[日本と韓国の交差点]「チョコパイ」を引き金に北朝鮮で「革命」が起こる?!

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韓国と北朝鮮の経済協力と平和の象徴だった開城(ケソン)工業団地から韓国企業も撤収し、暫定的に閉鎖することになった。同工業団地に入居していた中小企業と、原材料を納品していた企業が倒産しないよう、統一部(部は省)は5月6日から、特別経済交流協力資金(年利2%)の貸し出しを始めた。

 5月6日、国会の外交統一委員会で、開城工業団地をめぐる韓国政府の交渉の仕方に問題があったのではないかという議論が持ち上がった。野党の民主統合党が、次の2点を指摘したのだ。1つは、開城工業団地を閉鎖した責任は北朝鮮にあるのに、韓国政府が1300万ドルを北朝鮮に支払ったこと。第2は、入居している企業が撤収を望まなかったにも関わらず一方的に撤収させたこと。


 民主統合党は「もっと柔軟に対応できたのではないか」と統一部を問い詰めた。これに対して統一部は「開城工業団地を維持・発展させるという立場は変わらない。北朝鮮に対話を提案した」と回答した。


 開城工業団地の今後について報道が続く中、イギリスのガーディアン紙が開城工業団地と北朝鮮の状況に関して興味深い記事を掲載した(関連記事)。ガーディアン紙は、開城工業団地で操業する韓国企業が北朝鮮労働者にボーナスとして支給したお菓子「チョコパイ」が、北朝鮮の市場で高く取引されている、と報じた。そして、次のように分析した。「チョコパイは北朝鮮において、韓国の経済的優位を象徴する存在になっている」「チョコパイは世界で最も閉鎖的な国である北朝鮮をゆっくりと変えつつある」。



ビスケットの間にマシュマロをはさんでチョコでコート



 チョコパイは、ビスケットの間にマシュマロをはさんでチョコレートでコーティングしたもの。手のひらの半分ぐらいのサイズで、丸いパンのような形をしている。1970年代からある韓国の定番おやつで、幅広い世代に愛されている。1個30円ほどのお手頃価格なので、発売から40年近くたった今でも売上上位を維持している。


 甘いものが嫌いな男性も、徴兵で軍に行くと、なぜか甘いものが欲しくなるらしい。チョコパイをもらうためだけに週末に教会に通ったというエピソードをよく聞く(徴兵で軍にいる間でも、週末に軍部隊近くの教会や聖堂、お寺などに参ることは宗教活動として認められている。宗教施設では布教活動として参拝者におやつを配っている)。


 映画「JSA」にもチョコパイが登場する。韓国の兵士が、仲良くなった北朝鮮兵士にチョコパイを渡す。むさぼるように食べる北朝鮮兵士に、もっとおいしいものがたくさんある韓国に来ないか、と話す場面がある。



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By 趙 章恩

2013年5月13




-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20130509/247767/

LTEに変えると何がいいの?LTE加入者が2000万人を超えた韓国で人気のサービス [2013年5月10日]

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 2013年5月、3Gよりも高速データ通信が可能なLTEの加入者が2000万人を超えた韓国。LTEサービスが始まったのは2011年7月だが、1年10カ月ほどでスマホユーザー(約3500万)の約6割が3GからLTEに乗り換えた。


 4月にサムスン電子がスマホの大型新製品「GALAXY S4」を発売したことで、LTE加入者はさらに増えそうである。(関連記事:日本国内登場間近!? 「GALAXY S4」の韓国ソウル発売現場をレポート








韓国で発売された「GALAXY S4」はLTE加入者獲得合戦も刺激している。


 韓国のキャリア(通信事業者)の間では、3Gより料金が高く従量制のLTE加入者を増やしてARPU(1契約当たりの平均収入)を伸ばすため、「LTE加入者専用」サービス競争を繰り広げている。2013年末までに、スマホユーザーの8割にLTEを使わせるのがキャリア3社の目標である。


韓国LTEのキラーコンテンツとは


 「LTEに変えるとこんなサービスが利用できてとっても便利で楽しい」と韓国のキャリアが宣伝しているのは、ナビゲーションと野球観戦である。


 キャリア3社の中で最もシェアの低いLGU+は、他のキャリアより一足先にLTEサービスを開始した。LTEならではのサービスとして、スマホから利用するクラウドコンピューティング方式の「3Dナビゲーション」を目玉にしている。


 モバイルデバイス向けに作られたキャリアのナビゲーションサービスは、乗り換え案内や徒歩ナビ機能もあり、いつでもどこでもすぐ使えて便利だ。しかし容量の大きいマップのダウンロードとアップデートに時間がかかりすぎるのが不便だった。


 最初にナビゲーションを起動した際に、300MB近いマップをスマホにダウンロードしなければならない。その後も、ナビゲーションを使うたびに、「アップデート中です」という表示が出て、何分か待たされることになっていた。韓国は“せっかちな人”が多いので、2~3分のアップデートも待てず、「これは使いものにならない!」という評価を下してしまう。


3Dマップを高速表示


 LGU+のLTEナビゲーションは、端末にマップをダウンロードすることなく、クラウドサーバーにあるマップを表示する。LTEの高速ネットワークを使ってすぐサーバーからコンテンツを取り寄せて表示するので、以前のように端末にダウンロードする必要がなくなった。


