怒濤の“スマホ化”、ソウル市が目指す「スマートソウル2015」のすごい内容 [2011年8月11日]

ソウル市は現在、「スマートソウル2015」戦略を進めている。具体的には、2015年までにソウル市内のすべての公共施設をフリースポットにする、スマートフォンから各種行政情報や書類申請を利用できるモバイル行政を実現する、といった内容だ。このために2015年まで8500億ウォン(約670億円)の予算を使う。国連が評価した2010年世界電子政府ランキングで1位になった国らしく、スマート電子政府でも世界のトップになるという計画だ。

 同市はすでに2010年4月から、急速に普及率が伸びているスマートフォン向けモバイル行政サービスを提供している。ソウル市の公共データベースを活用したアプリケーション開発やフリースポット拡大を目指して、“モバイル・ソウル”を進めてきた。


 同市のアプリケーション開発支援により、2010年には公衆トイレ位置情報検索アプリ、交通情報を分析してバスと地下鉄の最短移動経路を探してくれるアプリなど6つのアプリが無料で利用できるようになった。毎年2回、市民参加型でアプリのアイデア公募を実施、実際のアプリ開発はSKテレコムや民間企業に任せる方式でアプリの本数を増やしている。




ソウル市の公共データベースを活用したアプリケーションの一つで、ソウル市内の主な道路に設置された防犯カメラから交通情報を確認できる「ソウル市交通CCTV情報」

モバイル・ソウルを活性化していくためには、何よりもソウル市内全域でWi-Fiを自由に使えないといけないと判断し、情報格差をなくすためにも誰でも無料で使えるようにするべきということから、市は、市内のフリースポットを増やし始めた。無料Wi-Fiは、所得の格差でWi-Fiに加入できず、行政情報や緊急災害情報を受信できないといったことを防ぐためである。フリースポットなのでWi-Fiが使えるデバイスを持っていれば、外国人観光客でも無料でインターネットにアクセスできる。

 2010年末時点ですでにソウル市内の公共施設295カ所がフリースポットになった。これを2015年までに地下鉄車両の中、バスの中、タクシーの中へ広げる。野外のフリースポットは繁華街、公園、ショッピングセンターなど1万430カ所に拡大する。


モバイル・ソウルをさらに高度にしてスマートシティにしていくのが今回の「スマートソウル2015」といえる。2010年末時点ですでにソウル市民の80%がスマートフォン/タブレットPC/Wi-Fiを利用しているというソウル市の調査結果を反映して、市民の利便性を高めるためにもスピードを上げてスマート化に取り組む必要があると判断したようだ。


 また、スマートフォンやタブレットPCだけでなく、スマートTV、電子書籍リーダー端末からもソウル市のアプリケーションとモバイル行政サービスを使えるようにする。モバイル行政サービスは、ソウル市がすでにネットで提供している63種類の電子申請・書類発給サービスをこれらの端末から利用できるようにするというもの。


 スマートフォンやWi-Fiを使っていない残りの20%のデジタルデバイド(情報格差)を解消するため、主婦や高齢者を対象に年間20万人ずつ5年間で100万人を教育するという計画も発表された。


 「スマートソウル2015」は、3段階に分けて進めていく。2010年に続いて2012年まではスマート基盤構築、2014年まではスマートサービス実行、2015年にはスマート高度化である。重点課題は4つで、「スマートインフラ拡充と情報格差解消」、「スマートデバイスを活用した一人ひとりのための行政、社会安全向上」、「雇用創出」と「スマートセキュリティ高度化」である。


 例えば、インフラ関連では、Wi-Fiでバスとタクシーに取り付けられたGPS信号をキャッチしてバスの到着時刻と道路状況を案内するデジタルサイネージがすでにあり、全国のバス停に設置されている。これの精度がまだ95%なので、100%近く正確に案内できるよう高度化するとする。


 社会安全という例では、ソウル市内の約1000カ所に取り付けられた防犯カメラを2015年までに1万カ所に増やして都市の安全性を高める計画もある。またこの防犯カメラの一部の映像を市民にも公開して、交通状況を確認できるようにもする。


 ソウル市内ではすでにほぼどこでも無料でWi-Fiが使える。パスワードを設定していないWi-Fi信号もたくさんあるので、スマートフォンやノートパソコンを持っていればインターネットを使うのに困ることはない。逆にあまりにも「スマート」に力を入れすぎているので、スマートフォンがないとソウルに住むのが不便になるのではないか、その方が心配だ。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年8月11日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110811/1034726/

