韓国 2015年、ネットで香りも送信(2007年3月26日 掲載)

 2015年、ネットで香りも送信


 



IT技術予測2020」で明らかに


 




【ソウル】情報通信部は2月27日、未に必要なIT技術需要と現時期を予測した「IT技術予測2020」を表した。



 今回の調査は情報通信部が未
IT略構想として表した「ACE IT略」を技術的点から具体化し、略的なIT究開のための事前技術企活動の一環として推進された。これまで科技術分野の予測は何度か行われたが、IT分野に特化した調査はこれが初めてだ。


 


 今回の調査は政府のITにするR&D企管理である情報通信究振興院が主管し、IT分野の産・学・研門家3500人余りが加した。


 


 コンテンツ、プラットホム、ネットワク、端末、融合の5つの分野で計365のIT技術ニズが掘され、技術の重要度、現時期、技術需要、技術開先などを分析して、52の中核IT技術を選定し現時期を展望した。


 


 調査結果によると、52のIT技術の76.9%が11年まで開され、13年には75%が市場に普及、17年までには100%が開を完了すると予測された。技術開と市場普及の間に平均2.1年の格差があり、19年頃には中核技術のすべてが用化されると展望している。


 


 一度の充電で2か月以上使える携電話と、体に付けたセンサで健康態や感情の起伏などを自動感知し健康管理機器を動作させる技術は、12年には開される。インタネットのピザ店の告をクリックするとピザをく匂いががって食欲を刺激することができる技術と、人工筋肉によって超人的なパワが出せるデジタル軍服は15年に、療用ロボットが血管を掃除し手術をする技術18年に、3D映像保存用メガネで3次元映像の送信ができるのは14年にと、それぞれ開が予想される年が明らかにされた。


 


 情報通信部は調査結果をIT技術ロドマップに反映し、2年ごとに予測調査を施する計だ。


趙章恩(チョウチャンウン=ITジャナリスト)



BCN This Week 2007年3月26日 vol.1180 載] Link 


 


 


 

韓国 ネット利用増えても新聞は健在(2007年4月9日 掲載)

 ネット利用えても新聞は健在


 


 


「情報化態調査」で明らかに


電話はSMS利用が主流


 


 


【ソウル2006年下半期「情報化態調査」の最終報告書によると、韓10人に8人は「ネットの利用時間はえたが、新聞をむ時間には化がない」と答えた。情報化態調査報告書は韓インタネット振興院が2回表しているもので、06年下半期は全1万世2万5727人が調査象となっている。


 


 調査によると、ネットユの多くはインタネットを利用する時間がえた一方で、テレビの視時間が減っていると答えた。ネット利用による日常の化にする質問にして75.1%が新聞をむ時間には化がないと回答し、1.4%は逆にえたと答えた。ネットの浸透で新聞をまなくなったと答えたのは、23.5%に過ぎなかった。ちなみに、新聞をむ時間は週平均3.8時間で、管理職は4.4時間、事務職は3.9時間となっている。


 


 6以上の民のインタネット利用率は前年比2ポイント加して74.8%、インタネットの平均利用時間は前年比0.4時間えて、週平均13.7時間だった。


 


 また、小中高校生のインタネット利用率はほぼ100%であった。小生の利用率をみると、99年の13.2%から00年は51.8%と半を超えたのを境に加速し、01年88.4%、02年91.3%、03年93.5%、04年97.4%、05年97.9%、06年98.8%と着加した。今回の調査では、中生は99.9%、高校生は99.6%の利用率であった。ネット利用の低年化も著で、3-5の利用率も51.4%、5の利用率は68.7%に至っている。


 


ネット利用とテレビ視時間の係については、36.9%がテレビ視時間が減ったと回答、61.5%は化なし、えたと答えたのは1.5%だった。


 


の携電話普及率は76.6%で、6-19の子供と少年は一日平均53件のSMS(ショトメッセジ、韓ではキャリアに係なくショトメッセジを送信できるので携ル代わりに使われている)を送信していることが分かった。20代は1日22.7件、全体平均16.7件、SMS利用率は78.5%だった。


