火災原因は不明のまま、韓国政府がEV恐怖症払拭に躍起

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前回の本コラムで、2024年8月1日早朝、韓国・仁川市のマンションの地下駐車場にあった電気自動車(EV)の発火による火災が発生したことを報告した。被害額は100億ウォン(11億円、1ウォン=0.11円で換算、以下同)を超える見込みだという。発火したEVはドイツMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)の「EQE」である。

前回の記事

中国製バッテリー搭載EVが韓国マンション地下駐車場で全焼、約1580世帯に被害

 EQEの発火の原因はまだ調査中であるが、韓国法人のメルセデス・ベンツコリアは人道的立場からこのマンションの住民のために45億ウォン(約5億円)を寄付した。8月14日と20日にはメルセデス・ベンツコリアの最高執行責任者(CEO)であるMathias Vaitl氏が避難所を訪問し、住民らと今後の支援について話し合った。さらに、メルセデス・ベンツコリアは自社EVの無償点検を行うことにした。ドイツ本社からも韓国へ技術者を派遣し、国立科学捜査研究院の発火原因調査に協力しているという。メルセデス・ベンツコリアはEQEのリコールについては、発火の原因が明らかになってから決めたいという立場を示した。

 今回の火災をきっかけに、韓国国土交通部(部は省に当たる)は韓国でEVを販売するメーカーに特別安全点検を実施するよう勧告した。8月13日から韓国Hyundai Motor(現代自動車)、同Kia Motors(起亜自動車)、メルセデス・ベンツ、ドイツBMWなど、全てのEVメーカーがバッテリーの状態や外部損傷などの点検を行っている。8月16日には韓国国土交通部の長官が現代自動車の「EV特別点検センター」を訪問しその進行状況を確認したほどである(図1)。

図1 韓国国土交通部の長官による現代自動車の「EV特別点検センター」視察の様子

図1 韓国国土交通部の長官による現代自動車の「EV特別点検センター」視察の様子

(出所:韓国国土交通部)

 大統領室は8月25日、消費者の知る権利とEV恐怖症をなくすための対策として韓国で販売する全EVのバッテリー情報公開を義務化することにした。既に8月16日から国土交通部の勧告により全22のEVメーカーが全69種のモデルについて、どの会社のバッテリーを搭載しているのかを国土交通部の自動車リコール情報ポータルサイトで公開している。

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 また、一部自治体はEVを100%充電してはならないとして90%以上充電したEVは地下駐車場に入れないというルールを作ろうとした。これに対して、EVメーカー側からもともとバッテリーの総容量から安全マージンを取ってあるので100%充電しても安全だと緊急発表がなされた。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト) 

(NIKKEI TECH) 

2024. 9. 

-Original column 

火災原因は不明のまま、韓国政府がEV恐怖症払拭に躍起 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

中国製バッテリー搭載EVが韓国マンション地下駐車場で全焼、約1580世帯に被害

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2024年8月1日早朝、韓国仁川市マンション団地の地下駐車場で独Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)の電気自動車(EV)「EQE」が全焼したと複数の韓国メディアが報道した。23人が病院に搬送され約1580世帯が断水、470世帯が停電、駐車場にあった車72台が全焼、70台が煙による損傷を受けるなどの多大な被害が発生した。

 消火に当たった仁川消防本部によると、同車は充電中でも走行中でもなく駐車中だったが突然発火し、マンション駐車場のスプリンクラーが作動しなかったことで消火活動が難航した。消火までに8時間近くかかったことから被害が拡大したという。火災の原因は調査中とした(同年8月6日時点)。

 韓国の新築マンションは地上で見ると複数の棟があるが、地下駐車場は全て1つにつながっているため、煙が全世帯に広がった。高熱で地下の設備や配管が溶けたことから、マンション建物の安全診断も必要という。仁川市の調査によると、今回の火災による断水・停電の復旧作業は当分続く見込みで、同年8月6日の時点で227世帯696人が避難所で生活している。断水・停電のまま自宅で生活を続ける人も多いという。

 警察が駐車場の防犯カメラを検証した結果、同車は地下駐車場の同じ場所に2日以上駐車したままで、外部からの衝撃もなく突然発火し爆発したという。

 国土交通部(部は省に当たる)やバッテリー業界の調べによると、同車は中国・孚能科技(Farasis Energy)のNCM(ニッケル・コバルト・マンガン)バッテリーセルを搭載していた。バッテリーのモデル名は公開していない。

