サムスンとLGの「折りたためるディスプレイ」スマホ競争、iPhoneも後追いする? [2015年9月25日]

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複数の韓国メディアによると、サムスン電子は「Project Valley」という名前で、折りたためるディスプレイを搭載したスマートフォンを開発しているという。早ければ、2016年1月にはどういうスマホなのか公開される予定だそうだ。

 折りたためるディスプレイのデザインは紳士物の財布のような感じで、ディスプレイが内側に曲がるのか外側に曲がるのかはメディアによって意見が違う。折り曲げた状態でもスマホを使えるようにするため、ディスプレイが外側に曲がるようにするのではないか、とも言われている。サムスン電子の関連会社であるサムスンディスプレイは、既に2014年ディスプレイの曲がる部位の留め具に関する特許を米国特許庁に出願したという。2015年6月には、サムスン電子が3面鏡のように2回折りたためるタブレットPCを開発しているとして話題になったことがある。


写真●サムスン電子のGALAXY S6 Edge+
サムスン電子はEdge+よりさらに進んだ、ディスプレイを折り曲げて小さくたためるスマホを開発している。2016年1月にはどんなものか公開する予定だ。

 サムスン電子は、GALAXY 6 Edge+に続く新しいディスプレイを搭載した新機種で心機一転、ハイエンドスマホの販売台数を伸ばしアップルに対抗する計画のようだ。サムスン電子の曲がるディスプレイ搭載したスマホに関しては、2015年に入ってから何度も話題になっている。2015年の年初までも2~3年後にはスマホに曲がるディスプレイを搭載するという話だったが、それが一気に縮まり2016年になった。

 その理由は、サムスン電子のGALAXY S6などの新機種が予想よりも売れなかったからと見られる。

 韓国メディアは連日、「サムスン電子はハイエンドスマホではiPhoneに負け、ローエンドスマホは中国勢に負けている。サムスン電子が世界のスマホ市場をリードすることはもうないのか」と懸念する報道をしていた。サムスン電子のProject Valleyが話題になってから、韓国メディアの雰囲気も変わった。「サムスン電子が折りたためるスマホを発売すれば、スマホ市場は大きく変わる。新しい需要が生まれる。サムスン電子はIT業界に革命を起こすだろう。次のスマホはディスプレイで勝負が決まる」などとサムスン電子の技術に期待すべきという記事が溢れている。


次ページ: 一方、LG電子の関連会社であるLGディスプレイは、数十万回折り曲げても平気なスマホ向けタッチディスプレイを開…



趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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LINEの成長が止まったから?韓国最大ポータルサイトNAVER、ロボット・スマートカーなどへの投資を発表 [2015年9月18日]

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韓国最大のポータルサイト「NAVER」の運営会社であり、日本のLINEの親会社であるNAVERは9月14日、今後5年間ハードウエアに1000億ウォン(約110億円)を投資すると発表した。

 NAVERが投資するのはロボット、スマートカー、スマートホームなど。NAVERがポータルサイト・SNS運営やソフトウェア開発で蓄積した技術をハードウエアに応用し、新しいビジネス分野を探すのが目的である。

 投資計画は、2020年までロボットに400億ウォン(約44億円)、スマートカー・電気自動車に400億ウォン(約44億円)、スマートホームに100億ウォン(約11億円)、ハードウエア基盤ベンチャー投資に100億ウォン(約11億円)、合わせて1000億ウォン(約110億円)である。NAVERは2014年1年間、研究開発に約3400億ウォン(約374億円)を使っている。

 この投資計画を、9月14日開催された韓国最大規模の開発者カンファレンス「第8回DEVIEW」で公開した。基調演説をしたNAVERのソン・チャンヒョンCTOは、「ロボティクス」「モビリティ」「スマートホーム」の3つの分野でハードウエアとソフトウエアの技術コラボレーションをし、韓国や海外の大学と共同研究・開発をするために投資すると発表した。ロボティクス、モビリティ、スマートホームで使えるプラットフォームとソフトウエアを開発し、海外でもサービスを提供したいという。


