[日本と韓国の交差点] 元韓国代表スケート選手がロシア代表としてソチ五輪に参加した理由

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ロシアのソチで行われていた冬季オリンピックが終わった。選手らのインタビューを見ると、日本人選手も韓国人選手も、「オリンピックを楽しめた」と笑顔で応対する人が多い。かつての“メダルがすべて”の時代から大きく変化していることを感じる。

 韓国は8つのメダルを取得。そのうち7つを女子選手が獲得した。ショートトラック(スケート)に出場したある女子選手は他の選手の反則に遭い転んでしまったが、すぐ立ち上がり最後まで全力疾走。感動的な場面を見せてくれた。

 一方で、メダル獲得が間違いないと期待されたショートトラック男子は、2002年ソルトレイク冬季オリンピック以降で初めてノーメダルだった。メダル以外で、がっかりしてしまう場面も多かった。ショートトラック男子選手は反則をしたり、メダルを獲得できないことが明らかになると、途中でレースを諦め全力で滑るのをやめてしまったりした。

派閥争いといかさまが帰化の理由?

 これだけではない。ショートトラック男子選手とコーチ、大韓氷上競技連盟に対する韓国世論がもっと冷たくなる出来事があった。

 ショートトラックでかつて韓国代表だったアン・ヒョンス選手が、ロシアの代表選手ビクトル・アンとして出場し、金メダル3つ、銅メダル1つを獲得した。アン・ヒョンス選手は2006年のトリノ冬季オリンピックに韓国代表として出場し、金メダル3つ、銅メダル1つを獲得している。

 実力のあるアン・ヒョンス選手がなぜ韓国ではなくロシアの代表選手になったのか? これを巡って韓国中が大騒ぎになった。アン・ヒョンス選手がロシアに帰化した理由について、韓国の複数のメディアが「大韓氷上競技連盟内の派閥争いのために、アン選手は韓国で選手生活を続けることができなくなった」「韓国の先輩選手がアン選手にわざと負けるよう要求。これを断ったため、先輩選手から暴行される事件もあった」などと報道した。「アン・ヒョンス選手は祖国に捨てられロシアで復活した英雄」「韓国代表選手らは派閥争いの結果、選ばれた悪者」とも読み取れる内容に韓国中がショックを受けた。

 朴槿恵大統領もアン・ヒョンス選手について発言したことから、波紋がさらに広がった。朴大統領は文化体育観光部(部は省)に対し、「アン・ヒョンス選手問題(ロシアに帰化したこと)は、派閥、天下り、審判の不正など体育界の不条理によるものではないか見直す必要がある」「各分野の才能ある選手を発掘し、その夢を実現できるよう最善を尽くして助ける私心のない指導者と教えが必要」だと指摘した。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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[日本と韓国の交差点] 韓国独自の不動産賃貸制度にIMFが異例の警告

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韓国にも日本にも、独自の不動産賃貸制度がある。韓国人が驚く日本独特の不動産賃貸制度は礼金だけでない。家賃のほかにクリーニング代という項目がある場合があること、火災保険を借り手が負担する場合があること。さらに、不動産管理会社に対する手数料を借り手が払わなければならないことにも驚く。韓国では貸す人と借りる人が折半している。保証人がいても家賃保証会社を利用しなければならない場合があることも驚きだ。

 韓国には独自の不動産賃貸制度「チョンセ」がある。借り手は、まとまったお金を保証金として大家に預ける。家賃を毎月払う必要はない。そして、出ていくときに保証金をそのまま返してもらう。貸し手は、この間に入る金利が収入になる。

 このチョンセが韓国の金融をだめにするとIMFが警告した。2月11日付の朝鮮日報によると、「チョンセが金融会社の負担になる可能性が高いので韓国政府は注意すべき」と警告する内容の報告書をIMFが韓国政府に渡したそうだ。

 韓国では最近、銀行の金利が低いことを理由にチョンセの保証金が値上がりしている。2010年まで定期預金の金利は年4%前後だったので、チョンセの保証金を定期預金にすれば家賃相当の金利が得られた。だが、今は定期預金の金利が年2%程度になってしまった。そのため家を貸す人はチョンセの保証金を値上げする。

 不動産市場調査会社、不動産114が公表しているデータによると、ソウル市内の場合2008年まで、チョンセ保証金は住宅価格の4割程度だった。これが2014年2月には住宅価格の8~9割にまで上がっている。チョンセ保証金が高くなった分、借り手は銀行から借金をして保証金を支払うようになっている。

 しかし、一部の地域では不動産価格が下落し、マンション価格がそれまでのチョンセ保証金の額を下回ってしまった。通常、貸し手は次の借り手を見つけてチョンセ保証金を受け取り、それを出ていく人に渡す。現在の市況では、貸し手は次の借り手を見つけても、前に住んでいた人から受け取ったほどの保証金をもらえない。したがって貸し手は、借金をして保証金を返さなければならない事態が発生している。すぐ借金できればいいが、うまくいかない場合もある。貸し手から保証金を返してもらえないと借り手は大きな打撃を受ける。

マンション価格の低下がIMF警告の背景

 金利が低下すれば、住宅ローンを組んでマイホームを買う人が増えるかと思ったら、マンションの売買は冷え込んだままである。この先もっと不動産価格が下落すると見込んでいるのだろうか。マンションを買わず、高くてもチョンセで住み続けたいと願う人の方が多い。

 韓国では、一戸建てよりマンションの方が人気が高い。4人家族が4LDKのマンションに住むのが平均的なイメージだ。マンションの方が暖かく、手入れしやすくて住みやすいというのが理由になっている。

 しかし現在、高齢化・少子化により広いマンションは買い手が見つからず、不動産価格が下落し始めている。韓国統計庁によると、2010年時点で、1人暮らし世帯が最も多くなっている。その割合は1人世帯が24.4%、2人世帯が22.3%、3人世帯が22.5%、4人世帯が23.1%という具合だ。1990年時点では4人世帯が最も多かった。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20140217/259855/

[日本と韓国の交差点] 韓国映画「弁護人」が学生たちを人権に目覚めさせた?!