 メルセデス・ベンツは2020年7月、Farasis Energyの株を3%取得し、電動化戦略の実現に向けて戦略的パートナーシップを締結したと発表した。しかし2021年3月、Farasisのバッテリーはリコール対象になった。中国の北京汽車集団(BAIC Motor)は自社のEVが搭載するFarasis製バッテリーが特定環境で火災の可能性があるとして約3.2万台のリコールを実施した。Farasisがその費用を全額負担している。

 今回の火災はバッテリーが原因なのかどうかの正式発表はなされていない。韓国の自動車専門家らは、EVの火災はバッテリーによるものが多いという。例えば、バッテリーパックの製造過程で問題が生じるか、運行中にバッテリーが損傷した状態で駐車したか、バッテリーの温度や電圧を管理するバッテリー管理システム(BMS)に問題が生じると火災の可能性が高くなるという。

 警察、消防、国立科学捜査研究院は火災現場から当該EVを警察署に運び、鑑識を進めている。火災の原因を調べるためEVのバッテリーと部品を取り外して精密調査をするという。韓国内ではEVの火災原因究明も火災の損害賠償を問うのも長い時間がかかると見込まれている。

 複数の韓国メディアによると、今回のEV火災に衝撃を受け、EVを地上の駐車場に止めるようにするマンションが増えた。地下にあるEV充電施設を地上に移転したりEV専用消火施設を導入することを検討したりするマンションも増えているという。

(出所:Adobe Stock)

(出所:Adobe Stock)

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趙 章恩=(ITジャーナリスト) 

(NIKKEI TECH) 

2024. 8. 

-Original column 

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00114

Samsungがオリンピック恒例のスマホ贈呈、パリ五輪は表彰台での自撮りが可能に

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韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は2024年7月24日、折り畳み型スマートフォンの新機種「Galaxy Z Fold6」「Galaxy Z Flip6」を世界に向けて発売した(日本は7月31日に一般販売開始)。同月12~18日に事前予約を行った韓国では91万台の申し込みがあった。前モデル「Galaxy Z Fold5」「Galaxy Z Flip5」の102万台を下回った。ネックは前モデルと比べて10%以上の値上がりとなった出荷価格と見られる。Galaxy Z Fold6の最安モデルは222万9700ウォン(約24万7700円)、同Z Flip6は148万5000ウォン(約16万5000円)となった。

折り畳み型スマートフォンの新機種「Galaxy Z Fold6」(写真中央)「同Flip6」(同右)

折り畳み型スマートフォンの新機種「Galaxy Z Fold6」(写真中央)「同Flip6」(同右)

(写真:筆者)

 韓国メディアが注目したのは、初めて予約購入した人の半数以上を20~30代が占めたこと。韓国で人気のあるスマホブランドを年代別に見ると、現在は10~20代が米Apple(アップル)の「iPhone」、30代以上はGalaxyとなっている。今回の折り畳み型Galaxy新機種は、より若い層にも人気が拡大している。

 Galaxy Z Fold6の重さは239グラムと、前モデルの253グラムから軽くなった。数字だけを見るとわずかな差だが、手に取ると、確かに軽くなったと感じるほどだった。プロセッサーは米Qualcomm (クアルコム)の「Snapdragon 8 Gen 3」へアップグレードされた(前モデルは同Gen 2)。ディスプレーは前モデルの2316×904画素のHD+ Dynamic AMOLED 2Xから新モデルは2376×968画素のHD+ Dynamic AMOLED 2Xへと解像度が向上し、明るさは最大で1750nitsから同2600nitsへとより明るくなった。

 Galaxy Z Flip6はメインカメラの画素数が5000万画素となり、前モデルの1200万画素から解像度が大幅に向上した。メモリーは前モデルの8Gバイトから新モデルは12Gバイト、バッテリーの容量は前モデルの3700mAhから新モデルでは4000mAhに増えた。フレームはアーマー・アルミニウムで強化された。ディスプレーの明るさは前モデルの最大1750nitsから新モデルは同2600nitsへとより明るくなった。自撮りを重視する韓国では、光学相当ズーム2倍、AI(人工知能)ズームは最大10倍、夜間撮影モードの改善などカメラ性能の向上が最も高く評価された。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト) 

(NIKKEI TECH) 

2024. 7. 

