オンライン学習で子どもの教育環境は改善できるか?

IP放送(IPTV)で教育環境の改善を目指すプロジェクトが韓国で始まった。自治体とIPTV事業者が提携し、経済的に貧しく両親が共働きで放課後一人ぼっちで留守番をしている小・中学生を対象に、IPTVのVODや双方向放送を使って無料で課外授業をするというものだ。

 図書館や児童会館の中に「IPTV勉強部屋」を作り、英語・数学・アニメ・映画などのコンテンツを利用できるようにした。ボランティアの先生が機器の操作と子供達に見せる番組を選択する。


 韓国デジタルメディア産業協会がLCDテレビを、IPTV事業者のKTは1年間IPTVを無料で提供し、学習書出版社が教材を提供する。


 韓国の教育熱の高さは海外でもよく知られている。名門大学を卒業しても正社員になるのは一握りしかいないといわれるほどの不況の中、韓国ではますます学閥が重要となっている。


 子供の未来のため、幼児の頃から英才教育をさせ小学校から各種塾に通わせる。しかしそのためにはかなりのお金が必要となる。1980年代までも貧しい田舎の出身の学生が独学でソウル大に主席合格したという感動物語がよくテレビに放映されたものだが、今は教育もお金がないとできない。「私教育」といって学校の教育よりも塾や家庭教師を頼る傾向が強くなったからだ。大学受験のための「私教育」費用は家計負債を増やす深刻な問題となっている。

教育の差は所得の差につながるが、その教育をさせるためにはまたお金がかかる。自然と名門大学に進学する学生は中産層以上の所得がある家庭で育った子供達で、貧困家庭の子供は大人になっても貧困から抜け出せないという悪循環を、IPTVの教育放送を利用して改善してみようとする試しである。

 放送通信委員会の関係者は、「デジタルメディアを活用した教育福祉を実現させ、インターネットで経済的弱者を保護する社会安全ネットワークにしたい」と述べた。自治体は「IPTV勉強部屋によって、優秀な教育コンテンツを利用できる機会がなかった貧しい子供たちの学習能力を高められる」と期待していた。


 「IPTV勉強部屋」は全国300カ所の地域児童センター、情報化村(2001年から推進されている地方の情報化事業で、地域特産品のオンラインショッピングや観光予約などのサービスで地方の所得増進を目指している)にも設置される。


 一方では、義務教育のためではなくIPTV塾のために国の予算を使うことに対する反発もある。学校教育で学習能力を高めるべきなのに、塾に行かないと勉強についていけないということを政府が認め、「私教育」を煽っているという批判もある。さらに、IPTV勉強部屋事業のために国家予算450億ウォン(約37億円)が使われることから、特定事業者のサービスを利用した福祉事業に予算を使いすぎているという批判もある。


 それでも、いつも一人ぼっちで学習意欲がない貧困層の子供達にとって、誰かが自分たちに関心を持っていて、勉強を教えてくれて、他の子供達と同じように最新映画やアニメも見られるようにしてくれるIPTV勉強部屋の存在は、人生を変えられるきっかけになるかもしれない。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年9月2日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090902/1018324/