この冬、韓国映画の歴代興行記録を更新するヒット作が登場した。故盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の経験をモチーフにした映画「弁護人」である。

 2月2日時点で観客1110万人を動員(映画館入場券統合電算網調べ)。韓国で最もヒットした映画ランキングで8位になった。過去最高は1300万人を超えた「アバター」。韓国映画で最もヒットしたのは同じく1300万人を超えた「怪物」だった。

 「弁護人」の主人公は、釜山で不動産登記や税務を専門とする弁護士だ。高卒で、苦労の末に司法試験に合格した。お金儲けがすべてとの人生観を持つ。「民主化運動なんて勉強したくない大学生らがすることだ」と信じて疑わない中年男性でもある。

 映画の舞台は1981年のある日。行きつけの食堂の大学生になる息子が1カ月以上行方不明になる。光州民主化運動(1980年5月18~27日の間に光州で起きた民主化運動。軍事勢力の退陣と戒厳令の撤廃、民主的な政府の樹立を求めた)のようなことが釜山で起こってはならないとして、検察公安が令状もなく大学生らを逮捕して不法監禁、拷問する。食堂の息子も監禁された学生の1人だった。検察公安は拷問で得た供述を元に、大学生たちを、北朝鮮体制を信奉し国家保安法に違反した罪に問う。一人息子を助けようと、食堂のおばさんは主人公に懇願。主人公はこの事件の弁護を担当することで人権に目覚める。

 映画のモチーフになったこの事件は「ブリム事件」といって、1981年9月に起きた。ドゥサン百科事典は次のように説明している。「ブリム事件は、軍事独裁政権が民主化運動勢力を弾圧した事件。1981年9月、釜山地方検察公安が、釜山地域の良書協同組合を通じて社会科学読書クラブに参加した学生・教師・会社員22人を令状もなく逮捕し、20~63日間不法監禁して拷問した。読書クラブの活動は国家保安法違反だとして22人のうち5人は5~7年の懲役刑となったが、1983年12月に刑の執行が停止となった。2013年3月からブリム事件に関して再審が始まった」。

 故盧武鉉大統領は実際に高卒弁護士で、ブリム事件で被告人となった被害者らを弁護した。このことがきっかけとなり人権弁護士として民主化運動の先頭に立った。映画はこれをモチーフにした。ただし、この部分以外のストーリーはすべてフィクションで、盧武鉉大統領とは関係ない。

 韓国の80年代と言えば、1988年にソウル・オリンピックを開催し、経済が大きく成長した時期である。だが、その一方で、軍事政権の下で民主化運動が絶えず、軍と市民が衝突して多くの犠牲者を生んだ時代でもある。1980年5月18日に起きた光州民主化運動、1987年6月29日の民主化宣言は有名だが、釜山で起きたブリム事件はあまり知られていないので、こんなことがあったのかと20~30代の若者に衝撃を与えた。

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2014年2月6日




-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20140206/259373/

「韓国スマートヘルスケア最前線」「ヘルスケアアプリ=医療機器」にあらず、規制緩和で開発や特許出願が加速 [2014年03月03]

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韓国では、朴槿恵大統領が2014年の新年政府会議でヘルスケア産業に力を入れるよう強調したことから、関連企業の株価が一斉に上がるほど盛り上がっている。

事前審議なしで販売できるアプリを分類

 朴大統領が注文したのは、ヘルスケア産業拡大の壁になっている規制をなくすこと。「海外では遠隔健康管理市場の潜在力を高く評価し、一歩先に市場を開拓しようと動いている。潜在力の大きい世界市場で韓国企業が活躍するためには、先に韓国内の市場を活性化させ、世界市場に進出できるよう備えるべき」(同氏)。

 早速、IT政策を担当する未来科学創造部は、ヘルスケア向けアプリケーションソフトウエア(以下、アプリ)をより多くの会社が開発して普及させられるように動いた。食品医薬品安全処と共同で、2014年1月に「モバイル医療用アプリケーション安全管理ガイドライン」を発表した。

 これまで韓国では、ヘルスケアアプリは医療機器と同じだとして、食品医薬品安全処の事前審議と販売許可が必要だった。今回発表したモバイル医療用アプリケーション安全管理ガイドラインでは、事前審議なしで販売できるアプリとそうでないアプリを分類する判断基準、販売許可審査と品質管理などについて細かく明記した。

これによって、医療機器ではなく普通のアプリとして販売できるようになったのは、例えば次のようなアプリだ。すなわち、一般的な医療情報提供アプリ、患者の医療情報記録アプリ、自己診断型アプリ、遠隔診療のためのテレビ電話アプリ、である。さらに、食品医薬品安全処が持っている公共情報を開放して、民間企業がヘルスケアアプリ開発のために使えるようにもした。