-Original column 

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00113

ストライキ長期化のSamsung、「唯一のAI総合半導体企業」をアピール

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台湾の調査会社であるTrendForce(トレンドフォース)によると、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)は2024年7月16日時点で広帯域幅メモリー「HBM(High Bandwidth Memory)」の第5世代に当たる「HBM3E」の自社テストが完了し、2024年内に量産を開始するという。米NVIDIA(エヌビディア)に納品できるかどうかに寄らず、AI(人工知能)サーバー向けHBMの需要に備えるとする。エヌビディア向けでは、競合の韓国SK hynix(SKハイニックス)と米Micron Technology(マイクロン・テクノロジー)が既にHBM3Eの量産を開始したが、サムスン電子のHBM3Eはまだ品質テスト中である。

 韓国内では、2024年7月末を予定しているサムスン電子の実績発表の場で、エヌビディアへの納品を公表するのではないかと噂されている。サムスン電子はHBMの供給を2024年に前年比3倍、2025年は同2倍以上と、大幅に増やす計画を立てている。暫定値ではあるが、同社全体の2024年4~6月の営業利益は10.4兆ウォンと前年同期比で1453.24%の増加、このうち半導体部門の営業利益は6兆ウォンと証券業界の予想を上回った。同社は需要が大幅に伸びているNAND型フラッシュメモリーを増産し、価格も15~20%引き上げるとしているので、営業利益はさらに積み上がる見込みである。

 しかし韓国メディアや産業界は「サムスン電子危機説」を唱える。同社は標準品の大量生産により、メモリー市場の世界1位を長年キープしてきたが、このことが逆に顧客のニーズに合わせてメモリーをカスタム生産するという流れに乗れなくなった要因と分析している。また2024年7月8日に始まった労働組合のストライキは原稿執筆時の7月18日でもまだ続いている。

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2024/06/17

 ストライキの背景は次のようになっている。全国サムスン電子労働組合は基本給の3.5%ベースアップやインセンティブ制度の改善などを求めて会社側と対話してきたものの合意に至らず、2024年7月8日に無期限ストライキを宣伝した。同組合には半導体部門の社員が多く加入している。組合側は「ストライキにより8インチのウエハー投入量が減少した」と主張、会社側は「ストライキが生産に与える影響はなく、今後も問題が起こらないよう積極的に対応している」と反論した。韓国メディアは、ファウンドリーの生産に支障が出るとの懸念や、仮に生産には支障がないとしても次世代のHBMで市場逆転を狙うサムスン電子にとってストライキの長期化は、対外的に企業の不確実性を高めるリスクになると分析した。同組合はストライキの目標として、会社側が要求を受け入れるまでファウンドリーの生産に支障をきたすことだと明言している。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト) 

(NIKKEI TECH) 

2024. 7. 

-Original column 

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00112

韓国第4の携帯事業者が存続の危機、28GHz帯の割り当て取り消しへ

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2024年6月14日、韓国の科学技術情報通信部(「部」は日本の「省」に相当)は「移動通信新規事業者(第4キャリア)の必要書類検討結果」を発表した。内容は周波数割り当て対象法人選定(社名はStage X)を取り消す予定というものだった。最終結果は今後の開催が予定される聴聞会次第だが、韓国内では第4となる携帯電話事業者(キャリア)の選定取り消しで間違いないという雰囲気になっている。Stage Xの取り消しが確定すると、2010年から続く第4のキャリア選定はこれで8度目の失敗になる。

(出所:123RF)

(出所:123RF)

 韓国の携帯電話市場では2002年から22年もの間、KT、SK Telecom(SKテレコム)、LG U+(LGユープラス)の大手3社による寡占状態が続いている。ここに競争を働かせようとする韓国政府は、周波数オークション制度や周波数の割り当て制度を見直して2024年7月に新たな周波数政策を発表することにした。また、第4のキャリア選定が頓挫してもMVNO(仮想移動体通信事業者)の活性化で通信料金の競争を促進し、家計の通信費負担を軽減することにした。

 Stage Xは2024年2月1日に科学技術情報通信部が行った5G(第5世代移動通信システム)向け周波数オークションにおいて、28GHz帯の帯域幅800MHzを4301億ウォンで落札した。当初予想した1000億ウォンの4倍を超える金額で、2018年にキャリア3社が落札した金額よりも2倍以上高い。科学技術情報通信部はキャリア3社が計画通り基地局建設を行わなかったことから2022年12月から2023年5月にかけてキャリア3社の28GHz帯の割り当てを取り消した。これにより第4のキャリアが独占的に使用できるようにした。Stage Xは28GHz帯の新たなサービスを企画すべく、2024年5月2日に日本の第4キャリアである楽天モバイルや楽天シンフォニーとXと技術協力のための戦略的協業の覚書を締結した。

