[日本と韓国の交差点] スマートフォンの普及で、韓国人の生活は「TGIF」に変わった

.「Twitterをしない特別な理由があるのか?」

2010年に続いて2011年も、韓国を象徴するキーワードは「スマート」になりそうだ。サムスン経済研究所が実施した、「2011年にヒットしそうな商品」のアンケート調査では、圧倒的な支持で「スマートフォン」が選ばれた。続いて「タブレットPC」、「ソーシャルメディア」もトップ10入りした。この調査には、韓国のネットユーザー1万人以上が参加した。

 子供に「お父さん早く帰って来て!」と言われ、うれしくてお土産まで買って帰ったら、子供が待っていたのはお父さんではなく、お父さんのスマートフォンだった。


 こんな、落ち込むお父さんたちの話をあちこちで聞くようになった。スマートフォンは世代を超えて韓国人を魅了している。


 2009年11月にiPhoneが発売されたのを皮切りに、サムスン電子のGalaxyS、LG電子のOptimusなどが次々と登場した。市場は激しい競争となっている。


 韓国のスマートフォン加入者は、携帯電話キャリアの予想の3倍を超えるスピードで伸びている。キャリア各社は、2010年の加入者数を200万台前後と予想していた。放送通信委員会によると、スマートフォンユーザーが携帯電話加入者に占める割合は、2010年末には15%となった。これが、2011年の1年間に販売される携帯電話では60%に達する見込みだ。この結果、2011年末には、国民3人に1人はスマートフォンを使うことになる。


 韓国のモバイルインターネット利用率は2007年から年平均19%ずつ伸びていたが、2009年から2010年にかけては2倍近い35%も増えた(放送通信委員会)。


 それもそのはず。日本と違って韓国には携帯電話向けの勝手サイト(非公式サイトのこと。インターネットでは、URLを入力するだけでサイトを見られるのが当たり前だが、韓国ではキャリアが契約している公式サイトしか、携帯電話から閲覧することはできなかった)がなかったので、携帯電話からウェブサイトに自由にアクセスすること自体、韓国人にとっては新世界なのだ。スマートフォンの登場でこうした使い方が可能になった。


 スマートフォンを使えば料金の高い3Gデータ通信ではなく、無料のWifiでネットにアクセスできる点もうれしい。韓国ではパケット使い放題サービスが2010年8月に始まったが、それでも料金が高い。既にWifiスポットが充実しているので、パケット定額制といっても日本ほどのインパクトはなかった。



パソコンからスマートフォンへ
韓国系ポータルから世界標準ソーシャルメディアへ



 韓国人の生活はスマートフォンの影響で大きく変わった。「YahooやGoogleは使いづらい」としてNAVER、DAUM、NATE、Cyworldといった韓国企業が提供するサイトばかり好んでいたユーザーたちが、スマートフォンをきかっけにグローバルサービスであるTwitter、Google、Facebookに目を向け始めた。


 この変化を機に、韓国では、2010年以降の韓国人の生活を「TGIF」と表現するようになった。Twitter+Google+iPhone+Facebookの略で、韓国人のネット利用形態を象徴する言葉として使われている。本来は「Thanks God It’s Friday」の略で、週休2日制を象徴する言葉だが、これをもじったものだ。


 韓国で一番人気の検索ポータルサイトはNAVERで、検索では8割近いシェアを持っている。(韓国Metrixの調査、以下同)その次にDAUM、NATEが続き、Googleはいまだに1%前後シェアしかない。ところが、スマートフォンから利用する検索の場合は、NAVERのシェアが5割程度に落ち込み、その代わりGoogleが2割近くを占める。


 韓国では2000年ごろからソーシャルメディアの利用が活発になった。世界のどこよりも早く同窓会サイトが人気を集め、アバターの着せ替えチャット、簡単に個人ホームページをつくって友達とつながれるMINI HOMPYなどが人気を博した。それが今は、スマートフォンから利用しやすいメディアに人がシフトしている。韓国のソーシャルメディアもケータイやスマートフォンからアクセスできるのだが使い方が不便。ケータイやスマートフォンからは表示できないメニューもあるからだ。


 韓国の代表的なソーシャルメディアであるCyworldのページビューは2010年に33%ほど減少した。いっぽう、Facebookユーザーは3125%増加、Twitterのユーザーは1833%増加している。2010年の1月と12月のTweetの数を比較すると3400%も増加していた。



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By 趙 章恩

2011年2月2日


-Original column
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110131/218220/

「スマートフォンでもゲーム漬け」韓国の深刻~ゲーム中毒による母殺しに思う

ついこの間、釜山で中学3年生の男の子がパソコンゲームをやめるよう注意する母親を殺して自殺し、小学生の妹が遺体と遺書を発見するという痛ましい事件が起きた。家族の証言によると自殺した中学生は学校に行く、食事をする、トイレに行く以外はゲーム漬けの生活で、深夜2~3時までオンラインゲームを続けるほどの中毒状態であり、母親とトラブルが絶えなかったという。しかもこの中学生は専門機関よりオンラインゲーム中毒治療カウンセリングを受けていたにもかかわらず、ゲームをやめることができなかったという。

