Google Chrome、韓国ブロガー達の反応は

グーグルの新しいWebブラウザー「Chrome」は韓国でも話題騒然、ブログにはChromeを使用した感想があふれかえっている。もともと検索の王者グーグルが開発しているだけに、マイクロソフトのExplorerよりも使いやすいブラウザーになるだろう、画期的なブラウザーでない限り公開しなかったはずであると、期待されていた。

 韓国のブロガーたちは初印象はとにかく邪魔な機能もなくすっきり整頓されている、Webサイトを見やすくすることに注力したブラウザーという評価をしている。Web画面が表示されるスペースを最大限確保するためタブを左上に表示させ、メニューも一行にするなど無駄をなくしたのも好評だ。何よりも満足されているのはスピード。Webサーフィンの体感速度がとにかく速い、すいすい画面が表示され移動できる、メモリーも少ししか使わないのでストレスがない、アドレスの代わりにキーワードを入れるだけで該当するサイトがどんどん出てくるので楽、などと世界のユーザーと同じようにその利便性に驚き、使ってみた人はみんな絶賛している。


 個人的にはChromeでは一つのタブがエラーになった時に、シャットダウンするのがそのタブだけに限定されることが何よりも気に入っている。Explorerだと一つの画面にエラーが発生すると、全てのタブやブラウザーがシャットダウンしてしまうので、書きかけのメールなどが吹っ飛ぶことがよくあった。こういう時に限って、自動的に下書き保存されるはずが何も残っていなくて、髪を引き抜きながら悲鳴をあげたくなる悲惨な状況になってしまうので本当に困っていた。


 しかし予想通りの問題もあった。以前、Firefox 3が使えない理由で紹介したのと同じように、IE以外ではサイトが表示されない、SNSでは音楽再生ができない、インターネットバンキングや電子政府が使えない、サイトにログインでいないといった問題がChromeでも繰り返されている。


 グーグルは、Chrome韓国語正式バージョンではActiveXが使えるようプラグインを追加する方式で調整すると話している。現在、ActiveXに対応しないと使えなくなるサイトをリストアップしているとのこと。有名な話だが、韓国のWebサイトはWeb標準ではなくIEに合わせられているため、世界的に話題になっているブラウザーであっても韓国では使えない。グーグルはWeb標準を守らない韓国市場に合わせたブラウザーを公開するとしている。そこまでするほど、韓国って大きな市場なのかな?


 韓国のWeb標準化団体であるオープンウェブは、「グーグルがActiveXをサポートすることによって、やっとWeb標準化を守ろうとする動きが出始めた韓国が逆戻りする可能性もある、ActiveXによるセキュリティ問題がChromeでも発生する可能性がある。グーグルのこの決定にはがっかりした」と反対している。


 さらにグーグルのプライバシー侵害が気になるので使いたくないという人も少なくない。Chromeを通してユーザーのWebサーフィンの履歴が全てグーグルに報告されているからだ。グーグルはユーザーの訪問履歴を収集しているというのだ。GoogleのWebアプリケーションを使っていたりすると、さらにGoogleに提供する情報の種類は増える。


 Googleに集約されている情報をつなぎ合わせれば、理論上、どこの誰がどんな情報に興味を持っているのかも把握できるので、世界各国の動きをグーグルは予測できるというわけだ。私のような一個人の情報など使い物にならないかもしれないが、政府機関に勤める重要人物がどんなサイトを訪問し、どんなキーワードで検索しているのかといった情報を集められたら、これはかなりすごいことにつながるのではないだろうか。こう考えると、グーグルは新しいブラウザーを公開したのではなく、個人情報収集ツールを広めようとしているのかもしれないという怖さもある。

 

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年9月10日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080910/1007829/

日本の携帯メーカー淘汰に割り込むタフな韓国勢の狙い

 韓政府は6月末、携電話端末の生産量を2012年までに現在の2倍近い6億台に伸ばすことを目指す「移動通信産業略」を表する。サムスン電子やLG電子の世界進出で、携電話産業は韓国経済の約7%を占める一大産業に展している。新略の下では日本市場も然大きなタゲットとなるだろう。


 


 


■プラダフォン発売は日本本格進出の象


 


 市場調査社のガトナによると2007年に11億6000万台規模だった世界携電話市場は2010年に15億2940万台、2012年には18億750万台にえる。このため新略の目標が達成されれば、世界携電話市場のなかで韓が占める割合は2007年の21.6%から2012年には33.2%へ高まることになる。


 


 サムスン電子の「ANYCALL」ブランドの携電話端末は2007年に世界市場で1億6100万台がれた。2008年は2億台の販を目標にしており、モトロラとの差を大きくげようとしている。LG電子も2007年に世界で8050万台を販している。特にLG電子はイタリアのファッションブランド大手プラダ(PRADA)と提携した「プラダフォン」や「チョコレトフォン」がヨロッパでヒットしたおかげで、全世界でブランド値やイメジが上昇した。


 


 


 


  州で先行発売されたLG電子の「プラダフォン」


 


 


 プラダフォンこと「PRADA Phone by LG」は2008年6月から日本でもNTTドコモの端末として発売されることになった。全面タッチスクリンを採用したこの端末は2007年3月にヨロッパで先に発売され、世界40カ80万台を販した人の高いハイエンド端末である。このニュスは日本で大きく報じられ、韓の端末メがついに本格的に日本へ進出しようとしていると話題になった。


 


 LG電子に限らず韓の携電話端末メの日本進出が目立っている。世界市場を舞台にシェアを伸ばしているサムスン電子、LG電子、パンテックの3社は、日本は最後にされた大きな海外マケットであるとして、日本輸出を化し始めた。韓国関税庁の資料によると、携電話端末の日輸出額は2006年から大していて、2006年は3億4338万ドル、2007年は3億84303万ドルとなっている。
 


 


■リストラは進出のチャンス


 


 韓では、2Gの時代は日本自のPDC方式のため端末の輸出が難しかった。3Gでは韓と日本が同じWCDMA方式を採用していることもあり、端末を輸出しやすくなったと言われている。それでも、高度な技術力で開期間を短縮し年間50種類以上の新機種を世界市場で発売しているサムスン電子やLG電子にとって、端末の仕をキャリアが決める日本がとても難しい市場であることは間違いない。


 