問題は「資金力」

 ところがStage Xが2024年2月1日の周波数落札後、同年5月7日に提出した必要書類を検討したところ法令で定める必要事項を履行せず、科学技術情報通信部が釈明と履行を要求したが解消されなかったため、同部が選定取り消しの手続きに入ることになってしまった。

 Stage Xは2024年5月7日、割り当て対価の10%である430億ウォンを納付し、法人登記謄本、資本金納入証明、割り当て条件履行覚書を提出したが、周波数割り当て申請書に記載した資本金2050億ウォンの納入ができなかった。申請当時、Stage Xの株5%以上を保有する主要株主6社の内、資本金を一部でも納入したのは1社のみだった。科学技術情報通信部は周波数割り当て申請当時の法人と実際に設立した法人が一致するかどうか確認する必要があるため、任意で株主構成と株保有率の変更を禁じているが、Stage Xはこれも守っていないとした。科学技術情報通信部はStage Xが資本金を確保できなかったことで割り当て対価の残高の納付と設備投資、サービス開始にいたるまで事業を遂行できる見込みがないと判断した。Stage Xは周波数割り当て後に資本金を納入するという立場である。

 科学技術情報通信部は電波政策諮問会議の諮問を得て、Stage Xは周波数割り当て必要事項を完了せず、これは選定取り消しの理由に当たると判断し周波数割り当て選定法人取り消し処分予定であると事前通知した。

 結局、Stage Xは期限までに資金を確保できず、政府は装備メーカーやその他企業への影響を考慮して第4のキャリア取り消しを決断したということになる。Stage X側は2024年6月19日に立場を表明、周波数割り当て申請当時から周波数割り当て後に、資本金を納入するという条件にしたと説明した。

 韓国内ではまたもや「資金力」が問題で第4のキャリアを失敗とし、「資金力のある大手企業が第4のキャリアに名乗り出ない理由は韓国の人口規模からして第4のキャリアが必要ないからではないか」、「移動通信の競争活性化のためには第4のキャリアではなく他の方法を探さないといけない」という議論になっている。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト) 

(NIKKEI TECH) 

2024. 6. 

-Original column 

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00111

NVIDIA CEOの一言で株価が動いたSamsung、激震の半導体部門で初のストも

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人工知能(AI)向け半導体の重要部品である広帯域幅メモリー「HBM(High Bandwidth Memory)」に対して、米国政府が中国に対する半導体規制を適用するようだ。米Bloomberg(ブルームバーグ通信)は2024年6月11日(現地時間)、米国政府はAIに使われる半導体技術の中で特に新しいトランジスタ構造であるGAA(Gate All Around)とHBM関連技術が中国に渡らないよう一段と制限することを検討していると報じた注1)

注1)GAA構造のトランジスタは3nm以下の超微細工程に導入される技術である。電流が流れる4面のチャネルをゲートが完全に囲む構造にすることで、電流の流れをより細かく制御できるようになり、電力効率を高められる。HBMはDRAMのダイを垂直に積み上げ、全体のデータ転送速度を高速・広帯域化するメモリー技術である。AIアプリケーションのために必要な大量のデータ処理において、省スペース化と低消費電力化を実現する。

 米国の追加規制は中国のAIモデル開発を制限するためとみられている。中国が最先端のAI半導体を製造するためには3nm以下の工程が必要である。米国政府は2025年から、米NVIDIA(エヌビディア)、米Intel(インテル)、台湾積体電路製造(TSMC)、韓国Samsung Electronics(サムスン電子)が提携して、米国でGAA技術を用いた半導体の生産を増やすようにするという。

 台湾の調査会社であるTrendForce(トレンドフォース)によると、2023年末時点でHBMのサプライヤー別世界市場シェアは韓国SK hynix(SKハイニックス)が53%で1位となった。同社はエヌビディアのGPU向けにHBMを独占的に納品している。今後、エヌビディアの次世代GPUと米Advanced Micro Devices(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ、AMD)・インテルのAIアクセラレーターの発売を控え、HBMの需要は大幅に伸びる見込みである。SKハイニックスとサムスン電子はHBM生産ラインの稼働率を引き上げようとしている。SKハイニックスの独走が続くのか、サムスン電子が追い付くか、両社のHBM戦略が注目されている。

第5世代に当たるHBM3E

第5世代に当たるHBM3E

(出所:Samsung Electronics)