写真●ソウルの南にあるNAVER本社ビル
NAVERはインターネットビジネスに留まらず、グーグルのようにハードウェア分野にも投資することを発表した。

 NAVERの技術研究所である「Naver labs」が、「プロジェクトBLUE」という名前でこの研究開発を進めるという。現在プロジェクトに参加する外部の専門家は、ロボット研究で有名なUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)デニス・ホン教授が決まっている。Naver labsは韓国に限らず海外から幅広く研究員を採用し、海外の大学にいる研究員らと情報交換できるネットワークを構築するという。技術力のあるベンチャーや中小企業にも投資する。


次ページ: 韓国メディアは、「NAVERもグーグルのようにハードウエアに投資」といった見出しで、NAVERとグーグルと比…


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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[日本と韓国の交差点] 国慶節にらみ韓国版ブラックフライデー開催

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2014年11月に行われた米国のブラックフライデーセールは韓国中が大騒ぎになった(関連記事米国の「ブラックフライデー」に沸く韓国消費者)。ブラックフライデーは11月第4週目の金曜日のこと。米国ではこの日からクリスマスセールが始まる。大騒ぎになったのは、米国のショッピングサイトで家電や洋服などを購入して韓国に海外配送してもらう方が、韓国で購入するより断然安い――という逆転現象が起きたからだ。

 そして今年はなんと、韓国政府が「韓国版ブラックフライデーセール」を企画した。企画財政部(部は日本の省に相当)は9月22日に「コリアブラックフライデー推進計画」を発表し、セールを行うよう韓国の大手流通業に対して協力を要請した。

 コリアブラックフライデーセールは、10月1日から2週間の予定。韓国中のデパート、免税店、ショッピングモール、アウトレット、ディスカウントショップなど、全国の小売店2万6000店舗が参加し、大々的にセールを行っている。国慶節の連休を利用して韓国を訪問する中国人観光客の爆買いを狙った企画だ。もちろん、韓国全体の消費を伸ばして内需を復調させる目的もある。

 しかし、政府の発表から10日間しか準備期間がなかったため、メーカーは参加せず、流通事業者だけが参加することになった。何を安く売ればいいのか、セール品目をめぐり、流通事業者とメーカーの間でトラブルなどが生じた。このため、流通事業者だけが自社の販売手数料を安く抑える形でセールを実施することになった。割引幅が大きくないので、本当に盛り上がるだろうか、懸念する声もあった。

 企画財政部は、地域ごとにある市場の流通業者にもコリアブラックフライデーセールに参加するよう求めていた。開始から2日目に当たる10月2日になって、中小企業庁の担当者が全国に200以上ある市場を訪問し、「コリアブラックフライデーセール宣伝用の垂れ幕や懸賞イベントにかかる費用として500万ウォン(約55万円)を支援するので申請せよ。その代わりセールは7日以上続けないといけない」と説明して回っているそうだ。当然、市場で働く人々からは「今からではセール品目を用意できない」と不満が漏れ、セールをする店舗としない店舗に分かれるようになった。

3大デパートは20%を超える売り上げ増

 米国のブラックフライデーセールは企業が自ら行う安売り。定価から7~8割を割り引く商品もあるため人気が高い。消費者はみな、「買わないと損をする」と考えている。一方、コリアブラックフライデーセールは政府の指示でやるしかないセール。果たして消費を伸ばす効果はあるのだろうか。

 今のところ、効果は出ている。複数の韓国メディアによると、韓国の3大デパートである、ロッテデパート、新世界デパート、現代デパートの売り上げが伸びた。ロッテデパートは10月1~3日の売上高が前年同期比23.6%伸びた。特に靴、バッグ、アウトドアファッションがよく売れた。同社は創業者の長男と次男の間で起きた経営権紛争が「ロッテ王子の乱」と報じられ、ビジネス以外の面で注目を集めていたが、ブラックフライデーを機にイメージの挽回を狙ったようだ。どのデパートよりも積極的に値下げし、セール品目も豊富に用意した。

 新世界デパートは10月1~3日の売り上げが同36.7%伸びた。衣類、ジュエリー、時計が特によく売れた。現代デパートはおなじ期間の売上高が同27.6%伸びた。現代デパートも衣類、雑貨などファッション部門が好調だった。