 


 携電話の利用は女性より男性のほうが比率は高く、女性71.8%、男性81.4%、平均76.6%となった。携電話利用率は20代が最も高く97.6%、30代が95.7%、40代は91.6%だったが、6-1943.3%、60以上は49.9%とやや低めとなった。これは校で携電話の持ちみを禁じているケスが多いためとみられる。


 


 1世帯当たりの月平均通信費は12万5600ウォン(約1万6000円)で、このうち携電話料金が8万3000ウォンと最も大きなウェトを占めている。


 


 電子メルとインスタントメッセンジャの利用率はそれぞれ92.5%、47.7%だった。ブログにしては、39.6%が自分のブログを運していると答えた。20代は68.2%、40代は17.9%、50代でも13.0%がブログを運している。またネット利用者の37.9%、銀行に口座を持っている人の44.8%がインタネットバンキングを利用し、ネット利用者の5.4%、株取引をする人の74.0%はオンライントレドを利用している。


 


 韓における民のIT依存度は、高まる一方だ。



趙章恩(チョウ
チャンウン=ITジャナリスト)



BCN This Week 2007年4月9日 vol.1182 載] Link 


 


 

新兵生活も公開、韓国の賢い軍生活にはネットが必須品 [2007年7月4日]

韓国の男性がどうしても避けられないもの、それは2年間の徴兵だ。自ら申請して海軍(2年2カ月)か空軍(2年3カ月)に入隊するか、または試験を経て学生将校(ROTC)や米軍基地で勤める(KATUSA:Korean Augmentation Troops to United States Army)もあれば、普通に身体検査の結果によって現役(陸軍)か公益要員になるか、期間は3年と長くなるがIT企業に勤務する方法もある。どっちにしても30歳になる前に行かなくてはならず、徴兵を済ましていないと海外旅行や留学の手続きが難しくなる。

 もちろん徴兵を免除される人もいる。両親が亡くなった一人息子、両親が60歳以上の一人息子、2代続けて一人息子、養う家族が3人以上いる場合。そのほか、心臓病、右手の人差し指がない(銃が撃てない)、肥満、痩せすぎ、視力、精神病、性転換など身体検査の結果によっても免除されるが、正当な理由で免除されたとしても韓国で軍を体験していない男性はとても肩身が狭い。


 韓国の女性が最も聞きたくない話は軍の話、サッカーの話、軍でサッカーした話というほど、韓国男性の軍での苦労話は終わることがない。男性同士でも軍で苦労した話で盛り上がり、一体感を感じるようで、免除された人は仲間に入り辛い。同じ部隊にいた同期は戦友として一生の友達になるし、社会人になってからも頼りになる人脈だ。


 韓流スターと名高いソン・スンホンは筋肉マンとして人気を集めながら軍を免除され大変な騒ぎになったが、後でワイロを渡して免除されていたことが発覚し芸能界引退、一生憎まれ者になるのではないかといわれていた。今年ソン・スンホンは無事除隊し、日本で積極的にファンミーティングなどをやっているが、韓国ではまだ風当たりは冷たい。


 5年ほど前には人気歌手で同じく筋肉マンのユ・スンジュンが「僕は大韓男児として海軍に入隊します!」と言いながら国籍をアメリカに変えて徴兵を逃れ、大問題になったことがある。ユ・スンジュンは嘘つきと社会的にバッシングを受け韓国政府も入国拒否者のリストに登録して空港で送り返したこともあった。彼は今でも韓国芸能界には復帰できていない。いい例もある。日本でも有名なクォン・サンウ。彼は芸能界デビュー前に徴兵を済ませた。新兵教育助教として凛々しく勤める当時の写真がネットに出回り、高感度が急上昇した。


 避けられないなら楽しめと、どうせ入隊するのなら賢く軍生活をしたいと大学生の間では徴兵情報を集めたネットコミュニティや関連書籍が大人気、ウィキペディアのように口コミ軍隊辞典のようなものも登場している。