 周辺のビルや交差点などがはっきり分かる3Dマップなので、方向音痴で“地図が読めない女性”でも簡単に利用できるのは便利だ。LTEナビゲーションはLTE加入者しか利用できないが、利用料金は無料である。


 このLTEナビゲーションの面白いところは、グループナビ機能にある。友達に待ち合わせ場所を転送してから、その人(または車)が道に迷わっているのか、ちゃんと目的地に向かっているのか位置情報を共有できる。


 「今周りに何が見える? 一体どこにいるの?」と電話で騒がなくても、スマートに場所を教えられる。複数の車で移動する際にも、必死で前の車を追いかけなくてもよくなった。それぞれの車の位置を把握できるので、はぐれることなく一緒に移動できる。最大5人と共有できる。


バッテリー消耗という弊害も


 しかし、良いことばかりではない。ナビゲーションを利用するためには常にLTEネットワークにつながっている必要があるため、バッテリーの消耗が心配だという声がある。LTEはデータ通信使い放題ではなく従量制なので、ナビゲーションを利用するたびに大量のデータを使ってしまうのではないかという問題もある。


 LGU+はこのほか、LTE専用サービスとして、ストリーミング動画や音楽を2秒以内に再生できるようアップグレードした。今までは動画再生が始まるまで7秒以上かかっていた。さらに今までは動画再生中に電話がかかってくると自動的に動画再生が中止されたが、マルチタスク機能を強化して、動画を見ながら電話をしたり、カカオトーク(関連記事)でチャットしたりできるようにもしている。いずれも、“せっかちな韓国人”にとって大きな魅力になる。


LTEで高画質の野球生中継


 SKテレコムは、LTE加入者だけが利用できる野球生中継「Tベースボール」に力を入れている。


 テレビでは野球中継をあまり放送しなくなったのも影響があるが、好きなチームの試合は生中継で見たいという野球ファンが多く、2012年夏にも大ヒットしたアプリである。700万人ほどが利用しているTベースボールのアプリレビューを見ると、4947人のうちに4693人が5点満点と評価し、平均点数4.9という人気ぶりである。


 ワンセグ放送よりも断然きれいな1Mbpsの高画質で、スマホの4~5インチ画面でも十分迫力ある中継を視聴できる。2013年内には、2MbpsのフルHD生中継も行う予定である。


 好きなチームを設定すると、ニュースや試合中継、選手情報などすべてのメニューがそのチームの話題を優先的に表示する「パーソナル」機能、ホームランや得点チャンス・投手交代など見たい場面を設定しておくと中継中に知らせてくれる「アラーム」機能、生中継中にさっきの場面をもう一度見たいという場合に使う「タイムマシン」機能もあるので面白い。


見たいシーンだけを観戦


 タイムマシン機能は、これまた“せっかちな韓国人”利用者のニーズに応えるために始まった。ホームランや盗塁など重要な得点場面を見逃した時、今すぐさっきの場面が見たいというニーズがあるのだ。従来は、野球中継が終わってスポーツニュースの時間まで待たないとハイライト場面を見られなかった。


 もう1つタイムマシン機能のメリットは、バッテリーの消耗を最小限に抑えつつ、高画質の野球生中継を楽しめることだ。試合を最初から最後までスマホで見るとバッテリーの消耗が激しい。アラーム機能で試合の流れを把握し、タイムマシン機能で好きな場面だけを選んで観るという観戦スタイルも流行っている。「Tベースボール」からハイライト場面のVTRや、野球をテーマにしたWeb連載漫画なども見られるようにして、生中継時間以外でも楽しめるように工夫している。


 この他にもLTE専用の高画質モバイルショッピング、高画質ゲームなどが登場した。LTEならではのスマホの使い方を提案する動きは、しばらく続きそうだ。







趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130510/1089942/

スマホアクセサリー好きな韓国人は1人当たり年間3800円を支出 「GALAXY S4」発売でますます活性化する市場 [2013年5月7日]

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 韓国の通信キャリアKTが調べたところ、韓国のスマートフォン利用者はスマホのアクセサリー購入費用として、2012年の1年間で1人当たり平均4万1700ウォン(約3800円)を支出したことが分かった。2010年に2445億ウォン(約222億円)だったスマホアクセサリー市場の規模は、2013年に1兆6776億ウォン(約1530億円)まで成長する見込みである。


 携帯電話にストラップをたくさん付けるのは韓国の女性もよくやっていた。脂ぎった液晶画面をふき取るシートが付いたストラップを景品として配るのが流行った時期もあった。端末よりも大きくて重いぬいぐるみのストラップも屋台でよく見かけたものだ。「電磁波の影響を減らしてくれる」という触れ込みの「24金シール」を端末に貼るのが流行ったこともある。


iPhone発売からブーム始まる


 携帯電話の外側を飾るアクセサリーという意味では、iPhoneが発売された2009年11月以降ブームが始まったようだ。24カ月の契約期間が終わるまでスマホが故障しないように、本体を衝撃から守るためにシリコンのケースに入れる、傷が付かないよう液晶と後面に保護フィルムを貼る、といった実用アクセサリーから普及し始めた。


