それ、軍法違反! SNSに写真を載せる兵士たちに注意喚起

 2011年春、セリフやドラマのストーリーすべてが話題となり韓国で社会現象にまでなったヒットドラマ「シークレットガーデン」。人気絶頂の俳優ヒョン・ビンはこのドラマの主人公を最後に30歳で海兵隊に入隊した。これは韓国人男性なら避けて通れない兵役の義務のためであるが、30歳で海兵隊に入隊したのはヒョン・ビンが初めてだそうで、最高齢記録を塗り替えてしまった。


 兵役の義務を終えるまで2年間は芸能生活ができないのでファンともお別れとなるが、ヒョン・ビンは例外の待遇。海兵隊は毎日のようにヒョン・ビンがどのような訓練をして何をしているのかブログで写真を公開し、ドキュメンタリー番組、はては写真集まで作ってしまった。







海兵隊ブログが掲載した人気俳優ヒョン・ビンの訓練の様子



 海兵隊のブログ「飛べ、マリンボーイ」は、家族に見てもらうため、入隊したすべての訓練兵らの写真や動画を掲載して開設された。実際に訓練兵の写真の下には、母から「うちの子は風邪をひいてないか、ご飯はちゃんと食べているか」といったメッセージが書き込まれ、新兵教育担当者が「○○は元気にしています。風邪もひいていません」と答えている。


 ドラマ「バリでの出来事」で日本でも人気の高い俳優チョ・インソンも徴兵のため2009年空軍に入隊し、空軍ブログの顔として活躍した。空軍はチョ・インソンの軍生活を写真と動画で見せるコーナーまで作り、ブログの目玉にしてしまったほどだった。空軍ブログではクリスマスイベントとして、ブログにコメントを残すと抽選でチョ・インソンのサイン入り年賀状をプレゼントする企画まで催した。ブログが更新される度にファンがTwitterでつぶやき、ネット新聞の記事になり、テレビにまで紹介された。チョ・インソンが軍にいた25カ月の間、空軍はお金で換算できないほどの宣伝効果を上げたといえるだろう。









空軍ブログに掲載された人気俳優チョ・インソンの軍生活

 入隊した芸能人の軍生活がネットに公開され、ファンを喜ばせているのを見て、自分も注目されたいと思ったのか、芸能人でない人までも自分の軍生活を写真に撮ってソーシャルネットワーキングサービス(SNS)サイトに載せるようになった。これが今、問題になっている。

国防部によると、韓国には法律やネット関連知識のある専門兵士で構成する国防サイバーパトロールチームが82チームあり、軍事機密や国防を害する書き込みがネットにないか24時間モニタリングしているそうだ。そのサイバーパトロールチームが2011年1~3月に摘発した「サイバー軍紀綱違反行為」は1029件にのぼるという。この内300人が懲戒処分となった。パトロールチームが摘発した違反行為は上部に報告され、違法なのかどうか判断し刑事処罰される。


 摘発した写真や動画は、ほとんどが軍内部での日常を記念に撮影したものだが、うっかり背景に重要な軍事施設が写り込んで機密を流出してしまったケース。軍内部の生活を面白おかしく撮影して元気にしていることを友達に見せようとしただけなのに、軍人の名誉を失墜させたと摘発されたケースもあった。


 芸能人の軍生活がネットで話題になっているのを見て、自分もSNSサイトに軍隊の写真を載せて訪問者数をもっとたくさん集めたい、もっとコメントを書き込んでもらいたい、といった単純な動機の人がほとんどで、それが違反だと気付いていないようだ、と国防部は分析している。芸能人の軍生活はちゃんと検閲した写真だけを載せているから問題になるようなことはない。


 テレビ局SBS(ソウル放送)のニュースによると、2011年陸軍訓練所の入営対象者だけでも12万人余り。毎年これだけの人が新兵になるので、問題は繰り返されているようだ。


 国防部のサイバー犯罪捜査課の関係者は、「注目されたい気持ちは分かる」としながらも、最近はSNSサイトの利用者が増え、軍内部にもネットカフェがあってメールやテレビ電話を使えるようになってから、自分でも気付かないうちに「軍事機密保護法」、「情報通信網利用促進及び情報保護法」、「国防サイバー軍紀綱統合管理訓令」違反になることもあるので気を付けてほしい、と注意を呼び掛けた。


 青春の思い出(というか自慢したがる苦労話)を友人とシェアしたいという気持ちが思わぬ機密流出になることもあるのが、韓国という分断国家の悲しみかもしれない。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年6月22日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110623/1032566/

電気料金8%値上げの韓国でパソコン節電ソフトが人気

日本の節電に負けず、韓国もこの夏は節電、省エネを重視するようになってきた。その理由は電気代の値上がり。2011年の下半期に約8%の値上げが予定されている。家計負担を重くしないため、家庭用よりも産業用の電気代をもっと値上げする方針ではあるが、給料だけが上がらないインフレの中で、節電は家計を助けるため切実となっている。

 ここで節電といえば何よりもパソコンを思い浮かべる。


 韓国はネット大国らしく、すぐインターネットが使えるようにと、家庭にいる主婦の多くがパソコンを一日中つけっぱなしで利用する。スマートフォンやタブレットPCが普及したとしてもまだ大学生やビジネスパーソンが中心なので、主婦のネット利用は家庭のデスクトップパソコンが多い。


 韓国の携帯電話はネットに自由にアクセスできないようになっているので、料理のレシピを調べたり、主婦コミュニティで育児の悩みを書き込んだりするにはパソコンが必要になる。


 筆者は、学生のネット利用やネットを使った学習関連の取材で、一般家庭を訪問することがよくある。ほとんどの家庭がデスクトップパソコンを子どもの人数分持っていて、1台は必ず電源をつけっぱなしにしていた。検索したりニュースを見たりする度にデスクトップパソコンを立ち上げるのが面倒だからと、本体はつけっぱなしにしてモニターだけ電源を切る家庭がとても多い。


