2011年のヒット商品も「スマート」でサムスン強し

年末になると韓国でも新聞社やシンクタンクなどが「2011年ヒット商品」を発表し始める。サムスン経済研究所が選定した2011年のヒット商品にはスティーブ・ジョブス、Galaxy S2、KPOP、PB(流通事業者のプライベートブランド)商品などが選ばれた。

 PB商品の中でも韓国最大手スーパーのEMARTが10月末に発売した激安LED TVの人気はすごかった。台湾で製造された32型フルHD LED TVで、サムスンやLGのLED TVよりも4割ほど安い49万9000ウォン(約3万5000円)で発売されたところ、2日で5000台が完売した。画質もきれいで、最大手スーパーが売り出したTVだからアフターサービスの心配もないということで飛ぶように売れた。EMARTを追うように次々に大手スーパーがPBブランドで32型フルHD LED TVを発売している。


 LGの3DスマートTVは世界市場で競争力を持つため、目玉として「KPOP」動画が無料で観られるようにした。2011年9月からLGのアプリケーションストアである「LG Apps TV」にアクセスすると、KPOPアイドルのライブ実況動画やプロモーションビデオを無料または月毎の定額で利用できるようになった。「LG Apps TV」はフランス、イタリア、ブラジルなど25カ国で提供している。


 最大手インターネットショッピングモール「Auction」のIT部門ヒット商品として選ばれたのは、32型以下のLCD・LED TVと、タブレットPCやスマートフォンを家庭で使えるようにするための無線LANルーターだった。無線LANルーターは21万台が売れAuction側もびっくりしたという反応だった。無線LANルーターの中ではEFM NETWORKS社のIPTIMEが人気を集めている。自転車、自動車、ベビーカーに取り付けられるスマートフォン置き台も3万台売れ、ヒット商品に選ばれた。自転車に乗りながらもスマートフォンをいじりたがるのは韓国人ぐらいかもしれない。


 各新聞社が発表したヒット商品を見ていると、やっぱりサムスンが強かった。サムスンのスマートフォン「Galaxy S2」、スマートTV、スレートPC、デジカメ「ミラーポップ」、冷蔵庫、ドラム式洗濯機はどの新聞社のヒット商品にも必ず含まれていた。


 Galaxy S2は世界市場で3000万台以上売れた(Galaxy Sを含む)韓国IT業界最高のヒット作として話題になっている。「Speed」、「Screen」、「Slim」の頭文字を取ってGalaxy Sと名付けられただけに、画面が大きく、すいすい動いて、よりスマートなデザインでグリップ感もいいところが人気の秘訣でもある。Galaxy S2はアップルのiPhoneと競争したことでさらに注目を浴びヒットした面もある。









2011年のヒット商品、サムスンのGalaxy S2とスマートTV

Galaxy S2がリードする韓国のスマートフォン市場であるが、LGもスマートフォン「Optimus LTE」で巻き返しを狙っているし、パンテックもLTEに対応したスマートフォンを発売している。2012年はLTEスマートフォン競争になりそうだ。

 3DスマートTVはサムスンとLGが露骨な比較CMを流して競争したおかげで認知度が高くなった。2010年まで全TV市場に占めるスマートTVの割合は10%にも満たなかったが、2011年7月時点で50%近くまで増えている。高画質なのは当たり前で、TV画面の縁取りを5mmにまで薄くしたデザイン、使いやすいUI、多様なアプリケーションの競争になっている。LGがKPOPアプリで勝負するなら、サムスンのスマートTVはゲーム、動画、スポーツ、ライフスタイルなどのカテゴリーに1100件以上のアプリが登録されていて世界120カ国で利用できるという点が魅力である。


 ノートパソコン部門では、タブレットPCのようなデザインながら高性能ノートパソコンでもあるサムスンの厚さ12.9mm、重さ860gのスレートPC、LGのXNOTEの他に東芝コリアのPortege R830も複数の新聞がヒット商品として取り上げていた。


 韓国の2011年のネットサービス分野のヒット商品はなんといっても「ソーシャルコマース」である。次回は2011年の1年間取引額が500億ウォン(約35億円)から1兆ウォン(約700億円)と20倍も成長したソーシャルコマース事情を紹介する。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2011年12月22日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111222/1039908/

政府機関もスマホのアプリ開発競争に参戦

韓国インターネット専門家協会が主催する「2011スマートアプリアワード」で、ソウル市の「i Tour Seoul」が公共部門大賞に選ばれた。韓国インターネット専門家協会はWebアワードを主催する団体でもあり、デザイン、UI、技術、コンテンツ、サービス、マーケティングの観点から、優秀なアプリとWebサイトを選定している。

 「i Tour Seoul」は2009年に提供開始したソウル市の観光案内アプリで、公共機関がアプリを提供するブームの火付け役にもなった。


 「i Tour Seoul」のコンテンツは2001年ソウル市がオープンしたソウル観光ホームページのもので、韓国語、日本語、英語、中国語で情報を提供している。スマートフォンが発売されてから2009年12月にはアプリ、2010年4月からはモバイルページも追加された。アプリも前述の4カ国語でサービスされていて、スマートフォンを持って韓国を訪問する外国人観光客は、重いガイドブック代わりに使える。2012年1月にはタブレットPC向けアプリも公開する。


