サムスンのお膝元でiPhone 5sと5cを酷評する韓国メディア、ユーザーはAndorid不安から乗り替え検討も [2013年9月13日]

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米アップルが2013年9月10日(現地時間)に発表した
スマートフォン「iPhone 5s」と「iPhone 5c」。日本ではNTTドコモからも販売されることになり、話題騒然になっている。

 韓国でも、やはりiPhone 5sと5cは話題になっている。去年の「iPhone 5」の時と同様、またもや5sと5cは日本で先に発売される。韓国での発売は今年11月以降になりそうだ。今回は5sと5cを先行発売する国から個人輸入してMVNOで使える道が開けた。「キャリアの補助金なしでもいいから早くiPhone買いたい!」と心待ちにしているユーザーも少なくない。

指紋認証やカメラ機能、処理速度向上などが話題になっている「iPhone 5s」

韓国メディアはiPhone 5s/5cを酷評

 海外のメディアは、スティーブ・ジョブズがいた頃のようなあっと驚かせるところはなくても、iPhone 5sの指紋認証やカメラ機能改良、A7チップ搭載で処理速度が高くなった点、常に動きを感知して最適の状態にするモーションプロセッサーM7を搭載したところなどを高く評価している。

 それに対し、韓国メディアは酷評しているケースが多い。「iPhone 5sと5cは期待外れ」「新作発表後アップルは株価下落、サムスン電子は株価上昇」「5cは値段が高すぎて低価格スマホとは言えない」「指紋認証なんていらない無駄な機能」など、韓国メディアでは異常なほどアップルを批判する記事が多いのに驚いてしまった。

 「iPhone 5sと5cを少しでも褒めるとサムスンから広告もらえなくなるのか?」と突っ込みたくなるほどである。韓国にいると、iPhone 5sと5cについての中立的な情報を得るには、海外メディアの記事と、国内ブログのレビューを頼るしかない。

韓国ではサムスンの大型新製品発売が間近

 韓国内でも世界市場でも、スマホはサムスンの「GALAXYシリーズ」が最も売れている。サムスンは9月5日、新しいスマホ「GALAXY Note 3」と腕時計型のウエアラブル端末「GALAXY Gear」を公開したばかりである。

 GALAXY Note 3は、5.7インチSuper AMOLEDディスプレイの大画面に1310万画素カメラ、3200mAhの大容量バッテリーに重さは182gというスペックで、前の機種に比べ使いやすくなった。韓国のスマホユーザーは写真撮影が大好きで、特に「セルフカメラ」と呼ぶ自分撮りが大好きである。Wi-Fiが使える場所が多いので、テレビドラマの再放送やバラエティー番組のクリップ動画などを移動中に視聴する人も多い。通常の画面サイズのスマホは「小さすぎて目が痛い」と不評。韓国のWebサイトは未だにAdobe Flashのコンテンツが多いので、(iOSが動くiPhoneシリーズではなく)Android OSが動くGALAXYでないとネット閲覧が不便だという面もある。

Androidスマホの「スミッシング」詐欺が脅威に

 しかし最近、Androidスマホを狙った「スミッシング」が多発しており、「安全なiOSに乗り換えるべきなのではないか」と考えるユーザーが増えている。Twitterやブログ、韓国メディア記事のコメント欄の反応などを見ると、悩んでいるユーザーが多いのが分かる。

 韓国のスミッシングは、ショートメッセージ(SMS)とフィッシング(phishing)を組み合わせた造語。知人の電話番号からURL入りのSMSが送られてきて、そのURLをクリックすると悪性コード(マルウエア)に感染する。悪性コードを通じてハッカーにスマホを勝手に操作され、知らない間に有料アプリの決済を繰り返したり、モバイルショッピングサイトを経由して金品を盗まれたりするという、新しい金融詐欺である。

 アドレス帳に登録してある友人の電話番号から「結婚することになりました!」とか、「最近仕事がうまくいかなくてお金に困っている」といった内容のSMSとURLが送られてくると、気になってついクリックしたくなるものだ。ハッカーがスマホ内に保存された個人情報を盗み見して友人になりすましてSMSを送るので、従来型の「迷惑メール」に比べて引っかかってしまいやすい。

スミッシング被害金額は半年で約3億円

 スミッシング被害に遭った人はほとんどがAndroidスマホのユーザーだ。韓国ではGALAXYシリーズなどAndroidスマホ使っているユーザーが多いというのが1つの要因である。だが、AndroidスマホではGoogle Playストアを経由しなくても自由にアプリケーションをインストールできるため、悪性コードが入ったアプリに「感染」しやすいという事情もある。

 セキュリティ会社であるフィンランドF-Secureの調査によると、2012年10~12月世界市場で新しく発見されたスマホの悪性コードの96%がAndroid向けに作られたものだった。同じ期間中のiOS向け悪性コードの発見件数は0件だった。米シマンテックの調査結果も似ていて、Androidの悪性コードは103件、iOSの悪性コードは1件だった。

 韓国警察庁サイバーテロ対応センターによると、スミッシング犯罪発生件数は2012年の2182件から、2013年は上半期だけで16万449件に増えた。被害金額は2012年の5億6900万ウォン(約5200万円)から2013年上半期は32億1900万ウォン(約3億円)まで増えた。一度に大金を決済するのではなく、被害者が気付かないよう500~1000円ほどのお金を長期に渡って盗むのが特徴である。