 ちょっと前にはオンラインゲームに夢中になって新生児を放置し死に至らせた親もいた。子どもがゲーム中毒になり、パソコンを使わないようにする親ともめて暴力をふるったり、殺人事件にまでなったり、自殺をしたりする。このような事件は毎年どころか毎月のように起きている。


 韓国の中央省庁である女性家族部は、夜12時以降、青少年がオンラインゲームをプレーできなくする強制的シャットアウトの内容が含まれた青少年保護法改定案を提案した。これが、事業者が選択的にシャットアウトするのはいいが強制して過剰な取り締まりはしない、というゲーム産業振興を担当する文化体育観光部の方針と衝突。国会で係留中である。


 ゲームを長時間すると面白くなくするシステムも導入されたが(関連記事)、多人数がアクセスして一緒にロールプレイングしてミッションをクリアしていくゲームだけに適用され、シューティングや一人でもできる戦争ゲームには適用されない。ほとんどのユーザーはオンラインゲームを種類別に利用しているので、このシステムが作動するとほかのゲームに移り、また次のゲームへ移るといった具合に1日中オンラインゲームを渡り歩くので、大きな効果が得られなかったという。


 韓国内では本当にゲームだけが悪いのか?という意見も少なくない。もうすぐ年に一度の大規模なゲーム展示会が開催されるだけに、年間1兆5000億ウォン(約1050億円)規模の輸出産業としてゲームをもっと評価してほしいという業界の主張もある。オンラインゲームといえばアジアでも欧米でも中近東でも、韓国産ゲームが人気上位にランクされているほどである。


 すべて悪いのは子どもを中毒状態にさせる「オンラインゲーム」と片付けるわけにはいかない教育問題、家族問題も潜んでいる。子どもがなぜゲームに溺れてしまうのか。それは家庭がしっかりしていないから、という分析にもつながるのだ。






キャリアのKTが実施している大学生ボランティア「ITサポーターズ」。オンラインゲーム中毒を克服した大学生が子どもたちにゲーム中毒の危険性を教える活動をしている


韓国の今年の大学受験試験日は11月18日。受験生のために会社員の出勤時間が1時間遅くなるこの日の試験成績で、その後の運命が決まる。いいところに就職するためいい大学に行くのではない。いい大学を卒業しても「就職」そのものが難しい。無職になれば、無所得の状態になってしまう。食べていくためにはいい大学、名門大学に入らなくてはならない。だから必死なのだ。

 こんな受験戦争の中、学校と塾だけを往復する子ども達の唯一の息抜きがオンラインゲームなのだ。こっそり塾をサボって行けるような場所なんてPCバン(ネットカフェ)ぐらいしかない。インターネットにつながったパソコンはどの家にもあるので、勉強以外のことがしたくても一人でできることといえばオンラインゲームぐらいだ。最近はインターネット経由で受験用の動画を見ないといけないからとスマートフォンを買ってもらい、ゲームばかりしている子どもが増え親を悩ませている。


 親がしっかり子どもの生活に関心を持って会話をし、パソコンを部屋におかないといった工夫をした家庭ではオンラインゲーム中毒がほとんど発生しなかったという研究もある。オンラインゲーム中毒になるのはゲームの問題ではなく生活の問題の方だとしたら、その方が深刻なのではないだろうか。


 失業率も高く働きづめで子どもと一緒にいる時間がない親も増えている。家族のために働いているはずが、子どもは毎日一人でゲームしかすることがない家庭を生み出している。大学に行かなくても就職できる社会、最低限の生活ができる給料、自分の才能を見つけられるクラブ活動が楽しめる学校生活、そういう環境が整えば少しはよくなるのでは?

韓国でネットのリテラシーを高めるということは、使い方を教えるというより中毒にならないための健全な使い方を身につけさせるということである。小中高校では年中、ネット上のエチケットを守ろう、著作権を守ろう、違法ダウンロードはやめよう、ネット中毒にならないため1時間以上連続してパソコンを使うのはやめようなど、外部講師を招いて特別授業を行っている。ゲーム中毒予防教室やゲーム中毒を改善するためのカウンセリングもいろんな市民団体や自治体が開催しているが、それでもゲーム中毒による殺人事件や自殺は後を絶たない。

 韓国情報化振興院が2009年実施した、9~39歳を対象にした調査結果では、ネットユーザーの8.5%がネットにつながっていなかったりオンラインゲームをしていないと心理的に不安になって落ち着かない状態になる中毒症状を見せていることが分かった。オンラインゲーム中毒カウンセリングを受けた青少年も2007年の3440人から2009年の4万5476人へ13倍以上増えている。


 省庁の行政安全部は「インターネット及びゲーム過多使用に対する危険性を知らせ、健康なインターネット文化を醸成する」のを目的に「インターネット中毒克服手記公募」なんていうのまで開催している。最優秀賞には100万ウォン(約8万円)の賞金が出る。専門家のカウンセリングも効果がないのなら、感動的な手記でやる気を出してもらうのもいいアイデアかもしれない。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年11月17日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101117/1028599/

