人手不足と労働災害を解消する調理ロボ 学校給食で実証開始、社食への導入例も

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本記事はロボットとAI技術の専門誌『日経Robotics』のデジタル版です

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 韓国ソウル市教育庁は2023年7月18日、8月中旬に始まる2学期から学校の給食調理室に調理ロボットを導入すると発表した(図1)。まずは実証実験として韓国ロボット産業振興院と提携し、ソウル市北部にあるSoong-gok中学校の給食室に調理ロボットを4台導入する。調理ロボットは汁物、炒め物、揚げ物など高温で危険な調理工程を伴う料理を人に代わって作る。

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  • 趙 章恩=(ITジャーナリスト)  

《日経Robo》 2023. 8.  

-Original column 

人手不足と労働災害を解消する調理ロボ 学校給食で実証開始、社食への導入例も | 日経Robotics(日経ロボティクス) (nikkei.com)

OpenAIが訪韓、AIチップ共同開発検討 需要高まるメモリ半導体の生産増にも期待

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 対話型AIのChatGPTを開発した米OpenAI社のCEO(最高経営責任者)であるSam Altman氏や共同創業者のGreg Brockman氏など同社の役員7人が2023年6月9日に韓国ソウル市を訪問、尹錫悦(Yoon Suk Yeol)大統領や中小ベンチャー企業部(部は省に当たる)の李永(Lee Young)長官との面談・座談会に相次いで臨み、韓国のAIスタートアップ100社との懇談会にも参加した。

図1 座談会に参加した李長官とOpenAI社のAltman氏、Brockman氏

図1 座談会に参加した李長官とOpenAI社のAltman氏、Brockman氏

(写真:中小ベンチャー企業部)

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)  

《日経Robo》 2023. 7.  

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OpenAIが訪韓、AIチップ共同開発検討 需要高まるメモリ半導体の生産増にも期待 | 日経Robotics(日経ロボティクス) (nikkei.com)

顔だけでなく声も“若返り”、韓国ドラマ制作現場のAI活用術

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 新型コロナウイルス禍の中でも成長を続ける韓国コンテンツ産業。日本でも韓国のコンテンツを見ない日はないほど浸透している。映画・ドラマ・ゲーム・WEBTOON(スマートフォン向けの縦読みマンガ)など韓国コンテンツの輸出額は2019年に102.5億米ドル、2020年に119.2億米ドル、2021年に124.5億米ドル、2022年に130.1億米ドル(暫定)と伸び続けている。韓国の主な輸出品目は半導体や石油製品、自動車だが、コンテンツ産業を第2の半導体として育成すべきだという声も大きくなっている。韓国輸出入銀行の調査によると、コンテンツ輸出が1億米ドル増えるたびに消費財の輸出も1.8億米ドル増えるという。そのためコンテンツ産業の経済効果を期待し、関係省庁の支援策も増えている。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)  

《日経Robo》 2023. 6.  

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顔だけでなく声も“若返り”、韓国ドラマ制作現場のAI活用術 | 日経Robotics(日経ロボティクス) (nikkei.com)

韓国最大級IT展示会「World IT Show 2023」、LGの第3世代サービスロボットが初公開

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2023年4月19日から21日にかけて韓国ソウル市のCOEX展示会場で「World IT Show 2023」が開催された。今回で15回目を迎える韓国最大規模のIT展示会であり、韓国のICT政策を担当する科学技術情報通信部(部は省に当たる)が主催し、産業通商資源部が後援する政府肝いりの展示会だ。韓国の大手企業からスタートアップ、研究機関、政府機関に至るまで新技術や新製品を広くアピールする場でもある。

 今回は「世界の日常を変えるKデジタル」をテーマに約460社が出展し、そのほとんどがAI関連のサービスを展示した。最も多くの人を集めていたブースは韓国のSamsung Electronics社、LG Electronics社、通信キャリアのKT社、SK Telecom社のブースである。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)  

《日経Robo》 2023. 5.  

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韓国最大級IT展示会「World IT Show 2023」、LGの第3世代サービスロボットが初公開 | 日経Robotics(日経ロボティクス) (nikkei.com)

韓国の総選挙開票特番はエンターテインメント、AIで視聴率競争 歌番組・情報番組制作現場ではAI導入済み

2024年4月10日、韓国では国会議員を選ぶ総選挙が行われた。議席数300のうち、野党の「共に民主党」が175、与党の「国民の力党」が108、その他17の結果となった。投票率は67.0%と、1992年の71.9%以来32年ぶりに高い投票率を記録した。事前投票率は31.3%、国外選挙投票率は62.8%と過去最高を記録した。国民の選挙に対する関心が高いだけに開票特番への関心も高かった。イギリスのBBCは「韓国の放送局は若い世代の視聴率を獲得するためポップカルチャーやAIを活用し、開票特番を面白く仕上げた」と分析した。