 しかも日本の携電話端末市場はリストラのっただ中だ。三洋電機が京セラへ携電話事業を却、三菱電機は携電話端末市場から撤退、ソニー・エリクソンモバイルコミュニケションズはドコモ向けの端末略を見直す。普及率が「1人1台」の時代になり新規需要が乏しく、販売奨励金の見直しで買い替えサイクルも長くなり端末の出荷台も減少すると見まれている。


 


 逆に言えば、市場の先行きがしく日本メが次に撤退している環境だからこそ、この隙を狙って日本で地位を固められるチャンスがあると期待しているのだろう。携である日本の3G市場で端末やブランドをヒットさせることができれば、世界市場でのいっそうの競力アップにもつながる。


 


 


Wibro日本投入も視野に


 


 高速無線通信の「Wibro」が利用できるサムスン電子の端末


 


 


 韓では日本メの端末はカシオ計算機の「CanU」しか販されていない。このCanUは加入者が最も少ないLGテレコム用にもかかわらず、新機種が登場するたびにモバイルマニアが「CanUを使うためだけにキャリアをえても損はない」というほど注目されている。韓としても、日本製端末の性能の高さは十分に承知しており、日本進出にはじっくりと時間をかける考えだろう。


 


 LG電子はプラダフォン以前にも、2006年からNTTドコモに端末を提供している。2007年にはFOMAハイスピ(HSDPA)に対応したチョコレトフォンを発売した。GSM方式のエリアにも対応した「WORLD WING」端末で、日本市場向けにワインレッドカラを追加した。世界100カでベストセラとなったチョコレトフォンだが、確に人証された製品でないと目の肥えた日本のユには受け入れられないという判から、日本での販を急がなかった面もある。


  


 サムスン電子はボダフォンの流れでソフトバンクから端末を発売している。ブランド力があることから日本でもそこそこれていて、日本市場シェア1%を記したという報道もあった。


 


 サムスン電子はモバイルWiMAXの設備を日本に輸出している。モバイルWiMAX というとカド形式のイメジがいが、韓では同の高速無線通信「Wibro」を搭載したスマトフォンも発売されている。まだ決定されているわけではないが、日本のモバイルWiMAXサビスのエリアががり加入者がえてくれば、自慢のWibroスマトフォンで存の携電話端末市場とぶつかることなくシェアを伸ばしていくことも視野に入れている子だ。


 


 サムスン電子、LG電子だけでなく経営がかなり改善してきたパンテックも日本進出に積極的である。パンテックはLG電子よりも早く、2005年12月からKDDIのau向けに端末を納入し、韓のなかでは初めて日本に進出した経歴を持つ。2007年に骨導スピを搭載した「簡タイ A1407PT」を発売するなど、スリムで安いだけでなく機能の面で特を持つ端末も出し始めている。


 


 


■日本メとの距離縮める


 


 



サムスングルプの2008年春のヒット端末。タッチパネルを搭載している


 


 


 韓の携電話市場では今年、インタネット機能が重視され、タッチスクリンの簡な操作でパソコンとわらない面表示ができるフルブラウザ搭載端末がえている。キャリア最下位のLGテレコムは、「OZ」という激安パケット定額プランを始めて、韓モバイルインタネット市場で最下位からの反に出ている。


 


 「OZ」は月約600円で携電話からインタネットが使い放題になるだけでなく、キャリアのポタルサイトを由せず自由にウェブサイトへアクセスできるようにしたのが特である。これまで韓のキャリアはフルブラウザであってもキャリアのポタルサイト(日本でいうiモドのようなサビス)を由しないとインタネットにアクセスできず、キャリアと契約していないサイトにはアクセスできないようにしていた。それが「OZ」の登場により携電話からもパソコンとわらず自由にインタネットを使えるようになり、ほかのキャリアもネットワクを開放せずにはいられなくなった。 


 


 さらに、SIMカドのロック解除で複の端末が使えるようになったのも大きな化だ。海外だけでなく韓国内でも携電話に求められる機能はわり始めているため、韓のメ国内、世界市場、日本、新興市場など市場ごとにな端末を計しなくてはならなくなった。


 


 移動通信、そのなかでも携電話端末を家として略的な産業に育てようとしているだけに、韓は今まで以上に端末の輸出を化するだろう。韓は熱血で口うるさい韓に揉まれ、ヨロッパ、アメリカ、インド、中など世界各ってきた経験を通じ、どんな況でも生きれるタフさを身につけてきた。


 


 世界マケットの一つとして日本を見ている韓と、需がすべてで日本人ユを熟知している日本メの競力を比べるのは難しい。しかし日本にとって韓米のメより怖い相手になるだろう。世界最大の3G市場で勝ちれるよう韓は必死で、重に距離を縮めている。日本のメがまた携電話市場から撤退するのを待っているかもしれない。



– 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  
2008年6月3日


動画大国・韓国で急務のユニバーサルデザイン対応

韓国では今年4月、障害を持つ人もウェブサイトを平等に利用できるよう、公共機関や企業のサイトにユニバーサルデザイン対応を義務付ける法律が施行された。様々なランキングで「韓国の電子行政・電子政府は世界一」との評価を受けているが、ユニバーサルデザインへの対応は後れていた。法律の施行後、福祉団体などからは堰を切ったように使いやすいサイト作りについての要望が寄せられている。(IT先進国・韓国の素顔)



■ユニバーサル対応が後れていた韓国のサイト


 この法律は障害を持つ人が日常で差別を受けていると感じないようにするためのもので、情報化に関する規定が盛り込まれている。公共機関、医療機関、福祉施設、従業員300人以上の企業のウェブサイトは2009年4月までに、そのほかのサイトは5年以内に、ユニバーサルデザインによるアクセシビリティーを順守するよう義務付けている。違反行為があった場合、3年以下の懲役または3000万ウォン以下の罰金が科される厳しいものだ。


 現在の韓国のサイトはフラッシュや画像がふんだんに使われている。フラッシュや画像などはテキストで説明を入れられる仕様になっているが、ほとんどのサイトは手間がかかることを理由に省略しているため、読み上げソフトが役に立たない。


 法律が施行されて以降、画像ファイルを分析して音声で読み上げるというソフトも発売されたが、サイトの制作時点でウェブの標準が守られていないため大半の画像はまだ読むことができない。結果として、目が不自由な人がインターネットショッピングや検索をすることは夢のまた夢といった状況になっている。


