Samsungの対米半導体投資に米政府が巨額の補助金、韓国内で渦巻く懸念

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韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の対米半導体投資に対する米政府からの補助金に対し、韓国内では多くの懸念が渦巻いている。同社の決断に伴い、中国にあるメモリー半導体工場はどうなるのか、韓国内の半導体投資が減るのではないか、といった不安の声が高まっている。

 米国商務省は2024年4月15日(米国現地時間)、米CHIPS・科学法(CHIPS and Science Act)により最大64億米ドル(1米ドル=154円換算で約9800億円)の補助金をサムスン電子に支給する予備的覚書(PMT)に署名したと発表した。補助金の対象になったことで同社は米国防部との協力も可能になった。米バイデン大統領は同社への半導体補助金支給に関して、「米国と韓国の同盟が(ビジネス)チャンスを生み出している」「半導体はAI(人工知能)のような先端技術に欠かせないものであり、米国の国家安保を強化するだろう」とコメントした。

†米CHIPS・科学法(CHIPS and Science Act)=米バイデン大統領が2022年に米国の安全保障を強化するために制定した。2030年まで米国が世界最先端半導体の20%を生産することを目標に、米国内の半導体生産設備投資に520億米ドルの補助金を支給する。半導体の輸入に依存せず、米国内で最先端半導体の設計、生産、パッケージング、購買まで全てが完結するようにし、半導体不足で自動車生産が止まるといったことをなくそうとしている。

 サムスン電子が補助金として受け取る64億米ドルという金額は、米Intel(インテル)の85億米ドル、台湾積体電路製造(TSMC)の66億米ドルに続く3番目の大きさとなった。サムスン電子の米国内の生産設備はファウンドリー事業(半導体受託生産会社)の拠点となる。同事業の最大手で好調が続くTSMCや、赤字が続き巻き返しを図るインテルと、米国内の顧客を奪い合う熾烈(しれつ)な競争が米国内で始まることになる。

 サムスン電子は2022年から米国テキサス州テイラー市に最先端の半導体生産工場を建設中である。今回、これに加えて半導体パッケージング施設とR&D(研究開発)施設を新築し、2030年まで総額400億米ドル規模の対米投資を行う計画という。現地の新規雇用も2万人を超える見込みである。

 韓国からはSK hynix(SKハイニックス)も同社初となる米国生産拠点を計画している。2028年下期の量産を目標に、米国インディアナ州に半導体パッケージング工場を建設する。台湾の調査会社TrendForceによれば、先端半導体(16nm世代以下)の国別生産キャパシティーは、2023年の台湾68%、米国12.2%、韓国11.5%、中国8%に対して、2027年は台湾60%、米国17%、韓国13%、中国6%、日本4%と、米国のシェアが拡大すると見ている。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト) 

(NIKKEI TECH) 

2024. 4. 

-Original column 

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00107/

電子ブック市場の救世主となるか、サムスン電子と最大手書店がタイアップ

韓国に電子ブックが登場して早くも10年が経った。その間、元祖電子ブックサイトは利用者がなく倒産し、電子ブックリーダー機も中小企業から発売された1機種だけ。自治体の電子図書館の一環としてパソコンから利用する電子ブックサイトや携帯電話向けの小説・漫画コンテンツサービスとして、いくつかは生き残ったところはあるが、利用者は当初の期待に及ばない。

 何よりも利用方法が不便であった。パソコンから電子ブックを見るにもサイトごとに色んな専用ビューアーをインストールさせられた。コンテンツも少なくベストセラーの電子ブック化も遅かった。