 軍でもこれから入隊する大学生や新兵の家族のために、軍生活を一部ネットで公開し始めた。陸軍はポータルサイト「DAUM」に「陸軍は我々の友達」というコーナーを作り、部隊別3435ものコミュニティを開設している。


 中でも訪問者数が多いのはウルジ部隊のコミュニティだ。2006年4月のオープン以来、毎日2000人以上の家族や友人が訪問しては手紙を書き残している。コミュニティの掲示板に登録された手紙やメッセージはプリントして毎日就寝前に兵士達に渡される。平日は300~400件、週末は500~600件の手紙が登録されている。家族のために兵士達の軍生活を収めた写真も毎日アップデートされている。韓国も一人っ子が多いので、大事な自分の子供が寂しがりはしないかと毎日何通も手紙を残す熱血ママ達が主な訪問者だ。軍生活の疑問に答える掲示板もあり、訓練の内容や食事の献立、部隊周辺の天気に至るまでママ達の質問はきりがない。


 空軍は「将兵生活白書」というWEBマガジンも制作している。「初めての休暇、彼女と並んで歩くとき、つい左、右、と足をそろえて歩いてしまった」、「軍隊に入る日、泣いていたお母さん、でも4回目の休暇、家に戻ると家族は誰もいなく『また休暇なの?』と言われた」などの経験談をコミカルに写真とセリフでマンガのように制作したもので、彼氏が入隊した若い女性やお母さん達に人気だそう。


 部隊内にPCバン(インターネット喫茶のような場所)があるところも増えた。除隊後のことを考えEラーニングで資格を取ったり、自分のブログを管理したりと、社会と断絶されることはない。軍の面会も以前は月に一度部隊を訪れないと出来なかったのが、この頃はTV電話や画像チャットを利用して毎日できるようになった。


 軍に行きたくないとただ嘆くのではなく、2年を有効に過ごそうと一生懸命訓練に参加してダイエットに成功、筋肉もりもりのスポーツマンに変身した人のこともよく紹介される。陸軍にはダイエット部隊もあるそうだ。


 北朝鮮とまだ休戦状態なのに軍隊を軽く考えすぎていると懸念する声もあるが、軍を忌避せず自分の人生のために必要な場所と認識してくれる明るい軍隊文化の方が戦闘力もよくなると思う。


 次回は軍に行った彼氏を待つ彼女達のための特別なネットビジネスを紹介しよう。


  • ポータルサイト「DAUM」
  • 韓国陸軍ウルジ部隊のコミュニティ
  • 韓国空軍将兵生活白書


  • (趙 章恩=ITジャーナリスト)

    日経パソコン

    -Original column
    http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20070703/276540/

    「3アウトでサイト封鎖」韓国に吹き荒れるネット規制旋風



     韓国では、米国産牛肉の輸入再開をめぐる抗議デモの拡大を契機に、インターネットの規制を強化するための法改正や新法の検討が次々に進んでいる。その多くは表現の自由にかかわりかねない内容だけに、ネット業界やネットユーザーに「過去への逆戻りか」と危機感が広がっている。

    ■規制強化はポータルサイトへの報復か


     国家安全とセキュリティーを担当する行政安全部、インターネット政策を担当する放送通信委員会、コンテンツ産業と著作権を担当する文化体育観光部などが6月以降、相次いで新しいネット規制法案を発表した。内容は、インターネット上の情報保護を目的とした総合対策法案、ポータルサイトを言論として規制する新聞法改正案、違法コピーファイルの掲載で3回以上の処分を受けたサイトを強制閉鎖できる「スリーアウト制度」を導入する著作権法改正案、名誉毀損や虚偽の事実への対応を強化するサイバー侮辱罪など。これらはいずれも表現の自由より規制の強化を優先したと受け取れる内容となっている。









     行政機関がこのように一致団結してインターネットを規制しようとしているのは、米国産牛肉問題でデモに参加するよう扇動するような書き込みを自由にさせていたポータルサイトへの仕返しではないかと受け止める人が少なくない。ネットの書き込みで政府批判に火がつき、輸入反対集会が反政府集会に拡大して大統領の支持率まで下落したことと、今回のネット規制が無関係とは誰が見ても考えにくいだろう。