 また韓国ではウェブの機能を付加する「ActiveX」対応のサイトが多く、いまだに特定のプログラムをインストールしないとトップページが利用できないというケースが多い。インターネットバンキングや動画サイトで特に多く実装されており、目が不自由な人にとってはやっかいな存在だ。








放送局MBCの視覚障害者用ページ。音声で読み上げられるように配慮されているが、コンテンツは減っている


 一部公共サイトでは視覚障害を持った人用、聴覚障害を持った人用のサイトを別途制作しているが、これも元のサイトにあった内容がほとんど省略されていたり、3~4年以上アップデートもなく放置されていたりするサイトが多い。


 北京五輪の間、放送局は韓国選手の全競技をネットで再放送し、競技場の外の様子を取材した特別番組をネットで流して盛り上げた。ポータルサイトも通信会社も、サポーターとして選ばれた大学生たちにカメラを持たせ、動画を投稿させた。ブロードバンド大国らしく、ネットで動画を見るのも投稿するのも大好きだ。しかし、目が不自由な人のためにコンテンツを音声認識で読み上げられるようにしたり、音声を字幕にしたりと配慮したものはごく一部にすぎなかった。



■電子政府は1位でもアクセシビリティーの評価は低い

 韓国の行政の情報化は以前から高い評価を得ている。韓国の電子政府への取り組みは、欧米の研究機関が発表する世界電子政府ランキングで2008年も1位を獲得した。しかし国民の誰もが利用できるようになっているかという評価項目は点数が低い。米ブラウン大学の2007年の電子政府調査では、韓国は総合評価では1位だが、アクセシビリティーの順守率は0%という極端な結果だった。







 アクセシビリティーの国際規格にはウェブの標準化団体であるW3Cが定めた「WCAG 1.0」があるが、韓国でもこれを参考にして2005年10月から、「KWCAG 1.0(Korean Web Contents Accessibility Guideline 1.0)」が国家標準として指定されている。ウェブ構築に関わる人たちが標準を守ろうと活発にフォーラムを結成したり情報交換したりしているので、アクセシビリティー問題も早晩落ち着くだろう。


■IPTVも新法に対応

 テレビ放送もアクセシビリティーの側面から変化している。放送局4社は2012年までに地上波放送の90%以上を字幕放送にすると発表した。地上波放送のリアルタイム再送信ができるようになったIPTVも新法の施行後、誰でも利用できるサービスにするため、使いやすいリモコンの開発を急いでいる。IPTVや地上波デジタル放送に関しては、デジタルデバイド解消のための受信機の普及も重要だが、誰でもアクセスできるような画面、利用方法が大前提になるからだ。


 見やすく分かりやすく、誰でも見たいコンテンツにすぐたどり着ける画面構成にするほか、ニュース報道や選挙関連の放送に関しては、字幕や音声での画面解説を選択できるようにし、災害時に目や耳が不自由な人が利用できることを条件としている。


 IPTV向けのリモコンは機能が多すぎて、情報端末に慣れている若い人でさえ使い方が把握しにくいといわれていたため、単純な機能で誰でも簡単に利用できるものも開発されている。リモコンをマウスのように動かしてテレビ画面に映し出されたメニューを選択できるタイプも登場した。



■韓国の変化の第一歩


 政府は音声バーコードをどんどん導入している。日本のQRコードのようなものをウェブ画面や行政書類、医薬品に付け、専用の端末にかざすと音声で書類の内容や医薬品情報を読み上げてくれるというものだ。今のところはバーコードに600字まで情報を書き込めるようになっていて、視覚障害を持つ人を対象に専用端末の購入費約70万ウォンの80%を政府が補助している。


 音声認識にこだわる理由は、視覚障害を持つ人で点字を判読できる人が2.4%と少ないという現実にある。事故や病気などで後天的に失明した人の場合、点字を勉強するのにとても時間がかかるからだ。携帯電話の場合はSMS(ショートメッセージ)やコンテンツの中身を音声で読み上げてくれるサービスが定着している。


 韓国では障害を持つ人や低所得家庭には携帯電話加入料やテレビ受信料の免除、電気代や鉄道料金の割引などの制度がある(割引率は障害の重度やどのような障害なのかによって違う)。もちろんこうした制度も大切だが、そもそも障害の有無に関係なく平等に暮らせるための環境整備も重要のはずだ。ウェブのアクセシビリティーを真剣に考えるようになったことは、韓国にとって大きな変化の一歩といえるかもしれない。

– 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  
2008年9月2日


「世界初」はもういらない――韓国イ・ミョンバク政権の新IT戦略

韓国知識経済部は2008年7月10日、イ・ミョンバク新政権のIT産業政策である「New-IT戦略」を発表した。その目標は「ITの拡散による産業構造の先進化と社会問題解決」で、3大戦略分野として「全産業と融合するIT産業」「経済社会問題を解決するIT産業」「高度化するIT産業」が選定された。2012年まで韓国IT産業では「融合」がキーワードになる。

■ITの恩恵をすべての産業に


 知識経済部は「新しい時代精神に立脚して3つの戦略分野を導出した。IT産業そのものだけでなく、全産業と経済社会の当面の課題を解決する方向でIT政策を変化させる必要がある」としている。この戦略をとりまとめた知識経済部は2008年の再編により情報通信部と産業資源部が一つになった省庁で、日本で言えば総務省のIT政策部門と経済産業省が一つになったようなところだ(通信と放送に関しては通信放送委員会が別途設立された)。24日には新戦略の具体的な実行計画として「ITイノベーション2012」も発表した。









国会開会式で演説する韓国の李明博大統領=11日、ソウル〔共同〕


 新政権は、ノ・ムヒョン大統領時代の「IT839戦略」に対して「政府の関与が大きすぎる」と批判的だった。Wibro(モバイルWiMAX)やDMB(モバイルデジタル放送)といった「世界初」を目指した技術開発は進んだものの企業や市場の需要を反映しておらず、名ばかりの政策も多かったという主張である。それだけに、今回の新戦略で何がどれだけ変わるかが注目を集めていた。


 イ・ミョンバク大統領の在任期間にあたる2008年から2012年まで実施される新しい戦略は、今まで何度も新政権が強調してきたように市場主義、自由競争が基本となる。政府と公共機関は需要がまだ少ない最新分野に投資し、需要を拡大させる役割を担うという。