 そこへ登場したのがサムスン電子と韓国最大手書店「教保文庫」である。電子ブックに最適化された端末「SNE-50K」の発売と同時に、本より60%安い値段で2500冊の電子ブックをダウンロードできる「デジタル教保文庫」をオープンした。年末まで1万冊、毎年1000冊ずつアップデートしていく計画だ。教保文庫オンライン事業本部側は、「新製品の発売により電子ブックユーザーが増え、韓国の電子ブック市場は2006年の2100億ウォンから2010年に1兆600億ウォン、2012年には2兆3800億ウォンへ成長する見込み」だと語る。サムスン電子と教保文庫の組み合わせに刺激されたオンライン書店とリーダー機を製造する中小企業のタイアップも急速に進んでいる。




サムスン電子は、韓国最大手書店と組んで電子ブック市場を開拓していく

「パピルス」というプロジェクト名で今年3月より期待を集めたサムスン電子の電子ブックリーダー機SNE-50Kを見ると、Amazonの端末「Kindle」より、小さく安くすることを目標にしたようだ。画面の大きさはポケットサイズの5型で、厚さは9mm、重さは片手で長時間持っても苦にならない200g、メモリは専用ファイルに変換すると400冊を保存できる512MB、電子ペーパーを採用しているので外光が反射して画面が見辛いといったこともない。電力消耗も少なく、5秒ごとにページをめくったとすると4230ページまで連続利用できるという。

 電子手帳機能を備えるので、スケジューラーとして使える。ファイルをBMP形式に変えて表示する機能もある。リーダー機としては初めて専用ペンで紙に文字を書くように手書きしたメモを保存する機能がつく。だが、本を読みながら線を引いたり、付箋を貼ったりはできない。無線LAN機能がないため、パソコンに接続してコンテンツをダウンロードする必要がある点は不便。端末価格は33万9000ウォン(約2万6000円)である。端末は教保文庫のオフライン店舗またはWEBサイトから購入できる。


 サムスン電子は「電子ブック市場は、まだ初期段階なので目の前の利益よりも、先行者利益を狙っている」、「2010年には無線LAN機能を備えた、もっと便利な端末を発売する」としている。

携帯電話にもファイルビューアーや、電子ブックを読む機能はついているし、ネットブックを持ち歩きながら利用することもできるので、純粋に読書のため新しい専用端末を買う人はどれぐらいいるのだろうか。SNE-50Kは電子ブックの可読性を高めるかもしれない。しかし、専用の端末まで買って読みたいと思うほどの魅力を電子ブックに感じるわけではないので、端末の良さよりも電子ブックって何がいいの? というところから攻めないといけないかもしれない。


 アメリカでの傾向を見ると、Amazonがほとんどのベストセラーを電子ブックで販売したり、端末のKindleが80万台以上売れたり、スマートフォンから電子ブックを利用する人が増えたり、Googleが全世界の図書館の本を集めてデジタル図書館を作ったりと、紙の本より電子ブックが読まれる時代になってきたともいえる。その一方、韓国では出版社や作家らが電子ブックの流通構造がはっきりせず、精算も曖昧だった点を挙げてあまり乗り気でないところがある。


 しかし、サムスン電子が電子ブック市場に参入したというニュースは、出版業界の認識までも変えられそうだ。大手企業が参入するというのは市場性が認められたという証拠でもあるので、今までは違った流通やサービスを期待している。


 サムスン電子は、Amazonと競争するため北米市場がターゲットで、韓国をテストベッドにするため先に発売したのかもしれない。それでも、消えかけていた韓国電子ブック市場に新しい風を入れてくれたのは確かだ。機能が豊富すぎるサムスン電子の携帯電話が、リーダー機普及の足をすくう可能性もあるが、サンプルを手にした記者らの反応もよかった。電子ブック市場の未来は、意外に明るいかもしれない。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年7月30日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090729/1017397/

サムスン電子、今度はアプリストアで世界のモバイルコンテンツ市場に挑戦

「ハードウエアばかりではなく、サムスンらしいソフトウエアとアプリケーションも提供していきたい」。2009年7月、サムスン電子は世界市場向けに携帯電話向けのアプリケーション販売サイト(アプリストア)を充実させていく方針を発表した。