 アプリの中身は、観光スポット案内、グルメ、宿泊、交通案内、推薦旅行コース、ショッピングなど、ソウルを楽しめる2万件の情報。利用者の位置情報を使って徒歩ナビをしてくれる機能や、AR(拡張現実)機能を使って、カメラを街中にかざすと、その周辺のグルメやショッピング、名所案内がスマートフォンの画面に登場する機能も付いている。公共機関のアプリなのでもちろん無料で利用できる。ネットにアクセスすることなく利用できるアプリなので、データローミングをうっかり長時間使って高額請求される心配もない。








「i Tour Seoul」の画面。真ん中がメニュー画面となる。左は位置情報を使い、近くのお店や施設を検索したところ。右は特定の観光地についての情報ページ

ソウル市が観光アプリに力を入れている一方、ソウル市の江南区では、地域経済活性化のため、通訳アプリ「江南観光通訳秘書」を2011年12月に公開した。お店の人が外国人観光客とうまくコミュニケーションできるようにするためのアプリで、無料で利用できる。英語、日本語、中国語の通訳ができるもので、音声認識をして通訳する機能や、文字を入力すると通訳をして音声で読み上げてくれる機能もある。韓国語で話したことを音声認識で通訳して日本語を画面に表示し、日本語で読み上げてくれるので、日本語が全くできないお店の人も、スマートフォンの画面をお客さんに見せれば会話成立というわけだ。ショッピング、食事、ホテル、交通などカテゴリー別に3400の文章が登録されてあり、それを応用して使うこともできる。

韓国は2011年の1年間で1000万人の外国人観光客を誘致することを目標にしている。2011年10月時点で800万人を突破した。政府機関である韓国観光公社もより便利に韓国を旅行できるようにして観光客の満足度を高めようと、観光アプリの開発に力を入れている。

 「大韓民国すみずみlive」は、ユーザーが観光地の動画を撮影してスマートフォンから投稿し、他のユーザーと共有できるアプリ。2011年6月の公開以降、人気を集めている。2011年4月からは韓国観光情報3万件、画像100万件をアプリ開発に使えるようOpen APIサービスを行っている。観光アプリを開発するためのガイド、サンプルも提供していて、アプリの著作権は開発者が持てる。


こうした観光アプリがあることは他の国も同じなのだが、IT強国を自負する韓国ならではの面白いところは、金浦空港と仁川空港で「i Tour Seoul」アプリを搭載したスマートフォンをレンタルできることである。KTのローミングセンターで予約するとiPhoneを、中小事業者のローミングセンターを利用するとGalaxy SやOptimusなどのスマートフォンをレンタルできる。1日5000ウォン前後(約350円)なので、スマートフォンと観光アプリを韓国で体験してみるのも楽しい旅の思い出になるかも。1日の利用料金にはデータ通信料も含まれている。


 スマートフォンを買うかどうか悩んでいるなら、ソウル旅行のついでにスマートフォンをレンタルして使ってみるのもおすすめだ。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2011年12月16日]

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111216/1039767/

歌手の人気で料金が変わる“韓国型iTunes”でもっと多様な音楽を

ソウルの地下鉄に乗ると、向かい側に座っている乗客の全員がスマートフォンを手にして、イヤホンを耳にさして音楽を聴きながら端末をいじっている光景をよく目にする。50代以上の中年層の人でも、イヤホンで音楽を大音量にして聴いている人をよく見る。音漏れして地下鉄内のBGMのようになっているが、嫌な顔をする人は見たことがない。ほとんどの人がイヤホンで何かを聴いているので、お互い気にならないのかもしれない。

 ブロードバンドが普及してから、ここ10年の間、音楽をCDで楽しむという韓国人をほとんど見かけなくなった。デジタル音楽をパソコンにダウンロードして、そのファイルをMP3プレーヤーやiPod、携帯電話、スマートフォンに移して聴くのが一般的な利用形態である。文化体育観光部によると、2010年韓国の音楽市場規模は約3900億ウォン(約270億円)で、デジタル音楽が約84%を占めているほどである。

 そのため韓国ではCD販売数よりもデジタル音楽ダウンロード件数、テレビ・ラジオでの露出回数が、音楽のチャート順位を決めるのにより重要な位置を占めている。








韓国で人気の音楽ダウンロード・ストリーミングサイト「Bugsmusic」と音楽を聴けるアプリ

音楽を有料で利用するユーザーが増え、違法ダウンロードする人は減り、ユーザーの著作権に対する認識は大きく改善してきた。ただ、デジタル音楽市場はこの10年間成長が止まっていることが問題になっている。それは安すぎる価格に理由がある。

 音楽ダウンロードサイトの場合、平均的にストリーミングは月5000ウォン(約350円)、ダウンロードは1曲600ウォン(約42円)の料金体制である。定額料金制度もあり、1曲平均60ウォン(約4円)で音楽をダウンロードできるサービスもある。


 韓国のデジタル音楽市場は均一価格なので、新人歌手の曲も、大人気の少女時代や2PMといったKPOPアイドルの曲も同じ値段でダウンロード販売される。同じ値段なら人気の歌手の曲をダウンロードし、新人歌手の曲はストリーミングで聴くぐらいになってしまう。そのため新人歌手の音楽が世の中に紹介されるいいチャンスとしてデジタル音楽は歓迎されたのに、今では結局人気歌手の歌しか売れない構造になってしまった。