開票特番は正確な報道が重要ではあるが、数字ばかり並べていても面白くない。地上波放送3社の選挙開票特番は毎回、候補者らの顔写真にドラマの名場面を合成して面白味をもたせるコンピューターグラフィックス(CG)が必ず登場する。選挙のたびに地上波放送のKBS(韓国放送公社)・MBC(文化放送)・SBS(ソウル放送)の3社は開票特番をエンターテインメントに仕上げ視聴率競争をするのが恒例である。地上波3社は、選挙の1年前から開票特番に使うCGの素材の準備に着手するという。候補者らをテレビ局に集めいろいろな動作をする映像を撮影し、CGで利用する。開票特番のCGは単純な合成ではなく、開票状況に合わせてリアルタイムで表情や動きを変えていく。当選確定になると候補者の顔が笑顔になり飛び跳ねる場面が登場したり、接戦が続くと候補者同士がにらみ合う場面になったりと、リアルタイムで合成する。選挙が終わると、「昨日あのドラマ観た?」のような流れで「昨日開票特番どのチャンネル観た?」と、どの局の開票特番が面白かったか必ず話題になる。

今回の総選挙の開票特番はAIが活躍した。KBSは、候補者らのAIアバターが自分の公約を歌に合わせてラップで説明しながら踊る「公約ラップバトル」を放送し、SBSは熊のぬいぐるみのAIキャラクターが開票特番に出演し、選挙に関する疑問を解説した。キャラクターが深層学習で選挙を学びAI合成音声で解説する新たな試みだった。地上波生中継の裏では、KBSとSBSのYouTube公式チャンネルでもAI解説者が登場して視聴者とクイズをしたり、AIによる当選予測をするライブ配信を行った。SBSはAIで映像アーカイブを検索し、選挙候補者らの過去映像を発掘したりもした。野党代表の弁護士時代の緊張したテレビインタビューや与党代表が検事だった頃にニュース画面に一瞬映った映像など、人の目では探せなかった場面をAIの顔認識人物検索で見つけだし、注目された。ただしMBCは、選挙は速報が多いのでAIは使わないと宣言した。

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<KBSの開票放送に登場した総選挙候補者らのAIアバター。AIで制作したアバターが踊りながら公約ラップバトルをするという内容だった。> 

CGの作成だけでなく当選予測もAIが行った。公共放送のKBSは、事前世論調査・出口調査などを利用してAIが当選可能性を分析する「ディシジョンK+」を開発し、SBSも同じく自社開発した「AIオーロラ」を利用して開票開始直後から当落を予測した。KBSとSBSは開票20%の段階で予測結果を報じた。対照的に、MBCは、AIは使わず、5万人を対象にした電話調査など伝統的な方法で得票を予測した。結果はAI分析に力を入れたKBSがもっとも実際の開票結果に近く、MBCがもっともかけ離れていたことから、AI予測の精度の高さにも注目が集まった。

放送はAIで盛り上がったが、選挙運動ではAIの悪用などへの警戒が高まった。韓国の国会では2023年12月に公職選挙法第82条が改正され、投票日の90日前からは生成AIを使い実際の映像と区別しにくいディープフェイク映像を利用した選挙運動を禁じた。中央選挙管理委員会は「ディープフェイク総合対策」を発表し、AI専門家らを集めモニタリングを強化した。モニタリングで見つけたディープフェイクは掲載されていたウェブサイトに削除を要請する。選挙運動で使用が禁じられたのはAIで生成した実際と区別しにくい声・映像・画像である。総選挙で候補の顔を合成したディープフェイク映像を使ったフェイクニュースが出回ると、有権者が判断を間違う可能性があるからだ。中央選挙管理委員会はAIでコメント欄に自動書き込みをしてフェイクニュースを広めようとする動きも取り締まっている。違反すると7年以下の懲役または1,000万~5,000万ウォン以下の罰金となる。選挙候補や政治家のキャラクター、似顔絵、イラストは禁止対象ではない。特定の政党や候補を支持しない、単純に投票を応援する内容の場合は、ディープフェイクを利用できる。

2024年2月には尹大統領のディープフェイク騒動があった。警察の捜査の結果、ディープフェイクではなく、作者が仮想で作ってみたと明記した複数のコンテンツを再編集したものだったが、それでもAI倫理に関する議論が深まるきっかけになった。SNS利用者が増えたことで、インターネットに映像が掲載されると、瞬く間に世界中に広がる。完璧に削除することはできない。ディープフェイクかどうかを区別するAIも開発されているが、ディープフェイクによるフェイクニュースの拡散を完璧に止めるのは難しい。

世界的な巨大IT企業はAIを選挙に悪用することを防ぐため協力しているが、韓国のポータルサイトも同じように協力している。大手NAVERはディープフェイクに関して検索すると画面に警告が現れる仕組みを取り入れ、KAKAOは自社のAI画像生成モデルを使った画像には視認できないウォーターマークを導入した。Googleは韓国の総選挙期間中、有権者のミスリードを防ぐためYouTubeに政治関連広告を掲示しなかった。韓国中央選挙管理委員会は、違反行為届け出センターの運営にもあたった[1]。