 2010年9月に実施されたインターネット利用実態調査(韓国インターネット振興院)によると、国内ネットユーザーの週当たり平均ネット利用時間は約15時間、ネットの利用場所はほとんどが家庭で、アクセスする端末も複数選択であるが8割がデスクトップパソコンを選んだ。


 韓国では消防防災庁が開発して無償配布する「PCグリーンパワー」が話題だ。これはデスクトップパソコンを節電してくれるソフトウエアである。時間を設定すると自動的に作業内容を保存してデスクトップパソコンの電源を切ったり休止状態にしてくれるので、ランチタイムも、うっかり消し忘れて帰宅してしまったあと深夜の時間帯も電源を切るよう設定できる。また書類作業の途中で急な会議に呼ばれパソコンをつけっぱなしにしてしまったときも、パソコンが自動的に動作を認識して作業内容を保存して休止状態にしてくれる。







韓国消防防災庁が無料で提供するパソコン節電ソフト「PCグリーンパワー」


Windowsの電源設定は複雑だし、何分後に電源を切るという設定しかできない。最新のデスクトップパソコンはノートパソコンのように節電機能が搭載されているが、そうでないパソコンの方が多いので、ソフトをインストールするだけで複数のスケジュールを設定してこまめにパソコンを休止状態にし、電気の無駄使いを防止できるところにこのソフトの利用価値がある。アイコンをクリックするだけで休止状態にする機能もある。「PCグリーンパワー」のダウンロードサイトでは、一日中デスクトップパソコンをつけっぱなしにする家庭の電気代節約のためにも、このソフトは効果的とうたっている。



 消防防災庁がPCグリーンパワーを職員のパソコン1200台にインストールして使ったところ、電力使用量を年間444MWh、電気代にして5300万ウォン(約430万円)が節約できたと宣伝している。たかがパソコンの電源と思いがちだが、同庁の説明では全政府・公共機関に「PCグリーンパワー」が導入されれば、最大360億ウォン(約29億円)の電気代を節約できるという。韓国の自治体や公共機関は既に「PCグリーンパワー」を使用していて、消防防災庁のホームページから誰でもダウンロードして使えるので個人でも使える。


 一部の自治体では中央制御サーバーから個別にパソコンを制御できる節電モニタリングも実施している。これは職員の健康と節電による予算節減の両方を狙ったもので、パソコンの利用時間、キーボードの入力打数、マウスが動いた距離を計算して、ユーザーが過度にパソコンを利用したと判断された場合には、アラームを鳴らしてパソコンを休止状態にして休憩するように知らせる。


 パソコンごとにどれぐらいの電力を使ったのかも表示するソフトもある。これは韓国の中小企業が開発した「enSaver」というもので、節電ばかりでなく業務環境と業務効率性も高めるためにも導入する自治体が増えている。また、政府機関のプレスリリースを見ると、パソコンやプリンターの待機電力を節電するコンセントを利用して電気代を節約していることをアピールする自治体も多い。


 スマート革命といってもまだまだデスクトップパソコンの利用率が高い韓国。ノートパソコンより電力消耗も大きいが、デスクトップパソコンから放出される熱気もすごいので、「電気代値上げをきっかけにノートパソコンかタブレットPCに買い替えたい!」というつぶやきもTwitterでよく目にするようになった。節電しながらも涼しくパソコンが使える夏を迎えたい。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年6月16日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110615/1032387/

携帯電話に電磁波リスク?! WHO発表でパニック

韓国では地下鉄やバスの中でも普通に携帯電話で通話する。大体は声をひそめて小さく話すか、「後でかけ直す」といって切るのだが、中には大音量で着うたを鳴らし、平気な顔して大声で通話する迷惑な人もいる。ネットの動画投稿サイトには「地下鉄迷惑女」といった動画がよく出回っている。公共の場で自分の恋愛話や人の悪口を大声で通話している様子を動画に撮り、恥をかかせてやろうと投稿したものだ。

 スマートフォンユーザーが携帯電話保持者全体の半分近く占めるようになったこのごろは、地下鉄の中で通話している人をよく見ると、ほとんどの人が携帯電話を耳に近付けて、ではなく口の前にささげ持って通話している。耳にはイヤホンを付けて、自分の話声が聞こえやすいようにと端末のマイク部分を口に近付けてしゃべっているのだ。タッチパネルを上にしてお盆を持つような状態で端末を口に近付け、端末の四角の隅に向かってしゃべっているような姿になる。こうすれば騒音の大きい地下鉄の中でも大声をたてず通話できる。また、携帯電話を頭から遠ざけて通話することで、電磁波の危険性をほんの少しではあるが避けられるというのも、通話方式を変えた理由の一つになっている。


 韓国では5月31日、WHO(世界保健機関)の傘下にあるIARC(国際がん研究所)が携帯電話を使い続けると脳腫瘍の発生の可能性が高まる、電磁波にがんを引き起こすリスクがあるので携帯電話の使い方を工夫しなければならないと正式に警告した、というニュースが大々的に報道された。


 携帯電話の電磁波は国際基準があり、人体に影響を与えるレベルのものは販売できない。それでも電磁波が健康に悪い影響を与えるという話はずいぶん前からあったが、権威のあるWHOがわざわざ携帯電話の電磁波の危険性を認める発表をしたからには、その危険性を甘くみてはならないという雰囲気になっている。


 IARCは携帯電話の脳腫瘍発病に関する数百件の先行研究を分析した結果、携帯電話を長く使うと脳腫瘍の発生リスクが増加するとしている。携帯電話の電磁波を「発がん危険評価基準2B」に分類した。レベル1のタバコや紫外線、ディーゼルエンジンのガス、鉛といったレベル2Aに続いて3番目に危険なレベルが2Bである。2Bに区分されているのはガソリン、排気ガス、殺虫剤などがある。