デジタル音楽ブームは、90年代後半、パソコン通信の時代から始まった。新人歌手がCDを制作しても流通させる費用がないため、自分の音楽をMP3ファイルにして無料で配布したわけだ。それを聴いた人たちの口コミで火がつき、ヒットとなった。デジタル音楽をきっかけにテレビに出演するほどの人気歌手になったケースはいくつもある。


 2011年12月9日、文化体育観光部は音楽ダウンロードサイトの料金構造を合理的に、つまり流通業者ではなく著作権者がダウンロード価格を決められるようにし、著作権者により利益が回るようにすべきとして、“韓国版iTunes構想”を発表した。著作権者がダウンロードの販売価格を決められるので、新人歌手は安くして宣伝効果を狙い、人気アイドルはちょっと高く、といったこともできる。


 また、iTunesの平均ダウンロード価格を見習って1曲1500ウオン(約100円)ほどに値段を上げようとしている。定額料金だと1曲約4円でダウンロードできてしまうのはどう考えても安すぎるからだ。


 収益配分も著作権者の取り分を多くする。文化コンテンツ振興院の調査によると、2011年11月時点で、流通サイトが約46%、著作権者が約54%の収益配分になっている。iTunesはアップルが30%、著作権者が70%なので、韓国もそのようにすべきだという声が高まっている。


 流通会社が、自社が制作に参加した音楽を強く薦めてダウンロード件数を伸ばすようにしてきた慣行もなくし、ユーザーのダウンロード件数に応じて本当のヒット曲を推薦するようにもする。


 また文化体育観光部が決めている音楽著作権手数料率を、政府が決めるのではなく著作権者と流通業者の間で自由に調整できるようにする。ユーザーが無料でダウンロードできるようにもする。現在は1曲当たりの著作権料金が決まっているため、無料ダウンロードは提供できないようになっていた。


 政府が主導する“韓国版iTunes”はデジタル音楽市場のパイを大きくさせることができるだろうか。ユーザーにとっては利用料金が高くなるかもしれないのでちょっと不満な点もあるが、無料でダウンロードできる曲が増えれば、ユーザーの利用動向も変わっていくだろう。そうなれば、アイドルの曲ばかりが売れるのではなく、多様な音楽も市場に流通するきっかけになるかもしれない。





趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2011年12月9日]

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111209/1039552/

「ネットユーザーの3人に2人がSNSを使う」韓国で政府の監視強化?

韓国放送通信委員会(総務省のような省庁)とインターネット振興院が毎年発表する「韓国インターネット利用実態調査」結果が発表された。この調査は全国3万世帯を対象に、2011年7月1日から9月15日まで行われた。

 2011年度の特徴はスマートフォンやタブレットPCといったスマートデバイスを1台以上保有している世帯が全体の42.9%と前年比9倍増加していること、3~5歳の幼児のインターネット利用率が66.2%と50代の57.4%よりも多いこと、ネット人口の67%がSNSを利用していて、その内43%がSNSの情報は信頼できると答え、45%が普通と答えたことである。


 3歳以上の国民で、月に1回以上ネットにアクセスする人を調べたインターネット利用率は78%であった。3~5歳のネット利用率は66.2%と、調査を開始した2006年と比べ5年間で14.8ポイント増加した。10~30代の場合は99.9%に達する。


 ネットで利用しているサービスはEメールが85.7%でもっとも多く、SNSが66.5%、ネットショッピングが64.5%、インスタントメッセンジャー54.3%、ネットバンキング42.2%の順だった。インスタントメッセンジャー利用者の49.4%、SNS利用者の31.5%、ネットバンキング利用者の23.8%はパソコンだけでなくスマートフォンからも利用していた。これもそれぞれ前年比で47.9ポイント、29.9ポイント、21.2ポイント伸びている。


 SNS利用者の場合、25.7%が1日1回以上書き込みをしている。利用目的は85.5%が「知人との親交を深めるため」であると答える一方、会社員の場合、58.4%が業務目的でSNSを利用していると答えた。


 SNSを利用して知人との関係が密接になったと答えたネットユーザーは47%、SNSを通じて最新情報を得ていると答えた人も24%いた。


 SNSの情報に関しても43%が「信頼できる」と、45%が「普通」と答えたことは韓国で興味深い現象として受け止められた。その理由は、韓国政府はSNSを信頼できないとして取り締まりを強化しようとしているのに、ユーザーは信頼できるとしているからだ。



SNSへの書き込みを審議する組織を設置



 2011年12月1日、韓国放送通信審議会はSNSで書き込まれる情報の審議を担当するニューメディア情報審議部署を新設すると発表した。同審議会は、SNSで問題と判断される発言や写真に対して投稿者に削除を勧告し、これに従わない場合はIDを遮断してSNSにアクセスできないようにするという。


 TwitterやFacebookといったSNSでは、韓国政府のSNS審議方針に対して、「表現の自由に対する過度な規制」であると反発が起きている。


 ユーザーの間では、SNSに書き込まれる政治批判を監視するためではないかという反発もあり、SNS審議は検閲と同じだと非難する。人権団体や言論組織は「私的交流のために使われるSNSを規制対象にすること自体おかしな発想」、「政治的目的によって通信と表現の自由を制限しようとしている」と反対意見を表明している。