そして地上波3社の開票特番視聴率の結果はどうだったか。意外にもAIを使わず伝統的な放送をしたMBCが11.7%で1位だった。YouTubeの開票特番ライブ中継のリアルタイム視聴者もMBCが約38万人ともっとも多かった。MBCはAIで面白い場面を作るより街角インタビューで市民の声を放送し、専門家らをスタジオに呼んで各政党の公約の解説を行うなど落ち着いた雰囲気だった。これが逆にKBSとSBSに対する差別化戦略となり好評だった。韓国では視聴者がAIを嫌がったというより、MBCの解説がより分かりやすかったという点と、現政権とMBCが対立していることからMBCを応援する気持ちでチャンネルを選択した人が多かったのではないかという分析もあった[2]。

開票特番の視聴率競争でAIはあまり力を発揮できなかったかもしれない。それでも韓国地上波放送のAI利活用は増える見込みである。

すでに歌番組の編集では2018年からAIを使っている。8Kカメラで撮影した映像をAIが編集し、アイドルグループのメンバー別映像を生成してYouTubeに載せる。韓国ではアイドルグループの歌番組出演場面を正面、右、左、上など多数のアングルで撮影し、グループ全体だけはなく一人だけを追いかける映像まで全メンバー分をYouTubeに公開するのが当たり前になっている。KBSによると、これまでYouTube用の映像のためカメラマンと編集者4人が3~4時間かけて編集していたのを、AIが30分以内でできるようになったという。

さらにKBSの場合、放送局内にバーチャルスタジオがあり、報道番組や健康番組、バラエティ番組の収録を行っている。ロケに行かず、バーチャルスタジオで収録する際に使うLEDウォールの背景をAIで生成し、デザイナーが再編集したデジタル背景を使う頻度が増えているという。韓国の放送3社はOpenAIの映像生成AIモデルSoraが放送に与える影響も研究中だという。

韓国放送通信委員会は、AIという新しいデジタルサービスの副作用により国民が被害を受けることがないよう「AIサービス利用者保護に関する法律」の制定を推進している。生成AIによるコンテンツは「AI生成物」というロゴの表示を義務付ける方針である。AIによって一般国民が被害を受けた場合の救済のため、届け出センターも運営する方針である。

[1] 韓国中央選挙管理委員会は、公職選挙法違反や選挙関連の違反行為を取り締まるため、「違反行為届け出センター(ディープフェイク・フェイクニュース・不公正選挙報道届け出センター)を設置した。褒賞金は最高5億ウォンである。中央選挙管理委員会にはサイバー調査課もあり、SNSでのフェイクニュース拡散を予防したり調査したりする業務を行っている。また中央選挙管理委員会はホームページ上でフェイクニュースを正し、情報を訂正する「ファクトチェック」コーナーも運営している。

[2] 2022年、尹大統領の米国訪問の際、MBCが大統領が暴言を吐いたと報道したため、外交部が訂正を求めて提訴、2024年1月にソウル西部地裁はMBCに訂正を命じる判決をくだした。

民放online

2024. 6 .

-Original column

韓国の総選挙開票特番はエンターテインメント、AIで視聴率競争 歌番組・情報番組制作現場ではAI導入済み | 民放online (minpo.online)

韓国梨泰院転倒事故報道をめぐる温度差 政府はトラウマ予防のための報道ガイドライン発表

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2022年10月29日、韓国ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)で158人が死亡、196人が負傷する事故が起きた。外交部(部は日本の省に当たる)の発表によると、外国人犠牲者も14カ国26人いる(執筆時点)。12月2日、韓国政府は事故発生後設置した「梨泰院雑踏事故中央災難(災害)安全対策本部」の運営を終了し、今後は支援団を設置して遺族をサポートすると発表した。事故当日の雑踏警備の不備、初動の遅れなど、事故原因と対応に問題はなかったのかを巡ってはまだ捜査が続いている。

11月25日には国家トラウマセンターが「トラウマ予防のための災難報道ガイドライン」を発表した。ガイドラインは災害取材と報道において、災害当事者と家族、現場で対応した人、現場を取材した人、ニュースを見た人、その誰もが傷ついてはならないということを盛り込んでいる。そのため大きく3つの項目、「トラウマの理解」「トラウマ予防のための災害報道の細部ガイドライン」「記者のトラウマ管理」に分けてまとめた。この中では、▷取材記者は当事者の身体と心理状態を確認し意思を確認してから取材する▷取材中はちゃんと話を聞いているとジェスチャーなどで示す▷繰り返し質問したり災害を詳しく説明するよう求めることはトラウマ反応を引き起こすため注意する▷災害当事者と家族のプライベートと人格を尊重し否定的な印象を残す報道はしない▷被害事実だけでなく災害当事者の回復状況と前向きなメッセージも報道する▷記者も取材前後の健康状態を確認し、苦しいときはすぐ心理相談を受ける――といったことが書いてある。

国家トラウマセンターは2013年に前身の組織が発足後、14年のセウォル号沈没事故の被害者や新型コロナウィルス感染症による長期のステイホームで不安になった人の心理治療を支援してきた。今回も生存者と遺族を含め、事故の衝撃から立ち直れない国民の回復のために無料心理相談や心理治療を行っている。韓国の放送局各社も直接、または間接的に梨泰院事故を取材した記者の心理治療をサポートし、費用を負担している。