 知識経済部の資料を見ると、2007年の韓国IT産業の輸出動向は、携帯電話端末、半導体、ディスプレーの3品目だけで全体の約77%を占めている。IT業界は中小企業の占める割合が約99%と高いのに対し、生産に占める割合は約29%、輸出は約13%に過ぎない。しかも携帯電話やディスプレーは海外から部品の多くを輸入しており、IT輸出が増加すればその分だけ輸入や海外へのロイヤルティー支出も増える。


 韓国はサムスン電子、LG電子など一部企業がグローバル化を果たし、インターネットの利用率も高い。しかし、今の産業構造を変えていき、全産業のIT化により経済全体を活性化させていかなければ、「IT強国」とはいえなくなるという危機感は多くの人に共通している。New-IT戦略は何よりも企業と市場の活性化が重要であるとして、大手企業はもちろん、中小企業が希望をもってビジネスに取り組めるような戦略作りに苦心した様子が伺える。

■RFIDやグリーンITに集中投資


 New-IT戦略によると、政府は2012年までの5年間に3兆5000億ウォンを投資する。一方、民間企業の投資額は110兆ウォンを見込み、民間主導で財政支出を抑制する方針だ。


 数値目標では、2012年までに国内生産1兆ウォン以上のIT融合産業分野を10以上創出し、製造業の成長率を2%以上引き上げる。また2012年にはIT産業輸出品目の多様化で輸出金額2000億ドルを達成し、売上高500億ウォン以上の企業を2007年の607社から2012年には1000社に増やす。そのほか、グローバルソフトウエア企業を10社育成し、専門教育を受けた2万人のNew-IT人材を養成することなどが挙げられている。







 「全産業と融合するIT産業」の具体的な計画としては、製品のIT化、プロセスのIT化、サービス業のIT化、組み込みソフトウエア開発を推進する。造船・自動車・機械・繊維・医療機器といった韓国を代表する5つの既存産業でITの融合に取り組み、2012年には融合技術を12分野に拡大させる。


 中でもRFIDには力を入れる方針だ。自動車や繊維(衣類)、流通産業にRFIDやユビキタス・センサー・ネットワーク(USN)を導入したテスト事業を立ち上げるなど、RFID普及だけで2008年に60億ウォンを投資する。既存産業のIT融合を促進するための「産業IT融合センター」も2012年までに10カ所に設立する。


 「経済社会問題を解決するIT産業」では、グリーンIT実現のためIT製品の省エネ効率を2012年までに20%向上するという目標を掲げる。このための関連技術開発に5年間で2000億ウォンを投資し、LED(発光ダイオード)産業の世界シェア3位を目指すという。郵便局や公共機関が率先してLED照明などを導入し、民間の需要も掘り起こせるように500億ウォン規模のLED共同ファンドも組成する。

 さらに高齢化に伴う医療問題解決のためユビキタスヘルスケアにも力を入れる。ユビキタス病院を3カ所程度設けるという計画があるほか、デジタル・レントゲン・ディテクター(Digital X-ray detector)といった先端医療機器開発に5年間で2500億ウォンを投資し、これを支援するためのセンター設立に1071億ウォンを充てる。医療機器のIT融合化では世界シェア5位が目標だ。


 「高度化するIT産業」としては、半導体やディスプレー産業育成、ネットワーク・無線通信、IT部品とソフトウエア産業の育成が含まれる。戦略分野としては電子情報デバイス、情報通信メディア、次世代通信ネットワーク、ロボット、ソフトウエアコンピューティング、知識サービス、USN、産業技術融合、バイオ医療機器が選定された。


 半導体やディスプレー、携帯電話端末などに使われるIT部品やコア技術の国産化のためには2008年だけで3204億ウォンが使われる。内訳は半導体が1081億ウォンでもっとも多く、IT部品802億ウォン、ネットワーク(次世代ネットワーク)540億ウォン、移動通信524億ウォン、ディスプレー320億ウォンとなっている。ディスプレー産業基盤センター協議会の設立、携帯電話端末の産業成長のためのモバイルテストフィールド拡大など、中核的なIT産業の基盤をより確固たるものにする。知能型ホームネットワーク産業発展戦略と知識情報セキュリティー産業発展戦略も2008年末までに立案し、このための予算として81億ウォンを補助する。

■人材育ててベンチャーに投入









サムスンの携帯「Anycall」の看板=ソウル〔AP Photo〕


 New-IT戦略では企業の需要を反映した人材養成も重要な課題となっている。


 人材養成については、大卒クラスの人材が余剰となる一方、博士クラスの高い教育を受けた高度人材が不足しているという課題がある。このため、「融合・複合」に対応して新市場を切り開くプロジェクトリーダーになりうる人材養成のため、2012年までに2800億ウォンを投資して2万人を養成する。


 韓国では失業率が上昇し求職難となっている。しかし、中小ベンチャー企業からは「我々には有望な人材が回ってこず、依然として求人難」と、長期的な人材養成を要求する声が絶えなかった。そのため、2009年にはまず全国5カ所で企業、大学、研究所が共同参加する「IT融複合人材養成センター」を設立運営する計画だ。

 政府の支援を受けた人材と政府の研究機関の研究員には中小企業やベンチャー企業での勤務を義務付けるという制度も検討されている。生涯のキャリアを管理してもらえる「高級IT人材全生涯キャリアパス管理体制」が導入され、海外に離れていく人材を呼び戻す戦略も立てている。


 さらに、世界で初めてIT教育認証制度「ソウル・アコード」を2009年に始める。技術者教育の分野では国際的な同等性を相互承認するための国際協議体としてワシントン・アコード(Washington Accord)がある。しかしワシントン・アコードではIT分野の教育特性を十分反映できないため、韓国主導でIT教育国際認証の枠組みであるソウル・アコードを推進するということだ。


 法制も変更する。現在はいくつもの法律に分かれている情報通信関連法を一つにまとめ、IT製造業とサービス業が並行発展できる制度的基盤作りとして「情報通信産業振興法(仮称)」を2008年12月には国会に提出する計画だ。


 このほか、New-IT戦略には国内の知的財産権管理を強化して海外企業との特許紛争に対応できるよう専門性を高めること、IT研究開発基金として大手通信企業が売上高の0.1%ほどを政府に拠出していた制度を5年後に廃止し料金競争を高めること、大韓貿易投資振興公社(KOTRA)と韓国情報通信国際協力振興院(KIICA)に分かれていた韓国企業の海外進出支援組織を一本化し窓口を大韓貿易投資振興公社に絞るといったことも盛り込まれている。