“国産スマホ”も良いが、安全でかわいいカラーのiPhoneが気になる

 もちろん、スミッシング被害が急増しているのはサムスンやGALAXYのせいではない。だがAndroidスマホを使う限り、メッセージをクリックしないように気をつける以外打つ手が乏しい。AndroidのGALAXYでは不安がある。iPhone 5s/5cはGALAXYシリーズより画面は小さいし、韓国語のWebサイトの一部を表示できない不便さがある。だが「iPhoneを使った方が身のためかな」と悩むユーザーも多い。

 筆者もその1人。かわいいカラーで価格も安いiPhone 5cを狙っている。韓国メディアはiPhone 5cについて「洗礼されたスタイリッシュなモノクロがiPhoneの特徴だったのに、サムスンのまねをしてカラーを増やした」と酷評している。ここまでメディアにけなされながら、韓国でiPhone 5sと5cがどれだけ売れるか、注目したいところだ。


カラフルな「iPhone 5c」を筆者も狙っている

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130912/1104805/

「韓国スマートヘルスケア最前線」 韓国医療機器、中国や新興国への輸出活発に [2013年10月30]

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 医療機器は米国やEU(欧州連合)、日本からの輸入に依存していた韓国だが、2012年から新興国への輸出が増加しはじめた。韓国食品医薬品安全処によると、2012年の輸出は対前年比17.6%増の19.67億米ドル。輸入は同3.2%増の26.01億米ドルだった。貿易赤字は2011年の8.48億米ドルから2012年には6.34億米ドルに減少した。

 韓国が輸出している医療機器は、超音波診断装置が多い。実際、医療機器メーカーの輸出額上位も、サムスンメディソン(2.1億米ドル)、韓国GE超音波(1.8億米ドル)、NUGA医療機(0.72米億ドル)と超音波診断装置の関連企業が並んだ。

 韓国の医療機器輸出額は、中国・ロシア・インド・中南米など新興国で着実に伸びている。韓国保険産業振興院によると、医療機器の輸出全体では前述の通り2012年に対前年比17.6%増加したが、中国向けの輸出額に限れば66%増、ロシア向けは25.4%増、中南米と新興国向けは36%増加しているという。

 韓国の医療政策を担当する省庁である保健福祉部(部は省)は2013年10月23日、韓国製の医療機器の海外輸出を支援する「海外医療機器総合支援センター」をベトナムとインドネシアにオープンした。このセンターは、韓国製の医療機器であればメーカーに関係なく修理やアフターサービス、現地の医療従事者を対象にした医療機器使用教育、韓国中小医療機器メーカーの海外進出のための販売代理や輸出手続き代理などの役割を担う。

 海外医療機器総合支援センターは、韓国と東南アジアの政府間保健産業分野の協力増進のための支援活動である。韓国保健福祉部は、国をあげて医療機器の輸出に力を入れていると現地政府にアピールすることで、韓国製の医療機器の認知度やブランド価値を高め、輸出増加につながることを期待している。オープン初日には韓国から保健福祉部や医療機器協同組合などの役員が現地を訪問し、ベトナム・インドネシア両政府と韓国製の医療機器輸出のための許認可手続きについて意見交換した。

 韓国は今後新興国が医療機器の主な顧客になると展望している。先進国は既に米国やドイツ、日本の医療機器が市場を確保しているので、超音波診断機器がメインの韓国のメーカーが進出するのは難しい。一方、中国や新興国は経済発展により医療サービスの需要が高まっており、医療機器もほぼ輸入に依存しているので、韓国の医療機器も輸出できるチャンスがあると見込んだのだ。

 特に中国は人口が多く生活水準も高まっていることから、米国に続いて世界第2位の医療機器市場になると韓国のメーカーは展望している。中国には既に韓国医療機器メーカーのサムスンメディスン、Lutronic(医療用レーザー機器)、VATECH(歯科用CT)、CU Medical Systems(AED)などが進出している。中国の医療市場への進出を狙う韓国企業はとても多く、韓国の通信キャリアであるSKテレコムも熱心に動いている。中国の医療機器メーカーであるTIANLONG(天隆)社を買収し、中国の医療情報ネットワーク構築や体外診断機とIT技術を融合したヘルスケア・サービスを始める準備を進めている。

 韓国保健産業振興院は、新興国進出支援活動の一環として中国各地で韓国製の医療機器と病院を輸出するための「韓国医療宣伝活動」を行っている。病院輸出とは、韓国の大手病院を中国に設立することで、病院の建設から医療機器、医師、看護師、医療情報システムなど全てを韓国の大手病院と企業が手掛けることを指す。韓国の技術で最先端の病院を中国に作り、中国にいる医師と韓国にいる医師をつなげる遠隔診療でより質の高い医療サービスを提供することを狙う。

 韓国保健産業振興院は2013年9月、中近東に韓国製の医療機器を輸出するため、エジプトやアラブ首長国連邦の医療機器メーカーを韓国に招待し、現地進出のためのマーケティングや流通事業者選定について学ぶシンポジウムも開催した。韓国保健福祉部は、医療機器産業の海外進出活性化のために全省庁が参加する産業育成案について議論を始めた。政府の積極的な支援を追い風に、韓国製の医療機器の新興国向け輸出は、今後も大きく伸びそうだ。



