災難時にモバイル活用は韓国も同じ、テレビ電話通報も開始 [2007年7月25日]

去る5月、韓国ソウルのある小学校で消防訓練の途中、高層ビルから消防車のかごに乗って救助されるデモンストレーションに参加した主婦らが、かごのワイアーが切れ、子どもたちが見守る中、25m下の運動場へ転落、死亡する惨事が発生した。自分や友人のお母さんが転落する現場を目撃した児童らは今でも学校生活になじめず、学校全体で心理治療をうけるほど、ショックから立ち直っていない。消防訓練準備ですらまともにできない消防防災庁に国民の命を預けてもいいのかと大問題になり、ソウル市の公務員リストラでは消防防災庁の職員らが大勢対象になった。

 お隣日本の新潟でまた大地震が発生したことは韓国でも大々的に報道されている。果たして韓国は大丈夫なんだろうかという恐怖を感じているのが一般的な感覚だろう。個人的に新潟は講演で訪問したり、長岡花火大会にも行ったりしたことがあるので、その近くでの災害だったことと思うと心が重くなる。韓国は耐震工法をまったく考えていないビルもたくさんあるだけに、一度大きな揺れが来るとドミノ倒しになるのではないかと心配されている。あげくに冒頭で紹介したように、消防の装備も当てにならない。救助に来た消防車のかごが落ちたりしないだろうかと怖くてたまらない。


 韓国での代表的な災害としては、大規模な交通事故、山火事、台風があげられる。韓国ドラマに頻繁に出てくるのが交通事故と記憶喪失だが、交通事故は本当によく発生していて、2006年で7700件、ソウル市だけで毎日1.2人が交通事故で死亡している。今年に入っても霧や雨の影響で何十台もの車が衝突し、死亡者も多く出た事故が4件ほど発生している。事故発生を知らず次から次へと押し寄せる車のせいで被害が拡大したこともあり、道路の災害情報を迅速に伝えてくれるシステムが要求されている。


 夏のバカンスシーズンを向かえキャリアのKTFは月3500ウォン(約500円)で交通情報と旅行者保険を同時に提供し、全国主要高速道路や国道の混雑状況速報と緊急災害発生を携帯電話のSMSで送信してくれるサービスを提供している。


 2006年11月、東海岸にあり夏には人口が3倍に増える江源道(道は県)の消防署は携帯電話のカメラを利用して写真で通報すると、携帯電話の位置と撮影した写真が電子地図に3秒以内に表示される画像通報システムが全国で初めて導入された。写真を撮って#0119に転送するだけ。このシステムは子供や障害を持つ人など、電話で通報するのが難しい場合でも、迅速に正確な位置情報を提供し、救助を求めることができる。119に写真が届いた瞬間、受付センターから救助を担当する消防署まで現場の写真が届くのでより状況が分りやすいという利点もある。さらに今年はテレビ電話を利用して通報できるシステムも導入される。


 警察はSMSで犯罪や事故通報も受け付けている。同じく障害を持つ人や拉致され電話をかけられないような場合、SMSで112(日本の110番)にメッセージを送信すればいい。韓国ではキャリアに関係なくSMSを送信、受信できるので、携帯電話でメールを使わず料金の安いSMSを使っている。


 韓国の真ん中にある忠清道はモバイル行政サービスシステムを構築し、地方自治体を対象に中央政府が表彰する「デジタル経営革新大賞」を授賞した。申請した道民にSMSで入札・公務員試験・災害・黄砂警報・オゾン警報・防疫案内などいろいろな行政情報を送信している。中でも人気なのが台風や黄砂など環境に関する警報をしてくれるサービスだ。


 民間ではKTパワーテルという無線機会社がUSN(Ubiquitous Sensor Network)を利用した災難感知及び通報システムをサービスしている。災難業務と関連がある15社の通信網をつなげたKDSN(韓国災難安全ネットワーク、Korea Disaster Safety Network)という共通ネットワークで何よりも迅速な対応と予防を目的に運営されている。


 諸外国で災難が発生するたびに韓国はこんなシステムを開発しましたと、色んな災害関連サービスがマスコミに紹介されるが、インターネットや携帯電話が使えなくなる場合も十分あり得る。そんな時はどうすればいいのか。まして、韓国は休戦状態が続いている。よく韓国の新聞などでは海外留学生や小学生に韓国で戦争や大災害が発生したらどうするか、というアンケートをするが、留学先から帰国しない、外国に逃げる、と答える人が増加している。このアンケートそのものが全く意味ないと思うが、災害を乗り越える、自分の地域や国を守り助け合うといった感情が薄れてきたのは確かだ。韓国は教育や就職、投資のため、頻繁に引っ越すので地元を守りたいという感情が日本に比べてもほとんどない。


 震災を乗り越え、地元を復興させるためみんなでがんばる新潟をみていると頭が下がる。がんばってください!としか言えないのがもどかしい。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20070725/278280/