 韓国放送通信審議会は「民主的な手続きに沿って対処する」、「青少年に悪影響を与えるアダルト・麻薬・ギャンブルなどに関する有害情報、名誉棄損、国家保安法違反(北朝鮮関連)などの書き込みが対象となる」というが、人権団体らは「客観的に誰がみても有害情報に見える発言はSNSの中で自浄されているので、政府機関が監視するまでもない」と反対する。


 スマートデバイスの普及は加速し、より高速にインターネットを利用できるLTE対応スマートフォンも好調な滑り出しを見せている。スマートフォンを購入して真っ先にインストールするのがメッセンジャーの「カカオトーク」とTwitterと言われているほど、SNSは盛んである。このような状況でSNSの発言を取り締まるという政府の方針は、韓国だけが時代を逆行することになるのではないか心配だ。









新しい端末を購入検討する人たち。スマートフォンユーザーが国民の40%を突破したほど普及している韓国では、より速い速度を求めてLTE対応スマートフォンの販売も好調




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2011年12月2日]

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111202/1039356/

次世代通信サービス移行をあおるKTに2Gユーザー15万人が反発

2011年11月21日、韓国の通信キャリアKTが第2世代携帯電話(2G)サービス終了承認申請書を放送通信委員会(日本の総務省に相当)に提出した。これで3度目になる。

 KTは2011年4月18日と7月25日にも放送通信委員会に2Gサービス終了承認申請書を提出したが、放送通信委員会は「2Gユーザーがまだ80万人ほど残っている」、「KT全加入者の1%以下(約16万人)になれば検討する」として、これを承認しなかった。


 2011年11月21日時点でKTが発表した同社2Gユーザーは約15万人で全加入者の1%未満であるため、今度こそは2Gサービスを終了させたいと意気込んでいる。今回放送通信委員会が承認すれば、2カ月ほどの猶予を経て、ソウル地域から順にKTの2Gサービスは終了することになる。







KTの2Gサービス廃止計画を案内するWebページ


 KTは2011年6月末には2Gサービスを終了し、2Gで使っていた帯域幅の1.8GHzをLTE(携帯電話でも大容量通信が可能になる移動体通信仕様)に転換して4Gサービスを始めるのが目標であった。ライバル事業者であるSKテレコムとLGU+が周波数を獲得してLTEサービスを始める中、KTは独自の方式であるWibro(モバイルWiMax)を4Gサービスとして進めていたが、他のキャリアにユーザーを取られないためにLTEも始めることにしたのだ。


 しかしKTが2G加入者を減らす過程の中で、半ば強引にユーザーを3Gに移行させていることが問題になった。2011年6月には2G加入者の中で通信料金を滞納しているユーザーを職権で解約させ、約80万人いた2Gユーザーを約46万人にまで一気に減らした。また2Gユーザーに3Gに転換するよう勧誘する電話を1日に何度もかけたり、放送通信委員会が承認していないのに9月22日には「2G終了計画」の新聞広告を出してユーザーを混乱させたりといったこともあった。


 筆者の母は10年以上も使い慣れている携帯電話番号を変えたくないのでまだKTの2Gサービスを使っている。電話番号は1997年に加入した当時のままで、「018-3XX」局番で始まる。しかし3Gになると「010-XXXX」に局番が変わる。料金も高くなる。KTは2Gから3Gに変えても既存の電話料金を使えるようにする、端末もスマートフォンを無料で提供する、1年間料金の割引もするというが、「電話」しか使わないシニアユーザーにとって3Gやスマートフォンは料金の負担が大きくなるだけでそれほど魅力的ではないようだ。


母によると、KTの勧誘電話はひどい時は1日に5~6回もあるという。しかも全部違うテレマーケティングセンターからで、今勧誘の電話を断ったばかりだというのにまた勧誘の電話がかかってくるという始末でいらいらしてしまうと嘆いていた。


 野党の民主党議員らは放送通信委員会にある苦情センターに寄せられた不満内容を独自に調査。「放送通信委員会が、KTの2Gユーザーが全加入者の1%に満たないという理由だけで2Gサービスの終了を承認した場合、消費者の主権が侵害されているのを見て見ぬふりをした責任は避けられない」と批判するまでに至った。


 民主党議員らはほかに、「KTが2Gサービス終了を早めその周波数を4Gに転換するため、あらゆる不法的手段で2Gユーザーを回遊していることから苦情が止まない状況である」、「徴兵で入隊している人や正常に料金を払っているユーザーまでも勝手に職権解約したケースがある」、「放送通信委員会は利用者を保護すべき責務を放棄している」、「KTが2Gユーザーをどのようにして3Gに転換させたのかも調査するべきである」と主張している。


 放送通信委員会も2Gサービスをある日突然終了させることはないとしており、8月に電気通信事業法の改訂案を国会に提出している。基幹通信事業の休・廃止承認制度を改善した改定案だ。公共の利益を害する恐れがある場合は休・廃止を承認してはならないとして、利用者の被害規定を具体的に明記するようにした。この改定案が国会を通れば、来年5月あたりから適用されることになる。

 被害規定の中には「休止または廃止計画に関する利用者への通報が適正でないと認められる場合」、「利用者保護処置計画書など大統領令で定める書類がそろっていない場合」、「医療者保護処置計画及びその施行がしっかり行われず休止または廃止によって顕著な利用者被害が発生すると予想される場合」などの条項が盛り込まれた。