Samsung Electronics社のアプリケーションマーケット「Samsung Apps」には、800件を超えるGalaxy向けヘルスケア・フィットネス・アプリが登録してある

 未来科学創造部は、ITと医療機器の融合に関しても規制を緩和するという。現在はスマートフォンやウエアラブル端末を使ったスマートヘルスケアも医療機器と同じく厳格に審査をしているため、優れたアイデアがあってもビジネスにするには難しい点が多すぎるからだ。

遠隔医療分野の特許出願が急増

 大統領の発言を起点に、ヘルスケア分野の規制がどんどん緩和され、市場を大きくするための支援策も発表されている中、ヘルスケア関連特許出願も増えている。

韓国特許庁医療技術審査チームによると、ICTと医療を融合したヘルスケア関連特許の出願は毎年増えているが、最近は特に遠隔医療分野の特許出願が増えているという。韓国では医療法の改訂により、2015年から医師が自宅にいる患者を遠隔診療できるようになったからだ。

 遠隔医療分野の特許は、医療機器に関する特許で、医師の臨床的判断を必要としない方法だけ特許を出願できる。患者にセンサーを装着してモニタリングし、異常があった場合は遠隔地にある病院に知らせるといったビジネスモデルや、緊急事態に陥る前に患者の状態を予測して病院に知らせる診断サーバーの技術などが目立つ。

 韓国特許庁は、「スマートヘルスケアは韓国の次世代成長分野なので、市場が活性化すれば特許紛争や知的財産権争いになる可能性がある。特許動向を把握して前もって知的財産権を確保する努力が必要だ」として、特許にも気を使うよう注意した。

医療観光地区を指定した大邱市

 自治体もより積極的に動き始めた。ヘルスケア産業育成に力を入れている大邱(テグ)市は、ヘルスケア関連企業が入居している先端医療複合団地に続き、2017年末の完成を目標に医療観光地区を指定した

医療観光地区にはヘルスケアリゾート施設を建てる。外国人観光客が3カ月以上滞在しながら治療に専念できる長期滞在型病院、高級ホテル、テンプルステイ(お寺での修行体験)・韓方エステ(韓国の漢方)といったヒーリング施設、医療観光客向けのショッピングセンターが含まれる。

 大邱市は医療観光地区に韓国の病院だけでなく海外の有名病院も誘致する計画だ。システム半導体・スマートセンサー・ソフトウエア融合といった、スマートヘルスケア産業の発展には欠かせない技術開発を支援するための施設も建てる。

産業拡大への動きが続々

 医療政策を担当する省庁の保健福祉部は、「2020 HEALTH Korea 健康な国民、幸せな社会」をキャッチフレーズに、「2014年保健医療技術研究開発事業投資方向」をまとめた。2020年には健康寿命75歳(75歳までは病気をしないで健康で過ごすこと)の達成を目標に、国民の健康維持とヘルスケア市場拡大という二つの側面から投資を進める。産・学・病院が連携して、研究結果を企業が生かせるよう、国の支援で研究インフラを構築することに力を入れる方針だ。

 韓国産業通商資源部(経済産業省に当たる省庁)は2014年2月17日、「スマートヘルスケア政策諮問団」を新設した。諮問団は病院、大学、研究所など多様な分野の専門家が参加していて、ソウル大学病院長が諮問団委員長を務める。諮問団は、スマートヘルスケア関連実証実験企画とヘルスケア産業標準化のための細部政策立案、保健医療分野の投資活性化戦略について意見を提示する役割を担う。

 この他、Samsung Electronics社やLG Electronics社、通信キャリアも新しいヘルスケアサービスを手掛けようとしている。中堅医療機器メーカーとIT企業の提携も増えている。2014年は、韓国のヘルスケア市場に大きな変化がありそうだ。



By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
 2014年3月3
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「GOM Player」ウイルス問題、韓国では「違法ダウンロード動画用の“過去のソフト”」との認識 [2014年1月31日]

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2014年1月、日本のマスコミは一斉に、韓国のGRETECH(グレテック)が提供するフリーの動画プレーヤー「GOM Player日本語版」をアップデートするとコンピュータウイルスに感染する恐れがあると報じた。

 実は韓国国内ではGOM Playerのアップデートでウイルスに感染したという被害は報告されていない。このため、韓国マスコミは日本を狙ったサイバー攻撃なのではないかと見ている。

日本語版インストーラーに落とし穴

 GRETECHが自社Webサイトに掲載した説明によると、経緯はこうだ。2013年12月27日から2014年1月16日にかけて断続的に米ニューヨークにある「GOM Playerアップデートサーバー(app.gomlab.com)」に不正アクセスがあった。GOM Playerをアップデートすると第三者サイトに誘導され、GOM Player日本語版のインストールプログラム(GOMPLAYERJPSETUP.EXE)を装ったマルウエア(ウイルス)がダウンロードされる可能性があったという。

 安全にアップデートするためには、「プロパティ」からデジタル署名を確認して、署名者がGRETECHになっているかどうか確認するべきだとしている。ウイルスが仕込まれている場合は、デジタル署名の署名者が不明になっていることが多い。