怒濤の“スマホ化”、ソウル市が目指す「スマートソウル2015」のすごい内容

 ソウル市は現在、「スマートソウル2015」戦略を進めている。具体的には、2015年までにソウル市内のすべての公共施設をフリースポットにする、スマートフォンから各種行政情報や書類申請を利用できるモバイル行政を実現する、といった内容だ。このために2015年まで8500億ウォン(約670億円)の予算を使う。国連が評価した2010年世界電子政府ランキングで1位になった国らしく、スマート電子政府でも世界のトップになるという計画だ。


 同市はすでに2010年4月から、急速に普及率が伸びているスマートフォン向けモバイル行政サービスを提供している。ソウル市の公共データベースを活用したアプリケーション開発やフリースポット拡大を目指して、“モバイル・ソウル”を進めてきた。


 同市のアプリケーション開発支援により、2010年には公衆トイレ位置情報検索アプリ、交通情報を分析してバスと地下鉄の最短移動経路を探してくれるアプリなど6つのアプリが無料で利用できるようになった。毎年2回、市民参加型でアプリのアイデア公募を実施、実際のアプリ開発はSKテレコムや民間企業に任せる方式でアプリの本数を増やしている。






ソウル市の公共データベースを活用したアプリケーションの一つで、ソウル市内の主な道路に設置された防犯カメラから交通情報を確認できる「ソウル市交通CCTV情報」



モバイル・ソウルを活性化していくためには、何よりもソウル市内全域でWi-Fiを自由に使えないといけないと判断し、情報格差をなくすためにも誰でも無料で使えるようにするべきということから、市は、市内のフリースポットを増やし始めた。無料Wi-Fiは、所得の格差でWi-Fiに加入できず、行政情報や緊急災害情報を受信できないといったことを防ぐためである。フリースポットなのでWi-Fiが使えるデバイスを持っていれば、外国人観光客でも無料でインターネットにアクセスできる。

 2010年末時点ですでにソウル市内の公共施設295カ所がフリースポットになった。これを2015年までに地下鉄車両の中、バスの中、タクシーの中へ広げる。野外のフリースポットは繁華街、公園、ショッピングセンターなど1万430カ所に拡大する。

 モバイル・ソウルをさらに高度にしてスマートシティにしていくのが今回の「スマートソウル2015」といえる。2010年末時点ですでにソウル市民の80%がスマートフォン/タブレットPC/Wi-Fiを利用しているというソウル市の調査結果を反映して、市民の利便性を高めるためにもスピードを上げてスマート化に取り組む必要があると判断したようだ。


 また、スマートフォンやタブレットPCだけでなく、スマートTV、電子書籍リーダー端末からもソウル市のアプリケーションとモバイル行政サービスを使えるようにする。モバイル行政サービスは、ソウル市がすでにネットで提供している63種類の電子申請・書類発給サービスをこれらの端末から利用できるようにするというもの。


 スマートフォンやWi-Fiを使っていない残りの20%のデジタルデバイド(情報格差)を解消するため、主婦や高齢者を対象に年間20万人ずつ5年間で100万人を教育するという計画も発表された。


 「スマートソウル2015」は、3段階に分けて進めていく。2010年に続いて2012年まではスマート基盤構築、2014年まではスマートサービス実行、2015年にはスマート高度化である。重点課題は4つで、「スマートインフラ拡充と情報格差解消」、「スマートデバイスを活用した一人ひとりのための行政、社会安全向上」、「雇用創出」と「スマートセキュリティ高度化」である。


 例えば、インフラ関連では、Wi-Fiでバスとタクシーに取り付けられたGPS信号をキャッチしてバスの到着時刻と道路状況を案内するデジタルサイネージがすでにあり、全国のバス停に設置されている。これの精度がまだ95%なので、100%近く正確に案内できるよう高度化するとする。


 社会安全という例では、ソウル市内の約1000カ所に取り付けられた防犯カメラを2015年までに1万カ所に増やして都市の安全性を高める計画もある。またこの防犯カメラの一部の映像を市民にも公開して、交通状況を確認できるようにもする。


 ソウル市内ではすでにほぼどこでも無料でWi-Fiが使える。パスワードを設定していないWi-Fi信号もたくさんあるので、スマートフォンやノートパソコンを持っていればインターネットを使うのに困ることはない。逆にあまりにも「スマート」に力を入れすぎているので、スマートフォンがないとソウルに住むのが不便になるのではないか、その方が心配だ。





趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年8月11日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110811/1034726/