 ユーザーの残り少ない2Gサービスを中断してLTEサービスを提供することで周波数を効率よく使いたいというKTの立場も理解できるが、ユーザーを見捨てて無理やり強引にサービスを中断してはならないという反発も強いため、放送通信委員会もそう簡単にサービス中断を承認できないだろう。放送通信委員会は11月末まで結論を出すとしている。





趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2011年11月24日]

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111124/1039163/

韓国、携帯・スマホの通信事業者と端末をユーザーが選べる制度に移行

韓国の携帯電話販売制度が変わる。韓国放送通信委員会は2012年5月より、通信キャリアの販売代理店だけでなく、欧米のように、端末メーカーの直販や海外で購入した端末でもUSIM(第3世代携帯電話で採用する、契約者情報や電話帳データを記録するICカード。SIMカードの上位互換カード)さえ差し込めば使えるようにする制度を施行する。

 これは「開放型IMEI(携帯電話識別番号、International Mobile Equipment Identityの頭文字)管理制度」と呼ばれるもの。


 IMEIは、出庫されるときに端末に与えられる15ケタの識別番号で、韓国では今までキャリアのシステムに登録された端末だけが開通できる閉鎖的運営方式だった。そのためユーザーは、キャリアの代理店を経由しないと携帯電話を購入できない状況だった。


 開放型IMEI管理制度が始まれば、ユーザーは使いたい端末と使いたいキャリアを選んでUSIMを申し込んで差し込めばいい。キャリアと端末メーカーとが組んで、特定の端末を特定のキャリアだけで販売することがなくなる。海外で購入した端末も使えるので、海外で激安の携帯を購入して韓国で使うこともできる。海外メーカーの端末が韓国で発売されるまで待たなくてもいい。端末メーカーであるサムスンやLGはキャリアの代理店を頼らず、直接端末を販売するようになるだろう。





サムスンが2011年11月に発売したGalaxy S2ピンク。販売制度が変われば、サムスンやLGはキャリアの代理店だけでなく、こういったスマートフォン端末を直販するものと見込まれている


 盗難、紛失届がないものに限り、ユーザーはどの端末もUSIMを差し替えるだけで使えるようになる。携帯電話を買うときに割引の条件になっていた24カ月約定といった期間の契約に拘束されることもない。まずは3Gが普及していてユーザーがUSIMを使っているKTとSKテレコムからこの制度を適用し、LGU+は4Gに切り替えたときから適用する。


 放送通信委員会は、現在のキャリア中心の構造が変わることによって、キャリアとメーカーが代理店に支払う奨励金と補助金制度が見直され、自然と競争が激しくなり、長期的には端末価格の値下げや通信費の割引も加速するのではないかと期待している。

韓国は、メーカーが自社の端末販売を奨励するために支払う奨励金と、キャリアが顧客の端末購入金額の一部を補助する補助金に分かれている。代理店によっては奨励金のマージンを少なくしてもっと安く端末を販売するところもあり、携帯電話は定価がない状態だった。携帯電話端末価格は闇に包まれたまま、キャリア代理店の言い値が定価であり、同じキャリアの代理店で同じ機種を選んでも、地域ごとに全然値段が違っていた。2012年5月以降、販売できる場所が増えることで、価格差がどこから来るのかが明確になり、行き過ぎた値引きキャンペーンなども是正されるだろう。

 キャリアの代理店に頼らないとなると、一番大きな変化が見込まれるのがMVNO(mobile virtual network operator)事業者の端末販売である。大手キャリアから通信ネットワークの卸売りを受けて、より安い料金で自社ブランドのサービスを提供しているMVNOの場合、端末の流通に困っていた。メーカーから直接端末を買い、キャリアを自ら選んで、USIMを自分で差し込むだけになれば、MVNOを利用してくれるユーザーも増えるのではないか、中古端末の再利用も増えるのではないか、というのが放送通信委員会の狙いでもある。


 開放型IMEI管理制度に移行する際の懸念として、盗難・紛失に遭った端末の不正利用がある。これを防ぐため、届け出のあった端末のIMEIをキャリアが共有・管理できるようにシステムを変え、IMEI統合管理センターを構築する。海外で購入した端末も使えるようになるので、海外のキャリアともIMEIの情報共有をしていく。また端末の外側の見えやすいところにIMEIを明記するよう制度も変えていくとする。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2011年11月18日]

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111118/1039079/

韓国でも通信キャリア2社からiPhone 4Sが発売

米アップルのスマートフォン「iPhone」を通信キャリアのKTが独占していた時代は終わった。iPhone 4SからKTとSKテレコム2社が同時発売できるようになった。iPhone 4Sは2011年11月4日から予約販売が開始され、11月11日、正式に発売された。予約販売の際にはKTだけで開始6時間で10万台を突破した。予約サイトに接続する人数が多すぎてサイトが開かなくなる騒動まであった。






iPhone 4Sの予約販売サイト(左はKT、右はSKテレコム)

iPhone 4Sがスティーブ・ジョブスの「遺作」であるとして興味を持つユーザーも多いが、キャリア2社が同時発売することで、端末価格割引競争に火がついたのも影響している。KTとSKテレコムのどちらがよりiPhone 4Sユーザーをたくさん集められるか、先に国内第1号を確保できるのか、マーケティング競争が激しくなっている。