熱気ムンムン、W杯もスマートフォンもヒートアップする韓国

「Again2002!」韓国は今年もワールドカップの街角応援準備で大忙し。ソウルではどこを歩いても赤い悪魔(公式サポーター)のTシャツを着た人や、ワールドカップを応援する企業広告に出会う。赤いTシャツや国旗をリフォームした若いお姉さん達のへそ出しルックも、ワールドカップ期間中はあまりとがめられない。企業が運営する真っ赤な応援ブースが街のあちこちに作られ、代表選手らへのメッセージで埋め尽くされている。携帯キャリアによる独自の動画サービスとして、携帯電話で見られる試合中継も決まり、後は開幕を待つのみといったところである。

 しかし、今年の夏はワールドカップに負けず熱く盛り上がっていることがある。それはスマートフォンとiPad向けのアプリケーション。「アプリ長者」の神話はまだ続いていて、学生も社会人も、話しのネタは「どこそこのアプリケーションがもうかっているらしい」、「どこそこの会社がアプリケーション市場に新しく参入した」ということばかり。スマートフォンといううずまきに全国民が巻き込まれていて、それはもう、とりつかれたような盛り上がりなのだ。ワールドカップの応援だって、スマートフォンのアプリとして応援歌が登録され、Twitterやマイクロブログを使って街角応援の日程を決めている。



スマートフォンのワールドカップ応援アプリ

 スマートフォンが生活に本格的に根付き始めた今日この頃、キャリアが中心となってぽつぽつ開催されていたアプリケーション制作教育を政府機関がまとめて無料で実施し、創作を支援するという制度が始まった。中小企業庁が音頭を取ってキャリアとベンダー、大学を集めて「アプリケーション創作支援協議会」を結成し、キャリアや携帯電話端末会社が個別に実施していた開発者向け教育をまとめて全国の大学で行うことにしたのだ(大学10校と産業振興院合わせて11機関がアプリケーション創作センターに指定された)。ここにはなんと“韓国の東大”、国立ソウル大学も含まれている。


 Android、iPhone OS、Windows Mobileだけでなく、サムスンのOSであるBADA向けアプリケーション開発教育も実施される。第1回には700人を募集し、基本教育120時間、OS別に分けて15時間の講義を行う。誰でも参加可能というわけではなく、C言語やJavaなどのプログラミングをある程度は知っている人が対象となる。地域住民が参加する「アプリケーション創作サークル」の育成も支援するというから面白い。


その昔、90年代後半のIMF経済危機でリストラされた人たちがPCバン(ネットカフェ)をオープンしてブロードバンドとオンラインゲーム普及に大きく貢献したように、今度は就職難の若い人達を個人のアプリケーションデベロッパーに育てて、スマートフォンやiPadのようなタブレットPC、WebTVなどの端末市場はもちろん、モバイル市場活性化と競争力を強化するのが狙い。


 また、ソウル市も通信事業最大手のKTと提携し、ソウル市が持つ公共DBを応用して誰もがアプリケーションを開発できるよう支援している。このアプリケーションさえあればソウルでの生活が楽しくなるといった内容のPRもしていて、優秀なアプリケーションを積極的に支援していくとしている。ソウル市の3カ所にアプリケーション開発センターをオープンし、OS別スマートフォンやテストサーバー、Appleのノートパソコンを利用できるようにするという。海外のアプリケーションストアに登録する前のテストも行い、海外進出もサポートしてくれるという。


 中央省庁の文化体育観光部と行政安全部は6月14日より政府主催のアプリケーション公募を始める。公共DBを応用したアプリケーションも審査対象となるため、自治体にも公共DBをアプリケーション向けに公開するよう呼びかけている。プログラミングは分からないけど、こういうアプリケーションがあるといいといった企画だけの応募も受け付けているので、主婦や中高生の参加も期待される。賞金総額は日本円で1000万円ほど、ホームページ(www.koreaapps.or.kr)で公開して宣伝もしてくれる。





アプリ公募を受け付ける政府の
Webサイト

政府主導でアプリケーション開発を支援し、世界を舞台にしたアプリケーション販売で利益を上げられるようにすれば、韓国のモバイル競争力も高まり同時に就職難も解決!めでたしめでたしというわけだが、そう上手くいくものかな? アプリケーションって技術よりもアイデア勝負だったりするので、プログラミングの腕よりは「ひらめき」の方が大事なのではないだろうか。そういう「ひらめき」って大学の無料講座を履修しただけでぽんぽんわき出るようなものでもないし、結局予算の無駄使いになったりして。


 筆者の懸念をよそに、デベロッパーを目指す大学生の間では「Appleのパソコンを持っていないとApple向けのアプリ開発は難しいので高いパソコンを使えるようにしてくれるのは助かる」、「サムスンのBADA向けにもApple向けにもアプリを開発できるように学校の中で教えてくれるので時間の節約になる」と好評のようだ。