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By 趙 章恩

 日経ビジネス
 2015年10月5
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[日本と韓国の交差点] 就職難が変えた韓国の家族の風景

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9月27日は陰暦8月15日。韓国ではお盆、秋夕(チュソク)である。土日を入れて4日間の連休だった。秋夕には親戚一同が集まり、新米のご飯と収穫したばかりの果物、たくさんの料理を作り茶禮(チャレ、お正月とお盆に行う先祖のための祭礼)を行う。お盆が近づくと「主婦の苦労を知ろう」「夫の実家だけでなく妻の実家にも行こう」など、テレビの秋夕マナーキャンペーンが始まる。

 今年は特に、親戚が集まった場で姪や甥に「就職は決まったの?」と尋ねるのは絶対タブーだと、地上波テレビのSBS(ソウル放送)がマナーキャンペーンを行った。就職情報サイトJobkoreaが9月16日にアンケート調査を行い、「秋夕で集まった親戚から聞かれたくない質問」を聞いたところ、1位が「就職は?」、2位が「年俸はいくら?」、3位は「太ったんじゃない?」、4位は「結婚はいつするの?」だった。

 Twitter Koreaも9月「#マナーが_お盆を_作る(映画『キングスマン』のセリフをパロディにした)」キャンペーンを行った。家族間、親戚の間でもマナーを守って楽しいお盆連休を過ごそうという内容だった。Twitter Koreaは「秋夕には親戚から嫌な質問をされがちなので行った」と説明した。

 韓国メディアは2015年のお盆について、多くの大学生が帰省せず、会社員は海外旅行、帰省渋滞はいつもより少ないと報じた。地上波のMBCニュースは9月27日、帰省ラッシュはもう昔話だと報じた。車のナビゲーションシステムを使って渋滞を迂回する、高速鉄道を利用するなどの変化もあるが、秋夕の祝い方も変わったという。昔は秋夕の連休の間、家族や親戚とずっと過ごすのが当たり前だった。ところが最近は親戚が集まるのは半日もしくは1日だけ。あとはショッピングや旅行をして連休を過ごすという。

 大学生の場合は、「親戚に会って就職のことを聞かれたくない」という理由で帰省せず、就職のための勉強を続ける割合が非常に高いという。韓国の大学の学生会はお正月とお盆にソウル市内の大学キャンパスから各地方へ向かう帰省バスを運行してきた。通常の高速バスより3割ほど安く利用できるのでとても人気があった。ところが今年は利用者が激減して帰省バスを運行しない大学が増えたという。

工学を専攻しないと就職できない

 秋夕の風景を変えたのは、なんといっても史上最悪の就職難。韓国では就職難と青年失業が何年も前から問題になっているが、報道をみると2015年は特に厳しいようだ。

 9月19日付の朝鮮日報によると、就職難により韓国では文系の大学生が複数専攻で工学部を選択する割合が急増した。2011年まで、文系の学生が工学部を複数専攻する割合はゼロに近かったが、2015年からどの大学でも目立って増え始めたという。企業が商品の企画や営業、事務の仕事までも工学部出身を優遇するので、学生らは仕方なく工学部を複数専攻しているという。

 ソウル大学の場合、2015年3月に入学した文系新入生の24.4%が複数専攻するなら工学部を選択すると答えた。大学も就職サポートのため、文系と理系に分けず本人の望み通り複数専攻をできるよう制度を変えている。文系・理系を決めず、色々な専攻科目を受講できるようにする大学もある。

 政府機関の韓国産業人力公団は、2015年9月から文系大学生を対象に工学部の科目を教える講座を始めた。工学部の学生が高校で学ぶ内容からやり直し、工学部を複数専攻できるようにする講座である。韓国の大手企業は、複数専攻で工学部を選択した学生も通常の工学部出身者と同じように優遇するので、この現象はなくなりそうにない。