政府機関が「トラウマ予防のための災害報道ガイドライン」を発表しなければならないほど、梨泰院の事故は衝撃が大きかった。テロや自然災害でもなく転倒事故で、ソウル市内で大勢の若い人が犠牲になった。1カ月以上過ぎた今でも梨泰院の事故現場には追悼のため訪れる人が後を絶たない。

海外メディアとの温度差話題に

韓国内では事故を巡る報道体制に関して、韓国メディアと海外メディアの温度差が話題になった。海外メディアは積極的に事故現場を再現し、犠牲者の遺族を取材したニュースを放送した。ワシントンポスト、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、CNN、英BBCなどは専門家を取材して事故原因を分析し、事故当時現場にいた生存者の証言や犠牲になった人はどんな人なのか、遺族の悲しみの声を紹介しながら追悼している。しかし、韓国メディアは梨泰院事故中央災難安全対策本部の発表や警察の捜査状況を紹介するばかりで、犠牲者に関しては海外メディアが犠牲者の実名を報道したという間接的なかたちで紹介する程度に留めた。韓国では日本のテレビ番組がマネキンを使い転倒事故を再現したことも話題になった。韓国のテレビにはいわゆる”お昼のワイドショー”のような番組はないため、不思議に見えたようだ。韓国メディアは視聴者のトラウマ予防のため事故現場の様子をイラストで説明する程度にした。11月28日、「梨泰院惨事犠牲者遺族協議会」の設立方針を発表。遺族自ら事故の原因解明と責任者の処罰を求め声を出すようになってから、韓国メディアも遺族を取材し犠牲者を紹介するようになった。

韓国メディアもまた保守派と進歩派に分かれ、温度差がある。保守派は政府の発表や捜査状況を伝えることに焦点を当て、進歩派はなぜ今年のハロウィーンだけ雑踏警備をおろそかにしたのか、毎年ハロウィーンになると梨泰院に人が殺到することを知っていながら行政も警察もなぜ事故を予防できなかったのか追及する報道もしている。時間がたつにつれ、保守派といわれるメディアも少しずつ、政府の対応はこれでいいのかと責任を問う報道をし始めた。

「災害報道準則」を守り、淡々と報じる

紙を発行しないインターネット新聞ではクリック数を稼ぐためか、コミュニティサイトやSNS上のデマを確認せず報道するため、韓国記者協会が「災害報道準則を遵守し犠牲者と遺族に被害を与えないようにすべき」と声明を出したりもしたが、韓国メディアの報道は海外メディアに比べ全般的に淡々としている。これは「災害報道準則」を守るためともいえる。韓国メディアはセウォル号沈没事故以降、韓国放送協会・韓国新聞協会・韓国新聞放送編集人協会・韓国記者協会・韓国新聞倫理委員会が共同で「災害報道準則」を定めた。

セウォル号沈没事故を巡り全員救助という誤報をはじめ、記事のクリック数を伸ばして広告収入を得るため関係ない記事にまでセウォル号の見出しを付けるなど、韓国のメディアは数々の誤報で社会を混乱させ遺族を苦しめたことから、「災害報道ではなく報道災害」「言論沈没」と批判を浴びた。韓国記者協会の会長が2020年4月セウォル号の被害者遺族に謝罪したほど、当時の報道体制には問題があった。

その反省から定められたのが「災害報道準則」である。▷正確で迅速に災害情報を提供し国民の生命と財産を守る▷報道には防災と復旧機能もあることを心がけ、被害拡散を防止し被害者と被害地域が困難を克服して一日も早く日常に戻れるよう機能する▷災害復旧に支障を与えたり被害者の名誉やプライベートなど人権を侵害してはならない▷速報競争のため現場記者に無理な取材を要求し正確性をおろそかにしてはならない▷事故原因や捜査状況は責任ある災害管理当局の公式発表に従う▷公式発表の真意と正確性も最大限検証する▷過剰な感情表現や災害の本質と関連がない興味本位の報道はしない▷被害者とその家族の身元公開は最大限慎重に行う▷刺激的な場面を単純に繰り返すだけの報道はしない▷個人的な感情がこもった即興的な報道や論評はしない▷刺激的な用語や恐怖心または不快感を与える可能性がある用語は使わない▷報道した内容が事実と異なる場合は視聴者が納得できる方法で迅速に明確に正さないといけない――といった内容が盛り込まれている。東日本大震災時のNHKの災害報道体制をはじめ、海外の事例も参考にしたそうだ。

信頼を取り戻せるか

それでもセウォル号沈没事故の後から韓国メディアはますます信頼を失った。韓国言論振興財団が調査に参加した英ロイタージャーナリズム研究所の「デジタルニュースレポート2022」によると、調査対象46カ国のニュース信頼度平均は42%に対し韓国は30%とかなり低かった。もっとも信頼するメディアは報道専門チャンネル「YTN」が1位、民放の「SBS」が2位、公営放送の「KBS」が3位だった。もっとも信頼しないメディアは「TV朝鮮」が1位、「朝鮮日報」が2位、「中央日報」が3位、「東亜日報」が4位と保守派を代表するメディアが勢ぞろいした(韓国調査は2,026人が回答)。調査結果に対し、韓国言論振興財団は「ニュースメディアの政治偏向による不信、情報の過剰による疲労感、無力感がニュースに対する興味を失わせたようだ」と分析した。「災害報道準則」と「トラウマ予防のための災難報道ガイドライン」で韓国メディアは信頼を取り戻せるのかも注目したいところだ。