 ワールドカップの応援にアプリケーションブームに、韓国の6月は熱気ムンムンです。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年6月10日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100609/1025444/

コンパニオンもアピール! 韓国最大のIT展示会、3Dとスマートフォンが目白押し

2010年5月25日から28日にかけて、韓国最大規模のIT展示会であるWorld IT Show2010がソウルで開催された。18万人が訪れた今年のテーマは「Feel IT SEE the Next」。サムスン、LG、KT、SKテレコムなど、韓国の主な情報通信企業が一堂に集まり、新製品やサービスを紹介した。

 今年はなんといっても3Dとスマートフォンが主役で、どのブースに行っても3Dテレビとスマートフォン、それに合わせたコンテンツとサービスが展示されていたほどである。


 普通の絵本に見えるのに、スマートフォンのカメラをかざすと3Dのキャラクターが登場して絵本の一場面を演じるものや、3Dで臨場感あふれるオンラインゲームとノートパソコンを展示したコーナーは人だかりで近寄れないほどだった。



3Dテレビのタワーがぐるぐる回っていたサムスンのブース


 サムスンは3Dキューブといって、55インチの3Dテレビを9台ずつ四角いタワーのように積み上げ、360度ぐるぐる回転させていた。4つの面からはそれぞれ違う3D映像を流していた。専用のメガネをかけて口をぽかんと開けて3Dテレビに夢中になっている観覧客を見るのも面白かった。会場にはメガネなしでも楽しめる3Dテレビもあった。これからはテレビに限らず、パソコンやスマートフォン、携帯電話も3Dコンテンツで勝負することになりそうだ。Googleテレビに負けない機能てんこ盛りのスマートテレビも展示していた。IPTV、3DTV、スマートフォン、すべてのデバイスから利用できるようにするというアプリケーションストア「サムスンAPPS」にも力を入れている様子。


 韓国の3Dテレビ技術は世界最強と言われているそうで、グーグルがテレビのエンジニア探しにWIS2010にやってきたことも話題になった。


 サムスンが独自に開発したOS「BADA」を搭載したスマートフォン「WAVE」や、日本でもNTTドコモから発売される予定の「ギャラクシーS」も展示され、大変なにぎわいを見せていた。サムスンもLGも「打倒iPhone!」とばかりに強烈なパワーで次々にスマートフォンを発売しているが、訪れた客の多くは「やっぱりiPhoneの方が使いやすいかも」という微妙な反応を見せていた。


韓国の3大IT輸出品目は半導体、ディスプレイ、携帯電話端末である。ところが、韓国の経済産業省にあたる知識経済部の「2010年5月輸出入動向」によると、iPhoneが発売されてから韓国産端末の輸出は前年同期比で29.2%減り、iPhoneをはじめ海外メーカーの端末輸入が128%増と大きく伸びている。韓国産の携帯電話はまだフィーチャーフォンが中心なので、世界の動向からしてこれからスマートフォンの割合を伸ばさないと収益は落ちるしかない。そのためどのメーカーもスマートフォン一色、必死になっているのだ。


 最大キャリアのSKテレコムはAndroidを搭載したスマートフォンを前面に出し、KTのiPhoneと競争。緑色をした巨大なアンドロイドのキャラクター人形に真っ赤なワールドカップのTシャツを着せてアピールしていたものの、インパクトがありすぎてちょっと不気味だった。SKテレコムは「アルファライジング」といって、キャリアでありながらも通信以外の分野で収益を上げるとしており、アプリケーションやスマートフォンを利用したモバイルオフィスなどB2Bにも力を入れている。


 KTはあえてiPhoneよりも、モバイルインターネットを使った多様なサービスを宣伝する展示にしていた。ICカードを利用する子供向け小型教育ロボットも注目を浴びた。ICチップが内蔵された絵本を目の前にかざすと読みあげてくれる。お母さんと書かれたICカードをロボットにかざすと、登録されたお母さんの携帯電話につながりロボットを利用してテレビ電話を利用できる。ロボットは防犯カメラ機能もあり、携帯電話から遠隔操作もできるので、共働きの親が一人で家にいる子供の様子を見守ることもできる。最近力を入れている電子ブックやIPTV、地域連動生活情報サービス、Wibroを無線LANの信号に変えてくれるEggも展示された。でもやっぱり一番人が集まったのはiPhoneを使って演奏するバンドが登場した時だったのを見ると、まだまだ「iPhoneショック」は続いているようだ。


 2010年はワールドカップが開催される年だけに、公式サポーターである「赤い悪魔」のTシャツを着た企業のキャラクターやイベントコンパニオンのお姉さん達が目立っていた。日本では展示会のイベントコンパニオンといえば女性というイメージが強く、展示会に出品された製品ではなく彼女たちの写真を撮りまくっている男性をよく見かける。一方、ここWIS2010ではモデルのようなイケメンが新機種のスマートフォンやノートパソコンを説明してくれるブースも登場した。