 雇用政策を研究する韓国雇用開発院の調査によると、2014年末時点で理工系卒業生の就職率は65.6%、文系卒業生の就職率は45.5%と差が大きい。全国経済人連合会(韓国の経団連のような団体)が韓国の企業を対象に行った2015年度新規採用調査でも、サムスン電子、LG電子、現代自動車は新規採用の8割以上を理工学出身にすると答えた。

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By 趙 章恩

 日経ビジネス
 2015年9月29
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[韓国ソーシャルイノベーション事情] SNSとビッグデータから生まれたソウル市「深夜バス」

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深夜バス路線 
ソウル市中心部のチョンガクなどを起点にほぼ全域を網羅している

 2015年9月7日、ソウル市は「ソーシャルでソウル市民を笑顔にさせよう」というテーマでセミナーを開いた。このセミナーは、「ソーシャル特別市」を目指し、2011年あたりからSNSとビッグデータで行政を変え続けてきたソウル特別市(特別市は都のような意味)の事例を発表する場であった。

 セミナーでは、SNSに動画を投稿して月3000万ウォン(約330万円)を稼いでいるというBJ(Broadcasting Jockey、日本のニコニコ生放送のような個人放送局のパーソナリティ)も登場し、韓国におけるSNSの影響力の強さについて語った。行政におけるSNSの利活用効果を研究している大学教授と大学生らも参加し、ソウル市の持続可能なSNS活用法について議論した。教授らは「今まで韓国の行政機関はトップダウン式で政策を決めがちだった。SNSとビッグデータを活用することで、市民の意見を幅広く汲み取れる。公共政策は問題認識、政策立案、執行、評価の4段階を繰り返すが、市民の意見を政策に迅速に反映することで効率が上がる」とソウル市の動きを前向きに評価した。ソウル市はビッグデータ専門家を雇い、データに基づいて未来を予測、前もって備える行政を目指している。

 Twitterを使い積極的に市民とコミュニケーションすることで有名なパク・ウォンスン ソウル市長もセミナーに参加し、若い世代の意見を大事にしたいと語った。パク市長のTwitterIDは@wonsoonparkで、自身のプロフィールを「Social Designer」と書いている。


予算を使わず市民の生活を快適に
ソウル市がSNSとビッグデータで市民の生活をより便利にした代表的な事例が「深夜バス」である。2013年登場した深夜バスは、市長のSNSに寄せられた市民の意見から始まった。

 「深夜の時間帯はなかなかタクシーがつかまらない」
「アルバイトを終えて深夜割増のタクシーに乗って帰ると元も子もない。庶民のためにバスを24時間運行してほしい」


 ソウル市は試験的に2012年末、市内バスの運行を2時間延長してみた。SNS上で市民から喜びの声が届くと、ソウル市は通信キャリアのKTと提携、本格的に深夜バス運行について研究を始めた。個人情報は侵害せず、公益のためにデータを使う、ということでKTもデータを提供した。

 ソウル市はKTから無料で30億件もの通話量データをもらい、夜12時から朝5時まで携帯電話の受発信が多い基地局の位置を調べた。交通カード会社とタクシー会社の協力を得て受け取った深夜時間帯のタクシー乗下車位置データ500万件を基地局の位置と組み合わせ、深夜時間帯の人の流れを1キロ単位に区切ってソウル市の地図に記録した。その流れをつなぐ形で、2013年4月、2つの路線で深夜バスの運行を始めた。運行は地下鉄の終電が終わった時間から始発が出るまで、40~45分ごとに1台にした。

 深夜バスは常に定員の120%も乗車するほど人気を集めた。市民に絶賛された深夜バスは2013年9月から路線を増やし、2015年9月現在、8路線を運行している。ソウル市に「都バス」のような市営バスはないが、ソウル市のバス会社は市の補助金をもらっているので、協力体制は整っていた。

 深夜バスの運賃は昼間のバスの1.5倍程度で、庶民にも負担が少ない。韓国のバスは(地下鉄も)乗り換える度に料金が発生するのではなく、乗った総距離分の料金を払う。深夜バスを乗り換えればタクシーを利用しなくても自宅まで帰れる。ソウル市の無料交通アプリを利用すれば、バスが今どこを走っているのかがわかるので、バスを待ち続けることもない。