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By 趙章恩の「韓国スマートヘルスケア最前線」
日経デジタルヘルス
 2013年10月30
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メール・LINEの普及で低迷する韓国郵便局が“奇策”、郵便局でMVNOスマホ販売 [2013年9月6日]

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韓国郵便局は2012年時点で累積赤字約700億ウォン(約68億円)を記録した。韓国の郵便局は政府が運営している。郵便量の減少から、特に郵便事業の赤字がひどい。韓国では光熱費やクレジットカード請求書、行政機関からの案内などもほとんどがメールで届く。郵便局で利用するのは貯金と宅配ぐらいになってしまった。

 韓国郵政事業本部は、メールやLINE、KAKAOといった通信手段が一般に広く普及したことから今後も赤字が続くとして、経営改善のため大都市を中心に郵便局を大幅に統廃合する方針を発表した。空いたスペースを貸し出して収益を上げるという。

 もう1つの“奇策”が、郵便局の収益改善のために始めるMVNOスマートフォン販売である。2013年9月23日から、全国の郵便局で「中小MVNO」6社のスマートフォンを販売する。ユーザーが郵便局のMVNO専用窓口でパンフレットや端末を見てMVNOと端末を選択すると、数日内に郵便局の宅配便で自宅に端末が届く。郵便局の職員を教育して、MVNOの料金制度や端末の特徴を説明できるようにする。独自の販売網を持つケーブルTV会社や大手流通チェーン店、キャリア(通信事業者)の子会社などの「大手MVNO」は対象外である。

スマホ対応で課題を抱えていた韓国MVNO

 この施策は、韓国MVNO業界の事情とも関係している。

 MVNOではサムスン電子、LG電子、中国ZTEなど大手メーカーと、韓国の中小メーカーのスマートフォンを利用できる。韓国の大手キャリアは他社から乗り換えると料金が安くなるとか、端末代が安くなるとか、いろいろな特典を付けて販促している。一方のMVNOではプリペイドで通話料やデータ通信料は大手キャリアより20~30%ほど安いものの、端末購入補助金がない。サムスンのGALAXYシリーズやアップルのiPhoneなど高機能なスマートフォンを選択すると、大手キャリア利用よりもトータルの費用が割高になってしまうこともある。

 こうした課題を解決するため、9月4日に、MVNO事業者と、サムスン、LG、ソニーモバイルなどのメーカーが参加する「MVNO端末共同調達協議体」が発足した。MVNO専用のシンプルで安いスマートフォンを増やしたり、MVNOが大量に端末を調達することで最新機種の価格を少しでも抑えたりという取り組みを進める。MVNOのスマートフォンは現在15機種ほどあるが、協議体は2013年末までに7機種程度を追加する予定である。

流通網の問題を郵便局の信頼性で解決

 端末の種類は増えるが、残った問題が流通である。今まではMVNOのオフライン代理店は少なく、ほとんどネット上だけで販売している状態だ。2012年末時点で大手キャリア3社の代理店は全国4812店、販売店(キャリア3社の端末を全て販売する店舗)は2万店に及ぶ。一方のMVNOの代理店は全国280店ぐらいしかない。

 コンビニエンスストアでもMVNO2社のスマートフォンを販売しているが、選択肢が少なすぎる。コンビニには料金制度や端末の特徴をよく知っている販売員もおらず、不安を感じる利用者が多いために売れ行きは芳しくなかった。


MVNOスマートフォンの1つである、サムスン電子製の「GALAXY M」はコンビニやネットで購入できる。

 郵便局ならMVNO6社を扱うので選択の幅が増え、局員が説明をしてくれるので利用者の不安も少ない。国営の郵便局で販売することによって、MVNOの信頼度を底上げする効果も狙える。2013年後半にはMVNOのスマートフォンユーザーがかなり増えそうだ。

 韓国のMVNO加入者は2013年8月末時点で約200万人。全携帯電話加入者の3~4%という規模である。韓国のICT政策を担当する省庁に当たる未来創造科学部は、欧米のようにMVNO加入者が全携帯電話加入者の10%を超えると、MVNOと大手キャリアの競争が促進されて、より安い費用でスマートフォンを利用できるようになると見込んでいる。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130906/1104066/

韓国のタブレット市場は7~8インチで勝負、難しいスマートフォンとの差異化 [2013年8月30日]

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韓国は教育分野ではタブレットや電子黒板を使ったデジタル教育が盛んなだけに、タブレットの普及率が高いように思われがちだ。だが実際には、スマートフォンは売れてもタブレットはなかなか売れない市場である。

 タブレット販売台数は伸びるどころか減少している。韓国IDCの調査によると、韓国内のタブレット販売台数は2010年39万8660台から2011年139万7172台と3倍以上に増えたが、2012年には125万5956台と前年比10%ほど減少している。

 世界市場ではタブレットの販売台数が大きく伸びている。2012年は前年の1億4440万台より60%ほど増加した2億2930万台だった。タブレットは特に米国と発展途上国で売れているという。米国では小型TVの代わりにタブレットを利用する家庭が増えていることから「テレビのライバルはタブレット」とまで言われているそうだ。韓国IDCは、世界市場におけるタブレットの販売台数は2017年まで年平均23.2%成長し、スマートフォンの年平均成長率(16.9%)を上回ると展望している。

iPad mini発売以降、タブレットが話題にならず

 一方、韓国内を見ると、スマートフォンに比べタブレット新機種発売のニュースがあまりない。そのせいか米アップルの「iPad mini」発売以降、2013年に入ってからはほとんどタブレットが話題になることはなかった。ようやく8月中旬になって、9月に開催するドイツの家電展示会IFAと新学期に向け、タブレットの新機種が発売されるようになった。