 IT展示会といっても市内の繁華街で開催されるのでアクセスがいい。そのせいか、高校生や大学生の団体、家族連れ、ランチタイムを利用して遊びに来た感じのOLや買い物途中の主婦など、入場者の年齢も職業も幅広い。女性客が多いだけにイケメンがやさしく使い方を教えてくれる新製品の宣伝は効果的だったかも。


 展示会は来年も5月に開催される予定なので、世界が注目する最先端のIT製品はもちろん、市場のように活気あふれる韓国ならではのWIS2011を見学してみるのはいかがでしょうか。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年6月3日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100603/1025288/

「無料Wi-Fi設置」が選挙公約にまで! スマートフォン競争第2幕

日本でもNTTドコモやKDDIからスマートフォンが発売(KDDIは6月上旬以降)され、アプリ長者という言葉もちらほら登場するようになり、スマートフォン競争の幕開けといった雰囲気を感じる。しかし、なんでも「パリパリ」(早く早くという意味の韓国語)の韓国では、スマートフォン競争も既に第2幕に突入している。

 発売から100日で40万台が売れたiPhoneは2010年4月末で60万台を超え、サムスンやLGなどの端末を含めると、韓国のスマートフォン加入者は180万人を超えている。携帯電話全加入者の3%程度ではあるが、今年だけでもキャリア3社から20種類以上のスマートフォン発売計画が発表されているだけに、普及は加速すると予想される。


 2009年秋の「iPhoneショック」に端を発し、以降、端末ラインアップ競争、アプリケーション競争と続き、5月からはWi-Fi(無線LAN)スポット確保競争へと突入した。


 これからスマートフォンやiPadのようなタブレットPCがさらに普及すると、何よりも高速で利用料の安いモバイルブロードバンドの需要が出てくる。4Gが普及すれば固定では1Gbps、移動しながらも100Mbpsが使えるという。3.9GとしてLTE(Long Term Evolution、2010年の商用化を目指し進められている移動体通信仕様。携帯電話でも大容量データ送受信が可能になると期待される)、Wibro(韓国が世界標準を持つモバイルWiMAXサービス)に力を入れているキャリアだが、今のところはそれよりも無料で誰でも利用できるWi-Fiスポットを確保することが競争キーワードになっている。キャリアの3Gネットワークでインターネットを利用することもできるものの、料金制に応じて利用できるデータ容量の上限がある。上限を超えた分のデータ通信利用料はとても高く負担が大きいため、ユーザーは無料で制約のないWi-Fiを利用したがる。


 Wi-Fiスポットが最も多いのは1万3000カ所を構築したKT。iPhoneをはじめKTのスマートフォンユーザーだけが無料で利用できる。韓国最大キャリアのSKテレコムは、年末までにどのキャリアの加入者も無料で使えるWi-Fiスポットを1万カ所に構築することを発表した。Wi-Fiスポットが少ないことがネックとなっていたSKテレコムは、オープンなネットワーク環境を構築するという太っ腹戦略で「スマートフォン=KT」の雰囲気から「スマートフォン=SKテレコム」へと反転を狙っているようだ。


 一定の場所でしか使えず、移動しながら利用できないというWi-Fiの問題を解決するため、Wibroネットワークをバックホールに使い、移動しながらも最大7つのデバイスを途切れることなくインターネットに接続できるようにするという。移動中に固定ブロードバンド並みの高速でインターネットが利用できるWibroは、既に首都圏と大都市にネットワークが構築されていて、KTからはWibroをWi-Fiの信号に変えるコンバーターも発売されている。このコンバーターがあれば、Wibroモデムが搭載されていないiPodやスマートフォンからも利用できるようになる。


 SKテレコムの無料Wi-Fiは、映画館、ショッピングモール、駅、空港、主な繁華街(街角)、レジャー施設、ファミリーレストラン、カフェ、ファストフード、美容院など、10~30代がよく集まる場所を中心に構築される予定だ。

一方、KTも負けじと年末まで1万4000カ所を追加して全国2万7000のWi-Fiスポットを構築するとしている。Wi-Fiの海外ローミングも始めた。しかし同社はWi-Fiスポット構築には当然お金がかかるので、他キャリア加入者にまで開放することはできないとする。Wi-Fiを無料で利用できるスマートフォン料金制もかなり高額で、もっとも安いプランであっても月4000円程度は払わないといけない。SKテレコムの「誰でも無料」発表に触発されてKTもWi-Fiを全面開放するかどうか、期待が高まっている。

 SKテレコムには、KTの高い料金制度に縛られている加入者に自社のWi-Fiを使わせることでKTの収益を落とすという戦略もあるようだ。ただ、これでは共食いになり、勝者のいない競争になってしまうのではないか心配だ。無料ということでセキュリティーが疎かになったり、メンテナンスも適当にやってしまったり、そんなことがないといいのだが。


 激化するこのWi-Fi競争はキャリアだけでなく、選挙にも影響を与えている。6月の地方選挙を前に、「地元に無料Wi-Fiを!」という公約まで飛び交っているほどだ。スマートフォンやノートパソコンさえあれば、どこでもシームレスにモバイルインターネットが使えるよう、自治体が無料で利用できるWi-Fiスポットを構築するという公約も打ち出しているのだ。