 2009年3月には携帯電話、MP3プレーヤー、ノートパソコンなど自社のモバイル端末サイトを「Samsung Mobile.com」として一つにまとめ、ショッピングモールやコンテンツダウンロードメニューを充実させた。いずれはコンテンツを1件ダウンロードすれば携帯電話、ノートパソコン、MP3プレーヤーで使えるようにして、他のコンテンツサイトと差別化を図りたいとしている(現在は携帯電話向け、ノートパソコン向けなどに分かれているコンテンツを一つのサイトに集めてダウンロード販売しているだけ)。




サムソン電子が展開するコンテンツ販売サイト「Samsung Mobile.com」

いつの時代にも言われ続けているが、携帯電話もハードウエア以上にソフトウエアが求められている。NOKIAやMotorolaのように携帯電話端末の製造技術だけでは収益を伸ばせないと言われている。Black BerryのRIMや、iPhoneのAppleの場合、端末販売の台数シェアが低くても、利益率ではサムスン電子やLG電子を勝っている。不況の中でも、AppleやGoogleのようにパソコンと変わらない使い方ができる携帯電話端末とソフトを熟知している会社は、このメリットを前面に打ち出してスマートフォン市場で成長し続けている。


 コンテンツの流通も大きく変化した。iPhoneが登場してから、ユーザーはキャリアよりも端末のメーカーと仲良くなり、コンテンツ流通もキャリア主導からメーカー主導のプラットフォームが勢力を拡大させている。これからのモバイル端末は、どんなコンテンツをどれだけ便利に利用させられるかで勝負がつくだろう。NOKIAやMotorola、サムスン電子がGoogleをパートナーにアンドロイド端末に積極的なのがその現れの一つ。端末そのものより端末からどんなコンテンツを利用できるのかを重視するユーザーを満足させるには、Googleを味方にするのがもっとも手っ取り早いからだ。


 韓国でモバイルコンテンツといえば、キャリアのプラットフォームを通じた公式サービスだけで、勝手サイトというものがない。iPhoneのような無線LAN機能を搭載したスマートフォンは、キャリアがデータ通信売上やコンテンツ販売に悪影響を与えるとして、嫌がられる。韓国メーカーが海外で発売している、どんなファイル形式の動画も自動変換して再生してくれる大画面携帯や大容量メモリーが使える携帯といった最新端末は、韓国国内ではスペックダウンして発売される。キャリアは長期割引、家族割引などの料金割引競争だけでも大変なのに、コンテンツ市場まで奪われてはたまらないのだろう。

サムスン電子のアプリストアも、まずはヨーロッパ向けのテストサービスとして始まった。2009年2月、まずはイギリス向けに「Samsung Applications Store」をオープンした。2009年8月末には正式サービスとする予定だが、対象地域はヨーロッパに限定される。アプリ開発者向けサイト「Samsung Mobile Innovator」と連携して、開発者個人が直にアプリを販売できるようにしている。


 サムスンのブランド認知度を利用して世界進出を狙う日本や韓国のコンテンツ会社の参加も続いている。サムスン電子の携帯電話端末の販売台数を考えると、iPhoneに負けない効果をあげられるかもしれない。それに携帯電話に限らず、サムスン電子の各種モバイル端末のユーザーにも販売できるので、マーケットは相当な規模になる。サムスンのアプリストアは韓国ではキャリアとの正面衝突を避け、今まで通り3月にオープンした「Samsung Mobile.com」にコンテンツを集める。韓国最大キャリアであるSKテレコムは2009年末APPLEのようなアプリストアをオープンする。キャリアの売上の8割が音声通話の現状からコンテンツや手数料売上を伸ばしていかないと、経営が成り立たないのだ。


 サムスン電子は「APPLEとは比べものにならないほど端末ラインアップが充実しているだけに、コンテンツを確保すればAPPLE以上に成功できるだろう」と胸を膨らませている。しかし、「コンテンツの確保」は携帯電話にインターネットがつながった10年前から言われ続けてきたこと。利用料が安くて、使い方が便利で、どんどん使ってみたくなるコンテンツを確保するのが端末製造より難しいからこそ、iPhoneの成功がニュースになるのではないだろうか。