     例えば新聞法改正案では、ポータルサイトがトップ画面で50%以上の割合でニュースを掲載している場合は言論機関としての義務と責任を負うことになる。逆にそれが50%未満の場合は、サイト内でニュースはおろか検索やコメント機能も提供できなくなる。つまりポータルサイトが今までどおりニュースを提供して多くの読者のコメントを集めるには、初期画面に50%以上ニュースを掲載し、新聞法の規制を受け入れるしかない。事業者にとって選択の余地がない厳しい改正案である。


    ■著作権法の罰則をさらに強化

     7月16日に文化体育観光部がまとめた改正著作権法案では、スリーアウト制度の条項をめぐってインターネットサービス業界との間で対立が起きている。


    政府の説明によれば、今回の著作権法改正は既存の著作権法にコンピュータープログラム保護法を吸収し、著作権委員会とコンピュータープログラム保護委員会を統合して韓国著作権委員会を設立することが主な目的とされている。しかし昨年の改正で罰則規定が強化されたばかりにもかかわらず、今回さらに罰則を強化しようとしており、政府の説明を言い分どおりに受け止める人は少ない。







     現行の著作権法では、違法コピーファイルを掲載すると5年以下の懲役または5000万ウォン以下の罰金が科される。改正法案では、さらに、繰り返し違法ファイルを転送・登録する利用者に対する利用停止及び解約、違法ファイルを掲載するサービス提供者(P2P、ストレージサービス、ポータルサイトなど)のアクセス遮断などの罰則が盛り込まれた。ユーザーが著作権侵害にあたるファイルの転送や流通の中止命令に従わない場合、行政機関はユーザーのID停止または解約をサービス提供者に命じ、これに従わない場合は罰金が科される。


     文化体育観光部の調査によると、インターネット上の違法コピーファイル流通による著作権侵害は、全著作権侵害の94.5%、映画、音楽、出版だけで約2000億円近い金額となっている。ここにソフトウエアの違法コピーを含めると大変な数字になる。著作権保護という観点でいえば、こうした罰則強化の流れもやむをえないと考えられる。

    ■罰金3回でサイトを強制閉鎖







     だが、問題はここから先だ。改正案では違法コピーファイルの掲載により罰金を3回科されたサイトに対しては、審議を経てサイトを強制的に閉鎖できるようにするという。サイト内の掲示物の70%以上が違法コピーファイルである場合は、直ちにサイトを閉鎖できる。


     審議と閉鎖命令は著作権委員会と文化体育観光部長官が下す。日本ではプロバイダ責任制限法で、サイトの運営者には一定の免責が認められている。しかし韓国は今回、違法を野放しにすればサイト閉鎖、つまり廃業に追い込むことも辞さない処罰へと踏み込んだ形だ。


     これに対して、インターネット企業協会など事業者団体は、「サイトの閉鎖といった処罰を強化する法律は正当なコンテンツ流通の促進にはつながらない」「著作権者とインターネット事業者の間でうまく協議できるよう奨励する法律を作らなければならない」と反発している。


     ネット業界が危惧しているのは、サイトの閉鎖命令を裁判所が下すのではなく、著作権委員会が判断して個人のネット利用停止、サイト閉鎖まで命令できるという点だ。「著作権保護という名目でインターネットを政府の規制下に置こうとしている」という指摘はもっともで、慎重に対応しなければ行政の権力乱用につながりかねない。

     強制的にサイトを閉鎖した場合、そのサイトを正当に利用していたその他大勢のユーザーはどうなるのかという問題もある。その点については、まだ明確な説明がなされていない。


     企業側は「著作権を侵害せず動画投稿やコンテンツを利用させるための方法は何かを考えるべきだ」と主張する。そのために、コピーを制限できる技術やコンテンツ利用料の策定、手軽な決済方法の開発などが必要であって、処罰を強化するよりは、コンテンツ流通活性化を前提にした著作権法改正が重要であるという意見を示している。