■「世界初」より実質的な支援に転換


 政府関係者らはNew-IT戦略について、IT839戦略をはじめとする過去のIT戦略といかに異なるかをしきりに強調している。ただ、重点事業としている8大課題も、IT839時代に選定された産業資源部の7大戦略技術と情報通信部の14大IT革新技術をまとめて8つにしただけといえないこともない。既存産業とITの融合や部品の国産化も前々から課題とされてきたことだ。


 変化があるとすれば、やはり情報通信部と産業資源部に分かれていたIT産業政策が、2008年からすべて知識経済部の担当となり、省庁間の縄張り争いがなくなりスムーズにことが運ぶようになったという面だろうか。これにより企業も楽になった。







 今までのIT戦略はサービス、ネットワーク、機器といったIT産業そのものの発展に焦点が当てられていた。それに対し、New-IT戦略はIT利活用による社会問題の解決や、産業全般の高度化など範囲が広く、「ITそのものの戦略というより国家発展戦略に近い」と政府は説明している。しかし、いまのところ大きな差は感じられない。ソフトウエアやSIといった業界からは「融合ばかり強調してIT産業自体の成長支援策については触れていない」という批判の声もあがっている。


 ただ、これまでのスローガンであった「世界初で何かをする」という目標は一転して影を潜めた。世界初という記録を求めて政府が旗を振るよりは、企業の意見を優先し、企業が望む人材を養成したり、ファンドや協議会を設立したりすることで間接的に企業を支援する。省庁間の無用なアピール合戦の必要がなくなったため、実質的な成果を追求しやすくなったという側面もあるだろう。こうした政策の転換はこれからの産業発展に影響を与えるはずだ。


 経済大統領として期待されたイ・ミョンバク大統領が就任し、真っ先に政府組織再編が行われた。小さな政府、ビジネスがしやすい最小限の規制が新政権のキャッチフレーズでもある。IT産業に関しても省庁再編により業務の改廃や公務員リストラが噂されたりし、落ち着かない雰囲気が続いていた。

 New-IT戦略の発表で、IT産業全体がようやく今年度の仕事を始められるようになったといわれている。それは結局、韓国はまだ企業が政府の支援に頼りすぎているということの裏返しだろう。新政権の狙い通り、民間主導の経済が実現するにはもう少し時間がかかりそうだ。

– 趙 章恩  

NIKKEI NET  
インターネット:連載・コラム  
2008年7月30日


国が始めた炭素キャッシュバック!省エネ商品を買うとポイントが貯まる

韓国のIT産業政策を担当する省庁の知識経済部は、2008年10月より炭素キャッシュバック制度(Carbon Cashback)を導入すると発表した。

 地球温暖化防止のための活動に市民をより積極的に参加させる方法として、省エネまたは二酸化炭素ガス低排出製品を購入すると炭素キャッシュバックポイントが貯まり、交通費や行政関連手数料納付、自動車購入、商品券などに変えられ、現金のように使えるようにするという内容である。


 クレジットカードのマイレージポイントと同じ使い方で、このキャッシュバック制度のために、政府は現在韓国で人口の約8割、3000万人以上が加入している「OKキャッシュバッグ」の運営会社(株)SKマーケティングアンドカンパニーと提携することにした。既存のOKキャッシュバッグカードに炭素キャッシュバックポイントを別途貯められる。OKキャッシュバッグはSKグループが経営するガソリンスタンド「Enclean」や、携帯電話キャリア「SKテレコム」を利用するとポイントが貯まり、その他にも大手スーパーやチェーン店、本屋など全国4万5000店以上の加盟店でポイントを貯めたり使ったりできる。


 エコ、省エネは韓国でも国家課題になっているほどで、テレビや新聞で毎日何度も耳にする。「ゴミの分別をしっかりしましょう」や「電気を節約するためにエアコンの温度を高めに設定しましょう」というレベルではもう間に合わない、画期的な二酸化炭素排出削減方はないかということで思いついたのがキャッシュバック制度、というわけだ。


 まずは何よりも二酸化炭素を発生させている家電がターゲットになっている。韓国の家電と車には全てエネルギーの効率性を評価し、その結果を表すシールを付着しているが、省エネ1等級または待機電力1W未満の家電製品から優先的にキャッシュバックの対象となる。


 テレビ、オーディオ、DVDプレーヤー、洗濯機、冷蔵庫、電気炊飯器、キムチ冷蔵庫(韓国の家庭にキムチ冷蔵庫は必需品だ)、エアコン、掃除機、扇風機、食器洗い機、電話機など33品目が選ばれた。


 炭素キャッシュバック制度の参加企業はまだ募集中とのことで、当分は販売価格の1~5%をポイントに貯めてあげる方針だという。OKキャッシュバッグの加盟店で購入した場合には重複積立も可能とのこと。


 参加企業はキャッシュバック運営に関する広告宣伝費と運営手数料が免除され、エネルギー管理公団が色々なインセンティブを提供するとしている。キャッシュバックされる金額の部分については基本的に企業が負担するが、政府予算で一部費用を補充する方案も検討されている。今後は二酸化炭素排出情報表示制度とも連携し、炭素排出量によってポイントを提供する制度へと発展させたいとしている。


 韓国では2012年末までにはアナログ放送が中断されデジタルに切り替わるため、日本と同じくデジタルテレビへの買い替え需要が大きく動いている。炭素キャッシュバック制度の導入で、省エネデジタルテレビの普及が促進されることは間違いないようだ。


 韓国では家庭の消費電力の約11%が待機電力によるものであるとして、使わない電気機器類のプラグはこまめに抜きましょうというCMが流れている。待機電力の少ない家電を使うのも省エネであり環境保護につながる。


 しかしエコ以前に切実なのが電気代の節約。韓国も日本以上に物価高騰が問題になっていて、電気代に水道代に光熱費の値上がりも時間の問題だ。電気代も節約してキャッシュバックもしてもらって一石二鳥なのは確かだが、政府が特定企業1社と手をつないでキャッシュバック制度を運営することを懸念する声もなくはない。このまま問題なく始められるのだろうか、10月になったらまた報告します。




(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年8月27日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080827/1007364/

<ケーススタディ“韓流”IT TRY&ERROR>5.今回のテーマ■ETRI

シンクタンクの中小企業支援 技術支援派遣や諮問など



 


