「公称100Mbpsならせめて30Mbpsは出てないと」—韓国のインターネット最低速度保障制度を紹介

インターネットサービス事業者の広告を見ると、最大100Mbps光の速度で動画もすいすい、ADSLで下り最大47Mbps、なんて大きく書いてあるけど、よく見ると広告の下に小さい字で「通信速度は技術規格上の最大値であり、お客さま宅内での実使用速度を示すものではありません」、「最大100Mbpsとは、お客さま宅内に設置する弊社回線終端装置から弊社設備までの間における技術規格上の最大値であり、お客さま宅内での実使用速度を示すものではありません。インターネット利用時の速度は、お客さまのご利用環境、回線の混雑状況、集合住宅の場合は当該建物の伝送方式等によって低下する場合があります」と書いてある。

 一体私は何Mbpsの速度のインターネットが使えるの?と突っ込まずにはいられない。100Mbpsと聞いて申し込んだのに、Flashで作られたWebサイトがなかなか表示されずイライラした経験はないだろうか。


 韓国では通信政策を担当する放送通信委員会が、事業者のネットワーク拡大と品質管理、設備増強が適切に行われているかなどの責任を追及するため、ベストエフォートではなく最低保障速度制度を強化することにした。これは世界でも前例がないため、韓国内でも何を基準に最低速度を決めるのか、最低速度を守れなかった場合はどのように規制するのか、議論になっている。政府は専門家のアドバイスから100Mbpsと宣伝する場合は30Mbps、10Mbpsと宣伝する場合は2Mbpsを最低保障速度として提示している。最低保障速度制度があれば事業者も品質を安定させ管理しないといけないため投資が増え、サービスの品質改善とそれによる利用者の権益向上を期待している。


 そもそも最低保障速度制度は今回が初めてではない。2002年8月、政府は「超高速インターネット品質保証制度」の導入により、下りの最低保障速度を約款に明記するよう勧告した。韓国のインターネット事業者は速度がいつも利用している平均速度より目に見えて落ちたり、1日3時間以上インターネットにアクセスできないと1カ月の料金から日割りして1日分の料金を無料にしてくれる。速度が落ちたりアクセスできなくなったら顧客センターに電話して遠隔で確認してもらい、異常があることを確認できれば割引してもらえる。それでも速度低下が続く場合は、約定加入した場合でも違約金なく解約できる。


 しかし、その基準となる最低保障速度は2002年当時のまま。下り最高10Mbpsと宣伝する商品の場合、当時の基準だと、実測0.5Mbps以上であれば最低保障速度を守ったことになるが、これが最高100Mbpsを謳う光LAN商品にもそのまま適用されているのだ。韓国のインターネットの平均速度は各自業者の品質評価発表によると、下りは最高速度の75%以上を保っているが、それに比べ最低保障速度は遅すぎるということである。


 放送通信委員会は事業者の最低保障速度は最近のネットワーク環境と合わないことを指摘し、もっと現実的な制度を導入するため最低速度のアップグレードを事業者に要求したというわけだ。今までは最低速度が最高速度の1~10%だったが、それを5~50%に引き上げるべきということだ。2008年12月からは最高100Mbpsのサービスであれば、最低30Mbps以上は出ないといけないようして、約款に最低保障速度を明記させる。


 最低速度を30Mbpsにした理由は特に基準があるわけではないが、IPTVや広帯域サービスを問題なく受信できるようにするためにはこれぐらいの速度が必要という韓国情報社会振興院の調査結果によるものだ。速度が落ちた場合にはどのように報償するかについても約款に記載し、加入者に告知するようにした。最低保障速度制度はあくまでも勧告事項で強制事項ではないので、守りたくない事業者は守らなくてもいいが、顧客離れを防ぐためには守らないわけにはいかない。
























































●事業者別最低保障速度改善計画 単位:Mbps
事業者 サービス 最高速度 変更前最低保障速度 最低保障速度改善計画 改良時期
KT ライト 50 1 5(FTTH) 2008.12
1(xDSL)
スペシャル 100 5 30 2008.12
SK Broadband(旧Hanaro Telecom) スピード 10 1 1.5 2008.12
2 2009.1
光LAN 100 5 30 2008.12
LG Powercom プライム 10 1 5 2008.12
光LAN 100 30 50 2008.12

 最低速度に満たない場合は、顧客センターに電話して遠隔で速度テストをして異常を確認してもらうか、事業者ごとに運営している速度測定WEBサイトにアクセスして速度をテストした記録すこと。当然かもしれないが、速度が落ちても事業者側からは絶対先に補償を持ち出さないので、利用者がこまめにチェックして補償を要求しなくてはならない。ネットでは速度を問題に解約を要求したら、6ヶ月間料金を無料にしてくれた、利用料を安くしてくれたという経験談も登録されていることから、わざと速度を理由に割引の交渉を持ちかける利用者も少なくないようだ。


 韓国の平均的な光LAN料金はISP料金やモデムレンタル込みで月2000~3000円ほど。所得に比べ決して安いとはいえない。それに韓国では動画投稿やインターネット経由で地上波放送局の番組を有料VODで視聴するパターンが定着しているため、高画質の動画をストリーミングでみたり、アップロードしたりするため、速度にはとても敏感である。最低補償速度制度は品質保証のようなものなのだ。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年10月29日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20081029/1009261/