セウォル号沈没事故後、韓国では災害報道のあり方に関する研究も盛んに行われた。これまでの韓国の災害報道が災害現場の被害状況をリポートすることに重点を置いていたとすると、海外では被害を最小限にするためにはどうたらいいのか防災のための報道もしていると指摘する研究もあった。韓国内ではなぜ事故を予防できなかったのか、事故発生後の対応や救助過程は適切だったのか、このような事故の再発防止のために何が必要なのか、何を改善すべきなのかといったことも含め、事故後の状況をまとめた総合的な報道を期待する声が大きいが、まだ捜査中ということでそこまでは至っていない。

2022/10/13

ITジャーナリスト/KDDI総合研究所特別研究員

趙 章恩(チョウ・チャンウン)

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韓国梨泰院転倒事故報道をめぐる温度差 政府はトラウマ予防のための報道ガイドライン発表 | 民放online (minpo.online)

【海外メディア最新事情】韓国での動画配信と放送の見られ方 OTTとドラマ競争の末、地上波民放の利益増

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OECD Digital Economy Outlookによると、韓国は加盟国中FTTH普及率が最も高く、モバイルデータ使用量も1位。世界初のスマートフォン向け5Gサービスを開始するなどICT利活用が進んでいる。放送分野も世界に先駆け、1990年代後半から”オンエア”(同時配信)や”ダシボギ”(番組の見逃し配信)を開始。テレビ受像機を保有しない傾向が強まった”ゼロテレビ”危機を乗り越え、ネットフリックス、Disney+、AppleTV+といったグローバルOTTと競争しつつ成長してきた。

韓国放送通信委員会の「2021放送媒体利用調査」によると、全世帯の約95%が地上波放送を再送信するセットトップボックス経由有料放送(ケーブルTV、IPTV、衛星放送など)に加入。OTT(動画配信サービス)利用率は約70%となっている。個人のスマートフォン保有率は全世代で93.4%、60代は91.7%、70代以上は60.1%であり、週5日以上スマートフォンを利用する人は91.6%で、テレビ受像機の73.4%より多かった。このような流れから韓国人にとって日常に欠かせない媒体は15年からテレビとスマートフォンの位置が入れ替わり、21年にはスマートフォン70.3%、テレビ27.1%の割合で必需媒体と認識されるようになった。22年の韓国放送産業の特徴は、民放の営業利益が大幅増益に返り咲いたことである。地上波放送局の放送事業による売上はここ10年で減り続けていた。韓国での動画配信サービスと放送の見られ方から、その秘訣を探る。

世界上位に入る作品群

韓国では1995年、公共放送のKBSを皮切りに地上波放送局がプラットフォームを開設。インターネットサービスを専門とする子会社を設立し、オンエアとダシボギ、見えるラジオ(スタジオ生中継)、クリップ動画サービスなどを積極的に提供していた。98年からは家庭でも安い費用でブロードバンドとパソコンを利用できるようになり、見たいときに見たい番組を有料で楽しむ文化がいち早く根づいた。好きな番組を見るための支出に躊躇しない視聴者が多いことから、地上波放送局対OTT、ネットフリックス対韓国勢OTTのオリジナルドラマ競争も激しい。ネットフリックスは2016年に韓国へ進出してから、韓国ドラマ制作に20年までに7,700億ウォン、21年5,500億ウォン、22年は1兆ウォンを投資すると発表。「韓国ドラマは米国ドラマの4分の1程度の制作費なのに世界中のランキングで上位に入る」として投資を増やし続けている。

韓国勢OTTも”打倒ネットフリックス”とばかりに年間1兆ウォン以上を投資してオリジナルドラマを制作し続けている。韓国だけでなく世界の視聴者に受け入れられる作品を目指しており、作品のジャンルも豊富で特殊効果や映像美もレベルアップしている。

トラフィック負担めぐる論争も

地上波民放は多額の制作費を投入するOTTに負けないため、ドラマの制作本数を減らす代わりに一つの作品にかける制作費を、外部投資を誘致し大幅増額した。また、テレビ放映開始と同時に自社プラットフォームでダシボギを提供し、どのタイミングでどのハイライト場面をSNSに投稿し盛り上げるか工夫。映像配信もOTTとユーチューブを使い分け、韓国だけでなく海外ファンも獲得した。韓国地上波3社(KBS・MBC・SBS)のユーチューブチャンネル登録者数は22年5月時点で1.4億人超。地上波放送局でありながら、ユーチューブでしか視聴できないオリジナルバラエティ番組も多数制作するようになった。

こうした成果が反映され、MBCとSBSの21年営業利益は大幅黒字となった。テレビ広告は減少しても、OTT経由の売上は順調に伸びているからだ。競争から生まれた「イカゲーム」「愛の不時着」「梨泰院クラス」「社内お見合い」などのドラマは海外でも記録的なヒットとなった。韓国のWEBTOON(紙ではなくネットで連載するマンガ)などの映像化も活発で、K-POPアイドルを起用する1話10分程度のウェブドラマもヒット作が増えている。韓国のOTTが海外に進出し現地でドラマを制作する流れも出てきた。