 添付画像


 韓政府の技術系シンクタンクであるETRI(韓電子通信究院)は、2008年からすべての究員が中小企業の技術イノベションのための活動に加し、究開のための技術を支援したり問題を解決するといった「お助け制度」を運することにした。



 中小企業の育成
支援のために政府系シンクタンクの人材を積極的に活用するこの制度は、市場とフレンドリな政府になるという李明博政の政府組織改編によって施されることになった。「政府の技術系シンクタンクは技術を開することだけが目的なので市場でれない技術ばかり開している」といった批判があったことも制度足の背景にある。


 


 この制度により、ETRIのすべての究員は勤務時間の10%以上を中小企業支援の究に使わなくてはならなくなった。中小企業の役に立つシンクタンクになることを目指し、イノベション型中小企業向けの究開支援策としてプロセス段階別改善方向と短期、中期、長期に分けた行項目を作成している。添付画像


 


 具体的な支援としては、(1)大企業と中小企業との共同究開事業によって生産する部品の競力を高める、(2)品質保証制度を施して開された技術の完成度を向上させることで事業化成功率を高める、(3)中小企業への技術移を円滑にするため、企業ごとに担者を決めて製品化までのプロセスを支援することで要求事項を適時に把握する、(4)技術移後に人材不足で事業化できない技術イノベション型中小企業のために、アフタビスとして支援を大する、(5)技術移によって製品化を現するだけでなく、中小企業の足度を高めた究員には破格的なインセンティブを支給する、(6)中小企業向けETRI技術お助けセンタの運、(7)開技術の事業化と資金調達やインキュベションセンタなどのためのETRI技術持ち株社設立など。


 


 ETRIは中小企業と密接な係を築くことで市場需要とのギャップをなくし、市場が要求する技術の需要化を究計時反映、製品化の成功率を高めるのが狙いである。中小企業のみである究開要員の不足についても、ETRI究員の派遣や出向で解決できるのではないかと期待されている。(趙 章恩●取材/文)


 


 BCN This Week 2008年8月4日 vol.1246 載] Link


 



 

韓国ユーザーが携帯に求める機能は「自分」撮りのしやすさ、機種変更周期は1年未満

韓国での携帯電話の買い替え周期がまた短くなった。

 リサーチ会社と携帯電話部品開発会社が2008年1月に共同で開催したアンケート調査の結果によると、16~35歳の利用者629人のうち、58.2%が過去1年以内に携帯電話を機種変更しているという。しかもそのうち36.4%は機種変更して6カ月も経たないと答えた。2007年に行われた政府機関の調査では、機種変更の周期は1年4カ月ほどという結果があったが、今回は16~35歳と若い世代を対象にした調査のせいか、さらに短くなった。


 韓国の携帯電話は決して安くない。2008年3月末から奨励金規制がなくなり自由化されてから無料端末も登場したが、無料といっておきながら実は月賦で36カ月払いとか、特定の付加サービスに加入しなくてはならない条件があるから、顧客は端末価格を違う形で支払っているだけである。


 奨励金があっても最新端末の価格は大体7万~9万円はするので、どんなに安くなっても流行の新機種だと5万円は下らない。それでも機種変更を繰り返す理由は、携帯電話は機能やデザインよりも、自慢になるかどうかで決めるようなものだからではないだろうか。そしてもう一つ、韓国携帯ユーザーにとっては自分撮りしやすいカメラ、実物よりきれいに写してくれるカメラが付いているかどうかもすごく大事なのである。


 上記のアンケートでは1年以内に機種変更したいという人も35%いた。機種変更の理由としては端末の故障が43.9%ともっとも多かったが、「流行遅れ」25.8%、「キャリアを変えたい」6.7%、「新しい機能とサービスを利用したい」5.6%という理由もあった。


 携帯電話購入時に最優先する要素としては価格、デザイン、ブランド、通話品質、付加機能、故障しないといった順でカメラの画素数は上位に登場しないのだが、携帯電話で通話以外に頻繁に使う機能はカメラが圧倒的だった。その次に音楽再生、電子辞書、ワンセグ、モバイルインターネットと続く。日本では当たり前な携帯電話でインターネットを使うという機能は韓国ではまだまだそれほど使われていない。何よりも料金が高いからだ。

携帯電話カメラを使った撮影頻度は週6.7回。日本だと携帯電話のカメラで撮るのは風景や食べ物などだろうが、韓国は違う。男性の場合は友達や彼女が37.7%で1位、女性の場合は自分自身を撮ると答えた人が48.9%と圧倒的に多かった。


 確かに、時間と場所に関係なくあちこちで携帯電話で自分を撮っている女性をよく見かける。腕を思いっきり上に伸ばして、できるだけ顔が小さく写るようにがんばるんだよね。今街を歩いている自分、今ケーキを食べている自分などなど、この瞬間の自分を記録に残したいという個人的な目的だけでなく、SNSやホームページに堂々と掲載して自分のかわいさをアピールするところは、世界でも稀なのではないかと思ってしまう。自分に自信がありすぎるというか、国民総芸能人化というか、自分のことをアピールするのが好きなんだよね。


 韓国では人に撮ってもらうのではなく自分で自分を撮る「セルフカメラ」好きな女性が本当に多くて、写真写りがいい場所とネットで噂になれば客がどっと増える。ソウルの中心部である鐘路には33階建てのビルがあり、最上階はガラス張りのレストランになっている。このレストランでセルフカメラを撮ると美人に見えるとネットの書き込みが増え話題になったことから、周辺のレストランやカフェではお店で撮ったセルフカメラの写真を投稿するイベントを開催し、照明にものすごく気を使っているほどだ。携帯電話の大型代理店にはフォトゾーンみたいなコーナーがあって、壁に絵を掛けたり照明を落としたりしてセルフカメラを撮りたくなるようにしている。


 韓国のこの夏の人気機種はどれもタッチパネルで、500万~800万画素のカメラが付いている。顔認識でセルフカメラが撮りやすくしたカメラが付いた携帯も増えている。日本ではiPhone 3Gだとメールが打ちにくいということがよく言われているが、韓国ではメールよりSMS、モバイルコンテンツよりは写真なのでタッチパネルの方が使いやすい。撮った写真を確認したいので液晶もどんどん大きくなっている。写真を保存するためにメモリも大容量になっている。


 ここで、セルフカメラのコツを伝授。「顔は15度横に傾け、カメラを45度上に置いて上目にして撮る」。すると、顔は細く目は大きく見えるという。みなさんもチャレンジしてみてはいかがでしょう?