 韓国で最もよく売れるスマホ用のアクセサリーはケースである。サムスン電子のGALAXY Sシリーズが登場してから、スマホのカバーも100円ぐらいで買えるものから数万円のオーダーメイド革製のものまで、バラエティー豊かになった。


 韓国では、スマホの後面にはめるシリコン素材のカバーよりも、「フリップカバー」といって、スマートフォンを差し込んで使うカード財布のようなカバーの方が人気だ。









韓国におけるスマホアクセサリー一番人気の「フリップカバー」。カード財布状のものにスマホを差し込んで使う




「おサイフケータイ」っぽくするアクセサリーも人気


 日本では携帯電話・スマホ端末内のチップに決済機能を搭載した「おサイフケータイ」が普及している(関連記事:定番スマホの最新機種が登場!大画面・おサイフ対応に「GALAXY S III SC-06D」)。一方、韓国ではフリップカバーにクレジットカードを差し込んでおサイフケータイっぽく使う人の方が断然多い。


 クレジットカードがあれば後払いで地下鉄・バス・タクシーすべての交通手段を利用できて、コンビニエンスストアで少額決済もできるからだ。韓国はクレジットカード社会なので、どんなに小さな食堂や小売店でもカード決済に対応している(クレジットカードを使わせることで脱税防止の効果を狙っているとか)。


 スマホとクレジットカードを一体化した「おサイフケータイ」はまだ加盟店が少なくてほとんど利用できないが、フリップケースにカードを差し込んでおけばどこでも決済できる。未成年者はプリペイド式のカードをフリップカバーに差し込んで使う。


GALAXY S4発売を契機にフリップカバーの新製品続々


 上述のKT調査によると、主に購入するアクセサリーの平均価格は、スマホケース約2万3000ウォン(約2100円)、液晶保護フィルム約1万1000ウォン(990円)だった。スマートフォンを機種変更するまでの24カ月間に、ケースは2.4回、フィルムは2.5回購入している。男性より女性の方が、ケース買い替え回数が多かった。


 2013年4月末のGALAXY S4の発売(関連記事)を機に、斬新なフリップカバーが次々に発売されているので、買い替え需要がどっと増えそうだ。


 GALAXY S4専用のフリップカバー「Sビュー」は、フリップを閉じると液晶が暗くなってフリップの透明な穴から時計を確認できる。フリップを開けると自動的に液晶が明るくなる機能もある。以前はフリップが液晶の上にパタッとのっているで、フリップを開けて液晶をタッチして時計を確認する手間がかかっていた。

















GALAXY S4用のフリップカバー「Sビュー」。透明の窓が付いている。

 


Sビューはなんと5万9000ウォンもするが、キャリアのKTとSKテレコムは、GALAXYS4を予約購入したユーザーに無料でプレゼントした。



成長余地大きいアクセサリー市場


 GALAXY S4専用のアクセサリーとしては、この他にもGALAXY S4の液晶、後面、側面をすべて丸ごとカバーできる保護フィルムや、保護フィルムより傷に強いという液晶の上にはめる液晶保護ガラスなども登場した。スポーツの際にスマホを腕に巻けるアームバンドや、ヘルスケアのための体重計や心拍数測定機なども専用アクセサリーとして発売されている。


 日本でよく見かけるスマホのピアス(イヤーキャップ)は、韓国でもキャラクターグッズやK-POPアイドルグッズとして注目のアイテムである。ただし、スマホでTV・動画視聴、音楽を利用する人がとても多いせいか、スマホにいつもイヤホンを差しっぱなしにしている人が多く、ピアスの出番があまりない。スマホの使い方によって売れるアクセサリーも変わってくる。


 韓国のスマートフォンユーザーは既に3500万人を超えており、2013年末には4000万人と、人口の8割を超える見込みである。KTは、2013年スマホのカバーは4600万個以上売れると見込んでいる。スマートフォン市場自体が成熟しつつある一方で、スマホアクセサリー市場はまだまだ成長の余地が大きい、ホットなビジネスであるようだ。





趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130506/1089182/

韓国から東南アジア市場狙うKAKAOとLINE、激化する無料メッセアプリの市場先取り競争 [2013年4月26日]

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日本に限らず世界で人気を誇るLINE(ライン)、韓国ではLINEより人気があるKAKAO TALK(カカオトーク)、華僑を中心に全世界の中国人が利用しているWechat(ウィーチャット)、この3つの無料メッセンジャーアプリがアジア市場で激しく競争している。

 韓国で絶大の人気を誇るKAKAO TALKは、LINEより早くサービスを開始し、2011年3月の東日本大震災の際に、日本に住む韓国人の安否確認ツールとして大活躍した。韓国では「後で電話するね」ではなく、「後でカトクするね」と言うようになり(韓国ではKAKAO TALKを略してカトクと呼ぶ)、メールよりKAKAO TALKを利用する機会が増えた。


 ブログやFacebookに飽きた人達は、KAKAO TALKでつながっている友達にだけ写真を公開するKAKAO Storyを使うようになった。ところが、韓国での成功を踏み台にして日本やアジア市場に進出しようとしたKAKAO TALKの戦略は思い通りにいかなかった。