韓国でも人気のプレーヤーだが……

 GOM Playerは韓国でもユーザーが多い動画プレーヤーだ。2005年までにダウンロード2000万件を突破し、2008年には韓国ネットユーザーの65%が利用、全世界で1億人が使っているとGRETECHは宣伝していた。日本でも人気があるので、GOM Player日本語版が悪用されたのかもしれない。

 韓国では、GOM Playerはスマートフォンが普及する以前の、デスクトップパソコンが主流だった時代に人気があった。「動画=GOM Player」と言っても過言ではないほどの空前のブームだった。

 人気の秘訣は、GOM Playerはどの種類の動画でも再生できるという使いやすさにあった。韓国のテレビ局はドラマの再放送をストリーミング配信する一方で、高画質動画ファイルをダウンロード販売している。どのテレビ局の動画ファイルでもGOM Playerなら問題なくきれいに再生できることから、「動画=GOM Player」という地位を確立した。

 もう1つ、“裏”の人気の秘訣がある。P2P・ファイル共有ソフトなどを使って違法ダウンロードした動画を再生するのにぴったりだったのだ。GOM Playerには字幕検索機能がある。違法ダウンロードした動画と字幕を組み合わせて再生するのに“便利”だったというわけだ。

スマホ普及で動画プレーヤーとしての人気は下火に

 ブームが去った後の韓国では、GOM Playerは動画プレーヤーとしてよりも、動画コンテンツ流通プラットフォームとして事業を拡大した。今では「GOMTV」が人気を集めている。映画やドラマなどの動画を有料販売したり、「eスポーツ」(プロゲーマーによるネットワークゲーム対戦、関連記事)の独占中継をしたりして人気を集めている。

 韓国では2010年以降、動画再生機器としてパソコンよりもスマートフォンが主流になった。GOM Playerより一足先にモバイル環境に適した動画プレーヤーが続々と登場したことで、GOM Playerの名前を耳にすることもあまりなくなった。

 最近は通信環境が充実し、ストリーミングでも高画質動画を視聴できるようになった。わざわざ動画をダウンロードして動画プレーヤーを利用する機会は減った。韓国のテレビ局は、YouTubeに公式チャンネルを作り、人気のバラエティー番組を無料で視聴できるように公開している。ファイル共有ソフトから動画を違法ダウンロードしなくても楽しめるようにもなった。米国などと同様に、韓国でも「動画=YouTube」の時代になったのだ。

日本の特定施設を狙ったサイバー攻撃?

 韓国では2013年8月と10月にGOM Playerのセキュリティ脆弱性が報告されたことがある。韓国インターネット侵害対応センター(http://www.krcert.or.kr/)が告知した脆弱性は、「GOM Playerでウイルスにかかったファイルを再生するように仕向けることがあるので、GOM Playerの公式ホームページから最新版にアップデートしましょう」というものだ。アップデートするとウイルスに感染するという内容ではなかった。今回のGOM Player日本語版の問題とは異質のものだろう。

 韓国企業であるGRETECHが提供するソフトが日本で問題になったことから、韓国内でも今回の事件は注目を集めている。韓国マスコミの報道では、「GOM Player日本語版のアップデートを実行した全てのユーザーが感染するのではなく、特定のIPアドレスを持つパソコンだけが感染するようになっている。このことから、日本の政府機関や一部の企業を狙って標的を絞ったサイバー攻撃の可能性がある」という見立てもされている。

 こうした「標的型攻撃」では、防御側がセキュリティ対策を万全にしても、攻撃側は常に脆弱性を探してしつこくサイバー攻撃を仕掛ける。防御側は常に過剰なほどセキュリティ対策を徹底するしかない。GRETECHは同じ問題を繰り返さないように徹底的に調査して、日韓問わずユーザーが信頼してソフトウエアを利用できる環境を整えてほしいものだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20140130/1119744/

韓国で「歩きスマホ」原因の交通事故2倍近く増加、危なくてもやめられないのは“中毒”のせい? [2014年1月24日]

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日本では最近、「歩きスマホ」「ながらスマホ」をやめようというキャンペーン広告をテレビで流しているようだ。日本のスマートフォン普及率(
関連記事:スマホ契約者は全体の44.5%で増加の勢いに陰り、MM総研調査)に比べて韓国の普及率は高く、8割を超えている。それだけに、問題も深刻になっている。

 韓国では常にスマートフォンを握りしめていないと不安になる“中毒”状態の人が少なくない。LINE(ライン)やKakao Talk(カカオトーク)などでチャットをしながら歩くのは当たり前。スマートフォンにメッセージが届くと自動車運転中でもつい確認してしまうという人が実に多い。

 満員電車の中でもみんな手にスマートフォンを持っている。スマートフォンの角で背中を押されたり、頭にぶつけられたりして嫌な気分になることもある。さらにはスマートフォンで動画を観ながら歩く人までいる。耳はイヤホンでふさがり目はスマートフォンに釘づけ。これでは事故が起きない方がおかしい。

成人の95.7%が「歩きスマホ」経験

 韓国のあるテレビニュースでは、横断歩道で左右確認せずスマートフォンを見ながら歩いていた人が車とぶつかり飛ばされる映像を流した。「これでも歩きスマホしますか?」と訴えかけた映像は、視聴者に衝撃を与えた。筆者の場合、この映像を見て歩きながらスマートフォンで時間を確認することすら怖くてびくびくするようになったほどだ。