(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年8月20日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080808/1006883/

選手より燃える五輪マーケティング、動画投稿にインターネットTVでも中継

北京オリンピックが佳境だ。スポーツ観戦好きで愛国心も強い韓国人にとってオリンピックは何よりも楽しみである。選手よりも応援の方が熱すぎて怖くなるほどの韓国だけに、オリンピックマーケティングも日本以上に熱い戦いが繰り広げられている。スーパーやデパ地下では連日中華料理フェアが開催され、街の屋台にも豚マンやシューマイ、中国のお菓子が目立って増えている。

 市場やディスカウントショップでは金メダル念願セールが開催され、夜食やスポーツ用品が値引きされている。金メダルを取った種目のスポーツ用品は特別セールも予定されている。オリンピックとあまり関係なさそうなガソリンスタンドまでも選手への応援メッセージを書き込む懸賞イベントを開催している。


 特にオリンピックマーケティングに熱を上げているのはテレホンショッピング。オリンピック期間中はテレホンショッピングの視聴率も売上も落ちることが予想されているだけに、試合中継の合間に入るCMの時間を狙って売れそうなものを集中的に宣伝するしかない。CMが始まるとみんな一斉にリモコンでザッピングするから、その瞬間を狙うのである。


 水泳試合の時間帯には、水泳選手のナイスボディーに刺激された視聴者達がダイエットや筋トレに関心を持つと予想されるため筋力トレーニンググッズを販売し、男性がテレビの前に集まるサッカーの試合中継時間には男性に人気の高い一眼デジカメや保養食品を販売するといった計画だ。韓国は夏になると3回サムゲタンを食べる日があり(初伏、中伏、末伏)保養にとても気を使うからだ。


 家電は言うまでもない。2012年末でアナログ放送が中断される韓国では、日本と同様、オリンピックを目処に地上波デジタル放送を受信できるテレビへ買い換えるよう宣伝している。4年ごとに開催されるオリンピックに合わせてテレビや映像技術が進化したように、北京オリンピックはハイビジョンデジタル放送普及に向けた分岐点となる。全競技がハイビジョンで放映されるだけに、デジタルテレビの販売にも力が入る。今年は液晶画面が鮮明で大きいだけでなく音声がきれいになったのも特徴だ。


 映像に合わせてスピーカーの設定が自動的に変わるテレビや今までは人気のなかったハードディスク録画機能のあるテレビが売れるなど、オリンピックらしい動きが見えている。サムスン電子の携帯電話は中国の国家代表選手団の公式端末として使われることになったことから、韓国でも限定でオリンピック待ち受け画面付きの端末を販売した。

インターネットテレビもオリンピックを中継する。オリンピック公式中継放送局であるKBSとSBSはそれぞれ
こちらと、こちらからオリンピックを生中継する。


 KTのインターネットテレビ「MEGATV」では一般人公募で選ばれた5人の大学生とお笑い芸人が北京でオリンピックの裏側を伝える番組を制作し、myLGtvは中国の歴史や文化に関する特番を放映することで、地上波テレビとはまた違ったオリンピックの楽しさを伝える計画だ。インターネットテレビは地上波放送の再放送や映画VODばかりで、自社で制作した番組を放映するのはこれが初めてである。2008年末には地上波デジタル放送のリアルタイムIP再送信や双方向放送も予定されているだけに、オリンピックをインターネットテレビからIPテレビへと進化するきっかけにしたいようだ。


 またUCC(User created contents)公募も活発に行われている。北京やオリンピックに関する動画を放送局やインターネットテレビのサイトに投稿するイベントだが、放送局や企業がスポンサーとなり一般市民からUCC中継団を選抜、ビデオカメラを持たせて北京に送り込み動画をネットに投稿するようにしている。予選での応援団の様子や北京の街並みなど旅行者の視点で見たオリンピックについて、開幕前から続々とUCC動画が投稿されている。


 UCCはアマチュアが撮影する動画なので画面も荒っぽく内容もたいしたことのない動画がほとんどなのだが、中には劇的瞬間を捕らえた動画や超笑える動画もある。UCC動画を募集する理由はデジカメの宣伝や企業のロゴを露出させる広告目的もあるが、たくさんの動画を確保していい物を選びテレビで使うためでもある。


 北京のオリンピックを迎える中国の盛り上がりはソウルオリンピックを思い出させる。色んな問題があろうとも、オリンピック期間中はオリンピックを思う存分楽しむべきではないだろうか。オリンピックマーケティングに踊らされても、それはそれで楽しい夏になりそうだ。



(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年8月13日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080808/1006860/

五輪開幕式リハーサルをスクープ?の韓国メディア、反省すべき視聴率競争

韓国の民放ソウル放送(SBS)が撮影・報道が禁止された北京オリンピック開幕式リハーサルの様子をスポーツニュースとして放映し、韓国内でも「国際的な恥」、「取材倫理というのがないのか」、「SBSがオリンピックを中継できないように処罰するべきだ」など大問題になっている。7月29日、SBSは「単独撮影」したという開幕式リハーサルの主な場面を2分ほど放映した。

 SBSの言い訳は、「オリンピックでボランティア活動をしている人々を取材するためにメインスタジアムに入った。開幕式リハーサルの練習をしている最中だったが、潜入したわけでも隠し撮りをしたわけでもない。カメラマンが正式に撮影をしたが誰にも止められなかった」とのこと。


 つまり公式のリハーサルではなくリハーサルのリハーサルというか、練習場面を放映したに過ぎないという主張だ。中国や日本で言われているように中国をけなすためだとか、オリンピックを台無しにするためだとか、そういうものではなく、「北京オリンピックはすごい、史上最大のショーになる」と絶賛する字幕を入れ、しきりにすごいすごいと盛り上げていた。


 しかし誰にも撮影を止められなかったとしても、中国側があれだけ開幕式を当日のお楽しみにするためリハーサルは報道しないでくれと言っていたのに。それを知っていながら、偶然撮影できたから放映してしまおうとする視聴率最高主義には参ってしまう。中国の人々が怒るのも当たり前だ。