 アプリストアを充実させたとしても、キャリアが無線LAN機能の搭載を断ったり、安いデータ通信定額制を始めてくれないと、モバイルコンテンツ市場の成長は難しい。もちろん、韓国の場合、Wibro(モバイルWiMAX)を使ったモバイルVoIP開始が予定されているため、キャリア抜きの携帯電話サービスが可能となる。しかし、ここでメーカー主導プラットフォームなのかキャリア主導なのかを争ってしまうと、コンテンツ流通の手数料の奪い合いになるだけで市場は育たない。「メーカーもキャリアも個人も共生できる『エコシステム』を作るためにアプリストアを始める」と語った初心を忘れないでほしいものだ。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年7月22日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090722/1017148/

サムスン電子の究極の青田刈り [2006年11月21日]

2007年から韓国の私立大学2校に携帯電話学科が新設される。サムスン電子は96年からサムスンが財団になっている「成均館(ソンギュングァン)大学」と提携し、2007年1学期から水源(スウォン)キャンパスで携帯電話学科大学院を設立運営することにした。毎年修士課程40人、博士課程12 人を募集する。7~11月行われた選考では1次12人募集に99人、2次28人募集に266人が志願し、9.1の倍率となった。他の学科に比べ5倍近い競争率となった。

合格すれば授業料免除、生活補助、卒業後の就職も保証


 ものすごい競争率の秘密はサムスン電子の破格な優遇にある。合格さえすれば授業料全額免除、毎月100万ウォン以上の生活補助費が支給され、卒業すればあの憧れのサムスン電子情報通信総括に入社、携帯電話関連研究開発(R&D)の業務を任されることになる。サムスン電子は大卒新規採用の給料が高いことでも有名で、キャリアのSKテレコムと並び、最も入社したい企業の1、2位を争っている。サムスン電子の携帯電話は「Anycall」というブランドで販売されている。8月には世界で初めて4Gを発表するなど、技術開発力を強化している。韓国国内では、高品質高価格路線が成功し、他の携帯より2倍はする値段にもかかわらずシェア1位をキープしている。中国でもAnycall携帯が富裕層のステータスのようになっていて、コピー携帯もかなり出回っているそうだ。


 これだけの待遇だからやはり入学試験はサムスン入社試験よりも難しかったらしい。書類審査、教授面接、サムスン職務能力試験(SSAT)、サムスン電子面接の 4つの関門を突破しなくてはならないが、特に面接とSSATは新入社員面接と同じレベルで、大学での成績がオールAで、TOEICで満点を取った人も落ちたほどだ。


 携帯電話学科は、Human Interface、Connectivity、Embedded Software、Mobile Platform、Mobile Healthの5つの研究グループで構成される。チェ・ヒョンジン携帯電話学科長は「部品の製造方法ではなく、どのような組み合わせで最高の携帯電話を作れるのかというシステム技術を研究する大学院。研究だけに没頭できるようサムスンも学校も支援を惜しまないつもりなので、その分携帯電話狂いともいえるレベルの高い学生が集まってほしい」と述べた。サムスン電子のシニア研究員や役員も各研究グループ別共同指導教授として参加し、選考から論文選定、審査、進学、就業指導を担当する。カリキュラムの詳細な運営などすべてをサムスン電子と大学側が協議して決めることになる。また学生らは在学中からサムスン電子のプロジェクトを遂行することからも、現場と大学教育の距離を幾分縮められるのではないかと期待されている。


 韓国でも学科名から「携帯電話学科」と名前がついたのはこれが初めて。去年246億ドルの輸出を記録した携帯電話は韓国全輸出の8.6%、IT関連輸出の22%以上を占める主力産業だが、今まで専門の人材を育成する大学はなく、電気・電子、電算、機械、コンピューター専攻など多様な分野から採用してから時間と費用をかけて再教育しなければならなかった。