サムスン電子危機説を唱える韓国メディア

 英Reuters(ロイター通信)は2024年5月24日(現地時間)、サムスン電子のHBMが発熱と電力に関する問題でエヌビディアの品質検証テストをパスできなかったと報じた。これによりサムスン電子の株価は前日より約3%値下がりした。ところが同年6月5日、株価が反転した。6月4日、エヌビディアの創業者でCEO(最高経営責任者)のJensen Huang(ジェンスン・ファン)氏が台北市内で記者懇談会を開催し、サムスン電子がテストをパスできなかったという話は事実ではなく噂にすぎず、サムスン電子のテストはまだ終わっていないと発言したからである。同氏は「サムスン電子もエヌビディアのHBMパートナーなのか」という質問に対して、「サムスン電子、SKハイニックス、米Micron Technology(マイクロン・テクノロジー)の3社全てがHBMを提供することになるだろう」と回答した。

 韓国のメディアは連日、サムスン電子危機説を唱えた。「サムスン電子がエヌビディアの一言で株価が揺れるほど半導体市場で主導権を失った」、「AI半導体製造に必要なHBMでサムスン電子はSKハイニックスに先を越され、長年守ってきたメモリー半導体世界1位の座も危なくなった」、「2030年に世界半導体1位を目標にしているが、ファウンドリーは台湾TSMCとの格差が広がり続けている。香港の調査会社Counterpoint Technology Market Research(カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチ)によると、2024年1~3月の売り上げベースのファウンドリーシェアはTSMCの62%に対してサムスン電子は13%にとどまり、サムスン電子のシェアは半導体世界1位になると宣言した2019年以降減少している」といった具合だ。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト) 

(NIKKEI TECH) 

2024. 6. 

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https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01231/00110

韓国が2025年にAI教科書を導入、大手企業はEdtechビジネスの拡大とインド進出

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 韓国では2025年3月に始まる1学期から、初等学校(日本の小学校に相当)3~4年・中学1年・高校1年の数学・英語・情報・国語(特殊教育向け)科目でAI(人工知能)教科書を導入する。AI教科書は「小中高校生500万人のための500万冊の教科書」を目標として、AIチューターが生徒のレベルを分析して繰り返し学習できるようサポートする教科書である。2028年にかけて段階的に拡大させていく。現在学校で使われているデジタル教科書は紙の教科書をPDFにして動画や音声、クイズなどを追加したもの。2025年からはAIが教師と生徒の間に入り、教師を補助する役割を担う。

 韓国政府は「今変えないと未来がない」としてAI教科書を導入した。学校教育にもDX(デジタルトランスフォーメーション)が必要だとして、教師による授業のイノベーションも行うとした。2024年から3年かけて、3818億ウォン(約436億円)を投入して全国の小中高校教員約44万人を対象に「デジタル基盤教育力量研修」を行う。この研修は単にAI教科書の使い方を教えるだけではなく、多様な機材やデジタルコンテンツ、アプリケーションを活用して「探求型授業」ができるようにするものという。2026年までには授業イノベーションをリードする先導教師3万4000人を養成し、学校当たり2人以上を配置する。

 AI教科書の導入に当たり、全国の学校はネットワークの点検や授業環境を再現するデジタルデバイステスト室、学習データ統合管制システムの構築などを行う。韓国政府は963億ウォン(約110億円)を投入する。ネットワークの改善が必要な学校には別途600億ウォン(約69億円)、学校当たり1000万ウォン(約115万円)を政府予算から支援する。AI教科書を使うデジタルデバイス管理人員として1200人を採用し、全国の学校をサポートする。また、自治体別点検支援団が全国の小中高校のデジタルデバイス管理・活用実態を定期的に調査する。教員の負担を増やすことなく教育インフラの質的水準を高めることを目標にしている。

LGエレクトロニクスやサムスン電子がEdtechビジネスに注力

 政府によるAI教科書の投資を追い風に、韓国の大手企業は教育を支援するテクノロジー「Edtech」(エドテック)のビジネスを拡大している。韓国科学技術情報研究院の調査によると、韓国におけるEdtech市場規模は2020年の4.8兆ウォン(約5486億円)から2025年には8.6兆ウォン(約9830億円)へ成長するとされている。年平均成長率は約12%となる。韓国は教育熱が高く、少子化が急速に進んでいるにもかかわらず全体の教育費の支出や政府の教育予算は増え続けている。Edtechはまだまだ成長する余地のある分野といえる。

