iPhoneによって触発された韓国のスマートフォン競争により、直近2カ月間でスマートフォンが46万台近く売れた。
これは携帯電話加入者の1%が動いたことになる。KTのiPhone契約数は1カ月ちょっとで24万件、サムスン電子のT-OMNIA2は2カ月ちょっとで22万件を超えたという。韓国で20万台以上売れたスマートフォンはiPhoneとT-OMNIA2が初めてある。既に移動通信キャリアには30万台を納品しているので、1月中に30万台販売突破可能性も高い。
スマートフォンはモバイルインターネットを頻繁に使う会社員や若い学生向けと思われていたが、韓国ではファッションの一部として裕福層の主婦の間でも人気が高いことから、予想を上回る売れ行きとなっている。もちろん奨励金競争により端末価格が安くなったことも影響している。
サムスン電子はiPhoneがここまで売れるとは思わなかったという反応を見せている。韓国のマスコミは、米国での展示会「CES 2010」の記者懇談会での発言を引用し、「サムスン電子はiPhoneが韓国で爆発的な人気を得ていることを衝撃的なこととして受け止めている」「iPhoneはサムスン電子の競争力をテストした製品」といった記事を大々的に報道している。
韓国の携帯電話端末市場の約50%、世界市場でもシェア2位のサムスン電子であるが、世界市場のスマートフォンシェアはノキアやアップルのiPhone、リサーチ・イン・モーションのBlackBerry、HTCが上位を占めている。サムスン電子やLG電子は2009年秋ごろからスマートフォンのラインアップ強化をしきりに発表している。サムスンはアプリ配信サイト「Samsung Apps(APP Store)」に続いて「BADA」というモバイルOSも発表している。
韓国勢は携帯電話やスマートフォンだけの競争では勝ち目がないと見たのか、家電でも世界市場の上位にある点をいかしてスマートフォン、パソコン、MID(モバイルインターネットデバイス、スマートフォンとネットブックの間にある携帯型端末)、テレビ、プリンター、DVDプレーヤー、デジタルカメラなどで共通して使えるアプリ配信サイトに力を入れている。一度コンテンツを購入すれば、スマートフォンからもテレビからでも利用可能になる。スマートフォンにインストールした天気情報、交通案内、ゲームなどがテレビと連動してリモコンで使えるようになる。コンテンツを確保するため、オンライン映画レンタル事業者やオンラインゲーム、動画投稿サイトとの提携も強化している。
CES 2010では3Dやブロードバンド対応のテレビ、スマートフォンなどが続々と展示されたが、端末機能そのものは大きな差がなくなりつつある。いつものことだが、デザイン、ユーザーインターフェース、アプリケーションといったユーザー向け利便性の勝負になるしかない。
CES 2010の基調演説でも、モバイルインターネットが各種端末に搭載され、端末間の連結性や機能の融合がより一層強まることがテーマであった。このような現象は人々の生活に影響を与え、エンターテインメント分野のビジネスチャンスを広げると期待されている。
韓国では民放のSBSが、自社番組の宣伝部隊として、ドラマごとに動画投稿をしてくれるユーザーを募集している。ユーザーがドラマの映像を編集し、動画投稿サイトやBlogに掲載してドラマの話題性を高めることが、視聴率を高め本編VODの有料販売も増加させたことから、公式に宣伝部隊を募集するようになった。
このように作られた動画がパソコンだけでなくスマートフォンや家電からも利用されることで、より高い宣伝効果を得られると見込んでいる。他の放送局もユーザーが自由に編集していい動画を特別に公開するようになった。
どんなデバイスからも利用できるアプリ配信サイトの登場は、コンテンツホルダーの著作権管理の変化によって相乗効果を発揮できるものと見られる。2010年もスマートフォン関連のニュースで盛り上がりそうだ。
(趙 章恩=ITジャーナリスト)
日経パソコン
2010年1月14日
-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100113/1022182/