 ソウル市の深夜バスは企業から無償でデータをもらい、市が持っているデータもフルに活用したことで予算も大幅に節減できた。通常この規模のバス路線開発には100億ウォン(約11億円)以上かかるそうだが、ソウル市はたった2000万ウォン(約220万円)の予算しか使わなかった。

 現在、ソウル市はSNSとビッグデータを組み合わせて、市内のタクシー配車改善作業、お年寄りの交通事故パターン分析などを行っている。



ソウル特別市のオープンデータプラザ 市に集まった公共データを広く利活用してもらうためデータとAPIを公開している。

「ソーシャル特別市」を目指すソウル市のSNS活用
ソウル市は今年7月、「ソウル市ソーシャルメディア白書」を発行した。SNSを介して行われた、市民と市のコミュニケーションの記録である。

 2008年のブログ開設から始まったソウル市のソーシャルメディアは、2009年Twitter、2010年Facebook、2013年KakaoStory(無料メッセンジャーKakao Talkユーザーが使うミニブログ)、2014年Instagramに公式IDを作り、市民とやりとりしている。白書によると、2012年11月から2014年12月まで、ソウル市の公式ID宛に寄せられた市民のメッセージは2万8289件、ソウル市のフォロワーはSNSすべて合わせて約39万人だった。

 通常、SNSではTwitterやFacebookで同じ情報を発信することが多いが、ソウル市はSNSを使い分けている。災害関連緊急メッセージはTwitter、より詳細に伝えたいことがある時はFacebook、ソウル市の各種イベントの写真はInstagram、といった具合だ。市民はソウル市のSNSからイベント情報、地域情報、旅行情報を得るため、また市内で経験した不便な点を直してもらう苦情受付窓口として使うためフォローしている。

 ソウル市は白書を通じて、「SNSの中に人がいる。市民のことを知るため、市民の多様な意見を政策に反映するため、SNSを活用している。ソーシャルメディア白書は、市民とのコミュニケーションに悩んでいる行政担当者にとって良き資料になるだろう」と明かした。

 日本でも行政機関がTwitterやFacebookなどSNSを使って情報を発信することが流行っている。しかしなかには1年以上も更新がストップしていたり、一方的な告知や宣伝ばかりで市民の意見を汲み取るコミュニケーションになっていなかったりと、上手く活用している事例はそれほど多くない。SNSのIDはひと通り作ったものの、つぶやきを行政にどう反映したらいいのかさっぱりわからないという自治体の担当者にとって、ソウル市は良い事例研究の対象になるのではないだろうか。



By 趙 章恩

Newsweek コラム&ブログ
 2015年10月
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[IFA2015]韓国ではサムスン電子GEAR S2の特別なバッテリーとSLEEPsenseに注目 [2015年9月11日]

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9月4日から9日までドイツのベルリンで国際家電展示会(International Consumer Electronics Fair)が開催された。韓国では、やはりサムスン電子とLG電子がどのような新商品を展示したのかに話題が集中した。

 目を引いたのは、サムスン電子の丸いスマートウォッチ「GEAR S2」である。

 韓国で10月2日に発売予定のGEAR S2は、サムスン独自のOS「Tizen」を使用しているが、サムスンのスマートフォンだけでなく、アンドロイドOSのスマートフォンとiPhoneとも連動する方向で調整しているという。値段もApple Watchと同じ程度にする予定。韓国メディアは、サムスン電子がiPhoneユーザーも囲い込むことでGEAR S2の販売台数を増やすのが目的と見ている。

 GEAR S2は、フィットネス機能、遠隔で自宅の家電を動かしたり照明を付けたり消したりできるスマートホーム機能、NFCモバイルペイメントのSamsung Pay機能などを搭載している。


写真●IFA2015 サムスン電子ブース(サムスン電子提供)
サムスン電子は新しいスマートウォッチGEAR S2、人体に接触させなくても睡眠中の脈拍や呼吸を分析してアドバイスしてくれるSLEEPsense、IoTファッションなどを初公開した。

