「おまけ」に弱い韓国ユーザー(下) [2007年10月24日]

韓国のオンラインショッピングや量販店、ディスカウントショップのパソコン売場に行くと、ノートパソコン単体で販売するのはあまり目にしない。日本ではほとんどがオプションになっている、専用バッグ、マウス、キーボード、液晶保護シールなどをセットにした「パッケージ」として販売されている。

 ウォン高の影響から東芝や富士通のノートパソコンが三星電子やLG電子よりも安く買えるようになってからは、韓国メーカーはますますパッケージ販売に精を出している。パッケージにしてしまえばパソコンの値段に少しプラスするだけで周辺機器が付いてくるのでお得感があるからだ。2007年に入ってからは、ノートパソコンをデスクトップのモニターのように使える設置台と無線キーボード、マウスをパッケージにしたり、デジカメやUSBメモリー、ナビゲーション、複合機までもパッケージにしたりして売り出している。


 韓国ではパソコンに限らず、何にでも「おまけ」が付かないと売れない。


 雑誌の付録が豪華なのは周知の通り。女性ファッション誌には毎月、化粧品やポーチ、醤油、お酢、タオル、ネックレスなど「こんな物までくれるのか!」というほど付録が付いてくる。本屋さんの入口にはその月の雑誌付録が雑誌よりも前面にディスプレイされ、「今月は何をもらおうかな~」と付録を見て雑誌を選ぶ。


 スーパーに行けば加工食品や調味料、洗剤、シャンプーといった生活用品にも新製品のサンプルや自社製品のミニチュアがおまけとしてガムテープでぐるぐる巻きにしてある。今日なんて、牛乳やヨーグルトに本体とは違う味のミニチュア版が、オレンジジュースにはウェットティッシュが、インスタントコーヒーにはガラスの小皿4枚が付いていた。洗濯機にはミキサーが、テレビには食器洗い機がおまけとして付いてくる。「どうせならおまけが付いている方を選んでしまおう」というのは、子供や主婦に限った話しではないようだ。


 どこよりもパッケージ販売に積極的なのは三星電子だ。2004年から、カルティエに似たゴージャスなデザインが売りの革製品ファッションブランド「ルイカトズ」と提携している。ルイカトズは、三星電子のノートパソコンを購入した人だけが買える専用バッグを発売している。豊富なカラーとデザインを備えたノートパソコンやUMPCの専用バッグをパッケージで販売して女性ユーザーから大好評を得ている。バッグとノートパソコンが登場するファッションショーまで開催したほどだ。


 ちなみにノートパソコンの外観の色は、以前はシンプルなブラックやシルバーが主流だったが、最近は光沢のあるワインカラーやラメ入り、イラスト入りなどが登場して大学生や女性に大人気。メガネをかけてキャリアウーマンっぽく自分を演出するように、おしゃれの一部としておしゃれな外観のノートパソコンを、カラフルな専用バッグに入れて持ち歩く傾向も見られる。




 ノートパソコンの販売台数が増えてから、ノートパソコンを持ち歩かずにデスクトップの代わりに使っているユーザー用に、バッグの代わりに周辺機器が付いてくるパッケージが増えてきた。何よりも人気なのはノートパソコンを縦に立ててモニターのように使うための、設置台の機能を兼ねる発熱抑止用クーリングスタンドと、無線ルーターがセットになったパッケージだ。


 東芝は90万ウォン前後(約12万円)のノートパソコンを購入すると無線ルーターと、ワイヤレスキーボード、ワイヤレスマウスをパッケージで提供し、大ヒットを記録した。富士通は同じ値段でマイクロソフトのワイヤレスキーボードとワイヤレスマウスと設置台を、LG電子は設置台型のドッキングステーションを提供して売り上げを伸ばした。


 オンラインショッピングモールの担当者の話によると、「パッケージの構成によって、同じ値段で同じモデルのノートでも売り上げに20%ほども差が生じる」と口をそろえる。新しいデザインのノートパソコンを次々と発売している三星電子は「パソコンの性能はどこも似たり寄ったりなので、これからはどんなアクセサリーをパッケージにするか、イラストやカラーといったデザインをどのようにするか、といったことが売り上げを左右するのではないか」と予想した。




 パッケージの他にも、パソコンメーカーとその他企業がタッグを組んだ共同の販促も増えている。例えば2007年10月からは三星電子と移動通信キャリアのSKT、インテルの3社による共同マーケティングが始まった。SKTの下り7.2MbpsのHSDPAサービスに三星電子の量販店で加入すると、モバイルWiMaxの一部である高速無線通信技術「Wibro」とHSDPA(High Speed Downlink Packet Access)の両方が使える約2万円相当のUSB型モデムを無料でもらえる。また、WibroとHSDPAを使えるモデムが内蔵された三星電子のノートパソコンを三星電子の量販店で購入すると、8万ウォンが現金でキャッシュバッグされるというものだ。


 ネットのノートパソコン同好会やショッピングモールのコミュニティには、パッケージ販売に含まれるアクセサリーの値段を調べて、どのブランドがどれぐらいお得なのかを分析して価格比較表を掲載するユーザーもいる。ノートパソコンのように高い買い物は細かく比べて買うのはもっともなこと。だが、思い切って一目で気に入ったものを買うのが意外といい買い物だったりもする。韓国製のノートパソコンは日本でも問題なく使えるので、韓国のお土産にブランドバッグ付き韓国語OSのノートパソコン、なんていうのも悪くないかもよ。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2007年10月24日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20071017/284773/