G20開催でわきかえるソウル、あちこちで最先端ICTを体験

ソウルでは2010年11月11日~12日、G20が開催される。G20のGはGroupの略字で、20カ国・地域首脳会合のことである。世界GDPの85%を占めるG20だけに、サミット開催中に韓国が誇る最先端技術をG20関係者らに宣伝するため、展示会や体験ゾーンがソウル市内のあちこちに登場し始めた。一般市民も自由に観覧できる展示場も多いため、IT・電気自動車・3D放送・エコなど、韓国自慢の最新技術を体験できるいいチャンスでもある。

 G20サミットは韓国では初めての大規模な国際首脳会議で、国別の代表団やプレス合わせて少なくとも1万人が参加すると見込まれている。参加者らが落としていく消費支出約35億円、G20開催による付加価値創出効果約45億円、企業の広報効果と輸出増大効果などの間接効果は2兆円を超えると推定されている。


 ソウル市内はどこを向いてもG20のポスターや歓迎の旗が掲げられている。企業の広告にもG20、バスにも電車にもG20、ビルの屋上看板にもG20、テレビをつければG20開催国らしくエチケットを守りましょう、外国人観光客にはやさしくしましょう、道に迷っている人がいたら自分から先に声をかけましょうのキャンペーンが流れている。ワールドカップ以来の盛り上がりに、G20となんの関係もない私ですら興奮してしまうほどなのだ。






G20のスターサポーターとして活躍している少女時代(2010 G20 Seoulsummit準備委員会)

メイン会場であるCOEXでは11月1日、公務員とボランティア総出の大掃除が行われた。ショッピングモールになっている会議場地下には、以前から楽しいITスポットとしてデジタルサイネージを使った多国語の案内地図やタッチ式広告版が置いてあり、ショッピングモール内のお店や周辺グルメ情報、観光情報、今日のニュース、天気、為替レートなどを検索できるようになっている。ストリートビュー方式で、周辺の写真を見ながら地図検索できるので、初めて行く場所でも迷わず探せる。こうした検索できる情報発信型デジタルサイネージは韓国ではお馴染みの設備であるが、海外観光客には珍しいようで、G20をきっかけに再び注目されている。

 COEXがある地下鉄2号線「三成駅」には、韓国内のどこにでも無料で電話をかけられるVOIP付きのデジタルサイネージもあるので、お店を検索してその場で予約もできるところが便利。映画や演劇のチケットを無料でもらえるイベント応募もできるようになっているので、定期的に立ち寄りたくなる。

ソウル市はCOEXに電力いらずで温室ガスも発生しない、スマートフォンで遠隔制御できるソーラーLED照明を設置し、「低炭素グリーンエネルギー都市ソウル」のイメージを広めるとしている。昼間に太陽光を充電して夜は照明として使うもので、まだ商用化されてはいないが、照明のベストな高さやデザイン、消費電力チェック、遠隔制御方式などの実証実験を経てG20期間中COEXに設置されることになった。


 代表団とプレスには韓国メーカーの電気自動車、電気バス、水素燃料電池自動車が提供され、エコな都市ソウルのイメージアップも図る。まだ量産されていないモデルではあるが、1度の充電で170km走れて、スピードも165km/hまで出せる電気自動車や、1度の充電で650kmを走れる水素燃料電池自動車は、世界のメディアに注目されると期待されている。


 また、COEXには3DTVを体験できるコーナーもあり、韓国が2010年から国をあげて実験している高画質3DTVを観ることができる。


 11月5日からは「G20放送通信未来体験展」(G20 Communications Exhibition)が開催する。韓国の主なIT・放送事業者が参加し、最先端サービスを体験させる展示会で、現在提供されているサービスと、今後提供される未来生活サービスも展示される。モバイルIPTV、デジタル教科書や電子黒板・RFID・3D仮想現実などを活用して授業を行うスマート教室、エコなスマートIT製品、3Dタブレットパソコンや3Dエンターテインメント、電気自動車やスマート自動車などが展示される。各国首脳やプレスに韓国はIT強国であるという強烈な印象を残すため、政府も企業も熱心である。

企業のショールームもG20のための衣替えを済ませ、各国代表団の訪問を待っている。空港の携帯電話レンタルコーナーも古い端末を一新し、スマートフォンやかわいいデザインの端末を使えるように準備した。






KTはG20参加者に最先端IT機器を提供する(KT提供)


G20の主管通信事業者に選ばれたKTは、G20首脳と代表団に提供されるIT機器を一足先に公開した。


 IPTVからはCNN International、 Euronews、 France 24、 CCTV 9、 NHK World News などG20国家のニュースチャンネルを提供し、SoIP(モニター付きインターネット電話機)から観られるようにした。14カ国を利用できるようにし、リモコンも付けて、電話でもありIPTV用のモニターとしても使える。Wibro(モバイルWiMXA)を利用したモバイルIPTVも提供し、スマートフォンからG20の日程、告知、ニュースなどを提供し、世界最高水準のモバイルネットワーク技術を持っていることもアピールする。


 韓国の空港鉄道、電車、バス、タクシーなど全交通機関と自動販売機や公衆電話、コンビニなどで使える電子マネー「T-Money」もG20首脳と代表団に配られる。乗り換えに関係なく、乗った距離に応じて料金を計算するとても便利な交通システムを体験してもらいたいからだ。


 G20は韓国にいながら主な経済大国の代表団に自社製品を宣伝できる絶好のチャンスであるため、企業も宣伝に力が入る。韓国を訪問する外国人のための特別セールや無料観光バス運行などイベントも盛りだくさん!熱気むんむんな今が観光するにも絶好のチャンスかもしれない。それに11月の韓国は雨もほとんど降らず、紅葉もきれいなので、飽きるほどソウル出張をしているビジネスマンでも、今まで見たことのない新しいソウルを体験できること間違いないだろう。



趙 章恩=ITジャーナリスト)

日経パソコン
2010年11月4日

-Original column
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101104/1028315/