 既にソウル市の江南区は、江南駅周辺に建てられたデジタルサイネージをWi-Fiスポットにしている。自治体の住民サービスの一つとして建てられたデジタルサイネージなので、江南駅周辺ではスマートフォンやノートパソコンがあれば誰でもネットに不自由することはない。


 IT政策を担当する省庁の放送通信委員会には、無料でWi-Fiが使える地域を表示したマップを配布するという計画まである。国民が望むのであれば、より安く便利にインターネットを利用できるように支援するのが政府の役割ということである。


 スマートフォン競争はさらに第3幕へと進んでいる。KTはついに2G(CDMA)サービス中断を発表した。周波数再編という理由のほか、加入者の約16%が利用している2Gサービス向けCDMAネットワーク維持費用が年間100億円近くかかるため、2011年下半期から2Gサービスを中断。W-CDMAと3.9G、4Gへと移行し、端末もスマートフォン中心にするというのだ。もちろん、ユーザーは大反発しているが、お構いなし! ばっさり切り捨ててしまうところが韓国らしいというか、選択と集中、果敢な決断力を持っているというか。これも「パリパリ」精神か。


 スマートフォンに触発された韓国通信界の激変はまだ当分続きそうだ。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年5月13日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100513/1024865/

アンドロイド端末発売で韓国もスマートフォン時代

韓国最大手の携帯電話事業者SKテレコムは2月10日、米グーグルの携帯OS「Android(アンドロイド)」を採用した米モトローラ製端末「Motoroi」を発売した。韓国スマートフォン市場は、アップルの「iPhone」とマイクロソフトの携帯OS「Windows Mobile」を搭載する韓国サムスン電子の「OMNIA」シリーズが競い合っているが、アンドロイド携帯が加わることで、一段と選択肢が広がってきた。(趙章恩)

 韓国では昨年11月に通信トップのKTがiPhoneを発売し、スマートフォンへの関心がにわかに高まった。そのiPhoneの勢いを止めようと、SKテレコムはアンドロイドのキャッチフレーズとして「オープンとシェア」「利便性と拡張性」を掲げ、「Androboi」というキャラクターを登場させたキャンペーン広告も大々的に展開している。





韓国SKテレコムが発売した米モトローラ製のアンドロイド端末「Motoroi」


■韓国版ワンセグも視聴可能


 モトローラ製端末のMotoroiは、iPhoneより大きい3.7インチのタッチパネル液晶に800万画素カメラ(iPhoneは300万画素)を搭載する。また、iPhoneが対応していない韓国版ワンセグの地上波DMBも受信可能なほか、FMラジオ機能が付き、バッテリーも着脱交換できるようにしている。


 ユーザーの関心は高く、ネット上でユーザーが教え合う「知識検索」やブログでは、「どっちを買うべきか」の議論が盛んだ。「Motoroiの方が画面が明るく、マルチタスクでワンセグもあるからお勧め」という意見もあるが、今のところは「タッチ方式の便利さや使いやすさではiPhoneが上」という評価の方が多い。


 これには韓国では国産ポータルサイトの「NAVER」「DAUM」が強く、グーグルの人気が今ひとつという事情も働いているようだ。アンドロイドはグーグルの機能をスマートフォンから利用できることがセールスポイントだが、これがまだ十分に訴求力を発揮していない。アプリケーションの数もアップルのアプリ販売ストア「APP Store」に比べて圧倒的に少なく、3月からはグーグルの「Android Market」に加えて、SKテレコムのアプリストア「T Store」も使えるようにする。





■サムスンもアンドロイドで巻き返し


 それでも韓国では、携帯電話業界だけでなくコンテンツやeコマース業界までがアンドロイドに注目している。それはMotoroiを皮切りに、アンドロイド携帯が一気に増える見通しだからだ。


 SKテレコムは10年に15機種のスマートフォン発売を予定しており、そのうち12~13機種がアンドロイド携帯になるという。KTも10年にアンドロイドを含む10機種のスマートフォンを投入する方針。サムスン電子も3月にアンドロイド携帯を発売する。韓国ではOMNIAシリーズでiPhoneと人気を二分しているが、世界のスマートフォン市場ではまだサムスン電子らしいといえる実績がない。そのため、自社OSである「BADA」とアンドロイドで巻き返しを図ろうとしている。


 韓国のスマートフォン累計販売台数は全機種を合わせて100万台前後。そのうち、iPhoneが約3分の1程度とみられる。しかし、SKテレコムは10年に200万台、KTは180万台のスマートフォンを販売する目標を立てており、実現すれば加入者の約10%に当たる500万台前後に膨らむ。シェア争いはまだ始まったばかりだ。