 韓国で注目を浴びたのは、サムスンSDIが開発したGEAR S2のバッテリーである。GEAR S2のディスプレーは、旧版の2インチより2cmほど小さくなった1.2インチ。バッテリーの容量は300mAhから250mAhへとそれほど減っていない。当初韓国メディアは、1.2インチならバッテリーは200mAhぐらいだろうと予測していたが、この予想を上回った。

 サムスンSDIはGEAR S2のために、2014年から「Free Form」バッテリーを開発していた。Free Formとは決まった形ではないという意味で、バッテリーを四角でも丸でもない自由な形に作れば、ウエアラブル端末のスペースを有効に使い、最大限容量の大きいバッテリーを搭載できることから開発を進めた。GEAR S2のバッテリーは、余った空間にぴったり入るように、上は四角で下は丸い形になっている。通常のバッテリーよりも、25%ほど容量が大きくなった。GEAR S2は、一度のフル充電で、3日ほどバッテリーが持つという。


次ページ: 韓国メディアによると、世界中で発売されている腕につけるウエアラブル端末は161あり、2014年に2270万台…\


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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GALAXY一色の韓国、シャオミー韓国進出で低価格スマホ競争始まる [2015年9月4日]

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今年8月末の段階で、韓国で最も売れたスマホはGALAXY NOTE5だった。キャリア3社の集計によると、8月20~26日のスマホの販売シェアはGALAXY NOTE5が22.3%で1位だった。同じ日に発売したGALAXY S6 Edge+は、3%に過ぎなかった。Sペン(電子ペン)を搭載したGALAXY NOTEシリーズの根強いファンが多いことや、GALAXY NOTE4より端末価格が安くなったことも影響している。

 しかし9月に入ってからは、再び中国メーカーの激安スマホが注目を浴びている。韓国の中小企業も、韓国で企画・設計し中国で製造した激安スマホを発売した。韓国では、端末購入補助金や約定割引といった制度が厳しく規制されているので、月々の通信料金に占める端末価格の負担がかなり大きいため、メーカーに関係なく安くていいスマホを求めるようになった。


写真 キャリアのSKテレコムが激安スマホ「LUNA」を独占販売(SKテレコム提供)
9月4日より、韓国のパソコンメーカーTGアンドカンパニーが企画し、Foxconnが製造した激安スマホ「LUNA」の独占販売を開始。シャオミーの韓国進出計画もあり、激安スマホ競争はますます激しくなっている。

 中国シャオミーの端末は、これまで並行輸入品が韓国のインターネットショッピングモールで販売されていた。9月2日、複数の韓国メディアは、シャオミーが韓国最大のインターネットショッピングモール「Gマーケット」と提携し、公式に韓国でシャオミーのスマホを販売する計画だと報道した。9月1日から、シャオミーとGマーケットの間で交渉が始まっている。

 韓国内でのシャオミ―の評判は悪くない。シャオミ―は「iPhoneのパクリ」というイメージがあるが、韓国ではモバイルバッテリーの販売ランキング1位がシャオミ―で、アクションカメラのYI Camera、リストバンド型のMi Bandも安くて品質がよいと評判だ。


次ページ: シャオミ―が8月16日中国で発売した「Redmi Note 2」は、名前からしてサムスン電子のGALAXY …


趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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[日本と韓国の交差点] 韓国の最大手労組が労働市場改革で政府に妥協

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韓国政府の労働市場改革案を巡って、1年近く続いた政府、企業、労働組合の代表が集まる労使政委員会が9月13日の夜終わった。この交渉は2014年10月政府が案を出し、同年12月から始まった。2015年4月に労働組合代表の韓国労働組合総連盟が交渉決裂を宣言したため、いったんは中断した。しかし、8月に同総連盟が労使政委員会に復帰し、9月8日から交渉が再開していた。

 労使政委員会は労働政策に関する大統領の諮問委員会である。労使政委員長、雇用労働部(部は省)長官、韓国経営者総協会(日本の経団連のような団体)会長、韓国労働組合総連盟委員長の4人で構成する。