 実はiPhone 4S韓国国内ユーザー第1号は既にSKテレコムから登場している。携帯電話専門ブロガーとして活躍するアーリーアダプター(新製品を誰よりも早く使いたがるユーザー)の男性で、英国に住んでいる友人にiPhone 4Sの端末を買ってDHLで送ってもらい、韓国の正式発売日より1カ月早い2011年10月17日SKテレコムから開通手続きをした。


 正式販売されたiPhone 4S第1号もSKテレコムから誕生しそうだ。SKテレコムは少しでも早くiPhone 4Sをユーザーに渡すため、11月10日夜10時からソウルの本社前でiPhone 4S開通記念イベントを行い、夜12時、11日が明けると同時に抽選で選ばれた100人にiPhone 4Sを開通して端末を渡した。しかしキャリアを乗り換える場合は他のキャリアが営業を始める翌日の朝9時に開通となった。開通イベントはアップルとSKテレコムの「Perfect Match」をテーマにした人気歌手のコンサートも行われるそうで、大規模なパーティーを企画している。KTは11日の朝8時から予約加入した順にiPhone 4Sの販売を始めた。







SKテレコムの4S開通記念イベント会場(提供:SKテレコム)


 iPhone 4S の端末価格を比較してみると、24カ月約定、毎月5万4000ウォン(約3710円)のスマートフォン料金に加入することを条件に、SKテレコムは16GBの端末を23万800ウォン(約1万5850円)、32GBを36万2800ウォン(約2万4900円)、64GBを49万4800ウォン(約3万4000円)で販売する。KTは同じ条件で16GBが21万2000ウォン(約1万4600円)、32GBが34万4000ウォン(約2万3630円)、64GBが47万6000ウォン(約3万2700円)。


 iPhoneが韓国で初めて販売されたのは2009年11月。24カ月の契約期間を終えたKTのiPhoneユーザーがSKテレコムに乗り換える可能性も高い。


 移動通信だけでみるとSKテレコムは韓国初の移動通信キャリアで、加入者の51%を占める最大手である。よりよい通話品質を求めてSKテレコムに乗り換えたいとブログやTwitterで公言するユーザーも多かった。


 KTは既存iPhoneユーザーをSKテレコムに取られないよう、長期加入者割引制度をアピールしている。キャリアを変えると事務手数料もかかり、長期加入割引もないので2年間の費用をトータルで考えるとKTが安いとしている。KTのiPhone 3GSユーザーが4Sに機種変更した場合は、端末価格を返納すると端末の状態に応じて4万~10万ウォン(約2750~6870円)割引するとしている。


 SKテレコムの狙いはやはりKTのiPhoneユーザーである。KTに取られたスマートフォンユーザーを取り戻すため、使っていた端末を返納すると、機器の状態に応じて4万ウォン(約2750円)から最大34万ウォン(約2万3350円)を割引するプロモーションを行なっている。予約販売の先着2名には1年間利用料金を免除するイベントも行った。


 iPhoneがキャリア2社から販売されるようになってから、月々のスマートフォン専用料金も1000ウォン(約70円)安くなり、端末価格も中古端末補償制度を利用すれば負担なく買える程度になった。韓国では国をあげて、近距離無線通信規格(NFC)を利用したスマートフォン向けのモバイル決済の普及や、アプリケーション制作を支援しているので、スマートフォンユーザーも、スマートフォンの楽しみ方もさらに増えそうだ。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2011年11月11日]

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http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111111/1038891/

コンテンツ産業も人々の生活もスマホを中心に回り始めている

 2011年10月31日、韓国のスマートフォン加入件数は2000万を突破した。これは人口の4割に当たる数字で、韓国は世界でもっとも速いスピードでスマートフォンが普及しているとマスコミは連日、関連ニュースばかり報道している。


 韓国ではスマートフォンに加入すると通常の携帯電話料金より2倍高い専用料金プランに加入しないといけなかった。フィーチャーフォンの携帯電話基本料金が月1万2000ウォン(約840円)前後なのに対して、スマートフォンは一番安い料金が月3万5000ウォン(約2300円)である。韓国では、スマートフォンの端末そのものは安くなっているのに通信料金が高いままでは若い世代の占有物になってしまう、という不満が漏れていた。スマートフォン格差によるデジタルデバイドも懸念されていた。


 そんな中、通信キャリアのSKテレコムは2011年10月31日、障害のある人とシニアに向けたスマートフォン専用料金を発表した。聴覚障害のある人向けの料金は月額3万4000ウォン(約2390円)、音声通話200分無料分をテレビ電話無料110分に切り替え、SMS無料送信件数も月1000件と通常の5倍に増やした。データ通信は月100MBまで無料で使える。


 視覚障害者向け料金(月額3万4000ウォン)に含まれるのは音声通話250分、SMS50件、データ通信100MB、シニア料金(同1万5000ウォン、約1050円)には音声通話50分、テレビ電話30分、SMS80件、データ通信100MBとなっている。障害者向け通信料金は国の政策によって35%割り引きされるので、既存料金の半額ほどでスマートフォンを利用できることになる。