 特に電磁波は7歳以下の子どもに影響を与えるという。子どもは大人よりも電磁波吸収率が50%ほど高いので、脳の神経細胞の遺伝子が変形する可能性が大人より大きいと考えられる。携帯電話を長く使うと脳腫瘍ができてがんの可能性がある、というのは、大人よりも、幼稚園ぐらいから自分の携帯電話を持ち始める子どもたちに該当する危険を警告するものなのだ。電磁波とがんの相関関係は認められないという研究者らも、子どものころからずっと使い続けることによって脳腫瘍が発生する危険性が高まるということは認めているという。


 用心に越したことはないということで、携帯電話をより安全に使う方法として言われているのが端末を耳にぴったりくっつけないでイヤホンを使うか、端末を頭から少し間隔を置いて使うというもの。また携帯電話をポケットに入れないでカバンに入れた方がいいという。電波が弱い場所では基地局とつながろうとして普段より多い電磁波が発生するので、そういう場所ではショートメッセージかメールを送信した方がベターだという。



電磁波が心配な人のために、携帯電話の「人体電磁波吸収率(SAR)」調査も話題になった。米連邦通信委員会(FCC)が認証した試験場で、エンジニアの団体IEEEが定めた方式によって測定した結果を米CNETが掲載したもので、電磁波吸収率が低い携帯電話端末ベスト10の中で8つの端末がサムスンのものだった。


 1位に選ばれたのは電磁波放出量が0.196w/kgのサムスン「Blue Earth」。韓国では2010年2月に発売されたモデルで、太陽光で充電できるというエコを売りにする。2位もサムスンのスマートフォンInfuse 4G、3位も同Acclaim、4位も同Replenishとずっとサムスンが続いている。ベスト10の中でサムスン以外の端末はLGのスマートフォンQuantumとHuawei IDEOS X5だけだった。






電磁波人体吸収率が最も低いと調査されたサムスンの携帯電話「Blue Earth」


韓国政府は2004年、国内で販売されている携帯電話の電磁波吸収率を測定して結果を発表したことがある。同じメーカーの端末でも電磁波吸収率は全部ばらばらで、基準値以下だとしても、端末によっては7倍ほどの差があった。この調査でも、携帯電話の電磁波吸収率は海外メーカーの端末よりもサムスンやLGといった韓国産端末の方が少なかった。当時、サムスンとLGはアンテナを端末の下に配置し、電磁波が端末の後ろの方に放出されるようにして人体への影響を最小限にしていると説明したことがある。

 そのころから、カメラの画素数、画面サイズ、バッテリーの持ち時間と同じように電磁波吸収率も仕様の一つとして公開すべきではないかという意見があった。それはまだ実現されていない。


 子どもに買ってあげるならできるだけ電磁波が少ない端末にしたいと思う親心はどの国も同じはず。今回話題になったCNETの調査は米国で販売されている端末だけをテストした結果ではあるが、サムスンとLGにとってはいい宣伝になったのではないだろうか。





趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年6月9日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110608/1032269/

iPad 2と張り合うGALAXY Tab10.1に高まる期待

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米アップルがサムスンのGALAXY S2やGALAXY Tab10.1、GALAXY Tab8.9がiPhone、iPadのデザインとユーザーインタフェースをそっくり真似ているとして特許侵害訴訟を起こしたことは日本でもあちこちで報道された。その後サムスンも、アップルがデータ分割伝送、電力制御といった携帯電話製造に関する特許を侵害したと逆提訴している。


 アップルがサムスンのGALAXY Tab新端末を公開するよう求め裁判所の許可をもらうと、サムスンも負けじとiPhone 5とiPad 3を公開するよう求めている。特許紛争ではよくある資料収集のための要求とのことだが、アップルが攻撃するとサムスンも同じ攻撃で応える状況だ。


 アップルの訴訟目的はサムスンではなくAndroidをけん制するためと分析されている。半導体やLCD特許訴訟のように、いずれ和解するとは言われているが、ユーザーとしては法律事務所だけがもうかる意地の張り合いになってほしくない。結局その費用は製品価格に上乗せされるだろうから。


 韓国ではアップルとサムスンの訴訟の影響で、ますますiPad 2とGALAXY Tab10.1の関心が高まっている。iPad 2は5月末時点でも全く手に入らない幻の端末である(参照記事)。GALAXY Tab10.1はついに6月8日に発売されるという報道が流れている。


 ネットではGoogle I/O 2011開発者会議や展示会で撮られたと見られるGALAXY Tab10.1とiPad 2の比較映像が大人気。海外のブログやオンラインマガジンが掲載するGALAXY Tab10.1のレビューや感想はすぐ翻訳され記事になり、iPad 2とどっちを買うべきか迷うユーザーのコメントが多く書き込まれている。


 GALAXY Tab10.1はiPad 2の最大のライバルになるのではないかと期待を集める。Google I/Oで参加者に贈られたモデルからすると、iPad 2より細長い感じで、薄さは8.6mmと0.2mm薄く、重さは565g(Wi-Fiモデル)と601gのiPad 2より軽い。モトローラやアスースのタブレットよりも断然軽く、もっとも薄くてもっとも軽いタブレットPCというのが自慢だ。既存のGALAXY Tabは7型でポケットに入る大きさというのが売りだったものの、あの分厚さはなんとかならないのかとユーザーの間では不満もあった。


2011年5月11日、Google I/Oに参加したアプリケーション開発者に贈られたGALAXY Tab10.1。6月に発売する製品は、端末のサイズは同じで仕様が若干変更されるという