 韓国現代海上火災保険社と韓国交通安全公団が2014年1月公開した報告書によると、携帯電話・スマートフォンの使用が原因の交通事故は2009年437件から2012年848件と1.9倍に増加した。歩行者の「歩きスマホ」による交通事故は午前10時から午後6時の間に発生したケースが58.7%、運転者の「ながらスマホ」による交通事故は午後6時から深夜0時の間に発生したケースが38.6%と最も多かった。

 成人300人を対象にしたアンケート調査では、95.7%が「歩行中にスマートフォンを使ったことが1回以上ある」と答えた。その内21.7%は「歩行中のスマートフォン使用によって事故になりかけたことがある」と答えた。

2.5m前の自転車にしか気づけない

 韓国交通安全公団は最も事故が多い首都圏の横断歩道10カ所で2011年から3年間観察調査を行った。歩行者の4.3%が横断歩道でもスマートフォンを見つめたまま、2.4%は通話しながら横断していて、周りを確認しないまま横断していることが分かった。

 韓国交通安全公団は、歩きながらスマートフォンを使用することがどれほど危険なのかについても実験した。前方から自転車のベルが鳴ると、何も利用していない時は15m前で気付く。一方でスマートフォンを利用しながら歩くと、20代は10メートル前、40代は7.5m前で気付き、50代は2.5mとほぼ目の前に自転車が近づかないと気が付かなかった。また、何もせず歩く時、人間の目の視野角は120度だが、歩きながらスマートフォンをすると視野角は10度まで狭くなった。

 韓国では「歩きスマホ」の規制論が広がっている。米ニュージャージ州やユタ州のように歩きながらスマートフォンでメールを書くと罰金を科したり、日本のNTTドコモのように「歩きスマホ防止機能」を提供したりするべきだという意見もある。

学校や公的機関による“中毒”対策も

 また、歩きながらのスマートフォンをやめられないのは“中毒”であるとして、自治体とキャリアはスマートフォン中毒予防活動に力を入れている。ソウル市内の小学校では、登校・下校時に歩きながらスマートフォンを使わないよう指導。保護者らがボランティアで学校近くの横断歩道に立って指導している。

 ソウル市が運営する「インターネット中毒予防相談センター」では、スマートフォン中毒の予防と治療にも取り組んでいる。相談センターによると、スマートフォン中毒はSNS中毒でもあり、男性よりも女性がかかりやすいという。「SNSでメッセージが届いたらすぐ返事をしないといけない」という強迫観念を持つ人が多い。中毒治療は自分の行動を自覚させることから始めるという。

大手キャリアは“自制用”アプリ提供

 大手通信事業者(キャリア)のSKテレコムは「スマートセルフコーチ」というアプリを無料提供している。スマートフォンとアプリを1日何時間使用したのかをリポートし、何時から何時まではスマートフォンが機能しないように自らセットして、使用を自制できるようにする機能がある。自ら1日何時間スマートフォンを使ったのかを確認し、「使いすぎではないか」と自覚させるのが目的だ。


スマートフォン利用時間を自ら制限できるアプリ「スマートセルフコーチ」。SKテレコムが提供

 今やスマートフォンは仕事の必需品でもあり、会社からの連絡などに歩きながらついつい返事をすることもある。くれぐれも事故にならないよう、横断歩道や駅のホームでの歩きスマホは注意しよう。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20140124/1119023/

2年ぶり韓国に戻ってきたソニーのスマホ、サムスンにはない色や防水機能が脚光浴びる [2014年1月17日]

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 ソニーコリアは2014年1月16日、韓国でAndroidスマートフォン「Xperia Z1」(日本では発売中、
関連記事)と腕時計型端末「スマートワッチ2」(SmartWatch 2、関連記事)を発売すると発表した。17日から予約受付を開始している。実はソニーのスマホが韓国で販売されるのは、2011年9月の「Xperia Ray」以来のことである。サムスン電子やLG電子といった韓国メーカーのスマホにはない機能やカラーバリエーション話題になっている。


「Xperia Z1」の国内発売を知らせるソニー韓国法人のWebサイト

 韓国のユーザーがXperia Z1の特長として注目するのは、やはり約2070万画素の高性能カメラである。韓国ではソニーの一眼レフカメラが「コンパクトなのに高性能」「(一眼なのに)自分撮りに向いている」「きれいに撮れる」といったことから高く評価されている。ソニー製のカメラに対する期待値は高く、韓国メーカー製スマホよりも優れていそうだと期待されている。

 また韓国メーカーのスマホにはない防じん・防水性能やFMラジオ機能も話題だ。韓国のスマホは防水を強調するモデルはなく、FMラジオ受信機能のあるスマホも最近は見なくなった。ネットラジオ用アプリをインストールすれば無料でラジオを聴けるので、スマホ本体にラジオ受信機能を付けなくなったという事情もある。

キャリアに縛られないハイエンド機という側面

 ネットでの反応を見ると、カメラや防水に加えて意外な話題になっているのが、「パープル」の端末があることだ。韓国のスマホにはないきれいなパープル色が魅力になっている。韓国のスマホのカラーバリエーションはホワイト、ブラック、ピンク、ブルーぐらい。別売りのカラフルなフリップカバーを付けることで自分だけのカラーを楽しんでいるが、端末自体の色を選択できれば、本体の防じん・防水性能をそのまま生かせる。