 それは、強敵LINEが登場したからだ。








日本では圧倒的人気のLINE(ライン)だが、“本国”である韓国ではKAKAO TALKにリードされている


LINEの貢献で韓国NHN株価は高値更新


 韓国系企業でありながら本国より先に日本でサービスを開始したLINEは、東南アジアや中南米、スペインでもユーザーが増え続けている(関連記事:1年半で利用者1億人突破「LINE」の快進撃が続く)。LINEは既にタイ、インドネシア、台湾など東南アジアだけで5000万人近いユーザーを確保している。


 Nokiaは低価格スマートフォン「Asha」にLineをプリインストールすることにした(関連記事:LINEがMWCデビュー、ノキアの新興国向けスマホで展開)。絶好調のLINEのおかげで、親会社である韓国NHNは株価が最高値を更新し続けている。


東南アジアで激しい先取り競争展開


 KAKAO TALKはLINEが市場を握っている日本を避けて、世界で4番目に人口が多く(約2億5000万人)、スマートフォンの普及が始まったばかりのインドネシアを狙っている。3月からアジアで人気の男性アイドルグループ「BigBang」を東南アジア向けイメージキャラクターに起用した。KAKAO TALKのK-POPマーケティングは効果があり、インドネシアではユーザーが毎日数倍ずつという勢いで増え始めた。


 中国系のWechatが市場を先占したベトナムでもK-POPアイドルのCMが話題になり、KAKAO TALKが2位に追いついた。中国系Wechatは全世界の華僑が利用していることから、ユーザー数が3億人を超えた。この数は、KAKAO TALKとLINEのユーザーを足した合計よりも多い。KAKAO TALKとLINEがアジア市場で成功するためには、Wechatの壁を越えなければならないわけだ。Facebookも無料メッセンジャーアプリを始めたので、ライバルはさらに増えた。


市場先取りが鍵握るメッセアプリ市場


 メッセンジャーアプリは、他のどのアプリよりも市場先占効果が大きい。ユーザーの多い方にまたユーザーが集まるからだ。日本ではLINE、韓国ではKAKAO TALKが一度築き上げた市場シェアはなかなか変動しない。日本に進出したKAKAO TALKは苦戦していて、LINEも韓国ではKAKAO TALKを越えられなかった。


 そこから考えると、今まさにスマートフォンの普及が急速に進んでいる東南アジア地域では、先に進出した方が今後もずっと市場をリードできる可能性が高い。


 KAKAO TALKとLINEが海外で成功すると、ゲームやスタンプなどのモバイルコンテンツ提供者もKAKAO TALKとLINEを経由して、容易に海外進出できる。そのため、韓国市場だけでは市場が小さすぎて収益を上げにくいモバイルゲームやキャラクター会社も、KAKAO TALKとLINEの海外進出を応援している。




KAKAOとLINEマネタイズは道半ば


 しかし海外進出だけが課題ではない。KAKAO TALKとLINEの本当の課題は利益を上げることである。


 KAKAO TALKは「Anipang」などKAKAO TALKを基盤とするモバイルゲームが好調で、2012年にやっと赤字から逃れられた。今後は米アップルのApp Storeのような「KAKAO Page」というコンテンツ流通プラットフォームを作り、スマートフォン向け音楽、動画、ゲームなどあらゆるコンテンツを流通させようとしている。










韓国で人気があるKAKAO TALKはスマホ向けコンテンツ流通プラットフォーム「KAKAO Page」を始めた。購入したコンテンツは友達1人とシェアできるので、2人で一緒に楽しめるのが特徴


 2013年4月に始まったばかりのKAKAO Pageには、自分が購入したコンテンツを友達1人とシェアできる機能や、友達2人に面白そうなコンテンツを推薦すると自分と友達2人合わせて3人が無料でコンテンツを利用できる機能があり、友達と一緒に楽しめる「コンテンツ販売所」であるのが特徴だ。


 一方のLINEはスタンプを使った企業のプロモーションが好調で、多くの国で企業と提携し、プロモーションを代行するサービスに力を入れている。


 KAKAO TALKとLINE、そこにWechatを加えたアジア3強の動きから、目が離せない。






趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130426/1088602/


打倒サムスンに燃えるパンテック、特徴的なデザインの5型スマホ「VEGA IRON」で勝負 [2013年4月19日]

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2013年4月27日からいよいよ韓国をはじめ世界各国でサムスン電子(Samsung)の5インチAndroidスマートフォン「GALAXY S4」が発売される(
関連記事、4月19日時点では日本国内での発売に関する公式発表はない)。韓国では4月19日から予約受付が始まる。韓国キャリア3社は、ネット予約で購入するとS4専用のカバーやモバイルIPTV無料利用クーポン、音楽ストリーミングサイト無料利用クーポンなどの特典を付けるイベントも行っている。

 2013年上半期の話題はGALAXY S4に決まり、と思っていたところ、パンテック(Pantech)からすごいスマホが登場した。4月18日、パンテックは世界初「Endless Metal」を搭載した独特なデザインの5インチAndroidスマホ「VEGA IRON」を公開した。韓国のマスコミとブロガーは、「デザインはGALAXY S4よりVEGA IRONが上」「iPhoneよりも美しい」などと絶賛している。