 韓国のタブレット市場は、サムスン電子とアップルが競争するハイエンド市場、中国メーカーと韓国中小企業メーカーの価格競争が激しいローエンド市場、幼児向け教育端末市場の3つに大きく分けられる。

 サムスンとアップルは10.1インチタブレットで競争してきたが、最近はサイズがだんだん小さくなっている。学生の間では10.1インチの大画面タブレットが人気だが、社会人には、スマートフォンとノートパソコンの間を埋めてくれるサイズのタブレットの方が人気である。

 韓国では、何でもポケットに入れて、会社に行く時も遊びに行く時もバッグを持たない社会人男性が多い。これも、ジャケットの内ポケットに入れるか、あるいは片手で持ち歩ける7~8インチのタブレットが売れる理由である。

サムスン「GALAXY Tab 3」は少し大きめ

 サムスンが韓国で2013年8月22日販売した新しいタブレット「GALAXY Tab 3」は、8インチの画面に厚さ7.4mm、重さ314gとだいぶ軽くなった。サムスンは「片手で握れる大きさと重さで、携帯性を強化したタブレット」だと強調している。7インチではなく8インチにしたのは、直前に発売したスマートフォン「GALAXY Mega」が6.3インチなので、スマートフォンより大きく、手軽に持ち歩けるサイズでありながらもタブレットらしさを出すためではないかとみられる。

 サムスンは、2011年にLG電子が発売した幼児向け7インチタブレット「キッズパッド」に似た「GALAXY Tab 3キッズ」も9月に発売する予定だ。LGのキッズパッドはインターネットにつながらず、コンテンツはゲーム機のように専用のメモリーを差し替えて利用するモデル。一方のサムスンGALAXY Tab 3キッズは、無線LAN(Wi-Fi)につながるようにした。

 タブレットの新製品競争から一歩引いていたLGも、8インチモデルで再び挑戦する。2013年9月のIFAで8.3インチの「G Pad 8.3」を展示することが決まった。画質にこだわったタブレットで、発売は10月の予定である。

グーグルの第2世代「Nexus 7」がサムスンの脅威に

 サムスンのタブレットに劣らない仕様なのに1万円以上安いことから、米グーグルの新しい「Nexus 7」(関連記事)も大きな話題になっている。韓国では8月26日から予約販売を開始した第2世代Nexus 7は、「全てが新しい、生まれ変わった」と宣伝している。

 初期モデルより薄くて軽くなっただけでなく、1920×1200ドットの高画質である。画面の密度は323ppi(1インチ当たりの画素数)とタブレットの中では世界最高レベルで、文字がくっきり見える。真っ黒い外観で高級感があるという点も人気の秘訣である。

 韓国内での正式発売を待てず、「個人輸入してしまった」と新しいNexus 7を自慢するブログも多かった。カメラが500万画素という性能にとどまるところは残念だが、タブレットでよく利用する動画再生、電子書籍閲覧には価格も性能もちょうどいい。韓国では、初代のNexus 7はいつも品切れで買いたくても買えなかった。第2世代はいつでも買えるようにしてほしいものだ。そうすれば少しはタブレット販売台数が伸びるかもしれない。

Amazon Kindle不在の韓国市場

 Nexus 7よりも安くてシンプルなタブレットもある。ネット書店のインターパークは2013年8月16日、中国で製造した7インチの「ビスケットタブ」を発売した。約1万5000円と韓国で販売している7インチタブレットの中では最も安い水準である。インターパークが販売する電子書籍リーダーとして使うのはもちろん、インターネット検索やGoogle Playストアのアプリも利用できるようにした。普段はスマートフォンを使うがたまに動画や電子本をもう少し大きな画面でベッドに寝ころがって観たい、タブレットは子供の絵本アプリを再生するぐらいしか使わない、という人にはちょうどいい。

 実は、韓国はまだ米Amazon.comが進出していないので、Amazonのタブレット・電子書籍リーダーの「Kindle」は正式発売していない。Kindleが発売されれば利用できるコンテンツが増えるので、タブレット市場に活気が出るかもしれない。

 スマートフォンとの差異化が難しくなったタブレットだが、新機種が続々発売される秋以降は動きがありそうだ。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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金好きなお国柄? サムスンが韓国でシニア向けスマホ「GALAXY Golden」発売 [2013年8月23日]

韓国サムスン電子がガラケー(従来型携帯電話)のようなデザインのフォルダー(折りたたみ)型LTE対応スマートフォンを発売した。シニア層をターゲットにしたスマートフォンということで、その名もずばり「GALAXY Golden」。

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韓国サムスン電子が発売したシニア層向けスマホ「GALAXY Golden」。

 「シルバー」ではなく「ゴールド」なのが韓国らしい。ちなみに、中国人の金好きは有名だが、韓国も負けないほど金好きで、貯金の代わりに金を購入する投資が流行っている。

 端末は全体がゴールドというわけではなく、黒を基調にふちがゴールドなのだが、高級感たっぷりのデザインに仕上がっている。韓国のスマートフォンユーザーの間ではかなり話題を呼び、シニア層をターゲットにしているにもかかわらず、珍しい端末好きの20~30代の若者にも売れているようだ。ブログでは「お父さんにプレゼントしたい」「持っているだけで金持ちに見えそう」という書き込みも増えている。