 ソウルの街中を歩くとスマートフォンを持っていない人はいないように見えるほどだ。iPhoneをきっかけにスマートフォンブームが巻き起こったおかげで、韓国は長年の課題だったモバイルインターネット利用率も大幅増加した。その急速な変化は、1998年のブロードバンドブームのように、韓国の産業構造や社会を大きく変えるうねりとなって広がろうとしている。



– 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  
[2010年2月22日]
Original Source (NIKKEI NET)
http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx?n=MMIT13000022022010

2G対応スマートフォン魅力向上でWi-Fi競争が激烈に

韓国の移動通信事業者であるKTとSKテレコムは第3世代(3G)に限らず、第2世代(2G)対応スマートフォンからも無線LANを利用して自由にインターネットにアクセスできるようにすると発表した。

 SKテレコムは、米グーグルが開発した携帯電話向けOS「Android」を搭載するモトローラのスマートフォンを2G向けにも発売するとしている。中国で2008年12月に発売されたXT800と同じモデルで、3.7型WVGAタッチスクリーン、Android 2.0、GPS、500万画素カメラ、LEDフラッシュ、Wi-Fi機能を搭載する。これに地上波DMB(韓国のワンセグ)が追加される予定。KTも3G対応スマートフォン10種のほかに、無線LANを利用できる2Gスマートフォンを15種発売するとしている。


 データ通信サービスを利用する3Gは「高仕様」、音声通話中心の2Gは「低仕様」、という区別はなくなってきている。2Gでもタッチスクリーン、大画面、高画素カメラを搭載する“プレミアム携帯電話”としてスマートフォンが人気だ。代表的な機種はサムスンのHapticシリーズである。


 韓国では3Gに機種変更すると電話番号を変えないといけない理由から(局番は011、017、016、018、019から010へ、3桁+4桁の電話番号が4桁+4桁になる)、2Gに固執するユーザーが根強くいる。2G対応の高仕様・高価格端末は3Gに比べ奨励金が少ないので端末価格は高くなってしまうが、それでも番号を変えたくないユーザーに受け入れられている。



問題はWi-Fi接続の未整備



 3Gのスマートフォンに限らず、2G端末からも無線LANが利用できるようになったことで、通信事業者の間では端末やコンテンツ競争以上に、「無線LANサービスエリア競争」が始まっている。


 韓国の通信事業者は家庭向け有線ブロードバンドとW-CDMAにばかり集中していたため、屋外の無線LANのアクセスポイントは増えるどころか減少していた。2004年まで首都圏のどこでもKTの無線LAN電波が届いたが、加入者の伸び悩みを理由にだんだんとアクセスポイントが減り、2008年ころになるとすっかり自宅でしか使えない無線LANサービスになってしまった。そのため、街中でノートパソコンやiPodからインターネットにアクセスしたい場合は、パスワードを設定していない誰かの無線LANモデムに接続するしかなかった。


 無線LANスポットが少ない分、無線LAN対応の良しあしがスマートフォンの選択条件の大きな一つ。KTが独占販売するiPhoneに加入すればKTの無線LANを利用できる(無料)。一方、SKテレコムのOMNIA2(サムスンのスマートフォン)に加入すると利用できる無線LANスポットがKTより少ない。スマートフォンは移動通信事業者3社から発売されているため、無線LANのスポットが多く使えるスマートフォンが当然便利である。



KTは「ただ乗りやめて」



 KTは現在1万3000ある無線LANスポットを2010年内に2万7000に増やす計画だ。SKテレコムはカフェやレストランなどを中心にフリースポットを増やす方針である。同社は無線LANスポットを持っていないため、提携先の無線LANモデムをフリースポットにしてもらうことで、スマートフォンやノートパソコンを使う人は誰でも無料でインターネットにアクセスできるようにするという。


 一方、ほかの通信事業者より早くインターネット電話サービスを始めたLGテレコム。約200万世帯がLG系列のブロードバンドと無線LANを使ったインターネット電話サービスを利用している。加入者宅にある無線LANモデムにパスワードを設定しない方法でフリースポットとして利用できるのではないかという話もあったが、個人が利用料を支払う無線LANを、スマートフォンへのサービスのために通信事業者がフリースポットにしてしまっていいのか、議論がある。接続速度が落ちるだけでなく、同じネットワーク上に知らない人がつながることでデータハッキングの可能性もある。


 KTの無線LANに加入するカフェやレストランが、モデムにパスワードを設定しないことでフリースポットとして無線LANを使えるようにすると、当然、KTの無線LAN加入者数は伸びていかない。自社の投資にSKテレコムやLGテレコムが便乗することになるため、KTは、「ただ乗りするなんて許せない」、「セキュリティのためにも家庭や企業の無線LANモデムにパスワードを設定してほしい」と訴える。


 スマートフォンのほかにも無線LANを利用できる電子ブックリーダーが次々に発売され、iPadのようなタブレット、無線LANを利用するモバイルVoIPも続々登場している。韓国通信事業者による、無線LANのアクセススポット数増加やサービス向上競争の激化は免れず、4G商用化まで続くとみられる。



(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年2月4日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20100204/1022688/

