第2のITベンチャーブームを巻き起こせ!(過去記事)

日本でも報道された芸能Xファイルの波紋がまだ静まらない。ポータルやコミュニティーサイトにはXファイルを掲載したりその内容について書いたりすると、刑事処罰の対象はもちろん損害賠償の対象になりかねないので注意するようにと警告が書かれてある。

 友達にちょっとだけ見せてあげるつもりが、P2Pとメッセンジャー利用率が高かったのが災いし、たった3日で4800万全国民に知れ渡ってしまったというのもすごい。だが爆弾テロ並みに怖いのが、このような好奇心から生まれたサイバーテロだということも再三実感した。


 ところが、芸能界以上にIT業界も今そわそわしている。


■韓国経済にはやっぱりITベンチャーが薬?


 日本と世界初というタイトルをおいて競い合った、携帯電話で移動中も放送が見られる衛星DMBと地上波DMB、移動通信網とホットスポット両方を使い時速60Km以上で移動しながらも携帯電話から1Mbpsの超高速インターネットが月3000円程度で使い放題のWiBRO(ワイブロ;携帯インターネット)など、IT839政策の主な課題で4~5年前から準備して来た新しいサービスがいよいよ上半期どっと披露される。


 昨年末には政府が立て続けに大胆なIT支援策を発表している。2004年11月、財政経済部長官が「2005年をベンチャー復活元年とする。梅雨に濡れた木に石油を撒いてでも火を付けてみせる」と特別な処置を考えている筋を発表してから、2004年12月24日クリスマスプレゼントのように「ベンチャー企業活性化対策」が発表された。ベンチャー対策の前にはIT839戦略、ITニューディール政策と大規模予算のIT支援策が発表されている。そこにまたベンチャーを持ってくるとは、韓国政府がITにかける意気込みのすごさが伝わってくるようである。 


 ここには


△政府主導で2008年まで1兆ウォン規模の投資ファンド造成


△ベンチャー企業の税制及び金融支援


△コスダック市場の中小・ベンチャー企業専用市場化及び活性化


△ベンチャー企業M&A活性化


△ベンチャーキャピタルの安定的財源確保及び投資資金回収支援


△ベンチャー敗者復活プログラム導入


△ベンチャークラスタ形成


△新技術製品及びSW需要基盤拡大


△部品・素材市場活性化


△大手企業とベンチャー間の公正取引確立


などベンチャー業界が要求していた政策の大部分が反影されている。


 ベンチャーへの投資を増やすため一般投資家が参加できるコスダック新規登録企業の公募株の配当量を20%から40%へ、コスダック市場の1日価格制限幅を12%から15%に拡大させた。機関投資家らの投資も増やそうと、持株を手放す際に譲渡所得税が免除される小口株主の範囲も発行株主全体の3%未満から5%未満へ拡大させた。コスダック新規登録企業の初期損失リスクが高いことを踏まえ、所得金額の30%は事業損失準備金として積み立て、損失が発生すれば積み立てられた準備金で相殺するようにした。国の基金でベンチャー専用のファンドも作る。


 不正とモラルハザードのないベンチャー企業家に技術信用保証基金などの支援でもう一度チャンスを与える「敗者復活戦」の導入には賛否両論が熱い。元々失敗してもちょっと休んでからまたどこかでベンチャーを立ち上げる企業家の多い国ではあるが、人のモラルを誰が評価できるのか、本当に客観的に評価できるのかと、不透明な審査によりまたベンチャーバブル時代のような投資詐欺事件が増えるのではないかと心配されている。


 今回の支援策は以前のように現金をばら撒くような支援ではなく、


△躍動


△多産多死


△高危険-高収益(High Risk High Return)


などベンチャーの本質を上手く生かすことができる土壌を作るために、創業・成長・成熟というベンチャーの成長段階に合わせ、その時必要となるインフラと資本を投入できる政策と評価が高いが、一度当たると大きいからベンチャーに頼るのかとの批判も多い。