3.7型タッチディスプレイを2つ搭載

 GALAXY Golden は、3.7型のデュアルタッチパネルで、フォルダーの両面にディスプレイがついている。フォルダーを閉じたまま普通のスマートフォンのようにタッチして使い、フォルダーを開くとガラケーのように使える。

 サイズは幅118×奥行き59.5×高さ15.8mm。女性の手の大きさでも使いやすく、片手にすっぽり入る。重さは179gある。タッチパネルが両面に付いているせいか、若干分厚く、重く感じる。800万・190万画素カメラ、FMラジオ受信機能も付いて端末出荷価格は約7万2000円だ。

 タッチパネルで文字を入力するのが苦になるシニア向けに、メールやSMS(ショート・メッセージ・サービス)を利用する時は使い慣れたガラケーのように、キーパッドでボタン操作できるようにした。無料通話・SNS・マップ・電子書籍などスマートフォンで人気のアプリも使える。キーパッドでKAKAOやLINEを使えると、もっと早く楽に文字を入力できそうだ。

端末のどこに耳を当てても声が聞こえる

 GALAXY Goldenのタッチパネルのホーム画面も、シニア向けにシンプルにした。体重管理や万歩計機能があるサムスン独自のヘルスケアアプリ「Sヘルス」、名刺をカメラで撮影するとアドレス帳に電話番号やメールアドレスなどを自動保存できる名刺認識アプリをプリインストール。最新のスマートフォン「GALAXY S4」で使える機能はおおむねGALAXY Goldenでも使える。

 通話の際にはフォルダーを開かず、端末のどこに耳に当てても声が聞こえるというのも面白い。インターネットも使うが、音声通話の方が多いという人にはぴったりのスマートフォンだ。サムスンは「消費者の個性とニーズを反映してスマートフォンのラインアップを強化していく」とコメントした。

中国では富裕層向けに発売済み

 実はこのスマートフォン、一足先に昨年末中国で発売されている。ジャッキー・チェンがCMに出演し、中国の富裕層が好きな金色スマートフォンとして話題になった。端末価格は約15万円と韓国の2倍だったにもかかわらず、「今までで一番使いやすいスマートフォンだ」として富裕層のビジネスマンに売れた。

 サムスンのGALAXYシリーズはピンク、パープル、ブルーなどもともとカラーバリエーションが豊富だ。一方、米アップルが近々発売すると噂されるスマートフォンの新機種“iPhone 5S”で、従来機のホワイト、ブラック以外に「シャンパンゴールド」をラインアップするようだ。サムスンはアップルに対して先手を打ってゴールドのスマートフォンを発売したという報道もある。金好きな中国市場を狙ってiPhoneもゴールドを出すというのだ。

 米ストラテジー・アナリスティクスによると、2013年4~6月の世界LTEスマートフォン市場シェアはサムスンが47.0%(販売数2720万台)で1位だった。2位はアップルで23.5%、3位はソニーで6.2%だ。シニア層や富裕層、新興国市場も巻き込んで、スマートフォン市場の競争がますます盛り上がってきた。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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[日本と韓国の交差点] 市・市民・企業が参加する防止運動で韓国の自殺が減少

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韓国ソウル市とサムスン生命保険社が共同で行った自殺防止キャンペーン「命の橋(Bridge of Life)」が、ある広告祭でグランプリを受賞した。この広告祭は、シンガポールで9月に開催された「2013 Spikes Asia」。「命の橋」はアウトドア広告部門において、20カ国4832編の応募広告の中から選ばれた。

 「命の橋」は、2013年6月に行われたカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルでも、Titanium and Integrated Lions賞をはじめ9つの賞を受賞している。2013 Clio AwardsでもGrande award、PR部門Gold awardを受賞した。

 「命の橋」は、自殺の名所をヒーリングの名所へと変えるプロジェクト。ソウル市とサムスン生命保険社が2012年9月から始めた。韓国はOECD加盟国の中で、自殺率(人口10万人当たり自殺する人の割合)1位を10年連続で記録している。ソウル市消防災難本部の集計によると2003~2011年ソウル市の真ん中にある漢江の橋から飛び込み自殺をした人は1090人。中でも麻浦大橋(マポデギョ)からの飛び込みが188件と最も多い。

 麻浦大橋はオフィス街の「麻浦」と、汝矣島を結ぶ橋で長さは1.6キロ。汝矣島は漢江市民公園や国会議事堂、テレビ局、金融街があるソウルの中心地だ。交通の便がとても便利で、歩いて橋を渡る人も多い。ソウル市消防災難本部はこの橋から飛び込み自殺をする人が多い理由を、地下鉄の駅から歩いてすぐに行ける、人通りが多いので飛び込んだあと誰かに見つけてもらうことができる、と分析している。自殺する人には「見つけてもらいたい」という心理があるようだ。

 ソウル市の都市安全室はいくつかの対策を取ってきた。麻浦大橋に防犯カメラやSOS電話設置を設置する。飛び込めないように柵を高くする。すぐ救助隊が駆けつけられるようにする――。だが、それでも毎週、飛び込み自殺が発生している。