     著作権侵害の問題については、CDを友達に貸してあげるような感覚で「共有」してしまう一般ユーザーの教育も含めて、より腰を据えた対策が欠かせないだろう。今回の改正法案は著作権者側からすれば一歩前進だが、改正が実現すればサイト閉鎖と表現の自由のバランスをどうとるかという新たな難題を抱えることになるのは間違いない。

    ■わかりにくい「虚偽の事実」の基準


     ネット規制強化の一環として法務部が検討しているのは、ネット上の本人確認制度の拡充とサイバー侮辱罪の新設だ。本人確認制度は現在1日訪問者30万人以上の動画投稿サイトとポータル、同20万人以上のインターネット新聞で実施されているが、これを訪問者数10万人以上のすべてのサイトに拡大しようとしている。インターネットに虚偽の事実を書き込み、誹謗中傷したり他人の名誉を毀損したりした人の処罰をよりスムーズにできるようにする狙いだ。


     これまでは誹謗中傷した人の身元を割り出して訴訟を起こすのが困難だったため、ネットの嘘の書き込みのせいで会社を辞めさせられ社会生活ができなくなっても泣き寝入りするしかないといった被害者が後を絶たなかった。侮辱罪が追加されれば警察に届け出をするだけで解決の糸口が見つかるかもしれない。


     しかし、明らかに誰が見ても分かる音楽や映画といった著作物の違法コピーファイルならともかく、虚偽の事実に関しては表現の自由に抵触する部分もある。政府の気に入らない内容を書き込めばすべて虚偽の事実として処罰されるといった可能性もある。言論統制以上の世論封鎖になりかねない。


     与党ハンナラ党は「情報通信網利用促進及び情報保護法改正案」をまとめ、インターネットの書き込みによって名誉を毀損され被害を受けた人が該当掲示物の削除をインターネットサービス業者に要請した場合、事業者側は直ちにブラインド状態(サーバー上には残っているがサイトには表示されない)にして、ほかのユーザーからは見えないようにしなくてはならないとする「ブラインド制度」の導入をもくろむ。要請を受け入れず誹謗中傷の書き込みを野放しにするサイトを処罰できるようにする法規定も新設しようとしている。


     青少年保護のために夜10時から朝5時まで未成年者のIDではオンラインゲームを利用できなくするシャットダウン法案も新設される予定だ。これも青少年の保護につながるという意見と、結局他人の名義を盗みIDを作る問題が起こるだろうと反対する意見が衝突している。

    ■韓国ユーザーが2ちゃんねるに「亡命」?


     ネットユーザーの間では、「インターネットを浄化しようとする意図は分かるが、行政機関がインターネット事業者を廃業にまで追い込めるので官民の癒着関係が生まれやすい」「著作権侵害以外に政府の気に入らない掲示物も次々と消される危険性がある」「韓国にはもう表現の自由はないかもしれない」と、海外サイトへの「ネット亡命」を選択する人も増えている。長い軍事政権や言論統制を経て、韓国人はインターネットを通してやっと言いたいことを少しは自由に言えるようになったのに、また逆戻りしてしまうという懸念からだ。


     韓国政府がどんなに強力な法律を作ろうとも、世界中のインターネットを規制することはできない。ネット亡命はこれからも増え続けるしかないだろう。インターネット新聞などは「政府がインターネットに絨毯爆撃を準備している」とまで批判していた。2ちゃんねるなど、日本のウェブサイトに亡命してくる韓国ユーザーも出てくるかもしれない。



    – 趙 章恩  

    NIKKEI NET  
    インターネット:連載・コラム  
    2008年8月19日

    Original Source (NIKKEI NET)
    http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx?n=MMIT13000019082008