縁がたった2.4mmの「Endless Metal」










パンテックがGALAXY S4に対抗して公開した5インチAndroidスマホ「VEGA IRON」。メタルを使ったデザインが特徴


 VEGA IRONはディスプレイの縁(べゼル)がたったの2.4mm。正面が端から端までディプレイだと、ちょっとした衝撃でも画面にひびが入ったり割れたりしないだろうかと心配になるが、極薄のEndless Metal、つまり途切れることなく1つにつながったメタルがスマホの側面を包み込むように縁どられているため、とても丈夫だという。


 5インチなのに、無駄な面積がないせいか片手で握りやすいのも特徴だ。ソニーのHigh Bright In-cell(タッチセンサーと一体化した新型の液晶パネル)を搭載したことで、今までより薄く、一般的な液晶ディプレイに比べて視認性、視野角も良くなった。


 米アップルのiPhoneは側面をメタルにしたことで電話の受信率が落ちたと問題になったことがある。パンテックは20年間積み上げた独自の技術で側面のメタルにアンテナの役割をさせて電波の感度を上げた。この、側面のメタルをアンテナとして使う技術も世界初だという。


スペック面でもGALAXY S4に劣らず


 端末のベセルはVEGA IRONの方が薄いのだが、厚みはGALAXY S4の方が0.9mmほど薄い。プロセッサーとOSは、GALAXY S4はExynos 5 OctaとAndroid 4.2、VEGA IRONはSnapdragon 600とAndroid4.1を搭載した。GALAXY S4とVEGA IRONは、LTEの他にGiga Wi-Fiといって、最大1.3Gbpsの高速Wi-Fi(現在のWi-Fiは最大300Mbps前後)も利用できるようにした。Giga Wifiは韓国のキャリアKTとSKテレコムが2013年下半期から商用化する予定である。


 VEGA IRONとGALAXY S4は共に、スマホのカメラがユーザーの目線を認識して、何も操作しなくても自動ロックしない目線認識機能を持っている。電子書籍を読んでいる途中で画面が暗くなったり、自動ロックされたりするのを抑止するわけだ。目線を追いかけるので、自動的に画面をスクロールする、スマホから離れると動画を一時停止する、といった操作もできる。


 VEGA IRONは音声認識エンジンを端末内部に内蔵しているので、ネットワークにつながっていなくても音声認識でスマホの各種機能を動かせる。今まではネットワーク経由で音声認識サーバーにつながらないと使えなかった。


斬新な機能で経営難から復活


 パンテックは1月には韓国初の6インチスマホ「VEGA No.6」を発売したばかり。それなのに、GALAXY S4の対抗馬として真っ向から勝負するため、GALAXY S4予約開始前日にVEGA IRONを公開した。発売日はGALAXY S4と同じく4月27日前後を予定している。端末価格もGALAXY S4より安くする。


 パンテックといえば、韓国で初めて携帯電話に動作認識、音声認識機能を搭載したメーカーである。韓国初のスライド式携帯電話、世界初の指紋認識携帯電話もパンテックが開発した。


 一般に中小メーカーは端末価格の安さで勝負しがちだが、パンテックは斬新な機能とデザインで大手のサムスン電子やLG電子と勝負した。一時期は経営難でこのまま廃業するのかと思われたが、スマホVEGAシリーズのヒットで蘇った。パンテック側は、「VEGA IRONはパンテックの社員全員が2年の歳月をかけて作った力作」であると強調し、GALAXY S4打倒に自信を見せている。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130418/1087563/

Facebookが火をつけた「スマホランチャー」競争、韓国ポータル各社もモバイル検索シェアの維持狙う [2013年4月12日]

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2012年から、Facebookが独自のスマートフォンを発売するという噂があり、韓国でもいったいどんなスマホになるのだろうかと話題になっていた。ところが、2013年4月になって公開されたFacebookフォンの正体は、端末ではなく
ランチャー(Launcher)の「Facebook Home」だった。韓国のスマホ利用者の間でも「これは意外」という声が上がっている。

 ランチャーはスマホのインテリアを変えるというか、自分の趣向に合わせて使いやすく初期画面やアイコンなどを変えられるものである。iPhoneはAppleが決めた画面構成で、利用者は待ち受け画面の写真を変える、アプリを並び替える、ぐらいしか画面をいじれない。Android OSのスマホは端末メーカーごとに特徴のある初期画面(Home)で使いやすさを競っている。利用者がHomeを変えられるランチャーを自由にインストールして使えるようにしているわけだ。


韓国でスマホを買うとまずランチャーを入れる


 韓国のスマホ利用者の間では、文字(フォント)やアイコンをかわいくするためのランチャーが人気だ。10~20代はスマホ買って真っ先にするのが、カカオトークとランチャーをインストールすることである。30代以上になると、「ランチャーを使うとスマホの動きが重く感じる」「ランチャーなんて企業の宣伝用に自分のスマホが使われるだけ」という意見が多かった。


 世界で10億人以上の利用者がいるFacebookのランチャーには、無料通話機能も付いている。Facebookのアプリを立ち上げるのではなく、スマホで何をするにもFacebookを経由する形になっている。Facebookがスマホのプラットフォームになるわけだ。Facebookは、端末を売るよりも、アプリや広告を流通するスマホのプラットフォームの世界で競争をしたがっているようだ.