 スマートフォンを使うのが日常になってくると、当然規制も変わる。2011年11月2日からはついにアップルのApp Storeにあるゲームカテゴリーが開放された。


 韓国ではアップルとAndroidのアプリケーション(アプリ)ストアの中でも、ゲームカテゴリーが2010年3月からずっとゲーム類等級委員会による「事前審議」の問題で閉鎖されたままであった。オンラインゲームをすべて事前審議して、利用できる年齢を決める等級制を適用してから販売できるようにしていたのである。しかしアプリケーションは個人も自由に参加できる市場だけに、事前に韓国政府の審議を経てアプリストアに登録するのは不可能に近く、ゲームカテゴリーを閉鎖したままアプリストアを運営していた。


 年齢制限を巡ってはアップルと韓国の法律の間で解釈の違いもあった。例えばポーカーゲームの場合、アップルは12歳以上が利用できるゲームに分類しているが、韓国の法律では射幸心を煽るゲームに分類され18歳以上に分類される。


 ゲームアプリの中で一部は韓国の法律を守り事前審議をして年齢等級制度に従い、キャリアが運営するアプリストアまたはエンターテインメントカテゴリーからサービスされていた。地下鉄やバスで見かけるスマートフォンユーザーのほとんどがゲームを利用しているが、アップルのApp Storeではなく韓国のキャリアが運営するアプリストアを利用するしかなかった。そのため人気のアプリストアはアップルの次はAndroidマーケットではなく、キャリアが運営するものであった。






LGU+は「Gamebox」という名前で独自に事前審議を経たスマートフォン向けゲームアプリを販売してきた。写真は同アプリストア画面とアプリを見せているところ


 ゲームカテゴリーが閉鎖されたことにより、韓国ではアップルやAndroid向けのゲームを開発しても韓国語でサービスできず、英語で制作して海外向けとしてサービスしていた。韓国のユーザーも韓国語ではなく英語に設定を切り替えて、住んでいる国を米国や日本などに指定して、海外のアプリストアにアクセスしてゲームを利用していた。


 2011年3月、やっと「ゲーム産業振興に関する法律」が改定され、スマートフォン向けゲームの場合は自律議審でサービスを提供できるようにした。ゲームカテゴリーが開放されれば、キャリアが運営するアプリストアよりもアップルやAndroidのアプリストアにユーザーが集まり、韓国のモバイルゲーム流通構造が大きく変化すると見られている。キャリアを経由しない流通に切り替わることで、より自由にいろんなゲームが登場すると予測されている。


 一方ではゲームカテゴリーの開放によって、韓国のモバイルゲーム会社だけが被害者になるのではという意見もある。韓国の会社には厳しく等級制度や青少年保護といった法律を適用して、海外のデベロッパーには「処罰するのが難しいから」と自律審議を適用してゆるく管理するのではないかという懸念だ。また、モバイルゲームは自律審議になるのに対し、パソコンから利用するオンラインゲームは事前審議を続けるのも公平ではないため、パソコン向け開発者からの反発が予想されている。


 スマートフォンユーザーが人口の4割にも届いたことで、ゲームの法律まで変えることになった。コンテンツ産業も人々の生活や娯楽もスマートフォンを中心に回り始めている。





趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2011年11月4日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111104/1038362/

スマホによるトラフィック激増で苦悩深まるキャリア

 2011年10月15日、韓国の通信キャリア3社は、ユーザーの年齢に関係なくスマートフォンとタブレットPCからアダルトサイトにアクセスすることを全面シャットアウトする方針を発表した。しかしこれは青少年保護のためではなく、激増する「トラフィック」を抑えるための対策だということから問題になった。キャリアがトラフィックの負荷を抑えるために、政府が決めた違法サイトでもないのに、特定のサイトにアクセスできないようにすることをめぐり、「ネットワークの中立性」を守らなくていいのかと指摘するユーザーが後を絶たない。


 通信政策を担当する省庁の放送通信委員会によると、2011年7月時点でキャリア3社のモバイルデータ通信トラフィックは1万1761TBで、2011年1月の4985TBの約2倍になった。このトラフィックの9割をスマートフォンユーザーが占めている。


 全ユーザーのモバイルインターネット利用が伸びている傾向ではあるが、実は5%のユーザーがトラフィックの93%を占めているほど、一部の超過多利用者がトラフィック増加を誘発していたという。トラフィックが激増するとネットワークの速度が遅くなり、途中でアクセスが途切れてしまうこともある。ひどくなれば音声通話まで影響を受け、通話中の途切れ現象が頻発するという。


 最大手移動通信キャリアのSKテレコムは、95%のユーザーが5%のユーザーのネットワーク利用料を負担しているようなデータ使い放題料金制度を中止。他のキャリアもこれに同調している。しかしこれでは、スマートフォンから従量制でネットを使うなんて、スマートフォンを使う意味がない。


 データトラフィックを誘発しているコンテンツプロバイダーもネットワーク投資に参加すべき、ネットワーク中立性を守るためには彼らもネットワーク費用を負担しないといけない、とキャリア側は主張する。一時はキャリアがメッセンジャーアプリケーションのようにトラフィックを大量に発生させるアプリの利用を禁止させようとしているという報道もあり(関連記事)、スマートフォンユーザーが猛反対したこともあった。


 しかしキャリア側は、どんなサイトにもアクセスできるようにするという「中立性」の負担が、ネットワーク事業者にだけのしかかるのは問題としている。中立性という単語のせいで、キャリアは悪者で、トラフィックを大量に誘発させ少数のユーザーが大量のトラフィックを誘発してもコンテンツプロバイダーは弱者という先入観を持つユーザーが多いのが悩みという。