 労使政委員長は9月13日の夜、韓国労働組合総連盟委員長が政府の案を受け入れ、具体的な手続きや立法については今後協議するかたちで妥協したと発表した。だが、労使政委員会で合意がなったにもかかわらず、労働市場改革案を巡る議論はまだ続いている。メディアもネットも、政府が出した労働改革案に対する賛否両論を騒がしく紹介している。

 交渉が継続していた9月11日、政府と与党のセヌリ党は、労使政委員会で合意に至らなくても、政府がまとめた改革案通りの労働市場改革を9月14日から始めると立場を表明した。このことから複数の韓国メディアは、韓国労働組合総連盟が政府とセヌリ党の圧力に負けて合意したのではないかと報じている。

 労使政委員会に参加していないもう一つの大手組合連盟である、全国民主労働組合総連盟は「労働市場改悪阻止のため11~12月に総ストライキを行なう」と予告した。

 野党の新政治民主連合は「政府のしたいようにするなら、なんのために今まで交渉を続けたのか」と猛反発している。

 韓国政府がまとめた労働改革案は、(1)すべての公共機関と551の民間事業場に賃金ピーク制を導入する、(2)派遣労働者・特殊雇用職の産業災害を認める案をまとめる、(3)勤労時間の短縮及び通常賃金の範囲を明確にする――といった内容だ。

 賃金ピーク制は定年を延長する代わりに一定年齢に達したら賃金を削減すること。通常賃金とは勤労者に定期的に支払う賃金のことで、平均賃金の最低限度、解雇予告手当、時間外勤務手当、有給休暇手当、出産前後休暇給与を算定する基礎となる。このほかに、一定期間が過ぎた派遣労働者を非正規職のまま、より長く雇用できる方向での法改訂も予定している。

 この改革を推進するために、韓国政府は勤労基準法、派遣勤労者保護法、期間制及び短時間勤労者保護法、雇用保険法、産業災害保険法の5つを改訂しようとしている。チェ・キョンファン副総理は「古い慣行を改善して雇用を増やすのが、政府が労働市場改革を進める目的だ」と説明した。

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By 趙 章恩


 日経ビジネス
 2015年9月14
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[日本と韓国の交差点] 韓中首脳会談の報道で誤訳騒動

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韓国の朴槿恵大統領は9月2日から4日まで中国を訪問した。2日は習近平国家主席との韓中首脳会談、3日は戦勝節(抗日戦争勝利記念)70周年軍事パレード、4日は上海での大韓民国臨時政府庁舎再開式と韓中ビジネスフォーラムに出席した。朴大統領と習主席の首脳会談はこれで6回目になる。

 朴大統領の訪中を、韓国メディアはいずれも高く評価した。主な新聞の見出しは以下の通り。

新韓中蜜月時代を開いた朴大統領の戦勝節外交(聯合ニュース)
韓中蜜月固めた朴大統領、韓国外交の選択の幅が広がった(ヘラルド経済)
戦勝節外交、東北アジアの新秩序を主導するきっかけを確保(ニューシス)
朴大統領、均等外交を元に東北アジア協力の礎石を築いた(ハンギョレ新聞)
朴大統領、韓・中・日首脳会議開催で東北アジア外交を主導(国民日報)
61年前、金日成がいた席に朴大統領が、東北アジア外交の情勢変化(KBS)

 9月4日付の国防日報(韓国政府の広報紙)は、朴大統領が訪中した意義をこう評価した。「欧米の指導者は、中国が勢力を誇示するのを警戒して戦争勝利記念行事に参加しないことを決めた。朴大統領がこの行事に参加すれば、外交の中心が中国に傾き、韓米同盟に傷がつくと懸念する声もあった。特に韓国戦争(注:朝鮮戦争を指す)で敵国だった中国軍(注:人民解放軍)の軍事パレードに参加するのは適切でないという批判もあった」。

 「それでも韓国政府は、隣国である中国との友好協力関係、韓半島(注:朝鮮半島を指す)の平和と統一に寄与する中国の役割が大事と考えて参加することにした。『聯美和中』という言葉がある。米国(注:韓国では美国)と連帯する一方、中国と親和するという意味で、韓国政府が追求する主導的外交を説明する言葉である。韓米同盟の信頼を基盤に、中国と戦略的協力関係を発展させることが韓国外交の核心である」

