人気アイドルの芸能界追放騒動、書き込みは災いの元?!

アメリカのオバマ大統領が9月8日、バージニア州の高校生達に「フェイスブックに書き込みをする時は注意しなくてはならない。何を書き込もうと自分の未来に影響を与えるだろう」と警告し話題になったことがある。

 同じ日、まさにオバマ大統領の予告通りの問題が韓国で発生した。韓国で絶頂の人気を誇る男性アイドルグループ「2PM」のメンバーの一人が、デビュー前SNSサイトに書き込んだ文章が発端となり、グループを脱退、芸能界から追放されてしまったのだ。


 アメリカで生まれ育った彼はまだ18歳だった2005年、誰一人知り合いのいない韓国で歌手としてデビューするためトレーニングを受けていた。その当時の苦しい心情を、アメリカのSNSサイト「マイスペース」に「韓国なんて嫌いだ」という表現で一言残した。それが4年後、ネットユーザーに見つかりマスコミに報道されてから大問題となった。マスコミは大々的に「韓国卑下発言」という見出しで騒ぎ立てた。それを見た人々は動揺し、「韓国が嫌いならアメリカに帰れ」とバッシングが始まったのだ。そして9月8日、彼は家族のいるシアトルに帰国した。絶頂から奈落へ落ちるのに3日もかからなかった。





SNSサイトでのデビュー前の発言が問題となりグループを脱退した「2PM」のメンバー「ジェボム」のグループ脱退撤回を求めるファン達が新聞に掲載した広告


数日前も、「ここが変だよ日本人」と同じコンセプトのテレビ番組、「美女のおしゃべり」に出演しているドイツ人の女性が、自国で韓国を卑下する内容の本を出版したとして一騒動巻き起こったことがある。しかし、彼女の本は韓国で生活しながら体験した、文化の差による苦しさを表現しただけだった。間違がった翻訳で韓国卑下本を出したと騒いだブロガーの書き込みを、ネット新聞が確認もせず書き写し記事にしたのが問題だった。過去、韓国のテレビによく出演し、「韓国好き」発言で人気を得て大学の教授にまでなったのに、自分の国では韓国の歴史を歪曲して面白おかしく書き立てた本を出版した日本人がいたことから、「もしかして!」と騒がれたが、ドイツ人女性は無罪(!)が判明されテレビ出演も続けている。

このような前例があったからとはいっても、韓国のことを少しでも悪く書くと「韓国卑下」と騒ぎ立てるマスコミに対して、韓国に住んでいる外国人らは「あり得ない」、「怖い」と反応している。「韓国に住んでいるからといって、韓国を好きにならなくてはならないのか?これは人権にもかかわる重要な問題である」といった反発を起きている。


 芸能人の間では、「ネットの魔女狩りがまた始まった」と反発の声も上がっている。一部ネットユーザーの書き込みが世論であるかのように書き写すマスコミ、それを見て興奮しさらに書きたてるネットユーザーによって、何でもないことが大事件として膨れ上がる傾向があるのは確かだ。さらに、一部ネットユーザーの極端な愛国主義こそ問題であるという専門家の指摘もある。


 SNSサイトは知人達とコミュニケーションするための個人的な場ともいえるが、いつでも誰でも見られるという点では公共の場ともいえる。韓国が好きとか嫌いとか、それぐらいは十分、表現の自由として容認できる範囲と思うのだが、トップの座にいたアイドルだっただけに世間の目は厳しかった。


 韓国のネットユーザーの6割以上が自分のブログやSNSサイトを持っていて書き込みをしている。アンケート調査によると、企業の人事担当者32%は、社員採用の際、求職者のブログやSNSサイトをチェックしているという。個人的な感想一言が、数年後どんな問題になるか分からない。損害賠償訴訟を起こされた人もいる。表現の自由もあれば責任もあるということだが、もう少し包容力のある見方をしてもいいではないか。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年9月17日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090916/1018636/