国中がiPhoneに夢中! スマートフォンの料金値下げ競争が勃発

ついに2009年11月28日、韓国でもiPhoneが発売された。韓国最大の通信会社KTから発売されただけにインパクトは大きい。

 予約販売初日だけで2万人が殺到し、1週間もしないうちに6万5000人がiPhoneを予約した。11月28日には予約者1000人を招待したイベントが開催された。


 韓国で最初にiPhoneを手に入れたのは26歳の男性で、27日から27時間待って第1号になった。KT社長とおそろいのiPhone Tシャツを着て、仲良く手をつないでイベント会場に入場。時の人となった。1年間の無料通話と約1万5000円のiPhone専用スピーカーが贈られた。




KTのキム・ウシク社長(左)と韓国iPhone第1号を手に入れたホ・ジンソクさん


 会場では待ちに待ったiPhoneを受け取り感激するユーザーで奇声歓声の大騒ぎとなった。地上波DMB(韓国のワンセグ)が利用できない、ユーザーがバッテリーを交換できないといったことが指摘されたが、そんなのは全然問題にならない様子だ。日本とは違い、タッチ式でメールを打ち込むのが不便というユーザーはいなかった。


 ブログなどに書き込まれたiPhone自慢をみると、「とにかく大満足!」といったユーザーばかりだった。会社で机の上にiPhoneを置いたら通りがかる人みんなに「どこで買って、いくらだったのか」と質問攻めにされた、女性社員らに囲まれ「見せて! 見せて!」とねだられたなどなど、iPhoneを手に入れてからの急モテぶりを伝えている。


 iPhoneが韓国でここまで注目される理由はやはり豊富なアプリと、2年約定のスマートフォン定額制に加入すると、料金の高いデータ通信ではなく無料でKTの無線LANを利用できるからだ。スマートフォン定額制は月3万5000ウォン(約2600円)から9万5000ウォン(約7200円)で、料金に応じて3GS 16GBまたは3G 8GBの端末を無料でもらえる。


 公式サイトしか利用できずデータ通信料金も高かったため、モバイルインターネットがなかなか普及しなかった韓国。使い放題のパケット定額制はLGテレコムにしかなく、他のキャリアは従量制だったためデータ通信料金のトラブルが絶えず、携帯電話からネットにアクセスするのが怖かったのもある。


これでやっと本当の意味でのスマートフォン生活が始まる。KTの無線LANは全国に1万3000のアクセスポイントがあり、その他にフリースポットもあるので、主な都市ではどこにいてもネットにつながる。iPhone向けのスマートフォン定額制も安くはないが、その代わり無線LANでメッセンジャーやSkypeを使えば携帯電話の通話料を低く抑えられる。


 既にiPodを使って無線LAN経由でメッセンジャーやモバイルVoIPを利用しているユーザーも多い。iPodの便利さに慣れてしまった人達はさらに進化したiPhoneが待ち遠しかったようだ。iPhoneの登場で24時間オンライン状態にしてつぶやきまくる、TwitterのようなモバイルSNSの利用も急増するだろう。


 この夏からキャリアとベンダーが力を入れているアプリ配信サイトのアクセスも急激に伸びた。実際にアプリを購入するユーザーはまだ少ないが、関心は高い。個人もアプリを制作して販売できるマーケットができたことで、キャリアごとに、さらにカテゴリー別にあったマスターCPを通さないと携帯電話向けにモバイルコンテンツをサービスできなかった閉鎖的構造を脱皮し、パソコン向けデジタルコンテンツ市場の10分の1に過ぎなかったモバイルコンテンツ市場も大きな成長が予想される。


 KTはiPhoneを無料で提供するため一人当たり約7万円の端末購入補助金を支給している。その他キャリアは市場シェアを守るため通常新規加入に限って一人当たり2万~3万円ほど支払われていた補助金を同じく7万円以上に増やし、データ通信や基本料も値下げしている。既存加入者の離脱を防ぐため、懸賞イベントや長期加入割引、加入者同士の無料通話時間も増やしている。


 安く買えるのは嬉しいが、iPhoneが販売される直前にサムスン電子や他のメーカーのスマートフォンを購入したユーザーはがっかり。補助金をもらっても3万円はした端末が、数日の差で無料になったからだ。


 一部では、iPhoneの端末そのものの性能は韓国産のスマートフォンより劣る、カメラの画素数も低い、画像も荒い、それなのに何故ここまでiPhoneを持ち上げて騒ぐのかと批判する意見もある。しかしiPhoneは韓国移動通信業界を変えるシンボルのような存在であると評価してもいいだろう。iPhone販売をきっかけに、韓国の移動通信産はネットワーク、コンテンツ、プラットフォーム、デバイス、料金競争、全てにおいて「開放」がテーマとなっている。MVNOで金融、医療、物流など、色んな産業の事業者らが移動通信を利用したサービスを準備している。


 今のところは、ネットブックを持ち歩かなくても自由にインターネットが使えるという解放感だけでもiPhone売れる理由は十分といえそうだ。




(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年12月3日

-Original column
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