10年で1万倍に成長・韓国オンラインショッピングモールを支える消費 [2007年2月13日]

韓国も日本と同じくお正月にはお歳暮を、秋夕(チュソク、お盆)にはお中元を贈り合う習慣がある。日本のように徹底してあちこちに送るわけではなく、取引先、上司、両親や親類に感謝の気持ちを込めてプレゼントするという意味を持つので、本当に色んなものが売れている。

デパートでは試着だけ、買うのはオンライン


 家族への贈り物は衣類や肌着が多い。社会人になって初めての給料日には家族に肌着や下着をプレゼント、お正月とお盆には「ソルビム」、「チュソクビム」といって新しく洋服を新調してもらう慣習がある。


 昔は母の手作り韓服がプレゼントの定番だったのだが、時代の変化と共に、年に2回、親に思い切って高いブランド服をおねだりできるチャンスと勘違いされるようになってきてしまった。この時期はデパートのセールと冬休みが重なり、普段は滅多に親とショッピングなんてしない子供達がお母さんと仲良く腕を組んでデパートやショッピングセンターに出かける。


 お正月の後はお年玉を使う小中高校生を目当てに新製品が登場するので1年のうちに最も消費が活発になる時期でもある。だがここ数年、子供達も賢くなったというかデパートでは試着するだけ、購入するのはオンラインショッピングモールというパターンが増えてきた。同じブランドの同じ洋服でもデパート直営や大手ショッピングモールで購入すれば割引もしてくれるし、ポイントも貯まる。


 統計庁の発表によると、2006年韓国のオンラインショッピングモール全体で最も売れたのは衣類・ファッション商品だ。2006年市場規模13兆 4600億ウォンの17.6%を占めた。続いて旅行・予約サービス、家電・通信機器、生活用品・自動車用品の順でネットで売れている。


「地場もの」もネットで直販


 お歳暮に人気なのはやはり韓国らしく「韓牛カルビセット」や「グルビ(イシモチ、韓国では高級魚)セット」、「アワビ」、「高麗人参」、「韓菓(伝統菓子で穀物を蜂蜜で練って揚げたりする、色んな種類があり高価)、お手頃な「オリーブオイルセット」、「タオルセット」、「靴下セット」、「石鹸セット」も人気が高い。狂牛病や重金属、農薬問題から日本以上に韓国も自国の農水産物の方が好まれていて値段も2倍ほど高い。それでもお歳暮にはやっぱり信頼できる韓国産のものを、ということで自治体が運営するオンラインショッピングを利用するユーザーが増えてきた。


 2002年自治体のオンラインショッピングモール「インターネット江原マート」をオープンした江原道(ガンウォンド、道は日本でいう県にあたる)はドラマ「冬ソナ」を始め数々の名作のロケ地があるとして日本でも有名だが、韓国ではきれいな海と険しい山間地域なので水産物や高冷地野菜が有名だ。江原マートは2003年売上が3600万ウォン(約460万円)しかなく、このまま続けるべきなのかという議論もあったが、2004年4億7千万ウォン(約 6000万円)、2005年7億ウォン(約9000万円)、2006年12億ウォン(約1億6000万円)とぐんぐん成長している。今年は17億ウォン(約2億2000万円)が目標だ。


 行政自治部(日本の総務省に近い中央省庁)は2001年からITを活用した未来農漁村発展モデルを適用し国家の均等な発展を促進するため全国 306の村を「情報化村」に指定し、インターネットで農産物を販売したり、民宿の予約を受け付けたりできるよう地域の情報化を支援している。村に会館も建て高速ネットが使えるパソコンも十数台設置し、住民は誰でも使えるようにしている。この情報化村の内97の村人が生産したものを販売するショッピングモールが「インビル」だ。


 ショッピングサイトは中央協議会という名前の社団法人が運営しているが、いかにも自治体がやってますという素人っぽさというか田舎っぽいところは全くない。デザインも見やすく商品も2000種類以上、7日以内であれば返品も可能だ。購入金額に応じて10%引きしてくれる割引クーポンも付く。


 1996年に韓国にオンラインショッピングモールが初めて登場してから10年間、市場規模は1万倍にまで成長した。2006年には13兆4600 億ウォンの市場規模が、3年後の2009年には20兆ウォンに上る見込みだ。2006年末時点で登録されているオンラインショッピングモールの数は 4531社にのぼる。


 既に韓国では町の商店街が没落している。その一方でオンラインショッピングの小売り流通シェアは2000年2%から2005年15%に急成長し、大型ディスカウントショップ、デパートに続いてオンラインショッピングが3強体制の一角に陣取っている。オンラインショッピングモールは価格競争力、購入の利便性からユーザーが増え続け、2008年には小売流通シェア1位になるのではと予測されているほどだ。


 オンラインショッピングが日常になるにつれ、お年玉やプレゼントにオンラインショッピングやオンラインゲームサイトで使えるサイバーマネーにもなる図書券をプレゼントすることが増えているが、企業もボーナスにサイバーマネーを利用している。現代自動車は去年の秋夕に続いて今年のお正月も、ボーナスに追加して自社オンラインショッピングモールで使えるサイバーマネー15万ウォン分を支給し話題になっている。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

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-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20070213/261783/?P=2