会社の機密資料も教材に


 サムスン電子と成均館大はサムスンが財団になった96年、半導体システム工学科を新設している。博士クラスの研究員が講義に参加し、即戦力のある人材養成に力を入れ、画期的な産学協同カリキュラムと評価されてきた。会社の機密資料が教材として利用され、3年生からは現場実習もする。卒業後はサムスン電子入社が保証され、授業料、教材費全額と生活費が支援された優遇策は韓国では初めて。その魅力に引かれて、全国から秀才が集まり、合学者一人一人がマスコミに紹介されたほどだった。成均館大は「企業に牛耳られるみっともないサムスン大学」と嫌がらせをうけたこともあったが、今ではサムスンの惜しみのない支援のおかげで全国から成績上位3%以内の優秀な学生が集まる名門大学へ成長できた。


 サムスン電子は成均館大のほか、全国の名門大学14校と情報通信トラック(Track)を組み、授業料全額支援で優秀な人材を優先的に確保している。さらに、工学部を対象に3年生までにサムスン電子が要求する教養科目と、4年生の1年間はコンピューター通信ネットワーク、コンピューター通信システムといった「情報通信トラック科目」の中から2科目以上単位を取った学生を採用で優先する。これは、年間1000人以上の学生が対象となっている。


 一方で、サムスン電子は各大学に教科課程開発費2億ウォン、機材費2億ウォンに、毎年追加で4千万ウォンずつ5年間で2億ウォン、機材交換費1億ウォン、合計5年間7億ウォン(約9000万円)を支援する。大学別成績優秀者20名には1年間1000万ウォンの奨学金を支給し、入社が保証する。サムスン電子情報通信総括は年間2000人を採用しているが、2007年からは情報通信トラックの卒業生から60%ほどを採用する計画だ。これだけの労力をかけることで、サムスン電子としては自社のニーズにぴったりあった人材を大学からオーダーメイドのように供給をうけるわけだ。


 さらに、サムスン電子は人材確保先を広げようとしている。これは次回、ご紹介しよう。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061121/254329/

サムスン電子実績悪化の裏でLG電子は史上最高益達成 [2007年8月1日]

韓国の株価指数KOSPIがついに歴代最高値2000を突破した。不動産バブルで税金が重くなるとそのお金が今度は株に流れてきているため、止まることを知らず毎日株価が値上がりしている。ファンドも絶好調で、この5カ月の間に2倍になった3倍になったと騒がれる商品も少なくない。

 外国人の投資も自由。日本の独身女性が韓流の次に韓国投資に目覚めたようで、株で儲けマンションを買っただの、お店を開いたなどの噂も流れている。このような株バブルの中、「皇帝」と呼ばれているサムスン電子の株も再び値上がり始めた。やはりサムスン電子は韓国の株式時価総額不動の1位であることは違いない。


 サムスン電子の史上最悪な実績とリストラが始まったことが大々的に報道されている中、サムスン電子は緊急記者会見を開き、実績悪化は半導体だけで全体的に利益がよくなっていることと新入社員の採用は減らすが、リストラについては否定し、実績がよくても事業再編や人員再配置はよくあることではないかと説明した。


 サムスンの税務調査も始まり、あっちでもこっちでもサムスンの記事が目立つ中、 LG電子は2007年4~6月、史上最高の実績を記録した。グローバル基準で初めて1期売上が10兆ウォンを超えた。2007年4~6月LG電子の売上は10兆4302億ウォン、営業利益4636億ウォン、前期比売上は8.7%、営業利益は1578%も増加している。特に携帯電話部門は営業利益11.6% で、サムスン電子の8%を初めて上回った。