「何か悩みがあるの?」と橋が語りかける

 ソウル市都市安全室は物理的な方法で自殺を止めることは難しいとして、2012年7月に「命の橋」プロジェクトを発表。デジタル技術を使って、生きたくなるメッセージを投げかけることで自殺を防止する取り組みに着手した。開始は2012年9月。

 歩行者が麻浦大橋の歩道を歩き始めると、センサーが作動して橋が歩行者に話かける。橋の手すりの上面がデジタルサイネージのようなメッセージボードになっていて、歩行者の動きに合わせてLED照明が付き、様々なメッセージを発する。
「ご飯食べた?」
「ここ寒くない?」
「何か悩みがあるの?」
「大変だったんだね」
「一緒に歩こう」

 さらに「時がたつのって早いよね」って嘆いたり、なぞなぞクイズを出したりする。「人生で最も輝く時期はまだ来ていないよ」「明日は日が昇る」といった応援のメッセージも登場する。

 橋の端から約0.8キロの中間地点にはおいしそうな料理の写真や、おじいさんやおばあさんが幸せそうに笑っている写真、赤ちゃんとお母さんの写真などを表示する。

 これらのメッセージは専門家が作ったものではない。「命の橋」に飾る写真と、自殺しようとする人に伝えたいメッセージをソウル市が公募した。8000人の市民が応募し、その中から選んだメッセージを使っている。

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By 趙 章恩

2013年10月15日

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http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20131015/254569/

[日本と韓国の交差点] 「セマウル運動」を途上国に

.韓国の外務部(部は省)は2013年9月27日、韓国政府国連開発計画(UNDP)の間で「韓―UNDPセマウル運動グローバルイニシアチブ」に関する了解覚書を交わしたと発表した。

 セマウルとは韓国語で「新しい村」という意味。セマウル運動は朴正煕大統領(当時)が1970年代に政府主導で始めた経済発展支援、国民の意識改革運動を指す。都市と農村の格差を縮めるために、農村の生活環境の近代化と所得の増大を目指した。

 セマウル運動当時の写真や映像を見ると、70年代の韓国の農村は今の韓国からは想像もできないほど貧しかった。セマウル運動は農村に大きな道路を造り、茅葺屋根を瓦屋根に変えることから始まった。政府が全国3万4000もの洞・里(日本の町村単位)の住民に、何を作るべきか決めるように促したところ、村会館や橋の建設、道路の舗装、電気・水道設置などが真っ先に候補に挙がった。その後、農地拡大、計画的で科学的な営農、農水産物の流通構造改善、農水産物の品質改善と生産性向上といった政策に展開していった。

 セマウル運動で村が生まれ変わり、農民の所得も上がった。政府が残したセマウル運動の記録によると、1971~1978年までセマウル運動のために政府は5519億ウォン(約500億円)を投入。1兆9992億ウォン(約1800億円)の経済成長効果があったという。

 セマウル運動は、政府主導で農村を変えるための「チャルサラボセ(暮らしを良くしよう)」運動であるが、次第に勤勉、協同、自助、自立を強調する国民の意識改革運動へと発展した。70年代後半からは、都市部でもセマウル運動が始まった。主な活動として、セマウル清掃(住民が街の清掃に参加する)、「セマウル金庫」への貯蓄奨励、バンサンフェ(自治会)の開催などに取り組んだ。

 セマウル金庫は、政府が設立した金融協同組合。バンサンフェは近所の住民の連帯感を維持し、政府施策を広めるための自治会。月1回程度の頻度で開催された。欠席すると罰金が徴収された。

 1980年12月に社団法人セマウル運動中央会が発足し、セマウル運動は政府主導から民間組織主導に変わった。

国連がセマウル運動を評価

 セマウル運動はユネスコに登録されたほど、海外から評価を得ている。ユネスコ世界記録遺産国際諮問委員会(The International Advisory Committee of the UNESCO Memory of the World)は2013年6月、「韓国のセマウル運動は、世界最貧国だった韓国が国内総生産で世界15位(2012年、世界銀行)にまで成長できた礎石であり、このような経験は人類にとっても貴重な財産である」と称賛して、セマウル運動に関する記録や写真、映像など約2万2000点をユネスコ世界記録遺産(Memory of the World)に登録した。

 「韓―UNDPセマウル運動グローバルイニシアチブ」は、アジア、アフリカを中心とする途上国の農村地域を開発し、農村の貧困層を少しでも減らすために、韓国が貧困を乗り越えた経験を生かそうという試みである。韓国のセマウル運動を国際社会で通用する普遍的な農村開発事業モデルにするため、韓国とUNDPの専門家が共同研究を行うことにした。セマウル運動の考え方を3~4の途上国に導入してモデル事業を実施し、その事業推進戦略と事業成果を国際社会に広める。

 国連が21 世紀国際社会の目標として制定した「ミレニアム開発目標」(THE MILLENNIUM DEVELOPMENT GOALS)の中で、なかなか進捗しなかったのが発展途上国における農村の貧困解消である。

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[日本と韓国の交差点] 韓国、「増税なき福祉」の公約はなかったことに?