 でもベンチャーを支援しなくてはならなくなった理由は色々ある。


■ベンチャー活性化方案にITニューディール政策、IT839政策も軌道


 韓国経済は長期化しそうな不況の中、三星、KT、SKテレコムなどの大手IT企業数社が国を動かすほどの力を持ち始めた。ベンチャーバブルで生き残ったところもほとんどが大手企業の子会社化している。その影響で逆に大手企業の一つでも危うくなると韓国経済全般が傾いてしまうほど偏った産業構造になってしまった。バブルといわれながらも1999年から2001年までベンチャーのお陰で韓国はIMF経済危機を克服し、韓国が進むべき道はITであるという成長動力を見付ける事ができた。


 だが今は先端技術を持つ収益性の高いベンチャーが一時的な資金難を克服できずどんどん外資系にM&Aされている。去年だけでも30社以上が外資系企業へ買収された。日本からの輸入に依存しない源泉技術確保が重要と言いながらも技術を守れない実態である。またベンチャーを下請けのまた下請けにしか見ない大手企業の悪態もベンチャー業界を潰している。国の力でベンチャーを保護しなくてはならないほどベンチャーは死にかけている。


 韓国で最も尊敬されるCEOでベンチャー第1世代のアン・チョルス社長(アンラボ)は、オーマイニュースとのインタビューで「今度こそは目に見える効果を狙った企業に対する支援ではなく、ベンチャーがベンチャーらしく生き残れる公正で透明な市場を作ってほしい」と強調した。この記事の下には延々と「もっともである」とネティズンの意見が並んでいる。


 政策とは裏腹にベンチャーの製品を買ってくれない公共機関がまだ多い。政府の対策は歓迎するが、その恩恵が本当のベンチャーではないところへ流れるような何かがあってはいけないだろう。一般市民らも「大手企業だけがもっと大きくなる産業構造はおかしい。企業も個人も貧富の差がありすぎる。ベンチャー対策でがんばれば成功できるというモデルを見せてほしい」と言っている。


 11月発表された「ITニューディール政策」もベンチャー活性化に大きく影響を与えている。


△知能型交通情報システム(ITS)、災難管理システム、DB統合標準研究などの各種情報化プロジェクト


△先端ITコンプレックス造成事業


△ホームネットワークインフラ構築事業


など「デジタル国力」をアップグレードさせるべく大型基幹事業に投資し、先端技術を持っているベンチャーが活躍できる場、市場を作ってあげようとしている。


■IT予算急遽増額、77%を上半期早期執行


 支援の決定も早かったが、執行も早い。情報通信部の予算は年末に集中したITニューディールとベンチャー活性化のため急遽1180億ウォン増額し、全体77%が上半期の内に早期執行されることになった。政府全体の予算も景気回復のため66%にあたる史上最高額の130兆ウォンが上半期執行される。関連規定の改定も上半期に全て終了させる。


 IT予算はベンチャー以外にも4171億ウォンが就職難解消のため22の行政DB構築、国家主要知識情報3千万件のデジタル化、ITSのための主要国道と4大都市の交通情報収集インフラ構築、47の中央行政機関が個別運営している電算センターを統合し政府統合電算センターを構築する事業に支援される。


 韓国ではこれを「デジタル国力強化対策」と命名している。支援策が重なる部分もあるため、省庁間の緊密な協力のためにも推進体制を確保しようと、情報通信部を中心に財政経済部、行政自治部、企画予算処が「デジタル国力強化対策推進班」を構成している。


 ベンチャー活性化対策が発表されてからインキュベーションセンターの入居が活気を帯び、ベンチャー認証申請件数も2001年バブルの頃に戻り始めている。コスダック市場は連日上昇気味、不動産屋の話しでは空きオフィスが多かった元祖ベンチャーバレーの江南テヘランバレーにも人が戻り始めているそうだ。


 もちろん、他の理由もある。マイナス金利で貯金よりは投資を考える人が増えたのと、不動産の下落で賃貸がかなり安くなったことなどだ。こうやって理由をつけるのは第2のベンチャーブームを期待しながらもまだ不安が残るからかも知れない。韓国政府の2005年目標はIT輸出850億ドル、経済成長率5%、40万人雇用。このままいけば目標達成はもちろん、韓国IT業界の歴史に残る1年になりそうな気がする。

by – 趙 章恩


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