韓国政府、「緑色情報化計画」発表

最近日本でも韓国でもクラウドコンピューティングが流行語みたいに広がっている。コンピューティングというとなんだかすごい技術に聞こえるけど、自前の物を使うのではなく、インターネットの向こうにあるものと自分のパソコンをつなげて月々料金を払うものと理解すればいいのかな?ソフトウェアをパッケージで購入せずインターネット経由で必要な期間だけ使うSaaSもあるし、データセンターの代わりになるものだと思えば、クラウドコンピューティングとは新しい概念ではなく以前からあったものではないか。

 韓国でもクラウドコンピューティングはIT業界を変える新しい波であると考える人と、流行語を作ろうとするマーケティングの一種に過ぎないとする人もいる。何はともあれ、韓国政府はクラウドコンピューティングを活用して中央政府の情報資源を統合し電気使用量を50%以上節減するグリーン政府統合センター構築構想を含む「緑色情報化推進計画(New Green ICT Action Plan 2012)」を発表した。


 韓国は世界10位の二酸化炭素排出国で(1位はアメリカ、2位は中国、日本は5位)、年平均2.2%ずつ増加している。特にIT部門の二酸化炭素排出量の伸びは2.8%で、世界平均の2.0%を上回っている。パソコン、プリンター、モニター、サーバーといったITの基本機器が原因で、政府としては至急対策が必要だった。


 緑色情報化推進計画は情報資源のグリーン化、グリーン政府実現、グリーン社会転換促進を柱に31の細部推進課題を盛り込んでいる。この計画で国の二酸化炭素排出10%削減を狙う。

最初に取り組んだのは、何よりも効率化が求められているデータセンター。最小限の投資で最大の効果を望むのは企業も政府も同じである。電子政府を始め国家行政情報を取り扱う行政安全部の傘下にある「政府統合電算センター」が「クラウド」の役割を担い、政府機関が個別に導入していたサーバーや電算装備を統合させる。


 全サーバーの中でCPU使用率が30%未満のものが70%を占めているのに、サーバーは毎年20%ほど増加していた。そのため場所も増やす必要が生じ、電気・冷房使用量もどんどん増え、そろそろ限界を迎えていたのだ。サーバーを効率的に使うことで費用も、二酸化炭素も減らして環境対策にもなる。政府機関はサーバーや電算装備を必要な分だけ統合センターより割り当てられ使うことになる。事業予算は96億ウォン(約7億円)で、電算センターの効率化によって二酸化炭素排出は15%、電気使用量は50%の節約を狙う。


 パソコンや関連機器の省エネ標準規格を制定して導入を義務化し、オフィスでの電気節約実践ガイドラインを導入するため、まず公共機関からICTのグリーン化を始める。パソコンのライフサイクルを見直し、中古パソコンを最大限活用できるようにする一方で、古いパソコンのデータ管理や削除に関する指針をはっきりさせ、情報漏れのない中古再活用を目指す。


 既に2008年10月、行政安全部は政府機関の電算資源を統合して無駄をなくす「汎政府情報資源統合計画」を作成し、国務会議に提出している。2012年まで中央省庁電算資源のシステム構築と運営費の30%を節減するのが目標である。ゆくゆくは2012年までに7000万トンの二酸化炭素を節減できるようになり、炭素排出権取引を考えると金額にして約2000億円を節約になるという。このために官民学の有職者を集めた「緑色情報化推進協議体」を構成し運営する。


 韓国のすごいところは国家政策にも最新のトレンドを反映させるスピードの速さとよく評価される(国家政策なんて勢いでやるようなものじゃないとは思うが)。グリーンICTではなく「緑色情報化」という生生しい言葉やクラウドコンピューティングという流行語を使うことで政策の注目度を高めたという点では合格だけど、本当はどれほど環境の役に立てるのか、情報保護やセキュリティは大丈夫なのかといった話はこれから真剣に考えてみないといけないだろう。



(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年1月29日

-Original column

http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090129/1011773/