 LG電子の実績はチョコレート携帯、社員携帯、PRADA携帯と、世界市場で発売したプレミアム携帯電話の売れ行きが好調だったのと、ディスプレー事業からPDPモジュールラインを整理しTV部門での赤字が半分に減ったのも影響している。サムスン電子は家電が売れず困っているのに対し、LG電子は海外市場でエアコンをはじめプレミアム家電がよく売れ4~6月の間最高額である3兆6039億ウォンの売上を達成した。


 LG電子が生まれ変わったとまで言われるもう一つの理由は、LGテレコムからLG電子の代表理事になったナム・ヨン副会長の功績にもある。本社の人員を営業に送り込ませ、海外で活躍する若手コンサルティング専門家を役員に採用し、会社の内部的な雰囲気を変えようとしている。LG電子はサムスンに比べて大人しく目立たない、地味な社員が多く、製品も大人しいものが多いと評価されていたが、今年からはかなり攻撃的になっているのも代表が変わったせいかもしれない。


 LG電子の広報担当は「サムスン電子は営業利益が初めて1兆ウォンを下回っただけで危機説がながれているのに、LG電子はその半分の利益でアーニングサプライズとまで言われてしまい逆に恥ずかしい」と、1月から続けているリストラと経費節減に拍車をかけるさらに利益を上向かせるため努力していると話した。LG電子は主力事業である生活家電と携帯電話事業をより高価、高機能のものに変えて競争力を高め、ディスプレーもこれ以上価格が下落しないと予想されるため、下半期も好調が続くと楽観的に予想している。


 一方、サムスン電子はリストラを否定しているが、離職する役員や社員は増えていて、前サムスンマンを捕まえようとリクルート市場も活気を浴びている。特にサムスン電子出身の役員はITベンチャーや中堅企業のCEO、CIOとして人気が高い。世界のサムスンらしく新入社員の頃からきつく鍛えられているせいか、何を任せても「だめです」、「無理です」とは言わず「やってみます」、「成せば成る」の精神で最も効率の高い方法を見つけ出しては解決する人達と定評されている。業種に関係なく引っ張りだこだ。


 サムスン電子は半導体以外では好調で携帯電話もノキアに続いて世界2位となったことだし、収益も伸びている、下半期からは問題ないと何度もプレス発表をしているが、その弁解を聞くたびにもっと不安になるのはなぜだろう。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20070731/278689/

サムスン電子の「モバイル・コンバージェンス」とは?――Mobile World Congress 2008より

2月11日よりスペイン、バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2008」(旧3GSM World Congress)には韓国の携帯電話ベンダーや通信キャリアも参加し、「世界初」と冠の付く技術を多数公開している。今回はその中でサムスン電子の注目製品を取り上げたい。

 サムスン電子は「モバイル・コンバージェンス時代の新しい方向性を提示したい」とし、日常を便利にしてくれる技術を展示した。その中でも注目されたのは超小型モバイルプロジェクターだ。携帯電話につなげて使うモバイルプロジェクターの商用化製品が公開されたのはこれが初めてのこと。


 外形寸法が約70mm×70mm×21mmと手のひらに収まるほどにまで小さくなった「モバイルプロジェクター」は、携帯電話に保存しておいたPower Point形式、写真、動画などのファイルと、モバイル向けの放送を大画面で見られるようにしてくれる。携帯電話とモバイルプロジェクターさえあれば、どこでも会議室や映画館になってくれる。以前、サムスン電子のショールームにあったモバイルプロジェクターはかなり重く、サイズも大きかったこともあり、「大型テレビが普及している中で、わざわざ家庭やオフィスで携帯電話とモバイルプロジェクターをつなげて映画を見るかな?」と思っていたものだが、持ち運べるプロジェクターには使い道が色々とありそうだ。場所を選ばずにプレゼンテーションができるというのもいいが、家族だけの野外映画館もいいね。