 韓国では3Gより速度の速いLTE(long-term evolution、次世代無線データ通信の規格)の時代になればトラフィック激増の問題は解消するのではないかと期待されているが、スマートフォンの次は高画質動画中心のスマートTVがトラフィックを爆発させる主人公になるという予測もある。LTEが登場してもまた振り出しに戻り、キャリアはネットワーク品質の維持について悩み続けるだろう。


 スマートフォンが売れて、ネットにさえつながれば音声通話もメールも無料で送れるようになった。ネットワークからコンテンツまで提供する垂直統合で収益を上げてきたキャリアの旗色は悪くなっている。






スマートフォンからネット利用が急増している中、5%のユーザーが93%のトラフィックを占めていることが問題になっている。LGU+を始め、キャリア各社は次世代通信LTEを推進する。LTEで大量のデータを迅速に処理できるとしている




 だからといってネットワーク品質、トラフィックの安定化を理由にキャリアの基準で選んだサイトにアクセスできないようにすることは今後もっと大きな差別問題(モバイルインターネットを閉鎖し、キャリアの子会社サイトだけアクセスできるようにした過去のように)を起こすかもしれない。ネットワークの中立性とキャリアのネットワーク品質維持、両方を守れる方法はないのだろうか。






趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2011年10月28日]

-Original column

http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111028/1038066/

“第4のキャリア誕生”でお得なスマホ料金プランに大きな期待

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 韓国最大手ケーブルTV会社「CJハロービジョン」がKTと提携し、2012年1月から本格的にMVNO(mobile virtual network operator、通信業者から無線通信ネットワークを買い、自社ブランドの通信サービスを提供する業者)サービスを始める。既存の移動通信キャリアよりも30~50%ほど料金を安くすると宣伝していることから、移動通信料金の値下げ競争幕開けとなるか、ユーザーの期待は高まっている。


 CJハロービジョンはケーブルTV会社としてインターネット+インターネット電話+ケーブルTVのトリプルサービスを提供していただけに、MVNOで携帯電話サービスを追加し、同じ会社の複数のサービスを利用すると基本料金を割引するバンドル割引でユーザーを集める戦略を追求するという。MVNOとして音声通話だけ提供するのではなく、ショートメッセージやモバイル向け放送サービスとも連携して多様なサービスを繰り広げる計画である。







CJハロービジョンのWebサイト


 さらにCJはグループ会社内に食品製造、オンラインゲーム、映画館、レストラン、インターネットショッピングモールなど幅広いジャンルの会社を持っているため、料金が安いということだけでなくこれらグループ会社同士のシナジー効果を高められる割引制度でMVNOの加入者を増やしていくとしている。


 例えば、スマートフォンユーザーの平均携帯電話利用料金である月4000円ほどを払えば、ケーブルTV・ブロードバンド・インターネット電話・携帯電話音声通話とショートメッセージが全て無料、映画館とレストランも月何回か安く利用できる破格的な料金制度を提供するといった具合である。CJグループの長所を生かした付加価値のある料金制度はユーザーの好みに応じて割引サービスを追加したり外したりするオーダーメイド型になるもよう。


 大企業であるCJのMVNO参加は、韓国では第4の移動通信キャリアが誕生したのと同じほどインパクトがある。CJハロービジョンのケーブルTV加入者は9月末時点で約340万人、携帯電話キャリア3位のLGU+の加入者が約922万人なので、大幅なバンドル割引が順調にいけばCJハロービジョンとLGU+との差が縮まることも考えられる。



 韓国では2010年からMVNOサービスが始まっているが、中小企業ばかりでブランド効果がない、電話料金が安くてもプリペイド式なので不便、使える端末があまりないことから加入者はまだ30万人ほどに過ぎない。料金は安くても端末の選択の余地がないのでMVNOを使いたくないというユーザーも多かったことから、CJハロービジョンでは、KTから提供されるMVNO用の端末のほかに、同社が直接端末を調達するという。


 MVNOの料金は最も安いところで月額基本料4500ウォン(約300円)、通話料は1秒当たり2ウォン(約0.13円)である。月1万ウォン(約666円)で基本料なし、音声通話100分無料という料金制もある。(KTの最も安い料金制は基本料1万2000ウォン(約800円)、通話料1秒1.8ウォン(約0.12円)である)携帯電話加入者が5000万人を超えているので、MVNOはまだまだこれからという段階であった。CJハロービジョンが登場したことで、韓国では一気にMVNO市場が注目されるようになった。


 韓国政府は2008年からキャリアに対して通信料金の値下げを要求してきた。KTとSKテレコムも基本料を1000ウォン(約67円)に、ショートメッセージの料金を1件80バイト30ウォン(約2円)から20ウォン(約1.33円)に値下げしたが、CJは他のキャリアより最大50%引きをうたっている。携帯電話の料金を安くしても、バンドル割引で他のサービスまで安く利用できるようになれば、逆に消費が刺激されグループ全体としては利益になるかもしれない。


 2012年にはKTのWibro(モバイルWiMAX)のネットワークをレンタルして安く再販売するデータ通信専門キャリアも登場すると見られている。キャリア3社の市場シェアが固着して、KTとSKテレコム2社の独占に近い状態になっていることから、新しい事業者が風を吹き込んでくれることをユーザーも願っている。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
  [2011年10月21日]

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20111021/1037885/