LINE親会社、カカオトークなども続々参入


 Facebookに対抗して、韓国のポータルサイトや無料通話アプリのカカオトークなども次々にランチャー開発を予告している。Android OSのスマホであるサムスン電子のGALAXYシリーズを使う利用者を対象に、GoogleやSkypeではなく、自社の検索サービスや通話アプリ、SNSを基本サービスとして使わせるためである。


 日本に進出して情報キュレーションサービス「NAVERまとめ」や無料通話アプリ「LINE」など有名なサービスを展開している韓国ポータルサイト最大手NHNは、140種類のテーマから選べる「ドドルランチャー」を発表した。シェア2位のポータルサイトDaumも、ベンチャー企業に投資して「Buzzランチャー」を発表した。








韓国のポータルサイトDaumが投資して開発している「Buzzランチャー」の画面


 日本をはじめ東南アジアにも進出した無料通話アプリのカカオトークも、ランチャー「Kakao Home」を開発している。各社は、スマホの初期画面に自社の検索やニュース、マップ、天気、スケジュール管理、SNS、ゲームなど各種サービスを入れて、Googleより先に利用させることで広告収入を得られる。自社が開発した新規サービスへと、顧客を自然に誘導できる。Facebookに無料通話機能が付いたことで、ランチャーは無料通話+検索+SNSの競争になりそうだ。


モバイルで伸び悩む韓国系ポータル各社が勝負に


 GoogleとYahoo! JAPANが有力である日本とは異なり、韓国では、パソコンからの検索は利用者の8割近くがNHNのNAVERを使っている。しかしスマホで検索する場合は、初期画面に設定してあるGoogleをそのまま使う人が多い。NAVERやDaumのアプリもあるが、アプリを立ち上げて検索するのは面倒だからだ。


 パソコンよりモバイルインターネットを使う人が増えている中で、検索市場では韓国系ポータルサイトのシェアが伸び悩んでいた。ポータルサイトのランチャー競争は、モバイル向け検索やSNSなど市場シェアを拡大できるかどうかの競争でもある。


 韓国では、ポータルサイトがGoogleに負けず持続的に成長できるかどうかはランチャーにかかっていると私は見ている。1990年代後半の、「ブラウザーの初期画面をどのポータルサイトにするのか」という競争に似ている。このランチャー争いは当分続きそうだ。


趙 章恩=(ITジャーナリスト)

日経パソコン
 

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130412/1086742/

南北サイバー戦争始まる?国際的ハッカー集団が北朝鮮サイトを攻撃 [2013年4月5日]

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2013年3月20日に
韓国で発生した大規模サイバー攻撃事件は北朝鮮の関与が疑われている。北朝鮮の韓国に対する威嚇がどんどんひどくなっている中で、4月3日に、国際的ハッカー集団「Anonymous(アノニマス)」が、北朝鮮が韓国向けに運営する体制宣伝用TwitterとFlickrのアカウントを乗っ取ったと発表する出来事があった。

 同じく宣伝用サイト「ウリミンゾクキリ(わが民族同士)」のサイトをハッキングし、会員として登録している1万5000件近いアカウント情報を手に入れたとして、4月4日に9001人分のデータ(ID、性別、氏名、メールアドレスなど)をFacebookページ「Anonymous South Korea」で公開したりもした。


アノニマスの「Free Korea作戦」


 「Anonymous」は、今回の北朝鮮サイトハッキングを「Free Korea作戦」と名付け、北朝鮮に対して4つのことを要求している。


 1.北朝鮮のキムジョンウン(金正恩)は辞任する、2.核兵器の製造を諦める、3.自由民主主義体制に変える、4.北朝鮮の住民が検閲なく自由にインターネットにアクセスできるようにする、の4つだ。








画面 Twitterアカウント「Anonymous_Korea」で立場を表明


 これらの要求に従わないと北朝鮮を相手にサイバー戦争を起こす、と“宣戦布告”している。「Anonymous」は、北朝鮮のサイバー攻撃に関して、自分達は世界平和を望む集団であり、特に米国や韓国政府を支持するわけでもなく、中立的立場であるとTwitterアカウント「Anonymous_Korea」で表明している。


ソニーにも“宣戦布告”した過去


 「Anonymous」は、2011年にソニーのプレイステーションネットワーク(PSN)にDDoS攻撃をしかけ接続不能にしたことを明かした集団である(関連記事:「ソニーの情報流出」、その真相を探る)。米国の某ハッカーがプレイステーション3(PS3)を改造して自作ソフトを動かせるようにするソフトを自分のブログで公開したところ、ソニーは著作権保護のため、そのハッカーだけでなく、ブログにアクセスした人の情報までも取得しようとした。これに「Anonymous」が反発し、ネットの自由を守るという名目で“宣戦布告”し、PSNを攻撃したのがこの事件だった。


 その他にも、著作権関連の取り締まりや表現の自由といった問題に対する意思表明として米法務省ハッキングしてサイトのデータを削除したり、サイトにアクセスできないようにしたりといった事件にも「Anonymous」が関与している可能性がある。児童ポルノサイトをハッキングしてサイトを閉鎖し、ユーザー1600人あまりの名簿をネットに公開したこともある。