    ネットの「祭り」がリアルに炎上した韓国・抗議デモの事情

     ソウルでは、政府の米国産牛肉輸入交渉に抗議する「ろうそく集会」が50日以上も続いている。問題の発端は、韓国がBSE(牛海綿状脳症)対策で禁止していた米国産牛肉の輸入を段階的に認めると決めたことにある。BSEの発生率が高いとされる30カ月以上の牛肉の輸入を認め、BSEが見つかっても輸入を拒否できないという明らかに韓国側に不利な条件に、ネットを中心に激しい批判が巻き起こった。


    ■ネットから生まれたろうそく集会


     政府は「米牛肉は安全でBSEの心配はない」としきりにアピールしている。在米韓国人会の声だとして「米牛肉は安全でおいしく韓国料理にもぴったり!」などという宣伝まで新聞に載せた。


     そこへ「在米韓国人主婦の集い」と称する主婦団体が声明を発表した。「家族の健康を守る主婦として言いたい。決して米牛肉は安全でなくBSEの危険を抱えている。動物性飼料がまだ完全に禁止されておらず、非人道的で非衛生的な畜産環境も度々指摘されている。米国内でも米牛肉に不信を抱く消費者が多い。国民の健康を脅かす輸入交渉をもう一度考え直してほしい」という内容だった。







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    韓国政府の米国産牛肉輸入制限の解除に抗議し、ソウル市庁前広場の集会に参加した大勢の市民=6月13日〔共同〕


     その前後から韓国のポータルサイト「DAUM」のブロガーニュースを中心に「米牛肉を食べると脳に穴が開く。輸入を止めなくては!」という過激な記事が登場し始めた。DAUMはポータルのなかで唯一、市民記者ともいえるブロガーが書いたニュースを既存マスコミのニュースと並べて表示している。マスコミのニュースもブロガーニュースも同じような比重で表示され、さらにDAUMの編集によってはブロガーニュースが初期画面の「今日のニュース」に登場することもある。


     韓国ではすべてのニュースに読者がコメントを書き込めるようになっていて、DAUMに掲載された政府の米牛肉輸入交渉に関する記事には次々と批判のコメントが書き込まれた。それはほかのポータルサイトやコミュニティーサイト、インターネット新聞などあらゆるサイトへと波及していった。記事1件当たりのコメント件数限度である4000件に達するほど反響を集めたブログニュースもたくさん登場した。



     政府は当初、このような国民の不安を「インターネットで怪談が出回っている」と矮小化し、まともに対応しようとしなかった。そこへ放送局のMBCが、欧米でBSEで死んでいく人々のドキュメンタリーを放映したことから、国民の不安が頂点に達した。


     政府はこれからの米国との安全保障問題、自由貿易協定(FTA)などの関係も考えた交渉だというが「国民の健康を売ってまで米国に媚びることはない」と、ビジネスマンやベビーカーを押した主婦、大学生、中高校生、芸能人までもがソウル市の中心部をろうそくを持って歩く抗議集会を始めた。


    ■警察の鎮圧も「生中継」


     ろうそく集会は2002年夏、米軍の装甲車に女子中学生2人が無残にもひき殺されたにもかかわらず、駐韓米軍地位協定により犯人が米軍に保護されるという事件が起き、2人の魂を象徴するろうそくを持って抗議したことから始まった。2004年、ノ・ムヒョン大統領弾劾反対の時もろうそくが登場した。そしてこれが3度目の大規模なろうそく集会となる。


     ろうそく集会が始まるまでの過程はいつものようにインターネットがきっかけで、とりわけ新しいところはない。しかしここからがいつもと違っていた。ろうそく集会の様子を、参加した多くの個人が個人放送局システムと無線LANやWibro(モバイル高速無線)、HSDPAといった高速ネットワークを駆使し、全国のネットユーザーに向けて動画で生中継したのだ。今やブログに掲載するより早く、この現場の勢いをありのまま、生でリポートできる個人メディアを多くの人が手にしているのだ。







     個人放送局の最大手「Afreeca.com」の報道資料によると、そうそく集会の生中継動画は100万人近い人々が集まったとされる6月10日だけで1357件が放送され約70万人が視聴、5月25日から6月10日までの累計では生中継動画1万7222件、視聴者数は約775万人に達したという。通常は平均60万人ほどが利用しているサイトなので、10倍を超えるアクセスだ。