 韓国のユーザーの間では、DMB(韓国のワンセグ)を搭載するのかしないのかが話題になった。GALAXY Tab10.1にはDMBを搭載せず、10.1の後に発売されるGALAXY Tab8.9には搭載するという。10インチのタブレットでテレビを見るよりは、アプリから電子本、ゲーム、動画を利用するユーザーの方が多いと判断したからだ。DMBを搭載しないとより軽くなる。


 サムスンは、GALAXY Tab10.1がiPad 2と張り合えるよう、Googleが提供する各種クラウドサービスとAndroidマーケットに最適化している。韓国でもタブレットPCを買うのは仕事に使えて便利だから、という人がまだ多いので、いつでもどこでも仕事ができる「スマートワーク」をサポートする端末であることをアピールする。


 GALAXY Tab8.9や既存の7型はサムスンならではの機能を追加することで、選択の幅を広げるとしている。スマートフォン、タブレットPC、スマートTVをつなげたNスクリーン(利用していた動画やアプリをどんな画面からも続けて利用できる)戦略も視野に入れていて、アプリケーション開発の支援も始めている。


 韓国内では4Gに対応したGALAXY Tab Wibroも発売された。タブレットPCからどんなに重たいコンテンツでもすいすい利用できるようになった。海外ではLTEに対応したスマートフォンを先に発売、LTEに対応するタブレットPCをアップルより先に発売する計画だ。



 米シスコシステムズのVisual Networking Index (VNI) 2010~2015によると、2010 年には、300 万台のタブレットPCがモバイルネットワークに接続され、各タブレットPCでは、スマートフォンの平均の5倍の通信量が生成されたという。2010年から2015年で、世界のモバイルデータ通信量は26倍増加し、2015年にはタブレットPCの通信量だけで2010年全世界のモバイルネットワーク通信量に匹敵するほどの量になると予測した。この通信量を処理するためにも、ネットワークの速さにストレスを感じることなくタブレットPCを利用できるようになるためにも、「4G+タブレットPC」の組み合わせも重要な競争のポイントになる。


 ガートナーは世界のタブレットPC販売台数を2010年1950万台、2011年には5480万台、2014年には2億800万台と大幅に成長するものと予想する。一方、JPモーガンは、アップルが一人勝ちしすぎたため、他のメーカーはタブレットPCの生産台数を予定よりも減らし、慎重に対応していくだろうという報告書を発表した。iPad 2は売れても、タブレットPC全体で見ると予測されたほど売れていないという。


 そんな中でもサムスンは、2011年のタブレットPCグローバル販売台数を前年の5倍、750万台を目標としている。ラインアップを多様化することで無難に目標は達成できると見られている。一方スマートフォンの目標は前年の2倍である年間6000万台で、携帯電話(フィーチャーフォン)を合わせると3億台販売を目指している。





趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年6月2日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110602/1032154/

スマホ用ディスプレイの覇者争いに活気づくゲーム市場

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アップルの次世代スマートフォン「iPhone 5」には、既存の平面ではなく曲面ディスプレイが搭載されるらしいとネットで話題だ。韓国のサムスンとLGのスマートフォンも、この5月からディスプレイ競争を始めている。今まではCPUやUI、薄さ、軽さに焦点を当てていた。

 ディスプレイ競争のきっかけはLGのスマートフォン「Optimus Black」。世界で最も明るい700カンデラ(cd、発光体が放つ光の強さの程度を表す単位)のディスプレイを搭載したと大々的に宣伝したことから、サムスンの「Galaxy S2」が搭載するSuper AMOLED Plusがいいのか、LGの「Optimus Black」が搭載するIPS液晶のNOVA Displayがいいのか、ネットではユーザー同士の口コミ合戦が熱くなっている。


 LGによるとNOVA Displayは最高技術の液晶だそうで、現存するスマートフォンディスプレイの中で最も明るく、それで「新星」という意味のNOVAと命名したという。サムスンのスマートフォンより2倍ほど明るいので、どんな場所で見ても目が疲れにくいというのが売りだ。







LG電子は「世界で最も明るい」というNOVA Displayを搭載したスマートフォンOptimus Blackを発売し、スマートフォンのディスプレイ競争を巻き起こした



 サムスンも負けていない。Super AMOLED Plusはディスプレイのピクセル構造をRGB方式に変更したもので、自然の色の再現力、明暗比率、ディスプレイの反応時間、消費電力、どれをとってもLGのIPS液晶とは比べものにならないほど優れていると宣伝する。


 LGは明るさ、サムスンは色が鮮明、という点が特徴である。ユーザーの間ではより鮮明で色鮮やかなのはGalazy S2、野外でも画面が見やすく可読性が高いのはOptimus Black、Webブラウザー画面の解像度はiPhone 4、といった具合にそれぞれ特徴があると分析されている。


 Pantechも新しく発売したスマートフォン「Vega Racer」にゲームを躍動的に楽しめ、正面からは見えても横からはのぞけないシークレットビュー機能が付いたディスプレイを搭載していることをアピールした。


スマートフォンがディスプレイ競争を始めたら、モバイルゲーム業界も忙しくなり始めた。韓国人がスマートフォンでもっとも利用するコンテンツは「ゲーム」と「動画」といわれていることから、より鮮明で明るいディスプレイでやってみたいと思わせるゲーム開発に余念がない。


 サムスンもGalaxy向けキラーアプリとしてゲームを育てる方針であることを発表した。GalaxyのスマートフォンとタブレットPC向けに、ソーシャルネットワークゲームを準備しているという。時期は確定できないが、ソーシャルネットワークゲームをプリインストールして販売する可能性もあるというから楽しみだ。韓国では「モバイルゲーム=中小ベンチャー」の分野という認識があったので、サムスンという韓国を代表する大手が参加することで市場が大きく伸びるのはないかと期待されている。


