[日本と韓国の交差点] 仁寺洞で白昼の戦争!?

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露店があると人が集まる? 露店は不法だから撤去すべき?



ソウルの観光名所として有名な仁寺洞(インサドン)は、美術品や、絵具や墨などの美術道具を売る街として朝鮮初期から栄えている。古書や骨とう品、高美術(朝鮮時代やそれよりも古い時代の絵や陶器といった美術品)を扱う高級なお店もあれば、伝統模様をあしらった携帯電話ストラップや小物入れなどが、手ごろな値段で買える露店(屋台)も並ぶ。浅草の仲見世のように、韓国の伝統文化を楽しみ、ショッピングもできる名所である。

 2002年には、全国で初めて文化地区に指定された。このため、店々の看板はハングルだけを使っている。お店も、芸術や伝統文化に関連のある業種を優先してきた。


 古い屋敷をそのまま店にした伝統茶室もたくさんあるので、落ち着いた場所でゆっくりおしゃべりしたい女性客に人気が高い。デートスポットとしても欠かせない。


 ちなみに、韓国の伝統茶室は、韓国の緑茶や自家製柚子茶、棗茶、スジョングァ(生姜とシナモンの味がする甘辛くて冷たい伝統茶)、シッケ(ご飯と飴を発酵させて作る甘くて冷たい飲み物で、干し柿を入れて飲む)、ミスッカル(豆や穀物を蒸して粉にしたもので、水に溶いて飲む。昔からの健康飲料)などを扱っている。餅や韓菓なども売っている。



仁寺洞の露天を区役所が“奇襲”



 いつも多くの人でにぎわうこの仁寺洞で5月24日、120人ほどの若い青年が手当たり次第に露店(屋台)を叩き壊し始めた。鐘路区役所から依頼を受けたという青年らは露店の商品まで全部踏み潰し、その残骸を回収していった。


 人通りの多い午後に起きた突然の出来事に、外国人観光客は悲鳴を上げながら逃げ惑った。強圧な取り締まりに抗議する一般市民、露店の人で辺りは騒然となった。


 これを受けて、TwitterやBlogではつぶやきが後を絶たなかった。


 「仁寺洞で白昼の戦争」
 「露店は不法営業。なので取り締まるのは分かる。だが、物を全部壊してめちゃくちゃにするのはかわいそう」
 「露店を擁護する人はおかしい。ちゃんと賃貸料を払って税金を納めるお店の人はバカだからそうしているのか? 歩行の邪魔になるし、露店は取り締まって当然」


 「露店は道路を無断占有している。通行の妨げになり、衛生上の問題もあるから撤去するべき」という意見と、「露店がある方が人間味があって人が集まる。街が栄える」という意見に分かれ、論争が続いている。



韓国人の生活に露店は欠かせない



 露店の中には、区役所の許可なく不法で営業しているところもある。だが、便利で楽しい場所であることも確かだ。韓国人の生活とは切り離せない――と言っても過言ではない。露店では1人2000~3000ウォン(150~250円)もあればお腹を満たすことができる。学生や庶民の強い味方でもある。


 多くの露天は早朝から深夜までほぼ24時間営業なので、いつでもショッピングを楽しめる。
食べたい時に、食べたいものが食べられる。


 韓国の露店でポピュラーな食べ物と言えば、トッボギ(米で作った白くて細い餅を唐辛子ソースで甘辛く炒めたもの)、スンデ(豚の腸詰)、おでん(具は薄いさつま揚げ1種だけ)、ギムパブ(ごま油とナムルが入ったのりまき)、焼き鳥(日本の焼き鳥の10倍ほど長い)など。


 3時のおやつと言うと、日本では甘いものを思い浮かべるようだが、韓国ではこの辛いトッボギなどの露店メニューが定番となっている。甘い野菜オムレツを入れたサンドイッチは朝食の定番だ。


 季節限定の露店メニューもある。冬には金魚焼き(タイ焼き)、ホットク(餅のような揚げパン。黒砂糖とピーナッツが中でとろける)、ホットケーキの中にゆで卵が丸ごと1個入った卵パンが人気だ。夏には、割り箸に刺した果物、漢方薬品を煎じた健康飲料、そうめんなどが人気を集める。


 明洞の露店で始まったクルタレは韓国の定番お土産となった。白い飴を薄い糸状に伸ばして、そのかたまりの間にゴマと黒砂糖などを入れたものだ。歯ごたえはさくっとしていて、とてもおいしい。最近は東京・大久保のコリアンタウンでも手に入るようになった。


 大学の前にあった露店が成功して全国チェーンに成長することもある。ハンバーガー、卵パンなどが有名になった。


 最近は日本のたこ焼き、お好み焼きが人気メニューに加わった。



近代化が大事か? 庶民の暮らしが大切か?



 韓国人の生活と切り離せない露店であるが、取り締まりは昨日今日に始まった話ではない。仁寺洞の露店撤去をめぐる衝突も、ここ2カ月の間に、20回以上起きている。



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