 プロジェクターはVGA級の鮮明な画質をサポートし、一般的な室内環境であれば10インチまで、暗い場所では50インチにまで画面を拡大できる。バッテリーは映画一本を無理なく見られる程度にもち、携帯電話だけでなくDVDプレイヤー、ビデオカメラ、PMP(ポータブルマルチメディアプレーヤー)、ノートパソコンなど多様な電子機器と連動できる。2008年3月、韓国で先行発売される予定である。


 また最新のWindows Mobile搭載スマートフォン「i780」をホームネットワークシステムのリモコンやサーバーとして活用し、テレビ、ノートパソコンなどに各種コンテンツを送信し制御する新技術を披露した。i780は、韓国産の携帯電話としては初めてDLNA(Digital Living Network Alliance)認証を獲得している。「DLNA」はインテル、サムスン電子、ソニー、IBMなど200社余りの企業が結成した異なるメーカー間の機器を簡単に相互接続するための規格を策定している業界団体。DLNAの認証を獲得すれば、ホームネットワークを経由して、製品に保存されているデジタルコンテンツを自由に共有したり制御したりできるようになる。i780はHADPAとGSM/GPRS/EDGE互換通信方式にQWERTYキーボードとフルタッチスクリーンなど、2008年に人気を集めるといわれている要素をすべてそろえた最先端のマルチメディア型スマートフォンだ。


 タッチスクリーン型携帯電話「F700」の後続モデル「F490」も公開された。F490は既存の携帯電話端末とは違って3.2インチのワイド液晶を全面に搭載し、映画などのマルチメディアコンテンツを視聴するのに向いている。ほかにも、500万画素の高画質カメラを内蔵し、3.6MbpsのHSDPAとBliuetooth 2.0に対応、メモリーは130MB搭載するである。F490は2008年2月中にヨーロッパで発売される予定で、価格は約530ユーロ程度を考えているという。


 最後にサムスン電子の戦略を簡単に紹介したい。


 サムスン電子 情報通信総括社のチェ・ジソン社長は、2007年に世界携帯電話市場のうち14.3%(1億6100万台)のシェアを記録したが、2008年にはこれより5%以上増加した2億台以上の携帯電話を全世界に販売し、世界における携帯電話の市場シェアを20%以上に引き上げるという目標を明らかにした。高機能なハイエンド端末から普及型端末まで、全分野の市場を攻略することで「携帯電話はサムスン」というイメージを高めると同時に収益構造を安定させるのが狙いだ。


 チェ社長は「多様な事業部を持つサムスン電子だけの強みを発揮し、携帯電話が多様なIT機器のハブになる、『モバイルハブ』時代を主導していきたい」とコメント。最近話題になっているサムスン電子によるモトローラの携帯電話事業部門の買収については「重複している事業が多くシナジー効果がないので興味はない」とはっきりした態度をみせた。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年2月13日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20080213/293710/

サムスン電子の究極の青田刈り

2007年から韓国の私立大学2校に携帯電話学科が新設される。サムスン電子は96年からサムスンが財団になっている「成均館(ソンギュングァン)大学」と提携し、2007年1学期から水源(スウォン)キャンパスで携帯電話学科大学院を設立運営することにした。毎年修士課程40人、博士課程12 人を募集する。7~11月行われた選考では1次12人募集に99人、2次28人募集に266人が志願し、9.1の倍率となった。他の学科に比べ5倍近い競争率となった。

合格すれば授業料免除、生活補助、卒業後の就職も保証


 ものすごい競争率の秘密はサムスン電子の破格な優遇にある。合格さえすれば授業料全額免除、毎月100万ウォン以上の生活補助費が支給され、卒業すればあの憧れのサムスン電子情報通信総括に入社、携帯電話関連研究開発(R&D)の業務を任されることになる。サムスン電子は大卒新規採用の給料が高いことでも有名で、キャリアのSKテレコムと並び、最も入社したい企業の1、2位を争っている。サムスン電子の携帯電話は「Anycall」というブランドで販売されている。8月には世界で初めて4Gを発表するなど、技術開発力を強化している。韓国国内では、高品質高価格路線が成功し、他の携帯より2倍はする値段にもかかわらずシェア1位をキープしている。中国でもAnycall携帯が富裕層のステータスのようになっていて、コピー携帯もかなり出回っているそうだ。