「一緒に戦い解放を勝ち取った」とは言っていない

 朴大統領は2日、北京に到着してすぐに習主席と首脳会談を行った。ランチを含め1時間38分に及ぶ会談となった。午後には朴大統領と李克強首相が会談し、韓中FTA(自由貿易協定)など貿易と投資に関して協議した。

 会談の内容に関する資料を大統領官邸が配付した。ここで問題が発生した。この翻訳資料に、中国側が公表した資料と食い違う部分があった。ほとんどの韓国メディアが韓中首脳会談を報じる記事の見出しにした「韓中関係は史上最上の友好関係に発展した」という習主席の言葉は誤訳だったというのだ。

 大統領官邸が配付した最初の翻訳資料には、習主席の言葉として「中韓は帝国主義の侵略と強制占有に立ち向かい戦った。二つの民族は命を懸けて一緒に戦い解放を勝ち取った」「朴大統領と私の協力で、中韓関係は史上最上の友好関係に発展した」「朴大統領が支持してくれたおかげで中韓両国は大きな成果を上げた」といった内容が書いてあった。

 大統領官邸はこれらを誤訳だとして修正した。習主席は「命を懸けて一緒に戦い」「史上最上の友好関係」「朴大統領が支持してくれたおかげで」とは発言していなかった。

 大統領官邸は「翻訳を担当した人の間違いだった。できるだけ早く翻訳資料を提供しようとして間違えてしまった」と説明した。大統領官邸の翻訳資料によって誤報をしてしまった韓国メディアは、朴大統領の訪中成果を「盛る」ために誤訳したのかと反発した。

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By 趙 章恩

 日経ビジネス
 2015年09月09
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サムスン電子の米アップルユーザー対象「1ドル30日間新機種スマホお試し」が大盛況、韓国では不満の嵐! [2015年8月28日]

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サムスン電子米国法人は、米国限定で新機種GALAXY NOTE5とGALAXY6 Edge+の“破格”のプロモーション「Ultimate Test Drive」を行った。このプロモーションは米国だけでなく、韓国や中国のメディアにも取り上げられ大きな話題になった。

 このプロモーションは、米国のiPhoneユーザー限定で、たった1ドル(約120円)で30日間サムスン電子のスマホ(GALAXY NOTE5、GALAXY6 Edge+、GALAXY6 Edge)が使えるというもの。スマホレンタル料に通話料、データ通信費まで、全部1ドルでカバーできる太っ腹なプロモーションである。キャリアもユーザーが選べる。ユーザーは30日間使った後で返却するか、購入するかを選択する(関連サイト)。 

 サムスン電子によると、8月21日スタートしたこのプロモーションは、数時間で用意した端末全ての申し込みが終了したほど大成功だったという(何人申し込んだのかは公開していない)。

 米国メディアの報道を見ると、「サムスン電子はライバルである米アップルのiPhone6Sをけん制し、世界最大スマートフォン市場である米国内での影響力を強化するため、プロモーションを行った」という論調だった。


写真 サムスンの米国向けプロモーションサイト
サムスン電子米国法人は米国のiPhoneユーザー限定、1ドルでサムスンの最新機種を30日間試せるプロモーションを行った。 通話料、データ通信費まで1ドルに含まれている破格のプロモーションとして、大きな話題になった。

 米市場調査会社Strategy Analyticsによると、2015年4~6月の北米スマートフォン市場は、アップルが32%で1位、サムスン電子が26%で2位となっている。2014年10~12月は、アップル44%、サムスン電子21%とかなり差が広がったが、GALAXY6 とGALAXY6 Edgeを発売して差をだいぶ縮めることができた。なお、サムスン電子のスマートフォンの北米シェアは、2014年4~6月には36%あった。

 一方、米ガートナーの発表したスマートフォン世界市場シェアを見ると、2015年4~6月の1位はサムスン電子で21.9% 、2位アップル14.6%、3位中国ファーウェイI7.8%となっている。


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趙 章恩=(ITジャーナリスト)
日経パソコン
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