電子ブック市場の救世主となるか、サムスン電子と最大手書店がタイアップ

韓国に電子ブックが登場して早くも10年が経った。その間、元祖電子ブックサイトは利用者がなく倒産し、電子ブックリーダー機も中小企業から発売された1機種だけ。自治体の電子図書館の一環としてパソコンから利用する電子ブックサイトや携帯電話向けの小説・漫画コンテンツサービスとして、いくつかは生き残ったところはあるが、利用者は当初の期待に及ばない。

 何よりも利用方法が不便であった。パソコンから電子ブックを見るにもサイトごとに色んな専用ビューアーをインストールさせられた。コンテンツも少なくベストセラーの電子ブック化も遅かった。


 そこへ登場したのがサムスン電子と韓国最大手書店「教保文庫」である。電子ブックに最適化された端末「SNE-50K」の発売と同時に、本より60%安い値段で2500冊の電子ブックをダウンロードできる「デジタル教保文庫」をオープンした。年末まで1万冊、毎年1000冊ずつアップデートしていく計画だ。教保文庫オンライン事業本部側は、「新製品の発売により電子ブックユーザーが増え、韓国の電子ブック市場は2006年の2100億ウォンから2010年に1兆600億ウォン、2012年には2兆3800億ウォンへ成長する見込み」だと語る。サムスン電子と教保文庫の組み合わせに刺激されたオンライン書店とリーダー機を製造する中小企業のタイアップも急速に進んでいる。




サムスン電子は、韓国最大手書店と組んで電子ブック市場を開拓していく

「パピルス」というプロジェクト名で今年3月より期待を集めたサムスン電子の電子ブックリーダー機SNE-50Kを見ると、Amazonの端末「Kindle」より、小さく安くすることを目標にしたようだ。画面の大きさはポケットサイズの5型で、厚さは9mm、重さは片手で長時間持っても苦にならない200g、メモリは専用ファイルに変換すると400冊を保存できる512MB、電子ペーパーを採用しているので外光が反射して画面が見辛いといったこともない。電力消耗も少なく、5秒ごとにページをめくったとすると4230ページまで連続利用できるという。

 電子手帳機能を備えるので、スケジューラーとして使える。ファイルをBMP形式に変えて表示する機能もある。リーダー機としては初めて専用ペンで紙に文字を書くように手書きしたメモを保存する機能がつく。だが、本を読みながら線を引いたり、付箋を貼ったりはできない。無線LAN機能がないため、パソコンに接続してコンテンツをダウンロードする必要がある点は不便。端末価格は33万9000ウォン(約2万6000円)である。端末は教保文庫のオフライン店舗またはWEBサイトから購入できる。


 サムスン電子は「電子ブック市場は、まだ初期段階なので目の前の利益よりも、先行者利益を狙っている」、「2010年には無線LAN機能を備えた、もっと便利な端末を発売する」としている。

携帯電話にもファイルビューアーや、電子ブックを読む機能はついているし、ネットブックを持ち歩きながら利用することもできるので、純粋に読書のため新しい専用端末を買う人はどれぐらいいるのだろうか。SNE-50Kは電子ブックの可読性を高めるかもしれない。しかし、専用の端末まで買って読みたいと思うほどの魅力を電子ブックに感じるわけではないので、端末の良さよりも電子ブックって何がいいの? というところから攻めないといけないかもしれない。


 アメリカでの傾向を見ると、Amazonがほとんどのベストセラーを電子ブックで販売したり、端末のKindleが80万台以上売れたり、スマートフォンから電子ブックを利用する人が増えたり、Googleが全世界の図書館の本を集めてデジタル図書館を作ったりと、紙の本より電子ブックが読まれる時代になってきたともいえる。その一方、韓国では出版社や作家らが電子ブックの流通構造がはっきりせず、精算も曖昧だった点を挙げてあまり乗り気でないところがある。


 しかし、サムスン電子が電子ブック市場に参入したというニュースは、出版業界の認識までも変えられそうだ。大手企業が参入するというのは市場性が認められたという証拠でもあるので、今までは違った流通やサービスを期待している。


 サムスン電子は、Amazonと競争するため北米市場がターゲットで、韓国をテストベッドにするため先に発売したのかもしれない。それでも、消えかけていた韓国電子ブック市場に新しい風を入れてくれたのは確かだ。機能が豊富すぎるサムスン電子の携帯電話が、リーダー機普及の足をすくう可能性もあるが、サンプルを手にした記者らの反応もよかった。電子ブック市場の未来は、意外に明るいかもしれない。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2009年7月30日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090729/1017397/