 これだけの待遇だからやはり入学試験はサムスン入社試験よりも難しかったらしい。書類審査、教授面接、サムスン職務能力試験(SSAT)、サムスン電子面接の 4つの関門を突破しなくてはならないが、特に面接とSSATは新入社員面接と同じレベルで、大学での成績がオールAで、TOEICで満点を取った人も落ちたほどだ。


 携帯電話学科は、Human Interface、Connectivity、Embedded Software、Mobile Platform、Mobile Healthの5つの研究グループで構成される。チェ・ヒョンジン携帯電話学科長は「部品の製造方法ではなく、どのような組み合わせで最高の携帯電話を作れるのかというシステム技術を研究する大学院。研究だけに没頭できるようサムスンも学校も支援を惜しまないつもりなので、その分携帯電話狂いともいえるレベルの高い学生が集まってほしい」と述べた。サムスン電子のシニア研究員や役員も各研究グループ別共同指導教授として参加し、選考から論文選定、審査、進学、就業指導を担当する。カリキュラムの詳細な運営などすべてをサムスン電子と大学側が協議して決めることになる。また学生らは在学中からサムスン電子のプロジェクトを遂行することからも、現場と大学教育の距離を幾分縮められるのではないかと期待されている。


 韓国でも学科名から「携帯電話学科」と名前がついたのはこれが初めて。去年246億ドルの輸出を記録した携帯電話は韓国全輸出の8.6%、IT関連輸出の22%以上を占める主力産業だが、今まで専門の人材を育成する大学はなく、電気・電子、電算、機械、コンピューター専攻など多様な分野から採用してから時間と費用をかけて再教育しなければならなかった。


会社の機密資料も教材に


 サムスン電子と成均館大はサムスンが財団になった96年、半導体システム工学科を新設している。博士クラスの研究員が講義に参加し、即戦力のある人材養成に力を入れ、画期的な産学協同カリキュラムと評価されてきた。会社の機密資料が教材として利用され、3年生からは現場実習もする。卒業後はサムスン電子入社が保証され、授業料、教材費全額と生活費が支援された優遇策は韓国では初めて。その魅力に引かれて、全国から秀才が集まり、合学者一人一人がマスコミに紹介されたほどだった。成均館大は「企業に牛耳られるみっともないサムスン大学」と嫌がらせをうけたこともあったが、今ではサムスンの惜しみのない支援のおかげで全国から成績上位3%以内の優秀な学生が集まる名門大学へ成長できた。


 サムスン電子は成均館大のほか、全国の名門大学14校と情報通信トラック(Track)を組み、授業料全額支援で優秀な人材を優先的に確保している。さらに、工学部を対象に3年生までにサムスン電子が要求する教養科目と、4年生の1年間はコンピューター通信ネットワーク、コンピューター通信システムといった「情報通信トラック科目」の中から2科目以上単位を取った学生を採用で優先する。これは、年間1000人以上の学生が対象となっている。


 一方で、サムスン電子は各大学に教科課程開発費2億ウォン、機材費2億ウォンに、毎年追加で4千万ウォンずつ5年間で2億ウォン、機材交換費1億ウォン、合計5年間7億ウォン(約9000万円)を支援する。大学別成績優秀者20名には1年間1000万ウォンの奨学金を支給し、入社が保証する。サムスン電子情報通信総括は年間2000人を採用しているが、2007年からは情報通信トラックの卒業生から60%ほどを採用する計画だ。これだけの労力をかけることで、サムスン電子としては自社のニーズにぴったりあった人材を大学からオーダーメイドのように供給をうけるわけだ。


 さらに、サムスン電子は人材確保先を広げようとしている。これは次回、ご紹介しよう。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2006年11月21日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20061121/254329/