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朴槿恵大統領を当選に導いた決定的公約――65歳以上の老人に毎月20万ウォン(約1.9万円)の基礎老齢年金を支給する――がなかったことになりそうだ。韓国のメディアは9月23日、一斉にこう報じた。朴大統領が公約した基礎老齢年金は、財源が不足のため、65歳以上全員ではなく低所得層を中心に選別して支給する方針に変わるという。

 朴大統領は2012年12月の選挙運動期間中、次のように公約した。

 「増税なき福祉拡大は可能だ」

 「国民年金に加入していなくても高齢者が年金で生活できるよう、現在9万4600ウォン(約9000円)の基礎老齢年金を20万ウォンに増額する」

 「基礎老齢年金は65歳以上のすべての国民に支給する」。

 基礎老齢年金は、地上波テレビが中継した大統領候補のテレビ討論の中で、朴大統領が最も強調した公約である。野党候補らが「基礎老齢年金の財源は確保できるのか」と質問すると、朴大統領は「私が国民に選択してもらえれば(大統領になれば)実行します」と答え、高齢者から高い支持を得た。地上波放送3社が大統領選の投票日に実施した出口調査によると、50代は62.5%、60代以上は72.3%が朴大統領を支持した。

 与党であるセヌリ党のファン・ウヨ代表は9月24日、ラジオ番組に出演し、こう釈明した。

 「65歳以上全員に支給するというのは国民のみなさんの誤解。65歳以上の低所得層に最大月20万ウォンを支給するというのが公約」

 「国家財政の範囲内で、生活が苦しい高齢者から段階的に支給するという意味であり、公約破棄ではない」

 これに怒った人々がネット上で、大統領選挙当時、「65歳以上全員に月20万ウォン支払う」と宣伝したセヌリ党の資料やセヌリ党議員のTwitterのつぶやき画面をキャプチャーして証拠写真として投稿。大騒ぎになっている。

 基礎老齢年金以外にも、高い支持を得た福祉公約がいくつかある、国家予算を管理する省庁の企画財政部は、これらについても財源不足を理由にすべて守るのは難しいとしている。共働き家庭を支援するため5歳までの保育費を無料にする、癌・心臓疾患・脳血管疾患・難治病の4大重症疾患治療費の全額を国が負担する、大学の授業料を半額にする、といった公約だ。

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韓国LGが激戦区米国で新スマホ「G2」発表、アップルとサムスンの牙城に切り込む [2013年8月9日]

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韓国では「LTE」よりも2倍速いモバイル通信である「LTE-A」対応のスマートフォンが増えている。サムスン電子の「
GALAXY S4」に続いて、LG電子も「G2」という名前のスマートフォンを公開した(関連記事)。パンテックも「VEGA LTE-A」を発売した。

 LGはG2のプレス向け製品公開イベントを2013年8月7日米ニューヨークで開催した。サムスンはいつも新しいスマートフォンの公開イベントを欧米で行っている。LGもスマートフォンの激戦区である米国でスマートフォン公開イベントを開催することで、世界市場を攻めるという意思をはっきりと表明した。
 


2013年8月7日に米ニューヨークで開催された韓国LG電子の新型スマートフォン「G2」公開イベントの様子

「G2」の外観。5.2型フルHDディスプレイを搭載し、細いエッジ幅も特徴的

 それほどG2はLGの野心作、自信作ということだ。G2は8月8日から韓国で発売し、その後世界130キャリアから販売する計画である。

5.2型フルHDの画質、24ビット192KHzの高音質

 LGは記者会見で「G2は史上最高の自信作」であると強調した。

 5.2インチのフルHDのIPSディスプレイにLTE-A、2.26GHzのクアルコム製スナップドラゴン800プロセッサー、外側1300万画素カメラには手振れ補正機能も搭載した。内側カメラは210万画素。カメラのレンズは指で触っても指紋が付きにくくした。

 何といってもG2の自慢は音質にある。24ビット192KHzのハイファイサウンドで、スタジオ録音の原音を再生できるレベルだという。CD(16ビット、44.1KHz)の音質をはるかに超えている。もちろん通話品質も良くなった。バンドルイヤホンも2万円はする高級イヤホンと差がない着用感と音質で差異化した。

ユーザーインタフェースに一工夫

 G2のキャッチフレーズは「Learning From You」。顧客こそがイノベーションの源で、ユーザーの意見を最大限に反映したスマホだという。「G2を使うことでユーザーは日常の中で、感動と楽しさを味わえる」との説明だ。ただし、米アップルのiPhone 5や、サムスンのGALAXY S4もCMで確か同じことを言っていたような……。

 それはともかく、G2の面白いのは、電源ボタンとボリューム調整ボタンが全て端末の後面にあることだ。これはスマートフォンユーザーの行動を観察した結果生まれた変化で、端末を握りしめたまま楽に人差し指でタッチできるようにするためだという。端末の前面にあったボタンはディスプレイに電源が入ると使えるソフトキーに変えた。

 ディスプレイは5.2インチと大きいが、横幅は2.7インチなので、女性でも握りやすくなった。5インチ以上のスマートフォンだと大きすぎてうまく握れず、通話する度に手が疲れたが、これなら大丈夫だ。

「ノックオン」「電池長持ち」など新機能多数

 もう1つ、「ノックオン機能」も面白い。iPhoneなら端末前面にあるボタンを押してディスプレイの電源を入れるが、G2はディスプレイの上を2回ノックして電源を入れたり消したりする。

 パソコンのログオン機能のように、1つのスマートフォンで複数のユーザー向けの画面を設定できるのも特徴だ。子供がスマートフォンで遊ぶ時はカメラと写真アルバム、学習アプリだけ使えるようにできる。安心して親のスマートフォンを子供のおもちゃとして使わせることができる。

 スマートフォンのヘビーユーザーにとって嬉しいのは、何といってもバッテリー長持ち機能だろう。G2はGRAM(Graphic RAM)を適用して、同じ画面をずっと見ている時はCPUを休ませる。この手法で使用可能時間を10%以上伸ばした。バッテリーは「Stepped Battery」というもので、従来のバッテリーに小さいバッテリーをくっつけている。バッテリーとカバーの間の隙間を埋める形で小さいバッテリーをもう1個増やし、さらに使用時間を伸ばしている。

iPhone 5とGALAXY S4の牙城を崩せるか?

