携帯電話料金は大統領選の争点にも? [2007年5月16日]

前回、携帯電話会社のサービスへの不満がネット上に吹き出していることに加え、大々的な料金値下げを求める動きが活発化していることを書いた。その根拠は、キャリア3社が政府情報通信部に提出した「原価補償率」だ。

 これは、料金と原価を比較したものだが、ここでいう原価にはサービスを提供するために投資した費用を、もし他の事業に投資した時に得られると期待できる期待収益まで含まれている。さらに、利益は通常の営業利益より高い利益が含まれている。つまり、原価補償率が100%を割ったとしても、キャリアの懐は実は痛くも痒くもないという意味になる。キャリア3社の原価補償率は2006年末現在で、SKテレコムが122.55%、KTFは105.06%、LGテレコムは102.99%だ。SKテレコムは本来あるべき、適切な料金より22%も上乗せした金額を利用者から受け取っているということになるわけだ。


 中でも携帯電話利用料金の値下げに関して特にこれだけは絶対何とかしてほしいとユーザーが要求しているのが発信者番号通知サービス(CID)料金の無料化だ。日本では当たり前のように無料で利用できる発信者番号通知が、ついこの間まで韓国では月2000ウォンの有料サービスだった。何の費用もかからないサービスを提供しながら膨大な収益を上げていたキャリアに対する国民の反発は大きく、2006年からSKテレコムは無料にしたが、KTFとLGテレコムはしぶとく月1000ウォンを取っている。KTFとLGテレコムが上げている収益はCID料金だけで2006年では2000億ウォンに上る。


 そのほかにも、原価2.5ウォンにすぎないSMS(ショート・メッセージ・サービス)の利用料金は1件30ウォン。原価の12.5倍も加入者にふっかけている。


 また小学生や軍人を対象にした公衆電話から携帯電話へのコレクトコールは90秒あたり270ウォン、市内電話同士のコレクトコールは3分85ウォンなので6倍強も高い料金をもらっている。コレクトコールは小銭を持たなくても緊急時に通話ができるという利点もあるが、問題は携帯電話に設けられている青少年向け料金定額制との関係だ。毎月一定料金以上使えない料金制度に加入していても、コレクトコールで発生した料金は別計算なので、使いすぎて月々の料金よりコレクト料金の方が多くついたという事例も少なくない。


 統計庁の発表によると2006年韓国勤労者世帯の通信費支出は月平均13万5040ウォン(1万7555円、1万ウォン=1300円として計算)、このうち、携帯電話料金の割合は80%近い。全世帯の通信費支出合計は2005年より5.46%増加した26兆6907億ウォンを記録している。これは全世帯の外食・宿泊費より多い金額だ。情報通信政策研究院の調査結果では1996年6.7%だった家計消費増加率は、2004年0.5%にまで落ちている。それでも通信費の割合は4.4%から9.2%と2倍以上増えた。


 2006年の都市勤労者家計平均所得は月330万ウォンほどだが、上位20%は月640万ウォンほど、下位20%は月120万ウォンほどと格差が大きい。月120万ウォンの所得で4人家族が生活し、13万5040ウォンの通信費まで負担するとなれば家計負担はかなり重い。だからといってインターネットや携帯電話を使わないわけにもいかない。家計負担を減らすため情報通信部も積極的に通信費値下げを勧告している。国会議員と市民団体も加入費免除、SMS料金と通話料の20%引き下げをキャリアに要求し、今年12月に行われる大統領選挙の公約に携帯電話料金値下げを含めるよう依頼する方針でもある。


 2006年末現在、携帯電話加入者4019万7115人の約7.6%が料金を滞納しているという報道もあったが、キャリアのサービスに不満でわざと払わない人も多いのではないかと思えてしょうがない。


 所得は減っても固定支出の通信費は値上がりするばかり、奨励金の自由化で携帯電話が安くなるといっても3G加入者がターゲットなので、普通に通話とSMSを利用するだけの顧客にはあまりメリットがない。韓米自由貿易協定(FTA)交渉で通信市場開放が騒がれているが、早く海外キャリアが韓国に進出して仮想移動通信事業者(MVNO)サービスをしてくれれば、韓国キャリアも気を引き締めなおしてサービスと料金改善に乗り出すかもしれない。


【お知らせ】本コラム筆者の趙章恩さんが東京で講演を行います。
「世界に先駆ける韓国のWeb2.0ビジネスモデル」
5月21日(月)18:30~20:30 東京・大崎
■ テーマ
世界に先駆ける韓国のWeb2.0ビジネスモデル
– UCCって何?
– 動画投稿からCyworld2までどうやって儲けているの?
– インターネット実名制や著作権の影響は?
■実施要綱
主催:特定非営利活動法人(NPO法人) アジアITビジネス研究会
参加費:1,000円(当日、会場受付にてお支払いください)
定 員:80名(申込先着順)
※申し込み/問い合わせ先
氏名と所属先、部署/役職、ご連絡先を明記の上、下記までメールにてご連絡ください。
NPO法人アジアITビジネス研究会
事務局・田所 tadokoro@asia-itbiz.com
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※事前申込必須。定員になり次第、締め切り。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

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-Original column
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