 Xperia Z1の端末価格は74万9000ウォン(約7万4000円)と高めである。だが、ソニーショップでスマホを買って好きなキャリアを選択することができる。大手通信事業者(キャリア)よりも通信料金が安いMVNO(仮想移動体通信事業者)の端末として使えるところも魅力がある。韓国ではこれまで、Xperia Z1のようなハイエンドのスマホはキャリアの代理店でしか買えなかったからだ。サムスンの「GALAXYシリーズ」以外の選択肢が増えたことを喜ぶ人も多い。

サムスンは腕時計型端末を対抗値下げ

 Xperia Z1と同時に、腕時計型端末のスマートワッチ2も韓国で正式発売されることになった。価格は21万9000ウォン(約2万1000円)。これに対抗してか、サムスンは2014年1月から腕時計型端末の「GALAXY Gear」を値下げした。39万6000ウォン(約3万9000円)から29万6000ウォン(約2万9000円)への大幅値下げである。GALAXY Note 3とGALAXY Gearを一緒に購入するとさらに安くなるキャンペーンも行っている。GALAXY Gearとスマートワッチ2の価格競争に発展する可能性もある。


韓国で正式発売されることになったソニーの「スマートワッチ2」

 スマートワッチ2の長所は、さまざまなデバイスと連動できるところだ。サムスン製端末としか連動できないGALAXY Gearとは異なり、スマートワッチ2はAndroid 4.x以降であればソニー以外の端末とも連動させて使うことができる。韓国ではLG電子のスマホとスマートワッチ2を連動させて使っているユーザーが多かったが、今後はソニー製品同士で組み合わせて使えるようになるわけだ。GALAXY Gearはバッテリーが1日ぐらいしか持たないが、スマートワッチ2は低電力設計で3日以上使えるというところも便利だ。

 スマートワッチ2のデザインは韓国でも好評で、正式発売前から個人輸入で購入する人も少なくなかった。すでに2013年10月から「ソニーのスマートワッチ2買った!」という自慢レビューがたびたび投稿されていた。

 2年ぶりに韓国に戻ってきたソニーのスマホ。GALAXYの本拠地である韓国でもヒットできるか、注目したい。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20140116/1118043/

CES2014で韓国勢は4KテレビやInternet of Thingsに注力、高解像度12.2型タブレットも [2014年1月10日]

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2014年1月7日から10日まで、米ラスベガスで世界の家電やデバイスのトレンドを把握できる2014 International CES(Consumer Electronics Show)が開催された。今年のCESはウエアラブル端末やスマートカーの展示が増えたこともあり、展示面積が歴代最大の200万平方メートルを超え、来場者数も歴代最大を記録しそうだという。

 韓国からはサムスン電子とLG電子を筆頭に、KIA自動車、サムスン電機、ヘルスケアや小型家電を得意とする中小企業など約40社が参加・出展した。

サムスンは超大型4Kテレビで壁を形成

 サムスン電子は「Smart Living & Beyond」をテーマに、スマートフォンやウエアラブル端末にインストールしたアプリで家の中の家電を操作するスマートホーム、サムスンの技術力を象徴する世界初の105インチの曲面(Curved)4KTV、85インチの曲面にも平面にもなる(Bendable)4KTVを目玉として展示した。

 リモコン1つでテレビの両側が曲面になったり平面になったり、映像や視聴環境に合わせて角度を調整できる。サムスン電子は大型4KTVを並べて、グランドキャニオンをイメージしたウォールを作ったりもした(写真)。


サムスン電子のブース。大型4KTVを並べグランドキャニオンをイメージしたウォールを作った。(写真提供:サムスン電子)

 4KTVは日本メーカーとサムスン・LGが激しく競争する分野であるが、今年は中国勢も4KTVを展示するようになった。韓国勢は少しでも気を緩めると日本には先を越され中国には追いつかれてしまう状況で、緊張している様子だ。

サムスンはIoT時代にも備え

 サムスン電子米国法人のティム・ベクスター副社長は、「2014年はすべてのものがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)の時代になる」としている。サムスンの「スマートホーム」は、サムスンが持つ半導体とディスプレイの技術、幅広い家電ラインアップを生かしたサービスであり、IoTで便利になる未来の家庭を一足先に実現したものだと説明した。サムスンのスマートホームは、家電の制御、管理(家電が自ら不具合をチェックしてどこを修理すればいいのか教える)、家中の防犯、という3つの機能を提供する。

 サムスンのウエアラブル端末「GALAXY Gear」とBMWとのコラボも登場した。GALAXY Gear専用アプリ「iRemote」から、BMWの電気自動車i3のバッテリー充電状況確認や車内の温度調節を行い、GALAXY Gearに行きたい場所の住所を言うと音声認識で車内のナビゲーションが自動的に道案内を始めるといったことができる。


サムスン電子とBMWが提携し、GALAXY GearからBMWの電気自動車の充電状況を確認したり、空調を制御できるようにした。(写真提供:サムスン電子)