 またアプリストアにも変化が表れ始めている。韓国はオンラインゲーム等級制度があり、韓国内で流通するすべてのオンラインゲーム(モバイル向け含む)は審議を経て、利用できる年齢に制限が設けられる。そのため世界市場をターゲットにするアップルのApp StoreやグーグルのAndroidマーケットは韓国で審議を得るのは難しいということで、ゲームというカテゴリーを消してサービスを提供していた。ゲームを利用するためにはエンタメのカテゴリーから入るか、ゲームの名前を検索して利用するしかない。


 だがここにきて、世界の流れに応じて規制緩和すべきというゲーム業界の意見を韓国政府が受け入れ、2011年の7月あたりからは、アプリ開発者が自主的に等級を付けて青少年を保護するという条件で、ゲームアプリを提供してもいいことになりそうだ。


 さっそく人材のスカウト競争も始まった。ポータルサイトや大手オンラインゲーム会社はスマートデバイス向けゲームアプリ専門会社を設立し始めていて、個人でゲームアプリを制作し、韓国以外の国で販売して大ヒットさせたことで有名になった開発者を自分の会社にスカウトしようとしているのだ。携帯電話向けのモバイルゲームをスマートフォンやタブレットPC向けに手直ししたり、3Dを加えたり、2011年はゲームアプリの転換期になりそうだ。


 韓国コンテンツ振興院によると、韓国のモバイルゲーム(ゲームアプリ含む)市場規模は2010年の4242億ウォン(約297億円)から2011年には4878億ウォン(約341億円)へ、13%程度の成長が見込まれている。ゲーム産業協会の関係者は、「スマートフォンのディスプレイもゲームしやすくどんどん技術がよくなっているし、さらにゲームアプリを正式に販売できるようになれば、4878億ウォンどころか8000億ウォンは軽く超えるだろう」と期待を隠せない様子だった。


 オンラインゲーム大国の次はゲームアプリ大国になれるだろうか。どんな楽しいゲームが登場するのか、7月が待ち遠しい。






趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年5月27日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110527/1032055/

品薄続きのiPad 2、免税店が穴場? Galaxy Tab10.1との競争も迫る

ソウルで地下鉄に乗っていたら、隣に座った女子高生達が「あれいいよね~」、「手に取った瞬間買いたくなっちゃってさ~」、「一度使ってみるともう手放したくなくなるよね~」と騒いでいた。何事かと思ったらiPad 2のことだった。

 女子高生達の手にはそれぞれGalaxy TabやiPad 2が握られていて、地下鉄の中でずっと自分の顔がどの芸能人に似ているか判断してくれるアプリがどうとか、受験勉強用のモバイルラーニングはどこがいいとか、盛り上がっていた。


 韓国では10年以上も前から受験勉強のためにEラーニングを利用していて、高校生になれば電子辞書兼用のPMP(Portable Multimedia Player、動画再生用の小型端末)を買ってもらい、休み時間や移動中の時間も惜しんでEラーニングの講座を見るのが受験勉強の基本である。それがついにGalaxy TabやiPad 2になったわけか。


 韓国では4月29日にKTとSKテレコムの2つのキャリアから発売されたiPad 2。発売当日はやっぱり早朝から人が並ぶ大騒ぎとなった。KTは全国に5万以上の4G WibroスポットがあるのでiPad 2から超高速モバイル通信を使えると宣伝し、SKテレコムは全国どこでも安定した3Gネットワークを利用できることを宣伝している。


 iPadは米国より7カ月ほど遅れて韓国で発売されたので、待ちきれず海外から買ってくる人が多かった。iPad 2は1カ月ほどの遅れで発売されたので国内で購入する人の方が多いと見込まれている。そのせいか、発売から1週間もしないうちに韓国内にあった在庫がほとんど売れてしまい、品薄状態が続いている。ネットでは「どこに行けばiPad 2を買えるのか! 買いたくても買えないiPad!」と嘆く人が後を絶たない。どの代理店も入荷と同時に売り切れるという。


 ついにはTwitterで「iPad 2を買うなら免税店が穴場」という情報も出回っている。世界各国の免税店価格を比較した情報もあれば、出国する際に仁川空港の免税店でもっと安く買えるという情報もあった。韓国の免税店はその場で会員登録すると追加割引をしてくれるので、それを利用すれば外国で買うより安くなる。




KTから4月29日に発売されたiPad 2を売り場で試す


韓国も5月は休みが多く、5月5日は子どもの日で公休日、5月10日はお釈迦様誕生日だったので、休みをとって連休を楽しんだ人が多かった。出国する人だけが免税店を利用できるので、この機会を利用して国内では品薄のiPad 2を安く買おうというわけだ。免税店ではWi-Fiモデルだけ扱っている。免税なので6000~7000円ほど安くなるという。



 しかし免税店に行けばいつでも手に入るわけでもないようだ。仁川空港の免税店でも40台が入荷されたが2時間で完売したという。インターネット新聞「イデイリー」の記事によると、自分の出国日にiPad 2の在庫があるかどうかを確認する電話が毎日何十件もあるので、免税店の営業に支障があるほどだと伝えている。


 iPad 2騒ぎが続く中、サムスンのGalaxy Tab10.1が計画を前倒しして5月中に発売されることとなった。10.1型と既存のGalaxy Tabより画面が大きくなりバッテリーの持ち時間も長く、iPad 2よりも薄く軽いという。Galaxy Tab10.1は試作品が公開される度にデザインと仕様が良くなっているので、最終的にどんなものが発売されるか楽しみである。下半期にはGalaxyTab8.9も発売される予定である。






Samsungの「Galaxy Tab」Webサイト


ディスプレイバンク社の調査によると、3月から、ノートパソコン用のパネルよりタブレットパソコン用パネルの出荷量の方が多くなった。4月にはタブレットパソコン用のパネル出荷量が初めて全世界で500万台を超えたという。

