[日本と韓国の交差点] 韓国中が芸能人オーディション番組に大騒ぎ

学縁、地縁が要らない、お金持ちになれる!?



いつからだろう。韓国は子供も大人も芸能人になりたくてしょうがない国になってしまった。2010年5月、小学生に将来の夢を聞いたところ、1位は歌手や俳優といった芸能人だったそうだ。親が子供にさせたい職業も芸能人が多いというから驚きだ。

 小学生向け学習サイトが全国の小学生6397人を対象にアンケート調査した結果、20.5%は芸能人、20.1%が医者や弁護士といった専門職、14.8%が先生、11.4%が芸術家、9.1%がスポーツ選手と答えた。


 日本の子供のようにケーキ屋さんとか、電車の運転手さんとかが全くないことも面白い。日本では将来なりたい職業が「ない」子ども増えていることが問題になっているようだ(ベネッセ教育研究開発センター第2回子ども生活実態基本調査)それに比べ、はっきりとした夢を持っている子供が多いことは良いことなのかもしれないが、なんだかすっきりしない。


 私が子供のころは、男子は大統領、女子は医者とか判事とか、そんな夢を持っていた。このごろは、なんでこんなにも芸能人になりたがる子供が多いんだろう。



子供も、親も、プロダクションも一生懸命


 そういえばこの前、小学校の学芸会を見てびっくりしてしまった。子供らしい童謡や演劇なんてなく、ほとんどがアイドルのモノマネで、小学校低学年の子供たちが腰振りダンスでセクシーさを競い合っていた。見ているこちらの方が恥ずかしくて耐えられない。


 なのに、誇らしく「うちの子はダンスがうまいから、今度オーディション受けさせるのよ」と喜ぶ親を見て何も言えなかった。子供は子供らしく外で遊んで~、なんて考える人はもう居ないかもしれない。子供の才能を早く見つけて、英才教育でさらに磨いてあげるのが親の役割なのだから。


 子供を芸能人にするため、猛烈ママになる人も増えている。赤ん坊のころから演技学校に通わせ、プロダクションのオーディションを片っ端から受けさせまくる。歌やダンスのうまい子供は小学校低学年から芸能プロダクションの「練習生」に登録され育てられる。プロダクションは、子供たちに10年近くトレーニングをさせ、テレビ映りを良くするため整形手術や歯の矯正もさせる。もちろん、練習生同士も競争させてだんだん落としていく。こうして生き残った子供たちが、今アジアで大活躍している韓国のアイドルたちだ。


 ハリウッドをはじめ世界どこでもそうだろうけど、芸能人は特権層である。韓国で芸能人といえば、有名で、ちやほやされ、高額ギャラを得てお金持ちになれ、良いことばかり、と思われているのかも。以前紹介したように徴兵も免除される。裏ではどんなことがあろうと、一般人には、芸能人はそれほど苦労もせず裕福な生活ができる職業に見える。


 韓国は1997年の通貨危機(注:韓国では「IMF経済危機」と呼ぶ)を乗り越えたのはいいものの、その後からは、「助け合う」という美徳が少しずつ薄れてしまい、何よりも学縁、地縁、そして「自分」を最優先しないと生きていけない競争社会になってしまった感じがする。生きるためには「みんなで仲良く譲り合う」ことができないのだ。「少しぐらいなら、他人に迷惑かけてもかまわない」、「目立ちたい」という考えが、韓国をここまでも競争好きな社会にしてしまったのかもしれない。もちろん韓国は昔から縁故社会ではあったが…。


 そんな中、芸能人は学縁や地縁などのバッググラウンドがない人でも、体一つで成功できる最後の希望として映っているのかもしれない。





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By 趙 章恩

2010年10月6日


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20101005/216507/