12.2型高解像度タブレットも投入

 サムスン電子はCESでタブレットPCの新機種4種も公開した。世界最大12.2インチで鮮明なディスプレイ(解像度2560×1600ドット)が売りの「GALAXY NOTE Pro」は、Quad Viewと呼ぶ機能で、画面を4分割して同時に4つの機能を使えるようにした。「GALAXY Tab Pro」は12.2インチ、10.1インチ、8.4インチの3種で、スペックはGALAXY NOTE Proそのまま。Sペン(電子ペン)を外してより薄く軽くなった。サムスン電子米国法人は、2014年は特にタブレットPCの販売に力をいれると強調した。

 今年はサムスン電機が初めて部品ではなく完成品としてワイヤレス充電パッドを展示したことも話題になった。A4WP(Alliance for Wireless Power)が公式認証した磁気共鳴方式のワイヤレス充電方式を採用している。1つの充電パッドで2台のスマートフォンを同時に充電でき、充電パッドの上にコインや鍵など金属物質を置いても安定的に充電できる。この他に厚さ3mmの超薄型充電パッドも展示した。

LGはヘルスケアに注力

 LG電子もサムスン電子と同じように105インチの曲面4KTVと77インチのBendable(OLED)4KTVを目玉にした。その一方で、ヘルスケア機能があるウエアラブル端末「LifeBand」と「心拍イヤホン」を初公開した。

 LifeBandを腕にはめ心拍イヤホンを耳に付けると、運動量と耳の血流をチェックしてカロリー消費量、心拍数、血圧を測ってくれるという。LG電子のLifeBandは、サムスン電子のGALAXY Gearとは違って腕にはめても邪魔にならないおしゃれなデザインを追及したという。ソニーの「SmartBand」に近いかもしれない。

自動車とスマホの連動にも注目

 KIA自動車は、電気自動車用向けのスマートフォンアプリ「UVO EV eService」を体験できるようにした。
 


KIA自動車は電気自動車向け安全走行や自動車制御・管理を行えるアプリを体験できるようにした。(写真提供:KIA自動車)

 北米地域限定のサービスになるが、目的地を入力すると衛星データを分析して車の充電状態と現在の道路状況から車で走れる距離を示し、どこでどのタイミングで充電すればいいのか充電所を案内してくれるのはとても便利だ。安全な走行をサポートする車両・道路インフラ間通信機能(事故・渋滞確認・道路表示案内認識)、道路状況とドライバーの感情を分析してそれに合わせた音楽を流す機能、秘書機能(日程確認や情報検索)、音声認識・指を使う動作認識機能、ドライバーの健康チェック機能まである。スマートカーらしいサービスを利用できるように仕上がっている。

韓国勢のスマートフォン新製品は2月のMWCに持ち越し

 中国勢と違い、サムスン・LGはスマートフォンの新機種をCESでは公開しなかった。米ガートナーによると、2014年スマートフォンは新興国での需要は大きく伸びるため華為(ファーウェイ)、Lenovo(レノボ)、ZTEなど中国勢が得意とするローエンド市場は成長し、サムスン・LGが得意とするハイエンド市場は減少すると見込まれている。

 韓国勢のサムスン・LGは、新興市場向け機種も含めて、スマートフォンは全て2月の展示会MWC(Mobile World Congress)で公開するとしている。スマホ市場で人気が復活しつつあるソニーも加わって、日中韓の競争がどの分野よりも激しくなりそうだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20140110/1117368/

韓国アプリアワード、位置情報やARなど応用した「生活便利アプリ」が受賞 [2013年12月27日]

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 2013年も残りあとわずかとなり、韓国でも各分野で1年を振り返るイベントが行われている。アプリケーション業界でも、今年公開されたアプリで最も優秀な製品を選定する「スマートアプリアワード」の授賞式があった。韓国のアプリ開発専門家、2000人がデザインやユーザーインタフェース、技術、コンテンツ、サービスを評価し、革新的で優秀な製品を選ぶ。後援しているのは、韓国のICT政策を担当する省庁の未来創造科学部(部は省に当たる)だ。受賞すると、ダウンロードページに大々的に書き込んで宣伝するほど、自慢になるアワードでもある。

 「総合大賞」に選ばれたアプリは、KIA自動車の「KIA Motion」だった。写真と音楽を選択するだけで簡単に動画を制作でき、SNSで共有もできる。しかし韓国内では、「HONDAの動画制作アプリ『road movies』をそっくり真似たのが大賞だなんて」と選定に問題があるのではないかと疑問を投げかけるユーザーも少なくなく、「スマートアプリアワード」の信頼性が揺らいでしまった。

 一方で、部門別大賞や優秀賞を受賞したアプリには斬新な製品が多く、13年を代表できるアプリとして納得できた。

 例えば、「マーケティングイノベーション大賞」を取った韓国・新世界デパートのアプリは、AR(拡張現実)を利用してオンラインとオフラインをつなげるツールである。位置情報を利用してユーザーのいる場所から近い店舗のセール情報を提供し、デパートのARコーナーでアプリを起動すると、スマートフォンの画面にその都度、違う商品が登場し、画面の商品を割引価格で購入できる。

 冬はブーツを履くことが多いが、気に入った靴があっても履き替えるのが面倒だからと買わずに帰る客をつかまえるため、スマホで自分の足を撮影し、気に入った靴にカメラを当てて合成する「バーチャル試着」の機能が利用できる。衣装はスマホではなく、デパート内にあるバーチャル試着専用のブースを利用するようになっている。新世界デパートによると、バーチャル試着やバーチャルクーポンで楽しくショッピングができると口コミで広がり、アプリ公開から4カ月で40万人以上がダウンロードしたという。