22年末にはアマゾン・プライム・ビデオとHBO MAXが韓国に進出するのではないかと言われている。海外OTTと韓国OTTのさらなるコンテンツ競争で、韓国視聴者を楽しませてくれそうだ。ただし、韓国ではOTTとISP(インターネットサービスプロバイダ)の間でトラフィック負担をめぐる論争も起きている。大量のトラフィックを誘発するコンテンツプロバイダーもネットワークインフラ投資に責任を持つべきという考えが広がっており、国会で電気通信事業法の改定議論が行われている。韓国の事例が、また海外にも影響を与えそうだ。

2022/06/13

ITジャーナリスト/KDDI総合研究所特別研究員

趙 章恩(チョウ・チャンウン)

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【海外メディア最新事情】韓国での動画配信と放送の見られ方 OTTとドラマ競争の末、地上波民放の利益増 | 民放online (minpo.online)

韓国 公共放送の受信料徴収方法を変更 市民のためか、言論弾圧か 与野党対立

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韓国で、公共放送の受信料を韓国電力の電気代と統合徴収していた制度を廃止する「放送法施行令の一部改定案」を国務総理が主宰する国務会議(重要な政策の最高審議機関で大統領、国務総理、国務委員で構成)が2023年7月11日に議決した。7月5日には韓国の放送・通信政策の樹立と関連法を審議・議決する放送通信委員会が全体会議を開いて改定案を議決、7月11日に大統領裁可も行われたため、猶予なく改定放送法施行令を施行、7月12日から公共放送の受信料は分離徴収することになった。ただし分離徴収のためのシステム構築や手続きに時間がかかるため、実際に始まるのは10月頃になる見込みである。

分離徴収をめぐる放送法施行令改定は、2023年6月5日大統領室が放送通信委員会と産業通商資源部(部は省に当たる)に公共放送受信料の分離徴収を勧告したことから始まった。6月5日から7月11日までの37日間に施行令を改定、1994年から続いた統合徴収は分離徴収になった。

ハン・ドクス国務総理は国務会議で「受信料を電気代と分離徴収することは国民の要求であり、分離徴収によって国民の受信料に対する関心と権利意識が高まるだろう」と発言した。しかし野党側は「大統領室が分離徴収の意向を見せてから国民や関係者の意見を聞くことなく即決するのは手続き上問題がある」「受信料を分離徴収すると手続きや徴収費用がかかり国民の負担は大きくなり、KBS(韓国放送公社)の収入は減るしかない。公共放送の公的役割も縮小される。これは政権の言論弾圧ではないか」と猛反発している。

放送法施行令改定を検討する放送通信委員会の委員は5人制だが現在3人しか任命されていない。3人の中で野党側の一人は「改定後猶予期間もなく、分離徴収の方法も議論されていない。3人で社会に多大な影響を及ぼす重要な案件を議論すること自体、手続き上問題がある」として表決を拒否し退場、残る与党側の2人が賛成し改定案を議決した。

KBSは反対を表明

大統領室が公共放送受信料の分離徴収を勧告した直後の6月8日にはKBSのキム・イチョル社長が記者会見を開き、「不合理で問題があるにもかかわらず分離徴収を推進すべき重大で緊急な理由や実益があるのか聞きたい」「前政権で社長に任命された私が問題なら、社長を辞任する」「大統領は公共放送の根幹を揺さぶる受信料分離徴収を撤回してほしい。分離徴収を撤回すれば辞任する」「大統領との面談を正式に要請する」と発言した。キム・イチョル社長はKBSの記者出身で2005年に公職者の不正を暴く報道番組を企画したことで知られる。

KBS側は7月11日、次のように立場を表明した。
●通常、立法予告期間が40日なのに対し、放送法施行令改定は10日間の立法予告を経て議決した。事前影響評価、規制審査などが行われたのかもはっきりしない。

●政府は国民の不便をなくし選択権を保障するために分離徴収するというが、実際は正反対の状況に陥る可能性が高い。

●受信料徴収には莫大な費用がかかる。施行令改定により、番組制作と公的責務遂行に使われるべき受信料の多くを徴収費用として使うことになる。

●施行令を改定しても、放送法上受信料納付の義務はそのまま残るため、国民は受信料と電気代を別々に払わないといけなくなり煩わしくなる。徴収方法が変わることで起こる社会的混乱により、国民が不便な思いをする可能性が高い。

●そのため、施行令改定案が公布され次第、憲法訴願し憲法裁判所の判断を仰ぐ。

憲法訴願とは、公権力により憲法上保障されている基本権の侵害を受けた者が憲法裁判所に違憲審査を請求し、基本権の救済を受ける制度である。

これまでも個人による受信料徴収に関する訴訟は何件かあった。憲法裁判所は2006年、KBSを視聴しないのにテレビ受像機を保有するというだけで受信料納付の義務があるのは平等の原則に反するという主張に対し、「受信料は公益放送事業という特定公益事業の経費調達のための特別負担金であり、テレビ受像機を保有する特定集団に納付義務を賦課するのは正当、放送を受信する意思を考慮しなかったとしても平等の原則に反しない」との判断が示された。受信料統合徴収についても「公共放送の維持・発展のための受信料をより効率的に徴収するためでありその目的は正当だ」と判断した。