 2010年スマートフォンが一気に普及して携帯電話出荷量の60%がスマートフォンになったように、2011年はタブレットパソコンの人気が爆発しそうだ。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年5月20日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110520/1031904/

2011年6月7日 韓国デジタル教科書先進事例の問題点と日本の挑戦 セミナー


http://www.jpi.co.jp/seminar/seminarDetail.aspx?seminarNo=11262&bunyaNo=27


2011年6月7日(火) 09:30-11:55
東京


文部科学省『教育の情報化ビジョン』の重点取組み課題と
「韓国デジタル教科書」先進事例の問題点と日本の挑戦


講義項目2 第二部
韓国のデジタル教科書導入等の現状とビジネスチャンス
講師 趙 章恩 (10:45~11:55)
 1996年から構想が始まり、6年以上の実証実験を経て2013年商用化を迎える韓国デジタル教科書。実証実験の結果からわかった問題点とデジタル教科書参加企業のビジネス戦略から、日本のデジタル教科書のビジネスチャンスを探る。
1. 2011年韓国のICT現況
2. デジタル教科書とは何か
3. 韓国デジタル教科書の特徴
4. 韓国デジタル教室、スマート教室
5. デジタル教科書を導入するまでの過程
   学校情報化、校務情報化
6. デジタル教科書授業様子・事例紹介
7. デジタル教科書参加企業と技術
8. デジタル教科書の効果
9. デジタル教科書関連企業戦略
10. デジタル教科書義務化に向けた課題
11. デジタル教科書と教育情報化の未来
12. 関 連 質 疑 応 答
13. 名 刺 交 換 会
   講師及び参加者間での名刺交換会を実施いたします


「スマートフォン+4G」競争が激化の一途

韓国初の4G向け周波数競売も予定



 スマートフォンが生活の基盤になりつつある韓国では、スマートフォンから利用できる高速モバイルネットワークである4Gへの関心が何よりも高まっている。


 TwitterやFacebook、人気のアプリケーションも、ネットワークにつながっていないと使い物にならないため、通信キャリアのCMも、端末の機能より、Wi-Fiスポットを他社よりたくさん持っている、モバイルインターネット使い放題料金が安いといった「ネットワークにより安く、速く、つながりやすい」ことを強調する内容になっている。


 最大手のKTは、「4Gで一足先に行く」をテーマにしたCMを流していて、6月からWibro(韓国のモバイルWiMAX)基盤の4GスマートフォンとタブレットPCを発売する。SKテレコムは7月、LGU+は10月よりW-CDMAより下りが5倍ほど速いLTEで4Gサービスを始めるとしている。






KTの4Gサービス広告


KTが4Gとして発売するのは、Wibro+Wi-Fi+W-CDMAの3種類のネットワークに対応した台湾HTCのスマートフォンとタブレットPC。KTは既に3月からWibroが使えるサムスンのGalaxy Tabを発売していて、Wi-Fiより速い4Gが使えると宣伝してきた。また幼児向け教育ロボット、クラウドコンピューティング、モバイル端末で操作できる遠隔業務処理など、4Gネットワークを使った応用サービスも次々に発表している。


 KTは韓国最南端の島でレジャー・観光の名所であるチェジュ道と提携し、「チェジュ・モバイルワンダーランド」構想にも参加している。海、山、滝といった観光スポットはもちろん、バス、タクシー、レンタカーにも4Gネットワークを張り巡らせ、6月までは誰でも無料で移動しながらも高速モバイルネットワークを体験できるようにしている。またKTと自治体が協力してチェジュ道に「スマートワーキングセンター」という拠点を作り、公務員が自分のオフィスにいなくてもこの拠点を訪問して遠隔で仕事ができるようにしている。


 「チェジュ=観光」という単純なイメージを脱皮するため、自治体の積極的な支援のもとで、2009年から大規模なスマートグリッド実証実験を行っている。ここにKTのWibroを追加して、電力使用もWibroで管理し、エネルギー使用パターンを分析して効率よく電力を使えるようにしてくれる「スマートホームエネルギーサービス」も始める。チェジュは過ごしやすい自然環境と、最先端のグリーンITビジネス環境の両方を取りそろえた島であることをアピールしようというのが「モバイルワンダーランド」構想の目的である。


 KTと同じくiPhoneを販売するSKテレコムも4Gを強調したCMを流し、一方、スマートフォンに出遅れ存在感が薄いLGU+は、LTEでどのキャリアよりも速度の速いネットワークを提供すると強調する。


このような中、新たな論点となっているのが周波数だ。


 WibroだけでなくLTEサービスも計画しているKTは、6月で2Gサービスを終了し、その周波数(1.8GHz)をLTE向けに使う方針だと発表したことがある。KTはこれまで、2Gを終了させるため、ユーザーに対し無料で3G端末やスマートフォンに機種変更させてきたが、それでもまだ2G加入者は100万人近く残っている。放送通信委員会は2G加入者が1万人以下になればサービスを終了してもいいとしており、このままではKTの計画通りにはなりそうにない。


 KTはLTE用に900MHzを確保しているが、欧米のキャリアが900 MHzのLTEにあまり投資をしていないため端末を確保するのも難しいと判断したのか、1.8GHzを狙っているのだ。放送通信委員会は、韓国で初めて行われる予定の周波数競売(2.1GHzの20MHz幅)に、KTが6月中に返納する予定の1.8GHzの20MHz幅を追加するかどうか検討している。


 LTEの場合、SKテレコムは800MHz、KTとLGU+は1.8GHzの周波数を使う。2.1GHzの場合は、SKテレコムが60MHz、KTが40MHzを持っているが、LGU+だけが持っていないため、競売といっても放送通信委員会がLGU+の肩を持つ可能性が高いのではないかと言われている。周波数が競売にかけられるとしたら、観戦ポイントは1.8GHzの20MHz幅をKTがまた持っていくのか、それともSKテレコムがKTには渡せないと新たに手を出すか、になりそうだ。