     動画投稿サイト「PandoraTV」でも5月31日午後から6月1日までのわずか1日の間に1000件近い動画が投稿されたという。ソウル市内のろくそう集会に限らず、全国で開催されているろうそく集会を生中継し、保守団体の「ろうそく集会に反対する集会」までも生中継された。


     テレビカメラよりも早く、集会のすみずみまで映し出す個人放送の影響力は大きかった。保守勢力の一部といわれる新聞が「ろうそく集会は一部反政府組織が扇動しており、米牛肉輸入とは関係ない」といった報道をしても、ろうそく集会は続いている。



     警察による鎮圧や、女子大生が機動隊に頭を踏みつけられ負傷したこと、ベビーカーにまで容赦なく放水する警察の姿が生中継されたことで、さらに集会は激化した。個人放送局の中継動画に触発されて、もう黙ってはいられないと集会に参加したという主婦もたくさんみかけた。集会は過激になりすぎ、一部暴徒化しているとの報道もあった。


     ほとんどの携帯電話にカメラが付いていることから、警察が暴力を振るおうとすると一斉にカメラを向けて証拠写真を残したり、集会の参加者の顔写真を撮影する警察の顔写真を逆に撮影して「この人に気をつけろ」とブログに書き込んだり、ろうそく集会が始まった5月初めからポータルニュースもブログもコミュニティーも動画投稿サイトも個人放送局も、集会の様子を伝えるネットユーザーたちの写真、動画、書き込みで溢れかえっている。


    ■一気に進んだネット規制


     しかし突然、Afreeca.comの運営会社であるナウコムの社長が逮捕され身柄を拘束された。容疑は映画の著作権侵害。ナウコムが運営している個人放送局やストレージサービスから大量の映画ファイルが出回っているとして前々から捜査を続けてきたという。しかしネットでは当然、タイミングから考えて「逮捕は見せしめではないか」と猛反発が起きている。


     さらに、利用者数1位のポータルサイト「NAVER」がAfreeca.comを禁則キーワードにしていたことが発覚した。Afreeca.comのURLを持つ動画をニュースのコメント欄に書き込めないように遮断していたのだ。ポータルが中立を保てず政権寄りになっていると非難を浴びたが、NAVER側は「わざとではない。Afreeca.comを悪用したスパムが多すぎてそうしただけだ」と説明している。


     またさらに事態を悪化させたのは、6月16~17日にソウルで開催されたOECDのIT長官会議でイ・ミョンバク大統領が行った「インターネットの力は信頼が担保されていないと薬ではなく毒にもなりうる」という発言だ。ろうそく集会はインターネットの毒が生み出したものと受け止められかねない発言をしたのだ。







     大統領はその後「国民が嫌がることはしない」と特別会見を開いたり、「インターネット世論を人為的に統制しようというつもりはない」と釈明したりしたが、大統領のネット批判発言を受けて、ネットを規制する動きが一気に高まった。


     政府の放送通信委員会はインターネット実名制度を強化すると発表し、大統領官邸の青瓦台にはインターネット世論を担当する国民疎通秘書官が新設された。警察はインターネットの書き込みを専門的にモニタリングする組織を作ると発表し、検察はインターネット上に嘘の情報を流して社会的混乱を増幅させるサイバー犯罪に厳重に対処するとの方針を示した。


     さらに、文化体育観光部はネット上に特定の事項に関する書き込みが増えることを感知する事前警報特別チームを運営し、与党のハンナラ党も世論敏感度チェックプログラムというものを導入すると発表した。これでもか、というぐらいの素早さでネット統制を狙った対策を次々と発表したのだ。



     放送通信委員会は少し前まで、個人情報ハッキング、なりすましの問題が多発しているので、住民登録番号を使わない形で個人認証を導入したいとの方針を示していた。ところが大統領の一言で手のひらを返して、住民登録番号で個人を特定する強力な実名制度を導入しようとしている。実名制度を導入しても悪質な書き込みは減らないという研究結果はたくさん報告されているにもかかわらず。