2008年と2015年にはソウル行政裁判所が「受信料を電気代と結合して徴収することで徴収費用が少なくて済み、受信料の受納率が高い数値で増加し、公共放送のための経費調達という公益達成に大きく寄与している。統合徴収による国民の不利益が、これを通じて達成しようとする公益より大きいとはみられない」として統合徴収の正当性を認めた。

憲法裁判所も統合徴収を正当と認めていたことから、全国言論労働組合や放送記者連合会などマスコミ関連5団体は7月5日に声明を発表し、「放送法施行令改定は数十年続く受信料の法的性格と統合徴収の適合性を確認した憲法裁判所の決定を覆す暴挙」「分離徴収は韓国メディアのエコシステムに大混乱を巻き起こす厳重な事態」と批判した。

韓国の受信料制度とは

韓国では1963年「国営テレビジョン放送事業の運営に関する臨時処置法」により受信料制度を導入した。放送法第64条によりテレビジョン受像機を所持した場合は一律受信料を納付することになっている。受信料は1981年以降、月額2,500ウォン(約275円)のままである。受信料はCMを放映しない公共放送のKBS1TVと教育放送EBSの財源となる。2022年末時点で2,500ウォンのうち2,261ウォンがKBS、70ウォンがEBS、169ウォンが韓国電力の徴収手数料となっている。

1994年にKBSの1TVはCMを廃止し、2TVだけがCMを流すことになった。公共放送の安定した財源確保のため、全国民が公平に受信料を負担するよう1994年からKBSが韓国電力に受信料徴収業務を委託できることになった。KBSによると、電気代と受信料を統合徴収する方式になってから受信料徴収率は約99%に達した。2022年KBSの収入1兆5,305億ウォンのうち、受信料収入は6,935億ウォンで約45%を占めている。韓国電力が分離徴収の費用を試算したところ、別々の請求書を作成し送付すると今までの5倍以上の費用がかかり、徴収率も減少するという。分離徴収によりKBSの受信料収入は1,000億ウォン台に落ちるという予測もある。KBSは10年以上前から物価高を考慮し月額2,500ウォンの受信料を同3,800ウォン(約418円)へ引き上げるよう求めていたが、分離徴収で受信料値上げの議論も立ち消えとなった。

「国民の要求」の内実とは

与党側は、受信料分離徴収は国民の要求だと主張する。しかし「国民の要求」をめぐっても与党とKBSは真っ向から対立している。

与党「国民の党」は放送法施行令改定をめぐり、「国民の96%以上が分離徴収に賛成している」と何度も強調した。2023年3月9日から4月9日にかけて、大統領室がウェブサイトに「国民の意見を聞きます。受信料制度全般に対する国民のみなさんの考えと意見をお聞かせください」と意見を書くよう求めるページを掲載した。このページには「推薦」「非推薦」と書かれたボタンと意見を書き込む欄があった。韓国で推薦は「いいね!」ボタンのような意味で使われることが多い。与党側はここで推薦をクリックした人が96%なので国民の96%が分離徴収に賛成していると主張する。「朝鮮日報」をはじめ、複数の韓国メディアも「(現行の)受信料統合徴収、国民の96%が反対」という見出しで何度も報道している。

一方で、KBSは一人が複数回推薦ボタンをクリックできたことから、これを世論として受け取るのは難しいのではないかと反論した。KBSは2023年6月16日から26日にかけて放送通信委員会が行った「放送法施行令改定案立法予告」に集まった国民の意見は、90%近くが分離徴収に反対していたと主張した。実際、立法予告に集まった公開意見には、「受信料徴収がなくなるわけではないので分離徴収は面倒なだけ」「憲法裁判所が認めた統合徴収による財源確保を壊すのは政府による放送掌握としか言いようがない」「十分な議論なく分離徴収に変更することに反対する」「現行の統合徴収がもっとも効率的ではないか」など、分離徴収に疑問を唱える意見が多く書き込まれていた。

ところが、世論調査機関である国民リサーチグループが2023年6月に18歳以上1,009人を対象にした受信料廃止に関する調査では、57.9%が賛成している。賛成と答えた人を支持政党別に分けると、与党支持派は受信料廃止賛成が84.1%だったのに対し、他党支持派は受信料廃止賛成が37.3%であり、廃止に反対する意見(45.7%)の方が多かった。支持政党がないと答えた人は受信料廃止賛成が49.2%だった。韓国では受信料そのものの必要性に疑問を唱える人が増えているとも受け止められる。

受信料廃止や分離徴収に賛成する意見として、KBSの公共放送としての役割や経営に関する不満の声も多くある。KBSのキム・イチョル社長もこれを認めていて「KBSは非効率的組織との国民の批判が少なくないことはよくわかっている。しかしKBSは少ない費用と少ない人員で世界有数の公共放送局と競争し、公的責務を十分に遂行している」「公正性と経営効率化という課題については、具体的解法を用意し国民に報告する」という立場を示している。