SBS側は中国北京オリンピック組織委員会からの公式な抗議はまだなかったとしながらも、幹部が北京に出向いて「オリンピックを盛り上げるための放映だった」と社長名義の謝罪書簡を渡したと説明した。でもSBSは当初謝罪ではなく「こっちは盗撮したわけではない。相手が不快に思うなら遺憾としか言いようがない」と、とんでもない態度を見せていた。韓国内でSBSが謝罪する他に解決策はないと騒がれてから、やっと重い腰を上げたといった感じだった。困ったものだ。


 この問題で思ったのは韓国はまだ放送=特権、放送局の記者やカメラマン=何でもカメラを向けていい特権を持っている、という認識が強く残っているんだな、ということだ。韓国では企業のPR担当者が記者を「記者様」と呼び、バレンタインや誕生日にはプレゼントを贈り、プレス発表の時は必ずお土産を用意する。会食接待は基本だ。マスコミに属している記者のために大手企業のビルの中にはパソコンや電話が使える記者室という部屋まで用意してある。この頃はここにアルファブロガーとインターネット新聞の市民記者も接待しないといけないから大変だ。


 このような「記者はえらい」、「放送はえらい」という特権意識を変えない限り、このような問題はまた発生するに違いない。でもどうやったら特権意識をなくせるのだろうか。マスコミ入社試験は司法試験並みに難しく倍率も高い。難関を突破したエリート達が集まっているからそうなってしまうのかな。


 韓国の新聞報道によると、中国のネットでは「韓国選手団に報復しよう」、なんて書きこみがどんどん増えているという。まさか選手に悪さをするなんてそんな幼稚なことはしないでしょう。SBSは恨めしいけど、それを選手に八つ当たりするのはどうかな。


 もしこれが韓国のオリンピックで中国の放送局に開幕式のリハーサルが放映されたら?中国へのネット攻撃は壮絶なものになっていただろう。これぐらいで済まなかったかもしれない。オリンピックのように愛国心に燃え上がれる敏感な時期に中国を刺激してしまった韓国。このままでは中国に住む韓国人、企業が苦労することになる。今後の関係だってどうなることやら。中国のテレビに謝罪広告だした方がいいんじゃないのかな。


(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年8月6日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080806/1006758/

韓国、低所得層だけの携帯通信費割引実現へ

韓国の通信政策を担当する省庁の放送通信員会は思い切った方針を発表した。韓国の家計消費に占める携帯電話料金の割合はOECD加盟国の中でもトップという調査結果と、低所得層の家計通信費のうち、携帯電話料金がもっとも大きな負担になっていることを鑑みて、政府から生活補助を受けている基礎生活受給者137万人全員とワンランク上の低所得層(1人あたり所得額が最低生計費の120%以下)236万人に対する携帯電話料金の割引幅を大きく増加させるというものだ。

 元々、基礎生活受給者は携帯電話の基本料と通話料を35%割引してもらっていたが、これからは基本料は全額免除、通話料は50% 割引される。ワンランク上の低所得層は特に割引が適用されなかったが、基本料と通話料が35%割引される。KTFとLGテレコムは3万ウォン(約3000円)、SKテレコムは5万ウォン(約5000円)かかる加入費はどちらも全額免除される。


 携帯電話だけでない。保健福祉部と放送通信委員会の協議で、基礎生活受給者と低所得層が全ての通信料を割引してもらうための手続きも大幅に簡素化される見通しだ。今も手続きが複雑で基礎生活受給者の中で7万3000人だけが割引を適用されているからだ。


 固定電話も基礎生活受給者に中で65歳以上、18歳未満人には提供される。加入費、基本料免除、市内通話225分、市外通話225分無料となっている。有線ブロードバンドは利用料の30%、

 この処置により携帯電話の割引金額は合計年間59億ウォン(約5億9000万円)から約5050億ウォン(約550億円)に大幅拡大されると放送通信員会は推定している。早ければ2008年10月から携帯電話事業者の約款改定を経て割引が適用される。

また中古携帯電話端末の売買も拡大していくという。現在、中古端末はオークションや一部代理店でしか手に入らず、そのほとんどが廃棄されている。韓国人が1台の携帯電話機を使い続ける期間は1年未満という調査結果もあるように、新製品と変わらない端末が捨てられているのだ。個人情報保護のためという名目もあるが、3G以降はチップを差し替えるだけでいいので、もっと中古端末の流通を増やして行くというのは、低所得者の経済負担を減らす以上に、環境問題への対処としても望ましい方策といえる。


 割引は、低所得者向けにとどまらない。冒頭に紹介した放送通信委員会の方針では、一般国民の通信負担を緩和するために、セット販売の割引幅をもっと大きく伸すよう求めている。政府はできれば1世帯当たり10万ウォン、約1万円の割引効果があるようにするという。


 通信費を割引してくれるのはいいことだ。しかしその財源は政府の懐からではなく、携帯電話会社の負担になっている。携帯電話会社は低所得層の料金を割引してデジタルデバイドをなくすという目的には共感しながらも、企業としては収益性の悪化につながるだけである点が懸念されている。


 競争の結果として、自律的に料金が下がるなら話は別だが、今回のケースは、政府の指示に沿って一斉に割引をしなくてはならない。しかも、割引額の5050億ウォンは全て携帯電話会社の負担。せめて、割引によって発生する負担を携帯電話会社が負担する代わりに、政府も携帯電話会社に納付を義務づけている情報通信振興基金(携帯電話事業者と通信社は売上の0.5~0.75%を基金として納付し、これを国家の通信R&D予算として使っている)への拠出額を減らすとか、何らかの処置が必要なのではないかという声もあがっている。


 実際には、負担を相殺するような措置はとられないので、携帯電話会社は5050億ウォンもの負担を抱えるしかない。その結果、当然一般加入者に対する割引幅を抑えて減収要因を減らそうとするだろう。こうなると、加入者全員へ行き渡るはずの李明博(イ・ミョンバク)大統領の通信費割引公約は、低所得層の機嫌を取るだけで終わってしまいそうだ。専門家らは、「これからどんどん物価は上昇する。その度に低所得層に割引してあげるつもりなのだろうか。交通費も割引して食費も割引して。このままでは色んなところから割引の要求が出てくる」と懸念している。


 米国からの牛肉輸入問題で支持率が落ちっぱなしの李大統領。これで支持率挽回になるといいが、「こんなことで国民の機嫌を取れると思うなよ~」と厳しい意見の方が多いのも事実だ。国民みんなにメリットが行き渡る通信費値下げが登場することを期待したい。

(趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2008年7月3日 

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20080703/1005728/