韓国ネットユーザーに「スパイ名簿」作成の動きも


 韓国のネットユーザーの間では「Anonymous」が北朝鮮サイトを攻撃したことより、むしろ「Anonymous」が公開した北朝鮮サイトの会員情報に注目する向きもある。会員の中に韓国に住んでいる人がいるのではないか、捜査するべきではないか、という世論が湧き上っているのだ。


 北朝鮮が体制宣伝用に運営する「ウリミンゾクキリ」のサイトは韓国からアクセスできないように遮断されているため、そもそも韓国から会員登録はできないはずだ。だが、公開された名簿の中には韓国ポータルサイトのメールアドレスが多数含まれていた。韓国籍を持つ人がアクセスを禁じられている北朝鮮のサイトの会員になって書き込みをする、北朝鮮サイトの内容を他のサイトに“コピペ”する、といった行為は「国家保安法」違反である。


 韓国内の一部のネットカフェでは、公開された会員名簿の氏名とメールアドレスをグーグルで検索し、出身大学や職業などの個人情報を追加して「スパイ名簿」を作るという騒ぎにもなっている。しかし個人情報を盗用して他の人が会員登録した可能性もある。「ハッカー集団が公開した名簿によって無実の被害者が生まれるのではないか」と懸念する声も上がっている。



趙 章恩=(ITジャーナリスト)

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20130405/1085823/

[日本と韓国の交差点] 出産後の再就職を助ける政策に女性が反対する理由は何?

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安倍晋三首相が日本の経済3団体幹部に、女性を登用するよう要請したというニュースが韓国でも話題になった。企業も首相の要請に応えようとしているらしく、うらやましくなる。

 韓国の勤労基準法によると、女性は出産前後90日間の出産休暇を申請できる。しかし、現実には、出産を機に会社を辞めるしかない女性が多い。だいぶ良くなったとはいうが、まだまだ、出産休暇や育児休暇を正々堂々と要求できる雰囲気ではないからだ。子育てが一段落し職場復帰を望んでも、新卒ですら就職難の今、オンマ(ママ)が再就職するのは難しい。そこで登場したのが「オンマ加算点」制度である。

 「オンマ加算点」とは、出産・育児のために会社を辞めた女性が再就職する際に、筆記試験や面接といった入社試験の結果に、合計点の2%を上乗せし、優遇する制度である。これは国会環境労働委員会が審議している「男女雇用平等と仕事・家庭両立支援法」の中核をなすもの。審議を通過すれば、6月あたりから立法に向けての準備が始まる。

韓国の賃金男女格差は先進国で最大

 韓国は女性の経済活動参加率、女性管理職の割合がOECD加盟国の平均を大きく下回っている。一方、男女の賃金格差は同平均より大きい。2012年12月にOECDが発表した「Closing the Gender Gap: Act Now」の「雇用における両性平等」の項目を見ると、韓国における女性の経済活動参加率は55%(男性77%)で、OECDの平均62%を下回っている。経済活動参加率の男女差が20%ポイント以上開いている国はOECD加盟国の中で韓国だけだった。

 男女の賃金格差(フルタイム雇用者)は39%で、OECD加盟国の中で最大だった(OECD平均は15%、日本は29%)。男性の賃金が月10万円だとすると、女性は同じ時間働いても6.1万円しかもらえないということを意味している。OECDは、「高齢化が進む中、韓国の未来は女性の経済活動参加率を上げ、女性の潜在力を生かすことにかかっている。男性はより家事・育児に参加するべき。企業はその文化を家庭親和的なものに変える必要がある」とアドバイスした。

 2012年度の教育基本統計によると、韓国の大学進学率は72.5%。これはOECD加盟国の中で1位であり、大学進学率においては男女差があまりない。試験の点数だけで合否が決まる国家公務員・教師の場合、女性の方が断然、合格者が多い。しかし管理職として昇進するのは男性だ。

 韓国は保育園不足で子供を預けられるところがない。両親の手助けがないと育児が成り立たないのが現状である。頼れる家族がいない場合、女性が職場を辞めて子育てをせざるを得ない。男性が子育てをする場合もあるが稀である。

 育児のために勤務時間をフレキシブルにしたり、社内に託児所を設けたりする企業は、化粧品メーカーやアパレル、研究所など、女性社員が多い一部の企業に限られている。2012年に「家庭親和的企業」として大統領賞を受賞した石油化学会社のSKイノベーションは、女性役員が多いことで有名である。男女差なく平等に昇進できるようにしたことで、100倍だった入社競争率が1000倍に跳ね上がったという。女性志願者が殺到したからである。

朴槿恵大統領は働く女性への支援を公約

 韓国は2013年、朴槿恵氏が初の女性大統領が就任した。これを契機に、政界でも産業界でも女性が活躍できる場が増えるだろうと言われている。朴大統領は、「女性人材10万人養成」「公共機関女性管理職目標制度」を公約した。政府機関・公共機関の女性役員の割合を2015年に15%、2017年には30%にするというものだ。288ある政府機関・公共機関の女性管理職の割合は2011年時点で8.8%だった。上場企業の女性管理職の割合は5.3%である。女性役員となると、この割合はさらに下がる。上場企業では1.5%しかなかった。省庁の副大臣、その傘下の振興院/研究所の院長・副院長となると、統計を取るのが難しいほど全滅状態である。

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[日本と韓国の交差点] 韓国ビールは北朝鮮よりまずい?