 というのも、スマートフォンが発売されてから、KTとSKテレコムはお互いをけなすCMを頻繁に流している。おかげで得をするのは米アップルだ。KTのCMもSKテレコムのCMも、iPhoneを楽しく使うためには自分たちの4Gが必要だと宣伝しているので、テレビをつけるとiPhoneのCMばかり流れているような気がするからだ。


 トラフィック暴走で4Gの早期サービス実施に周波数確保に必死になっているキャリア。この競争がアップルではなく加入者が得する競争になってくれるといいのだが。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年5月13日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110513/1031787/
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9割引きも当たり前のソーシャルコマース、人気もすごいが被害も拡大

毎年20%近く物価が上昇している韓国。天候や原油価格高騰によるもので仕方ないというが、インフレは止まらない。そこで脚光を浴びているのが、50%値引きは当たり前というソーシャルコマースである。決まった人数が集まれば50~90%値引きされた値段で商品を購入できるというもの。

 韓国にもグルーポンが進出し、ソーシャルコマースサイトは雨後の筍のように急増している。携帯電話やスマートフォンの位置情報を利用して、近くで使えるソーシャルコマース商品券を案内している。中でも人気の商品は地元レストランのセットメニュー商品券。美容院、化粧品、不動産、会員権などありとあらゆるジャンルへソーシャルコマースが広がり、人気を集めている。ソウルから2時間ほど南に離れた天安市では、526世帯集まれば相場より500万円ほど安くマンションを分譲するというソーシャルコマースも登場して話題をさらった。


 ソウルの隣にある京畿道では、自治体がインフレ対策としてソーシャルコマースを積極的に利用するという「物価安定化支援政策」を発表した。6月より、自治体が運営する農産物オンラインショッピングモールをソーシャルコマースにして、売り手が直接商品を登録し、買い手が一定人数集まればスーパーで買うより30~50%値引きして販売するという。


 携帯電話加入者の3分の1がスマートフォンを使っている中、モバイル通信事業者3社もスマートフォンの機能をフルに生かせるソーシャルコマースに力を入れている。


 スマートフォンに出遅れてシェアが最も少ないLGU+は、4月25日より位置情報「+NFC」を利用したモバイル決済とソーシャルネットワーク、そしてゲームを合わせたショッピングを提供している。専用アプリをインストールしてからマップに表示される加盟店を訪問してショッピングすると自動的に位置情報を確認してポイントが積み立てられ、それをコンビニやファストフード店などで商品に変えられるというサービスだ。加盟店はまだ1000店ほどだが、年内に10万店突破を目指す。SKテレコムは会員登録をすると、ブランド物を50%以上割引して販売するソーシャルコマースを利用できるサービスを始めた。







LGU+が提供する「位置情報+SNS+ゲーム」を組み合わせたソーシャルコマース「Dingdong」。スマートフォンやタブレットPCから利用できる


閉店に追いやられる店も



 加熱する一方に見えるソーシャルコマースだが、ソーシャルコマースによって閉店を余儀なくされたというレストラン経営者のネット上への書き込みが話題になった。ソーシャルコマースで半額チケットを購入する人が予想をはるかに超えたため、最初は売り上げが伸びてよかったもの、割り引きで利益は少ないのに客が増えるので人件費が増える。すぐ赤字になり経営難に陥るレストランもあるという。ソーシャルコマース会社に取られる手数料も高く、店の意向とは関係なく数千枚の商品券を販売したため、殺到する客を対応しきれず不満ばかりネットに書き込まれ、結局店を閉めるしかなかったというところもあった。


 ソウル市電子商取引センターの調査によると、ソーシャルコマースサイトはこの1年間新しくオープンしたのが100サイトを超え、20代の60%が利用したことがあると答えたそうだ。ソーシャルコマースで購入したことがある商品はレストラン商品券、映画・エンタメチケット、ファッション雑貨、食料品・健康食品、美容の順だった。


 しかし購入経験者の26%は被害にあったことがあると答えた。広告と実際の商品が違う、ソーシャルコマースで購入した商品券を使う人だけ食事の量が少なく不親切にされた、払い戻しや返品を受け付けない、という不満が圧倒的に多かった。


 ブログやTwitterにはソーシャルコマース失敗談がよく登場するようになった。「ネイルケアの商品券を購入したところ、商品券を持っていることを伝えた途端に予約でいっぱいといわれた。有効期限が切れる前に予約できるだろうか」、「セットメニュー半額の商品券を購入したが、写真とは全然違うメニューで量も少なすぎ。これじゃ割引でもなんでもない」などなど。「ソーシャルコマースがっかり事例」を集めて紹介するサイトまで登場したほどである。


 韓国のソーシャルコマース市場規模は2010年に約400億円、2011年には600億円を超えると推定されている。海外勢のグルーポンよりも韓国ベンチャーが立ち上げたサイトの方が商品数が多く人気を集めている。このごろはソーシャルコマース業者があまりにも多いせいか、人気芸能人を起用したテレビCM競争が始まっている。商品よりも広告宣伝競争になってしまった。


 ネットでは既に「ソーシャルコマースに飽きた」、「グルメサイトのクーポンを利用して割引してもらう方が安心でお得」、「ソーシャルコマースと既存の共同購入ショッピングモールとの違いが分からない」といった声も多く客離れも始まっている。商品券を購入した後で問題が生じても、ソーシャルコマースサイトは「通信販売」ではなく「仲介」なので責任がないと言い逃れできるからだ。