 G2発売前から、韓国のスマートフォンユーザーの間で「LGがすごいスマホを発売するらしい」と噂が絶えなかった。韓国のスマートフォン市場はiPhone 5とGALAXY S4ががっちり握っているので、もっと他に選択肢が欲しいと願うユーザーが多かった。

 しかし、実際にG2が発表発表されると、「G2の性能はすごいし、斬新な機能が盛りだくさんなので使ってみたい。けれど今使っているスマホも悪くないし、LTE-Aにしなくてもインターネット速度が遅いと感じないし、悩ましい」という意見が多い。

 G2の端末価格は9万円ほどもする。キャリアから乗り換え補助金が出たとしても、6~7万円は払わないと入手できない。スマートフォン新機種の性能が良すぎて、逆にそこまでいらないから端末価格を安くしてほしいという意見も増えている。

 LGは、G2を世界市場で1000万台以上販売し、フィーチャーフォン時代の栄光を取り戻すのが目標だ。サムスン、アップルに続く世界3位のスマートフォンメーカーの地位を固めることを目指している。G2の投入でその目標に近づけるだろうか。

趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130809/1101163/

[日本と韓国の交差点] 越北しようした男性を警備中の韓国軍が射殺、これは殺人か?

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韓国軍の報道官が、「9月16日午後2時20分頃、臨津江(イムジンガン)を泳いで北朝鮮に渡ろうとした民間人男性を、警備していた哨兵が射殺した」と発表した。この男性を見つけた哨兵は、韓国側へ戻るよう3回、警告放送をした。だが、男性が渡河を続けたので警告射撃。それでも止まろうとしなかったので射殺したという。

 韓国軍の発表によると、臨津江周辺は統制区域で民間人が入ってはいけないことになっている(農業をするために立ち入り許可をもらった一部の人を除く)。同川は幅が800メートルほどしかなく、泳いで北朝鮮に渡ることが可能だという。韓国軍の法規では、臨津江周辺は敵(北朝鮮)と最も接近している地域であるため、軍の統制に応じず逃げる者は射撃することになっている。射殺は適切な処置だったと説明した。

 男性が射殺された臨津江から5~6キロほど離れた場所には臨津閣という観光地がある。ここには、北朝鮮が故郷で帰る場所がない人が秋夕(チュソク、韓国のお盆で旧暦8月15日、2013年は9月19日)に集まり、茶禮(チャレ)を行う場所になっている。茶禮は、その年に採れたお米や果物をご先祖様に供える行為をいう。事件当日も、茶禮のために臨津閣を訪問する人が多かった。

 「軍事分界線内であることを理由に兵士が民間人を射殺した」というニュースは韓国中に衝撃を与えた。観光地のすぐ近くで北朝鮮に渡ろうとする人がいて、哨兵が射殺する事件が起きたことに、「韓国は休戦中で、北朝鮮は主敵である」ことを改めて考えさせられた。

 韓国軍が9月17日に発表したところによると、射殺された男性が所持していたパスポートから、日本をはじめとする複数の国に政治難民として申請したが断られた経歴があることが判明した。複数のメディアが「日本が韓国に強制出国させた男性だ」と報じたが、これは、政治難民としての受け入れを断られ、日本に滞在することができなくなったからだと見られる。この男性が誰で、なぜ北朝鮮に渡ろうとしたのか、なぜ日本や他の国に政治難民としての受け入れを申し込んだのか、についてはまだ調査中だという。

射殺に賛否両論の声

 筆者はこのニュースを見て、「韓国は休戦状態にあり、主敵は北朝鮮だ。民間人に扮した北朝鮮のスパイが北に渡ろうとしていたかもしれない。射殺した哨兵は、軍人としてやるべきことをやった。やむを得ないことだったのではないか」と思った。ところが、Twitterや掲示板サイトでは「軍人が民間人を射殺するのは殺人だ」として論争が始まっていた。

 「この男性は、午後2時という白昼に『私を見て!』と言わんばかりに鉄柵を超えて臨津江を泳いで北朝鮮に渡ろうとした。この男性が民間人統制区域に入った時から韓国軍は防犯カメラで監視していたという。なぜこの男性に近づいて止めなかったのだろうか。射殺することなく止めることもできたはずだ」

 「脱北する北朝鮮の人を射殺する北朝鮮軍は残酷だと非難しておきながら、北朝鮮に渡ろうとする民間人を射殺した韓国軍はよくやったと褒める。これはおかしくないか」

 「武装していない民間人を軍人がその場の判断で射殺するのは殺人行為だ。北朝鮮に渡ろうとしたぐらいで殺すなんて残忍だ」

 「韓国は人権保護を重視しており、死刑も執行しない。射殺は正当なのか」

 以上のように、韓国軍がやりすぎたと非難する書き込みが多かった。

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