     さらに、国民疎通秘書官として採用されたのは、ろうろく集会の発信源ともいえるDAUMの元副社長だった。DAUMの社長も政府の国家競争力委員会の民間委員として選任された。これでDAUMも政府の味方になるだろうかとも言われている。


    ■国民の本当の声はどこに







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    混乱で政府人事を刷新した李明博大統領(手前)=6月24日、ソウルの青瓦台〔共同〕


     専門家らは、ろうそく集会を「アナログ政府とデジタル市民の激突」と論評している。ネット上に分散している個人が、自律しながらもつながることで力を発揮する。ネットの「毒」はユーザー同士がコミュニケーションを重ねるうちに自然に浄化されているのに、政府が人為的に統制しコントロールしようとすればこの循環を止めてしまう。政府が押さえ込もうとすればするほど陰湿な毒を生み出すだけと、過剰な統制案に反対している。


     著名な小説家であるイ・ムンヨル氏は「ろうそく集会は偉大ではあるがおぞましいデジタルポピュリズムの勝利。少数の意見がインターネットを掌握することによって世論とみなされ勝利を収めた。すべてをこんな方式で決定するとなれば本当におぞましく、とても不安で怖い社会になるだろう」と発言した。これでまたネットの議論が燃え上がっている。



     確かにコピー&ペーストを繰り返すことで、少数の意見を多数の意見のように作り上げることはできるが、双方向のコミュニケーションはそうはいかないだろう。ブロガーニュースとコメントと討論掲示板が循環することでインターネット世論は生まれているが、これをネットだからポピュリズムに終わると言い切れるだろうか。電話による世論調査だけが世論なのだろうか。


     政府はインターネットは特別な空間だから取り締まらなくてはと思っているようだが、ネットもオフラインも人間のいる場所は変わらない。いろんな情報のなかから自分の意思で判断して取捨選択しているし、違法なものは締め出されることが多い。


     一方的に押し付けられていたニュースや情報から開放され、自分から書き込んだり、その書き込みにまた反応してくれる人がいて嬉しくなったり、コミュニケーションしたがるのは人間の本能でもある。もちろんネチケット(ネット+エチケット)を守らなかったり、でたらめなことを書き込んだりといった問題もある。だからといってそれを政府の力で規制できると思っていること自体が危ないのではないだろうか。おしゃべりでストレスを発散するように、ネットでのやりとりの中で悩みを解消し、勇気付けられ希望を持てることだって多い。


     「毎年7%の経済成長、国民所得4万ドル、世界7大経済強国になる」という「747公約」で韓国の景気回復と豊かな生活の実現を描いて、イ・ミョンバク大統領は選ばれた。しかし、韓国銀行が発表した2008年の消費動向は2000年以来の低水準で、韓国経済研究院が発表した物価上昇率はIMF経済危機があった1998年以降で最高の5.6%、経済成長率は3.3%と典型的なスタグフレーション状態に陥っている。


     これは韓国だけの問題ではなく、大統領の責任というよりは外部的な問題が大きすぎた部分もある。しかし米牛肉問題から始まったネットでの政権批判は、いろいろな不満が重なり合い爆発した結果だ。


     まだ大統領に就任して4カ月ちょっとだというのにもう不満だらけというのも酷ではあるが、ある市民がテレビの討論番組で語った「CEO出身だから国民も自分の言う通り従う社員にしか見えないんじゃないの」という言葉の中に国民の不満が集約されている。国のためにやっていることは確かなのだが、一方的すぎるのだ。国民の声にもっと耳を傾けること。その国民の声はどこにあるかといえば、便利なネットに集まっている。


    – 趙 章恩  

    NIKKEI NET  
    インターネット:連載・コラム  
    2008/07/01  


    Original Source (NIKKEI NET)
     
    http://it.nikkei.co.jp/internet/column/korea.aspx?n=MMIT13000001072008&cp=1