「スマートアプリアワード総合大賞」を受賞したKIA自動車の「KIA Motion」の画面

 

スマートTVや他のデバイスと連動するアプリに期待

 「生活サービス部門大賞」は、位置情報を利用して各種料理の出前を注文できる「配達トン」が受賞した。アプリを起動すると自分の居場所から出前を注文できる料理のリストが登場し、メニューを見ながらお店に電話をして注文できる。

 現金やクレジットカードを持っていなくても、アプリ経由であれば携帯電話料金との合算請求で注文でき、次の注文に使えるポイントも貯まるところが便利だとして話題になった。料理だけでなく、花やその他の代わりに買ってきてほしいものをお願いすることもできる。

 「公共サービス分野大賞」は安全行政部の「スマート安全帰宅」が受賞した。自分の目的地と居場所を保護者に伝えることができるアプリで、共働き家庭で子供の居場所を確認したり、子供の居場所をマップ上に表示したり、子供が帰宅経路から外れると保護者にメールで知らせるといった機能がある。国民の8割近くがスマホユーザーの韓国だけに、GPS機能のあるスマホを使って子供やお年寄りの安全を守れるアプリを省庁が無料で配布している。

 「公共サービス分野優秀賞」では、事故の内容と現場をより正確に早く消防や警察に通報できる「スマート救助隊」が受賞した。国土交通部が提供するアプリで、応急処置や生活安全情報といった付加コンテンツもあり、生活必需アプリとして定着している。

 市内の交通状況をリアルタイムに確認できる「ソウル交通ポータル」を、ソウル市が「公共サービス分野」で受賞した。道案内や道路の渋滞や事故確認、駐車場、バスの乗り換えや到着時間案内、地下鉄乗り換えや運行情報案内、ソウル市内各地の防犯カメラ映像確認、交通関連相談(ソウル市コールセンター)などのメニューがある。自家用車で出勤する人が多く、朝から晩まで渋滞するソウルではとても使えるアプリだ。

 韓国では各省庁も生活を便利にする無料アプリ配布に熱心で、企業もオンラインとオフラインをつなげるマーケティングツールとして面白いアプリを無料で提供している。「あると生活が便利」というより、「ないと何もできない」というほど、韓国ではスマホが生活に根付いてしまった。

 14年から韓国では4K放送が始まるほか、冬季オリンピックやワールドカップといったイベントもあるため、高画質スマートTVの普及が増えると見込まれている。スマホだけでなく、スマートTVや他のデバイスとも連動するアプリが今後、「スマートアプリアワード」に選ばれるのではないだろうか。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20131226/1116583/

[日本と韓国の交差点] 脱北女性と韓国男性の結婚が増えている理由

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米ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が1月30日、韓国に関する面白い記事を掲載した。タイトルは「
韓国のデートは南北分断も超える」。北朝鮮から逃げてきた脱北女性と韓国男性との結婚が増えているという内容だった。

 WSJは脱北女性が韓国の結婚相談所を通じて韓国の男性と出会い、結婚したストーリーを紹介している。この脱北女性は、夫の助けを得て韓国での生活に慣れ、定着することができたという。結婚後は、南北で言葉遣いが違う(方言がある)ため苦労したが、脱北した時の苦労に比べれば結婚後の苦労はなんともないのだとか。

 WSJは、脱北女性専用の結婚相談所が新しいニッチマーケットになっていると紹介している。成婚に至るケースもかなり増えたそうだ。実際に検索サイトや電話帳を見てみると、脱北女性専用の結婚相談所が10社以上登録してあった。

 韓国では朝鮮時代後期から「南男北女」という言葉が伝えられている。男性は南出身の方が頭が良い。女性は北出身の方が美人で気立てがいいという意味だ。男性については、朝鮮時代の政治家や軍人の多くが南地方の出身だったため、こう言われるそうだ。女性については、日本に秋田美人がいるように、北の地名を冠した「咸興美人」「江界美人」がいる。北に行くほど晴れた日が少なく、女性が色白でほっそりしていたからだとか。南男北女のイメージがあるので、「北朝鮮の女性と結婚したい」と結婚相談所にやってくる韓国人男性が増えてきたようだ。

北朝鮮では女性が男性より60万人多い

 しかし最近の南男北女は、もう1つの意味を持つ。南は男が多く、北は女が多いという意味の南男北女だ。韓国統計庁によると、2013年の人口は韓国が5000万人、北朝鮮が2442万人と韓国の方が2倍近い。男女の性比を見ると、韓国は男性が女性より7.5万人多く、北朝鮮では女性が男性より60.4万人も多かった。

 韓国では性別生み分けまでして男の子を産みたがる傾向が強い。老後の面倒を見てくれる跡継ぎ長男を産まなければならないと、考える人がいまだに少なくない。農村や漁村には独身男性があふれ、ベトナムや中央アジアにまで行ってお見合いをするほどだ。最近はだいぶ変化し、娘を産みたいという親も増えた。しかし、周りが放っておかない場合もある。

 一方、北朝鮮は、過酷な労働や軍隊での事故で亡くなる男性が多いという。韓国のメディアによると、北朝鮮の男性は外貨稼ぎのためシベリアの伐木現場や海外の建設現場に強制的に送り込まれ事故死する人が多いので、北朝鮮には女性しか残らないという。