機器の活用頻度が高くなり、病院の収益性がよくなる」と分析している。


医療機関側は「必要ない」「収益減る」

 今回の事業は、保健・医療用語の標準化から始まった。保健福祉部は2004年から保健・医療用語標準化の研究に取り組んできた。2012年には韓国保健福祉情報開発院(保健福祉情報化システムの開発や運行のために設立した保健福祉部傘下団体)にこの業務を委託。同院と医師会・専門家グループが2014年7月、医療機関の診療記録作成に必要な用語19万3721を網羅した「保健・医療用語標準案」を公開した。医療界の意見を反映して2014年9月に国家標準として告示済みである。

 保健福祉部は「医療現場で使う手術・検査などの医療用語は、同じ意味でも複数の単語や表現がある。病院間で診療情報を共有するには互換性の問題があった。プラットフォーム上で複数の医療機関が診療情報を共有するためには、違う単語でも同じ意味を持っていることをシステム上でサポートする必要があり、代表語と同意語をまとめる“概念化”の作業が必要だった」と説明する。用語標準化の他にも、検査画像をやりとりするための標準化を行い、医療法や個人情報法に違反しないよう業務ガイドラインを制定した。

 ところが、韓国メディアによると医療機関は診療情報共有を歓迎していない雰囲気だ。総合病院や大学病院は「患者の引っ越しによる転院や、医院から大学病院に転院する場合、診療記録のコピーと診療依頼状などで十分情報を得られる。プラットフォームから他の病院の診療記録を見る必要性はあまりない」「他の病院で行った初期検査をもとに診断するのは不安があり、検査し直すしかない。検査をしないと病院の収益も減る。保険点数の調整も必要だ」といった不満を漏らしているという。



By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
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もう自撮り棒はいらない、LG電子スマホV10の120度レンズが面白い [2015年10月9日]

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 日本より1カ月半遅れて、11月初旬に韓国で発売予定のiPhone6s。アップルが新機種発売を予告すると、サムスン電子とLG電子はそれよりも前に新機種を発売する。今回もiPhone6sを待ちきれず機種変更するユーザーを狙ったのか、サムスン電子は120月にGALAXY NOTE5のシルバーチタンを、LG電子は自信作として大々的に宣伝していた「V10」を発売した。

 LG電子が10月8日発売したV10は、「フロントデュアルカメラ」と「セカンドスクリーン」が話題になっている。


写真1●V10(LG電子提供)
LG電子の新機種スマートフォンV10。80度と120度、2つの画角のレンズがついたフロントデュアルカメラとセカンドスクリーンが特徴。

 V10はスマートフォンでは、初めてフロントカメラを2つ取り付けた。それぞれ500万画素の80度と120度画角のカメラで、80度は既存のフロントカメラだが、120度のフロントカメラを使うと手を伸ばすだけで7~8人が一緒に写真に収まる。

 最近、韓国、中国、日本だけでなく欧米の観光地でも普通に見られるようになったスマートフォン用の自撮り棒。韓国では、特に女性の間で「自撮りは大好きだけど人前で自撮り棒を使うのは恥ずかしい」、「自撮り棒がバッグに入りきらず持ち運びが面倒」という意見も多かった。そのせいか、フロントカメラに「セルフィー(自撮り)レンズ」と呼ばれる広角レンズを付けるのも流行っていた。広角レンズを付ければ画角が広くなるので、自撮りでも顔だけアップになることはない。こうしたフロントカメラの画質だけでなく、自撮りが楽なレンズがいいというニーズに応えたのが、V10のフロントデュアルカメラである。


写真2●レンズの違い(LG電子提供)
80度と120度では自撮りできる画面の大きさがここまで違う。もう自撮り棒はいらない?

 V10のメインカメラは1600万画素(F1.8/OIS 2.0)。LG電子は、一眼カメラのようなきれいな写真が撮れるだけでなく、動画撮影機能も優れているとアピールした。動画撮影時の手ぶれや、風の音のせいで雑音がひどく音声が聞こえない、カメラを早く動かしすぎたとか物体が早く動くので残像が残ってしまった、といった素人撮影の問題を解決する機能もある。


次ページ: iPhone6sにもSNS投稿用に写真をGIFファイルに編集する機能があるが、V10は自動編集で15秒の動画…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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スマホ悪性アプリ感染拡大を防げ!韓国キャリア3社「モバイル応急サイバー治療サービス」稼働 [2015年10月5日]

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9月27日は、旧暦の8月15日で韓国のお盆である秋夕(チュソク)だった。お盆になると韓国も日本と同じくお中元を贈り合う。ところが、お中元の配送案内を装ったスミッシング(Smishing)被害が後を絶たず、問題になっている。

 スミッシングは、ショートメッセージを使った詐欺だ。政府機関や銀行・キャリアからの案内に見せかけて、URLをクリックするように誘導し、サイトに接続すると課金される仕組みになっている。

 韓国金融監督院はお盆連休の間、配送会社や知人からのお盆挨拶に見せかけたショートメッセージに注意するよう呼びかけた。お盆が近くなると、宅配便会社を名乗り「中元を届きに行ったが不在だったので持ち帰る、問い合わせはこちらへ」という内容のショートメッセージが大量に出回った。例えば、配送案内だと信じてクリックしたところ、アプリケーションのインストールが始まり課金されてしまった、と警察に被害届けを出した人もいたという。

 本物の配送会社の案内ショートメッセージには、問い合わせ番号や配送時間などが書いてあるが、スミッシングにはこうした情報はない。韓国金融監督院と警察は、ショートメッセージにURLが書いてある場合はまず疑え、と注意を促している。さらに、アプリケーションをダウンロードする際には、レビューを読んで信用できる会社のものかどうか確認し、少しでもおかしいと思ったらインストールしないように、とも呼びかけている。

 こうした被害をスマートフォンに、ウイルス退治アプリをインストールすることで防ごうという動きも出ている。韓国のキャリア3社は、10月1日より「モバイル応急サイバー治療サービス」を始めた。自分でも知らないうちにスミッシング被害にあい、悪性アプリケーションがインストールされていた、などということが起こらないようにするのが目的だ。

写真●韓国のシェア1位キャリア、SKテレコムが加入者に提供している無料のアンチウィルスアプリケーション「Tガード」
スミッシングにより悪性アプリケーションがインストールされると加入者に削除するよう注意する。

 個人情報やモバイルバンキングの暗証番号などを抜き取る悪性アプリケーションが、インストールされたのを知らずにスマートフォンを使い続けると、犯人グループによって遠隔操作で自分の端末から他の人にスミッシングのメッセージを送ってしまうこともある。他の人に被害を拡散させないためにも、スミッシング被害にあったスマートフォン端末を早く見つけ、処置をする必要がある。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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