韓国内では受信料分離徴収による収入減少により公共放送のKBSも打撃を受けるが、教育放送EBS(教育放送公社)への影響が大きいとして懸念する声が大きくなっている。EBSの財源は大学受験教材販売と受信料などだが、少子化で教材が売れず深刻な財政危機を訴えている。


(注)KBS(韓国放送公社)は1948年に国営放送として発足。現在は100%政府が出資する放送公社。主な財源は受信料収入と広告収入。公共放送事業者は、KBSのほかに教育番組に特化したEBS(教育放送公社)があり、財源は放送通信発展基金、広告収入のほかにKBS受信料収入の3%が配分されている。(NHK放送文化研究所編『NHKデータブック 世界の放送2023』より)

ITジャーナリスト/KDDI総合研究所特別研究員

趙 章恩(チョウ・チャンウン)

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韓国 公共放送の受信料徴収方法を変更 市民のためか、言論弾圧か 与野党対立 | 民放online (minpo.online)

Apple「M4」がAI半導体競争を加速、TSMC追うSamsungはIntelと協力

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 米Apple(アップル)が2024年5月7日(現地時間)に発表した「iPad Pro」は2022年10月以来となる新型タブレット端末である。目玉はAI(人工知能)に特化した独自設計の最新プロセッサー「M4」。狙いはAIアプリケーションを効率よく利用することにある。

新型iPad Pro搭載SoC「M4」

新型iPad Pro搭載SoC「M4」

(出所:Apple)

 M4は台湾積体電路製造(TSMC)の第2世代3nm(ナノメートル)製造プロセスを採用したSoC(System on Chip)だ。M3に比べて電力効率は最大2倍、総合的な性能は4倍に向上し、端末は薄くなった。アップルはM4が同社史上最速のニューラルエンジンを搭載して、最大で毎秒38兆回の演算処理を可能にする点を大きくアピールしている。そのM4を搭載するiPad ProはAIのためのパワフルなデバイスになったとした。

 韓国ではいよいよアップルがAIで攻めに出たと大々的に報じられている。AIに関しては出遅れているという声があるアップルだが、M4から反撃体制を整える。2024年6月開催予定の開発者会議「WWDC(Worldwide Developers Conference)」において生成AIの新戦略を公表するもようだ。データセンターのサーバー向けAI半導体を発表するとされている。AIの学習用ではなく推論に特化した半導体をアップルが設計し、TSMCが生産するとみられる。学習用のAI半導体は米NVIDIA(エヌビディア)が市場を席巻している。アップルはエヌビディアの影響が及んでいない推論用に注力するようだ。

 そしてアップルはiPhoneによるハイブリッドAIサービスを目指しているとされる。ここでいうハイブリッドAIサービスとは、インターネットに接続しなくても使えるオンデバイスAIとインターネットに接続してサーバーを経由して利用するAIサービスを組み合わせたもの。先駆けは韓国Samsung Electronics(サムスン電子)の最新スマートフォン「Galaxy S24」である。同社は「AIフォン」と称する。

 アップルとサムスン電子のAI半導体戦略も注目を集めている。アップルが開発しているという推論用のAI半導体に対して、サムスン電子もAIアクセラレーター「MACH-1 Inference Chip」を開発しているからだ。

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次ページ新たな勢力争いが勃発

趙 章恩=(ITジャーナリスト) 

(NIKKEI TECH) 

2024. 5. 

-Original column 

Apple「M4」がAI半導体競争を加速、TSMC追うSamsungはIntelと協力 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

MWC 2023、韓国勢はAI・ロボットに重点 高性能メモリ技術やアライアンスで勝負

スペインのバルセロナで2023年2月27日~3月2日に開かれたモバイル業界最大級の展示会「MWC Barcelona 2023」。韓国からはSamsung Electronics社、通信キャリアのKT社とSK Telecom社など130社が出展した。5G・6Gの通信技術はもちろん、AI・ロボット・モビリティの展示に重点を置き、超高速モバイルネットワークで生活やビジネスがどう変わるかを体験できる展示が目立った。

 Samsung Electronics社はデバイスを中心に、同社が開発した半導体やAIサービスなどを見せた。話題のChatGPTをはじめ、多様な分野でAI、機械学習、ハイ・パフォーマンス・コンピューティング(HPC)などの技術が発展を続ける中、これらの性能を最大限引き出すためには大容量のデータを高速かつ効率的に処理・保存できるメモリが必須だ。ChatGPTのような対話型AIはリアルタイムで回答するため、必要な情報に迅速にアクセスできる高性能メモリが求められる。世界メモリ市場で大きな影響力を持つ同社は今回、AIと実生活をつなぐサービスをサポートできる高性能メモリとソリューション、AIの可能性を極限まで引き出せるように設計したというチップの展示に力を入れた。

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趙 章恩=(ITジャーナリスト)  

《日経Robo》 2023. 4.  

-Original column

MWC 2023、韓国勢はAI・ロボットに重点 高性能メモリ技術やアライアンスで勝負 | 日経Robotics(日経ロボティクス) (nikkei.com)