 Edtechに注力する大手企業の1つが韓国LG Electronics(LGエレクトロニクス)である。同社はAIを「共感知能(Affectionate Intelligence)」と称して、それをキャッチフレーズにしている。学校向けには、オンデバイスAIのノートパソコン「LG Gram」、AIロボット「LG AI CLOi」、電子黒板「LG CreateBoard」の3点セットを提案している。このうちGramはインターネットに接続することなく、最大10台のAndroid OS/iOSデバイスと写真やファイルを送受信したり画面を共有したりする機能を備える。教師は生徒のデバイスに授業用の資料を送信し、生徒は授業中に書いた作文やクイズの答えを教師に提出するといったことができる。

韓国LG Electronicsが提供する未来教室(Futureclassroom)

韓国LG Electronicsが提供する未来教室(Futureclassroom)

(出所:LG Electronics)

 CLOiはプログラミング授業を支援するAIロボットである。生徒はロボットを制御するアプリを自作することでCLOiを思うように動かせるようになる。また、CLOiは教室を回りながら前後に取り付けた27インチディスプレーを使って、授業に付いていけない生徒を支援する補助教師の役割もこなせる。このほかCreateBoardは86インチの大型ディスプレーに複数の生徒が同時に文字を書いたり発表したりできる電子黒板である。最大40カ所のマルチタッチと9つの画面共有、保存機能を備える。そして多様な教育用テンプレートを提供する。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト) 

(NIKKEI TECH) 

2024. 5. 

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韓国が2025年にAI教科書を導入、大手企業はEdtechビジネスの拡大とインド進出 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

韓国の放送業界でAI活用が当たり前に、番組制作の時間もコストも大幅削減

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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

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 米OpenAI(オープンAI)が2024年2月に動画生成AI「Sora」を公開して以降、韓国では映像産業や放送業界でのAI活用が増えている。Soraが生成した動画に衝撃を受けたようで、自国のインフラやデータなどでAIを生み出すことができる能力、いわゆる「Sovereign AI」を確保すべきだという声も大きくなっている。

 韓国でも動画生成AIは開発されており、そのAIを用いてテレビ向けCMの背景や登場人物を生成する事例などがある。例えば、大手通信会社である韓国LG U+(LGユープラス)は、通信キャリアから「Growth Leading AX Company」(AIトランスフォーメーションで顧客の成長をリードする会社)になるとして、自社開発した大規模言語モデル(LLM)「ixi」の性能をアピールすること兼ねてCMを生成した。ixiで20万フレームを超える映像を生成し、編集もAIで行った。人が3Dアニメーションを制作する場合と比べて、時間と費用を半分以下に減らしたという。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)  

《日経Robo》 2024. 6.  

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オンデバイスAI家電で競うSamsungとLG、搭載するAIチップも自社開発へ

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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

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 米Open AIの「GPT」や米Google(グーグル)の「Gemini」のように、クラウドコンピューティング基盤を前提としたAI(クラウドAI)の世界的な競争が広がる中、半導体や家電、スマートフォンなどハードウエアに強い韓国企業は、インターネットに接続しなくてもデバイスの中でAI機能を利用できるオンデバイスAIに力を入れている。

 韓国ではSamsung Electronics(サムスン電子)とLG Electronicsをはじめ、AIモビリティ会社を目指す韓国Hyundai Motor(現代自動車)、韓国語と韓国文化に特化した大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)を開発するキャリア3社とスタートアップ、DX(Digital Transformation)を超えた「AX(AI Transformation)」を目指す中堅企業など、ほとんどの企業が「AIカンパニー」であることを強調している。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)  

《日経Robo》 2024. 5.  

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LGがAI物流ロボットを米展示会で公開、新興企業への投資や共同研究も拡大へ

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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

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 韓国LG Electronicsは、米アトランタで2024年3月に開催された「MODEX 2024」に初参加した。MODEXは物流分野の展示会として米国最大級で、今年の来場者数は4万8000人を超えた。LG Electronicsはフルフィルメント(受注から商品のピックアップ・検査・梱包・配送・在庫管理まで物流の全過程を1カ所で行う統合物流センター)やスマートファクトリーに向けたソリューションを多数公開。AI物流ロボット「LG CLOi CarryBot」、移動マニピュレータの「Mobile Manipulator」、物流ロボットのプラットフォーム「Flex-RPS(Robotic Production System)」、自律搬送ロボット「低床型AMR(Autonomous Mobile Robot)」などを展示した。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)  

《日経Robo》 2024. 4.  

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