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韓国を訪れるビジネスパーソンから「韓国の料理はおいしいけど、ビールは味が薄くておいしくない」という話をよく聞く。韓国人も同じことを感じている。韓国では2012年、日本のビールが前年実績の4倍以上(リットル換算)売れ、大人気である。

 日本のビールは韓国の大手酒会社であるOBビール、HiteJinro、ロッテアサヒ酒類が輸入している。ロッテアサヒ酒類が輸入販売している「アサヒスーパードライ」が最も人気が高く、2012年に152万箱(1箱=500ml×20本)売れた。OBビールが輸入販売している「ザ・プレミアム・モルツ」は2012年に15万4000箱売れた。2011年は3万7000箱だったので4倍以上増加している。HiteJinroは「一番搾り」を2012年に20万9000箱販売した。2011年(4万4000箱)に比べて4倍以上売れた。一方で韓国産ビールの国内出荷量は2008年以降1億7765万箱前後で停滞している。


 アサヒ、キリン、サントリー、サッポロのビールが韓国で大ヒットしているのは、やはり「韓国のビールよりおいしい」からである。価格は韓国産ビールの2~3倍するが、それでもコンビニから小さいスーパーまで、日本ブランドのビールを売っている。ちなみに、これらのビールは中国やカナダで製造されたものだ。日本で製造された日本ブランドビールはより高価で、ホテルや高級レストランが販売している。


 韓国関税庁のデータによると、ビールの輸入は、2009年には4万1492トン(3715万6000ドル)だったものが、2012年には7万4750トン(7359万1000ドル)に増えた。このうち日本ブランドビールの輸入が最も多く、市場シェアは前年比4.5ポイント増の25.9%だった。2位はオランダで18.3%だった。大型スーパーでは、輸入ビールの売上高が同56%増と伸びる一方、韓国産ビールは同3.2%減少した。


中小メーカーを活性化してビールをおいしく!


 民主統合党の議員らが4月18日、韓国のビールをおいしくするため、酒税法を改定しようと動き始めた。麦芽使用量が70%(米、麦、とうもろこし、きび、じゃがいも、澱粉、糖分はまたキャラメルの重量と麦芽の重量の合計が、全重量の70%以上であればビール)に満たないものは、ビールとして認めない、とする改定案を国会に提出した。現行の酒税法施行令第3条は10%以上であればビールと認めている。麦芽の量を増やせば味がおいしくなり、風味も豊かになるという考えだ。


 この改定案は次の条項を含んでいる。1)全国の中小酒類製造業者が多様な味のビールを製造できるよう、製造設備に関する規制を緩和する。2)中小酒類製造業者が生産したビールに限定して税率を現行72%から30%に下げる。中小企業がビール市場に新規参入できるようになれば、大手2社――OBビールとHiteJinro――による市場寡占が崩れ、品質競争が始まると見ている。



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[日本と韓国の交差点] ネットを使った選挙運動の光と影

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日本でも、インターネットを利用した選挙運動を解禁する公職選挙法改正案が4月中に成立する見通しだ。韓国では、90年代後半にブロードバンドが普及し始めた頃から、ネット選挙運動に取り組むようになった。候補者らはホームページを作って公約を周知することができるので、従来の選挙に比べて選挙運動にかかる費用を劇的に安くできる可能性がある。

 韓国の中央選挙管理委員会は2012年1月に「公職選挙及び選挙不正防止法」を改定して、ネット選挙運動を全面解禁した。


 候補者は、候補として登録する以前から投票の前日までネット上で選挙運動ができる。候補や、正式に登録した選挙運動員でなくても、誰でも自由に選挙や候補者に関する自分の意見をネットやTwitterに書き込むことができる。自分が支持する候補に関する書き込みをメールで送信することも可能だ。投票日にも、「○○に投票しよう」など特定候補を支持する内容でない限り、Twitterやネットに書き込んでかまわない。


 改定まで、従来の選挙運動もネット選挙運動も、候補者として登録した翌日から投票の前日までしかできない規定があった。



始まりは2002年の大統領選挙



 韓国でネット選挙運動の影響力が初めて認知されたのは、2002年12月の大統領選挙だった。この年に当選した盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領(当時)を、欧米のマスコミは「世界初のネット大統領」と呼んだ。


 盧武鉉氏を支持する勢力は「盧武鉉を愛する人達」というホームページを作り、ネット上で公約を宣伝。なぜ同氏を支持するのかについて書き込んだ。お金をかけて昔ながらのお金のかかる選挙運動――選挙運動員を動員したり、宣伝カーに乗って全国を駆け回ったりする――をしなくても、候補者の考えを広めることができるネット選挙運動が脚光を浴びた。


 2002年の大統領選挙では、紙媒体を発行しないインターネット新聞も活躍した。インターネット新聞の記事の下に、読者はコメントを書き込むことができる。記者が、読者の反論に答えたりする。既存のマスコミの記事に影響されることのないネット新聞が、20~40代の有権者の情報源になった。こうしてネットから情報を得た20~40代の市民は、自分の意見も聞いてもらいたいと自発的に選挙運動に加わるようになった。「人を動員する」選挙運動から、「人が自発的に参加する」選挙運動へと切り替わったのだ。



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