 韓国の消費者権利保護団体は、「ソーシャルコマースはこの1年で急激に市場が成長したため、標準約款もなく業者の勝手に運営されている。商品券を販売してからサイトを閉鎖するところも多い。払い戻しやアフターサービスに関する約款を導入するべき」、「70%割引、90%割引という文字につられて注意事項を読まずに衝動買いしてしまうのも問題」だという。消費者がもっと賢くソーシャルネットワークを使って悪い業者に引っかからないよう注意すべきともしている。


 公正取引委員会は、米国のように韓国のソーシャルコマースサイトも電子商取引法を守るべきとして実態調査に着手したという。インフレ対策で家計にやさしいはずのソーシャルコマースが無駄遣いの元になっているとは。安くて便利で信用できるショッピングサイトに巡り合える日は果たして来るだろうか。


趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年4月28日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110428/1031571/

「7年間同じ管理者パスワードだった」銀行システムに大非難

2011年4月12日に発生した韓国農協銀行のシステム障害は、1週間を過ぎた19日時点でも正常回復できず、22日を目途に作業が進められている(前回記事参照)。貯金の引き出しや振り込みなどの業務は再開されたが、クレジットカード関連業務はまだ取引データ損傷により復旧が長引いている。1週間以上も続く銀行のシステム障害は韓国で初めてのことである。

 Twitterでは「農協」がキーワード検索上位にランクされているほど。「今日も友達の農協のクレジットカードが使えず、私がおごった。4日連続~」、「学生証と農協のクレジットカードがセットになっていて、使いたくないのに使うしかない。なんとかならないのか」、「農協のネットバンキング使えないの、私だけですか?」などなど、農協と取引している顧客の不満が呟かれている。


 システム障害の原因については、サーバー管理を委託している下請け会社のノートパソコンに1カ月も前からサーバーのプログラムを全て削除してシステムを破壊するよう命令が仕込まれていたことまでははっきりした。ところが、ハッカーからの脅迫がなかったため、誰が何のために仕込んだのか分からず、犯人捜査は難航している。


 当初、システム障害は外部からのハッキングではなく、システム管理委託業者である韓国IBMの職員が何かの間違いでプログラムを削除してしまったようだとされていた。しかし、IT担当職員約550人の中で最高レベルの管理者権限を持つ人はIBMと農協職員合わせて8人ほどしかおらず、委託業者の職員は作業をするだけで権限がないため削除命令を仕込めない。ファイルの削除命令は通常何段階もの内部統制を経てから実施されるのに今回は一発で削除が始まった。これは外部からのハッキングとしか考えられない、という結論に達している。


 検察の捜査結果では、外部からハッキングでノートパソコンを動かした形跡も見つかった。ところがもっと深刻なのは、3000万人もの顧客を抱える農協の管理者パスワードが7年近くも変更されないまま使われ続けたことであった。セキュリティ管理がどれだけ適当に行われてきたのかを象徴するようなもので、Twitterでは非難が相次いでいる。








1週間以上もシステム障害が続いている農協について、Twitterでは顧客の不満が後を絶たない。赤枠は「農協検索結果」を示す


 サーバーのプログラムを削除するようにした命令語は、たった5分で275のサーバーを破壊し、バックアップシステムも作動しないよう止めてしまうほど、とても緻密に作られた組み合わせであった。情報をコピーする命令ではなく全てを破壊するように仕掛けられていた。このことから、システム障害の裏でまた何かが仕掛けられているのではないかと心配する人も多い。


 農協は、4月19日に開かれた記者会見で、「高度な技術を持つ者によるサイバーテロ」が発生したとし、システム障害はあったものの「顧客情報が流出されるようなことはなかった」と何度も繰り返し強調した。システム障害による顧客の被害を全て補償するとしている。例えば農協の口座から振り替えできずクレジットカード決済代金やローン返済の延滞が発生した場合、延滞金は農協が払うというものである。延滞により信用等級が下落した場合は、その記録を削除する。


 金融会社への行政指導を行う金融監督院は、金融会社のITセキュリティ全般の点検、セキュリティ事故に対する体系的対応と再発防止のため「金融会社ITセキュリティ強化タスクフォース」を始めた。農協の内部でセキュリティ統制管理に問題はなかったのか、管理監督規定を守っていたのか、委託業者の管理に万全を期していたのかといった調査も始める。民間専門家はもちろん、国家情報院、国民IDといった個人情報を担当する行政安全部、情報通信政策を担当する放送通信委員会など、他の省庁とも協力する。


 また金融監督院は、2009 年から全金融会社に対してセキュリティ保護責任者であるCSO(Chief Security Officer)任命を勧告したが、農協はCSOがないままだったことから、金融会社のCSO実態調査も着手した。情報システム責任者であるCIO(chief information officer)とCSOを兼任、またはCIOがいればCSOはいらないと考える企業がまだまだある中で、CSOの業務を独立させ権限を与えることで、金融会社のセキュリティ事故の再発防止を狙う。


 これは、今後このような事態が発生した場合は厳しく責任を追及するという政府の意思を表すものと分析されている。金融監督院は、これからCSOのいない金融会社に対してはセキュリティ体制が万全でないとして経営実績評価に反映するとしている。


 国会は金融会社のCSO任命を義務化する「電子金融取引法一部改定案」を発議した。「ハッキングや情報流出が毎年のように繰り返されているが、そのときだけ慌ててセキュリティに投資してまたすぐ忘れる。金融会社の信頼性を確保するためにも責任と権限があるCSOは必要だ」というのが改定案の趣旨である。


 銀行やクレジットカード会社では、IT部署とは別に情報管理と保護を専門とするセキュリティ担当部署を急いで新設している。東日本大震災の影響から、災害時のセキュリティ・情報保護・システム復旧体制を整えることも注目されているだけに、情報システムとセキュリティの専門家を確保するための競争が始まりそうだ。これもまた一過性のイベントで終わってしまわないといいのだが。




趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2011年4月21日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20110421/1031393/